今回は、2025年3月31日(月)、米国ルイジアナ州ポイントクーペ教区リボーニアにあるリライアブル・プロダクション・ドリリング・サービス社の石油生産施設でタンク設備が落雷によって火災を起こした事例を紹介します。
< 発災施設の概要 >
■ 発災があったのは、米国ルイジアナ州(Louisiana)ポイントクーペ教区(Pointe Coupee Parish)リボーニア(Livonia)にあるリライアブル・プロダクション・ドリリング・サービス社(Reliable Production Drilling Services)の所有する石油生産施設のタンク設備である。
■ 事故があったのは、ハイウェイ190号線の側道沿いにある石油生産施設内の貯蔵タンクである。施設内にはタンク設備が7基あり、発災したタンクには原油と塩水の混合液が入っていた。
<事故の状況および影響>
事故の発生
■ 2025年3月31日(月)午前6時頃、タンク施設の貯蔵タンクに火災が発生した。
■ 貯蔵タンク1基に落雷があったとみられ、タンクは屋根が噴き飛んで火災になり、隣接するタンクに延焼した。
■ 火災現場は、31日(月)に南ルイジアナ州全域で発生した雷、強風、大雨、竜巻の異常気象のひとつであった。多くの住居が停電に見舞われ、いくつかの学区では休校や遅れが出た。
■ 発災にともない、該当区域の消防隊が出動し、現場に到着した。
■ 火災タンクはグラスファイバー製で、タンク内液はほとんどが塩水で、タンク上部に溜まっていた油分が燃えていた。隣接するタンクには水を放射して、タンクが熱くなりすぎて燃え広がらないようにした。一方、消防隊が保有している泡薬剤の量は十分でなく、近隣の消防隊が泡薬剤を供給してくれるまで、タンクへの泡投入を制限しなければならなかった。消防隊は、グラスファイバー製タンクの火災を手加減するような消火活動を強いられた。
■ 近隣の消防隊が1,000ガロン(3,780リットル)の泡薬剤を積んだ泡原液搬送車をもってきたので、消防隊は本格的な消火活動を行った。
■ 火災の現場には水源がなく、消防車は水タンクに補充するため、現場を離れて定期的に水源まで行く必要があった。このため、消防隊が水源にアクセスできるように、ハイウェイ190号線の交通を一時的に通行止めにした。
■ 消防活動にともなう負傷者はいなかった。
■ 保安官は、火災現場が近くの住宅地から離れており、住民を直ちに避難させる必要はないと判断した。
■ ユーチューブでは、タンク火災の状況を伝える動画が投稿されている。
●Youtube、「Lightning
strike sparks Livonia oil tank fire」(2025/04/01)
●Youtube、「 Deputy, 3 others injured near Livonia
oil tank fire」(2025/04/01)
●Youtube、「 WATCH: Crews fight large oil tank fire in Livonia」(2025/04/01)
被 害
■ 石油生産施設のタンク設備が2基損傷した。
■ 火災鎮火後、撤退する際、交通整理中に保安官1名と消防士2名が車両の衝突で負傷した。
< 事故の原因 >
■ タンク火災の原因は落雷によるものとみられる。
< 対 応 >
■ 火災発生から約5時間後の午前11時前に、消防隊は火災を消し止めた。出動した消防車は10台だった。
■ 3月31日(月)午後、消防隊が火災を鎮火させて撤退する際、交通整理中に保安官1名と消防士2名が負傷した。ハイウェイ190号線を運転していた人物が消防車に衝突し、その後保安官に衝突したという。当時、火災のため道路上に多数の消防車など緊急車両が停まっており、保安官は交通整理をしていた。
補 足
■「ルイジアナ州」(Louisiana)は、米国の南部にあり、テキサス州に隣接し、人口約465万人の州である。州都はバトンルージュで、最大の都市はニューオーリンズである。ルイジアナ州は石油と天然ガスの資源が豊富なところである。
「ポイントクーペ教区」(Pointe Coupee Parish)は、ルイジアナ州の東中部にあり、人口約20,700人の教区(郡)である。
「リボーニア」(Livonia)は、ポイントクーペ教区の南部に位置し、人口約1,200人の町である。
■「発災タンク」は、リライアブル・プロダクション・ドリリング・サービス社(Reliable Production Drilling Services)の所有するグラスファイバー製の塩水タンクだと報じられている。グーグルマップで調べると、同径のタンクは3基あり、直径は約3.3mである。高さを6.0mとすれば、容量は約51KLである。米国の陸上油田における標準的な石油生産施設であるが、設備規模は大きくはない。
■「NASAによる世界の雷マップ」(2012年6月)によると、米国における雷発生頻度はメキシコ湾岸地域が高い。テキサス州やオクラホマ州はそのひとつで、今回のルイジアナ州も雷の多い地域である。ブログで昨年度における落雷による石油生産施設の事故は、つぎのとおりである。(原因がはっきりしないものや、情報から漏れたものもあり、実際はもっと多いと思われる) もともと、米国の陸上油田の石油生産施設におけるタンクは落雷のリスクにさらされており、落雷によるタンク爆発・火災の頻度は増えていくだろう。
●「米国オクラホマ州で竜巻警報の中、落雷によるタンクが爆発・火災」(2024年5月)
●「米国オクラホマ州の石油生産施設で相次いで落雷よるタンク火災」(3件)(2024年3月)
●「米国オクラホマ州の石油生産施設で落雷によるタンク爆発・火災」( 2024年4月)
●「米国テキサス州石油生産施設で落雷による堤内火災、タンクは噴き飛びか? 」(2024年8月)
所 感
■ 今回の事例は、米国の石油生産施設における落雷によるタンク火災の典型である。
■ 今事例の消火活動は、これまでの他の事例と少し異なっている。通常、グラスファイバー製塩水タンクは炭素鋼製タンクに比べ火災には弱く、焼損して全壊してしまう。一方、今回、タンク側板部がかなり残っているめずらしい例である。これは、火災発生から消防隊が到着するまでの時間が短かく、グラスファイバー製塩水タンクの消火活動を行っているためだと思う。これが最適な消火活動かどうかは意見が分かれるところだろう。
■ めずらしい例でいえば、消防隊が火災を鎮火させて撤退する際に負傷者が出ている。ハイウェイ190号線を運転していた人物が消防車に追突し、その後保安官に衝突したという。 断続的な通行停止をしていたためであるが、交通整理中に保安官1名と消防士2名が負傷したという。結果論であるが、中途半端な通行止めだった。
備 考
本情報はつぎのインターネット情報に基づいてまとめたものである。
・Wbrz.com, Two oil tanks catch fire after being
struck by lightning; chief says damage could have been worse, March 31,
2025
・Newsroom.ap.org, Lightning strike causes
tank fire west of Baton Rouge, Louisiana, April 01, 2025
・Kpel965.com, Lightning Sparks Massive Oil Tank
Fire in Louisiana During Storms,
March 31, 2025
・Msn.com, Deputy, 3 others injured near Livonia
oil tank fire, April 01, 2025
・Arogersflex.bloxcms.com, Massive blaze in
Livonia after oil tanks likely struck by lightning, March 31,
2025
・Unfilteredwithkiran.com, Oil tank
fire update, April 01, 2025
後 記: 最初はよく起こる石油生産施設の落雷によるタンク火災だと思っていましたが、今回の事故はこれまで無かったようなめずらしいことのあった事例でした。一番、感じたのはメディアの取材内容です。最近のテキサス州の事例のような素っ気ない記事でなく、なんとか取材しようという思いを感じる内容でした。グラスファイバー製タンクの火災について泡薬剤の到着を待ちながら消火活動をする消防隊の苦労を何とか伝えようとするのが感じられました。
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