(写真はCbc.caから引用)
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< 発災施設の概要 >
■ 事故があったのは、米国のペンシルバニア州(Pennsylvania)南部のカンバランド郡(Cumberland
County)ハンプデン(Hampden Township)にあるゼニス・エナージー社(Zenith
Energy)のメカニクスバーグ・ターミナル(Mechanicsburg Terminal)のタンク施設である。
■ 発災があったタンク施設は、ウェズリーとシャイマンズタウンの間のシンプソン・フェリー通りにある。施設にはタンクローリー・ステーションが4基あり、ガソリン、軽油、暖房油をハリスバーグ市場に出している。貯蔵タンクは7基あり、貯蔵能力は378,000バレル(60,100KL)である。
ゼニス・エナージー社のメカニクスバーグ・ターミナル付近 (矢印が発災場所)
(写真はGoogleMapから引用)
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< 事故の状況および影響 >
事故の発生
(写真はWgal.comから引用)
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■ 2018年6月7日(木)午後12時15分頃、メカニクスバーグ・ターミナルのタンク施設で火災が起きた。
■ 施設の従業員がガソリンを配管を通じてタンクから別なタンクに移送していたときに、火災が起こった。
当時、作業員が呼び径10インチの配管(パイプライン)のメンテナンスを行っていた。
■ 事故発生に伴い、消防署に通報が入り、消防隊が現場に出動した。消防隊は8台の消防車、2台のはしご車、1台の救助車で出動するとともに、カンバランド郡とダフリン郡からハズマット隊(HazMat)が出動した。このほか、カーライル陸軍施設とハリスバーグ国際空港の消防隊が出動した。空港消防隊は空港用化学消防車を待機させ、もしもタンク本体に延焼する事態になったら、消火用泡放射を行い、支援する体勢をとった。
■ 消防隊は、火災になった配管に隣接するタンクへの冷却に注力した。
■ およそ1時間の活動の後、火は消防隊によってその日の午後に消された。しかし、消火後も、ガソリンが配管の近くで漏れ出ていた。ハズマット隊(HazMat)が漏れを構内に限定させようと努めた。消火した後も数時間、消防隊は現場に待機し、タンクへの注水を行い、泡消火剤の補給を行った。
■ 事故に伴うけが人の発生はなかった。また、構内から避難する必要はなく、住民への危険も無かった。漏洩による水源への汚染はなかった。
■ ゼニス・エネルギー社は、関係するパイプラインを停止するとともに、ターミナルの操業を中止した。
■ 道路はウェズリー・ドライブとシーリー・レーンからラップ・アベニューまでの間、閉鎖されており、この地域で大きな交通マヒを引き起こした。
被 害
■ 呼び径10インチのガソリン配管が焼損した。付近の配管などの設備も被災しているが、損害状況は分かっていない。
■ 事故に伴う負傷者の発生はない。避難した住民もいない。
■ タンク・ターミナル前の公共道路が閉鎖され、交通マヒが起こった。。
< 事故の原因 >
■ 事故の原因は分かっていない。調査には、数週間かかるとみられている。
(写真はPennlive.comから引用)
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(写真はWgal.comから引用)
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待機する空港用化学消防車 (写真はPennlive.comから引用)
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(写真はPennlive.comから引用)
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< 対 応 >
■ 火災対応に出動した消防隊員など緊急対応人員は約70名だった。
■ ゼニス・エナージー社の広報担当は、「ハンプデン消防署、地方警察、その他の自治体当局に対して迅速な火災の消火に感謝を申し上げる。また、道路閉鎖による交通マヒによって車のドライバーに多大な迷惑をお掛けしたことを陳謝します」と語った。
■ 同タンク・ターミナルでは、2013年7月、家庭用暖房油で満杯の200万ガロン(7,560KL)タンクが落雷によって壊れた事例がある。この事故では、環境災害を回避するため、損傷タンクから燃料油を排出した。そして、約300人の人々が4時間にわたって自宅から避難した。
2013年7月のタンク事故 (写真はLowerallenfire.comから引用)
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補 足
米国におけるペンシルバニア州の位置
(図はNizm.co.jpから引用)
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■ 「ペンシルバニア州」(Pennsylvania)は、米国の北東部に位置する州で、人口約1,270万人である。
「カンバランド郡」(Cumberland
County)は、ペンシルバニア州の中央部南に位置し、人口約235,000人の郡である。
「ハンプデン」(Hampden
Township)は、カンバランド郡(Cumberland County)にある町で、人口は28,000人である。
■ 「ゼニス・エナジー社」(Zenith
Energy Inc.)は、北米、欧州、中南米においてタンク・ターミナルを有する石油物流会社である。タンク・ターミナルは自社で建てるほか、購入することが多く、現在、世界で24箇所のタンク・ターミナルを所有している。
ハンプデンには、16エーカーの土地に貯蔵能力378,000バレル(60,100KL)のメカニクスバーグ・ターミナルを保有している。タンク・ターミナルはガルフ・オイルからアークライト・エナージー社へ売却され、さらに最近、ゼニス・エナジー社が購入したものである。
発災場所に隣接するタンクは、グーグルマップによると、直径約13mと直径約22mの2基である。それぞれ、高さを約15m、約26mと仮定すれば、両タンクの容量は2,000KLクラスと10,000KLクラスとなる。
メカニクスバーグ・ターミナルの発災場所付近 (矢印が発災場所)
(写真はGoogleMapから引用)
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所 感
■ 今回の事故は、ガソリンタンクのパイプライン関連の配管事故である。施設の従業員がガソリンをタンクから別なタンクに移送していたときに、火災が起こったという一方、作業員が呼び径10インチの配管(パイプライン)のメンテナンスを行っていたという。この両者の作業が関連しているかどうかは分からない。いずれにしても、人為的なことが関係していると思われる。また、タンク・ターミナルは、最近になって2度も経営者が変わって
おり、事故の背景になっていることも考えられる。
■ 消防活動がどのように行われたか詳細には分からないが、発災現場から約20km離れたところにあるハリスバーグ国際空港の空港用化学消防車を待機させたのは、適切な判断である。結局、配管の火災だけで済んだので、無駄な待機だったと言えるが、事故では、最悪の事態を想起しておくことが必要である。
備 考
本情報はつぎのインターネット情報に基づいてまとめたものである。
・Cumberlink.com ,
Crews Quickly Control Fire at Fuel Storage Facility in Hampden Township
, June 07 2018
後 記: 最近、感じていることは、米国の事故情報は速いのですが、内容が伴っていないというか、正しい情報ではないことが多くなってきたように思います。その要因はふたつあると思います。ひとつはインターネット情報のため、速さを競うのではないかと思います。もうひとつは、報道関係の人員が減っているのではないかと思います。このため、読み手のことを考えるのではなく、速ければよいという風潮になっているのではないでしょうか。例えば、今回の事例でいえば、消防活動時間が報道によってバラバラです。数時間かかったというものから8分で消火したというものまで、いろいろです。発災時間(消防への通報時間)については記載がありますが、消火時間について書かれたものはありませんでした。このブログを書く立場からすれば、悩みの多い状況ですね。
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