2023年8月29日火曜日

ENEOS水島製油所でタンク地区にあるポンプ設備で火災、落雷か?

 今回は、 2023823日(火)、岡山県倉敷市にあるENEOS㈱(エネオス)水島製油所B工場のタンク地区にあるポンプ設備が落雷と思われる火災を起こした事例を紹介します。

< 発災施設の概要 >

■ 発災があったのは、岡山県倉敷市潮通の水島コンビナートにあるENEOS㈱(エネオス)水島製油所である。水島製油所の精製能力は300,200バレル/日で、水島港を挟んだ西側にA工場、東側にB工場がある。

■ 事故のあった設備は、水島製油所のB工場のタンク地区(オフサイトポンプヤード群)である。

<事故の状況および影響>

事故の発生

■ 2023823日(水)午後020分頃、B工場のタンク地区のポンプ設備付近で火災が発生した。

■ 製油所から「雷がタンク周辺に落ちて火災が起きた」という119番通報あった。

■ 発災の通報を受け、消防署の消防隊が消防車13台とともに出動した。

■ 現場に出動した消防隊によると、タンク付近から炎と黒煙が上がっていたが、火災はタンク本体でなく、タンクにつながるポンプ設備付近が燃えていたという。ポンプ設備はタンクから重油や軽油を送り出す装置である。

■ 事故にともない、製油所の自衛消防隊の50歳代の男性が、消火活動中、顔にホースの放水が当たり、病院で受診した。けがは無いということである。

■ 公設消防と自衛消防隊の消火活動によって火災は午後240分頃に制圧され、発災から約3時間半後の午後344分に鎮火した。

■ 製油所によると、重油や軽油を貯蔵しているタンク周辺のポンプや配管が焼けたという。ポンプ設備に最も近いタンクは点検中で空だった。

■ 岡山地方気象台によると、倉敷市には大雨洪水警報や雷注意報が発表され、倉敷市付近には昼前から昼すぎにかけて発達した雨雲が流れ込んでいた。

■ 現場は市南部の水島コンビナートの一角で、工場東側に住む男性は「大きな被害がなく良かった」とほっとした様子だった。現場から2kmほど離れた店の女性は「爆発するのではと怖かった」と話した。

■ プロセス装置は動いているものの、製品の出荷を一部停止していて、ENEOS㈱は、A工場などと補完をしながら供給不足にならないよう対処するという。

■ ユーチューブには、火災の状況を伝える動画が多数投稿されている。その中の3例を紹介する。

 YouTube「タンク付近に雷が落ちて」製油所で火災落雷が原因か 岡山・倉敷」2023/08/23

 ●YouTube 「【製油所で火災】落雷が原因か「タンクに雷が落ちた」と通報 岡山・倉敷市」2023/08/23

 ●YouTube「製油所で火災 落雷が原因か 岡山・倉敷市」(2023/8/23)

犠牲になった

■ 物的被害はポンプ設備と配管類が焼損した。

■ 消火活動中に自衛消防隊の消防士が顔にホースの放水が当たり、病院で受診した。けがは無かった。

■ 火災によって大気汚染が生じた。

< 事故の原因 >

■ 原因は調査中である。

 警察署と消防署は現場で実況見分を行い、当時の状況や出火原因を調べることにしている。  

< 対 応 >

ENEOS㈱ は、事故のあった823日(水)、同社のウェブサイトに火災があったことと、地域や関係者へのおわびの声明を出した。

■ 警察署と消防署は、翌日の824日に現場で実況見分を行い、当時の状況や出火原因を調べることにしている。

■ 824日(木)、予定されていた実況見分は、現場に消火の際に使用した泡状の消火剤が多く残っているため、行うことができなかった。

■ 824日(木)、 ENEOS㈱は、火災について重油を保管しているタンクから数十m離れた場所にあるポンプから火が出たと発表した。 ENEOS㈱によると、ポンプは高さが1m、幅と奥行きがそれぞれ2mほどで、タンクに保管する重油を別のタンクに移し替えるためのものだという。


補 足

■「ENEOS株式会社」(エネオス)は、 石油製品の精製・販売等を行うエネルギー会社で、日本の石油元売の最大手で、世界では第6位の規模を持つ。持株会社ENEOSホールディングスの傘下である。

「水島製油所」は水島臨海工業地帯の中心部に位置し、350,200バレル/日(約55,682KL/日)と国内最大の原油処理能力を有する。多くの2次装置を装備し、燃料油、潤滑油、石油化学製品、石油コークス等を供給している。

 水島製油所は、日本鉱業(株)水島製油所(1961年操業開始)、共同石油(株)との合併により日鉱共石に社名変更(1992年)、ジャパンエナジーに社名変更(1993年)、JX日鉱日石エネルギー設立し、新日本石油精製水島製油所とジャパンエナジー水島製油所の一体運営を開始(2010年)、JXエネルギーに社名変更(2016年)、ENEOSへ社名変更(2020年)した経緯をもつ。 B工場は旧ジャパンエナジーの製油所である。水島製油所の紹介ビデオがユーチューブに投稿されている。Youtube.comENEOS水島製油所紹介動画」を参照)

■「発災したポンプ」の場所をタンクNo.29(発災写真から)の位置からグーグルアースで調べたが、はっきりせず、特定できなかった。

所 感

■ 状況からみて落雷による火災だろう。これまで日本では、落雷によるタンク設備の火災はほとんど無かったが、近年の異常気象が多くなり、雷の頻度が増え、規模も大きくなったことから、いよいよ来たかという感想である。落雷リスクを最小限に抑えるという点で最近のブログで参考になるのは「欧州における雷検知ネットワークによる落雷リスクの回避」20225月)である。

 しかし、今回の事例では、ポンプ内液が重油ということであり、ガソリンなどと比べて引火しずらいことに疑問が残る。重油タンクにおいて落雷によるタンク火災の起こる可能性は低いが、これまでもアスファルトタンクやディーゼル燃料タンクにおいて軽質分が混入したことによるタンク爆発・火災の起った例がある。今回の場合、例えば、タンク開放点検のため、軽質分でタンクを洗浄していたなど単なる重油ということではないように感じる。

■ 火災からの炎や黒煙を見ると、かなり激しい燃え方で、この点、ポンプから漏れたというより、大量に流出したという印象である。消火活動は大型化学消防車(スクワート車)による泡消火を行うとともに、周辺タンクへの冷却放水が行われたとみられる。タンクが内液に満たされていれば、必ずしも冷却放水は必要ない。例えば、「石油貯蔵タンク施設の消火戦略・戦術」201612月)では、火災タンクの隣接タンクへの冷却に関する必要性の判断と水量について、冷却水の最小使用のため、タンク壁面からの水蒸気の有無で判断し、水量は1,8933,785L/minだとしている。

「米国テキサス州ディアパークのタンク大火災の原因(2019年)」20238月)では、タンクに隣接したポンプから出火して同じ防油堤内にある13基のタンクが焼損するという事故を紹介したばかりである。設置場所や遠隔操作の緊急遮断弁の設置について確認が必要である。


備 考

 本情報はつぎのインターネット情報に基づいてまとめたものである。

    Eneos.co.jp,  水島製油所における火災の発生について,  August  23,  2023

    エネオス.co.jp、  水島製油所における火災の発生について(ご報告),  August  24,  2023

    Webtsc.com、  落雷か、倉敷市・水島コンビナートのエネオス水島製油所で火災,   August  23,  2023

    Sanyonews.jp,  倉敷・水島の製油所で火災 落雷か 3時間半後に鎮火、1人けが,   August  23,  2023

    Nhk.or.jp,  岡山 倉敷 製油所タンクの火災は鎮火 けが人なし 落雷で出火か,   August  23,  2023

    News.yahoo.co.jp、  水島製油所の火事 ENEOS「製品の出荷を一部停止、供給不足にならないよう対処,   August  23,  2023

    Nikkei.com,  岡山・倉敷のENEOS製油所で火災、落雷か けが人なし,   August  23,  2023

    Newsdig.tbs.co.jp,  石油精製所の重油タンク周辺のポンプに落雷か 製油所で火災 消防車17台が駆けつけ3時間半後に鎮火 消火作業中に男性1人がけが,   August  23,  2023

    Sankei.com,  岡山・倉敷の製油所で火災、落雷か けが人なし,   August  23,  2023

    News.tv-asahi.co.jp,  製油所で火災 落雷が原因か 岡山・倉敷市,   August  23,  2023

    Headtopics.com,  落雷か エネオス製油所で火災 黒煙立ち込め...消防車16台出動,   August  23,  2023

    News.goo.ne.jp, 【水島製油所の火災】消火に使用した泡状の消火剤が残っているため実況見分は持ち越し,   August  24,  2023

    Nhk.or.jp, 水島コンビナートの製油所火災ポンプが焼損会社発表,   August  24,  2023


後 記: 今回の報道はだいぶ混乱していました。タンクが火災になったと報じているところがありましたし、軽傷1名と報じているところもありました。消火活動中にホースの放水が当たり、病院で受診したが、けがは無かったということですが、普通、病院で診察を受けた人は軽傷者ということになります。タンクの近くにあったポンプから出火したという情報を聞き、つい先日紹介した 「米国テキサス州ディアパークのタンク大火災の原因(2019年)」 20238月)の事故を想起しました。どうもはっきりしないことがありますが、原因が公表されるまでに時間がかかりそうですので、現状でまとめ、紹介することとしました。 

2023年8月25日金曜日

米国ハワイ州マウイ島の山火事で市街地に延焼、115名死亡

  今回は、 202384日(金)から始まった米国ハワイ州のマウイ島の山火事の状況を紹介します。特に88日(火)から始まったラハイナの山火事では市街地に広がり、死亡者が115名発生する大きな災害となりました。

< 発災地域の概要 >

■ 発災があったのは、米国ハワイ州(Hawaii)マウイ郡(Maui)にあるマウイ島である。

< 事故の状況および影響 >

事故の発生

■ 202384日(金)午前6時頃、マウイ島で小規模の山火事が発生した。マウイ島の中部にあるカフルイ空港(Kahului)に隣接する畑で30エーカーの山火事が報告された。午後4時過ぎまでに、火災は90%鎮圧された。

■ 86日(日)夜にマウイ島南部にあるワイレア(Wailea)で発生した山火事は急速に進行し、 200エーカー以上が真っ黒になり、高級ホテルの宿泊者を含む約100人が避難を余儀なくされた。88日(火)時点では、活発な炎は発生していなかったが、消防士が監視し、ホットスポットに注意を払った。約40人の消防士が出動し、消防車7台や給水車2台などで消火活動を行った。当局によると、時速1520マイル(風速6.78.8m/s)の風が吹くなど、状況は非常に厳しいものだった。しかし、ワイレアの山火事は88日(火)午後に100%封じ込められた。

■ 88日(火)午前0時頃、マウイ島内陸部のマカワオ(Makawao)付近での山火事が発生した。続いて午前11時までに、約40km離れた西岸の町ラハイナ(Lahaina)で山火事が発生した。正午には、再び内陸部のクラ(Kula)で山火事が発生した。さらに中部のキヘイ(Kihei)でも火災が発生した。消防当局によると、この日、島内4か所でつぎつぎと大規模な火災が発生したという。

■ 202388日(火)は、強風によって多数の電柱が倒れ、マウイ島では約30本の電柱が倒れたと報告され、少なくとも15の個別の停電が12,400人以上の人々に影響を与えた。その時点で、マウイ西部のいくつかの地域では、午後1150分以来、電力が供給されていなかった。切れた電線がビデオに撮影されており、火災の発火要因として調査されている。

■ 88日(火)の真夜中過ぎに、クラで山火事が発生したが、住民によると、その朝、約5時間後、ラハイナでは停電が発生した。マウイ郡は、同日朝、クラ火災は数百エーカーの牧草地を焼き尽くしたが、ラハイナで発生した小規模な3エーカー(1.2ヘクタール)の山火事は収まったと発表した。

■ しかし、88日(火)の午後に状況は悪化した。午後330分頃、ラハイナの火災は突然燃え上がり、広がった。一部の住民は避難を始め、ホテル宿泊客を含むラハイナの西側の人々に避難指示が出された。その後数時間、町中に火が燃え広がる中、マウイ郡はフェイスブックに何度も避難指示を出した。

■ ハワイ王国の首都だった歴史ある町のラハイナでは、 88日(火)に郊外の茂みから火災が始まり、急速に進行し、山火事は草原火災となって、ラハイナの観光リゾート地の方へなだらかに傾斜している火山の麓を駆け下りた。目撃者の何人かは、事前にほとんど何も知らされていなかったと語り、炎がわずかな時間のうちにラハイナを焼き尽くしたときの恐怖を語った。住宅街は大量の黒い煙に覆われ、道路の先には、真っ赤に燃えさかる炎が見え、爆発したような音も響く。炎から逃げた人は「嵐のような炎が自分に向かってきて、すべてを包み込みました。全力で走って炎から逃げました」と語った。命を守るために太平洋の海に飛び込むことを余儀なくされた人もいる。

■ ラハイナの町は海岸沿いに丘が隣接しているため、今回の山火事では避難経路がふたつしかなかったと指摘する専門家もいる。

■ ラハイナの火災では、数時間で町の5平方マイル(13平方キロ)のエリアを焦がし、少なくとも110人が死亡し、約2,200の建物を焼失させた。

■ 住民のひとりは、ラハイナに山火事が市街地に到達したとき、ガソリンスタンドが爆発し、アパートの建物が全焼したという。

■ 89日(水)、当局者は、ハワイから南西数百マイルの遠くにいたハリケーン・ドーラ(Hurricane Dora)の強風が州全体に炎をあおったと述べた。国立気象局がハワイ全島に対する火災警報を表す「赤旗警告」(Red Flag Warning)と「強風注意報」が出されていた。

■ マウイ島の山火事は広い範囲に延焼を続け、沿岸部にまで到達し、煙と炎から逃れるために海に逃げた人もいた。非常事態が宣言され、11,000人以上が避難を余儀なくされた。

■ 811日(金)、ラハイナ火災は依然として燃え続けているが、85%は鎮火したと発表された。島内の他のふたつの山火事のうちひとつは 80%、もうひとつは 50%鎮火した。災害から三日が経過したが、火災が家を飲み込む前に警告を受けた住民がいたかどうかは不明のままだ。

 ハワイには世界最大級のサイレン警報システムがあるが、マウイ島の80台の警報は鳴らなかった。マウイ島緊急事態管理庁は、「たとえサイレンを鳴らしたとしても、山腹にいる人々は救われなかったでしょう」と語り、「山にはサイレンはなく、ほとんどは海岸線にある」と付け加えた。

■ 814日(月)、ハワイ州知事は、臨時の通信回線を確保したことによって連絡がつかない人が2,000人台から1,300人に減ったと述べた。

■ 815日(火)で、山火事が発生から1週間余となり、死亡が確認された人は106人に上っているが、捜索を終えたのは被害を受けた地域全体の32%にとどまっている。焼け跡が広いうえに足場が悪いことなどから捜索活動は難航している。

■ 被害を調査しているPDC(太平洋災害センター)によると、 815日(火)時点で、2,200棟余りの建物が損壊し、そのうちの86%は住宅で、避難する必要がある人は4,500人に上るという。

■ 816日(水)、マウイ島当局者によると、88日に発生した4件の山火事により、これまでに推定5.7平方マイルが焼失したという。4件の火災のうち3件は817日(木)時点でも燃え続けており、数十人の消防士が地上と空から封じ込めラインを構築し、ホットスポットや再燃がないか監視している。

 88日(火)に発生したマウイ島の火災のうち2件の火災は、当初、単一の火災で“ アップカントリー/クラ火災と呼ばれていた。しかし、マウイ郡当局は、817日(木)、これらの火災は起源が異なる2件の火災であると判断し、今後は、オリンダ火災とクラ火災として別々に扱うとした。

■ ラハイナ火災は焼失面積3.39平方マイルでマウイ島の火災の中で最大であるが、85%鎮火した。オリンダ火災とクラ火災の焼失面積は1平方マイル強であるが、65%が鎮火した。クラでは19軒の家が焼失した。オリンダ火災とクラ火災は、アップカントリー地域の地形のせいで消火が難航し、これら2件の火災と闘う消防士らは依然として渓谷や森林、その他の到達困難な場所のホットスポットの対応を続けている。

■ オリンダ火災は1.69平方マイルを焼き、817日(木)時点で85%鎮火した一方、クラ火災は約0.33平方マイルが燃え、80%鎮火した。ラハイナ火災は、817日(木)時点で89%鎮火し、当局は「現時点で積極的な脅威はない」と発表した。

■ 817日(木)、火災によって多くの人が家を失い、マウイ郡が運営する避難所、友人や親戚の家、あるいは寄付されたホテルの部屋や貸別荘に避難している。元消防署の隊長は、「マウイ島では、私たちは皆、一つの大家族です。私たちはそれをオハナOhana)と呼んでおり、家族と考えるのに血のつながった親戚である必要はありません。それがハワイのやり方です。私たちはお互いに助け合います」 と語った。

■ 821日(月)ハワイ州教育省によると、ラハイナを火災が襲った88日(火)は、生徒たちが初めて学校に戻った日だった。しかし、ラハイナルナ高校は強風による停電のためその日は休校となった。地元の中学校と小学校は 89日(水)に生徒を戻す予定だった。

 88日(火)のラハイナ火災の急速な進行を知った住民は家にこどもを残しており、すぐに帰宅しようとしたが、渋滞にはまってしまう。車から降りると、警察のバリケードに直面し、帰宅ができなかった。2日後、ようやく自宅に行くことが許されたとき、家族が飼っていた死んだ犬を抱きかかえた14歳の息子の遺体を発見した。

■ 824日(木)時点で、マウイ島ラハイナの山火事による死亡者は115人となった。また、行方不明者は1,0001,100人という。

被 害

■ ハワイ州マウイ島の4か所で山火事によって草原や畑が焼失した。特に、ラハイナでは市街地に延焼した。

■ ラハイナの市街地火災では、死傷者や行方不明者が出た。824日(木)時点で死者は115名となった。行方不明者は1,0001,100人という。

■ 火災によって大気汚染が発生した。

< 火災の原因 >

■ 火災の原因は特定されていない。

 捜査当局は、送電線のダウンやハワイ州の主要電力会社であるハワイアン・エレクトリック社の判断が影響したかどうかを調べている。マウイ島中部のマカワオにあるマウイ鳥類保護センターで撮影されたビデオには、87日(月)午後11時直前に電柱が故障している様子が映っている。その直後、炎のようなものが見られた。これは電力網の障害によって引き起こされた可能性が非常に高いということを示す一例だという。マカワオ火災はラハイナ火災の数時間前に発生したが、火災の前にもセンサーが送電網の故障を検知していたという。この件については集団訴訟が起こされ、山火事の原因はハワイアン・エレクトリック社の通電していた電線が原因だとし、「電柱や電線が倒れ、草木や地面と接触していることを知っていたにもかかわらず、通電を停止することを選択しなかった」と指摘している。

山火事の拡大要因

■ 811日(金)、マウイ島の山火事が発生した88日(火)に警報サイレンが鳴った記録がないとハワイ州緊急事態管理庁は明らかにした。住民や観光客らが火事の危険を察知するのが遅れた可能性がある。、ハワイ州は世界最大の屋外の公共安全警報システムがあり、約400のサイレンが設置され、さまざまな自然災害を警告する仕組みになっている。しかし、壊滅的な被害を受けたマウイ島ラハイナの被災者の多くは、近くで炎を見たり爆発音を聞いたりして初めて危険に気づいたと話した。ハワイ州緊急事態管理庁は、サイレンの代わりに携帯電話やテレビ、ラジオの警報を使ったと説明した。ただ、こうした通信機能が途絶える前にこれらの警報が届いたかは明らかではない。このサイレンシステムはビッグアイランドで150人以上が死亡した1946年の津波後に作られ、そのウェブサイトには火災の警報に使用される可能性があると記載されている。

■ 812日(土)、米紙WSJは、ハワイの南を通過していたハリケーン・ドーラの影響で、マウイ島上空に突風が吹いていたと指摘した。当局は、強風への備えはしていたものの、火災は想定していなかったという。 気候科学者は、吹き下ろしの強い風に加えて、干ばつが続く中、耕作放棄地に草が茂っていたため、火が広がったと分析している。火災の炎は、ハリケーン・ドーラがハワイの南約700マイル(1,100キロ)を通過した際に、島々を襲った最大時速65マイル(風速28m/s)の突風によってあおられた。

■ 813日(日)、米国消防局はラハイナを視察した所見として「火災は極めて速く広がった。雑草が火種になって地面に近いところで水平方向に広がり、どのような初期消火も追いつかない速さで建物から建物へと燃え広がった」と分析した。

■  816日(水)、山火事の被害が拡大した要因のひとつと考えられているのが、マウイ島をはじめハワイ州の島々で生息面積が広がっているギニアキビなど外来種の植物という。こうした外来種の雑草の危険性について今回の山火事が起きる前から指摘されていた。ハワイ大学の専門家は「この5年ほど、現場の消防士たちの経験では、火事の炎がより高温で速く燃え広がり、大きくなっているという話を聞くようになった」といい、「ハワイで起きる火災に変化が起きている背景には外来種の草の生育面積が拡大していることがある。これらの草は簡単に着火し、驚くほど速く高温で燃える」と指摘している。こうした外来種の草は、元々は牧草として島に持ち込まれ、近年、草の生育面積が広がった理由として2016年にマウイ島でサトウキビ栽培が終わるなどハワイ州の島々で農地面積が減ったことを挙げ、「これらの草は耕作をやめた場所を埋めるように広がっていく」という。

■ 被害が拡大した背景のひとつは、マウイ島で乾燥した日が20235月末頃から続き、急激なスピードで乾燥が進むフラッシュ干ばつに見舞われ、燃え広がりやすい状態になっていたのではないかという。マウイ島を含むハワイ州の大部分が干ばつや異常乾燥状態であった。米国干ばつ監視モニターによると、ハワイ州の約14%が深刻または中程度の干ばつに見舞われており、ハワイ州の80%は異常乾燥状態だった。810日(木)時点の米国干ばつ監視モニターの程度は図のとおりである。

< 対 応 >

■ 88日に山火事が島全体に急速に広がり、マウイ島の山火事に対応するために多くの機関が要請されたが、ハリケーン・ドーラに関連した気象条件によりそれらの取り組みの一部が妨げられた。山火事に対する州の緊急対応の一環として出動した州兵のヘリコプターは、その夜、突風が強まったため運航を停止した。89日(木)ハワイ州非常事態 宣言により 州兵の派遣が許可され、非常事態が延長された。

■ 810日(木)、米国大統領は、今回の山火事について大規模災害にあたると宣言した。連邦職員や軍を派遣され、行方不明者の捜索や自宅を失った人たちへの避難場所の提供など支援にあたっている。

■ 812日(土)、警察は、ラハイナの住民を対象に一時的な立入りを認めると発表したが、ラハイナに向かう道路は車が数kmにわたって渋滞し、警察は混乱が生じたとしてその日のうちに住民の通行を禁止した。814日(月)には、規制区域への立ち入りを円滑に進めるためとして通行証の発行を始めた。このため、受取り所では住民が朝から車で長い列を作った。しかし、警察は発行開始から1時間で、対象ではない人が大勢訪れているとして通行証を使う方法自体を取りやめた。マウイ島の被災した人たちからは、行政の対応が二転三転する中、自宅に思うように戻れないとして、行政当局を批判する声も上がっている。

■ 812日(土)、火災が発生していたキヘイ火災は消火された。

■ 813日(日)、 ラハイナの町では、消防隊員たちは依然として再燃と闘い、捜査犬が犠牲者を探して町の黒焦げになった廃墟を歩き回っていた。 一方、消防士などの話として、火災で水道管が破損して消火栓から水が出なくなったため役に立たなかったと伝えていて、複数の要因が重なって被害の拡大につながったという見方も出ている。

■ 813日(日)、当局は、ちょっとした明るいニュースとして、電話や電気が通っていないために孤立した民家に60人が避難しているのを発見したという。この60人のうち多くが行方不明者としてリストに載っていた。しかし、821日(月)時点で、行方不明者リストには850人の名前が残っており、緊急対応部隊は今も捜索活動を行っている。

■ 814日(月)、 火災境界内のホットスポットを攻撃するために航空支援が展開された。

■ 814日(月)、ハワイ州知事は、マウイ島が火災から復興するまでの間、州外の買い手によるマウイ島の土地購入を制限とすると述べた。

■ 815日(火)、米国大統領は、「過去100年で最悪の山火事だ。街を破壊し、長く続いてきたハワイ先住民の歴史を荒廃させた」と述べ、支援を続けていくと強調した。

■ 815日(月)、 格付け会社ムーディーズ・インベスターズ・サービス社は、マウイ島で発生した山火事による保険金の支払額が少なくとも10億ドル(1,400億円)に上るとの見方を示した。太平洋災害センターと米国連邦緊急事態管理庁(FEMA)の推計を引用して、2,000棟以上の建物が損傷または破壊されたほか、内部が露出した状態の建物が2,700棟以上あると指摘した。

■ 815日(火)、ハワイ州知事は、すでに400人以上の米国連邦緊急事態管理庁(FEMA) の職員が島に配備されており、さらに273人の州兵が配備されていると述べた。 

■ 816日(水)、ハワイ州知事は、ラハイナの山火事について最高時速80マイル(時速128キロ)の突風にあおられて、華氏1,000度(摂氏538度)に達する高温で燃え盛り、歴史あるリゾート地ラハイナの街並みを一変させたと語っている。捜査と担当している警察は、819日(土)の週末までに被災地の8590%を捜索が済むことを期待していると語った。当初、1匹の捜査犬から始まった捜索チームは 20 匹になった。

■ 816日(水)時点で、マウイ・メディカル・センターは多数の火傷患者のために満員だという。

■ 816日(水)、消防団は依然として再燃と闘っていた。マウイ島ラハイナ最大の火災は水曜早朝の時点で85%鎮火し、2,170エーカー(880ヘクタール)が焼失したと発表され、積極的な脅威は無くなったと付け加えられた。内陸部のクラで起きた火災は75%鎮火し、678エーカーが焼失。他の場所で発生した小規模な火災は 100% 消火された。

■ 816日(水)、サイレンを使用しないという決定以外にも、州と地方の当局者は、消火に利用できる水の不足や、炎が押し寄せる中で渋滞した道路で多くの人が車の中に閉じ込められるという混乱した避難状況などで住民の批判に直面している。住民らによると、消火栓の水がなくなり、消防士による火災の鎮火が困難になったという。米国連邦緊急事態管理庁(FEMA)の当局者は、消火栓の給水に影響を与える問題があったことを認めた。

■ ハワイ州はマウイ島西部から観光客を避難させていて、これまでに少なくとも46,000人が島外に出たという。 816日(水)、ハワイ州知事は、マウイ島西部以外のハワイ諸島への旅行は安全であることを再確認したと発表した。「パンデミックの時と同じように、私たちが下す決断はハワイ全島に影響を及ぼします。私たちが今述べているのは、マウイ島西部への渡航は控えるべきだということですが、それと同時に、マウイ島西部以外の地域や州の他の島についての旅行は安全だということです。災害復興を支援する人々の懸命な活動に影響を与えない範囲でハワイ州(マウイ島西部以外の地域)に旅行してもらいたい」と知事は述べた。

■ 816日(水)、被害の大きかったラハイナとアッパークラ(Upper Kula)地域の一部では、住民に「水を飲んだり、沸騰させたりしてはならない」という勧告が出されている。

■ 816日(水)、マウイ島消防当局は 88日に発表した警報の中で、「不安定な風、困難な地形、急な斜面、湿度の低下、火災の方向と位置により、山火事の進路と速度を予測することが困難になっている」と警告していた。 火災は、風によって燃えカス(残り火)が上方に押し上げられ、風下で火花が引火することによって、「火災は発生源から遠く離れた場所でも発生する可能性がある」と指摘した。

■  816日(水)、消防団は依然として再燃と闘っていた。マウイ郡は、ラハイナ最大の火災は水曜早朝の時点で85%鎮火し、2,170エーカー(880ヘクタール)が焼失したと発表し、積極的な脅威はなかったと付け加えた。内陸部のクラで起きた別の火災は75%鎮火し、678エーカーが焦げた。他の場所で発生した小規模な火災は 100%消火された。

■ 816日(水)、マウイ郡緊急事態管理庁の長官は記者会見で、発生した山火事でサイレンを鳴らさなかった当局の決定を擁護した。そうすることで命が救われたかどうか疑問であるという意見がある。ハワイでは人々に津波を警告するためにサイレンが使用されている。火災の最中にそれを使用したことで人々が危険な方向に避難した可能性があると語った。長官は「国民はサイレンが鳴った場合に高台を探すよう訓練されている」と述べたが、火災時の州政府の対応に記者らが質問し、時折緊張感が高まった。「もしあの夜にサイレンを鳴らしていたら、人々はマウカ(山腹に)行っていただろうし、もしそうだったら火の中に飛び込んでいただろう」と長官は語った。長官によると、マウイ島は代わりに、携帯電話にテキストメッセージを送信するシステムと、テレビやラジオで緊急メッセージを放送するシステムのふたつの警報システムに依存していたという。サイレンは主に水辺に設置されているため、高台にいる人々には役に立たなかったであろう、と長官は述べた。

■ 818日(金)、山火事のマウイ島での対応を巡って地元住民やメディアから批判を受けたマウイ郡緊急事態管理庁の長官が健康上の理由に辞任したと当局者が発表した。

■ 821日(月)、米国大統領は、大統領夫人を同行し、マウイ島を訪れた。米国大統領は、 生存者、初期対応要員や救急隊員、州・地方当局者らと面会した。






(火災前後の写真はBbc.comから引用)

補 足                                                                          

■「ハワイ州」は、太平洋に位置するハワイ諸島にある米国の州で、人口約145万人である。州都はオアフ島のホノルル市である。

「マウイ郡」はハワイ州の郡で、郡域はマウイ島、カホオラウェ島、ラナイ島、モロカイ島、モロキニ島で構成され、人口約165,000人の郡である。

「ラハイナ」は、ハワイ州マウイ郡のマウイ島の北西部にあり、人口約12,700 人である。この町はかつて捕鯨の中心地であり、ハワイ王国の首都だったが、現在では年間 200 万人の観光客が訪れる観光地である。

所 感

■ 今回の山火事は、過去に紹介した 「米国アリゾナ州の山火事で消防士19名死亡」2013年7月)「ブラジルのアマゾン熱帯雨林で森林火災が多発」 20199月)「豪州における山火事の被害(20192020年)」 20203月)と異なり、市街地を巻き込む新たな山火事の分野である。今回指摘されている火災拡大の要因を見てみると、送電線の火花による可能性、ハリケーン(台風)の影響による強風、外来種の雑草が火種、異常乾燥状態、警報サイレンや携帯電話への過度な依存である。これらはマウイ島の山火事の特殊な例でなく、今年の異常な暑さを引き合いに出さずとも、日本でもありうる要因だと感じる。

■ 山火事の消火活動についてラハイナ火災の前までは、出動人員や消火資機材は報道されていたが、ラハイナ火災が起こってからの状況ははっきりしなくなった。写真によると、消火ホースやヘリコプターによる放水が主と思われる。マウイ郡の郡域はマウイ島など5島から成り、人口約15万人で、さらにひどい火災だったラハイナは人口約13,000人である。このような状況では、消火栓の水が出なかったときもあるようだが、島で発生した4つの山火事に対応できなかったのが実情ではないだろうか。米国のようなホットショットのような専門職を置くことは無理だとしても、ブラジルでは森林火災の予防と戦闘で訓練された部隊がいる。マウイ島にも原野消防隊員がいるようだが、到底すべての山火事に対応できなかっただろう。

 日本の林野庁によると、直近5年間の平均でみても山火事は1年間に約1,300件発生し、1日あたりにすると、全国で毎日約4件の山火事が発生している。林野庁では、「林野火災発生危険度予測システム 構築」に取組んでいるようだし、規模の大きい山火事で自衛隊の応援を求めたこともあるという。 しかし、今回のような市街地への山火事への対応も想定しておかなければならないことを示す事例である。


備 考

 本情報はつぎのインターネット情報に基づいてまとめたものである

    News.ntv.co.jp,  ハワイ・マウイ島に非常事態宣言 山火事が広範囲に延焼中、36人死亡 渡航中止を呼びかけ,  August  10,  2023 

    Asahi.com, ハワイの山火事、警報サイレン鳴らなかった? 「炎見て、気づいた」,  August  11,  2023

    News.yahoo.co.jp,  ハワイ山火事、死者80人 安否不明1000人の報道も 強風・干ばつで被害拡大か,  August  12,  2023

    Nhk.or.jp,  ハワイ マウイ島 山火事1週間 死者は106人に 被害拡大の背景は,  August  16,  2023

    News.yahoo.co.jp,  マウイ島山火事、死者110人に 消火活動続く,  August  17,  2023

    Allhawaii.jp,  マウイ島西部の山火事に関する重要なお知らせ,  August  17,  2023

    Reuters.com,  Maui fires: Hawaii death toll hits 55, recovery to take years,  August  11,  2023

    Reuters.com,  Maui officials defend decision not to sound sirens during wildfire,  August  17,  2023

    Reuters.com,  Maui fires raise questions over warnings, death toll hits 80,  August  13,  2023

    Edition.cnn.com, Maui wildfires death toll rises to 110 as official says using the warning sirens wouldn’t have saved lives,  August  16,  2023

    Apnews.com, Schools reopening, traffic moving again in signs of recovery from Maui fires that killed 110,  August  17,  2023

    Bbc.com,  Hawaii fire: Maps and before and after images reveal Maui devastation,  August  14,  2023

    Nbsnews.com,  Maui wildfires death toll tops 100 as painstaking search for victims continues,  August  16,  2023

    Cbsnews.com,  Maui wildfires death toll tops 100 as painstaking search for victims continues,  August  16,  2023

    Hawaiinewsnow.com, Maui firefighters achieve 100 percent containment in massive Wailea brush fire,  August  09,  2023


後 記: ハワイで山火事があったというニュースがテレビや新聞などで流されましたが、当ブログの範ちゅうではないので、取り上げるのを躊躇しました。しかし、多くの人が亡くなった山火事とはどのような火災だったのか気になり、取り上げることとしました。山火事を取り上げるのは、これで4件目です。

 日本のメディアの記事を見た後、海外メディアの報道を調べました。今回の報道の特徴は、ラハイナの火災が急速に進展したので、これまでの山火事でも感じていた以上に火災時の報道記事が少なかったことです。特に火災時の写真は少なく、あってもいつ・どこの写真かわからないものでした。ただ、日を追って山火事に関する記事や投稿が増えてきています。山火事の状況は、日本の報道を見聞きして想像していたものとは、随分違っており、所感に書いたように日本でも起こりうる山火事だと思いました。

2023年8月16日水曜日

米国テキサス州ディアパークのタンク大火災の原因(2019年)

 今回は、 2019317日(日)、米国テキサス州ディアパーク市にあるインターコンチネンタル・ターミナル社のタンク施設で起こった13基の貯蔵タンクの火災事故を調査していたCSB(米国化学物質安全性委員会)が202376日(木)に最終報告書を発表し、タンク火災の発端になる原因が明らかになったので、その内容を紹介します。

 なお、事故直後の情報については「米国テキサス州で13基の貯蔵タンクが6日間火災」20194月)「米国テキサス州で13基の貯蔵タンクが6日間火災(火災拡大の要因)」201911月)を参照。

< 発災施設の概要 >

■ 事故があったのは、米国のテキサス州(Texas)ハリス郡(Harris County)ディアパーク市(Deer Park)にあるインターコンチネンタル・ターミナル社(Intercontinental Terminals Company)のタンク施設である。インターコンチネンタル・ターミナル社は日本の三井物産が所有する施設である。

■ 発災は、ヒューストン(Houston)都市圏にあるターミナル施設のタンク設備で起こった。ターミナル施設には合計242基のタンクがあり、石油化学製品の油やガス、燃料油、バンカー油、各種蒸留油を貯蔵しており、総容量は1,300万バレル(207KL)である。発災タンクは、1980年代に作られた第1期・第2期タンク群の13基である。

< 事故の状況および影響 >

事故の発生

■ 2019317日(日)午前10時過ぎ、容量80,000バレル(12,700KL)のTank80-8(ナフサ)近くで火災が起こった。

■ Tank80-8に接続されている循環ポンプが故障し、タンク内のブタンリッチのナフサが漏洩した。ポンプは故障したまま約30分間ナフサを流出し続け、この区域に滞留したのち、可燃性ベーパーに引火して火災が発生した。火災はTank80-8の配管マニホールドを巻き込んだ。続いてナフサ・タンクが火災となり、隣接するタンクに延焼していった。火災が発生しても、インターコンチネンタル・ターミナル社は放出個所を縁切りしたり、停止ことができなかった。

■ 発災に伴い、消防隊が出動し、火災への対応を行ったが、効果的な成果が得られないまま、同じ防油堤内にある計15基の貯蔵タンクのうち空のタンク2基を除き、つぎつぎと延焼していった。

■ 火災は3日間燃え続け、320日(水)午前3時頃、やっとすべてのタンク火災が消えた。

■ 322日(金)午後1215分頃、タンク基地の防油堤の一部が損壊し、タンク群から出た石油、水、消火泡が流出し、ヒューストン運河を含む周辺の水路に流れ出した。さらに、午後345分頃、タンク基地ではタンク火災が再燃した。この火災は2時間ほどで消された。

■ 米国沿岸警備隊は、港湾内に流出した油と泡を封じ込めるため、オイルフェンスの展張強化を行った。

事故の背景(ナフサーブタンのブレンド運転)

Tank80-8はナフサ用の地上式常圧貯蔵タンクで、容量は80,000バレル(12,700KL)だった。タンクは1972年に運転を供され、インターコンチネンタル・ターミナル社ディアパーク・ターミナルの操業開始以来の設備である。 Tank80-8は別の会社にナフサ貯蔵のために賃貸され、ナフサ-ブタンのブレンド運転に供された。インターコンチネンタル・ターミナル社は、外部配管設備(パイピング・マニホールド)を使用してナフサ製品にブタンを注入するようにした。図3を参照。

■ ブタンは、常設のブタン注入システムによってタンクローリーから受入れ配管を通じてTank80-8へ流れる。ブタン注入システムは、タンクローリーのローディング・ラックから始まり、タンク基地の南西部を通り、Tank80-8の循環ラインである配管マニホールドの注入箇所につながる。制御システムは、 Tank80-8のポンプが確実にナフサを循環していなければ、ブタン注入システムをスタートできないように設計されている。この条件に合致していれば、インターコンチネンタル・ターミナル社のオペレーターはタンクローリーのローディング・ラックにあるONボタンを押してアクチュエータ弁を開にし、ブタンの受入れを始めることができる。ブタンは、タンクローリーのタンクから4インチ径の配管を流れ、最後に2インチ径に細くなった配管を通じて既存ナフサとつながる循環ラインへ受け入れられる。ナフサとブタンの混合が十分行われるように、ポンプは受入れ運転モードによって数時間そのままの状態になる。(図4を参照)

■ インターコンチネンタル・ターミナル社はTank80-8の配管マニホールドに緊急または遠隔の縁切りバルブを設置していなかった。縁切りバルブは、例えばポンプや配管が損傷したときのような制御できない事象が起きたときに閉止させることができる。しかし、現設備では、ポンプなどの機器と縁切りさせるためにオペレーターは、Tank80-8からポンプへの供給バルブ、およびポンプからタンクへ返すリターンバルブの両方を手動で閉止しなければならない。このため、この設備近くで漏洩によって生じた火災においてオペレーターや消防隊はこのエリアに近づくことができず、手動でバルブを閉止することができなかった

事故時の事実

■ 2019316日(土)の夕方、ブタンのタンクローリーからTank80-8に受入れ予定が2件あり、この準備のため、オペレーターA1980年代に作られた第1期・第2期タンク群の担当オペレーター)がTank80-8の配管マニホールド部の現場に到着した。オペレーターAは、ポンプ循環に備えて、配管マニホールドの各バルブを開または閉の位置に操作した。

■ 午後654分頃、バルブ開閉の位置操作を確実に終えた後、オペレーターAはポンプの運転を開始した。ポンプはTank80-8の配管マニホールド部にあったので、ポンプの運転・停止は手動で行わなければならなかった。オペレーターAはポンプを運転し始めた後、オペレーターB(タンクローリー・ローディングラックの担当オペレーター)に、ブタンの荷卸し系統が確立した旨連絡した。オペレーターBはタンクローリー・ローディングラックにおいて荷卸し作業を開始した。図4に示すようにタンクローリーからTank80-8へブタンが流れた。

■ 2回予定されていたブタン受入れの第一回目は午後723分頃開始され、午後815分頃に終わった。この間、Tank80-8へは約170バレル(27KL)入った。第二回目のブタン受入れは午後929分から午後1029分に行われ、約193バレル(30KL)入った。この2回のブタン受入れが終わった後も、ポンプはそのまま運転され、製品を循環し続けた。インターコンチネンタル・ターミナル社では、次の日に船が到着し、Tank80-8から船へタンク全量を移送する予定だった。

■ 317日(日)の朝、インターコンチネンタル・ターミナル社のコンピュータDCSDistributed Control System:分散制御システム)には、監視しているポンプの運転圧力とタンク容量のデータに予期しないような一連の変化を示していた。これらの変動はポンプ循環システムに機械的な問題が発生していることを示唆していた。午前725分頃にポンプ吐出圧がゆっくりと上がり始めていた。午前845分頃までにポンプ吐出圧は80psiから84psi0.56MPaから0.59MPa)に上昇していた。午前934分にナフサ製品の漏洩が始まったとみられ、タンク容量が確実に減少し始めていた。同時間に、ポンプ吐出圧が突然80psi0.56MPa)に落ちた。午前945分頃、ポンプ吐出圧は80psi0.56MPa)から75psi0.52MPa)に2度目の急落を示していた。その頃、同じ時間帯にタンク容量は減少し続けた。

■ 午前934分から午前1001分の間に、タンク容量は約221バレル(35KL)減少していたことをDCSのデータは示していた。タンク基地には常設のガス検知器を設置していなかった。そのため、インターコンチネンタル・ターミナル社の従業員に石油漏洩を知らせる警報は鳴らなかった。Tank80-8からナフサが漏洩してタンク液位や容量が減少しているにも関わらず、計器室では何の警報も鳴らなかった。このため、従業員は、火災が発生する以前にナフサが漏洩していることを知らなかった。

■ 午前1000分頃、Tank80-8の配管マニホールド(図5を参照)の近くで火災が発生した。その直後の午前1001分に、コントロール・システムの事象記録ではポンプが停止したことを示し、その後、DCSでは、Tank80-8の設備との情報が途絶えた。この時間以降、Tank80-8やポンプのコントロール・システムのデータは利用できなくなった。

被 害

■ 13基の貯蔵タンクが火災で焼損した。内液の石油が焼失(量は不詳)したほか、防油堤や配管が損傷した。発災時や消防活動によるけが人は無かった。

■ 物的損害は15,000万ドル(210億円)以上と推定されている。

■ ベンゼンなどの大気放出で1,000名以上の住民に健康被害が出た。 

■ 油や消火泡が港湾(水路)に流出し、海水の水質汚染が出た。魚やカメの死体が浮かんだり、油まみれの鳥がいた。

< 事故の原因 >

CSB(米国化学物質安全性委員会)による原因究明

■ 事故時にTank80-8の配管マニホールドに設置されていた循環ポンプは遠心ポンプで、グールズ社のモデル 3196 XLTX Goulds Model 3196 XLTX)だった。 遠心ポンプはフレームアダプターによって接続され、液体側と電力側で構成されている。(図21を参照)

■ 事故後、Tank80-8の循環ポンプは分解検査するため第三者施設に運ばれた。 (図22を参照) ポンプは分解され、構成部品の目視検査が行われ、その状態が記録された。ポンプシャフト、シール、外側の軸受部にかなりの劣化と摩耗損傷がみられた。内側の軸受箱にあるシール部付近のポンプシャフトには、激しい磨耗が見られた。(図23を参照) また、シールグランド部にも広範囲の接触摩耗が見られた。(図24を参照)


■ 図25に示すように、4個のグランドナットでシールグランドをシール室カバーに固定し、ナフサがポンプから漏れるのを防ぐようになっている。事故後、ポンプを点検したところ、4個のグランドナットのうち1個も残っておらず、シールグランドがシール室カバーから完全に外れていることが明らかになった。(26を参照) さらに、シールグランドを介してメカニカルシールに潤滑剤を補給するための鋼製チューブは外部シールポット部から切断され、ポンプシャフトに巻き付いていた。

■ 事故後、シールグランドを支持する3本のシール室ボルトのねじ山を検査したところ、シールグランドの切込み式穴から外れた部位に不均一な変形が見られた。 (27を参照) ボルトの1本について金属組織検査を実施したところ、ねじ山の頂部が平らになっているのが確認された。 (28を参照) シールグランドの切込み式穴から外れたねじ山の不均一な変形やねじ山の頂部が平らになっていたのは、ねじ山へのせん断力による接触ではなく、半径方向の圧縮接触を示している。したがって、損傷は、グランドナットが緩んでボルトから外れるときに、シール室の切込み式穴と振動接触したために生じたと考えられる。ポンプの事故後の検査にもとづき、ブタンリッチのナフサが流出したのは、Tank80-8の循環ポンプのグランドナットが緩み、シールグランドがシール室のカバーから外れた結果、ナフサの放出経路ができたときに始まったと、 CSB(米国化学物質安全性委員会) は結論付けた。

■ ポンプを分解する際、ポンプシャフトには軸受フレームのアウターボード側で半径方向の変位が観察された。これは、通常、軸受(ベアリング)が故障していることを示す。その後、軸受箱を分解したところ、アウトボードのスラスト軸受に故障が確認された。

■ Tank80-8の循環ポンプは2019317日の朝には運転状態にあった。アウトボード側の軸受が破損すると、ポンプシャフトは荷重を支えなくなり、その結果、ポンプシャフトのアウトボード側の端が上向きに大きくたわみ(ポンプシャフトのインボード側の端にあるインペラの重量による)が発生し、シャフトのセンターラインがずれた。このような状態で循環ポンプが運転を続けたため、支えがほとんどないポンプシャフトの高速回転によってポンプに大きな振動が発生し、位置ズレが拡大するにつれて振動は大きくなったと考えられる。

■ 事故当日、運転の変更が行われていないにもかかわらず記録されていたデータでは、午前930分頃からタンク内容量が減少し始め、タンクへの平均流量が増加し始めた。これは、シール室のボルトからグランドナットが緩み、シールグランドがシール室のカバーから外れた結果、ブタンリッチのナフサがポンプから放出されやすい開孔部(すきま部)ができたからだと考えられる。事故後の検査によってアウトボード側スラスト軸受とシール室のボルトまでの広範囲に損傷状態が見られたことにもとづけば、 循環ポンプがブタンリッチのナフサを循環させながら、アウトボード側軸受の故障時点以降も運転し続けた可能性が高いと、CSB(米国化学物質安全性委員会) は結論づけた。軸受の損傷によってポンプに大きな振動が発生し、メカニカルシールを所定の位置に固定していたグランドナットが緩み、シール部が分解して可燃性混合物を放出したとみられる。

■ Tank80-8の循環ポンプは、午前10時頃に火災が発生するまでの約30分間、故障したままブタンリッチのナフサを大気中に放出しながら運転を続けた。この危険物質のベーパー密度は重いため、ブタンリッチのナフサの可燃性ベーパーは地上近くに漂い、Tank80-8のポンプ周辺の低地に溜まった可能性が高い。Tank80-8の循環ポンプには、振動監視システムは設置されておらず、また、この周辺には放出が進行していることを職員に警告するためのLELガス検知システムも設置されていなかった。

■ ポンプシャフトが回転し続けると、ふたつの金属表面が高速で研磨され、軸受箱のインボード側に近いポンプシャフト表面に溝ができた。金属同士の接触によってポンプシャフトに形成された溝の深さから、シールグランドがシール室のカバーから完全に外れた後も、ポンプは数分間運転を続けていたことがわかる。(図23を参照) ポンプ周辺に溜まった可燃性ベーパーは、ポンプシャフトと外れてしまったシールグランドの金属接触で発生した熱によって発火した可能性が高いと、CSB(米国化学物質安全性委員会) は結論づけた。

事故に関する問題点

■ CSB(米国化学物質安全性委員会)の最終報告書では、以下の5つの安全上の問題を指摘している。

 ● ポンプの機能維持; インターコンチネンタル・ターミナル社は、Tank80-8と循環ポンプを含む関連機器の機能を維持するための要領や手順を導入していなかった。危険性の高い化学物質を使用するポンプの機能を維持するためのプログラムがあれば、事故の前にポンプの問題を特定できただろう。2019317日にポンプのメカニカルシール部が破損したにもかかわらず、運転を続けている間にブタンリッチのナフサをポンプから流出させてしまった。

 ● 可燃性ガス検知システム; Tank80-8には、タンクや関連機器からの漏れ(封じ込め喪失)による危険な状態を職員に警告するための可燃性ガス検知システムが装備されていなかった。2014年、ハザード検討チームがTank80-8付近に可燃性ガス検知システムを追加するよう推奨していた。しかし、インターコンチネンタル・ターミナル社は、この推奨事項を実施せず、実施しなかった理由を文書化していなかった。可燃性ガス検知システムがないため、Tank80-8の配管マニホールド周辺にブタンリッチのナフサが流出したことを職員に知らせる警報がなかった。その結果、ナフサや可燃性ベーパーが故障したポンプから約30分間放出し続け、引火して火災が発生した。

 ● 遠隔操作式の緊急遮断弁; Tank80-8のタンク区域には、安全な場所から遠隔操作で漏洩した油の流出を止めるような緊急遮断弁が設置されていなかった。遠隔操作式の緊急遮断弁などの必要性の判断は、米国安全衛生労働局(OSHA)のプロセス安全管理基準(PSM)や米国環境保護庁(EPA)のリスク管理プログラム基準(RMP)で義務付けられているハザード評価、あるいは保険会社の監査や企業のリスク評価結果などである。事故当日、Tank80-8のブタンリッチのナフサは、遠隔操作や自動隔離ができず、故障したポンプから放出され続け、タンクまわりの火災を大きくした。Tank80-8まわりの火災が拡大するにつれ、火災による炎はタンク区域内あった配管マニホールドに広がり、設備を損傷させ、配管の破断を引き起こし、貯蔵タンク内のブタンリッチのナフサを防油堤内に放出させてしまった。

 ● タンク施設の設計; 1980年の前半に作られたタンク施設は全米防火協会のNFPA30Flammable and Combustible Liquids Code)の基準に従って設計されてはいたが、タンクの配置、タンク間距離、堤内に設置したポンプの管理、排水系統などタンク施設の個々の設計要素によって、緊急対応要員が初動時において火災の拡大を遅らせたり、防止したりすることを難しくさせており、タンク区域内の他のタンクへの延焼を許してしまった。

 ● 安全管理要領(PSM)やリスク管理要領(RMP)の適用; インターコンチネンタル・ターミナル社は、米国安全衛生労働局(OSHA)のプロセス安全管理基準(PSM)や米国環境保護庁のリスク管理プログラム基準(RMP)をTank80-8に適用していなかった。というのも、米国安全衛生労働局(OSHA)のプロセス安全管理基準(PSM)や米国環境保護庁のリスク管理プログラム基準(RMP)も、規則内に記載されている適用除外のため、タンクとその関連機器に適用されなかったからである。OSHA PSM基準では常圧貯蔵タンクを除外されており、EPA RMP基準ではブタンリッチのナフサ混合物の規則で可燃性評価が除外されていたため、Tank80-8と関連機器には適用しなかったという。インターコンチネンタル・ターミナル社はタンク施設全体に対していくつかプロセス安全管理を適用していたが、同社は危険性の高い化学物質を取扱う常圧貯蔵タンクにプロセスハザード分析や機械の機能維持ための管理基準を適用しなかった。 これらの管理基準を適用していれば、Tank80-8まわりの危険性を予知し、安全に管理する機会が得られたはずである。このように、インターコンチネンタル・ターミナル社がプロセス安全管理プログラムを検討し、実施していれば、事故は防げたはずである。

補 足

■「テキサス州」(Texas)は、米国南部にあり、メキシコと国境を接し、人口約2,915万人の州である。

「ハリス郡」(Harris County)は、テキサス州南東部に位置し、人口約478万人の郡である。

「ディアパーク」(Deer Park)は、ハリス郡の南東にあり、人口約34,500人の市である。

■「インターコンチネンタル・ターミナル社」(Intercontinental Terminals Company)は、1972年にMitsui&CompanyUSA Inc.によって設立された石油ターミナル会社で、日本の商社である三井物産の子会社である。ディアパーク市の施設には約270人が働いているが、役員を含めて従業員は米国人である。

 ディアパーク施設は242基のタンクで総容量は1,300万バレル(207KL)である。タンクの大きさは1,20025,000KL級である。最長182mの船が着桟できる桟橋など5つのタンカー・バースがある。


■ 最初に発災したナフサ・タンクは内部浮き屋根式で、容量が80,000バレル(12,700KL)である。グーグルマップによると、直径は約33mであり、高さは約15mとなる。今回の発災したタンク地区には15基の貯蔵タンクがあり、同じ防油堤内にある。15基の貯蔵タンクはいずれも同じ大きさで、内部浮き屋根式とみられる。油種はナフサ、ガソリン・ブレンド、キシレン、熱分解ガソリン、潤滑油ベースオイルといろいろあるが、内部浮き屋根を必要とする油を対象にしたタンク地区だと思われる。このタンク地区のタンク間距離は、グーグルマップによると約11mで、タンク直径の1/3であり、防油堤内に仕切り堤はない。

所 感

■ CSB(米国化学物質安全性委員会)による最終報告書が出されたが、事故の発端はタンクの循環ポンプの故障であることが判明した。たった1台のポンプが故障しただけで、同一防油堤内にあったタンク13基が火災で損壊し、内部の油が焼失するという大事故が技術の高い米国内で起きたことに驚きである。しかも、シールグランドのナットの緩みが最初だとみられている。ナットの緩みであれば、緩みが始ったのはかなり前からと思われ、事故が起こる前の日常点検で発見できただろう。よく言えば、事業者はタンク施設設計者、製作者、保全請負者などを信頼し、事故など起こらないと信じていた。悪く言えば、運転操作以外、日常はなにもしなかった。いつかは事故が起こったと思われる事例である。

■ CSB(米国化学物質安全性委員会)の最終報告書は歯切れの悪い表現が多いように感じた。 (特に、5つの安全上の問題を指摘した項) それはCSBが、インターコンチネンタル・ターミナル社以外に、米国安全衛生労働局(OSHA)や米国環境保護庁(EPA)などの基準設定団体に対して今回の安全上の問題に関連するギャップに対処するよう勧告しているが、この措置に関して議論があったのではないかと思う。 CSBは、事故から半年の20191030日に予備調査報告書を発表し、最終報告書を20203月までに公表する予定だったが、コロナウィルス感染者対応があったにしても、20237月まで3年も延びていた。確かに米国は自由の国であり、事業者の自立性を大事にするところがあるが、これが裏目に出たと思う。

 日本の法令は細かすぎる点があるが、防油堤内に可燃性液体のポンプを設置しない(指導レベル)ことになっているし、容量1KL以上のタンクには遠隔操作の緊急遮断弁の設置が義務づけられている。日本ですでにこのように対処にしていることを米国は知らないだろう。米国内のタンク施設が悪い方向へ向かっていないことを望む。


備 考

 本情報はつぎのインターネット情報に基づいてまとめたものである。

   Hazmatnation.com,  Report: 5 Key Findings from 2019 Tank Farm Explosion, Fire,  August 3, 2023

     Csb.gov, Storage Tank Fire at Intercontinental Terminals Company, LLC (ITC) Terminal.  Investigation Report, July 06, 2023


後 記: 前回の201910月に出た事故の予備調査報告書のブログを出した後記に「ハインリッヒの法則(ひとつの重大事故の背後には29の軽微な事故があり、その背景には300の異常が存在する)を地で行くような事例で、問題点が多すぎてまとめの収拾がつかないので、事故から半年を期に予備調査報告を出したのではないかと思ってしまいます」と書き、さらに「世界の石油産業を牽引してきた米国(テキサス州)の実情がこの程度なのかと思うとともに、ロイター通信は三井のITC”と伝えており、インターコンチネンタル・ターミナル社(ITC)を所有する日本の三井物産がどの程度関与していたのかも気になるところです」と書きました。ディアパーク市のタンク大火災の原因が出ていないことを忘れていました。最終報告書で原因が明らかになり、驚きはしましたが、前回の後記は当たらずとも遠からずで、大きく外れてはいなかったですね。原因が発表になってすっきりしました。