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2018年7月4日水曜日

米国アイオワ州で石油タンク車が脱線し、洪水の川へ油流出

 今回は、2018年6月22日(金)、アイオワ州ライアン郡のドゥーンで起こった石油タンク車の脱線による油流出事故を紹介します。
(写真はKttc.com から引用)
< 発災施設の概要 >
■ 事故があったのは、米国のBNSF鉄道の貨物列車である。列車は、コノコフィリップス社用の原油(タールサンド)をカナダのアルバータ州からオクラホマ州のストラウドに輸送していた。

■ 発災があったのは、アイオワ州(Iowa)北西部のライアン郡(Lyon County)ドゥーン(Doon)である。当時、このエリアは6月20日(水)から21日(木)にかけて豪雨があり、地域によって洪水が起こっていた。
      ライアン郡ドゥーンの脱線場所付近 (矢印が発災場所、洪水前
(写真はGoogleMapから引用)
洪水前の脱線した線路と郡道付近
(写真はGoogleMapのストリートビューから引用)
< 事故の状況および影響 >
事故の発生
■ 2018年6月22日(金)午前4時30分、原油を輸送していた貨物列車に牽引された石油タンク車の一部が脱線した。脱線した石油タンク車のまわりに油膜が広がり、石油タンク車は線路や土砂の上に積み重なり、一部は水中に沈んでいるものもあった。

■ 脱線したのは32輌の石油タンク車で、うち14輌から原油が漏れ出した。漏れた油量は推定230,000ガロン(871KL)で、洪水のリトルロック川に流出した。石油タンク車の積載量は1輌当たり25,000ガロン(95KL)以上である。
脱線後の早い時期に撮られたと思われる被災写真
(写真はKiwaradio.comから引用)
■ 前日、アイオワ州ライアン郡とスー郡の広い地域で洪水が発生し、道路が閉鎖された。この洪水の復旧活動のボランティアに前夜参加していた住民によると、「鉄道の軌道上に水が溢れ、貨物列車はその中を通り抜けようとした」と語った。住民のひとりは、30輌近くの石油タンク車が洪水の中を“レゴのように投げ込まれた”と語った。川幅は100ヤード(90m)から洪水によって半マイル(1,600m)に広がっていた。

■ 脱線場所から離れている農場主は、「竜巻の心配はしていたが、油流出を心配する必要は無いと思っていた」と語っている。油流出によって、このエリアでは強い油臭がした。

■ 脱線事故によってライアン郡南部のドゥーンでは、270番通りと280番通り間のガーフィールド通り沿いの住民に避難勧告が出された。現場から半マイル(800m)以内の住民はわずかであるが、少なくとも4世帯が避難した。

■ リトルロック川はすぐにロック川に合流する。ロック川の水位は21.5フィート(6.5m)に達し、2014年以降2番目に高い水位になっていた。下流の地区では、飲料水の汚染が心配された。流出油が脱線現場から約240km離れたネブラスカ州オマハの南まで達する可能性を指摘されている。オマハの公共水道事業者は、ミズーリ川から飲料水を取り入れているポンプを監視しているという。

■ 脱線したタンク車は、DOT-117Rs型という新機種で、安全性が改善され、事故時において漏れを防ぐことができるといわれていた。

■ この事故に伴う負傷者は出なかった。

被 害
■ 原油(タールサンド)を運んでいた32輌の石油タンク車が脱線し、損傷を受けた。

■ 石油タンク車14輌から原油が漏れ出し、流出した油量は推定230,000ガロン(871KL)である、油は洪水のリトルロック川に流出し、環境汚染を起こした。

■ 事故に伴う負傷者の発生はない。しかし、油流出によって少なくとも4世帯が避難した。

< 事故の原因 >
■ 事故の原因は、洪水で増水し、線路の土盤が十分な強度をもつことができず、通過していく石油タンク車の重さに耐えることができなかったと思われる。

■ 当局は、増水したリトル・ロック川の洪水によって石油タンク車が線路から外れた要因のひとつであることは認めたが、物理的に水が線路を傷つけたかどうかはまだ分かっていないという。
 なお、6月20日(水)に降った130~180mmの雨によって川は急激に水かさが増え、さらに6月21日(木)のどしゃぶりが拍車をかけた。

■ 一部の関係者は、洪水が線路の下の土壌を浸食したと推測していたとみている。
(写真はNewstiowa.comから引用)
(写真はResilience.orgから引用)
(写真はNwestiowa.comから引用)
手前はクリーンアップ作業用の車両
(写真はDesmoinesregister.comから引用)
(写真はKiwaradio.comから引用)
< 対 応 >
■ 事故後数時間で、BNSF社は危険物専門家と環境保全専門家を現場に派遣したと語った。そして、6月22日(金)午後5時頃からBNSFのスタッフ、危険物担当、クリーンアップ作業員がドゥーンの南からロックバレーの北で作業を行った。作業は、オイルフェンス、スキマー、バキューム車を使用して、できるだけエリアを狭めようとした。クリーンアップ作業には、ミネソタ州セントポールに本社のある産業・環境保全会社ベイウェスト社がオイルフェンスなどを積んだトラック6台でやってきた。

■ ライアン郡の保安官は、「対応は長くかかるだろう」といい、「洪水と脱線事故を同時に対処するのは最悪である。原因は分からないが、ひとつ言えることは、洪水が起こっていなければ、脱線事故は起こっていないだろう」と語った。
 
■ 6月23日(土)、アイオワ州知事は、異常気象による洪水と脱線事故による油流出を受け、プリマス郡、スー郡、ウッドベリー郡とともにライアン郡に災害非常事態宣言を発令した。同日、アイオワ州知事は現場を訪れた。対応は、鉄道会社、連邦政府、アイオワ州、地方自治体の各機関が参加している。

■ BNSF社の広報によると、流出油の半分は脱線現場に近いところに展張したオイルフェンス内にあるといい、追加のオイルフェンスを現場から下流の約8kmのところに展張したと語った。そして、水から油を分離できる特別な装置を使って回収する予定だという。

■ クリーンアップ作業では、脱線して部分的に水没した石油タンク車をクレーンで移動することができるように、線路と並行して仮設道路を建設することとなった。

■ 油流出のニュースによって、脱線場所から南西にある約8kmの小さな町であるロック・バレーの当局者は、町の飲料水の井戸をすべて停止させた。町はロック・バレーの農村水系から水を供給した。ライアン郡保安官は、地区の飲料水は汚染の危険性はないと思われるという話だったが、住民をあずかる町は、アイオワ州天然資源省の検査で町の飲料水の安全性が確認されるまで農村水系から取り入れるとした。

■ 6月24日(日)の時点で、脱線した石油タンク車のうち7輌を別な場所へ移動し、10輌から油を抜いた。移動したところには、油が広がらないよう堤を作っている。クリーンアップに参加している作業員は200名という。

■ 6月25日(月)、BNSF鉄道によると、脱線した石油タンク車32輌のうち24輌から油を抜き取ったといい、うち14輌はかなり損傷している石油タンク車からだった。残りの8輌は油漏れを起こしておらず、すでに線路から移動されている。しかし、作業をしているメンバーによると、6月27日(水)までにカラになることはないという。線路の復旧は6月26日(火)までに終える目標だという。
(写真はSiouxcityjounal.comから引用)
(写真はSiouxcityjounal.comから引用)
補 足 
米国アイオワ州の位置
(写真はNizm.co.jpから引用)
■ 「アイオワ州」(Iowa)は、米国中西部に位置し、人口約305万人の州である。地形は平坦ではなく、うねりのある丘陵で構成されている。
 「ライアン郡」(Lyon County)は、アイオワ州北西隅に位置し、人口約11,500人の郡である。
 「ドゥーン」(Doon)は、ライアン郡の南部に位置し、人口約600人の町である。BNSF鉄道はドゥーンを通過している。

■ 「BNSF鉄道」は、旧バーリントン・ノーザン・サンタ・フェ:Burlington Northern Santa Fe:BNSF)で、テキサス州のフォートワースに本社があり、1996年に運行を開始し、米国の中西部から西部にかけて50,000kmの路線網を保有している。米国では、ユニオン・パシフィック鉄道(UP)に次いで第2位の鉄道会社である。2009年、BNSF鉄道はバークシャー・ハサウェイ社(Berkshire Hathaway Inc)の傘下になった。
BNSF鉄道の線路網
(写真はJa.wikipedia.orgから引用)
■  石油タンク車で大きな事故は、つぎの事例である。
 この脱線事故では、石油タンク車63台のほとんどが損壊し、さらに爆発・火災を起こし、47名の死者を出した。このときに使用されていたタンク車が「DOT-111型」で、当時から安全性に問題があることが指摘されていた。 DOT-111型の設計上の問題は、タンクのヘッド部およびシェルが破損しやすいことなどである。
 その後も、石油タンク車の事故は続き、ラック・メガンティック列車脱線事故後、半年も経たずに、アラバマ州アリスビルで石油タンク車が脱線し、湿地帯に大量の油流出を起こした。オンタリオ州ゴガモでも同様の事故があり、2015年3月の1か月間に2回の石油タンク車の脱線があり、マカミ川に2度の油流出があった。2017年7月には、イリノイ州プレーンフィールドで45,000ガロン(170KL)の油流出を起こす石油タンク車の脱線事故があった。  

DOT-117型タンク車の改善点
(図はScoopnest.comから引用)
■ 米国では、石油タンク車の安全化が思うように進まない状況が続いていたが、2017年、議会は鉄道業界に対して、危険物や引火性液体を輸送するDOT-111型タンク車を段階的廃止するよう命じた。また、国家運輸安全委員会(National Transportation Safety Board)は、できるだけ早く、DOT-111型タンク車を「DOT-117型」タンク車へ交換するように求めた。「DOT-117型」はDOT-111型の問題点を改善した機種である。
 今回のドゥーンの事故は、鉄道輸送上、石油の輸送を安全化するとした新型のDOT-117型タンク車による最初の事故である。しかし、今回の事故は、アイオワ州の川に871KLの油を流出させたということを考えれば、この種のタンク車が絶対安全ではないことを明らかにしたという意見もある。

所 感
■ 今回の事故で、負傷者が出なかったことや流出油の半分はオイルフェンスに囲い込まれているという報道に、なぜそのようなことがいえるのだろうという疑問をもったが、かなり早い段階に撮られた一枚の被災写真によって理由が分かった。(写真は前出)
 ● 脱線したタンク車より進行方向側に無事な何輌かのタンク車が見える。すなわち、機関車と何輌かのタンク車が増水に曝される線路を通過したあと、あるタンク車が脱線したものである。洪水で増水し、線路の土盤が十分な強度を保つことができず、石油タンク車の重さに耐えることができなかったと思われる。従って、先頭の機関車にいた運転手はケガをしなかった。
 (なお、脱線したタンク車の後方に無事なタンク車の列が見える)
 ● 流出油のかなりの部分は、線路と郡道に囲まれる三角形の増水エリアに留まっているのが分かる。このことにより、流出油の半分はオイルフェンスに封じ込まれたというコメントになったと考えられる。

■ 脱線したタンク車は将棋倒しで覆いかぶさる様相を呈している。かなりの速度が出ていたものと思われる。タンク車は、カナダのラック・メガンティック列車脱線事故で使用されたDOT-111型でなく、新しいDOT-117型であったが、このタンク車が絶対安全ではないことを明らかになったという意見がある。一方、 DOT-111型タンク車だったならば、被害はもっとひどいものになっただろう。

■ 米国では、石油パイプラインとともに、広大な土地を縦横に鉄道輸送するのが日常の状況とはいえ、洪水で線路の際まで増水している中を、貨物列車を高速で走らせる考え方が理解できない。狭い日本であれば、走らせないか、あるいは最徐行で確認するのではないだろうか。


備 考
本情報はつぎのインターネット情報に基づいてまとめたものである。
  ・Desmoinesregister.com,  Lowa Train Derailment: Hazmat Team on Scene after Oil Leaks into River,  June 22  2018
    ・Desmoinesregister.com,  230,000 gallons of Crude Released into Floodwaters after Train Derailment, Railroad Says,  June 23  2018
    ・Ecowatch.com, Derailed Train Spills 230,000 Gallons of Crude Into ,  June 25  2018
    ・Cbc.ca,  Cleanup Underway after Train from Alberta Derails in Iowa, Leaking Crude Oil into Floodwaters,  June 23,  2018
    ・Desmoinesregister.com, Seven Cars Removed after Train Derailment, Oil Spill; Cleanup and Railroad Repair to Follow,  June 24,  2018
    ・Apnews.com,  Crude Oil Leaks into Floodwaters after Train Derails in Iowa,  June 22,  2018
    ・Nytimes.com, The Latest: Estimated 230,000 Gallons of Oil Spilled,  June 23,  2018
    ・Kttc.com, Train Derailment Leaks Crude Oil into Rock River near Doon, IA,  June 23,  2018
    ・Globalnews.ca,  About 870,000 Litres of Crude Oil Leaks into Iowa Floodwaters after Train Carrying Oil from Alberta Derails,  June 22,  2018
    ・Reuters.com,  Nearly Half of Iowa Crude Oil Spill Contained, BNSF says,  June 25,  2018
    ・Washingtonpost.com , The Latest: Cleanup of Oil from Derailment in Iowa Begins,  June 22,  2018
    ・Kiwaradio.com, FOURTH UPDATE: Railroad Says 230,000 Gallons Of Crude Leaked Into Floodwaters,  June 23,  2018
    ・Argusleader.com, Train Carrying Oil Derails in Northwestern Iowa, Prompting Evacuations, Clean-up,  June 22,  2018
    ・Wpta21.com,  Train derailment leaks crude oil into Rock River near Doon, IA,  June 22,  2018
    ・Mprnews.org,  Crude Oil Leaks into Floodwaters after Train Derails in Iowa,  June 23,  2018
    ・Rt.com , Major Oil Spill Spreads across Iowa Floodwaters, Forcing Evacuations after Train Derails (VIDEO),  June 24,  2018
    ・Siouxcityjournal.com, Railroad reopens track at oil spill derailment site in Northwest Iowa's Lyon County,  June 26,  2018
    ・Siouxcityjournal.com , Northwest Iowa oil spill not expected to disrupt water supplies downstream,  June 25,  2018
    ・Resilience.org,  Derailed Oil Train Spills 230,000 Gallons of Tar Sands in Flooded Iowa River,  June 27,  2018
    ・Progressiverailroading.com , USDOT Publishes First Report on Tank-car Fleet Composition,  September 25,  2017


後 記: 今回の事例は、アイオワ州で洪水に見舞われている中で起こった事故のためか、予期したほどセンセーショナルな伝え方をされていませんでした。かなり多くの報道がありましたが、通信社の情報をもとにしたものが多く、淡々とした同じような内容のものでした。人口約600人ほどの町の話ですし、ライアン郡としても約11,500人の地域のニュースだと、こんなものなのでしょうか。脱線後のクリーンアップの状況もやっと見つかったという感じです。なお、アイオワ州の事故を扱うのは初めてです。


2018年6月27日水曜日

米国コロラド州のタンク施設で落雷による火災

 今回は、2018年6月18日(月)、米国のコロラド州ウェルド郡にあるNGLエナージー・パートナーズの油井用のタンク施設で起こった落雷によるタンク火災事故を紹介します。
(写真はHazmatnation.com から引用)
< 発災施設の概要 >
■ 事故があったのは、米国のコロラド州(Colorado)ウェルド郡(Weld County)にあるNGLエナージー・パートナーズ(NGL Energy Partners)の油井用のタンク施設である。

■ 発災があった施設には、6基のタンクがあった。タンク施設は、郡道51号線と53号線の間の郡道16号線沿いにあり、ハドソンとキーンズバーグの間で、デンバーから北西に約40マイル(64km)のところであった。
郡道51号線と53号線の間の郡道16号線沿い周辺
(写真はGoogleMapから引用)
< 事故の状況および影響 >
事故の発生
(写真は9news.comから引用)
■ 2018年6月18日(月)午後10時20分頃、油井用施設のタンク1基に落雷があり、大きな爆発音が鳴った。

■ 落雷とともにタンクは火災となり、すぐに隣接するタンク2基に延焼し、制圧されるまで火災は数時間続き、19日(火)朝まで続いた。

■ 発災とともに近くの消防署が現場へ出動した。消防隊は火災を限定的に封じ込めようと、消防活動を行った。

■ 事故に伴う負傷者は無かった。

被 害
■ 油井用のタンク施設が3基以上が焼損した。被災写真によると、5基が被災しているが、詳細な損害状況は分かっていない。

■ 事故に伴う負傷者の発生はない。

< 事故の原因 >
■ 事故の原因は落雷による爆発・火災である。

< 対 応 >
■ 火災対応に出動した消防隊員など緊急対応の人員は分かっていない。
(写真はFox4kc.comから引用)
(写真はFox4kc.comから引用)
(写真はFox31.comから引用)
補 足
米国におけるコロラド州の位置
(図は1.bp.blogspot.comから引用)
■ 「コロラド州」(Colorado)は、米国西部に位置し、州の南北にロッキー山脈があり、州全体の平均標高が全米で一番高い山岳地帯の州である。人口は約500万人で、州都および最大都市はデンバーである。コロラド州は石油・天然ガス資源に恵まれており、オイルシェールの埋蔵量は石油換算で1兆バーレルとされているほか、石炭(瀝青炭、亜瀝青炭、褐炭)もかなりの埋蔵量が見つかっている。
 「ウェルド郡」 (Weld County)は、コロラド州北東部に位置し、比較的平坦な地域にあり、人口約25万人である。
 ウェルド郡では、近年、洪水による石油タンク施設から油流出の事故があった。

■ 「NGLエナージー・パートナーズ」(NGL Energy Partners)は、石油・天然ガスの生産・貯蔵・輸送、プロパンガスの販売などを行なうエネルギー会社で、本社はオクラホマ州タルサにある。
 なお、NGLエナージー・パートナーズでは、コロラド州ウェルド郡で傘下のNGLウォーター・ソリュージョン社の天然ガス生産関連施設で落雷によって火災を起こす事例がある。

■ 事故のあったタンク施設は、郡道51号線と53号線の間の郡道16号線沿いにあると報じられており、同地区をグーグルマップで探したら、同じようなタンク施設が2箇所あった。しかし、被災写真とタンクの配置や数が違っており、発災タンクは新しい設備ではないかと思われる。なお、発災タンクを既設のこれらのタンク形状と同じだとすれば、直径は約5mであり、高さを約8mとすれば、容量は160KLクラスとみられる。
郡道16号線沿いにあるタンク施設
(写真はGoogleMapから引用)
所 感
■ 今回の事故は油井用のタンク施設で、損壊したのはファイバーグラス製タンクと思われる。従って、天然ガス生産関連施設の排水貯蔵タンクではないだろうか。被災したタンクの写真を見ると、タンク下部は残っており、タンク上部は爆発で噴き飛んだか、溶け落ちたものだと思われる。一方、隣接タンクでも完全に形状が残っているものがあり、火災の影響を受けなかったか、鋼製タンクだとみられる。

■ 消防活動は分からないが、まわりは広大な畑であり、消火用水源に乏しく、最低限の延焼対策を行い、燃え尽きるのを待つ戦略がとられたものと思う。


備 考
 本情報はつぎのインターネット情報に基づいてまとめたものである。
  ・Fox40.com , Video Shows Massive Explosion After Lightning Strikes Colorado Oil Tanks,  June 20  2018
    ・9news.com,  Lightning Ignites Oil Tank in Hudson,  June 19  2018
    ・Hazmatnation.com,  Colorado Crews Battle Well Site Fire after Lightning Strike,  June 21,  2018



後 記: 今回の事故は米国のコロラド州の話なので、事故情報は多いと思っていましたが、意外に少なく、内容に深みがありませんでした。広大な畑の中にある石油・天然ガス生産設備の多いコロラド州において、落雷によるタンク火災で、朝には火が消えているような事故はニュース性が薄いのでしょう。現場で消火活動に従事する消防隊について感謝の心をもって取材するのが通常ですが、今回は何も触れられていません。
 これまで、米国はメモにいたるまで記録を残し、情報公開していくという点について感心していましたが、どうなってしまったのでしょう。最近、新しくできた徳山駅前図書館で「写真が語る 山口県の空襲 米軍が記録した偵察・攻撃・損害」(徳山高専 工藤洋三著)を借りてみました。写真が主ですので、読むというより、見たという感じですが、よくまとめられています。これこそ米国の記録というものです。
徳山海軍燃料廠の爆撃跡と大浦油槽所のタンク損壊状況(米国立公文書館所蔵)
(写真は「写真が語る山口県の空襲 米軍が記録した偵察・攻撃・損害」(徳山高専 工藤洋三著)から引用)

2018年6月19日火曜日

佐賀県の温泉施設で燃料タンクから流出

 今回は、2018年6月13日(水)、佐賀県多久市の温泉保養宿泊施設「タクア」でボイラー室の燃料用の重油タンクから重油が流出した事例を紹介します。
< 発災施設の概要 >
温泉保養宿泊施設「タクア」
(写真はNhk.or.jpから引用)
■ 発災があったのは、佐賀県多久市の公設民営の温泉保養宿泊施設「タクア」(Taqua)である。

■ 事故があったのは、施設にあるボイラー室の燃料用の重油タンクである。
事故のあった温泉保養宿泊施設「タクア」の周辺
(図はGoogleMapから引用)
<事故の状況および影響 >
事故の発生
■ 2018年6月13日(水)午後3時45分頃、タクアの燃料タンクに給油中、重油があふれ出て、構外に流出したという施設の従業員から通報があった。また、午後4時頃、市民から立山橋付近で油流出との電話連絡があった。

■ 午後4時10分、現場に出動した消防が油流出を確認した。重油は近くを流れる山犬原川(やまいぬばる・かわ)に流出し、中通川(なかどおり・がわ)に合流する下流約3kmの東鶴橋付近まで達した。

■ 午後4時30分、多久市は河川にオイルフェンスの設置を開始し、前田地区・山犬原地区の水田への取水を控えるよう依頼した。市などでは、流域約3kmにわたってオイルフェンスを17箇所設置し、吸着マットを使用するなどの対応を行い、市や佐賀県、施設の運営会社が重油の回収を進めている。

■ 近くの住民は、「重油の臭いがひどくて、家の窓も開けられなかった。川も油で黒くて、底が見えない状態だった」と話している。

■ 消防によると、佐世保市の燃料配送業者が同日午後2時30分頃から施設のボイラー室の燃料用タンクへ給油をしていたところ、タンクの油量計の値の異常に気付き、燃料タンクの上部にある通気管から重油があふれ出ているのを見つけて通報したという。

■ 流出した重油量は約8,000リットル(8KL)である。多久市は川の水を農業用に取水しないよう呼びかけたが、水田1箇所に油が広がっているのが確認された。6月15日(金)時点で、水田約4・5ヘクタールで油膜が確認された。
                オイルフェンス設置状況     (図はCity.taku.lg.jpから引用)
被 害
■ 人的被害は無かった。

■ 環境汚染として約8,000リットルの重油が川へ流出した。このため、油回収が行われている。吹き出た部分が砂利であったため、相当量は地下にしみ込んだ。 

< 事故の原因 >
■ 事故の直接原因は、満杯であった地下式タンクに圧送によって重油を強制的に注入したため、高さ4mの通気管を通じて約8,000リットルの重油が流出した。間接原因としては、タクア従業員間の連絡不足が指摘された。

■ 6月15日(金)の多久市の対策本部において、つぎのように報告された。
 ● 重油配送業者が地下式タンクへ給油する際(給油口とタンクは離れているため目視できない)、自然圧で注入(通常運転)していたが、依頼された量(9,000リットル)の重油が入らなかったため、圧送により注入を行った。地下式タンクの場合、通常は圧送による注入を行う事はないが、高低差がある場合は、圧送する場合がある。
 ● 給油をする際は、双方の危険物取扱者の立会が義務づけられているが、タクア側は不在であった。
 ● タンクは前日の6月12日(火)に減っていたため、タクア社員が他のタンクから補給を行い、満杯状態であった。しかし、タクア社員同士の連絡が行われておらず、タンクにはほとんど注入できない状況であったが、重油配送業者へタンクへの9,000リットルの重油を注入するよう依頼した。
 ● その結果、圧送したことによって通気管(高さ4m)から重油が流出した。
 ● 佐賀広域消防局によるこれまでの調べでは約8,000リットルが漏れており、その一部が雨水排水の側溝を通り、県河川の山犬原川に流出した。また、吹き出た部分が砂利であったため、相当量が地下にしみ込んだと思われる。

< 対 応 >
■ 温泉施設タクアは、「早急に実態を把握して誠心誠意対応に当たりたい」とコメントを発表している。

■ 6月13日(水)午後5時、多久市は関係機関(武雄河川事務所、佐賀土木事務所、佐賀中部保健福祉事務所)へ緊急連絡した。また、午後6時40分、市は農業用水への影響を現地確認した。

■ 6月14日(木)午前8時10分、多久市は、下流域の高木川内、砂原、下鶴、撰分、宮ノ浦、石州分の6地区生産組合長に油流出事故を伝え、水田への取水を控えるよう依頼した。

■ 6月14日(木)午後3時、多久市は対策本部を設置して、第1回の対策会議を開催した。
佐賀県も14日(木)に情報連絡室を設置した。

■ 6月14日(木)夜、地元住民を集めた会合に運営会社のタクアの社長らが訪れ、事故について謝罪した。油の流出は業者による人為的なミスが原因だったと語った。タクアの社長は、「いろんなミスが重なって事故が起きたのは、我々にとって大きなダメージです。地域の住民にも期待を裏切ったのは非常に反省すべき点です」と語った。

■ 6月15日(金)午前10時10分、多久市は油流出事故の第2回対策会議を実施した。参加したのは、 多久市(23人)、佐賀広域消防局(3人)のほか、国土交通省(4人)と佐賀県(8人)である。会議では、事故原因の報告、対策の検討、河川流出の油除去方法、水田への対応、地下水対策、広報について協議が行われた。

■ 6月15日(金)、多久市は、事故で水田への取水を控えるように伝えていたが、同日午後7時から8地区すべてで取水できるようになった旨の報告をした。(8地区:前田、山犬原、高木川内、砂原、下鶴、撰分、宮ノ浦、石州分) なお、8地区には、水稲管理情報を提供している。

■ タクアでは、漏水工事などの影響で全面開業が7月8日(日)に延期されていたが、6月15日(金)に予定していた報道機関向けの内覧会は中止するものの、6月19日(火)のプレオープン、7月8日(日)の開業に変更はないという。

■ 6月16日(土)、多久市は、午前10時から第3回の対策会議を開催した。対策の実施状況および今後の対応を協議した結果、会議後、県管理河川の山犬原川の油除去作業の現地を確認し、午後1時から本格的な油除去作業を実施することとした。
 この対策を受け、前日午後7時以降、水田への取水を可能としていた流域8地区のうち、前田、山犬原地区については、6月16日(土)午前7時から再び水田への取水を控えるよう伝えた。今後、作業区域が下流側へ進むことから、作業により取水可能となる地区、一時的に水田への取水を控えるよう依頼する地区が発生する見込みだという。
(写真はSaga-s.co.jpから引用)
補 足 
佐賀県多久市の位置
(図はTaku-kankou.comから引用)
■ 「多久市」(たく・し)は、佐賀県中央部に位置する人口約19,000人の市である。消防は佐賀県中部広域連合佐賀広域消防局が所轄する。

■ 「タクア」(Taqua)は、2007年に閉鎖した「ゆうらく」を多久市が19億6,300万円をかけて改修、㈱長崎環境美化のグループ会社が運営する温泉保養施設である。なお、長崎環境美化は、側溝および暗渠清掃・貯水槽等の各種清掃、産業廃棄物・特別管理産業廃棄物等の収集運搬を専門とする会社である。。
 「タクア」は6月19日(火)にプレオープンし、7月8日(日)に開業する予定である。季節を問わずに利用できる温水プールや大浴場、ビュッフェ形式のレストランのほか、式典や披露宴などで利用できるホールを完備し、年間10万人の利用を目指すとしている。大浴場やプールなどを備えた本館と宿泊棟があり、延べ床面積は14,650㎡である。客室は、標準的な広さの和室と洋室、広めの和洋室の3タイプで、最大155人を収容できる。駐車場は460台分を確保している。
 レストランは九州の旬の食材を使った創作料理を提供する。宴会向けの会席料理は、長崎県の老舗ホテルの元料理長が手掛ける。メインのプールは流水式でジェットバス、水深が浅い子ども向けもある。カフェやバーのほか、宴会場やカラオケルーム、エステサロン、ゲームコーナーがある。県内をはじめ、福岡や長崎など北部九州を中心に家族やグループ、ツアー客の利用を見込み、売上高は年間5億円を目指す。

■  一方、タクアは開業の問題点が続いている。
 ● 2017年11月、漏水で運営めど立たず、雇用契約先送り
  2017年11月13日、タクアが11月上旬に予定していた入社式を延期し、約20人との雇用契約を先送りしていることが分かった。施設地下室の漏水対策に関し、「市側の対策が不十分で運営開始のめどが立たない」と採用者に説明している。延期期間は明確にしていないという。
 関係者によると、入社予定者は運営管理業務などを担う。2017年10月17日付で採用者宛てに「入社日等のご案内」として11月1日午前10時からタクア内のホールで開催すると明記していた。実際に面談に訪れた40代の男性は、同社幹部から漏水の件を初めて聞かされ、「市から回答を待ち、後日連絡する」と雇用契約は先延ばしされた。多久市は、漏水について2017年10月の施設引渡し書に「引き続き、対策に応じる」と盛り込んでいた。10月13日の市議会勉強会で現状を報告、本格的な修理に向け工法など対応策を練っていると説明した。

● 2017年11月、宴会予約のキャンセル2,000人分
 2017年11月15日、タクアは、2017年12月以降の宴会予約のキャンセル通知を始めたことが分かった。タクアと親会社の長崎環境美化は、2017年9月の記者会見で、「2018年2月中にグランドオープンしたいが、忘年・新年会は12月から始めたい」と説明していた。しかし、予約キャンセルは30数件2,000人分とみられ、市に「同窓会を予定していたが、できなくなった」など、市民から戸惑いの声が上がっていた。タクアから、理由は説明されず「2,000人分の予約は全てキャンセルする」とだけ言われたという。市内の経済関係者は、「従業員がなかなか集まらず、漏水対策が進まない中で運営の見通しが立たなくなり、(宴会の)サービスの提供ができないと判断したようだ」と語る。多久市の担当課は、タクア側から予約キャンセルの説明があったと認め、「推移を見守る」とコメントした。 

● 2018年3月、多久市長、タクアの問題で減給4か月
  2018年3月30日、多久市議会は、タクアの事業費増額に対する市長の処分案について、議員が修正を動議し、2分の1の減給期間を原案より1か月間加重した修正議案を賛成多数で可決した。修正動議をかけた議員は「整備事業費について18億円の上限額を定めたにもかかわらず、約1億5千万円の追加工事と休業中の営業補償費(4,880万円)を派生させ、多額の公費を支出した責任は重い」と説明した。市長は、議会後の記者会見で、「議会の決定を重く受け止め、事業を推進したい」と頭を下げた。

● 2018年3月、内定取り消し者を採用、7月8日開業へ 
 2018年3月31日、 市議会が延期中の補償費4,880万円を盛り込んだ一般会計補正予算案の可決を受け、市側とタクアは覚書を交わす。昨年秋以降、漏水策の追加工事もあり、不透明になっていた開業時期が7月8日と決まった。事務職やホールスタッフなど従業員の募集はすでに始め、2017年11月に内定を取消された調理師ら49人に対しては「優先して採用する」として31人が雇用に応じているという。
 昨年9月にフランス料理から日本料理に変更した食堂は、長崎やハウステンボスに向かう観光客の昼食場所を目指す計画だという。4月中旬から宿泊や宴会などのインターネット予約の受付けを始めるほか、5月から従業員の研修を本格化させ、6月中旬には、市内の法人関係者や各種団体向けにプレオープンする予定であった。

所 感
■ 今回の事例は、地上式タンクと地下式タンクの違いはあるが、過充填による油流出事故である。近年、地上式タンクでは、過充填による油流出事例として、つぎのような事例がある。
 これらの事故はガソリンであったため、蒸気雲爆発を伴い、甚大な被害を出し、大きな教訓を残した。事故を契機に、API(米国石油協会)は、リスク・アセスメントに基づき「タンク過充填防止の規格」(API Std 2350)を改訂することになった。

■ 今回の事例を、失敗を防ぐために必要なつぎの3つの要素の観点で見てみる。
 ① ルールを正しく守る
 ② 危険予知活動を活発に行う
 ③ 報連相(報告・連絡・相談)を行い、情報を共有化する
● タンクへの給油法についてのルールがあるのか曖昧である。給油は、双方の危険物取扱者の立会が義務づけられているが、施設側は立会者が不在でいなかった。まして、給油口とタンクが離れているため目視できないような状態であり、どのような方法で安全を確保しようとしていたか不明である。
● 重油配送業者は、通常、自然圧で注入していたが、重油が入らなかったため、圧送により注入を行ったという。おそらく、短時間で給油を終わらせようと考えたようで、ここには危険予知活動を行う意識はみられない。一方、施設側には、給油を重油配送業者に任せっきりで、給油に関する危険予知が感じられない。
● 施設側では、他のタンクから補給を行い、当該タンクは満杯状態であったのもかかわらず、社員同士の連絡が行われていなかった。どのような方法で他のタンクから補給を行ったか、またその結果をどのように社内で情報を共有化していたかが分からない。


備 考
 本情報はつぎのインターネット情報に基づいてまとめたものである。
    ・Saga-s.co.jp,   多久市の温泉宿泊施設から重油流出,  June  14,  2018
    ・Sagatv.co.jp , 多久市の温泉施設から重油9000L流出,  June  14,  2018
    ・Www3.nhk.or.jp , 多久市の温泉施設から重油流出,  June  14,  2018
    ・Asahi.com,  9千リットルの重油漏れ、川に一部流出 佐賀の温泉施設,  June  15,  2018
    ・Mainichi.jp, 重油漏れ 多久の温泉施設 川に流出 水田1箇所に油,  June  15,  2018
    ・City.taku.lg.jp, 平成30年6月13日発生油流出事故対策本部(第2報)事故の状況など確認できた内容をお知らせします,  June  15,  2018
    ・City.taku.lg.jp, 平成30年6月13日発生油流出事故対策本部(第3報)水稲管理情報,  June  15,  2018
    ・City.taku.lg.jp, 平成30年6月13日発生油流出事故対策本部(第4報)本格的な油除去作業を実施,  June  16,  2018
    ・Saga-s.co.jp , タクア重油流出8キロリットル 多久市、対策本部を設置 周辺農家に注意喚起,  June  15,  2018
    ・Mainichi.jp, 多久の温泉施設 川に流出 水田1箇所に油,  June  15,  2018
  ・Mainichi.jp, 従業員の連絡不足が原因 タクア,  June  16,  2018 
    ・Sagatv.co.jp , 多久の温泉施設“油流出”社長が謝罪,  June  15,  2018
    ・Saga-s.co.jp ,  「タクア」19日プレオープン 7月8日本格開業  多久市の温泉保養宿泊施設,  June  13,  2018
    ・Saga-s.co.jp , タクア、宴会予約をキャンセル通知 2000人分  多久市民困惑「同窓会できない」,  November,  17, 2017 
    ・Saga-s.co.jp , タクア7月8日開業へ 内定取り消し者を採用  温泉保養宿泊施設,  March  31,  2018
    ・Saga-s.co.jp , 「タクア」雇用契約先送り 漏水で運営めど立たず,  November,  14, 2017
    ・Saga-s.co.jp , 多久市長、「タクア」で減給4カ月に  処分案、加重修正し可決,  March  31,  2018



後 記: 今回の事故の第一報を聞いたときには、円筒タンクの過充填による溢流であり、タンク液面の計装に問題があると思いました。調べてみると、地下タンクであることが分かり、少し状況が違うと感じました。多久市から本事故に関する情報が公開されていることが分かり、読んでみて驚きました。起こるべくして起こったという印象です。施設は改修してオープン前で、いろいろやることが多くて、忙しいことは理解できますが、大丈夫かなと思いました。さらに、調べてみると、施設は漏水問題で追加工事が発生し、雇用契約や宴会のキャンセル問題などが昨年から続いていました。観光に力を入れることは分かります。円滑な経営には、失敗を防ぐために必要な3つの要素を取り入れ、気を引き締めてかかる必要があるでしょう。