今回は、 インドのペトロリアム・アンド・エナジー・スタディーズ大学のバイバブ・シャルマ氏が2018年にまとめた「ボウタイ分析による貯蔵タンクのハザードとその軽減策の検討と評価」(Study
and Analysis of Storage Tank Hazards and its Mitigation Measures Using Bow Tie
Diagram)の資料を紹介します。
ボウタイ図の例 (図はRroij.comから引用)
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< 概 要 >
■ 石油工業や石油化学工業では、火災、爆発、大きな騒音、感電などの危険な状態に至ることがあり、その結果、健康被害、環境汚染、経済的損失をもたらす。これらの危険は、洗浄薬品、有害ガス、ロックアウト・タグアウト(常時開・閉バルブの管理)の不徹底、ベーパー、フューム、ダスト、過剰な熱または過度の低温などによってもたらされることもある。
■ 常圧貯蔵タンクの火災は工業界で一般的な事象である。今回の検討では、過去40年間にアジアの工業施設で起こったいろいろな貯蔵タンクの事故を取り扱っている。ボウタイ・ダイアグラム(BowTie
Diagram) は、いろいろなタイプの貯蔵タンク火災につながった原因と要因を示すために適用される。将来、同様のタイプや状況に対応するオペレーティング・エンジニアを支援し、予防対策や緩和策についても提供する。
■ 検討結果、事故の70%が石油ターミナル(石油貯蔵所)と製油所で起こっており、事故の90%は火災と爆発で占められていることが分かった。事故の原因は、落雷と人為ミスであり、人為ミスには運転ミスやメンテナンス・ミスを含んでいる。そのほかの原因としては、設備の故障、静電気、破壊行為、クラック・破損、漏洩・配管の破損、他の火気などである。これらの事故は、適切な安全管理プログラムや優れたエンジニアリング方法が実行されていれば、回避されていたと思われる。
< はじめに >
■ 可燃性および燃焼性液体の貯蔵タンクは、製油所、石油化学工場、石油貯蔵所、石油ターミナルでよく見られる。このほかに、空港、地方の燃料供給会社、発電所、自動車工場や製鉄所のような大規模製造施設でも、可燃性および燃焼性液体の貯蔵施設で見られる。
■ 貯蔵タンクは、施設に応じていろいろな方法で可燃性および燃焼性液体を保有する。これらのタンクは直径が5mから150mの範囲で、平均の高さが15mである。重油、ガソリン、ディーゼル燃料、灯油、ジェット燃料(ATF)などの可燃性液体は、常温で常圧(0.5
bar以下)でタンクに貯蔵される。もし、十分な量のエネルギー源があれば、発火して火災や爆発に至ることがある。もし、爆発が起これば、爆発時に発生する衝撃波や過圧によって大きな影響を及ぼし、隣接するタンクに影響を与え、壊滅的な状況になる可能性がある。このようなタンクには、大量の原油やその他の石油製品を貯蔵することができる。大規模の工業施設では、いろいろな製品を貯蔵した様々な大きさのタンクを300基以上保有しているところもある。これらのタンクはお互いに非常に近くに配置され、他のタンクと共通の防油堤に囲まれている。
■ 貯蔵タンクは防油堤と呼ばれる囲まれた堤(境界)によって区分けされている。防油堤は、タンクのオーバーフローや構造的な問題によって発生する流出油を防ぐ障壁としての機能をもつ。各タンクは、その分類によって分けられ、分離される。防油堤は、通常、圧密した土盛りまたはコンクリート製の材料で作られる。堤の高さは大体2mくらいである。可燃性液体がオーバーフローするのを防ぐため特別に延長されることがある。防油堤の容量はタンクの総容量を考慮し、安全の余裕度としていくらか上乗せした割合にする。防油堤内に複数のタンクがある場合、堤内の容量は最大タンクの容量に少なくとも安全の余裕度をとったものにすべきである。
< タンクの種類 >
■ タンクの種類には、①固定屋根式タンク、②内部浮き屋根式タンク、③外部浮き屋根式タンクに分けられる。
① 固定屋根式タンク
■ 固定屋根式タンクには、コーンルーフ式タンク、ドームルーフ式タンク、支持屋根型円筒タンクがあり、構造は溶接式、リベット式、ボルト締め式などである。固定屋根式タンクは、通常、揮発性の油から重質油に至る精製油を貯蔵するために用いられる。
図1 固定屋根式タンク
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■ 固定屋根式タンクは、側板上部の縁に溶接され、側板頂部から覆う形をとる。そして、側板には、ドームルーフや円錐形屋根の力が下向きになるように形作られる。(図1を参照) タンクには、ウィンド・ガーダーと呼ぶ構造物が設けられる。ウィンド・ガーダーは、側板の歪みや風荷重に耐えるようにタンク側板の周囲に付けられる。新規に製作されるタンクでは、屋根板の最小厚さは5mmである。
■ 直径がおよそ30mを超えるタンクでは、タンク屋根は支持構造となる。屋根のトラスは側板頂部の縁より下側に延ばされることがあり、その場合、タンクの貯蔵容量は減少することがある。固定屋根式タンクは、内部浮き屋根を保持するよう製作されることがある。屋根板は側板頂部の縁に溶接によって取付けられる。指定がある場合、その溶接の強さを最小に留めて接続を弱くし、事故時の過剰な圧力に対してタンク本体を保護する。
図2 ドームルーフ式タンク
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■ すべての固定屋根は、オープン・ベンドまたはプレッシャ/バキューム・バルブ(PV弁)を通じて通気される。液体をタンク内に入れる場合、空気やベーパーを出す必要があり、タンク内の圧力は大気圧よりわずかに高くなければならない。
■ タンク内の液体を抜出すには、空気とベーパーを吸引してタンク内の圧力を大気圧よりわずかに下げる必要がある。(図2)
■ ドームルーフ・タンクは、外部浮き屋根式タンクの上を覆うように設計されている内部浮き屋根式タンクと類似している。ドーム構造の主目的は、環境への大気排出を極力少なくするためである。
② 内部浮き屋根式タンク
■ 内部浮き屋根式タンクの構造は、恒久的な固定屋根式タンクの内部に浮き屋根を備えたものである。内部屋根は、液面にポンツーンまたはダブルデッキによって浮くようになっている。(図3) このタンクは、一般に、高揮発性(低引火点)または有毒性液体を貯蔵する使用条件でみられる。
図3 内部浮き屋根式タンク
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■ 浮き屋根で覆われていない固定屋根式タンクの場合、液面は上部の空気層に直接接触している。内部浮き屋根があることによって、ベーパーの蒸発損失を少なくとも95%減じることができ、高価な液体や毒性のある液体または可燃性の高い液体を取扱うときに極めて有用である。タンクには、通常、(BS
2654やAPI Std 650によって)固定屋根部にオープンベントが取付けられるが、実際にはPVベントがよく使われている。
③ 外部浮き屋根式タンク
■ 外部浮き屋根式タンクは、液面上に浮く屋根で構成されているが、屋根は大気に曝されている。屋根は液位の変化に伴って上下する。外部浮き屋根にはリムシールがあり、ベーパーが大気へ放散するのを防ぐ。このタンク型式は、標準として原油や揮発性(低引火点)製品の貯蔵に使用される。原油はタンク側板が大気に曝せれていても自己潤滑的な傾向をもつが、一方、白油はこの性質が無く、側板は天候に曝せれて粗面化される。(図4)
図4 外部浮き屋根式タンク
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< 事故の原因 >
① 落雷
■ 落雷は最も一般的な引火源のひとつであり、常圧型浮き屋根式タンクの火災要因になることが多い。調査によれば、火災事故の95%が落雷によって引火するリムシール火災である。引火を生じるには、落雷が直接タンクに落ちる必要はない。タンクの極く直近に落ちれば、側板と浮き屋根の間に相当量の静電気が発生し、火災に至ることがある。
■ 最近の火災事例としては、2017年10月にインドのムンバイ沖にあるブッチャー島においてディーゼル燃料タンクで落雷によって火災となった。死者は出なかったが、燃料が燃え尽きるまでに長い時間かかった。この事故の被害額は少なくとも6~7億ルピー(9.5~11億円)である。2017年7月には、インドのヴィサカパトナムにあるヒンドスタン・ペトロリアム社の原油タンクで落雷があり、リムシール火災となった。
② メンテナンス・エラー(保全ミス)
■ メンテナンス中の溶接やグランダー作業は、貯蔵タンク中のベーパーの爆発という壊滅的な損傷に至る原因になりうる。電気火花や電撃は可燃性液体や可燃性ベーパーの引火源となり、火災や爆発の原因となりうる。
■ 中国甘粛省蘭州市にあるペトロチャイナの製油所で起こった電動機から発生した電撃による事故、および台湾の高雄において1984年に発生した事故は同じ原因である。台湾の嘉義にある化学工場において起こった事故は、はんだ付け装置によって発生した火花が原因である。電気災害をできるだけ無くすため、エリア、室内、区域は、それぞれ、NFPA70(米国電気規程)の500条の危険(分類)場所で定義されるクラス分けを考慮しなければならない。
③ 運転ミス
■ 運転ミスの分類の原因で多いのはタンクの過充填である。その場合、油製品から大量のベーパーが大気に放出されるので、引火源の存在によって火災や爆発に至ることがある。タンクに可燃性液体が貯蔵されていて、過充填が生じれば、火災や爆発はほとんど避けられない。2001年、中国浙江省武義市においてタンクの過充填によってベンゼン50kgが漏洩し、46名の子どもと村民ふたりが病院に搬送される事故が起こった。
■ 運転ミスによる10回の事故のうち8回は漏洩が起こっている。2009年にインドのインディアン・オイル社のタンク・ターミナルで起こった“ジャイプール火災”は、操作手順書が不備だった上、遠隔からの漏洩遮断装置(遠隔操作バルブ)が無かったことによって起こっている。
④ 破壊行為
■ 貯蔵タンクの事故につながる4番目の原因は、破壊行為である。テロ活動や窃盗行為は、大きな緊急事態に至る可能性がある。1991年にイラクのクウェート侵攻中、複数のタンク貯蔵所で火災が生じた。消防活動の行われたタンク貯蔵所もわずかにあったが、戦争状態だったため、ほとんどは燃え尽きるまで何もされなかった。
⑤ 設備の故障
■ 外部浮き屋根式タンクには、屋根排水(ルーフドレン)、ブリーザー弁、緊急屋根排水(エマージェンシー・ルーフドレン)が設置されている。タンクの屋根排水が詰まり、雨水が屋根の上に溜まって、屋根が沈没するという事例がある。タンク内に過剰な圧力が形成し、ブリーザー弁で圧を抜くことがある。バルブの故障はタンクの座屈を招くことがある。タンクの周囲に設けられているシール部は、タンク屋根と内液の上下に追随してスライドし、ベーパーが大気へ逃げるのを防ぐ。シール部の故障や構成部材の一体性が喪失されれば、ベーパー放出という事故につながる。
⑥ 静電気
■ 可燃性液体の貯蔵タンク気相部の開放したエリアからサンプルを採取するときには、静電気が発生する恐れがある。 1992年に日本で起こった事故は、サンプルを採取するのに導電性のロープを接続した金属製容器を使用していた。危険性を最小にするために、サンプリングはタンク気相部を開放した状態で行わないのがよい。オープンな状態のサンプリングが避けられない場合には、非導電性の材料によるサンプリング・ゲージを使用するのがよい。金属製の装置は使用しない。液体の移送中には、最大の静電荷が発生する。容器を接地して同電位にする。
⑦ 漏洩および配管破損
■ 1977年にインドのヴィシャーカパトナムでLPGが漏洩して起こった事故では、数時間発見されずに、ヴィシャーカパトナムの海岸でタンカーがポンプで汲み上げようとした。その結果、港湾都市全体が分厚い黒煙で覆われて、死者37名、負傷者100名を出す事故となった。
⑧ 直火
■ 直火とは、貯蔵タンク周辺に存在するタバコの喫煙、焚き火、火の粉など可燃性ベーパーの引火源になるようなものである。
⑨ 自然災害
■ 地震時における地震動が貯蔵タンクに与える影響は構造物に亀裂を生じさせたり、液面を揺動したりして、内部の液体が漏洩に至ることがある。アジアは地震が発生しやすい地域であるため、常にタンクの壊滅的な破壊に至る恐れがある。幸いにも、このような地震による事故の結果は極くわずかである。1964年に日本の新潟にある製油所で発生した火災は、地震のために漏出した炭化水素ベーパーが火花によって引火したものである。
⑩ 暴走反応
■ タンクに貯蔵されている物質に不純物が混ざって発熱反応を起こすことによって、暴走反応が生じることがある。1984年に起こったインドのボパール化学工場事故は大災害のひとつで、地下貯蔵タンクに入っていたメチル・イソシアートと水が混合したもので、大量の毒性ガスが放出して多くの人が亡くなった。
< 事故のシナリオの種類 >
① ボイルオーバー
■ ボイルオーバーは、重質の炭化水素または炭化水素液体の混合物が貯蔵タンクの火災の中で発生する現象で、例えば、原油タンク底に溜まった水に熱い油が接触すると爆発的に原油が放出される。熱がタンクの下の方へ移動して水に接したとき、水は水蒸気に変換する。このとき、水蒸気は1,500倍に膨張し、それとともに燃えていた原油を一緒に外へ放出する。タンクのボイルオーバーは、風下方向ではタンク直径の10倍のエリアに、横風方向でもタンク直径の5倍のエリアに影響を与える。
② スロップオーバー
■ スロップオーバーはタンクの全面火災時に現れ、液体中の溜まった水によってタンク内から液体が噴き出す現象である。
③ ベント火災
■ ベント火災は固定屋根式タンクで発生し、可燃性ベーパーが放出されたベントて引火するものである。タンク・ベント部では、充填作業やタンクの呼吸サイクルによって常に可燃性ベーパーが存在する。ベント火災の多くは落雷または近くの引火源によって起こっている。
④ 全面火災(固定屋根式タンク)
■ 固定屋根式タンクの全面火災は、ベント火災が進展して起こることがある。フレーム・アレスター/PVが機能せず、炎がフラッシュバックした時に、タンク気相部が可燃性範囲内であれば、蒸気雲爆発が起こることがある。タンクがAPI
Std 650に従って製作されている場合、屋根には弱くした溶接部がある。気相部の爆発によって、屋根は部分的に外れる(「魚の口」開口部)か、または完全に外れる可能性がある。
⑤ 全面火災(浮き屋根式タンク)
■ 浮き屋根式タンクの全面火災は、タンク屋根が浮力を失い、液面の一部または全部が露出して火災になる。
⑥ リムシール火災
■ リムシール火災は、タンク側板と屋根の間のシール部の機能が喪失し、ベーパーが放出し、何らかの引火源によって火災を起こすものである。
⑦ 堤内火災
■ 堤内火災は、防油堤エリア内でタンク側板の外側で起こる種類の火災である。この種の火災は少量の漏洩から防油堤内全域に進展する火災である。
< 検討方法 >
■ このレポートでは、ここ数十年の間にアジアで起こった主なタンク事故について調査した。データはいろいろ発行されたレポートから収集した。石油化学工場、貯蔵ターミナル、ガスプラント、発電所、肥料産業などの施設と比較してみると、石油・天然ガス分野で大きな事故が発生していることが分かった。
< 結果および考察 >
注; ボウタイ(BowTie;蝶ネクタイ)分析はハザード分析手法のひとつで、想定される事故を中心に原因と結果を左右に配置して蝶ネクタイのような図を使用する。そして、ボウタイ分析に基づいて作成されたリスク評価ソフトウェアがBowTieXPである。
BowTieXPはリスクを評価するためのボウタイ図(BowTie
diagram)を簡単に作成でき、複雑なリスクをわかりやすく視覚化できるという点が特徴で、リスクベースの改善計画の検討ができる。
■ 図5が検討したボウタイ図である。前述で述べた種々の事故の原因と結果をBowTieXPのソフトウェアを用いて分析した。ボウタイ図では、事故の脅威に対して軽減や回避できる予防障壁(バリア)があるとする。この予防障壁には、プロアクティブ・バリア(順向性障壁)とリカバリー・バリア(回復障壁)があり、両方の進展要因に対する軽減や回避する方法を検討することになる。発生する事故はシナリオによって対応していくことになるが、適切な軽減策や適切な標準作業手順が取られれば、最悪の事故への進展は回避できる。
■ ここで、貯蔵タンクのハザードの要因とそれに続く結果について軽減策とともに述べる。ボウタイ図によってある特定の脅威に対する予防障壁を明らかにするとともに、更にハザードにつながる進展要因についても説明できる。機器の故障、落雷、運転ミスなどの脅威を明らかにすれば、それに続く結果は軽減策の方法を説明できる。例えば、自動放水システム、移動式泡モニター装置、液体のポンプ排出などの軽減策で、これらの策は進展する事故の影響を小さくする。
■ プロアクティブ・バリア(順向性障壁)やリカバリー・バリア(回復障壁)として働く軽減策も進展要因になりうる。例えば、泡モニター装置への不適切な泡供給や自動放水システムのノズルが止まることである。これらの機器の適切なメンテナンスやより良い効率的な機器が使用されれば、進展要因を防ぐことができることがわかった。
図5 ボウタイ図 |
図5 ボウタイ図の拡大(左上部)
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図5 ボウタイ図の拡大(左中部1)
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図5 ボウタイ図の拡大(左中部2)
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図5 ボウタイ図の拡大(左下部)
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図5 ボウタイ図の拡大(右上部)
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図5 ボウタイ図の拡大(右中部1)
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図5 ボウタイ図の拡大(右中部2)
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図5 ボウタイ図の拡大(右下部)
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< おわりに >
■ このレポートでは、産業施設のさまざまなタンクで発生した事故について検討した。壊滅的な結果へつながった原因と対応は体系的にボウタイ図の中で表した。設計、エンジニアリング、建設が良好に実施され、安全管理プログラム、標準作業手順、標準メンテナンス手順が良好に実行されていれば、事故のほとんどは回避されていただろう。
補 足
■ リスク評価の方法は、1940年代のFMEA(故障モード・影響解析)から始まり、FTA(故障の木解析)、HAZOP(Hazard
and Operability Study)、ETA(事象の木解析)などが開発され、1970年代にBowTie解析が出された。そのほか、いろいろな評価法が出たが、1970年後半になると、コンピュータによるリスク評価が開発されるようになり、現在、いろいろなリスク評価ソフトウェアが出ている。
リスク評価の方法の変遷
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■ リスク評価ソフトウェア「BowTieXP」は、オランダのCGE
Risk Management Solutions社から出されている。同社によると、ボウタイ図はリスクを1つのわかりやすい図で視覚化したもので、図は蝶ネクタイのような形をしており、リスク管理の予防的側面と反応的側面の間に明確な違いがある。BowTieXPのボウタイ図には、考えられる複数の事故のシナリオ概要と、これらのシナリオを制御する上での障壁を示す。BowTieXPソフトウェアは、エンドユーザーを念頭に置いて開発されているため、最もユーザーフレンドリーなリスク評価ツールのひとつであるという。BowTieXPでボウタイ図を作成するのは簡単であるが、ソフトウェアを使用するので、とボウタイ図を維持することができるため、現在の安全状態を表すことができるという。
■ ボウタイ分析は、中国でも使われている例があり、古い評価方法ではない。最近では、サイバーリスクのボウタイ分析の例がある。どのような攻撃者の脅威を想定し、予防管理をどのようにするのか、被害を受けた場合の被害管理をどうするか、被害の結果はどのようなことがあるのかなどを視覚化できる。
ボウタイ分析の例 |
所 感
■ このレポートの原題は、インドのウッタラーカンド州の州都であるデヘラードゥーンにあるペトロリアム・アンド・エナジー・スタディーズ大学のバイバブ・シャルマ氏による「ボウタイ分析による貯蔵タンクのハザードとその軽減策の検討と評価」(Study
and Analysis of Storage Tank Hazards and its Mitigation Measures Using Bow Tie
Diagram)である。
■ 貯蔵タンク分野では、なじみのないボウタイ分析によるタンクのリスク評価を行ったところに価値がある。レポート内容だけでは、詳細がわからないが、貯蔵タンクのリスクや軽減策を分かりやすく視覚化したものであることは理解できる。特に、「プロアクティブ・バリア(順向性障壁)・リカバリー・バリア(回復障壁)として働く軽減策も進展要因になりうる。例えば、泡モニター装置への不適切な泡供給や自動放水システムのノズルが止まることである」とする点は興味深く、具体的に「緊急対応チーム(消防隊)の遅れ」、「大容量泡放射砲の消火水の過剰供給」などは傾聴に値する。
備 考
本情報はつぎのインターネット情報に基づいてまとめたものである。
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Vaibhav Sharma, Abhishek
Nandan and Nihal
Anwar Siddiqui ,
「 Study and Analysis of Storage Tank Hazards and its
Mitigation Measures Using Bow Tie Diagram」
Vaibhav Sharma, Abhishek
Nandan and Nihal
Anwar Siddiqui, Department
of Health, Safety and Environment, University of Petroleum and Energy Studies, Dehradun,
Uttrakhand, India , 2018
後 記: 興味深い資料ではありましたが、なかなか難渋しました。ボウタイ分析に関する基本認識を得ることに四苦八苦したあと、資料は英文ではありましたが、誤字と思われるところが少なくなく、また分かりづらい表現があり、悩みました。やや消化不良のところもありますが、問題提起という観点でブログを投稿することとしました。なお、肝心のボウタイ図(図5)はブログの図表では見えなくなるので、図を細かく分け、拡大版を添付することとしました。(実際の図は備考の原文を参照してください)