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2014年3月9日日曜日

バングラデシュの石油貯蔵所で火災によって死傷者9名

 今回は、2014年2月28日、バングラデシュのチッタゴン市にあるジャムナ・オイル社の石油貯蔵所で火災があり、工事作業員9名が死傷した事故を紹介します。
バングラデシュのチッタゴン市で起こった火災事故の現地と搬送先の病院 
 (写真はBdnews24.comおよびTheDailyStar.netから引用
<事故の状況> 

■  2014年2月28日(金)午後6時過ぎ、バングラデシュのチッタゴン市にある石油貯蔵所で火災があり、死傷者が発生する事故があった。火災事故があったのはチッタゴンのパテンガ地区にあるジャムナ・オイル社の石油貯蔵所で、工事作業員9名が被災した。
                              チッタゴン市パテンガ地区付近 (写真はグーグルマップ から引用
■ チッタゴンEPZ警察署のアブル・マンスール氏によると、火災は、 228日(金)午後615分、チッタゴンのカルナフリ川沿いの国営製油所の石油貯蔵所であるジャムナ・オイル社で発生したという。この事故に伴って負傷者が発生し、チッタゴン医科大学病院に搬送された。
 負傷したのは、アブドゥル・ラヒムさん(45歳)、クハエル・アーメドさん(50歳)、シャムス・ハクさん(50歳)、ムドゥ・ナジムさん(40歳)、ジャムセドさん(45歳)、ハッサンさん(50歳)、ロクマンさん(55歳)、ジャマールさん(55歳)、ジャビルさん(40歳)の9名である。医者によると、被災者のうち5名の容態は重症だという。全員、石油貯蔵所の従業員だという。その後、3月5日(水)にシャムス・ハクさんが病院で亡くなった。 

■ 火災発生に伴い、消防隊が出動した。消防・民間防衛部のジャシム・ウッディン次官は、火災は消防隊によって1時間ほどで鎮火したと語った。ウッディン次官によると、防油堤内の石油供給ラインで溶接を行っているときに火が出て、9名の作業員が負傷したという。火災がすぐに消されたので大事故に至ることが回避できたと、ウッディン次官は語った。

■ デイリー・スター誌は、石油貯蔵所の石油タンクが爆発して火災となり、けが人が出たと報じている。目撃者および負傷者のひとりであるラヒムさんによると、夕方、タンクNo.11のゲートの下で作業を行っていたとき、突然、爆発が起こり、タンクの屋根が噴き飛んだという。火がまわりに燃え上がり、作業員9名が巻き込まれたと、ラヒムさんは付け加えている。

■ 消防関係の情報源によると、当初、火災が溶接の火花から発生したのではないかと思われていたという。チッタゴンEPZ消防署のバハール・ウッディン署長は、現在のところ原因は分かっていないと答えている。
当局によると、チッタゴンEPZ消防署管内から2つの消防隊が現場に出動し、午後7時30分頃、火災は消火したという。

■ ジャムナ・オイル社業務執行取締役のアリム・ウッディン・アーメド氏は、午後6時10分頃、石油貯蔵所のタンクNo.11で溶接作業を行っているときに火災が発生したと語っている。火災は空だったので、火は20分も経たずに制圧することができた。

■ チッタゴン消防・民間防衛部のモハマド・ヤヒア次官によると、火はタンクNo.11のパイプラインの外側で噴き出したという。パイプラインまわりに滲み出していた油に何らかの火花で着火して火災になったのではないかと、ヤヒア次官は付け加えた。炎は、まわりの油がこぼれて滲み出ていたところに広がった。ヤヒア次官によると、現場に出動したのは、チッタゴンEPZのバンダルとアグラバドの消防隊、海軍および空軍の消防隊で、午後6時35分に鎮火したという。

■ EPZ消防署のモハマド・バハルディン署長がダッカ・トリビューン誌に語ったところによると、タンクNo.11において溶接作業を行っていたときに最初の火災が起きたという。午後6時20分頃、ガソリンタンクで火災が発生し、つぎに付近の2箇所の地面上で燃え上がり、9人が巻き込まれた。ジャムナ・オイル社の取締役によると、タンクの中にガソリンは入っていなかったので、火災は強いというものでなかったという。タンク壁はガソリン分で濡れてはいたが、溶接の火花でなぜ火災に至ったのかはわかっていない。3月1日時点では、損害規模は分かっていない。

■ 関係当局からの話によると、火災発生には石油貯蔵所の管理者および(保全関係)エンジニアの業務責務上の過失があったとみられている。負傷した熟練工たちは現場にいたものみられるが、石油貯蔵所の石油計測機器について手動式から自動式に換えるという危険な作業中に被害に遭ったと、ジャムナ・オイル社の関係者が匿名を条件に語っている。さらに、そのような危険な交換作業は夕方の時間帯に行うべきでないと述べ、調査の必要がある事項だと語った。

■ 28日(金)の火災事故が及ぼしたかもしれない影響の大きさを説明しようと、ジャムナ・オイル社とバングラデシュ・ペトロリアム社(BPC)は、火災を制圧するため、当時、有効な処置がとられていなければ、隣接する他の石油貯蔵所は大混乱に陥った可能性があると述べている。さらに、その及ぼす被害は甚大で、国の石油供給に大きな支障を来たしただろうと付け加えた。公式な記録によれば、この国営の石油配送会社の石油貯蔵所では、現所長の在籍期間、この1年半の間に職員の過失による火災事故が3件起きている。

■ ジャムナ・オイル社の石油貯蔵所で起きた火災の背後要因についてバングラデシュ・ペトロリアム社に質問しても、同社は石油貯蔵所の石油計測機器について手動式から自動式に換える作業中に火花によって火災が起こったと答えるのみである。パドマ・オイル社とメグナ・オイル社の石油貯蔵所では、作業経験のない職員や請負業者を雇い、油を盗んだり、わいろの金が横行しているという申し立てもあっている。

■ 3月1日(土)、バングラデシュ・ペトロリアム社は、火災事故の原因を調査して報告書をまとめるため、マーケット部門執行役員のレズワン・ホサイン氏を長とする5人の委員会を3月2日に結成すると発表した。消防・民間防衛部のジャシム・ウッディン次官によると、消防部門に強力な調査委員会が設けられたという。

補 足
■ 「バングラデシュ」は、正式にはバングラデシュ人民共和国で、人口約15,000万人である。首都はダッカで、イスラム教徒主体の国であるが、イギリス連邦の加盟国である。南はインド洋に面し、ベンガル湾に注ぐガンジス川があり、豊富な水資源を有する。
 「チッタゴン」は、バングラデシュ南東部に位置し、市域人口は約250万人である。チッタゴンは国内最大の港があり、バングラデシュで2番目に大きい都市である。チッタゴンEPZは、チッタゴンの輸出加工区(Export Processing Zone)で、パテンガ地区の近くにある。
■ 「バングラデシュ・ペトロリアム社」(Bangladesh Petroleum Corp.BPC)は、バングラデシュの国営石油会社である。BPC100%子会社であるイースタン・リファイナリー社(Eastern Refinery Ltd)が運営するチッタゴン製油所がバングラデシュ唯一の製油所である。この製油所で精製される石油製品のほかは海外からの輸入に頼っている。このために石油貯蔵所が多い。
 「ジャムナ・オイル社」(Jamuna Oil Co.)は、1964年に設立されたBPC傘下の石油会社で、石油製品の販売を行い、チッタゴン製油所近くのパテンガ地区に石油貯蔵所を有している。
 「パドマ・オイル社」(Padma Oil Co.)はラングーン・オイル社という歴史ある石油会社であるが、1985年にBPCの傘下になり、現在の名称になった。「メグナ・オイル社」(Meghna Oil Co.)もBPC傘下の石油会社である。パドマ・オイル社とメグナ・オイル社の両社ともチッタゴンに石油貯蔵所を保有している。
 Wikimapiaの地図によると、イースタン・リファイナリー、パドマ・オイル、メグナ・オイルの場所は分かるが、ジャムナ・オイル社の石油貯蔵所の位置が判然としない。イースタン・リファイナリーのタンク地区がジャムナ・オイル社の石油貯蔵所としての位置付けになっているのではないかと思われる。
チッタゴン市パテンガ地区の製油所および石油貯蔵所 
 (写真はWikimapia.orgのマップ から引用
                                   チッタゴン市パテンガ地区付近     (写真はグーグルマップ から引用
所 感
■ 事故状況について多くの関係者の話があるが、食い違っており、信頼性に欠ける。ただ、総合すると、タンクは空であったこと、計測機器の交換で火気使用工事を行おうとしていたときに事故が起こったことは間違いないだろう。しかし、タンク内で爆発があったのか、タンク外だったのか分からないし、作業を行っていた被災者の近くに油があったのか、配管から流出したものなのか分からない。

米国アーカンソー州のテプコ社で工事中に爆発したタンク
■ このように稀な事故のように思えるが、類似事故はある。
 2009年5月12日、米国アーカンソー州にあるテプコ社の石油貯蔵所で開放中のタンクが爆発し、3名の工事作業員が死亡した。爆発したタンクは容量約1万KLのガソリン用だったが、事故当時は供用中でなく空だった。このタンクにオイルレベルを計測する新しい装置を設置する計画で、3人は爆発した日の午後にタンク内で新しい装置を取り付ける予定だったが、何らかの原因で着火し、タンクが爆発したものである。

■ タンクの工事中における事故が無くならないことから、米国CSB(化学物質安全性委員会)が2010年2月に安全資料「タンク内外の火気工事における人身事故を防ぐ7つの教訓」をまとめている。
 今回の事故は、危険性のあることが分かっていても、工事中の事故が無くならないことを改めて認識する事例である。

備 考
 本情報はつぎのようなインターネット情報に基づいてまとめたものである。
      ・TheDailyStar.net,  9 Injured in Jamuna Oil Depot Fire,  February 28, 2014
      Bdnews24.com, 9 Injured in Jamuna Oil Depot Fire,  February 28, 2014   
      ・Bdnews24.com, Committee to Probe Jamuna Oil Depot Fire,  March 01, 2014
      ・DhakaTribune.com, Nine Receive Burns as Jamuna Oil Depot Catch Fire,  March 01, 2014
      ・Daily-sun.com, Jamuna Oil Depot Catches Fire in Chittagong,  March 01, 2014
      ・TheFinancialExpress-bd.com, Negligence Attributed to Jamuna Oil Depot Fire,  March 02, 2014
      ・Unbconnect.com,  Jamuna Oil Depot Fire Victim Dies,  March 05, 2014



後 記: 事故情報を読んでいくと、その国の国情が見えるときがあります。開発途上国の石油パイプラインの漏れ事故では、住民が群がって容器に油をすくい取る事例があります。今回の事例では、石油貯蔵所で油が盗まれたり、わいろが横行しているという話が出てきます。貧しさから来るのでしょうか。 東日本大震災から3年経ちますが、当時の混乱時に店への略奪などが無く、皆で助け合う人々に海外から驚きの声があったということを思い出します。
 ところで、今回は発災事業所の場所を探すのにいろいろ調べましたが、結局、はっきりとは分かりませんでした。その過程で、グーグルマップの機能が改善されていることを知りました。最初、戸惑いましたが、使ってみると面白い。例えば、平面図のビューを傾斜させる機能があります。今回のチッタゴン市パテンガ地区についてやってみると、下のように遠くにベンガル湾が見え、飛行機から見ているような気持ちになりました。
 (写真はグーグルマップ から引用


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