今回は、2021年7月2日(金)にメキシコ南東部カンペチェ沖のメキシコ湾で海上に巨大な炎の輪が出現し、この現象がSNS上で「炎の目」や「サウロンの目」と呼ばれて話題になった事例を紹介します。
< 状 況 >
■ 2021年7月2日(金)メキシコ南東部カンペチェ沖で海上に巨大な炎の輪が出現した。 火炎の輪は海流でウネウネ回りながら約150mに広がっている。
■ 巨大な輪はSNS上で「炎の目」や「サウロンの目」と呼ばれ、オレンジ色の溶岩にも似た画像が拡散し、ゴジラが出てきそうと話題になった。
■ 炎の要因は深さ78mにある海中ガスパイプラインからのガス漏れである。事故は2021年7月2日(金)午前5時15分頃に起こった。
■ 現場はク・マロブ・サップ(Ku Maloob Zaap)油田のあるメキシコ湾で、メキシコの国営石油企業ペメックス社が運営する石油掘削施設と接続された海中ガスパイプラインである。火災の位置は石油掘削施設と約150m離れたところだった。
■ 火災の要因は石油の流出ではなく、石油掘削施設を構成する海中ガスパイプラインのガス漏れが原因だとペメックス社は説明している。海中ガスパイプラインが破裂してガスが漏れ、海上に出たガスが落雷によって引火したものとみられる。
■ この事故に伴う負傷者はいなかった。
■「炎の目」は、ユーチューブで映像が流れている。(つぎのYou Tubeを参照)
● 「Fire broke out on a subsea
pipeline of the Pemex oil and gas company in the Gulf of Mexico.」(2021/7/3)
●「Gas pipeline fire boils underwater
in the Gulf of Mexico | USA TODAY」(2021/7/4)
< 原 因 >
■ ペメックス社によると、悪天候の影響でパイプラインのガス燃料圧縮装置に問題が発生してガス漏れが起き、海面まで浮き上がったガスに落雷で引火して火災が発生したという。
■ 石油掘削施設内のターボ機械が雷雨と激しい雨によって影響を受けたという。嵐は非常に激しかったため、事故の前に石油掘削施設のポンプ・ステーションは停止していた。
< 対 応 >
■ ペメックス社は、ガス漏れを止めるために直径12インチ径(約30cm)のパイプラインの相互接続用バルブを閉止し、炎を制御するために破裂したパイプラインに窒素を注入したと述べた。
■ 火災は約5時間後の7月2日(金)午前10時半頃鎮火した。
■ ペメックス社は、パイプラインからの漏れの原因を調査すると述べた。
■ 環境保護団体は、会社の説明に納得しておらず、火災による環境への影響の詳細な調査を求めている。
補 足
■「サウロンの目」のサウロンは、ジョン・ロナルド・ロウエル・トールキンが書いた神話に登場する二代目冥王である。「指輪物語」(ロード・オブ・ザ・リング)では、直接的な姿はほとんど描写されず、「火にふち取られた目」という心象表現として登場する。2001年に映画「ロード・オブ・ザ・リング」(3部作)が製作され、「サウロンの目」が登場する。今回の「炎の目」は、映画の印象から「サウロンの目」と表現する人が出たと思われる。
■「ペメックス社」のク・マロブ・サップ(Ku Maloob Zaap)油田の石油掘削施設は、2021年8月22日(日)午後3時10分に火災事故があり、従業員4名が死亡し、45名が負傷している。事故の原因は石油掘削施設のメンテナンス不足によるものだという。
所 感
■ 世の中には想像を超える事象が起こるものである。この事象はこれまで見たこともない海上の「炎の目」で、事故というより不可思議なこととしてインターネットで拡散したという稀有な事例である。
■ この事故は直径12インチ径(約30cm)のガスパイプラインの破裂とみられる。石油掘削施設で生産される原油から液体とガスを分離し、ガス成分だけを取り扱っているガスパイプラインと思われる。事故前にパイプラインのガス燃料圧縮装置に問題が発生しており、ターボ機械が雷雨と激しい雨によって影響を受けたという。これがガスパイプラインの破裂にどのように関係しているかは分からない。一方、直径12インチ径(約30cm)のパイプラインから流出しているので、大量のガスで一度火が付いてしまったら、映像のように海が燃えているように映ったのは理解できる。
備 考
本情報はつぎのインターネット情報に基づいてまとめたものである。
・Cnn.co.jp, メキシコ湾に「炎の目」が出現 海中パイプライン火災, July 04, 2021
・News.yahoo.co.jp, メキシコ湾が燃えた日。海底パイプラインが破裂、消火に5時間,
July 06, 2021
・News24.jp, 「ゴジラ出現か」海に巨大な炎 メキシコ, July 05, 2021
・Bloomberg.com, Huge Fire Near Pemex Offshore Platform Was Due to a
Gas Leak, July 07, 2021
・Reuters.com, ‘Eye of fire’ in Mexican waters snuffed out, says
national oil company, July 03, 2021
・Geektech.me, メキシコ湾で水中火災がどのように発生したか、そしてこれが何につながる可能性があるか, July 03, 2021
・Washingtonpost.com, Fire on surface of Gulf of Mexico is
extinguished, but questions about pipeline leak remain, July
03, 2021
・Abc.net.au, Gulf of Mexico ocean fire extinguished after Pemex
pipeline rupture, July 03, 2021
・Mexiconewsdaily.com, Pemex
says lightning strike set gas on fire in Gulf of Mexico, July
06, 2021
後 記: 今回の事例は、7月31日に起こった「メキシコ・ペメックス社のタンクターミナルで落雷によるリムシール火災」の事故を調べていて、情報としては知っていました。しかし、ガスパイプラインの事故としてブログに掲載するには、「炎の目」や「サウロンの目」の方に話題がいってしまい、事故情報というより、「米国ワイオミング州で硫黄の山の幻想的な災の火災」( 2017年7月)と同様、興味深い話題として取り上げることとしました。しかし、メキシコのペメックス社は、8月22日(日)に石油掘削施設で火災を起こし、死傷者を出す事故を発生させました。何かがおかしい組織と思わざるを得ませんね。
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