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2026年9月11日金曜日

オランダの石油ターミナルで不安全なメンテナンス中にタンク付近で爆発、死傷者6名

 今回は、2026813日(木)、オランダのロッテルダム港にあるガンボル・エナージー社の石油ターミナル内で貯蔵タンク付近において爆発が起こり、メンタナンス作業員に6名の死傷者が出た事例を紹介します。

< 発災施設の概要 >

■ 発災があったのは、オランダ(Netherland)のロッテルダム港(Rotterdam Port)のモーゼルウェグ(Moezelweg)にあるガンボル・エナージー社(Gunvor Energy)の石油ターミナルである。ガンボル・エナージー社は同地区で製油所と石油ターミナルを所有している。

■ 事故があったのは、石油ターミナルにある貯蔵タンクの関連設備である。

<事故の状況および影響>

事故の発生

■ 2026813日(木)午前1130分頃、モーゼルウェグの石油ターミナル内の貯蔵タンク付近で爆発が起こった。

■ 発災にともない、消防隊が出動した。出動したのは消防士のほか、救急車6台が派遣された。

■ 貯蔵タンクはメンテナンス作業中で、工事の下請け会社;カンクス・メンテナンス社(Canx Maintenance)の作業チームが石油製品タンクに接続された配管のメンテナンスで切断作業を行っていた際に事故が発生した。 

■ 事故にともない、1名が死亡、5名が負傷した。爆発直後に救急車が現場に派遣され、その後すぐにヘリコプターで医療外傷チームが派遣された。死亡したのは、 60歳で経験豊富な作業員だった。

■ 現場には、影響を受けたタンク付近に爆発の痕跡と側板に損傷が確認された。

■ 地元警察とオランダ労働監督局は、職場事故の可能性に焦点を当てて捜査を進めている。

■ 警察は爆発の原因を調査している。警察の広報担当は、現時点で破壊工作の兆候はなく、あらゆる可能性のあるシナリオについて捜査中であると述べた。

■ ロッテルダム港の港湾関係の操業は爆発の影響を受けていないと述べた。

■ ロッテルダム港では813日午前中に変圧器の火災によって数回停電が発生したが、地元安全当局は爆発と停電には関連性がないと述べた。

■ 火災は発生しなかったものの、消防隊員は念のため待機していた。爆発による煙はフラールディンゲンとマーススライス方面に流れ、不安を感じた住民から多数の通報があった。

■ ユーチューブなどでは、タンクの事故状況を伝える動画が投稿されている。

 YoutubePays-Bas : une explosion dans une zone industrielle du port de Rotterdam fait un mort2026/8/13

 ●YoutubeRotterdam Port Explosion Kills 1, Injures Six | Blast Hits Petroleum Storage Facility In Netherlands2026/8/13)   

 ●EuronewsPays-Bas : un mort et plusieurs blessés dans une ..2026/8/13

被 害

■ 6名の死傷者が出た。内訳は1名死亡、5名の負傷者である。

■ 工事中だったタンク周辺に被害があったが、詳細は不明である。 

< 事故の原因 >

■ 工事現場の不安全管理によるものとみられる。詳細は調査中である。

< 対 応 >

■ 事故の後、警察は現場を犯罪現場に指定した。労働監督局と協力して、十分な安全対策を講じていたか、またガンボル・エナージー社に過失があったかどうかを調査している。この調査の中心となるのは、工事のために確立した環境下で、工事の作業員が安全に作業できたかどうかである。

■ 調査の重要な部分のひとつは、爆発の正確な原因を特定することである。これには、爆発に先行する化学反応を調べることが含まれる。爆発には少なくとも3つの要素、すなわち可燃性物質(たとえば、燃料のベーパーまたは液体)、酸素、点火源(高温の表面、短絡、火花など)が必要である。

 工事作業チームが燃料配管の作業を行っていたため、火花が発火源となった可能性は十分考えられる。原則として、配管内に可燃性の液体やベーパーが全く含まれていなければ、これは問題にならない。したがって、労働監督局はまず、配管内に何が入っていたのか、そしてそれがどのようにしてそこに入り込んだのかを正確に突き止めたいと考えている。

■ 労働監督局は、作業中に爆発の危険性を継続的に測定していたかどうかを確認する。その際、考慮すべき点は、①ガス漏れの可能性のある原因、②その燃料源までの距離、③風向、④ガスの密度である。

 もし、ガンボル・エナージー社が上記のいずれかの点で過失があった場合、同社は多額の罰金を科せられるだけでなく、さらに重要なことは被害者とその遺族に莫大な賠償金を支払わなければならないだろう。

 さらに、就労許可証と安全手順について確認される。就労許可証は、欧州のATEX指令137によって企業に対して爆発危険区域を明確に指定し、安全な作業手順を確保するための措置を事前に講じることを義務付けている。この手続きは、作業開始前に策定、評価、承認されなければならない。労働監督局は、とりわけ以下の点を確認する。当該区域へのアクセスは適切に管理され、許可された従業員のみがアクセスできたか、適切な個人用保護具が準備され、使用され、点検されていたか、適切な機工具が規定され、使用され、点検されていたか、追加の規制・予防措置が策定され、遵守されていたか、工事現場には、書面による指示が明確かつ目立つ場所に掲示されていたか、従業員は必要な研修を修了していたかなどである。

■ 実際、ガンボル・エナージー社は、2016年に現在の製油所・石油ターミナル(Q8 Kuwait Petroleum Europoort bvが所有していたKPユーロポート製油所を買収)の所有者となって以来、メンテナンスや安全対策にほとんど投資しておらず、ロッテルダムで事業を展開していた10年間でほぼ全員を解雇した。利益追求のために際限なく人を解雇し続けて、何の代償も伴わないなどとは考えられない。

 こうして、2016年にKPユーロポート製油所が買収された時点で、従業員の3分の1がすでに解雇されていた。202412月には、不利な市場状況(メンテナンスと投資の不足)を理由に自動車燃料の生産を中止し、260名の正社員のうちさらに160名が職を失った。そして、20257月、ガンボル・エナージー社ロッテルダムの石油ターミナル活動を閉鎖することを決定したことで、事実上、この拠点は終わってしまった。

 このような状況を考えれば、今回の現場に作業を監督し、爆発の危険性を監視し、職場全体の安全を保証できる十分な資格を持った社内人員がいたかどうかは疑問である。

■ ガンボル・エナージー社はロッテルダムの製油所をアントワープ製油所と同様に、単に金儲けの手段として買収した可能性が非常に高い。というのは、エネルギー集約型産業は、二酸化炭素排出量を削減するために、欧州連合から年間最大10億ユーロの補償金・免除・補助金を受け取っているからである。

 さらに、今回のメンテナンスを誰が依頼したのかはまだ明らかになっていない。ガンボル・エナージー社は約3年前にロッテルダム製油所を閉鎖しており、オランダ港湾ニュースサイトであるハーフェンニースHavennieuws)の推測では、近隣のロイヤル・ボパック社(Royal  Vopac)がガンボル・エナージー社の石油ターミナルを使用しているのではないかという。たとえば、ボパック社は2023年にガンボル・エナージー社アントワープ製油所を買収しており、105ヘクタールの敷地は、現在、タンク貯蔵設備になっている。



補 足

■「オランダ」(Netherland)は、西ヨーロッパに位置し、人口約1,760万人の立憲君主制の国である。東はドイツ、南はベルギーと国境を接し、北と西は北海に面する。オランダは世界において、報道の自由、経済的自由、人間開発指数、クオリティ・オブ・ライフについて最上位国の一つである。

「ロッテルダム港」(Rotterdam Port)は、欧州最大の港であり、原油や燃料の輸入・貯蔵の拠点である。ここには、欧州最大の製油所であるシェル社の施設があり、ほかペルニス工場やエクソンモービル社の製油所などがある。

■「発災の影響を受けたタンク」をグーグルマップで調べると、直径約50mであり、高さを1520mとすれば、容量は29,40039,300KLとなる。

■「ハーフェンニース」(Havennieuws)は、 オランダの独立系ニュースウェブサイトで、オランダとベルギーの港湾における海事・運輸・物流分野の動向を毎日報道しており、特にロッテルダム港に重点を置いている。

所 感

■ 今回の事故は、本文中に指摘されているように、①当該区域へのアクセスは適切に管理され、許可された従業員のみがアクセスできたか、②適切な個人用保護具が準備され、使用され、点検されていたか、③適切な道具が規定され、使用され、点検されていたか、④追加の規制・予防措置が策定され、遵守されていたか、⑤工事現場には、書面による指示が明確かつ目立つ場所に掲示されていたか、⑥従業員は必要な研修を修了していたかなど工事に関する安全管理の問題である。

 これは、米国CSB(化学物質安全性委員会)がまとめた「タンク内外の火気工事における人身事故を防ぐ7つの教訓」としてまとめられたつぎの教訓項目と同様である。①火気作業の代替方法の採用、②危険度の分析、③作業環境のモニタリング、④作業エリアのテスト、⑤着工許可の発行、徹底した訓練、 ⑦請負者への監督       

■ しかし、今回の事例はさらに石油ターミナルの施設を運営する根深い問題があるようだ。今回のメンテナンスを誰が依頼したのかはまだ明らかになっていないという。ガンボル・エナージー社は、製油所に続いて石油ターミナル活動を閉鎖することを決定し、事実上、石油ターミナルの操業は終わってしまったと思われる。このような状況を考えれば、今回の現場に作業を監督し、爆発の危険性を監視し、職場全体の安全を保証できる十分な資格を持った社内人員がいたかどうかは疑問であるという。


備 考

 本情報はつぎのインターネット情報に基づいてまとめたものである。

     Reuters.com, Blast at Rotterdam port energy facility kills one person, August 13,  2026

     Nbcnews.com, Explosion at Dutch port of Rotterdam leaves 1 dead, several injured, August 13,  2026

     Mykn.kuehne-nagel.com, Fatal explosion at Rotterdam storage facility prompts investigation, August 13,  2026

     Nltimes.nl, Explosion at Rotterdam port area leaves 1 dead, many wounded: Video, August 14,  2026

     Tankstorage.com, Fatal explosion at Rotterdam Europoort facility, August 13,  2026

     Joiff.com, NETHERLANDS – Explosion at Rotterdam port site kills one, injures several, August 18,  2026

     News.sky.com, One person killed and six injured after explosion at Rotterdam port, August 13,  2026

     Fr.euronews.com, Pays-Bas : une explosion dans une zone industrielle du port de Rotterdam fait un mort, August 13,  2026

     Lalibre.be, Rotterdam : une explosion dans une raffinerie de la zone portuaire fait au moins un mort, August 13,  2026

     7sur7.be, “Un incident s’est produit”: une explosion dans le port de Rotterdam fait au moins un mort, August 13,  2026

     Rts.ch, Une explosion dans une raffinerie du port de Rotterdam fait au moins un mort, August 13,  2026

     English.news.cn, One killed, six injured following explosion at Rotterdam port, August 13,  2026  

     Havennieuws.nl, Explosie met dodelijk slachtoffer en verschillende gewonden bij Zwitserse Gunvor Energy Rotterdam raffinarderij, August 13,  2026


後 記: 工事中のタンク人身事故であり、調査段階では多くの情報は出ないでしょうから、まとめはそれほどかからないと思っていたところ、オランダの独立系ニュースウェブサイトハーフェンニースからとんでもない記事が出てきました。オランダは技術のしっかりした国というイメージを持っていましたので、今回の現場に作業を監督し、爆発の危険性を監視し、職場全体の安全を保証できる十分な資格を持った社内人員がいたかどうかは疑問であるという記事には愕然(がくぜん)としました。オランダは、個人の自由を尊重する個人主義的な社会文化や効率重視の労働環境にあると言われていますが、今回の事例は、国や企業のありかたとしては、ちょっと違うのではないかと言いたくなりますね。

2026年9月5日土曜日

米国オクラホマ州グレンプールの石油貯蔵施設で落雷によってタンク火災3基

 今回は、2026817日(月)、米国オクラホマ州グレンプールにあるエクスプローラー・パイプライン社の貯槽施設において落雷によって天然ガソリン用タンクが火災になり、隣接する貯蔵タンクに延焼し、複数タンク火災となった事例を紹介します。

< 発災施設の概要 >

■ 発災があったのは、米国オクラホマ州(Oklahoma)グレンプール(Glenpool)にある石油企業のエクスプローラー・パイプライン社(Explorer Pipeline)の貯槽施設である。

■ 事故があったのは、グレンプールのハイウェイ75号線近くの西126番通りにあるエクスプローラー・パイプライン社の貯槽施設の天然ガソリン用のタンクである。

<事故の状況および影響>

事故の発生

■ 2026817日(月)午前830分頃、グレンプールにあるエクスプローラー・パイプライン社の貯槽施設のタンク1基が爆発し、火災が起こった。同時刻頃には悪天候による落雷が付近で報告されていた。

■ 最初、火災は1基のタンクで発生し、その後ほかの2基のタンクに延焼した。近くの住民のひとりは、炎が燃え上がる直前に雷光が落ちるのを目撃したといい、「実際に落雷するのを目撃しました。地面に落ちたように見えました。オクラホマではちょっとした嵐になると思っていたのに、落雷するのを見て、こんなに大変なことになってしまったんだと思いました」と語った。

■ 火災タンクから近くのタンク2基に延焼し、このうち1基のタンクも爆発した。これらのタンクには天然ガソリンが貯蔵されていた。激しい爆発で、貯蔵タンクの屋根が噴き飛び、大量の黒煙が空中に立ち昇った。火は数分以内に1基のタンクから3基のタンクに燃え広がった。火災となった3基目のタンクは、のちに消防隊によって消火された。

■ 発災にともない、グレンプール消防署の消防隊が出動した。火災現場には約50名の消防士が出動したほか、複数の地元消防署や専門の産業消防隊がグレンプール消防隊を支援した。

■ 支援に出動したのは、クッシング消防署、キーファー消防署、シンクレア製油所消防隊、コフィービル・リソーシズ消防隊、ウィリアムズ社(Williams Fire and Hazard Control)、USファイア・ポンプ社(U.S. Fire Pump)である。タルサ消防署も817日(月)の早い時間に現場に到着。このほか、環境保護庁(EPA)とタルサ郡緊急事態管理局も対応を支援した。

■ 地元消防隊が火災現場に張り付いている間、グレンプール市内の他の火災にはジェンクス消防署が対応した。

■ エクスプローラー・パイプライン社は、817日(月)、つぎのような声明を発表した。

「今朝早く、グレンプールにあるタンクファームで落雷によりタンクが炎上したとの連絡を受けました。地元消防署と緊急対応チームが現場に出動され、安全を確保しました。追加の消防隊も現場に向かっています。グレンプール警察は、キャスパー・アベニューとエルウッド間の126番ストリート・サウスを封鎖しました。地元緊急対応当局と連携して現場の監視を続けておりますので、一般の方々は現場付近に近づかないようお願いいたします」

■ 消防隊は、火災タンクに対して泡消火作業を行い、隣接するタンク群に延焼しないよう冷却作業に努めた。

■ 施設周辺の道路は、一般の人々が立ち入り禁止区域に入らないようにするため閉鎖された。

■ グレンプール公立学校および近隣住民に対して、予防的な屋内待避命令が出された。

■ 事故にともなう負傷者は出ていない。

■ ユーチューブなどでは、火災のニュースを伝える動画が投稿されている。

 YoutubeLighting Strikes Sparks Fire at Explorer Pipeline Tank Farm2026/8/19

 ●Edition.cnnVideo shows fuel tank explosion in Oklahoma2026/8/17

    ●FacebookWOW!  Hunter Hoffman captured the moment the lid exploded off an oil tank during a fire near Glenpool. Explorer Pipeline says a lightning2026/8/18

被 害

■ 天然ガソリン用タンク2基が火災で損壊した。火災になったもう1基のタンクは大きな火災には免れた。

■ タンク2基に入っていた天然ガソリンが焼失した。

■ 施設周辺の道路は一般の人々が立ち入り禁止区域になって閉鎖された。

■ 学校や近隣住民に対して屋内待避命令が出された。

■ 負傷者は出なかった。 

< 事故の原因 >

■ 事故原因は落雷によるとみられる。

< 対 応 >

■ グレンプール地区に対する外出自粛勧告は、 817日(月)午後2時頃に解除された。グレンプールの公立学校に対する勧告も解除された。

■ 818日(火)、火災は鎮火したとエクスプローラー・パイプライン社は述べた。泡消火による放射が功を奏し、約12時間かけて817日(月)の午後8時頃に火は消し止められた。消防隊は、タンクを冷却してベーパーの発生を最小限に抑えるため、夜通し泡消火水の放射作業を続けた。

■ 火災が消火され、清掃および廃棄物処理の浄化計画が実施されており、清掃作業中は一般市民に現場付近への立ち入りを控えるよう求めている。グレンプール消防署は、「今後数時間にわたり、約30分ごとにタンクに泡放射を続け、冷却が継続されるようにします」と述べた。

■ 大気質モニタリングの結果、周辺地域に汚染は見られず、浄化作業期間中も継続して実施される予定である。817日(月)の午前中の間、大気監視装置は異常を検知しておらず、当局は地上レベルでは煙による一般市民への危険はないと述べた。緊急事態管理当局による大気質モニタリングでも、地上レベルでは危険な濃度は検出されなかったという。

■ 消防隊などの緊急対応要員は、緊急対応業務からプロジェクト管理業務へと移行したと述べている。関係者によると、復旧作業は引き続き進められ、関係機関や対応パートナーと連携して作業を進めているという。エクスプローラー・パイプライン社は、ウィリアムズ社(Williams  Fire & Hazard Control)USファイア・ポンプ社が冷却作業の継続を主導していることを確認した。

■ グレンプール消防署は、対応が浄化作業に移行するのに伴い、支援的な役割に移行している。この種の事故対応を専門とするウィリアムズ社(Williams  Fire & Hazard Control)USファイア・ポンプ社が現場での復旧・修復作業を主導する。

■ 現場は封じ込められており、水や泡が区域外に流出するのを防ぐため、二重の堤防が設置されている。

バキューム吸引装置と貯蔵タンクを使用して、現場から廃水を安全に除去している。現場には警備員が配置され、立ち入りは厳しく制限されている。当局は、浄化作業が行われている間は、引き続き現場付近に近づかないよう一般市民に呼びかけた。


■ 原因は落雷とみられているが、エクスプローラー・パイプライン社または調査機関が最終的な結論を発表するまで、暫定的なものとみなされる。

■ 過去にグレンプールでは3件のタンク火災が発生しており、プロセス安全に関わる関係者にとって最も重要な点は、おそらく、つぎの点だろう。

 ● グレンプールのタンクファームでは、過去に複数回のタンク火災が発生しており、少なくとも2件は落雷が原因とされている。同じエリアで繰り返し発火メカニズムが発生するということは、技術的に非常に重要な兆候である。つまり、既存の落雷対策、ボンディング、接地、またはベーパー空間制御対策が、当該タンクの構成や製品の揮発性といった特定の要因によるリスクギャップを完全に解消できていない可能性を示唆している。

 ● これは特定の事業者の慣行を批判するものではなく、業界全体に共通する傾向であり、検討に値する。なぜなら、揮発性炭化水素を扱う大気圧貯蔵タンクは、落雷の多い地域(米国中部地域の大部分を含む)の石油・ガス、石油化学、燃料流通事業において広く普及しているからである。

 ● グレンプールのタンク火災では負傷者はなく、死者も出ずに鎮火した。これは緊急対応が適切に実施されたことを示す結果と言える。しかし、プロセス安全性の観点からより重要なのは、グレンプールのタンク施設で落雷による火災が発生したのは今回が初めてではないという事実である。同じ施設で、同じ起爆メカニズムによる発火が繰り返されるということは、落雷対策、危険区域の分類、緊急隔離といった既存のリスク管理策が、当該施設特有の危険要因に対して十分な対策となっていない可能性を示唆する技術的な兆候である。

■ グレンプールのタンクファームでは、過去20年余りの間に2003年と2006年に続き、3度目の大規模火災となった。2003年には、今回の施設に隣接するコノコフィリップス社のタンクファームで発生した火災があり、静電気が原因である可能性が高い。この事故を受けて、国家運輸安全委員会(NTSB)は緊急時対応計画に関する報告書を作成し、地域の学校は授業を全面的に中止することにしたが、月曜日の事故ではそのような措置は必要なかった。2006612日には、グレンプールにあるエクスプローラー・パイプライン社の無鉛ガソリンタンクに落雷があり、火災となった。この火災の鎮火には1011時間かかり、推定650万ドルの物的損害が発生した。2026817日に発生した火災は、無鉛ガソリンではなく天然ガソリンのタンクで完全に消火されるまでに約12時間燃え続けた。

補 足

■「オクラホマ州」(Oklahoma)は、米国中南部に位置し、隣接するテキサス州の北にあるパンハンドル(取っ手つきフライパン)の形をした州である。日本の約半分ほどの面積の土地に約396万人しか住んでいないので、人口密度は低く、ゆったりしている。オクラホマには山がほとんどなく、見渡す限り、地平線である。オクラホマシティとタルサという二大都市から少し離れれば、草原が延々と続き、ほとんどは牛がのんびり歩く農場か、オイルやガスを掘削する油田・ガス田である。大陸性気候のオクラホマ州では、天気が急激に変わる。35月頃は通り道にある家々をまるごと吹き飛ばしてしまうほどの強力なトルネード(竜巻)が発生する。

「グレンプール(Glenpool)は、オクラホマ州タルサ郡にあり、人口約14,000人の市である。グレンプールは、1905年に石油が発見されたことで有名であり、その発見が経済ブームを引き起こし、タルサとその周辺地域の成長を促進した。

■「天然ガソリン」(Natural Gasoline)とは、天然ガス田や油田から採れる液体天然ガスから採取され、液体天然ガスから分離・回収される液体のうち、プロパンやブタンなどのLPガス分を除いたガソリン状の炭化水素液体である。成分はペンタン以上の比較的分子量の大きい炭化水素を主成分としている。ガソリンと同様であるが、製油所で得られる直留ガソリンに比べて軽質分の割合が多く、より揮発性に富む。天然ガソリンは、自動車ガソリン用のブレンド基材、工業用揮発油(溶剤など)、化学工業原料などに用いられる。

■「エクスプローラー・パイプライン社」(Explorer Pipeline)は、エネルギー企業で精製石油製品や原油を輸送・保管するエネルギー輸送業務を行っている。グレンプールの施設は、テキサス州、オクラホマ州、中西部を横断して自動車用ガソリン、ディーゼル燃料、ジェット燃料を輸送する全長1,800マイル(約2,900km)のパイプラインシステムの重要な拠点となっている。施設には30基以上のタンクがあり、総貯蔵容量は約340万バレルである。一方、2006年には、「米国オクラホマ州グレンプール火災(2006年)の消火活動」(201212月)の同施設でタンク火災を起こしている。

■「発災タンク」の大きさなどの仕様は報じられていない。グーグルマップで調べると、火災エリアのタンク4基はほぼ同じ大きさで、直径は約44mである。高さを1015mとすれば、容量は15,20022,800KLである。タンク型式は、外観上、コーンルーフ型固定屋根型式であり、通常、内液がガソリンの場合、内部浮き屋根式である。2006年の事例では、内部浮き屋根式のタンクだったので、おそらく、今回の事例でも内部浮き屋根式だったと思われる。

所 感 

■ 今回の事故原因は落雷による爆発・火災と報じられている。火災の状況は、数分以内に1基のタンクから3基のタンクに燃え広がったという。火災タンクから近くのタンク2基に延焼し、このうち1基のタンクも爆発した。爆発によって2基の貯蔵タンクの屋根が噴き飛んだ。火災となった3基目のタンクは、のちに消防隊によって消火されたが、2基のタンクは側板が座屈するほどまで全面火災の様相を呈した。

 タンク内液は「天然ガソリン」(Natural Gasoline)で、天然ガス田から採れる液体天然ガスからプロパンなどのLPガス分を除いたガソリン状の炭化水素液体で、製油所で得られる直留ガソリンに比べて軽質分の割合が多く、より揮発性に富むという。落雷などでタンク複数火災を起こした例としては、つぎのような事例がある。

 ●「マレーシアの製油所で原油タンク火災、負傷者4名」 20187月)

 ●「キューバのタンク基地で落雷による原油タンク火災4基、死傷者162名」20228月)

 今回の事例では、内液の天然ガソリンの特殊性なのか、本文中に指摘されている「落雷対策・危険区域の分類・緊急隔離といったリスク管理策が当該施設特有の危険要因に対して十分な対策となっていない」と感じる事例である。

■ 消火戦略には積極的戦略・防御的戦略・不介入戦略の3つがあり、「消防隊は、火災タンクに対して泡消火作業を行い、隣接するタンク群に延焼しないよう冷却作業に努めた」と積極的戦略をとっているように報じられているが、被災写真を見ると、防御的戦略または不介入戦略をとり、消火活動はとっていない。日本の法令では、直径34m45mのタンクであれば、10,000リットル/分の大容量泡放射砲システム1台で消火できることになっている。しかし、これはタンク1基が火災になっている場合である。今回のように直径44mのタンクが複数基全面火災になっている場合、たとえ1基を消火できても、火災タンクの火ですぐに火災を起こしてしまうことは容易に考えられる。また、タンク全面火災では、ボイルオーバー発生を考慮する必要がある。ガソリンや灯油といった精製された油製品では、原油のようにホットゾーンを生じることはなく、ボイルオーバーは発生することはないが、今回の天然ガソリン火災の場合、断言できるのか分からない。

 支援に出動したウィリアムズ社(Williams  Fire & Hazard Control)は、 20066月に起こったエクスプローラー・パイプライン社の貯蔵タンク(直径43m)全面火災を大容量泡放射砲システムで消火に成功させた実績のある消防会社であるが、今回の火災状況を見て防御的戦略または不介入戦略をとったものではないだろうか。注;米国オクラホマ州グレンプール火災(2006年)の消火活動」を参照。


備 考

 本情報はつぎのインターネット情報に基づいてまとめたものである。

     Newson6.com, Cleanup efforts underway after Glenpool pipeline fire, August  24, 2026

     Tankstorage.com, Fire at Explorer Pipeline Glenpool tank farm, August  18, 2026

     Koco.com, Air quality monitoring ongoing after lightning sparks massive fire at Glenpool gas tank farm, August  18, 2026

     Tanktransport.com, Explorer Pipeline Halts Glenpool Movements After Three-Tank Fire, August  18, 2026

     Vigilantally.com, Glenpool Tank Fire: What the Explorer Pipeline Incident Reveals About Tank Farm Safety, August  18, 2026

     Okcfox.com, Fire out at Glenpool pipeline facility, cleanup process begins, August  18, 2026

     Kjrh.com, Glenpool tank fire out after 12 hours, neighbors say third blaze in 20 years, August  18, 2026

     News10.com, Gas tanks explode at Oklahoma pipeline facility after lightning strike, August  18, 2026

     Bicmagazine.com, Oklahoma tank fire extinguished as crews begin cleanup, August  18, 2026

     Chemanalyst.com, Lightning Sparks Tank Fire at Explorer Pipeline facility in Glenpool, August  18, 2026

     Hazardexonthenet.net, Lightning strike triggers tank explosion and fire at US fuel storage facility, August  18, 2026

     Watchers.news, Lightning strike triggers fire in three natural gasoline tanks at Explorer Pipeline facility in Glenpool, Oklahoma, August  19, 2026

     Pipeline-journal.net, Fire at Oklahoma Depot Forces Major Pipeline Shutdown, Raising Fuel Supply Concerns, August  18, 2026

     Advisorsreports.com, Lightning strikes Shell, Phillips 66-backed pipeline giant’s Oklahoma tank farm, August  19, 2026


後 記: 久しく無かった大規模の石油貯槽施設におけるタンク複数基火災の事例でした。また、2006年に火災事故のあった「米国オクラホマ州グレンプール火災(2006年)の消火活動」の発災事業所であり、以前の関係ブログを読み返してみました。今回の事例のメディア情報では、火災の状況と消防活動がよくわかりませんでした。短時間で鎮火までに至った事例であるならば、そのようなことがありますが、今回は3基火災で約12時間かかっていますので、取材する時間はあったでしょう。たとえば、タンク火災が2基だったのか、3基だったのか記事によって異なりました。また、消防隊の消火活動によって鎮火したという記事が大半でしたが、被災写真を見ると、現場で消火活動を行っている映像はありません。ウィリアムズ社という実績のある消防会社が参画していることが、記事や映像を見ていろいろ考える参考になりました。