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2017年3月15日水曜日

東燃ゼネラル和歌山工場の清掃中原油タンクの火災原因(中間報告)

 今回は、2017年1月18日に起きた東燃ゼネラル石油和歌山工場の清掃中の原油タンクの火災について、2月28日、原因調査の中間報告が発表されたので、この内容を紹介します。
(写真はMatomame.jpから引用)
< 発災施設の概要 >
■ 事故があったのは、和歌山県有田市にある東燃ゼネラル石油の和歌山工場である。和歌山工場の製油所精製能力は132,000バレル/日である。

■ 発災があったのは、和歌山工場のタンク地区にある原油貯蔵タンクである。タンクは直径約75.5m、高さ21.3mで、当時、清掃作業のため内部に油は無く、空だった。
有田市の東燃ゼネラル石油和歌山工場付近
(写真はGoogleMapから引用)
< 事故の状況および影響 >
事故の発生
■ 2017年1月18日(水)午前6時45分頃、東燃ゼネラル石油和歌山工場の原油貯蔵タンクから火災が起った。出火したのは、大小17基のタンクが並ぶエリアにあるタンクの1基で、清掃作業の時間外だった。発災のあったタンクは昨年11月から内部の原油を抜いて清掃中で、内部に油は無かったが、原油のスラッジが残っていた。

■ 東燃ゼネラル石油和歌山工場の発表では、火災は1月18日の午後15時半頃おさまったという。(鎮火時間は分かっていない)事故の状況については「東燃ゼネラル和歌山工場で清掃中の原油タンクの火災」を参照。

■ 2月28日(火)、火災前のタンク内の残存スラッジの状況は幅約6m×長さ約20m、高さ0.6~1.6mでタンクのマンホール付近に集積されていたと東燃ゼネラル石油は発表した。(図を参照)
タンク内の残存スラッジの状況(火災前)
(図はTonengeneral.co.jp から引用)
被 害
■ 原油タンク内部が焼けた。被災の状況は確認中だという。

■ 事故に伴う負傷者はいなかった。

< 事故の原因 >
■ 東燃ゼネラル石油は、2017年2月28日、タンク火災の原因について中間報告を発表した。
それによると、原油のスラッジ中に生成した硫化鉄の自然発火による可能性が高いとみられる。

■ 中間報告では、直接原因・間接要因についてつぎのように述べられている。
直接原因
 ● スラッジ清掃作業を中断していた早朝の作業員のいない、火の気のない時に発生したタンク内部火災であるため、容器内に残存する可燃性物質 (スラッジ、溶解用軽油、資機材等)、着火源 (硫化鉄等の自己発火性物質、静電気、落雷、ウエスにしみ込んだ油の酸化による発熱、電動工具、放火等) を調査した。
 ● 当該タンクから排出されたスラッジの分析結果から、乾燥すると自己発火性のある硫化鉄が相当量含まれていることがわかった。
 ● 当該スラッジについて発火試験を実施し、自然発火し得ることを確認した。 
 ● 硫化鉄以外の発火要因については、作業記録、使用した機材リストから可能性は低いと考えられるが、タンク内の現場検証時に最終確認する予定。

間接要因 
 ● スラッジの安全管理 (硫化鉄の発火対策) に関する工場規程類での記述、施工者側手順書での記述、工場側、施工者側の硫化鉄自己発火のリスク認識、硫化鉄発火対策の具体的な手順に関する理解度を確認し、再発防止のために改善すべき課題が明確となった。 

< 対 応 >
■ 東燃ゼネラル石油は、2月28日の中間報告で、今後の対応(予定)について、つぎのように述べている。
 ● 現場検証による硫化鉄以外の発火要因の最終確認は未了であるが、タンク清掃における硫化鉄の発火対策に関する工場規程類に硫化鉄発火対策の具体的な手順を記載する。
 ● タンク清掃に関係する従業員および施工者の社員に対して、硫化鉄自己発火のリスク認識を高め、硫化鉄の発火対策に関する具体的な手順を遵守するように教育を行う。

補 足
■ 「和歌山県」は、近畿地方にあり、紀伊半島の西側に位置し、人口約95万人の県である。「有田市」(ありだ市)は、和歌山県中部に位置し、人口約30,000人の市である。

■ 「東燃ゼネラル石油」は、2000年に東燃とゼネラル石油が合併してできた石油精製・石油化学の会社である。川崎、和歌山、堺、千葉(市原)に工場がある。
 「和歌山工場」は、軍用航空揮発油・潤滑油を製造する国策会社(東亜燃料)として1941年に操業を開始した歴史のある製油所である。1945年の空襲で壊滅したが、1950年に操業を再開した。精製能力は170,000バレル/日であったが、現在は132,000バレル/日である。原油タンク23基、製品・半製品タンク364基を保有している。

■ 発災のあった原油タンクは直径約75.5m、高さ21.3mと報じられており、容量90,000KL級の浮き屋根式タンクと思われる。しかし、中間報告ではタンク仕様について言及されていない。

所 感
■ 発火の原因は、予想どおり、タンク内で生成した硫化鉄が着火源になった可能性が高いとみられた。硫化鉄は湿潤状態にあれば、発火することはない。湿潤状態に保つことは経験で受け継がれてきたと思われ、ここに盲点があったと思われる。

■ 今回、最も感心したのは、東燃ゼネラル石油が当該タンク火災事故について本格的な原因調査に着手して、中間報告を公表したことである。
 2016年6月に起きた「JXエネルギー根岸製油所で浮き屋根式タンクから出火」では、事故発生の発表は行われているが、その後の状況(原因調査)についての発表は行われていない。この事故も当該事故と同じような事故要因があるのではないかと思われ、原因調査結果と対応策が公表されていれば、タンク清掃中の火災事故は起こっていなかったのではないかと思ってしまう。

備 考
 本情報はつぎのインターネット情報に基づいてまとめたものである。
  ・Tonengeneral.co.jp,  和歌山工場での火災に関する事故調査委員会の中間報告について,  February 28, 2017
    ・Juntsu.co.jp, 東燃ゼネラル石油、和歌山工場での火災に関する事故調査の中間報告を公表, March 07,  2017
  ・Mainichi.jp , 有田の工場火災 配管に穴や接続不良 東燃、中間報告,  March  01, 2017  


後 記: 東燃ゼネラル石油和歌山工場では、1月22日に起きた潤滑油製造装置の火災がテレビや新聞の全国版で報じられ、この4日前に起きた原油タンクの清掃中の火災についての原因調査情報は開示されることはないだろうと思っていました。しかし、予想(?)に反して中間報告が出されたことに驚くとともに、最終報告が公表されることに期待しています。横浜、和歌山とタンクの開放中の火災事故が続いており、事故の再発防止には、事業者や公設消防からの情報公開が必要であることははっきりしています。

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