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2020年12月15日火曜日

米国テキサス州でタンク開放清掃中にタンク火災、負傷者7名

 今回は、 2020125日(土)、米国のテキサス州ニュエセス郡コーパスクリスティにあるマゼラン・ミッドストリーム・パートナーズ社の石油ターミナルで、軽質原油貯蔵タンクの開放・清掃工事において作業員7名が負傷した事故を紹介します。

< 発災施設の概要 >

■ 発災があったのは、米国のテキサス州(Texas)ニュエセス郡(Nueces)コーパスクリスティ(Corpus Christi)にあるマゼラン・ミッドストリーム・パートナーズ社(Magellan Midstream Partners)の石油ターミナルである。

■ 事故があったのは、州間高速道路37号線沿いにある石油ターミナル内の軽質原油用の貯蔵タンクである。


< 事故の状況および影響 >

事故の発生

■ 2020125日(土)午前10時頃、石油ターミナルの貯蔵タンクまわりで火災があった。

■ 発災に伴い、ただちに消防署の消防隊が出動した。現場に到着した消防士は、貯蔵タンク地区で大きな炎と煙が上がっているのを見た。

■ 燃えているタンクは施設内のアクセス道路から約150ヤード(135m)離れたところにあったため、消火活動に使用する給水の確立には通報を受けてから1520分かかった。現場に到着して最初の対応をした消防隊は60名で、このうちコーパスクリスティ消防署の消防隊が48名で、このほかにコーパスクリスティの産業相互応援組織である製油所・ターミナル消防隊(Refinery Terminal Fire Company)、アナビル消防署の消防隊、ニュエセス郡の緊急対応要員だった。

■ コーパスクリスティ警察署は、午前1040分頃、ツイッターで追って通知があるまで地元住民は屋内にとどまるように連絡した。

■ 爆発・火災に伴い、請負会社の従業員7名が負傷した。うち4名は重傷で、サンアントニアの火傷治療センターへ救急ヘリコプターで搬送された。

■ 請負会社の7人は、定期検査の準備のため、内部の液が排出されたタンクの清掃を行っていた。タンクから排出された軽質原油の残液がまだタンク内に残っていたという。通常、タンク内はベーパーをすべて排除され、作業者がタンク内に入り、タンクを清掃するが、もしタンク底に何らかな残留物があれば、それを除去し、適切に処分する。

■ テキサス環境品質委員会は、火災発生後の大気のモニタリングをした。タンク施設と周辺地域の大気は健康上の懸念なく、安全な領域のまま推移しているという。

■ マゼラン・ミッドストリーム・パートナーズ社は、事故が発生したことを発表するとともに、「今日はマゼラン社にとって悲しい日です。負傷した男性とその家族の生活を最優先に考えることだと思いました。私たちの想いと祈りを彼らに捧げます」と述べた。

■ コーパスクリスティ市長は、125日(土)の記者会見で、爆発は地域の住民への被害や損害を引き起こさず、施設内に限定されたと述べた。

■ コーパスクリスティ港管理組合は、「市の港は石油ターミナルの爆発による影響を受けていないが、港としては警察の要請により協力・支援を行っている」と述べている。

■ 地元住民に出されていた屋内にとどまる避難勧告は午前1148分に解除された。

被 害

■ 石油ターミナル内の軽質原油タンクのまわりで火災が起き、タンクや設備に何らかの被害が出た。

■ 事故に伴う負傷者が7名発生した。

■ 地元住民には、一時、屋内にとどまるよう避難勧告が出された。

< 事故の原因 >

■ 事故の原因は、調査中である。

■ 消防署は、貯蔵タンクの火災原因を特定するには時期尚早だと語っている。コーパスクリスティ消防署、マゼラン・ミッドストリーム・パートナーズ社、ニュエセス郡によって事故について調査している。

< 対 応 >

■ 消防隊は火災を消火させるのに2時間ほど要した。消火後、消防隊は午後2時過ぎに現場から引き揚げた。

■ テキサス州知事は、125日(土)午後1230分に石油ターミナルの事故について「テキサス州は、マゼラン・ミッドストリーム・パートナーズ社とコーパスクリスティ市当局が緊密に協力して、緊急対応の取組みを支援し、事故で負傷した人への支援をしています」という声明を発表した。

■ 火災をドローンで撮影したメディアは映像とともに記事を掲載した。(Magellan Fire Update: 2 patients released from hospital, 5 in stable condition in San Antonio」)を参照。


補 足

■「テキサス州」(Texas)は、米国の南部に位置し、人口約2,900万人の州である。

 「ニュエセス郡」(Nueces)は、テキサス州南部に位置し、人口約34万人の郡である。

 「コーパスクリスティ」(Corpus Christi)は、ニュエセス郡北部に位置する郡庁所在地で、人口約28万人の港湾都市である。

■「マゼラン・ミッドストリーム・パートナーズ社」(Magellan Midstream Partners)は、主に原油・石油製品の輸送、貯蔵、流通に携わっている石油企業である。マゼラン社は、石油製品の9,800マイル(15,700km)のパイプラインに54箇所の石油ターミナルを運営しているほか、独立した石油ターミナルと海洋貯蔵施設を有している。コーパスクリスティの石油ターミナルには、原油・石油製品の貯蔵タンクが60基あり、総貯蔵容量は3,700万バレル(588KL)である。 

■「発災タンク」は軽質原油用という情報だけで、タンク仕様に関しては報じられていない。グーグルマップで調べると、発災タンクは直径約68mである。高さを14mと仮定すれば、容量は50,800KLとなる。従って、発災タンクは直径約68m×高さ約14m×容量50,000KL級の外部浮き屋根式タンクである。

■ 原油タンクの清掃段階の人身事故としては、つぎの事例がある。

 ● 20061月、「太陽石油の原油タンク清掃工事中の火災事故」

 当該事故では、死傷者が7名で、タンク内にいた請負会社の作業員5名が死亡、自力で脱出した2名が負傷した。事故の原因が調査されたが、断定はできず、つぎのような要因であるとされた。

 ① 原油スラッジ中の軽質油分の気化ガスがタンクマンホールの開放に伴う通気によって爆発混合気を形成し、清掃工事用の機工具類などによる何らかの着火源によって引火して火災になったものとみられる。

 ② 燃焼の三要素の観点から推定された要因はつぎのとおりである。

 ● 可燃性物質: 原油スラッジ中の軽質油分の気化ガス

 ● 酸素の供給: 自然通風および換気用ブロワーの運転による強制通風

 ● 着 火 源 : 特定できないが、つぎのような着火原因が考えられる。  

      ・ 人体および工具に帯電して起こる静電気スパーク

      ・ 投光器および配線の漏電やショートなどによる電気スパーク

      ・ 鋼製工具、機材接触による火花

     作業員の一人が「スタンド式の投光器が倒れ、しばらくして火が出た」と証言している。

     投光器は防爆型のスタンド式照明装置で、3台設置され、約1.4mの高さに位置に調整されていた

     が、固定されていなかった。このうちの1台が転倒していることが確認され、着火源は投光器に

     よる可能性が高いとみられ、実証テストが行われたが、断定できる結果は得られなかった。

所 感

■ 今回の事故は、20061月に起きた「太陽石油の原油タンク清掃工事中の火災事故」に類似しているように感じる。

■ 一方、今回の火災は、メディアがドローンで撮影した動画によれば、タンクまわりに設置した機材から炎が出ており、清掃工事で使用する機材に関係していると思われる。しかし、今回の事故と太陽石油の事故の双方には共通点が多いように思うので、事故の未然防止は 「太陽石油の原油タンク清掃工事中の火災事故」の対応が参考になるのではないだろうか。


備 考

 本情報はつぎのインターネット情報に基づいてまとめたものである。

    Industrialfireworld.com, 2Critical Injuries Reported in Corpus Christi Terminal Blast, December 5, 2020

     Fox23.com, 7 injured in oil storage tank explosion in Corpus Christi, December 5, 2020

     Caller.com, Seven Magellan employees injured, four in critical condition after refinery explosion, December 5, 2020

     Ccbiznews.com, 7 injured in Corpus Christi oil tank explosion, December 5, 2020

     Ksat.com, 7 injured in oil storage tank explosion at Magellan plant in Corpus Christi, firefighters say, December 5, 2020

     Khou.com, Tank fire at Magellan storage facility in Corpus Christi; 4 people critically injured, December 6, 2020

     Apnews.com, Storage tank explosion at Texas petroleum facility injures 7, December 6, 2020

     Wionews.com, Seven injured in fire at Magellan Corpus Christi, Texas, tank farm, December 6, 2020

     Kristv.com, Magellan Fire Update: 2 patients released from hospital, 5 in stable condition in San Antonio, December 5, 2020


後 記: 今回の事故報道で良かったのは、ドローンによる動画が報じられたことです。このドローンによる映像がなければ、まったく状況の分からない事故だったと思います。そして、最も残念だったのが、やはりこのドローンによる映像です。肝心の火災場所のズーム画面が字幕で隠れてよく見えません。オリジナルの映像だと、事故の要因の手がかりがわかるのではないかと思いました。発災事業所のマゼラン・ミッドストリーム・パートナーズ社はウェブサイトを有していますが、ニュース欄に事故発生の事実さえも載せていません。貯蔵タンクの開放・清掃・検査は全世界で定期的に行われる工事ですし、そこで起きた人身災害事故は貯蔵タンクに関連する人たちの関心事なのですけどね・・・ 

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