2014年3月16日日曜日

ニュージーランドの石油ターミナルで地すべりによる油流出

 今回は、2014年3月5日、ニュージーランドのカンタベリー地方クライシスチャーチ市にあるモービル社リトルトン・ターミナルで、豪雨によって丘が地すべりで崩れ、ジェット燃料油のタンクが激しい損傷を受けて、油が漏洩し、一部が海へ流出した事故を紹介します。
ニュージーランドのモービル社リトルトン・ターミナルで発生した地すべりと被災タンク 
 (写真はTvnz.co.nzの動画から引用)
<事故の状況> 
■  2014年3月5日(水)午後2時頃、ニュージーランドのカンタベリー地方クライシスチャーチ市にある石油ターミナルで油が漏洩する事故があった。事故があったのはクライシスチャーチ市の港にあるモービル社のリトルトン・ターミナルで、豪雨によって丘が地すべりで崩れ、ジェット燃料油のタンクが激しい損傷を受けて、油が漏洩し、一部が海へ流出した。
                                             クライシスチャーチ市付近   (写真はグーグルマップ から引用
■ 3月4日の夜、この地方に嵐と猛烈な豪雨が襲った。3月5日(水)午後2時頃、ターミナルに接する丘が地すべりを起こし、大量の岩と土砂が斜面を滑落して燃料タンク2基に衝突した。ジェット燃料油タンク内には約1,200KLの油が入っており、地すべりによる損傷を受け、内部の油が漏洩した。被災したタンク2基のうちガソリンタンクも損傷を受けたが、漏れは無かった。

■ 大量のジェット燃料油がタンクから漏洩し、タンクの防油堤内に溜まった。モービル社はただちに緊急事態対応の体制をとり、消防署および警察と協力して作業を始めた。消防署の広報担当によると、消防隊はモービル社とともに漏れた油をポンプで回収し、ターミナル内の別なタンクに移送しているという。

■ 消防隊はターミナルの地面に漏れたジェット燃料油をポンプで回収したが、すでに港湾内に約1,500リットルの油が流出してしまった。エンビロンメント・カンタベリー(Ecan)の女性広報担当は、損傷を受けたタンク近くの雨水排水系統を3月6日に封止したと語った。雨水排水系統から約40KLの油を回収したが、まだ少量の油が残っているという。海へ流出した油を回収するため、雨水排水系統の出口部まわりにオイルフェンスが展張され、特殊な装置で回収された。 Ecanの女性広報担当はつぎのように語っている。
 「いくつかの場所で灯油による虹色のキラキラが観察されるので、これらの場所ではわずかですが、灯油留分がまだ存在していることになります。これらは極めて薄く、おそらく自然に拡散してしまうでしょう」 

リトルトンの住宅地の豪雨被害状況 
 (写真はNewstalkzb.co.nz から引用)
■ 警察は、地すべり再発の予防措置として近くの住民の避難を実施した。 3月7日時点で、地すべりによって避難した19世帯のうち11世帯は帰宅を許可されなかった。カンタベリー地方は嵐により4,500世帯が停電になったが、3月7日時点で50世帯を下回った。

■ Ecanの海上流出油対応チームは、クエイル島に焦点を当てた第2回目の水質評価を3月6日午後に実施し、 島周辺にジェット燃料油の兆候が無いことを確認した。 Ecanの女性広報担当によると、初回の水質および大気の分析評価では、野鳥類に影響を受けた兆候は見られなかったという。さらに監視を継続し、分析評価を実施するという。 

■ モービル社は、これ以上水系に油が出ないようにすることを最優先としているという。ウールストーン・パイプラインは3月6日に検査が行われ、嵐による被害は受けていないことが確認され、午後3時頃に運転が再開された。
            モービル社リトルトン・ターミナルで発生した地すべり状況 (写真はTvnz.co.nzの動画から引用
<モービル・ニュージーランドの声明> 
 (3月6日木曜午後6時時点)「リトルトン・ターミナルにおける油漏洩の対応」 
■ モービル社は、リトルトン・ターミナルで起きたジェット燃料油の漏洩について関係機関とともに対応に当たっています。34日(火)の夜に襲来した嵐に伴う激しい豪雨によって、ターミナルに接する丘が地すべりを起こし、タンク1基が損傷しました。

■ 6日(木)午前11時、モービル社は、タンクまわりのコンクリート製防油堤内に留まっているジェット燃料油の回収作業を開始しました。回収した油はターミナル内の別なタンクに移送しています。さらに現時点では、ポンプ2台を追加配備し、回収作業を早めるよう努めています。貯蔵タンクの防油堤内に溜まった油を全量回収するには、数日を要するとみております。 

■ 損傷したタンクから港への油漏れは現時点では無く、実質的にターミナル構内に留まっています。
 現在、私どもが最優先にしていることは、ターミナル構外から海へ油がさらに流れ出ることがないようにすることです。このため、港長の支援を受けながら作業を進めています。

■ 今回の件でご迷惑とご不便をお掛けしていることを心からお詫び致します。私どもの経営方針は従業員、協力会社および地元の皆様の安全確保であることに変わりはありません。

■ 私どもの石油給部門は、これまで長年、供給契約をして戴いてきたお客様とは密接に連絡をとって対応しております。今回の嵐でウールストン・パイプラインが被害を受けていないことを確認するため、同パイプラインの検査を実施致しました。パイプラインは6日午後3時に送油を再開致しました。
リトルトン・ターミナルの被災タンクと防油堤内の状況 
 (写真はStuff.co.nz から引用)
  (3月7日金曜午後4時30分時点)「リトルトン・ターミナルにおける油漏洩の対応」
■ 現場の対応
 ● モービル社リトルトン・ターミナルでは、猛烈な嵐に伴い発生した地すべりによってタンクが損傷を受け、ジェット燃料油が漏洩しましたが、現場ではこの対応に努めております。
 ● タンクのコンクリート製防油堤内に留まったジェット燃料油の回収作業を続行しています。 回収した油はターミナル内の別なタンクに移送しています。
 ● 私どもは、できる限り迅速に回収作業を行なうよう努めており、これまでに半分程度を移送しました。私どもは安全に終えるよう作業を継続しています。
 ● 防油堤内の油をタンクへの移送完了には数日間かかるとみております。
 ● 今回の事故は、異常気象による稀で予想外の事故でした。しかし、今回のクリーンアップ作業や嵐によって発生した供給中断などのご迷惑についてお詫びします。

■ 港湾の対応
● 2次防止エリアから港湾へのジェット燃料油の漏れは封じ込めました。雨水排水系統からわずかに漏れ出る油は排水口に吸収型オイルフェンスを張って回収しています。さらに、追加の予防措置として、港湾への雨水排水口を網羅するオイルフェンスを展張しています。
● 私どもは、港湾の対応を指揮する港長と密接に連絡をとって対応しております。現在のところ、水を回収する必要のある作業はありません。
● 現場の状況はつぶさに監視しつづけています。私どもは、構内から燃料油が漏れ出ることのないようにすることを目下の最優先事項としております。

■ ターミナルの操業
● ターミナルでは燃料供給の操業を実施しています。このターミナルは、カンタベリー地方、さらにサウス・アイランド全島への燃料供給の重要拠点になっています。
● 私どもの石油供給部門は、これまで長年、供給契約をして戴いてきたお客様とは密接に連絡をとって対応しております。 クライシスチャーチの市場において供給が不足することはありません。 
● 今回の嵐でウールストン・パイプラインが被害を受けていないことを確認するため、同パイプラインの検査を実施致しました。パイプラインは6日午後に送油を再開致しました。
● 私どもは当面の課題解決に集中しておりますが、つぎに損傷を受けた2基のタンクについて詳細な評価を行なう予定です。

■ 調 査
● 安全が確保できた段階で、モービル社として全面的に調査を行います。現時点でははっきりしていませんが、地すべりが擁壁(ようへき)に対してどのように損傷を与えたかという点についても調べます。
                                     手前がモービル社リトルトン・ターミナル (写真はStuff.co.nz から引用
  (3月11日火曜)「リトルトン・ターミナルにおけるジェット燃料油の回収作業」 
■ モービル社リトルトン・ターミナルでは、先週、猛烈な嵐に伴い発生した地すべりによって受けた被害について、現場では対策本部が対応に努めております。損傷したタンクから漏れ、防油堤に留まったジェット燃料油の回収作業を続けています。

■ 地すべりによって深刻な損傷を受けたタンクには、約1,200KLのジェット燃料油が入っておりました。このため、燃料油はタンクまわりにあるコンクリート製の壁に囲まれた防油堤内へ流れ出ました。また、一部のジェット燃料油はリトルトン港へ通じる排水系へ流れました。クリーンアップ作業を実施中で、影響が残ることがないように努めております。そして、環境アドバイザーによって現場の環境影響評価を実施しております。

■ 燃料油は安全に貯蔵タンクへ回収されつつあり、もはや消防機関の待機も必要がないと評価されております。

■ ターミナルでの燃料油供給の操業を、一時、中断致しました。ウールストン・パイプラインの検査を実施し、今回の嵐で被害を受けていないことを確認しましたので、パイプラインは、先週、送油を再開致しました。

■ 私どもの石油供給部門は、これまで長年、供給契約をして戴いてきた広範囲の業界やお客様と密接に連絡をとって対応しております。目下のところ、ジェット燃料油、ディーゼル燃料油、ガソリンについて供給不足が生じることはありません。ただし、供給は非常にタイトな状況です。

■ 安全が確保でき次第、モービル社として全面的な調査を行います。

■ モービルオイル・ニュージーランド統括本部長のアンドリュー・マクノートは、厳しい条件下にあったにもかかわらず、2次災害もなく、安全に対応作業ができたことに感謝し、つぎのように述べています。
 「私どものクリーンアップ作業でご迷惑をお掛けすることになり、モービル社として住民の方々へお詫びを申し上げます。ジェット燃料油の臭気は、モービル社による回収作業によって少なくなりました。しかし、私どもがクリーンアップ作業を行なった地域においては、時々臭いがすることがあると思います。しかしながら、ジェット燃料油の臭気による人の健康へのリスクは無いといえます。
 雨水排水系統の水に油が若干残っているかもしれませんが、排水口には吸収型オイルフェンスを張っており、大部分は捕捉できるでしょう。さらに、追加の予防措置として、港湾への雨水排水口を網羅するオイルフェンスを展張しています。私どもはエンビロンメント・カンタベリーと連絡を取り合い、海洋の対応を実施しています」

■ マクノート本部長は、モービル社を代表して、ご支援を戴いたニュージーランド消防、警察、エンビロンメント・カンタベリー、リトルトン港、クライシスチャーチ市議会に対して感謝致しております。マクノート本部長はつぎのように述べています。
 「先週の嵐によって受けた被害を復旧させる際、地元の皆様のご理解と辛抱強さに対してありがたく思っております」

補 足                                                         
■ 「ニュージーランド」は、南西太平洋のオセアニアのポリネシアに位置し、立憲君主制国家で、イギリス連邦加盟国である。国は二つの主要な島と、多くの小さな島々からなり、人口約440万人である。
(写真はグーグルマップ から引用)

塔が倒壊したクライシスチャーチ大聖堂
 「カンタベリー地方」は、ニュージーランドのサウス・アイランドにあり、ニュージーランド最大の平野が広がる地方である。
 「クライシスチャーチ」は、カンタベリー平野の東海岸側に位置し、人口約34万人で、国内で2番目、サウス・アイランドでは最大の人口を有する。街の中心部には19世紀に建てられたネオゴシック建築のクライシスチャーチ大聖堂がある。2011年2月22日、クライシスチャーチのリトルトン付近を震源とするモーメントマグニチュード6.1の地震があり、クライシスチャーチ大聖堂の塔が崩壊したほか、地元テレビ局カンタベリー・テレビの入ったビルが倒壊し、語学学校の留学生らが巻き込まれ、日本人28名が亡くなった。

■  「エクソンモービル社」(ExxonMobile Corp)は米国テキサス州に本拠地をもつ総合エネルギー会社で、スーパーメジャーの一つである。世界200ヵ国以上で展開し、21ヵ国に37の製油所を持ち、生産能力540万バレル/日、販売量640万バレル/日の巨大企業である。1999年、エクソン社とモービル社の合併で生まれた会社であるが、元々二社ともロックフェラーが1870年に設立したスタンダードオイルの流れをくむ企業である。
 ニュージーランドにおけるエクソンモービル社が「モービル・ニュージーランド」(Mobile New Zealand)で、1896年に設立されたニュージーランドで最も歴史のある石油会社である。石油製品の販売だけでなく、製油所を保有し、ニュージーランド需要の20%を精製している。また、国内に6箇所の石油ターミナルとパイプラインを保有し、事故のあったリトルトン・ターミナルはクライシスチャーチ市街地から南に位置する郊外の湾岸部にある。リトルトン・ターミナルから市街地のウールストーンまで約6.4kmのパイプラインが敷設されている。
                   被災前のモービル社リトルトン・ターミナル   (写真はグーグルマップのストリートビューから引用
■ 「被災タンク」はグーグルマップから推定すると、1基は直径約26m×高さ約15m×容量8,000KLクラスのコーンルーフ型で、もう1基は直径約13m×高さ約16m×容量2,000KLクラスのコーンルーフ型である。いずれのタンクから漏れたかは分からない。被災前の写真(グーグルマップのストリートビュー)を見ると、地すべりのあった丘とタンクの間には壁(擁壁)が設置されているが、落石程度を考慮したもので、大規模な土砂崩れを想定されたものではない。
                                                  被災前のタンクおよび擁壁     (写真はグーグルマップから引用)
■ 「エンビロンメント・カンタベリー」(Environment Canterbury: Ecan)は、カンタベリー地方の環境に関する地域協議会で、大気、水、土地の環境保全管理を行っている。

所 感
■ 近年、記録的な豪雨による被害が世界的に起こっており、2013年7月には、「中国陝西省で地すべりによってパイプラインから原油流出」事故が2件起こっている。この事故を紹介したとき、地すべりによる石油パイプラインの破損という稀な原因であるが、今は想定外ということはありえず、どこでも事故の可能性はあると所感で述べた。今回はついに、地すべりでタンク本体(または配管)が損傷し、油流出の事故が起こった。まさにマーフィの法則(起こる可能性のあることは、いつか実際に起こる)どおりに起こってしまったという思いである。

■ タンクは平地に建設されることが多いが、湾岸部で平地の少ない場所では、斜面を造成して建設されることは少なくない。これまでの降雨強度であれば問題は起こらないが、最近のような時間雨量100mmを超すような猛烈で長時間の豪雨の場合、丘陵地に建設されたタンクでは、今回のニュージーランドで起こった事故の可能性は否定できない。豪雨時における防油堤内の雨水排水系バルブの開閉処置についてレビューしてみる必要があるし、地すべりによるタンク直撃の想定について危機管理が必要である。

■ 今回の事故(災害)は、油漏洩が構外の海へ流出してしまうという最悪のシナリオだった。モービル・ニュージランドは、事故後の対応状況を同社のウェブサイトに日々情報公開している。詳細な対応作業や体制はわからないが、危機管理の観点から参考になる。

備 考
  本情報はつぎのようなインターネット情報に基づいてまとめたものである。
       ・Scoop.co.nz,  Fuel Leak at Lyttelton Terminal,  March 05, 2014
       ・Stuff.co.nz, Spilled Fuel Escapes into Lyttelton Harbour, March 07, 2014   
       ・3News.co.nz, Fuel Spill in Lyttelton Harbour,  March 07, 2014
       ・Stuff.co.nz, 1500-litre Jet Fuel Leak into Harbour, March 07, 2014
       ・NewsTalkzb.co.nz, Fuel Cleanup May Take Some Days,  March 07, 2014
       ・Mobil.co.nz, 6pm update: Response to Fuel Leak at Lyttelton Terminal,  March 06, 2014
       ・Mobil.co.nz, 4:30pm update: Response to Fuel Leak at Lyttelton Terminal,  March 07, 2014
       ・Mobil.co.nz, Jet Fuel at Lyttelton Terminal Recovered,  March 11, 2014 




後 記: 3月14日金曜午前2時過ぎ、ドンという響きとともに揺れが始まり、目が覚めました。ゆさゆさと長い地震の揺れで、これ以上大きな揺れが来たらどうなるのだろうと思っていましたが、揺れは大きくならずに収まりました。テレビを付けると、震源は伊予灘で、我が家のある山口県周南市から近いところでした。隣接する下松市と防府市で震度5弱ということですから、結構大きな地震だったのです。その後、小さな余震が一回あり、寝覚めの悪い朝を迎え、一日を過ごすことになりました。
 山口県は全般的に自然災害が少なく、地震の発生も少ないところですが、びっくりさせられる地震は日本どこでも起こることを改めて認識しました。私の中では、1987年千葉県東方沖地震、2003年北海道十勝沖地震に次ぐ大きな地震経験でした。あとから分かったことですが、周南市は震度4でした。隣接する下松市と防府市が震度5弱ですから、よほど揺れを感じにくい場所に地震計が設置してあるのでしょう。しかし、同じ市内に住んでいる孫が目を覚まさなかったということですから、大人は過剰に感じるのかも知れませんね。

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