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2016年10月11日火曜日

中国河北省の原油備蓄タンク基地で防災訓練

  今回は、2016年3月31日(木)、中国河北省唐人市の曹妃甸工業区にある中石化集団石油商業備蓄公司の原油備蓄タンク基地で行われた防災訓練について紹介します。
写真Ts.hebnews.cn から引用)
< 防災訓練のあった施設の概要 >
■ 防災訓練があったのは、中国河北省(ホーペイ/かほく省)唐人市(タンシャン/とうざん市)の曹妃甸(カォフェイディエン/そうひてん)工業区にある中国石油化工(Sinopec)系の中石化集団石油商業備蓄公司の原油備蓄タンク基地である。

■ 曹妃甸工業区にある原油備蓄基地は、容量10万KLの浮き屋根式タンクが32基あり、総容量320万KLの貯蔵タンク施設である。この基地は河北省の中で最も大きい石油貯蔵タンクの施設である。
河北省唐人市の曹妃甸工業区付近 (訓練のあったのは右上のタンク群)
(写真はGoogleMapから引用)
曹妃甸にある中石化集団石油商業備蓄公司の原油備蓄基地   
(写真はBlog.sina.com.cnから引用)
< 訓練の状況 >
■ 2016年3月31日(木)、河北省消防本部が大規模原油タンク施設を対象にした防災訓練を曹妃甸工業区にある原油備蓄基地で行った。

■ 事故想定は、容量10万KLの原油タンクに落雷があり、浮き屋根シール部で着火し、火災が発生したというものである。発災に伴い隣接タンクへの影響のほか、地元の生活地区への影響があるという想定で進められた。

■ 訓練は、中石化集団石油商業備蓄公司の原油備蓄基地から事故発生の通報があり、唐人市消防署の出動によって始まった。唐人市消防署のほか、石家荘、張家口、奏皇島、滄州の各市消防署からの増援があった。このほか、唐人市公安局および市役所が訓練に参加した。

■ 訓練には、総員350名、車両56台が参加した。消火活動に使用されたのは、大型高性能消防車、長距離送水装置、大型泡モニター、消防用無人偵察機システムなどである。
         曹妃甸の原油備蓄基地で行われた防災訓練  (写真はChinanews.comから引用)
           曹妃甸の原油備蓄基地で行われた防災訓練  (写真はChinanews.comから引用)
曹妃甸にある中石化集団石油商業備蓄公司の原油備蓄基地   
(写真はBlog.sina.com.cnから引用)
補 足
   中国河北省 (図はPref.nagano.lg.jp.から引用)
■ 「河北省」(ホーペイ/かほく省)は、中国(中華人民共和国)東部にある行政区で、河北とは黄河の北にあることに由来する。人口約6,800万人で、省都は石家荘である。
 「唐人市」(タンシャン/とうざん市)は河北省の東部に位置する地級市で、市区人口は約300万人である。
 「曹妃甸(カォフェイディエン/そうひてん)工業区」は、中国国家重点プロジェクトとして唐人市沿海地区において港区建設と工業区の開発が行われた。曹妃甸は渤海湾の最深部に隣接し、水深36mほどの港として最適な条件を有している。30万トン級のオイルタンカーが直接接岸できる原油埠頭が先行して建設され、同時に原油備蓄タンク基地が建設された。

■ 防災訓練のあった唐人市曹妃甸工業区にある原油備蓄タンク基地は、中国石油化工(Sinopec)によって計画され、中石化集団石油商業備蓄公司(中石化集团石油商业储备公司の唐山曹妃甸分公司)が建設・運営している。容量10万KLの浮き屋根式タンクが32基あり、総容量320万KLの貯蔵タンク施設である。グーグルマップによると、タンク直径は約78mであるので、高さ(液面)は約21mである。唐人市には、同じく港地区に中国石油化工(Sinopec)の原油備蓄タンク基地が建設されている。タンク基数は、以前は8基だったが、グーグルマップによると、さらに8基が増設中である。タンク直径は約78mと防災訓練のあった基地のタンクと同仕様だとみられ、10万KL×16基で総容量160万KLとなる。
曹妃甸にある中石化集団石油商業備蓄公司の原油備蓄基地   
(写真はGoogleMapから引用)
唐人市にある別な中石化集団石油商業備蓄公司の原油備蓄基地   
(写真はGoogleMapから引用)
唐人市にある別な中石化集団石油商業備蓄公司の原油備蓄タンク基地   
(写真Blog.sina.com.cn から引用
■ 中国の「国家原油備蓄基地」の第1期建設は、遼寧省大連(10万KL×30基)、山東省青島(10万KL×32基)、浙江省舟山(10万KL×30基)、浙江省鎮海(10万KL×16基)の4箇所から始まった。その後、原油だけでなく石油製品を含めた「戦略石油備蓄」と称する計画が行われ、第2期として浙江省舟山(10万KL×20基の増設)と浙江省鎮海(10万KL×36基増設)で増設されたほか、河北省唐人、甘粛省蘭州、新疆ウイグル自治区ピチャン、天津市などでタンク建設が始まっている。さらに、第3期計画として海南省洋浦、河北省曹妃甸などで計画されているといわれ、2020年までに完成させる計画だという。

 しかし、備蓄を含めて石油の戦略投資計画と実行は「中国三大国有石油会社」(中国石油天然ガス集団公司:CNPC=ペトロチャイナ、中国石油化工集団公司:Sinopec、中国海洋石油総公司:CNOOC)が行っており、これらの国有会社からの発表がなければ、実態の把握は難しいといわれている。今回の防災訓練に伴い、調べてみると、第3期とみられる河北省曹妃甸の原油備蓄タンク基地(10万KL×32基)は完成しており、第2期と思われる河北省唐人の原油備蓄タンク基地は10万KL×8基が完成し、さらに8基が建設中である。河北省唐人市合計では480万KLになるが、同市によると、将来的には、1500万KLの戦略石油備蓄基地になる計画だという。
                  中国の戦略石油備蓄基地   (図はKyoto-seikei.comから引用)
■ 「消防用無人偵察機」とは、無人小型ヘリコプターやドローンを使った監視装置である。中国では、2011年頃には無人小型ヘリコプターの消防用無人偵察機が使用されている。最近では、圧倒的にドローン型のものが多い。
中国の消防用無人偵察機の例 
(写真はYyanyh.blog.163.com Gs.people.com.cn News.ifeng.comから引用)
 日本でも、総務省消防庁が導入を検討し、実際に千葉市とさいたま市で配備されたほか、田辺市でも導入されている。
     さいたま市消防局および千葉市消防局の配備例
     和歌山県田辺市での導入例

所 感
■ 中国の石油貯蔵タンク施設における防災訓練の概況が理解できる。主な特記事項はつぎのとおりである。
 ● 大容量泡放射砲システムが使用されている。
     中国でどの程度普及しているのか分からないが、大型石油タンクでは、大容量泡放射砲
    システムが必要と認識されているとみられる。訓練時の写真によると、複数台が使用されて
    いる。(日本の法令でいえば、直径78mのタンクでは50,000L/minの放射能力を必要とし、
    複数台で対応するのがよいと思われる)
 ● 消防用無人偵察機(ドローン)が使用されている。
     ドローンによって上空から観察することについては、日本より意識が高いとみられる。実際
    に多くの消防署で配備され、活用されていると思われる。
 ● 原油備蓄基地の貯蔵タンクには、側板に散水設備が設置されている。
     貯蔵タンクの防火対策にかなり配慮されており、固定泡消火設備のほか、側板に固定散水
    設備を設置している。これは曹妃甸だけでなく、鎮海など第1期建設で建てられた貯蔵タンク
    に共通している。

備 考
 本情報はつぎのインターネット情報に基づいてまとめたものである
  ・Ts.hebnews.cn,  全省最大规模灭火演练在曹妃甸举行(图),  April 08,  2016 
  ・Chinanews.com,  河北消防“水龙”缚百万吨原油罐“火灾”() ,   April 08,  2016


後 記: 今回の情報は別な事を調べているときに、たまたま大容量泡放射砲の画像が目についた情報から調べ始めたものです。情報源は中国国内メディアの簡体字によるものですが、漢字ですので、大方は理解でき、よく分からないところは簡体字を従来の漢字に直したり、インターネットの翻訳機能を活用しました。中国の戦略石油備蓄にも興味がありましたので、この点も調べてみました。(調べた時間からいえば、こちらの方が掛かっています) およそ10年ほど前、中国の国家石油備蓄がゼロの時代には、日本の国家石油備蓄政策に感心していたようですが、その後、急速に拡充しています。タンク建設のスピードは極めて速いというのが特徴です。さあ、これがいつまで続くでしょうか。

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