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2021年5月24日月曜日

防油堤内の配管フランジ漏れ火災に対処する方法

  今回は、“Industrial Fire World”2021414日に掲載された「制御できない圧力火災に対処する方法」(How to Deal with Uncontrolled Pressure Fires)について紹介します。

< 背 景 >

■ 「パーフェクト・ストーム」(Perfect Storm)とは、複数の悪い事が同時に起き、最悪の壊滅的な事態になることを指す言葉である。タンク火災の緊急事態において複数の悪い事象の中には、冷却水を使いすぎたり、ボルト締付け型フランジからの漏れによって生じる制御できない圧力火災が起こったりする。 この複数の悪い事象から、防油堤内の区域にあるタンクがすべて被災する結果になるかもしれない。

< タンク火災時の現場における問題 >

■ タンク火災といっても、他のいかなる火災時における緊急事態と変わりはない。最初の消火戦略は防御的戦略をとる。すなわち火災を制御し、延焼を回避することである。そのような状況を維持できれば、それから積極的戦略をとって火災を消火することができる。

■ ほとんどの消防士は、火災になったタンクやそのまわりの状況についてトンネル視、すなわち視野や思考が狭くなりやすい。 よくある衝動的行動は、火災になったタンクや隣接するタンクに対して水による冷却を始めることである。これは一見、つぎのような大きな脅威をもたらしかねないという合理的な反応であるようにみえる。

 ● 内部浮き屋根式タンクの場合、通気口から吹き出す炎の輻射熱によって別のタンクに火災が広がらないだろうか。 

 ● 防油堤内で漏れている配管フランジから噴出する圧力をもった炎が他の配管やタンクに直接衝突するかもしれない。

■ 産業消防分野の活動に携わってから40年経っているが、輻射熱だけで発火した内部浮き屋根式タンクや固定屋根式タンクは知らない。火災がタンクからタンクに広がるには、火炎が直接、タンクに衝突する必要がある。強風時でさえ、炎が直接的に衝突するには、もっとも近い隣接タンクでも十分な距離があるといえる。

■ API RP 2021Management of Atmospheric Storage Tank Fires;常圧貯蔵タンク火災の管理 )には、「直接火炎に触れているか、塗装が焦げるほどの輻射熱を受けていない限り、隣接するタンクの冷却は一般的に不要である」とし、過剰に冷却水を使うことを警告しており、われわれの経験と一致している。防油堤内に放出された冷却水は溜まっていき、その表面で燃えている燃料が他のタンクや配管に広がっていく可能性がある。

■ 従って、まず第一に重要なことは冷却放水を制限することである。 これは、他の配管を損傷させて油を供給して堤内火災に至ったり、あるいは別のタンクに火がつく原因になる直接衝突する火炎を作らないようにするためである。

■ もしも火炎衝突に冷却放水を適用した後には、圧力のかかったフランジの漏洩火災を制御し、他のタンクとおたがいに接続された他の配管を危険にさらすことがないようにしなければならない。火災が別なフランジ部やシール部に広がると、さらに多くの燃え得る油が防油堤内に流出することになる。防油堤内で火災が増えると、貯蔵タンクへの直接的な炎の衝突が増え、火災はさらに拡大していく。

■ 実際にボルト締付型フランジが漏れて、噴出し、燃えている状況の火災にどのように対応するか。通常、圧力配管の火災に対応するためのトレーニングには、テキサスAMにおける規模の大きいプロセス装置による火災訓練がある。漏洩箇所の上方で衝突しているすべての炎は、火災が広がらないことをインストラクターが確信するまで冷却される。

■ 次に、チームリーダーは漏れを遮断するためのバルブを閉止するように振る舞うが、このとき同時に訓練の燃料担当者が燃料を閉止して火が消える。これは訓練で簡単にできるかもしれないが、タンク防油堤内のボルト締付型フランジが漏れているという現実の世界では簡単にいかない。多くのタンク火災では、漏洩しているフランジ火災を制御するバルブは燃焼している中央部にあるのが一般的である。

< フランジの漏れ制御 >

■ 実際のバルブを閉止したり、漏れを止めたりしたりして、フランジ火災をできるだけ無くすめにできる有効な方策や操作はあるか?

■ 最も成功する可能性のある方法は、漏れているフランジのある配管内に膨張させた泡溶液をポンプで圧送することである。十分に膨張した泡溶液の流れがあれば、漏れている燃料を大幅に減らしたり、完全に無くすことができる。泡と水がフランジから漏れている間に、有効な防護を施した消防士またはメンテナンス・スペシャリストが漏れを止めることができる。漏れを止めるには、フランジのボルトを増締めするだけで止まることもあるし、あるいは古いボルトを1本づつ新しいボルトと交換し、取り付けられていたようにボルトを締めればよい。フランジがまだ漏れている場合は、標準的なフランジ補修用クランプを用いるのがよく、地元の製油所、発電所、石油化学プラントに問い合わせれば見つかる可能性がある。

■ ボルト締めフランジの漏れを制御する方法は、可燃性液体に関する特別な火災訓練のひとつとして実施すべきである。

■ 圧力のある配管内で泡溶液を膨張(通気)させるには、高背圧発泡器( High Back Pressure Foam Maker)が必要である。この機器は泡溶液に空気(またはエアレーション)を追加する際に必要なもので、従来、貯蔵タンクの底にポンプで送り込み、 SSI方式(液面下泡放射方式)という名で知られているタンク火災を消すための重要な機器だった。 SSI方式(液面下泡放射方式)のシステムは、古い貯蔵タンクではいまでもよく見られる。このことは、エアレーションされた泡を漏れている配管に入れるために必要な機器は、いまでも活用できることを意味している。不足しているのは、フランジ漏洩火災において高背圧発泡器を使用する方法を消防士に訓練することだけである。

■  SSI方式(液面下泡放射方式)という芸術的ともいえる方法はほとんどがお役御免になった。なぜか? タンク火災に対するSSI方式(液面下泡放射方式)の適用は水成膜泡薬剤の導入とともに1970年代にさかのぼり、これは液面下放射に耐え得る最初の消火泡薬剤だった。

< タンク火災への対応 >

■ 防油堤内の火災を制御下に置ければ、消火戦略は積極的戦略に進むことができ、タンク火災または複数タンク火災の消火活動を行うことになる。屋根が噴き飛ばされているタンクや、屋根と側板の溶接部が破断して大きな開口部があるタンクでは、泡の流量を計算し、安全率をさらに多くとり、赤い炎の上を白い泡で覆いつくすときである。

■ しかし、内部浮き屋根式タンクで外側の屋根が開口していない場合、タンク内に泡を入れる別の方法を見つける必要がある。防油堤内火災が制御されていても、内部浮き屋根式タンクが6日間もベント部で燃え続けたのを見たことがある。このとき、タンク内に泡やドライケミカルを入れる方法を試みる時間は十分にあった。

■ 最も有効だった方法のひとつは、消火に必要な泡の流量を計算し、泡をタンク内の液面下にポンプで送り、泡のホースと接続した自作のパイプをクレーンで吊り上げ、パイプの開放端を屋根上部の開口部に挿入することである。あるいはタンク径の周りにある通気口のいくつかに泡を強制的に放射するストレート・チップ型の地上用モニターを配置したことである。場合によっては、これらの方法を同時に使ってタンクを消火したこともあった。

■ 原油が燃えるタンク火災については明らかに注意しなければならない。ボイルオーバーに至った内部浮き屋根式タンク火災のケースが2件あった。 1件はベント部で7日間燃えていたが、突然、噴出した事例である。もう1件は、 SSI方式(液面下泡放射方式)で泡を注入する前に何時間も燃えていた原油タンクでボイルオーバーが発生した事例である。

■ 熱を克服するのに十分な水分をとるのは簡単であるが、貯蔵タンクの消火活動ははるかに複雑である。地上で生じた圧力のある火災をすばやく解決することで、1つの小さな事象によって大きな防油堤内火災となり、複数のタンク火災に変わるのを防ぐことができる。これが教え始める必要のある教訓である。

所 感

■「フランジの漏れを制御する方法は、漏れているフランジのある配管内に膨張させた泡溶液をポンプで圧送することである。膨張した泡溶液の流れがあれば、漏れている燃料を大幅に減らしたり、完全に無くすことができる」という対応策は初めて聞いた。 このため、SSI方式(液面下泡放射方式)の高背圧発泡器を活用するという経験からの話は興味深い。

■ 一方、「泡と水がフランジから漏れている間に、有効な防護を施した消防士またはメンテナンス・スペシャリストが漏れを止めることができる」という対応は、日米の消火戦術の違いを感じる。米国では、発災があっている防油堤内に人が入っていくが、日本では、通常、堤内に人が入ることを嫌う。嫌う理由は定かでないが、事故事例の体験やテキサスAMなどでの火災訓練による違いだと思う。

■「多くのタンク火災では、漏洩しているフランジ火災を制御するバルブは燃焼している中央部にあるのが一般的である」と話されているが、日本では防油堤内にポンプや孤立用手動バルブを設置しないという考え方があり、昔からの設備を除けば、通常では考えられないことであろう。しかし、タンク内の自動水切り装置や配管などを考えれば、まったく無いとはいえない。

■「原油が燃えるタンク火災については明らかに注意しなければならない。ボイルオーバーに至った内部浮き屋根式タンク火災のケースが2件あった」といい、これまで聞いたことのない事例であり、詳しい経緯を聞きたいと思うような資料である。


備 考

 本情報はつぎのインターネット情報に基づいてまとめたものである。

    Industrialfireworld.com, How to Deal with Uncontrolled Pressure Fires,  April 14, 2021 


後 記: 今年にはいってから貯蔵タンクの事故情報を紹介したのは2件だけです。新型コロナウイルスによる影響だと感じます。それで、今回も「Industrial Fire World」からの情報を紹介することとしました。しかし、この英文資料は最初に「パーフェクト・ストーム」(Perfect Storm)という言葉が出てきて難儀しました。調べると「パーフェクト・ストーム」とは2000年に製作された映画の題名でした。いまでは、複数の悪い事が同時に起き、最悪の壊滅的な事態になることを意味するそうです。このように技術資料では見ない言葉や表現が使われており、その典型は「put the white stuff on the red stuff」という文がありました。「stuff」は物質や材料を言いますが、直訳すれば、「赤いものの上に白いものを置く」で何を意味するのか見当がつきませんでした。いろいろ考えて「赤い炎の上を白い泡で覆いつくす」としましたが、文意からまるっきり違っていることはないでしょう。

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