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2018年12月28日金曜日

ボウタイ分析による貯蔵タンクの危険性と軽減策の検討


 今回は、 インドのペトロリアム・アンド・エナジー・スタディーズ大学のバイバブ・シャルマ氏が2018年にまとめた「ボウタイ分析による貯蔵タンクのハザードとその軽減策の検討と評価」(Study and Analysis of Storage Tank Hazards and its Mitigation Measures Using Bow Tie Diagram)の資料を紹介します。
             ボウタイ図の例  (図はRroij.comから引用)

< 概 要 >
■ 石油工業や石油化学工業では、火災、爆発、大きな騒音、感電などの危険な状態に至ることがあり、その結果、健康被害、環境汚染、経済的損失をもたらす。これらの危険は、洗浄薬品、有害ガス、ロックアウト・タグアウト(常時開・閉バルブの管理)の不徹底、ベーパー、フューム、ダスト、過剰な熱または過度の低温などによってもたらされることもある。

■ 常圧貯蔵タンクの火災は工業界で一般的な事象である。今回の検討では、過去40年間にアジアの工業施設で起こったいろいろな貯蔵タンクの事故を取り扱っている。ボウタイ・ダイアグラム(BowTie Diagram) は、いろいろなタイプの貯蔵タンク火災につながった原因と要因を示すために適用される。将来、同様のタイプや状況に対応するオペレーティング・エンジニアを支援し、予防対策や緩和策についても提供する。

■ 検討結果、事故の70%が石油ターミナル(石油貯蔵所)と製油所で起こっており、事故の90%は火災と爆発で占められていることが分かった。事故の原因は、落雷と人為ミスであり、人為ミスには運転ミスやメンテナンス・ミスを含んでいる。そのほかの原因としては、設備の故障、静電気、破壊行為、クラック・破損、漏洩・配管の破損、他の火気などである。これらの事故は、適切な安全管理プログラムや優れたエンジニアリング方法が実行されていれば、回避されていたと思われる。

< はじめに >
■ 可燃性および燃焼性液体の貯蔵タンクは、製油所、石油化学工場、石油貯蔵所、石油ターミナルでよく見られる。このほかに、空港、地方の燃料供給会社、発電所、自動車工場や製鉄所のような大規模製造施設でも、可燃性および燃焼性液体の貯蔵施設で見られる。

■ 貯蔵タンクは、施設に応じていろいろな方法で可燃性および燃焼性液体を保有する。これらのタンクは直径が5mから150mの範囲で、平均の高さが15mである。重油、ガソリン、ディーゼル燃料、灯油、ジェット燃料(ATF)などの可燃性液体は、常温で常圧(0.5 bar以下)でタンクに貯蔵される。もし、十分な量のエネルギー源があれば、発火して火災や爆発に至ることがある。もし、爆発が起これば、爆発時に発生する衝撃波や過圧によって大きな影響を及ぼし、隣接するタンクに影響を与え、壊滅的な状況になる可能性がある。このようなタンクには、大量の原油やその他の石油製品を貯蔵することができる。大規模の工業施設では、いろいろな製品を貯蔵した様々な大きさのタンクを300基以上保有しているところもある。これらのタンクはお互いに非常に近くに配置され、他のタンクと共通の防油堤に囲まれている。

■ 貯蔵タンクは防油堤と呼ばれる囲まれた堤(境界)によって区分けされている。防油堤は、タンクのオーバーフローや構造的な問題によって発生する流出油を防ぐ障壁としての機能をもつ。各タンクは、その分類によって分けられ、分離される。防油堤は、通常、圧密した土盛りまたはコンクリート製の材料で作られる。堤の高さは大体2mくらいである。可燃性液体がオーバーフローするのを防ぐため特別に延長されることがある。防油堤の容量はタンクの総容量を考慮し、安全の余裕度としていくらか上乗せした割合にする。防油堤内に複数のタンクがある場合、堤内の容量は最大タンクの容量に少なくとも安全の余裕度をとったものにすべきである。

< タンクの種類 >
■ タンクの種類には、①固定屋根式タンク、②内部浮き屋根式タンク、③外部浮き屋根式タンクに分けられる。

① 固定屋根式タンク
■ 固定屋根式タンクには、コーンルーフ式タンク、ドームルーフ式タンク、支持屋根型円筒タンクがあり、構造は溶接式、リベット式、ボルト締め式などである。固定屋根式タンクは、通常、揮発性の油から重質油に至る精製油を貯蔵するために用いられる。
1 固定屋根式タンク
■ 固定屋根式タンクは、側板上部の縁に溶接され、側板頂部から覆う形をとる。そして、側板には、ドームルーフや円錐形屋根の力が下向きになるように形作られる。(図1を参照) タンクには、ウィンド・ガーダーと呼ぶ構造物が設けられる。ウィンド・ガーダーは、側板の歪みや風荷重に耐えるようにタンク側板の周囲に付けられる。新規に製作されるタンクでは、屋根板の最小厚さは5mmである

■ 直径がおよそ30mを超えるタンクでは、タンク屋根は支持構造となる。屋根のトラスは側板頂部の縁より下側に延ばされることがあり、その場合、タンクの貯蔵容量は減少することがある。固定屋根式タンクは、内部浮き屋根を保持するよう製作されることがある。屋根板は側板頂部の縁に溶接によって取付けられる。指定がある場合、その溶接の強さを最小に留めて接続を弱くし、事故時の過剰な圧力に対してタンク本体を保護する。
図2 ドームルーフ式タンク

■ すべての固定屋根は、オープン・ベンドまたはプレッシャ/バキューム・バルブ(PV弁)を通じて通気される。液体をタンク内に入れる場合、空気やベーパーを出す必要があり、タンク内の圧力は大気圧よりわずかに高くなければならない。

■ タンク内の液体を抜出すには、空気とベーパーを吸引してタンク内の圧力を大気圧よりわずかに下げる必要がある。(図2)

■ ドームルーフ・タンクは、外部浮き屋根式タンクの上を覆うように設計されている内部浮き屋根式タンクと類似している。ドーム構造の主目的は、環境への大気排出を極力少なくするためである。

② 内部浮き屋根式タンク
■ 内部浮き屋根式タンクの構造は、恒久的な固定屋根式タンクの内部に浮き屋根を備えたものである。内部屋根は、液面にポンツーンまたはダブルデッキによって浮くようになっている。(図3) このタンクは、一般に、高揮発性(低引火点)または有毒性液体を貯蔵する使用条件でみられる。
図3 内部浮き屋根式タンク
■ 浮き屋根で覆われていない固定屋根式タンクの場合、液面は上部の空気層に直接接触している。内部浮き屋根があることによって、ベーパーの蒸発損失を少なくとも95%減じることができ、高価な液体や毒性のある液体または可燃性の高い液体を取扱うときに極めて有用である。タンクには、通常、(BS 2654API Std 650によって)固定屋根部にオープンベントが取付けられるが、実際にはPVベントがよく使われている。

③ 外部浮き屋根式タンク
■ 外部浮き屋根式タンクは、液面上に浮く屋根で構成されているが、屋根は大気に曝されている。屋根は液位の変化に伴って上下する。外部浮き屋根にはリムシールがあり、ベーパーが大気へ放散するのを防ぐ。このタンク型式は、標準として原油や揮発性(低引火点)製品の貯蔵に使用される。原油はタンク側板が大気に曝せれていても自己潤滑的な傾向をもつが、一方、白油はこの性質が無く、側板は天候に曝せれて粗面化される。(図4)
図4 外部浮き屋根式タンク
< 事故の原因 >
① 落雷
■ 落雷は最も一般的な引火源のひとつであり、常圧型浮き屋根式タンクの火災要因になることが多い。調査によれば、火災事故の95%が落雷によって引火するリムシール火災である。引火を生じるには、落雷が直接タンクに落ちる必要はない。タンクの極く直近に落ちれば、側板と浮き屋根の間に相当量の静電気が発生し、火災に至ることがある。

■ 最近の火災事例としては、2017年10月にインドのムンバイ沖にあるブッチャー島においてディーゼル燃料タンクで落雷によって火災となった。死者は出なかったが、燃料が燃え尽きるまでに長い時間かかった。この事故の被害額は少なくとも6~7億ルピー(9.5~11億円)である。2017年7月には、インドのヴィサカパトナムにあるヒンドスタン・ペトロリアム社の原油タンクで落雷があり、リムシール火災となった。

② メンテナンス・エラー(保全ミス)
■ メンテナンス中の溶接やグランダー作業は、貯蔵タンク中のベーパーの爆発という壊滅的な損傷に至る原因になりうる。電気火花や電撃は可燃性液体や可燃性ベーパーの引火源となり、火災や爆発の原因となりうる。

■ 中国甘粛省蘭州市にあるペトロチャイナの製油所で起こった電動機から発生した電撃による事故、および台湾の高雄において1984年に発生した事故は同じ原因である。台湾の嘉義にある化学工場において起こった事故は、はんだ付け装置によって発生した火花が原因である。電気災害をできるだけ無くすため、エリア、室内、区域は、それぞれ、NFPA70(米国電気規程)の500条の危険(分類)場所で定義されるクラス分けを考慮しなければならない。

③ 運転ミス
■ 運転ミスの分類の原因で多いのはタンクの過充填である。その場合、油製品から大量のベーパーが大気に放出されるので、引火源の存在によって火災や爆発に至ることがある。タンクに可燃性液体が貯蔵されていて、過充填が生じれば、火災や爆発はほとんど避けられない。2001年、中国浙江省武義市においてタンクの過充填によってベンゼン50kgが漏洩し、46名の子どもと村民ふたりが病院に搬送される事故が起こった。

■ 運転ミスによる10回の事故のうち8回は漏洩が起こっている。2009年にインドのインディアン・オイル社のタンク・ターミナルで起こった“ジャイプール火災”は、操作手順書が不備だった上、遠隔からの漏洩遮断装置(遠隔操作バルブ)が無かったことによって起こっている。

④ 破壊行為
■ 貯蔵タンクの事故につながる4番目の原因は、破壊行為である。テロ活動や窃盗行為は、大きな緊急事態に至る可能性がある。1991年にイラクのクウェート侵攻中、複数のタンク貯蔵所で火災が生じた。消防活動の行われたタンク貯蔵所もわずかにあったが、戦争状態だったため、ほとんどは燃え尽きるまで何もされなかった。

⑤ 設備の故障
■ 外部浮き屋根式タンクには、屋根排水(ルーフドレン)、ブリーザー弁、緊急屋根排水(エマージェンシー・ルーフドレン)が設置されている。タンクの屋根排水が詰まり、雨水が屋根の上に溜まって、屋根が沈没するという事例がある。タンク内に過剰な圧力が形成し、ブリーザー弁で圧を抜くことがある。バルブの故障はタンクの座屈を招くことがある。タンクの周囲に設けられているシール部は、タンク屋根と内液の上下に追随してスライドし、ベーパーが大気へ逃げるのを防ぐ。シール部の故障や構成部材の一体性が喪失されれば、ベーパー放出という事故につながる。

⑥ 静電気
■ 可燃性液体の貯蔵タンク気相部の開放したエリアからサンプルを採取するときには、静電気が発生する恐れがある。 1992年に日本で起こった事故は、サンプルを採取するのに導電性のロープを接続した金属製容器を使用していた。危険性を最小にするために、サンプリングはタンク気相部を開放した状態で行わないのがよい。オープンな状態のサンプリングが避けられない場合には、非導電性の材料によるサンプリング・ゲージを使用するのがよい。金属製の装置は使用しない。液体の移送中には、最大の静電荷が発生する。容器を接地して同電位にする。

⑦ 漏洩および配管破損
■ 1977年にインドのヴィシャーカパトナムでLPGが漏洩して起こった事故では、数時間発見されずに、ヴィシャーカパトナムの海岸でタンカーがポンプで汲み上げようとした。その結果、港湾都市全体が分厚い黒煙で覆われて、死者37名、負傷者100名を出す事故となった。

⑧ 直火
■ 直火とは、貯蔵タンク周辺に存在するタバコの喫煙、焚き火、火の粉など可燃性ベーパーの引火源になるようなものである。

⑨ 自然災害
■ 地震時における地震動が貯蔵タンクに与える影響は構造物に亀裂を生じさせたり、液面を揺動したりして、内部の液体が漏洩に至ることがある。アジアは地震が発生しやすい地域であるため、常にタンクの壊滅的な破壊に至る恐れがある。幸いにも、このような地震による事故の結果は極くわずかである。1964年に日本の新潟にある製油所で発生した火災は、地震のために漏出した炭化水素ベーパーが火花によって引火したものである。

⑩ 暴走反応
■ タンクに貯蔵されている物質に不純物が混ざって発熱反応を起こすことによって、暴走反応が生じることがある。1984年に起こったインドのボパール化学工場事故は大災害のひとつで、地下貯蔵タンクに入っていたメチル・イソシアートと水が混合したもので、大量の毒性ガスが放出して多くの人が亡くなった。

< 事故のシナリオの種類 >
① ボイルオーバー
■ ボイルオーバーは、重質の炭化水素または炭化水素液体の混合物が貯蔵タンクの火災の中で発生する現象で、例えば、原油タンク底に溜まった水に熱い油が接触すると爆発的に原油が放出される。熱がタンクの下の方へ移動して水に接したとき、水は水蒸気に変換する。このとき、水蒸気は1,500倍に膨張し、それとともに燃えていた原油を一緒に外へ放出する。タンクのボイルオーバーは、風下方向ではタンク直径の10倍のエリアに、横風方向でもタンク直径の5倍のエリアに影響を与える。

② スロップオーバー
■ スロップオーバーはタンクの全面火災時に現れ、液体中の溜まった水によってタンク内から液体が噴き出す現象である。

③ ベント火災
 ベント火災は固定屋根式タンクで発生し、可燃性ベーパーが放出されたベントて引火するものである。タンク・ベント部では、充填作業やタンクの呼吸サイクルによって常に可燃性ベーパーが存在する。ベント火災の多くは落雷または近くの引火源によって起こっている。

④ 全面火災(固定屋根式タンク)
■ 固定屋根式タンクの全面火災は、ベント火災が進展して起こることがある。フレーム・アレスター/PVが機能せず、炎がフラッシュバックした時に、タンク気相部が可燃性範囲内であれば、蒸気雲爆発が起こることがある。タンクがAPI Std 650に従って製作されている場合、屋根には弱くした溶接部がある。気相部の爆発によって、屋根は部分的に外れる(「魚の口」開口部)か、または完全に外れる可能性がある。

⑤ 全面火災(浮き屋根式タンク)
■ 浮き屋根式タンクの全面火災は、タンク屋根が浮力を失い、液面の一部または全部が露出して火災になる。

⑥ リムシール火災
■ リムシール火災は、タンク側板と屋根の間のシール部の機能が喪失し、ベーパーが放出し、何らかの引火源によって火災を起こすものである。

⑦ 堤内火災
■ 堤内火災は、防油堤エリア内でタンク側板の外側で起こる種類の火災である。この種の火災は少量の漏洩から防油堤内全域に進展する火災である。

< 検討方法 >
■ このレポートでは、ここ数十年の間にアジアで起こった主なタンク事故について調査した。データはいろいろ発行されたレポートから収集した。石油化学工場、貯蔵ターミナル、ガスプラント、発電所、肥料産業などの施設と比較してみると、石油・天然ガス分野で大きな事故が発生していることが分かった。

< 結果および考察 >
 注; ボウタイ(BowTie;蝶ネクタイ)分析はハザード分析手法のひとつで、想定される事故を中心に原因と結果を左右に配置して蝶ネクタイのような図を使用する。そして、ボウタイ分析に基づいて作成されたリスク評価ソフトウェアがBowTieXPである。 BowTieXPはリスクを評価するためのボウタイ図(BowTie diagram)を簡単に作成でき、複雑なリスクをわかりやすく視覚化できるという点が特徴で、リスクベースの改善計画の検討ができる。

■ 図5が検討したボウタイ図である。前述で述べた種々の事故の原因と結果をBowTieXPのソフトウェアを用いて分析した。ボウタイ図では、事故の脅威に対して軽減や回避できる予防障壁(バリア)があるとする。この予防障壁には、プロアクティブ・バリア(順向性障壁)とリカバリー・バリア(回復障壁)があり、両方の進展要因に対する軽減や回避する方法を検討することになる。発生する事故はシナリオによって対応していくことになるが、適切な軽減策や適切な標準作業手順が取られれば、最悪の事故への進展は回避できる。

■ ここで、貯蔵タンクのハザードの要因とそれに続く結果について軽減策とともに述べる。ボウタイ図によってある特定の脅威に対する予防障壁を明らかにするとともに、更にハザードにつながる進展要因についても説明できる。機器の故障、落雷、運転ミスなどの脅威を明らかにすれば、それに続く結果は軽減策の方法を説明できる。例えば、自動放水システム、移動式泡モニター装置、液体のポンプ排出などの軽減策で、これらの策は進展する事故の影響を小さくする。

■ プロアクティブ・バリア(順向性障壁)やリカバリー・バリア(回復障壁)として働く軽減策も進展要因になりうる。例えば、泡モニター装置への不適切な泡供給や自動放水システムのノズルが止まることである。これらの機器の適切なメンテナンスやより良い効率的な機器が使用されれば、進展要因を防ぐことができることがわかった。
図5 ボウタイ図

図5 ボウタイ図の拡大(左上部)

    図5 ボウタイ図の拡大(左中部1)

      図5 ボウタイ図の拡大(左中部2)

      図5 ボウタイ図の拡大(左下部)

       図5 ボウタイ図の拡大(右上部)

      図5 ボウタイ図の拡大(右中部1)

      図5 ボウタイ図の拡大(右中部2)

     図5 ボウタイ図の拡大(右下部)

< おわりに >
■ このレポートでは、産業施設のさまざまなタンクで発生した事故について検討した。壊滅的な結果へつながった原因と対応は体系的にボウタイ図の中で表した。設計、エンジニアリング、建設が良好に実施され、安全管理プログラム、標準作業手順、標準メンテナンス手順が良好に実行されていれば、事故のほとんどは回避されていただろう。

補 足
■ リスク評価の方法は、1940年代のFMEA(故障モード・影響解析)から始まり、FTA(故障の木解析)、HAZOP(Hazard and Operability Study)、ETA(事象の木解析)などが開発され、1970年代にBowTie解析が出された。そのほか、いろいろな評価法が出たが、1970年後半になると、コンピュータによるリスク評価が開発されるようになり、現在、いろいろなリスク評価ソフトウェアが出ている。
リスク評価の方法の変遷
■ リスク評価ソフトウェア「BowTieXP」は、オランダのCGE Risk Management Solutions社から出されている。同社によると、ボウタイ図はリスクを1つのわかりやすい図で視覚化したもので、図は蝶ネクタイのような形をしており、リスク管理の予防的側面と反応的側面の間に明確な違いがある。BowTieXPのボウタイ図には、考えられる複数の事故のシナリオ概要と、これらのシナリオを制御する上での障壁を示す。BowTieXPソフトウェアは、エンドユーザーを念頭に置いて開発されているため、最もユーザーフレンドリーなリスク評価ツールのひとつであるという。BowTieXPでボウタイ図を作成するのは簡単であるが、ソフトウェアを使用するので、とボウタイ図を維持することができるため、現在の安全状態を表すことができるという。

■ ボウタイ分析は、中国でも使われている例があり、古い評価方法ではない。最近では、サイバーリスクのボウタイ分析の例がある。どのような攻撃者の脅威を想定し、予防管理をどのようにするのか、被害を受けた場合の被害管理をどうするか、被害の結果はどのようなことがあるのかなどを視覚化できる。
 ボウタイ分析の例
所 感
■ このレポートの原題は、インドのウッタラーカンド州の州都であるデヘラードゥーンにあるペトロリアム・アンド・エナジー・スタディーズ大学のバイバブ・シャルマ氏による「ボウタイ分析による貯蔵タンクのハザードとその軽減策の検討と評価」(Study and Analysis of Storage Tank Hazards and its Mitigation Measures Using Bow Tie Diagram)である。

■ 貯蔵タンク分野では、なじみのないボウタイ分析によるタンクのリスク評価を行ったところに価値がある。レポート内容だけでは、詳細がわからないが、貯蔵タンクのリスクや軽減策を分かりやすく視覚化したものであることは理解できる。特に、「プロアクティブ・バリア(順向性障壁)・リカバリー・バリア(回復障壁)として働く軽減策も進展要因になりうる。例えば、泡モニター装置への不適切な泡供給や自動放水システムのノズルが止まることである」とする点は興味深く、具体的に「緊急対応チーム(消防隊)の遅れ」、「大容量泡放射砲の消火水の過剰供給」などは傾聴に値する。


備 考
 本情報はつぎのインターネット情報に基づいてまとめたものである。
 ・ Vaibhav Sharma, Abhishek Nandan and Nihal Anwar Siddiqui ,  「 Study and Analysis of Storage Tank Hazards and its Mitigation Measures Using Bow Tie Diagram」 Vaibhav Sharma, Abhishek Nandan and Nihal Anwar Siddiqui, Department of Health, Safety and Environment, University of Petroleum and Energy Studies, Dehradun, Uttrakhand, India ,  2018
 


後 記: 興味深い資料ではありましたが、なかなか難渋しました。ボウタイ分析に関する基本認識を得ることに四苦八苦したあと、資料は英文ではありましたが、誤字と思われるところが少なくなく、また分かりづらい表現があり、悩みました。やや消化不良のところもありますが、問題提起という観点でブログを投稿することとしました。なお、肝心のボウタイ図(図5)はブログの図表では見えなくなるので、図を細かく分け、拡大版を添付することとしました。(実際の図は備考の原文を参照してください)



2018年12月2日日曜日

中国福建省で桟橋からC9芳香族炭化水素を海上流出、52名が病院


 今回は、 2018年11月4日(日)、中国福建省泉州市にある福建東港石油化工実業社の桟橋で船出荷時にC9芳香族炭化水素が海上に流出した事例を紹介します。
< 発災施設の概要 >
■ 事故があったのは、福建省(ふっけん省/フーチェン省)泉州市(せんしゅう市/チュエンヂョウ 市)泉港区(せんこう区/チュァンガン区)にある福建東港石油化工実業社(福建东港石油化工实业有限公司)の石油化学工場である。

■ 発災があったのは、福建東港石油化工実業社の桟橋にある出荷設備である。同社の貯蔵タンク能力は384,000KLで、桟橋は3基保有しており、事故があったのは2,000DWT級桟橋である。
泉州市泉港区の福建東港石油化工実業社付近 
(写真はGoogleMapから引用
< 事故の状況および影響 >
事故の発生
■ 2018年11月4日(日)午前1時頃、泉港区ある福建東港石油化工実業社の桟橋でC9芳香族炭化水素が海上に流出した。

タンカー天桐1
(写真はCnss.comから引用)
■ 貯蔵タンクから桟橋を経由して、タンカー「天桐1号」(タンロン)にC9芳香族炭化水素を移送するためつないでいたローディングホースの不具合で、C9芳香族炭化水素6.9トンを海上へ流出させたという。海面への流出した直接面積は約600,000k㎡(約770m四方)だった。

■ 桟橋近くにある湄洲島の漁村では、11月5日(月)朝、強い臭気で目覚めた。湾が濃い黄色で汚染されていた。漁師たちは大きなバケツや洗面器などを持ち出し、いかだやカゴを守るため、黄色い層の油汚れを取り除こうとした。漁師たちは黄色い層が何か、有毒かどうかは知らなかった。地方自治体は黄色い汚れは油だと漁師たちに言った。近くには製油所や石油化学の工場があり、この地域では油漏れは珍しいことではなかった。

海上流出のイメージ図の例
(図はNewssx.tvから引用)
■ 泉港区は、11月5日(月)午後6時までに、延べ100隻以上の船と延べ600人以上の人員を動員し、油吸着マット600袋近くを回収し、基本的に除去作業を完了させたと発表した。大気中の揮発性有機化合物(VOCs)濃度は、 4.0mg/㎥以下の安全値に対して午後6時には0.429mg/㎥まで低下したと付け加えた。

■ 地元環境当局は11月5日(月)午後までに海水の浄化作業が終了したと述べたが、依然として強い異臭があるほか、地元漁師たちは魚が死んでいると苦情を申し立てた。

■ 11月6日(火)、泉港区は空気は安全で、海水は養殖に適していると発表した。しかし、地元の漁師は、養殖場の発泡スチロールが油で侵され、多くの魚が死んだり、逃げ出しているという。ある漁師は、生簀(いけす)の魚は誰も食べないので、魚が売れないと語っている。

■ 当初、泉港区の人々は流出したのは油類だと安易に考えていたが、11月8日(木)になって初めてそれが単なる油類ではなく、C9芳香族炭化水素という有害化学物質だと知った。 C9芳香族炭化水素は、石油製品のひとつで接着剤、印刷用インク、塗料に使用されるが、人体には有害化学物質である。

■ 近くにあるシャンヤオ塩工場は、11月4日(日)の事故を聞き、海水の取水を止めたという。工場は通常どおり操業しており、海水の安全性が確認できれば、取水をすると11月8日(木)に語った。しかし、近くのスーパーマーケットでは、塩を買い求める住民によって塩を置いている棚が空になっているという。

■ 事故が起こった4日後の11月8日(木)、刺激性のガスを吸い込んだ後、めまい、吐き気、嘔吐、呼吸困難といった症状を訴えた住民10人が病院に入院している。結局、この事故に伴って52名が病院で検査を受けている。影響を受けたのは沿岸部の住民で、入院したうち1人は汚染された海に落ちて肺炎を起こしたという。この人は魚養殖の生け簀(いけす)から気を失って水中に転落した漁民だったが、その後病院で診察を受けたところ、肺炎と診断されて入院したという。ただし、肺炎とC9芳香族炭化水素流出の関連性は不明である。
(写真はEworldship.comから引用)
(写真はChinadailyhk.comから引用)
被 害 
■ C9芳香族炭化水素の流出量は、当初、約6.9トンとされた。しかし、実際の漏洩量は69.1トンだった。

■ 住民52名が病院で診察を受けた。うち、10名は入院した。

■ 流出事故によって、地元の漁師に数百万ドル(8億円)の収入損失をもたらしたという。

< 事故の原因 >
■ 桟橋からタンカーへ移送するため、つないでいたローディングホースの不具合で、C9芳香族炭化水素を海上へ流出させたという。原因は、接続フランジの緩みやローディングホースの劣化によるものだといわれ、明確な原因は分からなかった。

■ 11月25日(日)の泉州市の事故調査結果によると、明らかな人為ミスだった。
 桟橋用クレーンが長期故障していたため、オペレーターが規則違反し、ローディングホースに力が掛かる状態で油配管とつなぎ、貯蔵タンクから移送ポンプを通じてC9芳香族炭化水素の船積みが開始した。事故当日は潮位が低く、船積みして船が重くなると、タンカーはさらに沈み、ローディングホースに引張りの力が掛かった。ローディングホースが過剰な引張り力によって破断し、C9芳香族炭化水素が流出した。

< 対 応 >
■ 泉港区は事故の調査作業を始めた。水質、海産物に対するサンプル測定を専門機関に委託し、各関係部門の協力のもとに、法規に照らして適切に処理するとした。

■  台湾海峡への黄色い流出油はクリーンアップされているが、泉州師範大学の化学者チェン・カイハンさんは、養殖場近くの海水中に残ったわずかな化学物質でも、数か月または長い場合は数年にわたって残存する可能性があると述べている。

■ 11月8日(木)の午後、泉港区は400隻の船と2,500人を動員して、クリーンアップ作業を実施した。
 クリーンアップの取組みは、岸辺や漁具に残った流出物を取り除くことに焦点が当てられた。同日、流出地点から離れたところの水質は良好な状態に戻ったという。

■ 11月8日(木)、福建東港石油化工実業社は事故について謝罪し、漁師に補償すると約束した。

■ 11月12日(月)、地方自治体のウェブサイトで公表されたところによると、現場で集積された使用済の吸着マットの総量は20.73トンだったという。リサーチ24Hコンサルティング・グループの推算によれば、回収された油回収量は18.67トンとみられている。

■ 11月14日(水)、泉港区当局は、重大な事故を引き起こした過失罪で、福建東港石油化工実業社の3名とタンカー「天桐1号」の乗組員4名が拘束されたと発表した。

■ 流出は7.4エーカ(30万㎡)の養殖場に影響が出ており、泉州区は流出によって被害を受けている152箇所の養殖場に対して補償問題の解決を開始するとしている。

■ インターネットでは、流出油が中枢神経系統に影響を及ぼし、頭痛、めまい、吐き気などの症状が出ていることから、流出油にキシレンを含んでいる可能性があるという意見が出ている。
■ 事故が起こって2週間以上経過しているが、インターネット上で大きな議論になっているのは、C9芳香族炭化水素の本質的な危険性でなく、むしろ、中国ネット・モデレータによって、ソーシャル・メディアなどのポストを削除して流出に関する詳細について情報を隠そうとする異様な試みについてである。

泉州市の記者会見
(写真はSohu.comから引用)
■ 11月25日(日)、泉州市は事故について調査した結果を記者会見で発表した。概要はつぎのとおりである。
 ● 2018年11月3日午後4時頃、寧波舟山通州船務社(宁波舟山通州船务有限公司)の「天桐1号」が福建東港石油化工実業社の桟橋に到着した。午後6時30分頃、桟橋の配管からC9芳香族炭化水素の船積みの準備作業を始めた。桟橋用クレーンが長期故障していたため、オペレーターは規則違反し、ローディングホースに力が掛かる状態で油配管とつないだ。午後7時12分、貯蔵タンクから移送ポンプを通じてC9芳香族炭化水素の船積みが開始された。   
 ● 11月4日(日)は潮位が低く、船積みして船が重くなると、タンカーはさらに沈み、ローディングホースに引張りの力が掛かった。午前0時58分、ローディングホースに過剰な引張り力によって破断し、C9芳香族炭化水素が流出した。午前1時13分、オペレーターは流出に気がついた。ただちに、ポンプを停止させ、午前1時21分に流出は止まった。流出してから止まるまでに23分間かかった。
 ● C9芳香族炭化水素の流出量は、当初、約6.9トンと報告された。しかし、実際の漏洩量は69.1トンだった。 「船舶に起因する汚染を防止に関する国際条約」によれば、小規模漏洩は7トン以下、中規模漏洩は7~700トン、大規模漏洩は700トン以上となっている。福建東港石油化工実業社は、小規模漏洩にみせるため、漏洩量を6.9トンと虚偽報告した。
(写真はChinadailyhk.comから引用)
(写真はShine.cnから引用)
(写真はEpochtimes.comから引用)
(写真はShanghaiist.comから引用)
(写真はYicaiglobal.comから引用)
補 足
  中国福建省(図はAbysse.co.jpから引用)
■ 「中国」は、正式には中華人民共和国で、1949年に中国共産党によって建国された社会主義国家である。人口約13億8千万人で、首都は北京である。
 「福建省」(ふっけん省/フーチェン省)は、中国の東南部に位置し、中華民国と台湾海峡で接する人口約3,700万人の省である。
 「泉州市」(せんしゅう市/チュエンヂョウ 市)は、福建省の東部に位置し、海に面する人口約812万人の地級市である。
 「泉港区」 (せんこう区/チュァンガン区)は、泉州市の港地区あり、人口約36.5万人の市轄区である。

■ 「福建東港石油化工実業社」(福建东港石油化工实业有限公司)は、2005年に設立された石油化学工場で、貯蔵タンクの総量は384,000KLで能力3万DWT級の桟橋1基、2,000DWT級の桟橋を2基保有している。事故があった桟橋は2,000DWT級の桟橋である。
福建東港石油化工実業社の工場
(写真はMmzwgk.gov.cnから引用)
              2000DWT桟橋 矢印が事故のあった桟橋)
(写真はGoogleMapから引用)
■ 「芳香族炭化水素」は、ベンゼン、トルエン、キシレンを代表とする高沸点溶剤(芳香族系炭化水素溶剤)で、高い溶解力から、樹脂の溶解、塗料、インキ、農薬等の用途に適している。正六角形の環状構造であるベンゼン(C6H6)環をもち、炭素数が9つの芳香族炭化水素が「C9芳香族炭化水素」である。C9以下の芳香族炭化水素系溶剤は一般的に毒性が強く、多量摂取すると中毒を起こす危険性がある。
  「C9芳香族炭化水素」は無色の液体で、密度は0.80~0.95で刺激的な匂いがある。引火点は>35℃、初留点140℃、自然発火温度>400℃である。
 日本でいうソルベントナフサ(C9-10芳香族炭化水素)の一種で、この物質を取扱うときには危険性が高いので、火気や高温の場所から遠ざけ、換気のよい場所でのみ行う。保護手袋や保護作業着を着用し、ベーパー、フューム、ミストを吸わないように必要に応じ保護メガネや顔面保護具を着用する。事故時に、体調が悪くなった場合、医者に連絡し、皮膚や髪に付着した場合、ただちに汚染された衣服をすべて脱ぎ、水またはシャワーで洗う。吸い込んだ場合、新鮮な空気の場所へ移し、休息させることが肝要である。

■ 桟橋からの船積みの接続は、ローディングアームまたはローディングホース(カーゴホース)を使って行われる。今回の船積みにはローディングホースが使用されている。事故では、桟橋用クレーンが長期故障していたため、オペレーターが規則違反し、ローディングホースに力が掛かる状態で油配管とつないだとしたが、実際の接続方法ははっきりしない。タンカー天桐1号は2,000DWT級桟橋より低い位置で着桟していたと思われる。本来、潮位、風、積載荷重を考慮して船積み時のローディングホースには、片寄った力が掛からないようにクレーンを使ってホースに余裕を持たせる。しかし、事故では、ローディングホースをロープで固定したため、船積みして船が重くなると、タンカーは沈み、ローディングホースが制限を受け、過剰な引張り力によって破断したと思われる。
(写真はNews.cctv.comから引用)
ローディングホースの接続方法の例
(図はSailor-ru.narod.ruから引用)
所 感
■ 当初、桟橋からタンカーへ移送する際、ローディングホースの不具合によって海上流出したらしいことは分かったが、不具合の要因ははっきりしなかった。しかし、泉州市が行った事故の調査結果で、潮位が低いときにタンカーが桟橋に着桟し、ローディングホースをつないで移送を開始したが、船積みしてタンカーが沈み、ローディングホースに過剰な引張り力がかかり、破断したものとみられることが分かった。
 この直接原因について、つぎのような間接的な要因があったと思われる。
 ● 桟橋用クレーンの故障を長期に補修しなかった。
 ● 無理にローディングホースをつないだ。(それまでの経験では問題が顕在化しなかった)
 ● 潮位の変化について危険予知がされていない。
 ● 積込みを始めたら、船体が沈むことへの危険予知がされていない。
 ● 深夜の船積みで流出発見が遅れた。
 
■ 今回の事故では、つぎのような事故後の対応のまずさが大きな騒ぎになった。
 ● C9芳香族炭化水素の有害性に事業者や地方自治体(泉港区)の認識が希薄だった。
 ● 深夜の事故で異常事態対応部署が適切に機能していなかった。
 ● 予防措置としてオイルフェンスをきちんと展張していない。
    (事故後、オイルフェンスを使用してはいる)
 ● 流出量を低く見込んだ対応になってしまった。(油回収の人員・資機材動員のひとつの目安)
 ● 流出油が養殖場に拡大してしまった。
 ● 事業者とともに地方自治体(泉港区)が事故の規模を小さく見せようとした。
 ● インターネットの情報公開に制限をかけた。


備 考
 本情報はつぎのインターネット情報に基づいてまとめたものである
    ・Jqknews.com,   Fujian Quangang Chemical Raw Materials Leakage Continued: Fishermen Lost Millions of Aaquatic Products Stopped Selling,  November  6,  2018  
    ・Afpbb.com,  有害化学物質が海に流出、52人が体調不良 中国福建省,  November  9,  2018
  ・Reuters.com, Chinese City Reassures Public after Chemical Spill Dissolves Fishing Nets,  November  9,  2018 
    ・Voanews.com, Chemical Spill Leaves 52 Ill in East China,  November  8,  2018
    ・Globaltimes.cn,  Fujian Chemical Leak Sickens 52 residents, Causes Salt Panic-Buying,   November  8,  2018  
    ・Caixinglobal.com,  Chemical Leak Hospitalizes 52 in Fujian,  November  9,  2018
    ・Yicaiglobal.com, Chemical Spill in Fujian Is Contained, Quanzhou Government Says,   November  9,  2018
    ・Newsx.tv,   Four Employees  under Investigation over Fujian Chemical Spill,  November  11,  2018  
    ・Chinadailyhk.com,  4 Probed in Fujian Over Toxic Leak,   November  12,  2018  
    ・Business.nikkeibp.co.jp,中国の化学物質流出、漁業、製塩業に大打撃,  November  16,  2018
    ・Scmp.com , China Chemical Spill: 7 Arrested as Fishermen Wait for News on Compensation,  November 15,  2018
    ・Straitstimes.com, Seven Detained over East China Chemical Spill,  November  15,  2018
    ・Hazmatnation.com,  7 Arrested after Chinese Chemical Spill,  November  15,  2018
    ・Shanghaiist.com, 7 Arrested over Massive Chemical Spill in Fujian Province which Made 52 Local Villagers Sick, ,  November  15,  2018
    ・Shine.cn,  7 arrested for chemical leak in Fujian,   November  15,  2018
    ・Chemlinked.com,  Suppression of Information on Fujian Chemical Spill Enrages Chinese Netizens,   November  22,  2018
    ・Jzghxkb.com,   石油化工船舶泄露大量碳九 涉事公司发承诺书致歉,  November  5,  2018
    ・Zghxkb.com, 福建泉州碳九泄漏 专家:影响近海至少持续1到2月,  November  9,  2018 
    ・Dzzq.com.cn, 泉港碳九实际泄漏量69.1吨 还有多少你不知道的事?,  November  26,  2018
    ・News.zijing.org, 福建泉港碳九泄漏69.1吨 企业违规操作刻意隐瞒,  November  26,  2018
    ・Caixinglobal.com,  Fujian Chemical Spill Was 10 Times Larger Than Initially Reported,  November  26,  2018
    ・ Jp.sputniknews.com , 中国の有害化学物質流出量、発表の10倍だと判明,  November  27,  2018
    ・Eworldship.com, “天桐1号”泄漏事故调查报告公布,  November  26,  2018 
    ・Sohu.com, 泉港碳九泄漏事件还原:船方知道存安全隐患,与码头方隐瞒泄漏量,  November  25,  2018
    ・Zh.wikipedia.org, 2018年福建泉港碳九泄漏事件,  November  28,  2018


後 記: このブログでは、事故の原因を明らかにし、再発防止に役立てるのがひとつの目的ですが、その趣旨はかなわないかと思っていたら、3週間後に原因に関する報道が出てきました。また、当初発表の流出量と実際の流出量が倍半分どころじゃないことも分かりました。もやとしていた中で、これらの事実が発表され、原因についてはややすっきりしました。
 一方、地方自治体は事故当事者ではありませんが、事態を早く終わらせたいと思うのか、事故を小さくみせるということについて事故当事者と一致したようです。これは、「中国・青島の死者62名が出た原油パイプラインの爆発事故(2013年)の原因」などで中国に関して感じていたことですが、なかなか改まっていないと思いました。しかし、今回は市民の反響が大きいため、泉港区ではなく、泉州市が迅速な事故報告を出し、日曜に記者会見を行うという事態になりました。ただ、世の中の政治や企業の虚偽報告を考えてみれば、これは中国の話だけでなく、現代では日本を含めた世界共通の意識なのかも知れません。
 教訓としては、火災事故と異なり、真夜中のタンカー油流出事故という漏れの情報があいまいな中で、適切に対処するにはどうすればよいかを考えるよい事例なのかも知れないと思っています。