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2026年10月2日金曜日

ブラジルのサンパウロ州の化学工場でタンク火災、住民約150名が避難

 今回は、2026年8月4日(火)、ブラジルのサンパウロ州イタクアケセトゥバにあるケマ・キミカ社の化学工場で、溶剤タンクなどが火災や爆発を起こし、鎮火までに約33時間かかり、住民約150名が避難したという事例を紹介します。

< 発災施設の概要 >

■ 発災があったのは、ブラジル(Brazil)のサンパウロ州(São Paulo)イタクアケセトゥバ(Itaquaquecetuba)にあるケマ・キミカ社(Quema Química)の化学工場である。工場では、溶剤とポリエステル系樹脂を製造している。

■ 事故で影響があったのは、化学工場内にある溶剤貯蔵タンクである。工場には、メタノール、エタノール、アセトン、トルエン、ヘキサンなど約200万リットル(2,000KL)の製品が保管されていた。

<事故の状況および影響>

事故の発生

■ 2026年8月4日(火)午後3時過ぎ、ケマ・キミカ社の化学工場で火災が発生した。火災が拡大して爆発が起こった。

■ 住民から工場敷地内で複数の爆発音が聞こえたとの通報を受け、消防隊が出動した。消防隊は18台消防車とともに現場に向かった。

■ 消防隊は、火災の消火と、ほかの貯蔵タンクや工場区域への延焼防止に努めた。消防署は「火災は揮発性物質を貯蔵したタンクが関係している」と述べている。

■ 工場内にはメタノール、エタノール、アセトン、トルエン、ヘキサンといった引火性の高い可燃性物質が約200万リットル(2,000KL)貯蔵されており、これらに次々と引火していった。 火災は激しさを増し、数km先からも見えるほどの濃い黒煙の柱を発生させ、爆発を引き起こした。電力会社は工場への送電を停止した

■ 工場からは巨大な炎が轟音を立てて噴き上がり、黒煙が100フィート(約30m)以上も空高く立ち昇り、火災現場では、可燃性物質を入れたドラム缶が空中に投げ上げられた。

■ 住民のひとりは、「あの化学工場で火災が発生しました。今でもあちこちで爆発が起きています」と語った。別な住民は、「私は家にいたのですが、突然爆発音が聞こえました。何が起こっているのか外に出てみると、化学工場が火事になっていました。火の勢いが非常に強く、すぐには消えそうにありません。かなり時間がかかりそうです」と語った。

■ 工場では、溶剤とポリエステル系樹脂を製造しており、現場には大量の可燃物が存在するため、消火活動は難航した。工場には24基の容量約30KLの溶剤貯蔵タンクのほか、5000リットルタンク6基、200リットルのドラム缶、100個以上のIBC型コンテナなどが保有されていた。

■ 大規模の火災になったため、近隣の住宅や工場からの避難が余儀なくされ、当局は近隣住民約150人を避難させた。

■ 消防隊は、事態を収拾するために長時間の消火活動を行った。消防士たちは夜通し現場に留まり、翌日も大規模な火災の鎮火に努めた。

■ 夜の駐車場から撮られた爆発時の映像には、巨大な火球と濃いオレンジがかった煙が暗い空に高く立ち昇る様子が捉えられていた。

■ 溶剤の可燃性物質を貯蔵する複数のタンクが巻き込まれて火災になり、 敷地内のタンクが爆発したほか、流出した可燃性物質が公共の雨水排水系に流れ込んだことで、道路中央にあるマンホールが次々と吹き飛ぶという異例の事態が発生した。通行人が爆発の一つで吹き飛ばされたと報じられている。

■ 当局は、現場周辺を封鎖し、消防隊が危険がなくなったと宣言するまで電力供給は再開されないと発表した。

■ 事故にともなう死傷者は無かったと大半のメディアは報じたし、事故後の事業者の発表でも、従業員には負傷者はいなかったという。一方、メディアの中には、21名の負傷者が出たと報じている。

■ 施設内には溶剤用のタンクやドラム缶などがあり、火災を絶えずあおっているため、消火活動は非常に複雑かつ危険だった。さらに、工場は揮発性や可燃性物質を集中する工業地帯に位置しており、爆発のリスクが影響を高め、封じ込め作業を困難にした。

■ ユーチューブでは、火災のニュースを伝える動画が投稿されている。

   ●YouTube、「Incêndio destrói indústria química em Itaquaquecetuba」(2026/8/6)

   ●YouTube、「Incêndio de grandes proporções atinge indústria química em Itaquaquecetuba (SP) 」(2026/8/6)

   ●YouTube、「SP: explosões assustam moradores e incêndio em fábrica química passa de 13 horas」(2026/8/6)

   ●YouTube、「Helicóptero do SBT mostra como ficou fábrica após incêndio devastador em SP |」 (2026/8/6)


被 害

■ 化学工場の施設が全焼した。保有していた200万リットル(2,000KL)の

タンクは容量30KLタンク24基、5000リットルタンク6基、200リットルのドラム缶、100個以上のIBC型コンテナがあったが、内部の油の焼失とともに損傷したものと思われる。

■ 施設の従業員に死傷者は出なかった。しかし、メディアによって負傷者21名と報じられているので、住民に被害が出た可能性がある。

■ 住民約150名が避難した。

■ 大気汚染が生じたと思われる。また、公共の雨水排水系に油類が流出し、排水管が爆発した。

< 事故の原因 >

■ 最初の火災の原因は不明で調査中である。


< 対 応 >

■ 火災は水曜日の朝(8月5日)には近隣の建物への延焼の危険はなくなったが、工場内にはまだ火が残っていた。消防署によると、火災は火曜日の午後9時頃に封じ込められ、延焼の危険はなくなったと発表した。

■ 最終的には、消防車30台以上、90名以上の消防士が動員され、鎮火までに約33時間を要した。火災は火曜日(8月4日)の午後から始まり、木曜日(8月6日)の午前0時10分まで続いたことになる。

■ 火災は、工場をほぼ全焼するほど激しいものだった。

■ 火災の原因と爆発に至った経緯については、現在も調査中である。当局は火災の原因をまだ特定していない。火災が完全に鎮火し、現場の安全が確認され次第、調査が開始される予定だという。

■ 今回の事故のあと、メディアの中に「ブラジルの溶剤貯蔵タンク」についてつぎのような指摘をしている。
 ●「溶剤貯蔵タンクはABNT NBR 7821(Tanques soldados para armazenamento de petróleo e derivados;「石油および石油製品を貯蔵するための溶接タンク」)に準拠する必要がある。これは基本的に“ブラジル・ポルトガル語で簡略化されたAPI Std 650” (Welded Tanks for Oil Storage) であるが、ブラジルではAPI Std 650のみに従うことが一般的に認められている。しかし、事故のタンクは工場組立タンクであり、タンク屋根がフランジ付きで屋根と側板の接合部が突合せ溶接されている限り(API Std 650 - Annex Jと同様)、トップアングルは不要だが、そうではないようである。

 ●API  Std 650によれば、爆発時を考慮した“弱くした屋根”の設計には、トップアングルのスケッチ、接合部の断面積、屋根をトップアングルに取り付けるための単一のすみ肉溶接の使用、アンカーなどに関する非常に具体的な要件がある。これらの要件のため、“弱くした屋根”は工場組立のタンクでは実現不可能である。ABNT NBR 7821 は“弱くした屋根”についてあまり詳しく規定していないが、この設計はブラジルの基準にも適合しないと思われる。 

 ●今回の事故で多くのタンク屋根は、設計がかなり自由奔放だったにもかかわらず、脆弱な挙動を示した。推測では、脆弱性の断面積制限に準拠するために上部の角度が省略されたが、屋根はすみ肉溶接で取り付けられていた。少なくとも 2基のタンク屋根は、縦方向の突合せ溶接に沿って中央部で大きな破損があったが、屋根と側板の接合部は無傷のままだった。

 ●ウェブサイトには、タンク屋根に圧力逃がし弁が写っている写真があった。おそらくフレームアレスターが装備されていると思われる。少なくとも API Std 650 に従って不十分な“弱くした屋根”の設計を即席で行うのではなく、圧力安全弁や緊急圧力逃がし弁を使用していれば、タンクの実装コストは高くなるが、被害の程度は軽減できたと思われる。

 ●化学工場の施設内には、巨大な消火用水タンクがあるようだが、火災発生時にタンクを冷却するためにこの水をタンクの近くに送るシステムはなかったと思われる。

補 足

■「ブラジル」(Brazil)は、正式にはブラジル連邦共和国で、南アメリカに位置し、人口約2億1,200万人の連邦共和制国家である。首都はブラジリアである。

「サンパウロ州」(São Paulo)は、ブラジル南東部に位置し、人口約4,440万人の州で、州庁所在地はサンパウロ市である。

「イタクアケセトゥバ」(Itaquaquecetuba) は、単にイタクアとも呼ばれ、サンパウロ州の南東部に位置し、人口は382,000人の自治体である。

■「ケマ・キミカ社」(Quema Química)は、 2002年に設立され、当初は溶剤の製造・販売から事業を開始した。現在では、ポリエステル系樹脂の製造・販売も行っている。事故のあったイタクアケセトゥバ工場は同社で最も歴史が古く、約24年間操業を続けている。ケマ・キミカ社はブラジル国内に他にも施設を所有しており、支店はブラジル南部とミナスジェライス州カンブイにある。

■「発災タンク」は、化学工場に保有している容量30KLタンク24基、5000リットルタンク6基、200リットルのドラム缶、100個以上のIBC型コンテナのいずれかとみられるが、どのタンク類か特定はできない。

 注;IBC型コンテナとは、液体や粉体を効率よく保管・輸送するための約1,000リットルの

中型容器(Intermediate Bulk Container)で、ほかに中間バルクコンテナやタンクパレットと呼ばれる。最大の特長は、1基あたり約1,000リットルという容量を有しながら、フォークリフトによる機械荷役が容易なパレット一体型構造を採用している。

所 感 

■ 今回の事故は、化学工場が全焼するほどの大きな火災だった。しかし、原因をはじめ事故経緯はよくわからない事例である。可燃性物質が公共の雨水排水系に流れ込んだというので、周辺のインフラにも影響を及ぼしている。これは工場の施設(タンクまたは配管)から可燃性物質が流出したものと推測できる。

 グーグルアースによると、タンク群の北側にあるのが溶剤の充填場と思われるので、ドラム缶またはIBC型コンテナの充填系統の溶剤配管から何らかの要因で流出して電気系統などの引火源によって火災になったのではないだろうか。

■ 負傷者がいなかったとすれば、事故の激しさを考えれば、せめてもの救いである。しかし、公共の雨水排水系のマンホールが噴き飛ぶという事態が発生し、通行人が吹き飛ばされたと報じられており、けが人が出たのではないだろうか。また、火災は鎮火までに約33時間を要しており、体調不良で病院の診察受けた人がいるのではないだろうか。

■ 消防活動について報道では、“消防隊は、火災の消火と、ほかの貯蔵タンクや工場区域への延焼防止に努めた”と報じられている。消火戦略は、積極的戦略・防御的戦略・不介入戦略の3つがあり、積極的戦と防御的戦略の消火活動をとったかのような印象になっている。しかし、被災写真を見ても火災終盤を除いて積極的戦略や防御的戦略をとったように思えない。現場にはドラム缶などに入った可燃性物質がそこら中にあり、何度も爆発を起こしており、消防隊の消防士の安全を考慮しなければならない。火災の初期から中盤は不介入戦略をとったものと思われる。消防資機材(特にスクアート車など)の保有状態が分からないが、資機材が不十分であれば、不介入戦略をとったのは適切な判断だったといえよう。


備 考

 本情報はつぎのインターネット情報に基づいてまとめたものである。

     ・Hazardexonthenet.net, Brazil chemical plant fire involves multiple explosions,  August  7, 2026

     ・Aljazeera.com, Massive fire at chemical factory forces evacuations in Brazil,  August  5, 2026

     ・Reutersconnect.com, Brazil: Chemical Factory Engulfed By Massive Fire As Towering Flames Light Up Night Sky,  August  7, 2026

     ・Viory.video, Chemical chaos - Huge blaze at Quema Química plant forces evacuation of 150 people in Sao Paulo,  August  5, 2026

     ・Independent.co.uk, Fireball erupts at chemical factory as blaze prompts evacuations,  August  5, 2026

     ・Joiff.com, BRAZIL – Large Fire Erupts at Solvent Factory in Greater São Paulo,  August  5, 2026

     ・Thesun.co.uk, PLANT INFERNO Huge blaze burns through chemical plant as dozens of fire engines called to scene and 150 locals evacuated,  August  5, 2026

     ・Eng-tips.com, Massive fire destroys chemical plant in Brazil,  August  6, 2026

     ・G1.globo.com, Indústria química destruída por incêndio funciona há mais de duas décadas em Itaquaquecetuba,  August  5, 2026

     ・Dailybeirut.com, Brazilian Chemical Plant Fire Triggers Multiple Explosions, Evacuates 150,  August  6, 2026


後 記: 初めて事故の報道を知ったときには、化学工場の通常的な事故だと思いました。インターネットで調べ始めても、大手メディアの情報も化学工場で事故があり、負傷者は無いというもので、最初のうちはそれほど変わりありませんでした。しかし、調べていくうちにドラム缶やIBC型コンテナなどを含むタンク火災で、これまでに扱ったことのない事故だと分かりました。火災時の被災写真は多くありましたが、火災後の事業所が全焼し、数多くのドラム缶が散乱している様子はこれまでに無い事故の写真で驚きました。ブラジルの事故報道は時系列がはっきりせず、内容は事業所寄りの見方の記事が多いのですが、被災写真は秀逸だと思います。