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2025年8月8日金曜日

米国ネブラスカ州のバイオ燃料製造工場で粉塵爆発、少女ら3名が死亡

 今回は、2025729日(火)、米国ネブラスカ州ドッジ郡フリーモントにあるホライゾン・バイオフューエルズ社のバイオ燃料を製造する工場で大きな粉塵爆発があり、少女を含む3名の死者を出した事例を紹介します。


< 発災施設の概要 >

■ 発災があったのは、米国ネブラスカ州(Nebraska)ドッジ郡(Dodge County)フリーモント(Fremont)にあるホライゾン・バイオフューエルズ社(Horizon Biofuels)のバイオ燃料を製造する工場である。

■ 事故があったのは、サウスフリーモント(South Fremont)のシュナイダー通り(Schneider Street)とクローバリー道路(Cloverly Road)の近くにあるバイオ燃料工場の主プラントである。この工場は木材廃棄物を利用して、家畜の寝床や暖房・燻製用の木質ペレットを製造しているペレットミル・プラントである。

<事故の状況および影響>

事故の発生

■ 2025729日(火)正午頃、バイオ燃料工場で大きな爆発があり、火災が起こった。

■ 現場から約半マイル(0.8km)離れた住民は、「爆発で家全体が揺れ、音が非常に大きく、敷地内にある建物に車を突っ込んだのではないかと思った」といい、「外を見ると、ものすごい煙が立ち昇っていました」と語った。

■ 発災にともない、消防署の消防隊が出動した。近隣の消防隊も支援に出動した。他の製造工場や食品加工工場に囲まれた火災現場に最初に到着した消防隊員は激しい炎と黒煙に直面した。

■ 警察は付近の道路の交通を閉鎖した。

■ バイオ燃料工場のメインタワーの頂上が破壊され、コンクリートと鉄筋が剥き出しになった。また、下の建物の金属製の壁と屋根は崩れ、黒焦げになった。消防隊によると、建物は「外側がセメント構造で、そこに金属フレームが固定されている」と述べていた。

■ 消防隊は、爆発事故からほぼ1日が経過した翌日も、瓦礫の中からくすぶる煙と炎と闘った。 消防隊によると、爆発で建物が不安定なため、消火活動中の隊員が建物内に入るのが困難になっているという。一晩中雨が降っていたにもかかわらず、炎は燃え続けた。

■ ホライゾン・バイオフューエルズ社は、施設全体が倒壊する可能性があるかどうかを評価しているという。 当局は、「作業は非常に時間がかかるだろう」といい、「行方不明者の捜索予定を立てられない」と述べた。

■ 瓦礫を撤去するために重機が持ち込まれ、復旧作業のために建物の一部にアクセスすることが可能になった。730日(水)、消防士らが24時間以上にわたり、くすぶる残骸と不安定な建物と格闘した後、行方不明だった3名を収容した。

■ 730日(水)、当局は、行方不明だった少女2名と成人1名の死亡が確認されたと発表した。ふたりの子供はホライゾン・バイオフューエルズ社で働く義父が仕事を終えるのを待って、その後、医者の診察を受けに行く予定だったという。亡くなった成人1名は少女たちの義父だった。少女の正確な年齢は不明だが、ふたりとも12歳未満だという。当局は現時点でふたりの氏名を公表していない。(その後、メディアの中には少女たちの名前などを報じたところがある)

■ 当局によると、爆発の原因は工場のメインタワーで発生した木材粉塵による可能性が高いという。米国労働安全衛生局(OSHA)によると、木材粉塵が大量に蓄積すると、火災や爆発の危険性があるという。一方、当局の捜査に協力的だと言われていたホライゾン・バイオフューエルズ社はメディアのコメントを求める取材には応じなかった。

■ 関係者によると、爆発が起きた時、少女たちは義父と一緒に職場にいたという。上司は、義父が少女たちを連れて行くのを許可していたからだ。少女ふたりは休憩室にいたとみられる。休憩室はメインタワーの一番下にあり、頑丈な部屋になっていたはずである。

■ ユーチューブでは、この事故の動画が投稿されている。

 YoutubeThree people ‘missing and unaccounted for’ after explosion at Horizon Biofuels plant in Fremont2025/07/29

   ●YoutubeCrews respond to explosion at plant in Fremont2025/07/30

   ●Youtube Drone Footage Shows Aftermath of Deadly Explosion at Nebraska Biofuel Plant2025/07/31

   ●YoutubeState Fire Marshal‘s Office reveals cause of deadly explosion at Horizon Biofuels plant2025/08/01

被 害

■ バイオ燃料工場のペレットミル・プラントと倉庫など主施設が爆発で損壊した。 

■ 死傷者が3名出た。従業員1名とその家族の少女2名である。

< 事故の原因 >

■ 爆発の原因は粉塵爆発で、工場のペレットミル・プラント内で発生した木材の粉塵によるとみられる。 

< 対 応 >

■ ネブラスカ州緊急事態管理局(NEMA)によると、ドッジ郡管理委員会が州の対応を要請したので、構造問題の専門家や救助犬チームを含むネブラスカ州タスクフォース1のメンバー14名が支援に派遣された。メンバーは、すでに現場にいた消防隊や他の緊急対応チーム、複数の法執行機関合流した。

■ 2012年に労働安全衛生局(OSHA)が安全上の問題を指摘し、ホライゾン・バイオフューエルズ社に罰金を科したと報じられている。安全上の問題には、従業員が作業中に機器に通電しないことを徹底していなかったこと、機械周辺の作業エリアを清潔に保っていなかったこと、特に製粉機周辺に木くずが蓄積していたことなどが含まれていた。

■ 2014年、ホライゾン・バイオフューエルズ社の建物で火災が発生し、電気系統が損傷したものの、建物自体は無傷だったという。

■ 木くずや木材関連バイオマスの処理と取り扱いには重大な火災と爆発の危険があり、米国では大規模バイオマス施設の増加に伴い事故も増加しているという。 

■ 専門家は、「ホライゾン・バイオフューエルズ社の工場で何が起きたのかを正確にいうのは時期尚早ですが、私自身の経験から、木質ペレットの取扱いがいかに難しいかを知っています。乾燥すると木粉は容易に飛散し、予熱炉(ハイビーム)や排気システムといった目立たない場所に堆積します」といい、「木質ペレットは、湿気があると塊のままだと自己発熱して発火する可能性があります。設計に内在する安全性、優れたメンテナンス、そして適切な運用手順が不可欠です」と語った。

■ 環境保護団体は、長年、燃料用木質ペレットの製造と保管が火災を引き起こす可能性があるとして警告してきた。ネブラスカ大学で農業安全を専門とする准教授は、ホライゾン・バイオフューエルズ社の爆発ビデオを見て、「大きな爆発が起こる数ミリ秒前に上部の窓から小さな炎が噴き出しているのに気づき、この瞬間、粉塵爆発だと思いました」と語った。准教授によると、これは穀物の粉塵爆発の研究でみてきたパターンに合致するといい、製造工場内の木材は微細な粉塵に粉砕され、それが酸素と火花や高温の表面などの発火源が存在する密閉空間の空気中に拡散すると、爆発につながる可能性があるという。

■ 730日(木)、ホライゾン・バイオフューエル社は初めて声明を発表した。

「ホライゾン・バイオフューエル社ファミリーの一員3名を失ったことに、深い悲しみで胸が張り裂けそうです。この悲しみは言葉では言い表せません。私たちは、何が起こったのかを理解すべく、徹底的かつ透明性のある調査に全力を尽くします。国民の安全は常に最優先事項であり、このような悲劇が二度と起こらないよう、あらゆる手段を講じます」と述べている。

補 足

■「ネブラスカ州」は、米国の中西部に位置し、人口約196万人の州である。

「ドッジ郡」(Dodge County)は、ネブラスカ州の東部に位置し、人口約37,000人の郡である。

「フリーモント」(Fremont)は、ドッジ郡の南部を位置し、人口約27,000人の都市でドッジ郡の郡庁所在地である。フリーモントは、製造業と農業の中心地であり、21世紀に入っても130社のアグリビジネス(農業に関連する幅広い経済活動)が立地している。

■「ホライゾン・バイオフューエルズ社」(Horizon Biofuels)は、2006年に設立されたバイオマス関連企業で、従業員は10名だという。バイオ燃料工場は、地元企業から廃棄された輸送用パレットや建築メーカーから廃棄された木材を用いて家畜の寝床や暖房・燻製用の木質ペレットを製造している。この工場は、ネブラスカ州内にある3つの商業用ペレット工場のうちのひとつで、廃木材から作られた木質ペレットを年間20,000ショートトン(18,100トン)生産する能力がある。同社は、これまで2009年、2010年、2018年、2021年に廃棄物削減を支援するためネブラスカ州から助成金を受けている。

■ 商業用ペレット工場は、通常、「ペレットミル・プラント」と呼ばれ、バイオマス・ディーゼルなどの液体燃料を製造するプラントと異なり、木質ペレットを最終製品として製造するため、プロセスは基本的にシンプルである。しかし、ホライゾン・バイオフューエルズ社がどのようなプロセスを採用して建設したかは分からない。一般的なペレットミル・プラントの例を下に示す。(ユーチューブでは、ペレットミル・プラントの例が投稿されている。

を参照)

所 感

■ バイオマス関連施設の爆発火災としては、20239月に起こった「米子市のバイオマス燃料発電所で爆発・火災事故」と類似性がある。米子市の事例では、燃料受入れ建屋1棟とエレベータ1基が被災した。調査結果では、木質ペレットの自然発火(建屋内に木質ペレットの屑が層状にたまって発酵して発生した可燃性ガスが着火)、建屋内での粉塵の充満(砕けて粉末状になった木質ペレットによる粉塵爆発)、の2つの可能性があるとされた。特定されなかったが、この種の施設では粉塵爆発のリスクが高い。

「米子市のバイオマス燃料発電所の爆発・火災事故の原因調査結果」2023/10/09を参照)

■ バイオ燃料工場の爆発・火災という馴染みの少ない施設の事故であり、被災者がふたりの少女ということで欧米の主要なメディアが記事にしている。米国のおおらかさ(粉塵爆発のリスクのある建物の休憩所に少女を受け入れる)が逆に働いた悲惨な事故である。

 しかし、2012年には、労働安全衛生局(OSHA)が安全上の問題(従業員が作業中に機器に通電しないことを徹底していなかったこと、機械周辺の作業エリアを清潔に保っていなかったこと、特に製粉機周辺に木くずが蓄積していたことなど)を指摘していたにも関わらず、今回の事故を起こしたことは、ホライゾン・バイオフューエルズ社の安全軽視の企業風土が招いた事故であると思う。 

■ 消火活動と被災者の捜索活動は難しかったという。メインタワー頂上以外の下部の構造が、外側はセメント構造で、そこに金属フレームが固定されていた。爆発で建物や壁が不安定な状態のため、消火活動中の隊員が建物内に入るのが困難になっていたという。ここでも見栄えの外観性を優先したホライゾン・バイオフューエルズ社の経営の価値観に疑問を感じる。


備 考

 本情報はつぎのインターネット情報に基づいてまとめたものである。

    Edition.cnn.com, Nebraska plant explosion killed 2 girls and an employee, and the fire is still burning,  July  31,  2025

   Euronews.com, Two girls and one employee killed after explosion at Nebraska biofuels plant,  July  31,  2025

   Apnews.com,  Nebraska plant explosion killed 2 girls and an employee,  July  31,  2025

   Firerescue1.com, ‘It’s going to be very slow': Fire at Neb. plant explosion keeps crews from recovering bodies of girls and adult,  July  30,  2025

   Kptv.com, Search underway for missing people after explosion at Nebraska fuel pellet plant, officials say,  July  30,  2025

   Thechemicalengineer.com, Three dead following blast at biofuels plant in Nebraska, August 01,  2025

   Abcnews.go.com, 2 children, adult killed in explosion at Nebraska plant: Mayor,  July  30,  2025

   Cbsnews.com, Nebraska biofuels plant explosion kills 3 people, including 2 young girls,  July  30,  2025

   Jsonline.com, Drone footage shows deadly biofuel plant explosion in Nebraska,  July  31,  2025 

   Starherald.com, Dust deemed cause of Fremont plant explosion that killed 3; Horizon Biofuels officials make statement,  July  31,  2025


後 記: 本事故を初めて知ったときは、バイオ燃料の製造施設でタンクが爆発した事例だと思いました。ところが、情報を見ていくと、木質ペレットを最終製品とする施設の事故だということが分かりました。貯蔵タンク事故とは違いますので、投稿対象ではなく、やめようかと思いました。ところが被災者が少女ふたりということで、欧米の主要なメディアが取り上げる関心度の高い事故となっていたため、投稿することとし、調べていきました。事故の起こった初期段階は情報が混乱し、情報源が限られており、同じような記事が多く、調べても深堀りができませんでした。木質ペレットを最終製品とするペレットミル・プラントであることが分かり、粉塵爆発のリスクがあるにも関わらず、安全を軽視する企業風土のある会社の事故だということを理解しました。

2025年7月31日木曜日

中国で新しい消防機材を使った大型タンク火災訓練

 今回は、202568日(日)、中国において実機の訓練施設で行われた大型貯蔵タンク火災の事故対応の特別訓練の状況を紹介します。

< はじめに >

■ 20256月中旬から下旬にかけて、国家防災減災救援委員会と国務院安全生産委員会が主催する「緊急任務2025」の訓練が河南省濮陽市(ぼくようーし)などで実施された。「緊急任務2025」の事故想定は、巨大な炎と衝撃波により、火災警報システム、生産工程自動制御システム、冷却システム、泡消火システムの機能が停止し、爆発の破片が四方八方に飛び散ったというものである。球形貯蔵タンクが横転して上部の圧力逃し弁から可燃性ベーパーが噴き出して燃え、隣接する円筒貯蔵タンクは破片が貫通し、油が流出して燃えた。さらに、近くにある化学工場の3階建てプラットフォームを損壊させ、プロセスパイプラインが爆発して燃えた。炎は空高く舞い上がり、濃い黒煙が太陽を遮り、200m以内の熱放射は著しく高かったというものである。

■ この中で訓練の4つのテーマの一つである大型貯蔵タンク火災の事故対応の特別訓練が行われた。最新の科学技術成果を結集した耐高温の消防用ロボット、ドローン、大スパン屈折放水塔車、大容量泡放射砲などの装備が参画した。

■ 緊急救助を扱った映画などでは、大規模な火災や爆発が発生すると、消防隊員が自らの安全を顧みず、火災現場に駆けつけ、人々を救助する場面がよく見られる。生死を分ける訓練を経験する場面である。現在、人工知能(AI)、ドローン、知能ロボットといった科学技術が急速に発展している。現在、これらのハイテク技術が、消防隊員の代わりに高いリスクの現場へ入ることができるのだろうか。 

< タンク火災訓練の概要 >

■ 2025 68日(日)、訓練施設で大型貯蔵タンク火災事故の対応訓練が行われた。

■ 想定の訓練内容は、6月の暑い日、規模の大きいタンク貯蔵所において外部浮き屋根式貯蔵タンクの屋根が異常気象の影響で沈没した上、風の作用で1,000㎡近くの油面が激しく揺れ、揮発性の油が蒸発し、タンク上部には可燃性の油とベーパー滞留していた。雷雲が通過してタンクに落雷した後、激しく爆発し、あっという間に全面火災となった。

■ 訓練では、ドローンなどのハイテク機器が使用され、消防隊は火災現場から数十メートル離れた場所から活動するだけで済んだ。

■ 訓練の主催者は、大型貯蔵タンクの全面火災は世界共通の問題だと語った。石油産業が発展していく中で、世界では大型貯蔵タンクの火災事故が次々と起こり、事故に対して人による対応が成功する確率は非常に低い。「10KLの石油タンクは、直径が80m、表面積が5000㎡以上と、サッカー場とほぼ同じ大きさである。原油が満杯のタンクで火災が発生した場合、消火は極めて困難である。原油タンク内の原油がボイルオーバーを起こすと、沸騰液の飛散距離はタンクの高さの10倍以上、すなわち100200mに達する。この距離は、活動している消防隊員や消防車両が熱い油の飛散範囲内に入ってしまうことになる」

■ この訓練の狙いは、現場での火災状況を見極める難しさ、貯蔵タンクの冷却と防護の難しさ、火災拡大を遮断する難しさ、タンク全面火災を消火する難しさ、ボイルオーバーが起こったときの防護の難しさといった問題である。総合的な状況把握と処置判断の指揮、全方位冷却と防護、迅速かつ遠隔的な消火水の供給と泡消火剤の供給、化学工場における立体的な消火活動、貯蔵タンクにおける火災拡大の消火活動、外部浮き屋根式タンクにおける全面火災の消火活動など7つの重点テーマと21のサブテーマが焦点である。

■ 今回の訓練では、消防隊の準備と訓練に加え、科学技術手段を使って、燃焼中の大型タンクからの熱放射や熱伝導などのデータを収集し、3KL5KL 10KL、さらに15KLの貯蔵タンクで火災が発生した場合に必要な対応力を推測することにある。

■ 今回の訓練におけるもう一つの大きな特徴は、比較試験である。消防車、ロボット、ドローン、探知装備、個人用保護具、消火資材など9種類で合計227セットの新型消防機材が153部隊から集められ、現場での比較試験が複数回行われた。それらの中で優秀な機材としては、地上高さ65mの屈折放水塔車、最大流量570リットル/秒(34,200リットル/分)の大容量泡放水砲システム、100mの距離からレーザーでタンク表面をスキャンできるタンク火災監視レーダー、1,200℃の高温燃焼に耐えられる新型耐火服などが含まれている。各メーカーは自社の機材や装備が最も良いと言うが、訓練のタンク火災に対して性能が要求を満たし、実戦に向いているかを確認すべきである。



< 消防用ロボット >

■ 訓練では、1,000℃の高温にも耐える消防用ロボットも参画した。操作用のリモコンとロボットの距離は約1,000mでも操作可能だという。

■ タンク火災による訓練では、点火後、火は急速に燃え広がり、煙は数百mの高さまで上昇した。100m以上離れた場所にいても、熱波をはっきりと感じ取ることができた。しかし、タンク火災からわずか数メートル離れたところで消防用ロボットの赤い消防車両が水を噴射しており、高温の影響をまったく受けていないようだった。このロボットは耐高温・耐火性に優れ、比較試験でも優れた性能を発揮した。純国産のロボットは、1,000℃の高温下でも、放水能力と消火能力を正常に維持できることが分かった。

■ 訓練に参加した消防用ロボットは、高温に耐えて消火用水袋を運搬して消火活動を行う能力に加え、音声・動画撮影・伝送、火源自動判別などの技術も備えている。煙の充満した火災現場に進入後、ロボットは自力で最高温度の発生源を見つけ出し、消防ホースを運搬して消火剤を火災現場で噴射し、冷却・消火活動を行う。また、これらのロボットの遠隔操作距離は約1,000mで、消防隊員は安全な距離からロボットを操作し、遠隔操作装置を通して火災現場の最新状況を把握することができる。

■ ロボットがなければ、消防隊員が火災現場に接近することは非常に危険である。以前は、消防車を使って遠隔操作し、温度を下げることしかできなかった。消防隊員が現場に入るのは、煙、炎、温度が弱まってからだった。現在では、消防隊員が火災現場に入る際に耐熱性と断熱性のある防護服があるが、ロボットほど有効な活動をすることはできない。つまり、ロボットこそが人間の安全を最大限に確保できる。国家安全生産緊急救助隊の113隊は基本的にこのタイプの消防用ロボットを装備している。

■ 消防用ロボットが、将来、より大規模に活用され、火災対応においてより大きな役割を果たしていくためには、どのような点が最も重要で、改善が必要なのだろうか。主催者は、耐高温性は喫緊に改善が必要な技術だという。危険な化学物質の現場では、燃料が十分にあり、燃焼放出率が高く、発生する炎の規模や温度が非常に高いため、消防用ロボットの耐高温性に対する要求は高い。ロボットが高温に耐えられず、現場に接近して消防活動を行うことができなければ、消防用ロボットがもっている高い機能は発揮できない。

■ 訓練に参加した17台のロボットのうち、高温(800℃以上)に耐えられるのはわずか4台で、そのうち2台は高温試験前に撤退した。高温耐性を持つロボットの割合は依然として比較的低い。高温に耐えること自体は難しくないが、ロボットのエンジンと回路システムが高温の火炎下でも正常に動作することを保証することが難しいのが現状である。特に、壊れやすい電子部品を高温試験に耐えさせるために、断熱材と冷却方法をどのように活用するかが克服すべき課題である。

< ドローン >

■ 近年、ドローンは様々な産業で広く活用されており、消防の分野でも広く活用されている。大型タンクの火災や爆発事故において、ドローンはどのような役割を果たすことができるのだろうか。また、消火活動にも活用できるのだろうか。

■  68日の火災訓練では、上空で複数のドローンが参加しているのが目撃されたが、そのうち数機は火災現場の外で運用されており、直接消火活動に参画している様子は見られなかった。

■ 専門家は、ドローン自体の性能がまわりの環境に対して耐えるには力不足であるという。ドローンの精密機器は高温に耐えられず、空中飛行時の気流の影響を受けやすいため、用途には限界がある。石油火災では、高温で気流が乱れるため、ドローンは影響を受けやすい。さらに、ドローンは十分な大きさがなく、最前線の消防機材として使用するには大きなものを搭載できない。現状、ドローンは森林火災の消防機材に利用されつつある。

■ しかし、さまざまな制限があるにもかかわらず、ドローンは石油火災において依然として大きな役割を果たすことができる可能性を秘めている。ドローンは火災現場で赤外線撮影を行ったり、リアルタイムのオンラインガス分析を通じて大規模な漏洩や有害ガスの拡散の有無を判断したり、現場に照明を提供したりすることもできる。訓練では、ドローンを運搬手段として活用する試みが登場したことも注目された。

■ 現在のドローンの使い方としては、離陸後、現場の映像を指揮センターなどに送信し、ビッグデータモデルを活用して、現場の写真や動画をすぐに分析し、災害の状況を判断し、迅速に対応計画を作成する。これにより、車両や機材の動員、泡薬剤の数量計算などが行い、火災現場の指揮を支援する。

 一方、このシステムは現時点では完璧ではない。主な理由は、データベースに一部の消防活動のガイドしか含まれておらず、多くの事例の戦術や手動判断が組み込まれていなためだ。しかし、ビッグデータの最大のメリットは継続的な学習と改善にある。近い将来、このシステムは現場指揮官の判断処理能力を担うようになるだろう。


補 足 :

■ 中国の「緊急任務2025」訓練は、国家防災・減災・救援委員会と国務院安全生産委員会が主催し、黒龍江省大興安嶺地域東寧市、河南省濮陽市、広東省深圳市で同時に開催された。訓練では、回線・ネットワーク・停電時の緊急対応、原生林における大規模森林火災の消火活動、大型貯蔵タンクの火災・爆発事故時の緊急対応、都市高層ビルの火災消火活動の4つのテーマに焦点が当てられ、20256月に実施された。

■「屈折放水塔車」は、日本ではスクワート車や大型化学高所放水車と呼ばれている。日本では、狭い道路での作業性を重視し、地上高さを高くする傾向になく、最大22m級の屈折放水塔車が主流である。

 中国では、障害物回避能力の高い屈折放水塔車の開発に注力しており、地上高さ40m50m60mと高くする傾向にある。当然、アウトリガー張出幅は大きくなり、設置場所は限られる。

■ 中国の「消防用ロボット」は、記事にあるように「高温に耐え、消火用水袋を運搬して消火活動を行う能力に加え、音声・動画撮影・伝送、火源自動判別などの技術も備えており、煙の充満した火災現場に進入後、ロボットは自ら、最高温度の発生源を見つけ出し、消防ホースを運搬して消火剤を火災現場で噴射し、冷却・消火活動を行う。また、これらのロボットの遠隔操作距離は約1,000mで、消防隊員は安全な距離からロボットを操作し、遠隔操作装置を通して火災現場の最新状況を把握することができる」 というものである。

 日本でも、同様の目的をもった消防用ロボットは消防庁消防研究センター「エネルギー・産業基盤火災対応のための消防ロボットの研究開発」で行われている。ユーチューブでは、消防ロボットシステム「消防ロボットシステム説明用3DCGアニメーション(短縮版)」が投稿されている。

■ 火災事故の対象タンクは外部浮き屋根式貯蔵タンクと報じられている。記事の中で“1,000㎡近くの油面が激しく揺れとあるので、タンク直径は約35mである。高さを20mと仮定すれば、容量約19,000KLのタンクである。この大きさのタンクの全面火災では、必要な大容量泡放射砲は放水量10,000リットル/分である。

所 感

■ さすがに現在の中国だけあって、大型貯蔵タンクの火災事故への対応訓練が行われている。広大な土地に対応訓練のための実機の貯蔵タンクが作られている。日本でも、1980年代から1990年代にかけて北海道苫小牧市や静岡県御殿場市などで実機に近いタンクで燃焼試験が行われているが、これは油の燃焼による輻射熱量などのデータをとるためであり、貯蔵タンク火災事故への対応訓練ではなかった。

■ しかし、対応訓練は各メーカーの開発製品のデモンストレーションであるようで、たとえば参加した大容量泡放射砲システムで大型貯蔵タンクの火災が消せるかどうかの訓練は行われていない。2003年の十勝沖地震の際、苫小牧市の製油所でナフサタンクの全面火災が発生し、当時の大型化学消防車(放射量3,000リットル/分)が集結していたにも関わらず、鎮火できなかった。実際の火災対応では、予期しないことがある。これだけの施設を作っているのに、少しもったいない気がする。

 一方、消防用ロボットでは、大型貯蔵タンクの火災は消せないことは自明だが、防油堤内火災に対する対応は可能であり、ドローンや監視用ロボットの実火災への対応とともに興味ある点であろう。

■ 地上高さ60m級の屈折放水塔車の活用方法には関心がある。中国では、障害物回避能力が高く、屈折放水塔車の開発に注力しており、地上高さ40m50m60mと高くする傾向にある。当然、アウトリガー張出幅は大きくなり、設置場所は限られる。近年、高層建物が増えており、このような高い火災個所への対応を想定していると思うが、自走できない大容量泡放射砲システムの代替としての活用を考えているのではないだろうか。


備 考

 本情報はつぎのインターネット情報に基づいてまとめたものである。

     Cj.sina.com.cn,一场世界级难题的演:足球大小油罐爆炸!无人机、智能机器人能代替救援队员灭

(世界レベルの訓練:サッカー場ほどの石油タンクが爆発!ドローンやスマートロボットは救助隊員の代わりに消火活動ができるのか?), June 11, 2025

     Yjglt.henan.gov.cn, 急使命·202519国家专业队聚濮阳助力破解世界难题,  June  26, 2025

     Mem.gov.cn, 数智赋能强基  多维实战  淬炼大型罐火灾急救援能力,  June  24, 2025 

     News.cctv.com,直击急使命·2025”演习:新装、新践比武真章,  June  26, 2025

     Nrifd.fdma.go.jp,  2回消防防災研究講演会資料「石油タンクの防災」,  January  22,  1999


後 記: いまの中国はやることが派手で華やかです。どう考えても日本には今回のような訓練の発想は出てこないでしょう。タンク火災が起これば仕方のないことと考えるのでしょうが、以前の経済が良い頃だって自らタンク火災を起こすことなど考えないでしょう。まして、今夏のように異常に暑い夏日が続くと、考えるだけで熱い輻射熱を感じますね。一方、訓練内容についてはいま一つ分からないことがあり、すっきりはしません。こちらは内容の深堀りを考えていますが、記事はやっている状況を伝えるのが主体ですので、やむを得ないでしょう。 

2025年7月18日金曜日

米国ルイジアナ州レイクチャールスの製油所でタンクに落雷し、火災

 今回は、2025710日(木)、米国ルイジアナ州レイクチャールスにあるシトゴ・ペトロリアム社のレイクチャールス製油所のタンク地区にある貯蔵タンクに落雷があり、火災が発生した事例を紹介します。

< 発災施設の概要 >

■ 発災があったのは、米国ルイジアナ州(Louisiana)レイクチャールス(Lake Charles)にあるシトゴ・ペトロリアム社(Citgo Petroleum Corp.)のレイクチャールス製油所である。製油所の精製能力は459,800バレル/日である。

■ 事故があったのは、製油所のタンク地区にある貯蔵タンクである。

<事故の状況および影響>

事故の発生

■ 2025710日(木)午後1時過ぎ、製油所の貯蔵タンクに落雷があり、火災が発生した。

■ 住民のひとりは、「バスに乗っていてウトウトしていたとき、大きな雷鳴が聞こえ、乗客が叫び始めました。見上げると、巨大な火の玉が見えました」と語っている。別な住民は、「一度に2回雷が落ちました。煙も二筋上りましたが、小さい方はあっという間に消え、炎と煙はひとつなって立ち昇りました」と語っている。

■ 発災にともない、自衛消防隊が出動した。 

■ シトゴ・ペトロリアム社によると、規制当局にはすべて通知し、従業員全員の所在が確認したという。製油所の設備は火災タンク以外には被害はなく、通常通り稼働している。火災タンク内の油が燃えているが、現時点では敷地外への影響はないとみられる。

■ 州環境品質局が大気を監視しているが、現時点では粒子状物質は検出されていない。今のところ、周辺地域の住民への影響はなく、普段通りの生活を送っても構わないという。

■ シトゴ・ペトロリアム社も相互扶助組合員とともに、予防措置として被災地の監視と大気モニタリングを実施するという。

■ 事故にともなう負傷者はいなかった。

■ ユーチューブでは、タンク火災の状況を伝える動画が投稿されている。 

 YoutubeTank fire extinguished at CITGO after lightning strike2025/07/13

 ●YoutubeTank fire extinguished at CITGO after lightning strike - 5 p.m. live2025/07/13

 上空からの映像は、https://www.newsbreak.com/  Lightning strike causes fire at CITGO refineryを参照。

被 害

■ 貯蔵タンク1基が火災で被災した。

■ 負傷者はいなかった。 

< 事故の原因 >

■ 爆発・火災の原因は落雷とみられる。 

< 対 応 >

■ 消防隊は消火活動を行い、約3時間半にわたり消火活動にあたった。火災は午後5時前に消し止められた。

補 足

■「ルイジアナ州」(Louisiana)は、米国の南部にあり、テキサス州に隣接し、人口約465万人の州である。州都はバトンルージュで、最大の都市はニューオーリンズである。ルイジアナ州は石油と天然ガスの資源が豊富である。

「レイクチャールス」(Lake Charles)は、ルイジアナ州西部のカルカシュー郡(Calcasieu Parish)の中部に位置し、人口約84,800人の都市であり、郡庁所在地でもある。

■「シトゴ・ペトロリアム社(Citgo Petroleum Corp.)」は1910年に設立され、米国を拠点とする石油精製、輸送、販売を行うエネルギ企業である。1965年にブランド名を現在のCitgoへと変更したが、1986年にベネズエラ国営石油会社が株式50%の取得によって子会社化し、1990年に同社の完全子会社となった。レイクチャールス製油所の精製能力は459,800バレル/日である。

■「発災タンク」は貯蔵タンクと報じられているだけで、タンク仕様の詳細はわからない。グーグルマップで調べると、発災タンクは直径約20mの固定屋根式円筒タンクである。高さを1518mとすれば、容量は4,7105,650KLとなり、5,000KL相当のタンクとみられる。油種はわからない。

 落雷によって火災が発生したが、被災写真でみると全面火災の様相のように見える。落雷時にタンク屋根が噴き飛んだか、激しい火炎によってタンク屋根が落下したかは分からない。

■「消火活動」の詳細は分からない。直径20mのタンクの全面火災では、大容量泡放射砲システムは必要ない。通常、三点セット(放水能力3,000リットル/分の大型化学消防車1台)でよいとされている。

所 感 

■ タンク火災は落雷によるとみられる。タンク被災写真を見ると、タンク側板の上部が焼けて色が変わっており、タンク一杯に油が入っていたものと思われる。油種はわからないが、軽質油で爆発混合気がタンク上部に形成していたのだろう。タンクは固定屋根式円筒タンクであるが、火災写真では、全面火災の様相のように見える。落雷時にタンク屋根が噴き飛んだか、激しい火災によってタンク屋根が落下したものとみられる。

■ 直径約20mのタンクの全面火災であれば、大容量泡放射砲システムは必要なく、放水能力3,000リットル/分の大型化学消防車で消火できるといわれている。通常、消火活動は20分以内に制圧できなければ、難しいタンク火災だとみられる。今回、消火までに約3時間半かかっており、かなり難儀した消火活動だった。消火戦術が適当でなかったか、あるいはタンク屋根が液面に落下し、障害物あり全面火災だったものと思われる。実際のタンク火災にはいろいろな問題が発生し、簡単ではないという事例のひとつであろう。


備 考

 本情報はつぎのインターネット情報に基づいてまとめたものである。

     Reuters.com, Lightning strike causes tank fire at Citgo‘s Lake Charles refinery on Thursday,  July  11, 2025

     Kplctv.com, Tank fire extinguished at CITGO after lightning strike,  July  11, 2025

     Joiff.com,  USA – Lightning Strike Sparks Tank Fire at CITGO’s Lake Charles Refinery,  July  14, 2025

     Knoe.com, Tank fire extinguished at CITGO after lightning strike,  July  11, 2025

     Ksla.com, Tank fire extinguished at CITGO after lightning strike,  July  11, 2025

     Dailydispatch.com, Tank fire extinguished at Louisiana CITGO after lightning strike,  July  11, 2025

     Americanpress.com, Citgo tank catches fire during lightning strike,  July  10, 2025

     Facebook.com, A tank is on fire at Citgo after a thunderstorm moved through the area,  July  11, 2025

     Theadvocate.com, Lake Charles refinery struck by lightning, causing a fire,  July  10, 2025


後 記: 今回の事例はいつも言っているように上空からの映像が効いています。事業者のシトゴ・ペトロリアム社は電子メールの声明で、「火災はすぐに消し止められ、負傷者はいなかった」と述べています。人によって「すぐに」のとらえ方が異なりますが、普通のひとは制圧までに3時間半かかるようなタンク火災の上空写真を見れば「すぐに」の印象は違うはずです。今回の事故の住民による目撃情報はソーシャルネットワーク(SNS)のフェースブックに掲載されたものから引用したものです。メディア情報の質が変化してくれば、このようなタンク事故の情報も変えていく必要がありそうです。

2025年7月13日日曜日

ローマのガソリンスタンドで壊滅的な爆発・火災、死傷者45名

  今回は、202574日(金)、イタリアのローマにあるガソリンスタンドでLPガスが漏れ、LPガス用タンクローリーが爆発してガソリンスタンドが壊滅的な被害となり、死傷者45名を出した事故を紹介します。

< 発災施設の概要 >

■ 事故があったのは、イタリア(Italy)ローマ(Rome)東プレネスティーノ地区(Prenestino)にあるエニ社(Eni)のガソリンスタンドで、LPガス(液化石油ガス:LPG)も取扱っているガソリンスタンドだった。 

■ 発災があったのは、ガソリンスタンドにあるLPガス用の燃料タンクやタンクローリーの設備である。

< 事故の状況および影響 >

事故の発生

■ 202574日(金)午前8時過ぎ、ガソリンスタンドで大規模な爆発が起こった。爆発は2回あり、2度目の爆発が大規模で、大量のLPガスを積載していたタンクローリーの破裂が原因だった。

■ 大きな炎と煙が空高く舞い上がり、爆発音は首都のローマ全域に響き渡った。近隣では、建物数棟が損傷し、多くの建物の窓ガラスが割れて飛び散るなどして住民にも被害が及んだ。鋼材の破片などが遠くへ吹き飛び、中には数百メートル先まで飛んだ石膏の破片もあった。

■ 住民のひとりは、「燃えるキノコ雲が上空に現れ、あたり一面が揺れた。破片らしいものが空中を飛び回っていた」と語った。また、別な住民は、「家を出ようとした時に爆発音が聞こえました。とても大きな音がして、家全体が揺れました。あまりの強さにびっくりしました」と語った。

■ 74日(金)早朝に、トラックが公共施設の配管に衝突したという通報を受け、消防隊や警察官が呼び出され、爆発発生時に現場にいた。到着後、2度の爆発が発生した。

■ 警察のパトロール隊は、当該地域の交通整理を行い、カジリーナ通りからチェッコ・ドゥランテ通りまでのゴルディアニ通りの通行止めが行われた。

■ 最初、小さな爆発があり、その後間もなく、火災が発生し、つぎに2度目のより大きな爆発が一帯を揺るがした。爆発後の火災によってガソリンスタンドは広範囲に延焼し、隣接する建物にも被害が及んだ。

■ 最初の爆発の直後に、隣接するスポーツセンターを含む近くの建物にいる人たちが警察などの緊急対応チームによって避難していた。このため、もっと深刻な悲劇を回避できた。

■ 住民のひとりである主婦は、最初の爆発音を聞いたとき、彼女と娘は軽傷を負ったが、次の爆発が襲う前に家を出たといい、「2度目の爆発音が聞こえた途端、私たちも火の玉に襲われました。近くの車が爆発したのかと思いました。金属片が空中に飛び散っていました。皮膚に熱さを感じました。娘の腕はまだ赤く、本当にひどい状態でした」と語っている。

■ 大きな爆発後、消防署は15の消防隊を出動させ、火災の鎮火に努めた。

■ 事故の発端は、LPガスタンクからタンクローリーへLPガスを補給作業中にLPガスが漏れたことである。

ガソリンスタンドの敷地内にLPガスが浸入し、発火して最初の爆発と火災が起きた。この爆発では、ガソリンスタンドの敷地外にも小規模な火災を引き起こした。現場では、警察官や消防隊員が活動しており、その間にもガス漏れは続き、その結果、大量のLPガスを積んでいたタンクローリーが倒壊し、さらにより大きな2回目の爆発を引き起こしたとみられる。この爆発は燃料補給中の技術的な不具合が原因であったという。

 一方、タンクローリーが事故を起こしたという情報もある。プレネスティーノ地区でタンクローリーが走行中に配管に衝突し、午前8時頃にガス漏れと小さな初期爆発が発生したという。このとき、すでに警察や消防隊が現場に到着していた。

■ 事故にともない、出動していた警察官や消防士を含む45名が負傷した。負傷者45名のうち、民間人24名、警察官11名、カラビニエリ(イタリアの国家憲兵隊)1名、消防士6名、作業員3名だった。爆発直前にタンクの検査に当たっていた工場長が、事故から5日後、繊細な手術を受けたにもかかわらず、病院で亡くなった。

■ 地元住民の避難者は合計約50名だった。

■ 現場近くにあるテアノ地下鉄駅は閉鎖された。

■ ユーチューブなどでは、事故の状況が投稿されている。

 YoutubeMaxi esplosione e incendio in un distributore di carburanti a Roma2025/07/04

    ●InstagramRoma, il momento esatto dell’esplosione al benzinaio: i vigili del fuoco erano già sul posto 2025/07/04

    ●YoutubeLe impressionanti immagini dell'esplosione in un distributore di benzina a Roma, il nuovo video2025/07/04

被 害

■ ガソリンスタンドの地上設備が全壊した。タンク内部の油やLPガスが焼失した。 

■ 45名の死傷者が出た。内訳は死者1名、負傷者44名である。

■ 住民約50名が避難した。

■ 隣接していた建物が被災した。

■ 近くの道路が交通遮断され、地下鉄の駅が閉鎖された。 

< 事故の原因 >

■ 火災の原因ははっきりしていない。

 事故の発端は、LPガスタンクからタンクローリーへLPガスを補給作業中にLPガスが漏れたことである。

ガソリンスタンドの敷地内にLPガスが浸入し、発火して最初の爆発と火災が起きた。現場では、警察官や消防隊員が活動しており、その間にもガス漏れは続き、その結果、大量のLPガスを積んでいたタンクローリーが倒壊し、さらにより大きな2回目の爆発を引き起こしたとみられる。この爆発は燃料補給中の技術的な不具合が原因であったという。

 一方、タンクローリーが事故を起こしたという情報もある。プレネスティーノ地区でタンクローリーが走行中に配管に衝突し、午前8時頃にガス漏れと小さな初期爆発が発生したという。このとき、すでに警察や消防隊が現場に到着していた。

< 対 応 >

■ 火災は、3時間後の午前11時過ぎにほぼ消し止められたが、ガソリンスタンドは全焼した。捜査当局が爆発の原因を調べている。

■ 爆発で破壊された近くのスポーツセンターの責任者によると、最初の火災は午前730分頃に発生したといい、「午前8時半かそれ以降に起こっていたら、もっと大惨事になっていただろう」といい、同氏によると、「サマーキャンプのために約60名の子供たちが集まる予定で、その日の朝には約120名がプールの利用を予約していた」と語っている。

補 足

■「イタリア」(Italy)は、正式にはイタリア共和国(イタリアきょうわこく)で、ヨーロッパ南部に位置する人口約5,930万人の共和制国家である。

「ローマ」(Rome)は、イタリア中部に位置し、人口約275万人の都市である。

「プレネスティーノ地区」(Prenestino)は、プレネスティーノ=ラビカーノでローマの第 7 地区であり、 人口約68,000人の町である。

■「エニ社」(Eni)は、1953年、エンテ・ナツィオナーレ・イドロカルブリ(Ente Nazionale Idrocarburi)として設立された公的機関で国のエネルギー政策の再構築を任務としたが、1995年、株式公開企業となり、現在、主に石油、天然ガス、石油化学製品を扱うイタリアのエネルギー会社である。

 東プレネスティーノ地区のガソリンスタンドの詳細はわからないが、LPガスを取扱うガソリンスタンドである。

所 感

■ ガソリンスタンドの壊滅的な爆発・火災だが、事故経緯ははっきりしない。

 事故の発端は、LPガスタンクからタンクローリーへLPガスを補給作業中にLPガスが漏れたことである。ガソリンスタンドの敷地内にLPガスが浸入し、発火して最初の爆発と火災が起きた。現場では、警察官や消防隊員が活動しており、その間にもガス漏れは続き、その結果、大量のLPガスを積んでいたタンクローリーが倒壊し、さらにより大きな2回目の爆発を引き起こしたという。

 一方、タンクローリーが事故を起こしたという情報もある。プレネスティーノ地区でタンクローリーが走行中に配管に衝突し、午前8時頃にガス漏れと小さな初期爆発が発生したという。

■ 燃料補給中の技術的な不具合が事故の要因であったというが、この技術的な不具合の内容はわからない。制御システムのミスという話もあるが、事故に至る経過がはっきりしない。いずれにしても事故は人が関わる人的要因である。  

■ 火災は、3時間後の午前11時過ぎに消し止められたが、消火活動の詳細は報じられていない。被災現場の写真を見れば、一連の爆発から続いた火災はすでに手の施しようのない状態だっただろう。特に変わったガソリンスタンドではないようだが、45名の死傷者を出す事故が起こり得るということを認識させる事故である。これまでのガソリンスタンドの壊滅的な事故は、つぎのような事例を紹介した。

 ●「米国アイダホ州のガソリンスタンドで壊滅的な爆発・火災、死傷者4名」202410月)

 ●「ロシア連邦チェチェン共和国のガソリンスタンドで壊滅的な爆発、死傷者9名」202410月)

 ●「米国オハイオ州の地下貯蔵タンクが落雷で爆発、地表にクレーター」20158月)


備 考

 本情報はつぎのインターネット情報に基づいてまとめたものである。

   Jp.reuters.com,  ローマ東部でガソリンスタンド爆発、警察官・消防士ら45人負傷,  July  05,  2025 

   News.yahoo.co.jp,  ローマのガソリンスタンドで大規模爆発 45人ケガ,  July  05,  2025  

   Sankei.com,  ローマのガソリンスタンドで大爆発、30人以上けが LPガス搬入作業中にガス漏れか,  July  04,  2025

   Newsdig.tbs.co.jp, ローマのガソリンスタンドで爆発 35人負傷 “ガス漏れで警察官ら活動中に,  July  04,  2025

   News.sky.com, 29 injured in Rome petrol station explosion and fire,  July  04,  2025

   Bbc.com,  Explosion injures 45 people at petrol station in Rome,  July  04,  2025

   Nytimes.com, Explosion at Gas Station Booms Across Rome,  July  04,  2025

   Apnews.com, Rome gas station blast that left at least 40 injured could have been worse, says mayor,  July  05,  2025

   Euronews.com, Rome petrol station explosion injures 25, damages buildings and vehicles,  July  04,  2025

   En.ilsole24ore.com, Gas tank explodes in Rome: 45 injured in hospital, two are serious,  July  04,  2025

   Rainews.it,  Esplode pompa di benzina a Roma: 50 feriti, due in pericolo di vita. Ora preoccupa l'aria,  July  05,  2025

   Tg24.sky.it, Esplosione a Roma, incendio in distributore benzina: diversi feriti, alcuni gravi,  July  04,  2025

   Ansa.it/sito, Emorto uno dei due feriti per la violenta esplosione a Roma,  July  09,  2025

   Ilpost.it, Un distributore di benzina è esploso a Roma, 45 persone sono state ferite,  July  04,  2025           


後 記: ローマの真ん中でガソリンスタンドが壊滅的な事故を起こすなんて信じられないという事例です。日本語圏や英語圏のメディアでも取り上げられた事故です。ところが、事故の経過内容をみると、メディアによって事故の内容が異なっています。どうもイタリアのメディア情報が系列のメディアに流れ、事故の内容に差が出てるようです。発言は個人の自由ですが、メディア情報をいくら調べても、事故の内容が深まりません。A案、B案、C案と列記する方法もあるのでしょうが、それでは読み手が混乱を起こし、さっぱり分からないということになってしまいますので、もっとも妥当と思う内容に絞りました。事故内容もそうですが、負傷者数にしてもいろいろなデータが出ていますので、内訳を記載した記事にしました。