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2017年7月14日金曜日

イングランドの移動タンク貯蔵所施設で火災

 今回は、2017年6月26日、イングランドのウェスト・サセックス州クローリーダウンのロウファント・ビジネス・センターにある移動タンク貯蔵所施設で起った火災事故を紹介します。
(写真はYoutube.comの動画 から引用)
< 発災施設の概要 >
■ 事故があったのは、イングランド(England)ウェスト・サセックス州(West Sussex)クローリーダウン(Crawley Down)のロウファント・ビジネス・センター(Rowfant Business Centre)にある施設である。

■ 発災があったのは、イングランドの主要な国際空港のひとつであるガトウィック空港から約6マイル(10km)離れたところにある工業団地内の移動タンク貯蔵所施設だった。
ウェスト・サセックス州のロウファント・ビジネス・センター付近 (矢印部が当該工業団地)
(写真はGoogleMapから引用)
< 事故の状況および影響 >
事故の発生
■ 2017年6月26日(月)真夜中の午前1時15分頃、ロウファント・ビジネス・センターにある施設から火災が発生した。大きな黒煙が空に向かって舞い上がった。
(写真はYoutube.comの動画から引用)
■ 火災発生に伴い、ウェスト・サセックス消防署などから消防士60名と消防車両12台が現場に出動した。火災との戦いは夜通し続くこととなった。
 
■ 火災が起こったのは、移動タンク貯蔵所施設にあるタンクローリーが火災になったとみられる。タンクローリーの車両タンクには、暖房油やレッド・ディーゼル燃料を積載していたとみられる。

■ この火災により、近くに停めてあったトラックや保管されていた資材に延焼し、3つの会社が被害にあった。

■ 消防隊の撮影班によると、巨大な炎は消防活動で使用する高所放水車の先端より高く立ち上り、高さは100フィート(30m)以上に達していたという。

■ サルフォード消防署から参加した消防隊は、「我々は午前1時30分頃に出動要請があり、午前8時10分に署に戻った」といい、「火災は典型的なディーゼル火災だった」と語っている。

■ 最終的には、消火活動にガトウィック空港消防隊から特殊消火剤を搭載した空港用化学消防車の出動要請をしなければならなかった。空港用化学消防車の消火活動によって火災は消え始めた。火災は発災から約10時間後に鎮火した。

■ 事故に伴うケガ人はいなかった。また、施設のあるところは住宅地の近くではなかったので、住民が避難することはなかった。しかし、ウェスト・サセックス消防署は、近くの住民に対して煙が消えるまで、ドアと窓を閉めておくよう注意を呼びかけた。

■ ガトウィック空港では、火災による影響を受けた便はなかった。

被 害
■ トラックとタンクローリー車が多数焼損した。現場にあった油は130トンと報じられている。被災の範囲と程度は不詳である。
(写真はYoutube.comの動画から引用)
(写真はYoutube.comの動画から引用)
(写真はExpress.co.ukから引用)
< 事故の原因 >
■ 火災の原因は不明で、調査中である。警察は火災について見たり、聞いたりした目撃情報を求めている。

< 対 応 >
■ ウェスト・サセックス消防署は環境庁と密接に協力して業務を行い、地元の水系に影響が出ることがないように配慮している。

■ 火災に伴い出動した消防士は最終的に100名を超した。
(写真はMirror.co.ukから引用)
(写真はYoutube.comの動画から引用)
(写真は左:EXpress.co.uk、右: Mirror.co.ukから引用)
空港用化学消防車(左下)による消火準備
(写真はYoutube.comの動画から引用)
空港用化学消防車による消火活動
(写真はYoutube.comの動画から引用)
ガトウィック空港消防隊による消火活動
(写真はYoutube.comの動画から引用)
■ インターネットでは、メディアの報道に加え、火災の状況がドローンで撮影され、その映像が投稿されている。ガトウィック空港消防隊の空港用化学消防車による消火活動の状況はYoutube「Rowfantbusiness park fuel fire - Gatwick Airport Fire Service RosenbauerPanther in action」を参照。  

補 足
イングランドとウェスト・エセックス州の位置
(図はWikipedia.orgから引用)
■ 「イングランド」(England)は、グレートブリテンおよび北アイルランド連合王国(United Kingdom of Great Britain and Northern Ireland)、すなわちイギリスを構成する4つの国の一つで、ブリテン島の要地を占め、人口約5,300万人である。なお、連合王国はイングランド、スコットランド、ウェールズ、北アイルランドから構成され、立憲君主制国家であり、英連邦王国の一国である。
 「ウェスト・サセックス州」(West Sussex)は、イングランド南部に位置し、人口約83万人の州である。
 「クローリーダウン」(Crawley Down)は、ウェスト・サセックス州にあり、人口約4,600人の村である。
 
 ■ 「ロウファント・ビジネス・センター」(Rowfant Business Centre)は、クローリーダウンにある工業団地で、20社以上の企業が進出している。グーグルマップでは最新の地図でなく、発災した地区は造成中の状態にあり、事故前の状況はつかめない。
 「発災場所」は、移動タンク貯蔵所、すなわちタンクローリーの施設とした。しかし、タンクローリーの夜間駐車場なのか、タンク関連施設なのかは判然としない。ドローンによって撮影された映像がYoutubeに投稿されており、多数の車両が焼損しているのが分かる。しかし、焼損した車両が単なるトラックなのか、タンクローリーなのかははっきり分からない。ただし、最後に出火していたのは3台のタンクローリーと思われる
ロウファント・ビジネス・センター付近 (矢印の建設後の施設で発災)
(写真はGoogleMapから引用)
所 感
■ タンクローリーが道路で交通事故にあって火災を起こしたり、ローリー充填場で火災を起こす例はある。しかし、タンクローリーが夜間駐車していた施設で火災事故が起こり、多数のタンクローリーやトラックに延焼するという事例は聞いたことがない。施設内の資材が燃えているが、おそらく、タンクローリーから漏れた油やトラックの燃料タンクから漏れた油による延焼だと思われる。今回の事故が大きな火災になったのは、タンクローリーやトラックの燃料油が漏れて地上火災を起こしたためと思われる。

■ 当該事故の初期の消火戦略は、火災拡大を防ぐことを優先した防御的戦略だったとみられる。消防隊が出動し、資機材が出揃ったときには、すでに大きな火災になっていたとみられる。戦術としてはまわりの施設への冷却散水を行い、燃え尽きるのを待ったものと思われる。また、この背景には、近くに湖があり、水系の汚染についてかなり気を遣っている。
 夜が明けて火災の勢いが弱くなった段階で、積極的消火戦略に変更し、このために空港用化学消防車を要請したものと思われる。空港用化学消防車は最初に粉末消火剤を放出して制圧はできたが、完全に消火できなかった。このため、可搬式泡モニターを併用して泡消火を行ったとみられる。日本でも、空港用化学消防車が石油コンビナートの防災訓練に参加することはあるが、実際の火災消火に携わったことは無い。この点、 Youtubeの動画「Rowfantbusiness park fuel fire - Gatwick Airport Fire Service RosenbauerPanther in action」は貴重な映像といえよう。

備 考
 本情報はつぎのインターネット情報に基づいてまとめたものである。
  ・Express.co.uk,  Firefighters Tackle Blaze near Gatwick Airport as Eight Tanks of Diesel Burst into Flames,  June 26,  2017  
     ・Mirror.co.uk,  Firefighters Battle Massive Inferno at Oil and Gas Factory as Eight Tanks of Diesel Explode into Flames,  June 26,  2017 
     ・Surreymirror.co.uk,  5 Photos of Firefighters Battling Huge Flames near Turners Hill after Diesel Trucks Catch Alight,  June 26,  2017
     ・Spiritfm.net,  Watch: 100 Firefighters Tackle Diesel Blaze in West Sussex,  June 26,  2017
     ・Westsussex.gov.uk, Rowfant Business Centre fire,  June 26,  2017
     ・Sussex.police.uk,  Serious fire at Rowfant fuel depot being investigated as arson,  July  07,  2017
     ・Crawleynews24.co.uk,  Overnight fire at Rowfant Business Centre,  June 26,  2017
     ・Youtube.com,  Rowfant Fuel Depot Fire 26.6.17 full Edit,  June 26,  2017
     ・Youtube.com,  Rowfant Fuel Fire - Live drone recce for the command team,  June 26,  2017
     ・Youtube.com,  Rowfant business park fuel fire - Gatwick Airport Fire Service Rosenbauer Panther in action,  June 26,  2017
     ・Youtube.com,  Rowfant Business Park 1,  June 26,  2017


後 記: 今回、一番時間を費やしたのが発災場所の特定です。はっきりと8基のタンクと報じているメディアがあり、グーグルマップで探しましたが、わかりません。工業団地らしい場所はあるのですが、該当するようなところがありません。火災状況の映像が動画で発信されていますので、映像とグーグルマップを見比べてみてやっと分かりました。グーグルマップの工業団地の地図が最新ではなく、発災場所が造成中のものだったことです。従って、発災前の地図は無いということです。タンクがあるのかどうかは、動画の映像でしか判別がつきませんので、何回か見ましたが、どうやら無さそうな感じです。発災した場所は分かったのですが、報道では発災事業所が明らかにされていませんでした。意図的に公表していない(海外報道ではよくある)のかと思いましたが、あとから考えると、どうやらはっきりしていないようです。発災施設を日本流に移動タンク貯蔵所の施設としましたが、実際はタンクローリーやトラックが夜間駐車していただけの場所ではないかという気がしています。
 なにかモヤのかかったような事故情報ですが、空港用化学消防車(オーストリアのローゼンバウアー社製のパンター)が一般の火災消火に携わっているドローンによる動画が公開されているので、ブログで紹介することとしました。


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