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2023年11月6日月曜日

韓国秀麗市の貯蔵タンク上部爆発・火災事故の原因と教訓(2021年)

 今回は、20211213日(日)、韓国の麗水にある化学工場において貯蔵タンク上部で通気管接続作業を実施中に爆発・火災が起こり、作業員3名が死亡した事例について紹介します。この資料は、韓国内で類似事故を無くすために作成されたものです。事故の内容は本ブログでも「韓国麗水市の化学工場で貯蔵タンク爆発・火災、死者3名」20221月)で紹介していますので、参照してください。

< 発災施設の概要 >

■ 発災があったのは、韓国の全羅南道(チョルラナムト/ぜんらなんどう)の麗水(ヨス/れいすい)にある化学工場である。

■ 事故があったのは、鋼製(SS400)の製品貯蔵タンクで、直径8.4m×高さ8.8m×容量96KLである。事故当時はイソパラフィン系の油が34%保管されていた。内液のイソパラフィン(C7-C8系列)の主な性状は引火点ー8℃、発火点447℃、爆発範囲0.96.3Vol%、蒸気圧35mmHgである。

< 事故の状況および影響 >

事故の発生

■ 20211213日(日)、韓国の麗水にある化学工場で引火性液体を含んでいた常圧貯蔵タンク上部で通気管接続作業(VOC改善策)を実施中に爆発・火災が起こった。作業中だった作業員3名が死亡し、複数の貯蔵タンクが破損するという残念な事故が発生した。

被 害

■ 固定屋根式円筒タンクが複数損壊した。 

■ 事故により死者が3名出た。

事故の原因 >

■ 火災の原因は危険物を除去せずに作業を行ったことによる。 揮発性有機溶剤(VOC)処理配管を設置するため、危険物(引火性液体)が保管されている常圧貯蔵タンクの上部で配管の接続作業中に何らかの引火要因で爆発・火災が発生した。

<   >

■ 事故の詳細調査が行われており、現在までに調べて分かった結果では、タンク上部での火気作業はプレファブ工法で製作された配管をフランジ接続する作業だったとみられる。このため、現場では大きな危険はないと判断し、タンク内部の物質(イソパラフィン系)を除去しない状態で作業が実施され、事故が発生したとみられる。

■ いくら溶接や溶断などの直接火気を(直火)を使用する作業ではないとしても、作業中に工具などによる火花などの火災発生の危険が常に存在しているため、作業周辺の危険物(タンク内部の物質)は必ず完全に除去し、そしてブロック(孤立・縁切り)して作業を進める必要がある。

■ もし、今回の事故の場合でも、タンク内部の物質を抜き出して除去し、ブラインドを設置し、内部のパージを行っていたら、このような事故の危険はなかっただろう。仕事に費やされる時間と手間は人の命に替えることはできないので、これらの基本を絶対に守らなければならない。

< 類似事故の予防対策 >

火災危険作業時の危険物除去等の火災・爆発予防措置の徹底

■ 危険物(特に常温で油蒸気になる可燃性液体)が存在する恐れのある貯蔵タンクなどでの溶接・溶断、研磨、ドリルなどの火花が発生する可能性のある作業を禁止し、作業を行う際には必ず危険物の除去と窒素やスチームパージなどの爆発や火災の予防のための措置をとった後、作業を行わなければならない。(危険物がある恐れのある場所とは、貯蔵タンク上部、排水処理場上部、ベント、ドレン、ピット、試料採取部などである) 

火気作業等に対する安全作業許可書の発行手続きの強化

■ 安全作業許可書の作成および承認時、請負会社作業員等が作業を行う際に必要な危険物除去、隔離、パージ等の措置を完了した後に作業許可書を承認しなければならない。

作業手順の準拠の徹底

■ 危険設備の安全な維持・保守のために作成した作業手順を作業に参加する作業員に教育し、手順に従った作業が行われるように監督する。

補 足

■ 今回の事例について発災事業所名は報じていないが、事故日(20211213日)や発災場所(秀麗市)から「韓国麗水市の化学工場で貯蔵タンク爆発・火災、死者3名」20221月)であることが分かる。

所 感

■ 事故は当ブログでも紹介した「韓国麗水市の化学工場で貯蔵タンク爆発・火災、死者3名」20221月)である。当時の事故原因について「事故の直接原因は、保全/火気工事のミスによるものとみられる。間接要因は火気工事環境を確認しなかった運転ミスとみられる」とした。 韓国の原因調査によって「光州雇用労働庁は、事故発生場所作業許可書にガス濃度測定結果が虚偽で作成されたという疑惑に関して、実際のガス濃度測定が一部実施されていないことを確認した」ことまでは伝えた。

 今回、韓国における事故の類似事例を防止するために作成された資料によって、「タンク上部での火気作業はプレファブ工法で製作された配管をフランジ接続する作業だった」ことが分かった。このことを示すイラストが掲載されているのが、効果的である。プレファブ工法で製作された配管をフランジで接続するだけという安易な判断で環境確認を省いた代償は大きかった事例である。


備 考

 本情報はつぎのインターネット情報に基づいてまとめたものである。

       Safetyhappy.tistory.com, 貯蔵タンク上部爆発・火災事故事例(麗水3人死亡),  December  16,  2021


後 記: 韓国の事故防止を図ろうという趣旨のインターネット情報があることを知り、紹介することとしました。はじめは、当ブログの 「韓国麗水市の化学工場で貯蔵タンク爆発・火災、死者3名」20221月)の内容を織り交ぜながらまとめようと思いましたが、韓国の作成者の趣旨からできるだけオリジナルを活かすことにしました。この方が人身事故を無くしたいという思いは伝わりやすいでしょう。韓国と同様、中国にも事故防止を図ろうという趣旨のインターネット情報があることを最近知りました。いまは翻訳機能があるので、こちらも注目しておきます。

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