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2015年8月16日日曜日

米国オハイオ州の地下貯蔵タンクが落雷で爆発、地表にクレーター

 今回は、2015年8月3日、米国オハイオ州フェアフィールドのディキシー・ハイウェイ沿いにあるガソリンスタンドの地下貯蔵タンクに落雷があり、爆発した事故を紹介します。
(写真はAol.comから引用)
< 発災施設の概要 >
■ 発災施設は、オハイオ州フェアフィールドのディキシー・ハイウェイ4871にあるガソリンスタンドである。 

■ ガソリンスタンドには、容量10,000ガロン(38KL)の地下貯蔵タンクが3基設置されていた。3基のうち、1基がディーゼル燃料用で、2基がガソリン用だった。
                             フェアフィールドのガソリンスタンド付近   写真はグーグルマップから引用)
< 事故の状況および影響 >
事故の発生
■ 2015年8月3日(月)午後6時前、オハイオ州ディキシー・ハイウェイ沿いにあるガソリンスタンドの地下貯蔵タンクに落雷があり、内部ガスに引火して爆発が起った。ガソリンスタンドに設置されていた3基の地下貯蔵タンクのうちの1基が爆発したものとみられる。

■ 爆発後に地上には、直径40フィート(12m)、深さ8フィート(2.4m)のクレーターが残った。落雷があったとき、ガソリンスタンドには、二人の客がいたが、幸いなことにガソリンを給油していなかった。 

■ 近くの住民によると、雷の稲妻が光ったあと、木よりも高いファイヤーボールが上がったのが見えたという。発災場所から約半マイル(800m)離れた家のベランダから目撃したロジャー・タッカーさんは、「ものすごい音だったよ。ベランダの椅子に座っていたんだが、震動でひっくり返りそうになったよ。目をあげると、すぐにふあっとした黒い煙があがり、随分近くに感じたね」と話している。
 フェアフィールド消防署のドナルド・バネット署長は、「私は消防に45年携わっているけれども、今回のような事象は見たことがない。第一、地下貯蔵タンクは火災の可能性が低いことから設置されているのだから」と語った。

被 害
■ 事故に伴う負傷者は無かった。 
■ ディーゼル燃料用の容量10,000ガロン(38KL)の地下貯蔵タンクが損壊した。

< 事故の原因 >
■ ディーゼル燃料用地下貯蔵タンクのベント部に落雷があり、可燃性ガスに引火して爆発を起こしたものとみられる。
 しかし、消防当局の中には、通常、ディーゼル燃料はファイヤーボールを伴う爆発を起こしにくいことから疑問点もあるという。原因は調査中である。

< 対 応 >
■ 8月3日午後5時50分、フェアフィールド消防署が出動し、対応に当たった。消防隊は、距離を保持しつつ、炎に泡を放射した。消防隊は、雨、ひょう、雷に悩まされながらの消火活動だった。ハミルトン消防署が応援で現地に駆けつけた。

■ 消防隊は、容量10,000ガロン(38KL)の地下貯蔵タンクがほかに2基あることを懸念して、半径2,000フィート(610m)以内の住民に避難指示を出した。フェアフィールド消防署のバネット署長は、「心配しすぎだと思うでしょう。しかし、これまで学んだことからいえば、もし30,000ガロン(113KL)のディーゼル燃料とガソリンが爆発すれば、何が起こるかということです。相当大きなファイヤーボールが生じるでしょう」と語った。

■ 約1時間半後に、避難指示が解除され、住民は自宅へ戻った。

■ 現場では、 8月3日(月)の夜になっても、ディーゼル燃料の油臭がわずかに残っていた。警察は夜通し警戒に当たった。
 8月4日(火)の朝、タンクの製作に使用されたと思われるファイバーグラスの焼けた臭気がわずかにしていたとフェアフィールド消防署の署長は語った。

■ 消防署によると、8月4日(火)に、隣接して埋設されている2基の地下貯蔵タンクを掘り起こし、問題の有無を確認するという。オハイオ州環境保護庁、州消防保安官、地下水協会、市の用役部が現場に立入りするという。
(写真はTwitter.inから引用)
(写真はWcpo.com から引用)
(写真はDailymail.co.ukから引用)
(写真はDailymail.co.ukから引用)
(写真はWlwt.com から引用)
(写真はDailymail.co.ukから引用)
(写真はWcpo.com から引用)
補 足
■ 「オハイオ州」(Ohio)は、アメリカ合衆国中西部の北東にある州で、人口は約1,150万人である。
 「フェアフィールド」(Fairfield)は、オハイオ州の中央部に位置する郡で、人口約146,000人の郡である。。
 フェアフィールドのディキシー・ハイウェイ4871にあるガソリンスタンドの事故前の写真はつぎのとおりである。
発災場所のガソリンスタンド施設 (矢印が地下貯蔵タンク設置場所)
(写真はグーグルマップから引用)
発災場所のガソリンスタンド施設 (矢印が地下貯蔵タンク設置場所)
(写真はグーグルマップ・ストリートビューから引用)
■ 米国におけるガソリンスタンドの地下貯蔵タンクの構造例は図を参照。発災タンクの容量が10,000ガロン(37KL)であるので、標準的なサイズは直径2.5m×長さ8.0mである。地下貯蔵タンクについては米国でも、漏洩事故から地下水の環境汚染の問題があり、米国環境保護庁(EPA)が厳しい規制を行っている。
 タンクの材質は、一般に、①鋼製またはアルミニウム製タンク、②鋼製またはアルミニウム製タンク+外面防食措置、③メタルライナー(鋼またはアルミニウム)+ファイバーグラスまたはカーボンファイバーのライニング、④FRP(繊維強化プラスチック)製タンクに分けられる。米国でも、二重殻のFRP製タンクが市販されている。発災タンクは、事故後の陥没およびファイバーグラスの燃えた臭いからすると、 FRP製タンクだと思われる。
 なお、当ブログで地下貯蔵タンクの事故について紹介したのは、つぎのとおりである。
ガソリンスタンド用地下貯蔵タンクの構造例
(写真はEPAウエブサイトから引用)
所 感
■ 落雷によるタンク火災事故がめずらしくないという米国でも、過去に例のないガソリンスタンド用地下貯蔵タンクの落雷による爆発事故である。しかも、爆発が起こりにくいといわれるディーゼル燃料による事故である。これまで考えられないような事の起こるのが、現実であることを物語る事例である。

■ 落雷によるエネルギーが極めて大きかったのか、ディーゼル燃料内に軽質分が混入していたのか、地下貯蔵タンクの構造に不具合があったのかなど疑問はいろいろある。このような特異な事例は、原因が広く公表されることを期待したい。


備 考
 本情報はつぎのインターネット情報に基づいてまとめたものである。
   ・WLWT.com, Giant Crater Left behind after Lightning Strikes Underground Fuel Tank,  August 03, 2015  
    ・Aol.com,  Lightning Strikes 10,000 Gallon Underground Fuel Tank, Creates Giant Crater,  August 04, 2015
    ・Washingtonpost.com,  Lightning Blamed for Fuel Tank Explosion at Ohio Gas Station,  August 04, 2015   
    ・Wcpo.com, Cleanup begins after lightning sparks explosion at Dixie Highway Gas Depot in Fairfield,  August 04,  2015
    ・Journal-news.com,  Clean-up of Fuel-tank Explosion to Involve Multiple Agencies,  August 04, 2015
    ・Apusa.us, Lightning Hits Tank: Lightning Strikes Fuel Tank,  August 05, 2015
    ・Dailymail.co.uk, Lightning Strikes an Underground Fuel Tank in Ohio Sparking Huge Fireball and Leaving a 40-Foot Crater,  August 05, 2015



後 記: ガソリンスタンドなどの地下貯蔵タンクに関する事故は、特別なものだけを紹介するようにしています。それにしても特異な事故です。爆発後にクレーターが生じたということもあり、ローカルな事故ではありますが、米国内で広く報じられているようです。
 ところで、この事故をまとめているとき、中国天津で大きな爆発事故があり、日本でもトップニュースで報じられ、その後も続報が伝えられています。当初、危険性物質の爆発ということで、油貯蔵タンクの事故かと思いましたが、爆発が花火のような破裂の仕方をしていましたので、石油ではないだろうと感じました。中国の事故は情報が乏しく、映像(画像)は多く流れてきますが、今回の事故もそのようです。最近、中国では、最初の爆発事故から油貯蔵タンクが巻き込まれて火災になった例もありますので、少し注目しておこうかと思っています。 


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