今回は、 2023年8月4日(金)から始まった米国ハワイ州のマウイ島の山火事の状況を紹介します。特に8月8日(火)から始まったラハイナの山火事では市街地に広がり、死亡者が115名発生する大きな災害となりました。
< 発災地域の概要
>
■ 発災があったのは、米国ハワイ州(Hawaii)マウイ郡(Maui)にあるマウイ島である。
< 事故の状況および影響 >
事故の発生
■ 2023年8月4日(金)午前6時頃、マウイ島で小規模の山火事が発生した。マウイ島の中部にあるカフルイ空港(Kahului)に隣接する畑で30エーカーの山火事が報告された。午後4時過ぎまでに、火災は90%鎮圧された。
■ 8月6日(日)夜にマウイ島南部にあるワイレア(Wailea)で発生した山火事は急速に進行し、 200エーカー以上が真っ黒になり、高級ホテルの宿泊者を含む約100人が避難を余儀なくされた。8月8日(火)時点では、活発な炎は発生していなかったが、消防士が監視し、ホットスポットに注意を払った。約40人の消防士が出動し、消防車7台や給水車2台などで消火活動を行った。当局によると、時速15~20マイル(風速6.7~8.8m/s)の風が吹くなど、状況は非常に厳しいものだった。しかし、ワイレアの山火事は8月8日(火)午後に100%封じ込められた。
■ 8月8日(火)午前0時頃、マウイ島内陸部のマカワオ(Makawao)付近での山火事が発生した。続いて午前11時までに、約40km離れた西岸の町ラハイナ(Lahaina)で山火事が発生した。正午には、再び内陸部のクラ(Kula)で山火事が発生した。さらに中部のキヘイ(Kihei)でも火災が発生した。消防当局によると、この日、島内4か所でつぎつぎと大規模な火災が発生したという。
■ 2023年8月8日(火)は、強風によって多数の電柱が倒れ、マウイ島では約30本の電柱が倒れたと報告され、少なくとも15の個別の停電が12,400人以上の人々に影響を与えた。その時点で、マウイ西部のいくつかの地域では、午後11時50分以来、電力が供給されていなかった。切れた電線がビデオに撮影されており、火災の発火要因として調査されている。
■ 8月8日(火)の真夜中過ぎに、クラで山火事が発生したが、住民によると、その朝、約5時間後、ラハイナでは停電が発生した。マウイ郡は、同日朝、クラ火災は数百エーカーの牧草地を焼き尽くしたが、ラハイナで発生した小規模な3エーカー(1.2ヘクタール)の山火事は収まったと発表した。
■ しかし、8月8日(火)の午後に状況は悪化した。午後3時30分頃、ラハイナの火災は突然燃え上がり、広がった。一部の住民は避難を始め、ホテル宿泊客を含むラハイナの西側の人々に避難指示が出された。その後数時間、町中に火が燃え広がる中、マウイ郡はフェイスブックに何度も避難指示を出した。
■ ハワイ王国の首都だった歴史ある町のラハイナでは、 8月8日(火)に郊外の茂みから火災が始まり、急速に進行し、山火事は草原火災となって、ラハイナの観光リゾート地の方へなだらかに傾斜している火山の麓を駆け下りた。目撃者の何人かは、事前にほとんど何も知らされていなかったと語り、炎がわずかな時間のうちにラハイナを焼き尽くしたときの恐怖を語った。住宅街は大量の黒い煙に覆われ、道路の先には、真っ赤に燃えさかる炎が見え、爆発したような音も響く。炎から逃げた人は「嵐のような炎が自分に向かってきて、すべてを包み込みました。全力で走って炎から逃げました」と語った。命を守るために太平洋の海に飛び込むことを余儀なくされた人もいる。
■ ラハイナの町は海岸沿いに丘が隣接しているため、今回の山火事では避難経路がふたつしかなかったと指摘する専門家もいる。
■ ラハイナの火災では、数時間で町の5平方マイル(13平方キロ)のエリアを焦がし、少なくとも110人が死亡し、約2,200の建物を焼失させた。
■ 住民のひとりは、ラハイナに山火事が市街地に到達したとき、ガソリンスタンドが爆発し、アパートの建物が全焼したという。
■ 8月9日(水)、当局者は、ハワイから南西数百マイルの遠くにいたハリケーン・ドーラ(Hurricane Dora)の強風が州全体に炎をあおったと述べた。国立気象局がハワイ全島に対する火災警報を表す「赤旗警告」(Red Flag Warning)と「強風注意報」が出されていた。
■ マウイ島の山火事は広い範囲に延焼を続け、沿岸部にまで到達し、煙と炎から逃れるために海に逃げた人もいた。非常事態が宣言され、11,000人以上が避難を余儀なくされた。
■ 8月11日(金)、ラハイナ火災は依然として燃え続けているが、85%は鎮火したと発表された。島内の他のふたつの山火事のうちひとつは 80%、もうひとつは 50%鎮火した。災害から三日が経過したが、火災が家を飲み込む前に警告を受けた住民がいたかどうかは不明のままだ。
ハワイには世界最大級のサイレン警報システムがあるが、マウイ島の80台の警報は鳴らなかった。マウイ島緊急事態管理庁は、「たとえサイレンを鳴らしたとしても、山腹にいる人々は救われなかったでしょう」と語り、「山にはサイレンはなく、ほとんどは海岸線にある」と付け加えた。
■ 8月14日(月)、ハワイ州知事は、臨時の通信回線を確保したことによって連絡がつかない人が2,000人台から1,300人に減ったと述べた。
■ 8月15日(火)で、山火事が発生から1週間余となり、死亡が確認された人は106人に上っているが、捜索を終えたのは被害を受けた地域全体の32%にとどまっている。焼け跡が広いうえに足場が悪いことなどから捜索活動は難航している。
■ 被害を調査しているPDC(太平洋災害センター)によると、 8月15日(火)時点で、2,200棟余りの建物が損壊し、そのうちの86%は住宅で、避難する必要がある人は4,500人に上るという。
■ 8月16日(水)、マウイ島当局者によると、8月8日に発生した4件の山火事により、これまでに推定5.7平方マイルが焼失したという。4件の火災のうち3件は8月17日(木)時点でも燃え続けており、数十人の消防士が地上と空から封じ込めラインを構築し、ホットスポットや再燃がないか監視している。
8月8日(火)に発生したマウイ島の火災のうち2件の火災は、当初、単一の火災で“ アップカントリー/クラ火災” と呼ばれていた。しかし、マウイ郡当局は、8月17日(木)、これらの火災は起源が異なる2件の火災であると判断し、今後は、オリンダ火災とクラ火災として別々に扱うとした。
■ ラハイナ火災は焼失面積3.39平方マイルでマウイ島の火災の中で最大であるが、85%鎮火した。オリンダ火災とクラ火災の焼失面積は1平方マイル強であるが、65%が鎮火した。クラでは19軒の家が焼失した。オリンダ火災とクラ火災は、アップカントリー地域の地形のせいで消火が難航し、これら2件の火災と闘う消防士らは依然として渓谷や森林、その他の到達困難な場所のホットスポットの対応を続けている。
■ オリンダ火災は1.69平方マイルを焼き、8月17日(木)時点で85%鎮火した一方、クラ火災は約0.33平方マイルが燃え、80%鎮火した。ラハイナ火災は、8月17日(木)時点で89%鎮火し、当局は「現時点で積極的な脅威はない」と発表した。
■ 8月17日(木)、火災によって多くの人が家を失い、マウイ郡が運営する避難所、友人や親戚の家、あるいは寄付されたホテルの部屋や貸別荘に避難している。元消防署の隊長は、「マウイ島では、私たちは皆、一つの大家族です。私たちはそれを“オハナ”(Ohana)と呼んでおり、家族と考えるのに血のつながった親戚である必要はありません。それがハワイのやり方です。私たちはお互いに助け合います」
と語った。
■ 8月21日(月)ハワイ州教育省によると、ラハイナを火災が襲った8月8日(火)は、生徒たちが初めて学校に戻った日だった。しかし、ラハイナルナ高校は強風による停電のためその日は休校となった。地元の中学校と小学校は 8月9日(水)に生徒を戻す予定だった。
8月8日(火)のラハイナ火災の急速な進行を知った住民は家にこどもを残しており、すぐに帰宅しようとしたが、渋滞にはまってしまう。車から降りると、警察のバリケードに直面し、帰宅ができなかった。2日後、ようやく自宅に行くことが許されたとき、家族が飼っていた死んだ犬を抱きかかえた14歳の息子の遺体を発見した。
■ 8月24日(木)時点で、マウイ島ラハイナの山火事による死亡者は115人となった。また、行方不明者は1,000~1,100人という。
被 害
■ ハワイ州マウイ島の4か所で山火事によって草原や畑が焼失した。特に、ラハイナでは市街地に延焼した。
■ ラハイナの市街地火災では、死傷者や行方不明者が出た。8月24日(木)時点で死者は115名となった。行方不明者は1,000~1,100人という。
■ 火災によって大気汚染が発生した。
< 火災の原因
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■ 火災の原因は特定されていない。
捜査当局は、送電線のダウンやハワイ州の主要電力会社であるハワイアン・エレクトリック社の判断が影響したかどうかを調べている。マウイ島中部のマカワオにあるマウイ鳥類保護センターで撮影されたビデオには、8月7日(月)午後11時直前に電柱が故障している様子が映っている。その直後、炎のようなものが見られた。これは電力網の障害によって引き起こされた可能性が非常に高いということを示す一例だという。マカワオ火災はラハイナ火災の数時間前に発生したが、火災の前にもセンサーが送電網の故障を検知していたという。この件については集団訴訟が起こされ、山火事の原因はハワイアン・エレクトリック社の通電していた電線が原因だとし、「電柱や電線が倒れ、草木や地面と接触していることを知っていたにもかかわらず、通電を停止することを選択しなかった」と指摘している。
山火事の拡大要因
■ 8月11日(金)、マウイ島の山火事が発生した8月8日(火)に警報サイレンが鳴った記録がないとハワイ州緊急事態管理庁は明らかにした。住民や観光客らが火事の危険を察知するのが遅れた可能性がある。、ハワイ州は世界最大の屋外の公共安全警報システムがあり、約400のサイレンが設置され、さまざまな自然災害を警告する仕組みになっている。しかし、壊滅的な被害を受けたマウイ島ラハイナの被災者の多くは、近くで炎を見たり爆発音を聞いたりして初めて危険に気づいたと話した。ハワイ州緊急事態管理庁は、サイレンの代わりに携帯電話やテレビ、ラジオの警報を使ったと説明した。ただ、こうした通信機能が途絶える前にこれらの警報が届いたかは明らかではない。このサイレンシステムはビッグアイランドで150人以上が死亡した1946年の津波後に作られ、そのウェブサイトには火災の警報に使用される可能性があると記載されている。
■ 8月12日(土)、米紙WSJは、ハワイの南を通過していたハリケーン・ドーラの影響で、マウイ島上空に突風が吹いていたと指摘した。当局は、強風への備えはしていたものの、火災は想定していなかったという。
気候科学者は、吹き下ろしの強い風に加えて、干ばつが続く中、耕作放棄地に草が茂っていたため、火が広がったと分析している。火災の炎は、ハリケーン・ドーラがハワイの南約700マイル(1,100キロ)を通過した際に、島々を襲った最大時速65マイル(風速28m/s)の突風によってあおられた。
■ 8月13日(日)、米国消防局はラハイナを視察した所見として「火災は極めて速く広がった。雑草が火種になって地面に近いところで水平方向に広がり、どのような初期消火も追いつかない速さで建物から建物へと燃え広がった」と分析した。
■ 8月16日(水)、山火事の被害が拡大した要因のひとつと考えられているのが、マウイ島をはじめハワイ州の島々で生息面積が広がっているギニアキビなど外来種の植物という。こうした外来種の雑草の危険性について今回の山火事が起きる前から指摘されていた。ハワイ大学の専門家は「この5年ほど、現場の消防士たちの経験では、火事の炎がより高温で速く燃え広がり、大きくなっているという話を聞くようになった」といい、「ハワイで起きる火災に変化が起きている背景には外来種の草の生育面積が拡大していることがある。これらの草は簡単に着火し、驚くほど速く高温で燃える」と指摘している。こうした外来種の草は、元々は牧草として島に持ち込まれ、近年、草の生育面積が広がった理由として2016年にマウイ島でサトウキビ栽培が終わるなどハワイ州の島々で農地面積が減ったことを挙げ、「これらの草は耕作をやめた場所を埋めるように広がっていく」という。
■ 被害が拡大した背景のひとつは、マウイ島で乾燥した日が2023年5月末頃から続き、急激なスピードで乾燥が進む“フラッシュ干ばつ” に見舞われ、燃え広がりやすい状態になっていたのではないかという。マウイ島を含むハワイ州の大部分が干ばつや異常乾燥状態であった。米国干ばつ監視モニターによると、ハワイ州の約14%が深刻または中程度の干ばつに見舞われており、ハワイ州の80%は異常乾燥状態だった。8月10日(木)時点の米国干ばつ監視モニターの程度は図のとおりである。
< 対 応
>
■ 8月8日に山火事が島全体に急速に広がり、マウイ島の山火事に対応するために多くの機関が要請されたが、ハリケーン・ドーラに関連した気象条件によりそれらの取り組みの一部が妨げられた。山火事に対する州の緊急対応の一環として出動した州兵のヘリコプターは、その夜、突風が強まったため運航を停止した。8月9日(木)ハワイ州非常事態 宣言により 州兵の派遣が許可され、非常事態が延長された。
■ 8月10日(木)、米国大統領は、今回の山火事について大規模災害にあたると宣言した。連邦職員や軍を派遣され、行方不明者の捜索や自宅を失った人たちへの避難場所の提供など支援にあたっている。
■ 8月12日(土)、警察は、ラハイナの住民を対象に一時的な立入りを認めると発表したが、ラハイナに向かう道路は車が数kmにわたって渋滞し、警察は混乱が生じたとしてその日のうちに住民の通行を禁止した。8月14日(月)には、規制区域への立ち入りを円滑に進めるためとして通行証の発行を始めた。このため、受取り所では住民が朝から車で長い列を作った。しかし、警察は発行開始から1時間で、対象ではない人が大勢訪れているとして通行証を使う方法自体を取りやめた。マウイ島の被災した人たちからは、行政の対応が二転三転する中、自宅に思うように戻れないとして、行政当局を批判する声も上がっている。
■ 8月12日(土)、火災が発生していたキヘイ火災は消火された。
■ 8月13日(日)、
ラハイナの町では、消防隊員たちは依然として再燃と闘い、捜査犬が犠牲者を探して町の黒焦げになった廃墟を歩き回っていた。 一方、消防士などの話として、火災で水道管が破損して消火栓から水が出なくなったため役に立たなかったと伝えていて、複数の要因が重なって被害の拡大につながったという見方も出ている。
■ 8月13日(日)、当局は、ちょっとした明るいニュースとして、電話や電気が通っていないために孤立した民家に60人が避難しているのを発見したという。この60人のうち多くが行方不明者としてリストに載っていた。しかし、8月21日(月)時点で、行方不明者リストには850人の名前が残っており、緊急対応部隊は今も捜索活動を行っている。
■ 8月14日(月)、 火災境界内のホットスポットを攻撃するために航空支援が展開された。
■ 8月14日(月)、ハワイ州知事は、マウイ島が火災から復興するまでの間、州外の買い手によるマウイ島の土地購入を制限とすると述べた。
■ 8月15日(火)、米国大統領は、「過去100年で最悪の山火事だ。街を破壊し、長く続いてきたハワイ先住民の歴史を荒廃させた」と述べ、支援を続けていくと強調した。
■ 8月15日(月)、
格付け会社ムーディーズ・インベスターズ・サービス社は、マウイ島で発生した山火事による保険金の支払額が少なくとも10億ドル(1,400億円)に上るとの見方を示した。太平洋災害センターと米国連邦緊急事態管理庁(FEMA)の推計を引用して、2,000棟以上の建物が損傷または破壊されたほか、内部が露出した状態の建物が2,700棟以上あると指摘した。
■ 8月15日(火)、ハワイ州知事は、すでに400人以上の米国連邦緊急事態管理庁(FEMA) の職員が島に配備されており、さらに273人の州兵が配備されていると述べた。
■ 8月16日(水)、ハワイ州知事は、ラハイナの山火事について最高時速80マイル(時速128キロ)の突風にあおられて、華氏1,000度(摂氏538度)に達する高温で燃え盛り、歴史あるリゾート地ラハイナの街並みを一変させたと語っている。捜査と担当している警察は、8月19日(土)の週末までに被災地の85~90%を捜索が済むことを期待していると語った。当初、1匹の捜査犬から始まった捜索チームは 20 匹になった。
■ 8月16日(水)時点で、マウイ・メディカル・センターは多数の火傷患者のために満員だという。
■ 8月16日(水)、消防団は依然として再燃と闘っていた。マウイ島ラハイナ最大の火災は水曜早朝の時点で85%鎮火し、2,170エーカー(880ヘクタール)が焼失したと発表され、積極的な脅威は無くなったと付け加えられた。内陸部のクラで起きた火災は75%鎮火し、678エーカーが焼失。他の場所で発生した小規模な火災は 100% 消火された。
■ 8月16日(水)、サイレンを使用しないという決定以外にも、州と地方の当局者は、消火に利用できる水の不足や、炎が押し寄せる中で渋滞した道路で多くの人が車の中に閉じ込められるという混乱した避難状況などで住民の批判に直面している。住民らによると、消火栓の水がなくなり、消防士による火災の鎮火が困難になったという。米国連邦緊急事態管理庁(FEMA)の当局者は、消火栓の給水に影響を与える問題があったことを認めた。
■ ハワイ州はマウイ島西部から観光客を避難させていて、これまでに少なくとも46,000人が島外に出たという。 8月16日(水)、ハワイ州知事は、マウイ島西部以外のハワイ諸島への旅行は安全であることを再確認したと発表した。「パンデミックの時と同じように、私たちが下す決断はハワイ全島に影響を及ぼします。私たちが今述べているのは、マウイ島西部への渡航は控えるべきだということですが、それと同時に、マウイ島西部以外の地域や州の他の島についての旅行は安全だということです。災害復興を支援する人々の懸命な活動に影響を与えない範囲でハワイ州(マウイ島西部以外の地域)に旅行してもらいたい」と知事は述べた。
■ 8月16日(水)、被害の大きかったラハイナとアッパークラ(Upper Kula)地域の一部では、住民に「水を飲んだり、沸騰させたりしてはならない」という勧告が出されている。
■ 8月16日(水)、マウイ島消防当局は 、8月8日に発表した警報の中で、「不安定な風、困難な地形、急な斜面、湿度の低下、火災の方向と位置により、山火事の進路と速度を予測することが困難になっている」と警告していた。
火災は、風によって燃えカス(残り火)が上方に押し上げられ、風下で火花が引火することによって、「火災は発生源から遠く離れた場所でも発生する可能性がある」と指摘した。
■ 8月16日(水)、消防団は依然として再燃と闘っていた。マウイ郡は、ラハイナ最大の火災は水曜早朝の時点で85%鎮火し、2,170エーカー(880ヘクタール)が焼失したと発表し、積極的な脅威はなかったと付け加えた。内陸部のクラで起きた別の火災は75%鎮火し、678エーカーが焦げた。他の場所で発生した小規模な火災は 100%消火された。
■ 8月16日(水)、マウイ郡緊急事態管理庁の長官は記者会見で、発生した山火事でサイレンを鳴らさなかった当局の決定を擁護した。そうすることで命が救われたかどうか疑問であるという意見がある。ハワイでは人々に津波を警告するためにサイレンが使用されている。火災の最中にそれを使用したことで人々が危険な方向に避難した可能性があると語った。長官は「国民はサイレンが鳴った場合に高台を探すよう訓練されている」と述べたが、火災時の州政府の対応に記者らが質問し、時折緊張感が高まった。「もしあの夜にサイレンを鳴らしていたら、人々はマウカ(山腹に)行っていただろうし、もしそうだったら火の中に飛び込んでいただろう」と長官は語った。長官によると、マウイ島は代わりに、携帯電話にテキストメッセージを送信するシステムと、テレビやラジオで緊急メッセージを放送するシステムのふたつの警報システムに依存していたという。サイレンは主に水辺に設置されているため、高台にいる人々には役に立たなかったであろう、と長官は述べた。
■ 8月18日(金)、山火事のマウイ島での対応を巡って地元住民やメディアから批判を受けたマウイ郡緊急事態管理庁の長官が健康上の理由に辞任したと当局者が発表した。
■ 8月21日(月)、米国大統領は、大統領夫人を同行し、マウイ島を訪れた。米国大統領は、
生存者、初期対応要員や救急隊員、州・地方当局者らと面会した。
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(火災前後の写真はBbc.comから引用) |
補 足
■「ハワイ州」は、太平洋に位置するハワイ諸島にある米国の州で、人口約145万人である。州都はオアフ島のホノルル市である。
「マウイ郡」はハワイ州の郡で、郡域はマウイ島、カホオラウェ島、ラナイ島、モロカイ島、モロキニ島で構成され、人口約165,000人の郡である。
「ラハイナ」は、ハワイ州マウイ郡のマウイ島の北西部にあり、人口約12,700 人である。この町はかつて捕鯨の中心地であり、ハワイ王国の首都だったが、現在では年間 200 万人の観光客が訪れる観光地である。
所 感
■ 今回の山火事は、過去に紹介した 「米国アリゾナ州の山火事で消防士19名死亡」(2013年7月)、「ブラジルのアマゾン熱帯雨林で森林火災が多発」( 2019年9月)、「豪州における山火事の被害(2019~2020年)」( 2020年3月)と異なり、市街地を巻き込む新たな山火事の分野である。今回指摘されている火災拡大の要因を見てみると、①送電線の火花による可能性、②ハリケーン(台風)の影響による強風、③外来種の雑草が火種、④異常乾燥状態、⑤警報サイレンや携帯電話への過度な依存である。これらはマウイ島の山火事の特殊な例でなく、今年の異常な暑さを引き合いに出さずとも、日本でもありうる要因だと感じる。
■ 山火事の消火活動についてラハイナ火災の前までは、出動人員や消火資機材は報道されていたが、ラハイナ火災が起こってからの状況ははっきりしなくなった。写真によると、消火ホースやヘリコプターによる放水が主と思われる。マウイ郡の郡域はマウイ島など5島から成り、人口約15万人で、さらにひどい火災だったラハイナは人口約13,000人である。このような状況では、消火栓の水が出なかったときもあるようだが、島で発生した4つの山火事に対応できなかったのが実情ではないだろうか。米国のような“ホットショット”のような専門職を置くことは無理だとしても、ブラジルでは森林火災の予防と戦闘で訓練された部隊がいる。マウイ島にも原野消防隊員がいるようだが、到底すべての山火事に対応できなかっただろう。
日本の林野庁によると、直近5年間の平均でみても山火事は1年間に約1,300件発生し、1日あたりにすると、全国で毎日約4件の山火事が発生している。林野庁では、「林野火災発生危険度予測システム 構築」に取組んでいるようだし、規模の大きい山火事で自衛隊の応援を求めたこともあるという。
しかし、今回のような市街地への山火事への対応も想定しておかなければならないことを示す事例である。
備 考
本情報はつぎのインターネット情報に基づいてまとめたものである
・News.ntv.co.jp, ハワイ・マウイ島に非常事態宣言 山火事が広範囲に延焼中、36人死亡 渡航中止を呼びかけ, August
10, 2023
・Asahi.com, ハワイの山火事、警報サイレン鳴らなかった? 「炎見て、気づいた」, August
11, 2023
・News.yahoo.co.jp, ハワイ山火事、死者80人 安否不明1000人の報道も 強風・干ばつで被害拡大か, August 12,
2023
・Nhk.or.jp, ハワイ マウイ島 山火事1週間 死者は106人に 被害拡大の背景は, August 16,
2023
・News.yahoo.co.jp, マウイ島山火事、死者110人に 消火活動続く, August
17, 2023
・Allhawaii.jp, マウイ島西部の山火事に関する重要なお知らせ, August 17,
2023
・Reuters.com, Maui fires:
Hawaii death toll hits 55, recovery to take years, August
11, 2023
・Reuters.com, Maui officials
defend decision not to sound sirens during wildfire, August
17, 2023
・Reuters.com, Maui fires raise
questions over warnings, death toll hits 80,
August 13, 2023
・Edition.cnn.com, Maui wildfires death toll rises to 110 as official
says using the warning sirens wouldn’t have saved lives, August
16, 2023
・Apnews.com, Schools reopening, traffic moving again in signs of
recovery from Maui fires that killed 110,
August 17, 2023
・Bbc.com, Hawaii fire: Maps
and before and after images reveal Maui devastation, August
14, 2023
・Nbsnews.com, Maui wildfires
death toll tops 100 as painstaking search for victims continues, August
16, 2023
・Cbsnews.com, Maui wildfires death toll tops 100 as
painstaking search for victims continues,
August 16, 2023
・Hawaiinewsnow.com, Maui firefighters achieve 100 percent containment
in massive Wailea brush fire,
August 09, 2023
後 記: ハワイで山火事があったというニュースがテレビや新聞などで流されましたが、当ブログの範ちゅうではないので、取り上げるのを躊躇しました。しかし、多くの人が亡くなった山火事とはどのような火災だったのか気になり、取り上げることとしました。山火事を取り上げるのは、これで4件目です。
日本のメディアの記事を見た後、海外メディアの報道を調べました。今回の報道の特徴は、ラハイナの火災が急速に進展したので、これまでの山火事でも感じていた以上に火災時の報道記事が少なかったことです。特に火災時の写真は少なく、あってもいつ・どこの写真かわからないものでした。ただ、日を追って山火事に関する記事や投稿が増えてきています。山火事の状況は、日本の報道を見聞きして想像していたものとは、随分違っており、所感に書いたように日本でも起こりうる山火事だと思いました。