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2023年11月3日金曜日

中国の寧夏回族自治区で排水タンクが爆発・火災、死者4名

 今回は、20231024日(火)、中国の寧夏回族自治区の昆鵬クリーンエネルギー有限公司の化学プラントで排水処理施設の排水用タンクが火災となり、死者4名を出した事例を紹介します。

< 発災施設の概要 >

■ 発災があったのは、中国の寧夏回族(ニンシャー・ホイジー/ねいか-かいぞく)自治区の寧東(ニンド-/ねいとう)エネルギー・化学工業団地(Ningdong Energy and Chemical Industry Base)内にあるにある昆鵬(クンペン/こんほう)クリーンエネルギー有限公司(Kunpeng Clean Energy Co.)の化学プラントである。

■ 事故があったのは、昆鵬クリーンエネルギー社の排水処理施設の排水用固定屋根式円筒タンクである。

< 事故の状況および影響 >

事故の発生

■ 20231024日(火)午前9時頃、排水処理施設の排水用固定屋根式円筒タンクで火災が発生した。

■ 発災後、すぐに警察に通報され、消防や公安などの救急隊が現場に駆けつけた。

■ 火災は、1時間半後の午前1030分頃までに消し止められた。タンク内の液体の温度は安全温度を下回り、16℃に落ちた。

■ 発災当時、現場には排水タンク付近には、8人の建設会社の作業員がいて取り残された。火災は消し止められ、作業員4人の無事が確認されたが、ほかの4人は行方がわからなかった。

■ 1026日(木)、行方不明だった作業員4人は死亡しているのが発見された。

被 害

■ 排水用固定屋根式円筒タンク1基が損壊した。 

■ 事故により死者が4名出た。

< 事故の原因 >

■ 火災の原因は調査中である。

< 対 応 >

■ 事故を受けて、党委員会と自治区政府はこの問題を非常に深刻に受け止めた。自治区党委員会書記と自治区主席は直ちに指示を出し、現場に急行し救助と処理作業を監督した。寧東省行政委員会は二次事故を防ぐために緊急計画を迅速に実施し、科学的な救助措置を実施した。

■ 排水タンクは企業の生産における主要な設備ではなく、セキュリティリスクは無視されることが多い。近年、化学会社の排水(下水、汚水)タンクでの事故が多発している。

補 足

■「寧夏回族自治区」(ニンシャー・ホイジー/ねいか-かいぞく)は、中華人民共和国西北部に位置する自治区で、人口約720万人である。ホワントー高原では黄土層の厚さはところによって100mに達する。食糧作物はコムギ、イネ、ゴマ、テンサイなどがある。地下資源としては石炭、石油、鉄、塩、リンなどがあり、水力発電、火力発電の発達もめざましい。住民はホイ族が30%を占め、ほかに漢族、満州族、モンゴル族、チベット族、ミヤオ族などである。

■「昆鵬クリーンエネルギー有限公司」(クンペン/こんほう)Kunpeng Clean Energy Co.)は、201811月に設立され、寧東(ニンド-/ねいとう)エネルギー・化学工業団地(Ningdong Energy and Chemical Industry Base)内にあり、石炭火力発電所やエチレングリコールユニットの化学プラントを有している。

■「発災タンク」は容量などの仕様は報じられていない。グーグルマップで調べると、雪が残る建設中(基礎)の2基のタンクがあるのが分かる。隣接する8基のタンクは直径28mであり、発災写真を見ると、これらのタンクより発災タンクは若干大きい。グーグルマップで調べると、発災タンクの基礎の直径は約30mである。タンク高さを10mと仮定すれば、容量は7,065KLとなる。

 なお、発災タンクのほか、西側にある6基の小型タンクと東側にあるタンクの合計8基のタンクは黒っぽい色彩になっており、これらが排水処理施設だと思われる。この排水処理施設には、グーグルマップでは見られないパイプラックに載った数多くの配管が通っており、これを見ても排水処理施設は最近になって稼働されたものだと分かる。また、発災タンクの側板には足場がかかっており、工事が行われていたことをうかがわせる。

所 感

■ 事故の原因は調査中であるが、発災タンクの側板に足場が掛けられており、死傷者が建設会社の作業員なので、工事中の事故だとみられる。排水処理装置の排水タンクであるが、どのような成分を含んだ排水(下水あるいは汚水)なのか報じられていないが、油分を含み、可燃性ガスが発生したものだろう。あるいは、排水中のバクテリアの活動や有機物の腐敗から生じたメタンによるものではないだろうか。

■ 10年以上前に米国CSB(化学物質安全性委員会)がまとめたものであるが、「タンク内外の火気工事における人身事故を防ぐ7つの教訓」20117月)を活かすべき事例であろう。

■ 報道では、火災としか報じられていないが、タンク屋根がタンク内に落下しており、爆発したものとみられる。火災時の写真はないが、爆発後に“障害物あり全面火災”の様相を呈したものと思われる。しかし、排水タンクであり、油分があったとしても油タンクほどではなかっただろう。消火には1時間半かかっているが、複数のスクワート車、はしご付き消防車、大型化学消防車から泡モニターを使用して泡消火したものと思われる。しかも、発災タンク両側に消防車を配置できたというのは幸いだった。この実績によってプラントの消防設備は今の装備でよいという結論ではない。火災が油タンクの場合であれば、このように円滑な消火はできない。日本でも三点セット(大型化学消防車、大型高所放水車、泡原液搬送車)であれば、十分だとしていたが、2003年の十勝沖地震のナフサタンク火災によって根底から覆った。この経験から大容量泡消火砲システムを導入することとなった。


備 考

 本情報はつぎのインターネット情報に基づいてまとめたものである。

       Breakinglatest.news, Fire Breaks Out in Sewage Storage Tank at Kunpeng Clean Energy Co., Four Workers Missing,  October  24,  2023

       Global.chinadaily.com.cn, Four dead after sewage tank fire, management detained,  October  26,  2023

       Sohu.com,  一固定污水储存罐起火!4人失联……,  October  26,  2023

       Isa-hsse.com,  宁夏宁东能源化工基地鲲鹏清洁能源有限公司一固定污水储存罐起火,  October  29,  2023

       Content-static.cctvnews.cctv.com, 宁夏一企业污水储存罐起火事故中的4名失联人员全部找到 均已遇难,  October  26,  2023

       M.sohu.com,突发!一固定污水储存罐起火!4人失联...,  October  26,  2023


後 記: 中国のタンク火災ということで調べました。ただ、寧夏回族自治区という中国の西北部に位置する自治区であることもあってか、報じたメディアはたくさんあるのですが、情報源が限られ、内容はほぼ変わりませんでした。中国らしいといえば、「事故を受けて、党委員会と自治区政府はこの問題を非常に深刻に受け止めた。自治区党委員会書記と自治区主席は直ちに指示を出し、現場に急行し救助と処理作業を監督した」という点でしょう。感情のこもっていない建前の記事だと感じますね。それとドローンによる空撮写真の出所はひとつで趣のないものでした 。(事故の写真でおもむきを欲する方が?) それでも被災写真は記事になっていない事実を物語ってくれています。写真がなければ、ブログで紹介することはなかったでしょう。

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