2013年10月17日木曜日

米国テキサス州で油井施設のタンクが爆発・火災、1名負傷

 今回は、2013年10月8日、米国テキサス州カーンズ郡ジレットにある油井関連施設で、ガルフコースト・アクイジション社所有の塩水処理プラントの貯蔵タンクが爆発・火災を起こし、作業員1名が負傷した事故を紹介します。
カーンズ郡ジレットにある油井関連施設のタンク火災 
 (写真はNews4sanantonio.com から引用)
 <事故の状況> 
■  2013年10月8日(火)の午前5時頃、米国テキサス州にある石油貯蔵施設で爆発・火災があり、1名の負傷者が出る事故があった。事故があったのは、テキサス州のサンアントニオから南西約54マイル(86km)のカーンズ郡ジレットにある油井関連施設で、ガルフコースト・アクイジション社所有の塩水処理プラントの貯蔵タンクが、夜明け前の午前5時頃、爆発し、隣接タンクへ延焼して火災となった。

■ 爆発によって1名の負傷者が出たほか、ハイウェイ80号線が数時間にわたって閉鎖された。爆発後に発生したタンク火災に伴い、ジレット消防、ケネディ消防、カーンズ・シティ消防、ニクソン/スマイリー消防の5箇所の消防署が消火活動のために出動した。いずれもボランティア型消防署だった。郡当局によると、爆発後の対応に出動した緊急対応部隊は約60名だったという。保安官のドゥエイン・ヴィラヌエバ氏によると、数時間後に火災は鎮火したが、緊急対応部隊は現場で監視を続けているという。爆発のあった場所は比較的田舎だったので、爆発によって被災した家屋はなかった。カーンズ郡当局は、煙による地域への危険性は無いと発表した。

■ 消防当局によると、負傷したのは38歳の男性の作業員で、発災時に貯蔵タンクの点検を行っていたという。被災者は顔と左半身に火傷を負っており、サンアントニオ軍医療センターに緊急空輸された。保安官によると、被災した作業員と電話で話をしたが、彼は大丈夫だと言っていたという。保安官によると、被災者はガルフコースト・アクイジション社の従業員で、ゴンザレス出身だという。

■ 消防署と副保安官が現場に着いたとき、プラントは炎に包まれ、空は真っ黒だったという。消防署長によると、発災現場に到着してみると、隣接していた他のタンクが余りにも近く、最初は火炎に対する消火活動を控えざるを得なかったという。カーンズ市消防署のチャールス・マリック署長は、「炎が油の入った鋼製タンクを舐めるほど近かったので、もしタンクがロケットのように飛び上がったら、近くにいる隊員が悲惨な状況になることはわかっていた。それで、我々は引き下がり、様子を見ることにしました」と説明した。消防隊は約2時間火災の状況を監視した後、つぎの活動に入った。ヴィラヌエバ保安官によると、9基のタンクの爆発は収まったものの、なおも燃え続けていたので、消防隊は火災を制圧しようと前進していった。午前9時30分、火災は鎮火した。
               タンク火災への消火活動 (写真はKOUE.comの動画 から引用)
■ 消防署の最後の部隊が現場を離れたのは午前11時30分だった。ヴィラヌエバ保安官によると、8日火曜の午後も、クリーンアップ作業員を除いて、爆発現場周辺は立入り制限されたままだった。 

■ 当局によると、爆発したタンクには油と塩水が入っていたという。この油と塩水は油井のフラッキング法、すなわち水圧破砕法から発生したものである。事故があったのは、ハイウェイ80号線沿いにあるカーリック油井#1の塩水処理プラントで、保管タンクから油分をすき取り、塩水を地中にポンプで戻すようになっている。

■ 爆発原因については発表されていない。テキサス州鉄道委員会とOSHA(米国労働安全衛生局)が調査に入った。カーンズ郡当局によると、8日火曜の朝早く、タンクの日常点検中に爆発が起こったことは間違いないという。当局では、作業員が点検用歩廊に上がったとき、形成していた静電気がスパークして事故が起こったのではないかと推測している。

■ 当該施設は、2年前にテキサス州鉄道委員会から認可を受けたものだという。テキサス州鉄道委員会の記録では、現場に隣接する牧場主が家畜や井戸水に対する悪影響への懸念を示していたという。一方、所有者で操業会社のガルフコースト・アクイジション社による違反行為の記録は見つからなかった。州全体をみると、この1年、鉄道委員会の査察によって、原油・天然ガス施設における違反行為が55,000件以上指摘されている。そのうち400件近くが“重大”違反で、テキサス州鉄道委員会は罰則評価を行い、全罰金額は117万ドル(115百万円)にのぼっている。

■ 10月初めの週にも、フォールス・シティにおいて破砕用水のパイプラインが爆発し、6名の男性が火傷を負うという事故があった。これらの事故発生に伴う所管部署はOSHAである。10月1日からの政府閉鎖の一部機関として、OHSAでは多くの職員が休暇処置に入っている。しかし、OHSAの対応チームは働いており、現場で作業を行っている。カーンズ郡当局者は、油井での業務は危険な仕事だと言っている。実際、油井での問題によって死亡事故が続いている。ヴィラヌエバ保安官は、「今年になって亡くなった人は9名になっています。今回も見たとおりです」と語っている。
 (写真はKENS5.comの動画から引用)
 (写真はKENS5.comの動画から引用)
補 足                                                          
■ 「テキサス州」は米国南部にあり、メキシコと国境を接している州で、人口は約2,510万人と全米第2位である。
 「カーンズ郡」はテキサス州の中央部南に位置し、人口約15,000人で、郡庁所在地はカーンズ・シティである。 
 「ジレット」はカーンズ郡の北方に位置し、人口約200人の町である。

■ 「フラッキング法」(Fracking Process)は、原油・天然ガス田において水を高圧で注入し、油・ガスを抽出する「水圧破砕法」をいう。最近では、天然ガスやシェールガスの採掘において広く採用されている。シェール(頁岩)の中に存在するガスを、岩を破砕することによって地上に取り出す方法である。頁岩を地上に堀り出せば、岩の処分に困るが、地中で岩を砕けば、ガスを安価に採掘できる。しかし、この方法には、水に薬品が混入されており、この注入される水や薬品が地下水などの環境汚染の原因になっているのではないかという懸念がある。また、米国では、混入される薬品は企業秘密とされ、開示する必要がないことも問題視されている。米国では、数百の化学物質が使用されており、その中には、メタノール、ナフタレン、ベンゼン、鉛といった有毒性のある物質もあるといわれており、米国環境保護庁が大掛かりな調査を行っている。
 当ブログの「米国コロラド州で洪水によって被災したタンクから油流出」でも、天然ガス採掘における水圧破砕法の薬品が、油とともに環境汚染への懸念が問題視されている。

■ 「政府封鎖」(Government Shutdown)とは政府機関が閉鎖されることであり、とくに議会で予算案(あるいは暫定予算)の成立が難航することで、期限切れとなり政府機関が閉鎖されることを指す。
 2013年9月、オバマケアといわれる医療保険改革法を巡って、下院で多数を占める共和党は支出増大を招くとして反対している。一方、上院で多数の民主党は内政の最重要課題であり、妥協には応じられないとして対立して予算が成立せず、10月1日から一部政府機関が休みとなる「政府閉鎖」の状態が生じている。

■ 「ガルフコースト・アクイジション社」(Gulf Coast Acquisitions Co.)は、テキサス州レヒュージオを本拠とする石油・天然ガスの掘削・生産を行う石油会社である。会社の詳細はわからない。テキサス州カーンズ郡ジレットには事故を起こした油井関連施設がある。
テキサス州カーンズ郡ジレットにある油井関連施設
グーグルマップでは建設中の写真である
(写真グーグルマップから引用) 
所 感 
■ 今回、事故があった油井関連施設は2年前に認可されたばかりで、操業期間は長くない。当局の推測は形成していた静電気がスパークしたとみている。タンクには揮発性の高い油が存在していたと思われるので、人体に発生した静電気がスパークし、可燃性ガス(爆発混合気)に着火して爆発した可能性は考えられる。
  このような施設には、一般的に人体用の除電棒が設置されており、手で握れば除電されてスパークはしない。操業期間が2年ほどであり、慣れによって基本を守らない近道行為が生まれやすい時期だともいえる。この人間の近道行為(除電棒に触らないで済ます)は、時として何事も起こらないケースがある。そうすると、近道行為が日常化し、守るべきことが形骸化してしまう。ところが、このような基本事項の逸脱は、ある日突然、問題が顕在化し、大きな仕打ちを受ける。これは一つの類推であるが、この事故原因には何らかの基本事項の逸脱があるように感じる。

■ 事故のあったところは人口が少ない地方の場所であり、複数のボランティア型消防署による消防活動だった。人員は60名ほど集まっているが、おそらく消火資機材は十分なものではなかったと思われる。小型タンクではあるが、隣接タンクへ延焼しており、無理な消火活動を避け、燃え尽きさせる戦略は適切だったと思う。消火後のタンク写真を見ると、タンクによって損壊程度が違う。屋根が無くなっているが、液面が見えるタンクもある。タンク内の液は水と油であり、油の多かったタンクは損壊がひどく、水の多かったタンクは上部の油が燃え尽きたものであろう。発災から約4時間半で鎮火しており、存在していた油量はそれほど大量ではなかったと思われる。

 備 考
  本情報はつぎのようなインターネット情報に基づいてまとめたものである。
      ・News4sanantonio.com,  Worker Injured in Explosion at Oil Storage Facility,  October  08, 2013
      ・KVUE.com, 1 Hurt in Fiery South Texas Well Site Explosion,  October  08, 2013 
      ・MySanantonio.com, Karnes County Blast Injures 1,  October  08, 2013
      ・Texas.icito.com,  1 Injured in Tank Farm Explosion in Karnes County,  October  08, 2013
      ・KENS5.com,  Officials: Oilfield Accidents a Growing Problem for Karnes County,  October  08, 2013
      ・HoustonChronicle.com,  Explosion Injures Worker at Saltwater Disposal Plant,  October  09, 2013 



後 記: 現在、米国の上院と下院、共和党と民主党(オバマ政権)の議論(争い)が注目され、政府閉鎖の問題について、毎日、テレビや新聞で報道されています。今回の事故情報の中に、まさか政府閉鎖が関係してくるとは思いませんでした。今回の事故調査作業について直接の影響はなさそうですが、米国の信用低下というか国力低下を感じるニュースではあります。また、日本では石油・天然ガス資源が乏しく、採掘のフラッキング法が話題になりませんが、米国や英国では環境汚染について問題視されつつあります。今回の事故も水圧破砕法という新しい技術に派生したものだといえます。ひとつの事故情報から新たに見えてくるものがあるものですね。

0 件のコメント:

コメントを投稿