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2022年11月10日木曜日

タンク洗浄と環境汚染制御の作業を統合して大幅改善

 今回は、2022830日付けのTank Storage Magazineに載った“Integrated tank cleaning and emission control”(統合されたタンク洗浄と環境汚染の制御)について紹介します。

< はじめに >

■ 米国デバスク社(USA DeBusk)のクリスティン・ジョンソン氏(Cristin Johnson)が、タンク洗浄の関する一連の作業を統合して一体化した計画と実施について説明していく。

■ タンク洗浄方法は、過去20年以上にわたって、スラッジなどの除去物質の処理法、入槽しない洗浄法(非立入洗浄)、スラッジなどの対象物質の特別な除去方法、環境汚染ベーパーの制御法や排除方法について発展を遂げてきた。人体への曝露を回避する入槽しない(非立入)タンク洗浄方法が一連の技術開発の原動力となっている。世界の企業がタンク洗浄の規制要件に準拠するだけでなく、二酸化炭素排出量を最小限に抑えることにも目を向けるようになっているため、地上式貯蔵タンクの洗浄作業における環境汚染ベーパーの排出制御方法は一段と重要な役割を果たすようになった。

■ タンクからスラッジなどの除去物質を取り出して処理する担当者や資機材は、環境汚染ベーパーを回収して処理する担当者と緊密に連携して作業を行わなければならない。これらの作業を統合して一体化しようとすることは有益であるばかりでなく、現在では不可欠なものといえる。

■ タンク洗浄と環境汚染ベーパー制御のふたつの作業の目的は密接に関係している。例えば、スラッジの除去速度は、タンク洗浄と環境汚染ベーパーの制御に関する主要な性能指標のひとつである。スラッジなどの対象物質を速く除去することで、環境汚染ベーパーの排出源を少なくし、タンクのベーパー空間をパージして換気する回数を減らすことができる。

■ 次節以降に、現在の最適と思われる基準に従ったタンク洗浄、ベーパーの排出、環境汚染ベーパーの制御を行うために必要な資機材や機能の概要について説明する。また、これらの作業を統合して一体化する改善計画についても説明する。

タンク洗浄の能力 

■ 専門知識・・・ タンク洗浄作業の請負者にとって、それまで培った経験や融通性があることは貴重な財産である。タンク洗浄作業の請負者は、原油、精製製品、廃水、酸性水、アスファルト、パラフィンなどを貯蔵するタンクについて、あらゆる種類のタンクの設計、タンクの用途、洗浄の対象物質をすべて処理する必要がある。タンク内の洗浄対象物質をスラリー化して除去するために、水洗浄法だけでなく、循環処理や化学処理の方法を活用する必要がある。

■ タンクのマンホールの締結ボルトを外して内部確認をしたとき、構造物の損傷や予想に反してスラッジの状況が違っていたり、これまで知られていなかった課題が見つかることは少なくない。このような未知の課題に対処するための判断力と対応できる資機材を備えておけば、安全性を高め、時間とコストを大幅に節約することにつながる。

■ 自動化・・・スラッジなどの対象物質を自動化した装置の洗浄方法によって除去すれば、タンク内の入槽作業時間を最小限に抑え、生産性を向上させ、タンク開放工程の時間を短縮することができる。つぎのような事項はその例である。

 ● 本質安全防爆仕様のカメラとライトを備えた遠隔制御のマンウェイ・キャノン(洗浄ノズル)は、タンク内の状況、スラッジなどの対象物質の状態、内部の雰囲気を可視化できる。

 ● 本質安全防爆型の遠隔操作車両(Remotely operated vehiclesROV)は、生命や健康に直ちに危険を及ぼす雰囲気や危険なタンク環境に対応できる。

 ● ハイ・ボリューム/ハイ・レベル・タンク・スイープ(High-volume, High-level Tank Sweep)方式は、高液位の状態で連続的に大量のスラリーを掃引(スイープ)し、人が入槽することなく、マンウェイの高さまでの対象物質を除去することができる。

 ● ハイ・ボリューム/ロー・レベル・タンク・スイープ(High-volume, Low-level Tank Sweep)方式は、低液位の状態で連続的に大量のスラリーを掃引し、人が入槽することなく、床から6インチ(15cm)以下の対象物質を除去することができる。

 ● ミニランス(Mini Lance)などの稼動時にも洗浄できる装置は、タンクを開放することなく対象物質をスラリー化し、除去することができる。                              

 ● 洗浄と脱ガスを同時に行うシステム。

■ 新しいロボットを組み合わせた新しいコンビネーション・システムとして、遠隔操作車両(ROV)、複数のロボット・マンウェイキャノンの洗浄ノズル、水中ポンプシステムを共通のプラットフォームで使用するものがある。1台のコントローラーで複数の機器を操作できるため、不測の事態に備えた融通性が高く、現場機器の物理的な設置面積を小さくすることができる。また、電動過油圧モジュールで駆動することにより、定格エンジンの問題を無くすことができる。

■ スラッジなどの対象物質の処理・・・スラッジなどの対象物質の除去と同様に、貴重な炭化水素を回収し、廃棄物を最小限に抑え、環境汚染になるベーパー排出を避けるために、現場でのスラッジなどの対象物質の処理には汎用性が重要である。このオプションとして、脱水・沈殿物の処理を行う二相遠心分離機や三相遠心分離機によるプロセス、プレート&フレーム・ベルト・フィルター・プレスがある。

■ 処理する技術は、廃棄物をタンク外に排出することを最小限に抑え、プラントの目的を達成する能力に基づいて選択される。このプロセスで発生するベーパーは、処理中に捕捉し、排気処理設備にかけるべきである。

環境汚染ベーパーの制御能力 

■ 安全性とコンプライアンス遵守を最適に実現するためには、初期の計画段階から、タンク洗浄と脱ガスプロジェクトに適切な環境汚染制御を組み入れるべきである。計画には、処理能力の調査やプラント関係者との調整を含むべきである。

■ 汎用性・・・タンク洗浄と同様に、あらゆる技術を活用して、可燃性ガスや有害ガスを低減・回収し、揮発性有機化合物が大気中へ放出するのを排除・削減しなければならない。これらのプロセスには、熱酸化や燃焼、ベーパーの中和/回収、炭素/化学吸着が含まれる。

■ 熱酸化・燃焼・・・最新の移動式熱酸化ユニットは、99.98%以上の分解効率や除去効率を達成する認証を受けている。オプションには、直接燃焼式と間接燃焼式のシステムがあり、熱量範囲は1.545 MMBTU/時(1,58147,430 MJ/時=37511,340 kcal/時)で、処理流量は 5006,000立方フィート/分(14170 /分)である。これらのシステムの規模の選択によって、タンクの脱ガス段階の時間を短くすることができる。

■ 移動式スクラバー(洗浄塔)・・・スクラバーシステムは、有害な大気汚染物質、揮発性有機化合物、汚染の原因になる臭気を安全かつ効率的に捕捉し、中和することができる。これらのシステムには、化学薬品、乾燥媒体顆粒、または活性炭が使用される。媒体の選択は、対象となる汚染物質に応じて行われ、除去効率;DRE<99.9%を達成するために組み合わせることもある。

■ フレアの交換システム・・・必要に応じて、フレア交換システムを使用して、定期保全時にプラントのフレア容量に合わせたり一時的に増強させる。このシステムは1つの設定で複数の装置やプロセスを処理することができ、環境に配慮しながら、工程に重要な中断時間を予定よりも早く対応することができる。

統合した一体化の利点 

■ タンク洗浄とベーパー排出の実施計画を成功させるには、計画の最初の段階から環境汚染のリスクや低減策を考慮しなければならない。実行策には、各作業に従事する作業者や資機材、請負者とプラント関係者間の緊密な協力が必要である。

■ タンク洗浄と環境汚染ベーパー排出制御のふたつの作業を実施するために、それぞれ別な請負者を採用することはよくある。しかし、作業会社が増えれば増えるほど、作業の遅れや効率の悪さが発生し、安全基準を統一することが難しくなる。また、各作業会社がそれぞれの責任に固執していけば、プロジェクト全体の最適な目標を見失いやすくなる。

■ そのため、プラントの事業者は、プロジェクトの全工程を計画・実行できる一社を選ぶようになってきている。請負会社がすべての要件を満たすことができれば、一社に選定する改善策には大きな長所がある。

■ 安全性・・・作業の請負会社は、発火性製品の入ったタンク、生命と健康への即時危険な雰囲気、構造物の損傷などの危険性のある環境において、安全に作業を遂行するための操業管理の専門的知識、訓練、テクノロジーを有していなければならない。

■ その他の安全に関する必要事項には、つぎのような項目を含んでいる。

 ● 顧客の環境・衛生・安全管理部門、メンテナンス部門、検査部門との調整

 ● 自動化や遠隔操作化の機器

 ● タンク入槽に関する米国石油協会(API)の審査適合

 ● タンク入槽の監督者向け危険性管理の訓練

 ● 狭い空間への立入りを最小限に抑えるよう計画された作業内容

 ● プロジェクト前に危険性の特定と緩和計画について、タンク所有者のチェックを受けるために提出

 ● 流出防止のためのプロジェクト・エンジニアリング

 ● 作業技能者を支援するための指導プログラムによる継続的なトレーニング

■ 効率性・・・多くの作業を単一の請負会社に集約することで、プラントの立場を優位に保つことができる。調達コストの削減、開放期間の短縮、時間と費用の総合的な節約が見込めるようになる。プラント事業所の担当者にとっても、窓口を一本化することで、認識の共有化と意思疎通のレベルが上がる。

■ 作業品質・・・品質に関する保有基準のレベルが高ければ、プロジェクト全体の実行策の改善が期待できる。定期的な状態把握や追加請求のような日常の業務は単一の請負会社から発信されるので、プラント事業所の担当者には分かりやすいものとなる。

■ このように統合して一体化した作業の利点は、タンク洗浄や環境汚染ベーパーの制御に限定されるのではなく、水の処理、バキューム処理、プラント内の移送、その他の関連する作業も含まれていることが重要となる。

■ 産業界は環境負荷の低減と全体的な費用対効果の向上を目指しているため、統合して一体化したタンク洗浄と環境汚染に対するベーパー制御は総合的に高い価値を供することになるだろう。

補 足

■「USAデバスク社」(USA DeBusk)は、2012年に設立された石油のダウンストリームにおける産業用クリーニング事業の会社である。タンク洗浄だけでなく、化学洗浄、反応器の洗浄、環境汚染ベーパーの排出制御、ピグ、デコーキング、ろ過などを手がけている。(同社のウェブサイトを参照。https://usadebusk.com/tank-cleaning/

■ このほか、タンク工事の一体化や入槽しないタンク洗浄工事について、各社からユーチューブに投稿されている。主なものは、つぎのとおりである。

 ●Mourik non-entry tank cleaning cannon2014/06/14

 ●BLABO® system - no-man entry crude oil tank cleaning2010/07/06

 ●Non Entry Systems Ltd - Tank Sweep2018/01/31

 ●Sludge cleaning method of crude oil tank2014/11/24

 ●Crude Oil Tank Cleaning Technology2015/05/13

 上記の最初の2つは同じような内容である。英国のMouric社は、1958 年以来、貯蔵タンクの洗浄を専門にし、タンク内に入槽しないで行う工法を採用しているが、デンマークのOreco社のBLABO システム(特許取得)を採用しているためである。

 国内でBLABOシステムを最初に導入した例は、「新タンククリーニングシステム(BLABOシステム)の概要と適用例」JXエンジニアリング、2017年第47回石油・石油化学討論会)が発表されている。 

■ 旧タイホー工業が1979年に開発した「COW工法」(Crude Oil Washing;原油共洗い洗浄法)は大型原油タンクに堆積した原油スラッジを入槽作業なしに安全に排出する工法で、国内外で使用されている。 「COW工法」はタンク浮屋根上に設置した洗浄ノズルから原油を噴射し、スラッジを破砕・溶解させて回収する工法で、原油で原油を洗う事から共洗い洗浄とも呼ばれている。原油を抜かずに原油中で洗浄する場合を「油中洗浄」、原油を抜き出した後に洗浄する場合を「気中洗浄」と呼ぶが、通常は気中洗浄で行われる。

COW工法」では、堆積したスラッジの9799%回収する事ができるといわれている。「COW工法」を行った後、通常、さらに「温水洗浄」を行うのが一般的である。「温水洗浄」は、浮屋根上に設置した洗浄ノズルから、5060℃の温水を噴射してタンク内に付着した油分を洗い飛ばし、温水の温度で固形油を溶解して油分を回収する。 「COW工法」と「温水洗浄」の例を図に示す。


■ タンク開放に関わる工事中の事故で当ブログに紹介した事例は、つぎのとおりである。(年月は発表時)

 ●「日本におけるタンク内部清掃作業に係る火災事故」20174月)

 ●「エクソンモービル名古屋油槽所の工事中タンクの火災事故」 20164月)

 ●「太陽石油の原油タンク清掃工事中の火災事故」 20173月)

 ●「JXエネルギー根岸製油所で浮き屋根式タンクから出火」20167月)

 ●「東燃ゼネラル和歌山工場の清掃中原油タンクの火災原因」20176月)

所 感

■ 日本は約43年前の1979年にCOW工法というタンク洗浄方法が開発され、使用されている。欧米では、この20年、タンク内に人が入槽しないタンク洗浄方法が一連の技術開発の原動力となっているという。日本と欧米の違いは洗浄ノズルの噴射能力であろう。写真は米国の洗浄ノズル・システムの噴射テストの風景である。これを見ていると、大容量泡放射砲システムを想起させる。このような噴射能力の高い洗浄ノズルであれば、タンク洗浄の工程が短くなるだろう。そのためには、ポンプなどの一連の付帯機器や制御装置が必要になろう。タンク開放工程が逼迫(ひっぱく)していないなどの理由で、技術開発をしないというのはありえないように思う。

 洗浄ノズルの噴射テストの例は、YouTubePower Tank Cleaning is The Solution With Superior Non-Man Entry Tank Sweeps From PRO-LINE HYDRALINK(強力なタンク洗浄はPRO-LINE HYDRALINK社から提案する入槽しないタンクスイープ工法によって解決です)(2020/03/03) を参照。 

■ タンク洗浄に関わる各作業(工事)工程は長い。作業会社が増えれば増えるほど作業の遅れや効率の悪さが発生し、各作業会社がそれぞれの責任に固執していけば、プロジェクト全体の最適な目標を見失うと指摘する。各作業会社を元請け会社が一括して請負う仕組みではなく、請負会社がすべての要件を満たせば、一社に選定する改善策に大きな長所が生れる。このため、欧米のプラントの事業者は、プロジェクトの全工程を計画・実行できる一社を選ぶようになってきているという。

 このようにして、タンク洗浄と環境汚染の制御に関する設備や機器をパッケージ化して、設置や移動の短縮、遠隔操作化、要員不足対策など図っている。これも、設置当初はバラバラの機器の寄せ集めだった大容量泡放射砲システムが次第にパッケージ化されていくのと似ている。


備 考

 本情報はつぎのインターネット情報に基づいてまとめたものである。

    Tankstoragemag.com,  Integrated tank cleaning and emission control (統合されたタンク洗浄と環境汚染の制御), August  30,  2022


後 記: 標題のひとつがタンク洗浄ということで、そう難しくはないだろうと考えていました。が、調べ始めると、日本ではなじみのない機器名などが出てきて、どんなものかを調べるのに時間がかかりました。しかし、検索エンジンのおかげで読みこなすことができました。画像検索ができるのは、おおいに役立っています。このブログを始めた10年前に比べれば、圧倒的な情報量がインターネットに登録されているのを実感します。逆にいえば、多くの情報から関係ありそうなものをしらみつぶしに調べ、そこから選択するのがコツになりますね。 (ところで、いまごろ虱(シラミ)はいないので、この言葉も風化していますが)  

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