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2024年4月22日月曜日

ブラジル・ペトロブラス社の製油所で工事中のタンク設備で爆発、負傷者4名

 今回は、2024125日(木)、ブラジルのペルナンブコ州イポジュカにあるペトロブラス社のアブレウ・エ・リマ製油所においてメンテナンス中の石油貯蔵タンク設備で爆発が起こり、4名の負傷者が出た事例を紹介します。

< 発災施設の概要 >

■ 発災があったのは、ブラジル(Brasil)ペルナンブコ州(Pernambuco)イポジュカ(Ipojuca)にあるペトロブラス社(Petrobras)のアブレウ・エ・リマ製油所(Refinaria Abreu e LimaRNEST)である。現在、製油所は約10万バレル/日の原油を精製している。

■ 事故があったのは、製油所内にある貯蔵タンク設備である。

<事故の状況および影響>

事故の発生

■ 2024125日(木)午後330分頃、製油所で爆発が起きた。

■ 発災に伴い、消防隊が出動した。

■ 事故により作業員4名が負傷した。負傷者は火傷を負っており、救急車で病院へ搬送された。

■ アブレウ・エ・リマ製油所の経営陣は、作業員が石油タンクのメンテナンスをしており、その過程で火花が発生し、爆発が起こり、火災が発生したと話している。

■ しかし、ペトロブラス社は製油所で爆発があったことを否定し、「火花が発生し、その後の炎によるもので、すぐに制御された」と述べている。

■ アブレウ・エ・リマ製油所では、社内チームが招集され、事故後の対応に取り組んだ。

■ ペトロブラス社は、「火災はすぐに鎮火し、原因が調査されており、製油所の生産装置は影響なく正常に稼働している」と述べた。

■ 事故のあったタンクはメンテナンスのために開放されたが、従業員がタンクを開けたところ、炎とともに熱が放出したという。

■ ユーチューブでは、事故に関する映像が投稿されている。主なものはつぎのとおり。

 ● YoutubeExplosão na refinaria Abreu e Lima, em (PE), deixa trabalhadores feridos2024/1/26

Youtube、「Explosão em tanque de óleo na refinaria Abreu e Lima (PE) deixa 4 operários feridos2024/1/26

被 害

■ 貯蔵タンク1基が一部損傷した。

■ 負傷者が4名出た。

< 事故の原因 >

■ 事故原因は貯蔵タンクのメンテナンス中の爆発による。詳細は不明である。

< 対 応 >

■ 火傷を負った負傷者のひとりは退院したが、そのほかの3名は治療を受けるため、入院している。

■ アブレウ・エ・リマ製油所では、2022年に可燃性製品の漏洩により火災が発生したが、負傷者は出なかった。その1年前の20219月、外部委託会社の従業員がアブレウ・エ・リマ製油所にある圧縮空気装置の機器のメンテナンス中に死亡した事例がある。  

補 足

「ブラジル」(Brasil)は、正式にはブラジル連邦共和国で、南アメリカに位置する人口約21,340万人の連邦共和制国家である。州はブラジル連邦単位(Unidades Federativas do Brasil) から成り立っており、ある程度の自治権 (自治、自主規制、自己徴収を備えた組織で、独自の政府と憲法を備えていて、これらが集まって連邦共和国を形成している。ブラジルには26の州があり、各州政府は行政府、立法府、司法府をもっている。

「ペルナンブコ州」(Pernambuco)は、ブラジル北東部に位置し、東は大西洋に面しており、人口約930万人で、州都はレシフェである。

「イポジュカ」(Ipouca)は、ペルナンブコ州にある自治体で、人口約98,000人の町である。

■「ペトロブラス社」(Petrobras)は、1953年にアマゾンのウルクー油田開発のために設立され、現在は南半球最大の石油掘削会社で広く石油産業に携わっている。ブラジルのリオデジャネイロ市に本社を置き、慣例としてブラジル石油会社あるいはブラジル石油公社と表記されることのある半官半民企業である。

■「アブレウ・エ・リマ製油所」(Refinaria Abreu e LimaRNEST、 英語;Abreu e Lima Refinery)のペルナンブコ州のイポジュカにあり、1日当たり10万バレルの石油製品を生産する認可を受けている。アブレウ・エ・リマ製油所は完全に国の技術によって建設された最初の製油所である。ペトロブラス社は、製油所が国内で建設された中で最も近代的なものになると考えている。

■「発災タンク」の仕様について何も報じられていない。事故は“マラカナン”と呼ばれるタイプのタンクで起きたという報道があるが、この呼び名の根拠は分からない。映像で見ると、発災タンクは浮き屋根式タンクと思われる。製油所の境界柵近くにある浮き屋根式タンクは同径のタンクが8基あるので、この中の1基とみられる。直径は約95mであり、高さを20mとすれば、容量は141,700KLとなり、日本の鹿児島にある JX喜入石油基地㈱の容量160,000KL(直径100m×高さ23m)のタンクに匹敵する超大型タンクである。

所 感

■ 今回のタンク開放工事に関わる人身事故の原因ははっきりしない。発災会社であるペトロブラス社が製油所で爆発があったことを否定し、「火花が発生し、その後の炎によるもので、すぐに制御された」と述べており、発災をできるだけ小さく見せようとする失敗学の典型である。失敗事例は活かすことで、再発をなくすよう取り組むべきである。

■ 原因は、米国CSB(化学物質安全性委員会)がまとめた「タンク内外の火気工事における人身事故を防ぐ7つの教訓」20117月)のうちのいずれかと思われる。

   ①火気作業の代替方法の採用  ⑤着工許可の発行

   ②危険度の分析        ⑥徹底した訓練

   ③作業環境のモニタリング   ⑦請負者への監督

   ④作業エリアのテスト 

■ 開放工事中のタンク事故は無くならず、つぎのような事例を紹介してきた。

  ●「フランスで内部浮き屋根式タンクの清掃工事中に爆発」20159月)

  ●「エクソンモービル名古屋油槽所の工事中タンクの火災事故」20164月)

  ●「太陽石油の原油タンク清掃工事中の火災事故」20173月)

  ●「東燃ゼネラル和歌山工場の清掃中原油タンクの火災原因(最終報告)」20176月)


備 考

 本情報はつぎのインターネット情報に基づいてまとめたものである。

     G1.globo.com,  Explosão em tanque de petróleo deixa quatro feridos na Refinaria Abreu e Lima; VÍDEO,  January  25,  2024

     Cnnbrasil.com.br, Explosão na Refinaria Abreu e Lima (PE) deixa feridos,  January  25,  2024

     Correiobraziliense.com.br, Explosão em tanque da refinaria Abreu e Lima deixa quatro feridos em PE,  January  25,  2024

     Exame.com, Tanque da Refinaria Abreu e Lima explode e deixa trabalhadores feridos; veja vídeo,  January  25,  2024

     Petronoticias.com.br, VEJA O VÍDEO DA EXPLOSÃO DE TANQUE NA REFINARIA ABREU E LIMA. ACIDENTE DEIXOU QUATRO TRABALHADORES FERIDOS, January 25, 2024

     Diariodepernambuco.com.br, Vídeo: Explosão de tanque na Refinaria Abreu e Lima deixa feridos,  January  25,  2024

     Istoedinheiro.com.br, Refinaria Abreu e Lima tem acidente durante manutenção de tanque de petróleo,  January  25,  2024


後 記: 発災事業所が事故事例を活かそうという意識がなければ、報道には限界があるという事例です。最近、感じているのは、うそをついてもよいという風潮になっているということです。戦争では、ある戦術が大失敗しても、作戦上、戦果は大成功とうそを言ってもよいという異常な考え方です。これが戦争だけの話でなく、日常化してくるのがこわい話です。 SNS(ソーシャル・ネットワーキング・サービス)では、フェーク・ニュースという言葉が出始めたと思ったら、最近ではもっと質(たち)が悪く、有名人を騙(かた)る投資詐欺が話題になっています。その投資詐欺のアプリは騙られた人が削除を依頼してもそのままになっているそうで、何ともおかしな話です。今回の事例のように被災写真が無いのも困りますが、別な事例の写真やフェーク写真が出回るのはもっと迷惑な話です。 

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