(写真はMainichi.jpから引用)
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< 発災施設の概要 >
■ 事故があったのは、茨城県稲敷市釜井の筑波東部工業団地内にある三和油化工業茨城工場の施設である。
■ 発災があったのは、廃溶剤のリユース・リサイクル処理を行う施設のエマルジョン製造棟である。同棟には、廃シンナーや溶剤系洗浄油など廃溶剤を取り扱う作業場があり、廃溶剤はドラム缶で保管されていた。エマルジョン製造棟は、廃溶剤のアルコールなどの液に水を混合させてエマルジョン燃料(溶剤燃料)を製造する装置である。
稲敷市の筑波東部工業団地付近
(図はGoogleMapから引用
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< 事故の状況および影響 >
事故の発生
■ 2017年3月17日(金)午前11時50分頃、茨城工場のエマルジョン製造棟の作業場で作業中に火災が発生した。施設には、廃アルコールなど廃溶剤の入ったドラム缶が約200本保管されており、当時、ドラム缶を作業場に運び込む作業をしていたという。
■ 火災発生に伴い、正午頃、三和油化工業から「液体が燃えていて手がつけられない」という119番通報があり、稲敷広域消防本部の消防隊が現場へ出動した。
■ ドラム缶が置かれていた平屋の建物から黒煙が立ち上り、何度も爆発しながら炎上した。
■ 発災場所付近の道路が交通規制されたほか、稲敷市は、午後1時45分、釜井と周辺の計4地区749世帯1,931人に避難指示を出した。
■ 発災から約2時間後の午後2時頃、火災は沈静化し始め、約4時間半後の午後4時36分に鎮火が確認された。
■ 当時、作業場では13人が勤務していた。この事故に伴い、焼け跡から1人の遺体が見つかったほか、2人が軽いケガ(やけど)をした。死亡したのは同社の男性従業員(40歳)で、負傷した人も同社の男性従業員(56歳と35歳)だった。
■ 火災から一夜明けた現場では、平屋の作業場が全焼し、鉄板製屋根の大半が崩落していた。周囲には焦げたり、爆発でひしゃげたりしたドラム缶100本以上が散乱していた。エマルジョン製造棟では、通常、火気を使った作業をしていないという。燃えたのは、原料に使う廃アルコールなどだったとみられる。
発災直後の火災状況
(写真はYoutube.comから引用)
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(写真はNaotan-net.comから引用)
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噴き飛ぶドラム缶
(写真はYoutube.comから引用)
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被 害
■ 事故に伴い、従業員の1名が死亡し、2名の負傷者が出た。
避難する住民 (写真はYoutube.comから引用)
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■ 地元住民1,931人を対象に避難指示が出された。一時、約340人が避難した。
■ 産業廃棄物を取り扱う作業場(563.5㎡)が焼失したほか、ドラム缶に保管されていた廃溶剤の一部が焼失した。焼失したドラム缶は百数十本とみられる。なお、製品を取り扱う製造所と貯蔵所には影響が無かった。
< 事故の原因 >
■ 出火原因は調査中である。
< 対 応 >
■ 稲敷市は、3月17日(金)午後1時45分、周辺の住民1,931人に対して避難指示を出し、一時、最大で約340人が近くの小学校などに避難した。避難指示は午後4時40分に解除された。
■ この火災に伴って消防車両45台と消防関係者170人が出動した。
■ 三和油化工業は、3月17日(金)、同社ウェブサイトに「茨城工場での火災発生について(第一報)」と題して、つぎのような声明を発表した。
「本日11時50分頃、茨城工場にて火災が発生しました。本事故により、社員1名が死亡しました。ご冥福をお祈り申し上げますとともに、ご遺族に対して心よりお悔やみ申し上げます。また、近隣の皆様ならびに関係者の皆様には大変ご迷惑、ご心配をおかけしておりますことに対して、深くお詫び申し上げます」
■ 三和油化工業は、3月18日(土)、同社ウェブサイトに「茨城工場での火災発生について(第二報)」を出し、発災場所がエマルジョン製造棟だったこと、負傷した従業員2名が軽傷だったことを発表した。
■ 3月18日(土)午前9時半から、警察署、消防本部、労働基準監督署の職員約60人が合同で現場検証を行った。現場検証では、消防のはしご車や県警の小型無人機「ドローン」を使って上空から焼けた状況が確認された。
制圧されつつある火災
(写真はAsahi.comから引用)
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鎮火後、膨れたドラム缶を移動する消防隊員
(写真はYoutube.comから引用)
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補 足
■ 「茨城県」は、関東地方に位置し、東は太平洋に面しており、人口約290万人の県である。
「稲敷市」(いなしき市)は、茨城県南部に位置し、人口約42,000人の市である。消防業務は龍ケ崎市にある稲敷広域消防本部が担っている。
茨城県稲敷市の位置 (図はGoogleMapから引用)
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ドローンによる現場検証
(写真はYoutube.comから引用)
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■ 茨城県警の「ドローン」が、現場検証時に上空からの状況を確認するために使用されたが、茨城県警では、2015年から廃棄物の不法投棄の監視にドローンを使用している。
■ 「三和油化工業」は、1970年に設立された環境保全関連会社で、各種溶剤・酸・固形物等のリユース・リサイクル事業、油剤製品・IT産業関連向け高純度製品の製造販売などを手掛けている。本社および工場は愛知県刈谷市にあり、2011年に茨城工場が開設された。茨城工場では、2013年に産業廃棄物・特別管理産業廃棄物の処分業許可を取得し、工場が増強されている。
発災のあった「エマルジョン製造棟」の詳細な装置仕様は分からないが、同社ウェブサイトにある「有機溶剤のリユース・リサイクル」事業の中の「混合エマルジョン」設備だと思われる。廃溶剤の中で比較的良質な廃アルコール類などを夾雑物除去処理したあと、水を混合したエマルジョン燃料(溶剤燃料)を製造する装置だと思われる。
三和油化工業の廃溶剤リユース・リサイクルの概要
(図はSanwayuka,co.jpから引用)
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火災のあったエマルジョン製造棟付近 (2014年頃)
(写真はGoogleMapのストリートビューから引用)
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■ 廃油などの再生処理施設の事故としてはつぎのような事例がある。
● 2013年11月、「千葉県野田市の廃油処理施設の爆発事故」
所 感
■ 当該事故情報に接したとき、ドラム缶を保管する平屋の倉庫で起った火災だと思った。しかし、発災場所がエマルジョン製造棟ということであり、廃溶剤のリサイクル処理装置の一部で起ったものとみられる。
事故直後の発災写真を見ると、すでに建物内の広いエリアで火の手が上がっており、燃焼物はドラム缶から漏れた廃溶剤というより、装置内の設備から多量の可燃性液体が漏洩したものではないだろうか。この火災によって建物内にあったドラム缶が熱せられて破裂し、内部の廃溶剤が流出して火勢を増し、中には爆発的に燃焼して飛ぶドラム缶が出たものと思われる。
付記:事故状況や現場検証の状況はつぎのYouTubeの動画を参照。
備 考
本情報はつぎのインターネット情報に基づいてまとめたものである。
・Sanwayuka.co.jp, 茨城工場での火災発生について(第一報), March 17, 2017
・Sanwayuka.co.jp, 茨城工場での火災発生について(第二報), March 18, 2017
・Mainichi.jp, 工場火災 4時間半後に鎮火、1人死亡・・・茨城・稲敷, March 17, 2017
・Asahi.com, 茨城で工場火災、1人の遺体発見 周辺に一時避難指示, March 17, 2017
・Ibaraginews.jp, 稲敷で工場火災、1人死亡 750世帯に避難指示, March 17, 2017
・Nhk.or.jp, 工場火災
焼け跡から1人の遺体 従業員か 茨城,
March 17, 2017
・Breaking-news.jp, 三和油化工業茨城工場で火事 稲敷市釜井の油処理リサイクル工場が爆発, March 17, 2017
・Nhk.or.jp, リサイクル工場火災 ドラム缶百数十本が燃えたか 茨城 稲敷, March 18, 2017
・Ibaraginews.jp, 稲敷工場火災、再生油製造中に出荷か, March 19, 2017
後 記: 当初の報道で廃油リサイクル施設の火災と聞いたとき、2013年11月の「千葉県野田市の廃油処理施設の爆発事故」を思い出しました。また、ときどき爆発的な火災の映像を見ると、2015年8月の「米軍・相模補給基地で保管倉庫が爆発・火災」の映像が蘇りました。事故情報を調べていくうちに、廃溶剤のリサイクル処理施設で、廃油よりも燃焼性のよいアルコール類が燃焼物だと分かりました。不思議なのは、最初に爆発が起こっていないようだということです。火災状況の情報が少ないので、類推しても仕方のないことではありますが、「液体が燃えていて手がつけられない」という通報ですので、爆発でなく、火の手が上がったという感じのようです。貯蔵タンクの事故ではないのですが、気になる事故としてまとめることとしました。そして、情報公開に積極的な会社のようで、事故原因が公表される期待もあり、フォローしようと思います。