今回は、2022年2月24日(木)、ロシアがウクライナに侵攻し、軍事衝突が起こりましたが、ここでは石油貯蔵所へのミサイル攻撃や砲撃によるタンク火災やパイプライン爆発に焦点を当てて紹介します。
< 発災施設の概要 >
■ 発災施設は、ウクライナ(Ukraine)の各地にある石油貯蔵所である。
■ 2022年2月24日(木)、ロシアがウクライナに侵攻し、軍事衝突が起こった。
< 事故の状況および影響
>
事故の発生
■ 2月27日(日)夜明け前、キエフ(Kyiv)南西にあるヴァシリキーウ(Vasylkiv)の空軍基地の石油貯蔵所で貯蔵タンクが火災となった。空軍基地の主要滑走路の南西にある石油貯蔵エリアで、爆発があった後、燃料タンクが燃えているという。ヴァシリキーウには複数の燃料タンクがあり、ウクライナ当局によると、この地域は2月25日(金)の夜に激しい戦闘が行われた場所だった。
■ ロシアがウクライナへの攻撃を仕掛けているが、激しい抵抗によって次の段階であると思われる燃料施設と飛行場を標的にしていると、 2月27日(日)、中東のメディアであるアルジャジーラ(Al-Jazeera)は報じている。
■ 2月27日(日)夜明け前、ロシア軍がハリコフ(Kharkiv)の天然ガスパイプラインを爆破した。国家特別通信情報保護局は、キノコ雲のように見える爆発が環境の大惨事を引き起こす可能性があると警告し、住民に湿った布やガーゼで窓を覆い、たくさんの液体を飲むようにアドバイスしたという。
■ 2月26日(土)夕方、ルハンシク州(Luhansk)の親ロシア派が実効支配している“ルガンスク人民共和国” では、ウクライナのミサイルがロベンキー(Rovenky)の町の石油ターミナルを爆破した。 200KLのディーゼル燃料タンクが爆発し、その後火災が起こった。
■ 2月26日(土)、ドネツク州(Donetsk)の親ロシア派が実効支配している“ドネツク人民共和国” では、ウクライナ軍が石油貯蔵施設でミサイルを発射し、1発が施設に着弾したが、炎上は回避されたという。
■ 3月3日(木)、ウクライナ北部のチェルニゴフ(Chernigov)で石油施設のタンクがロシア軍の砲撃を受けて炎上した。容量3,000KL(5,000KLという情報もある)のディーゼル燃料タンクが火災となり、消火活動が行われた。火災の状況は日本のテレビで放映され、ユーチューブに投稿されている。(YouTube、「 【速報】ロシア軍が石油施設を攻撃」2022/03/03を参照)
被 害
■ 各地の石油貯蔵所などの石油タンクが砲撃を受け、火災となった。
■ 石油タンクなどの石油施設への砲撃による死傷者は分かっていない。
< 事故の原因 >
■ 戦争による軍事行動としか言いようがない。(平常時の“故意の過失”に該当)
■ ロシアがウクライナに侵攻した後、ウクライナにある各地の石油貯蔵所がミサイル攻撃や砲撃によるタンク火災が発生している。これはタンク事故の範ちゅうを越えた戦争による軍事行動である。平常時の“故意の過失”に該当するものであるが、戦争であれば、認められるものだろうか。
ロシアがウクライナ側の石油施設に対して行われている軍事作戦によるほか、ウクライナの親ロシア派が実効支配している“ルガンスク人民共和国”
や“ドネツク人民共和国” のタンク貯蔵所へウクライナ軍が軍事作戦を実施している。
■ 貯蔵タンクへのミサイル攻撃や砲撃は比較的限定されているようで、軍用車両の燃料に使用されるディーゼル燃料タンクが狙われていると思われる。過去にウクライナのタンク事故で紹介したつぎのような石油貯蔵所も軍事作戦の対象になっている。
●「ウクライナの石油貯蔵施設でタンク火災後に爆発炎上、死者5名」(2015年6月) ;本事例はヴァシリキーウ地区の石油貯蔵施設のタンク火災事故であるが、施設は火災事故で全損しており、今回は隣接する石油貯蔵所が狙われたものと思われる。
●「ウクライナの石油貯蔵所でドローン攻撃によるタンク火災か」(2021年9月) ;本事例はドネツク州のキロフスキー地区の石油貯蔵所のタンク火災事故であるが、発災当時から疑問のある事故だった。
備 考
本情報はつぎのインターネット情報に基づいてまとめたものである。
・Youtube.com, 【速報】ロシア軍が石油施設を攻撃, March 03,
2022
・Yews.yahoo.co.jp, ウクライナとロシア、2回目の“交渉” 攻撃は続く…石油タンクに砲撃も,
March 04, 2022
・Youtube.com, Fuel tanks burn after explosions near Vasylkiv(CNN News), Ukraine, February
27, 2022
・Edition.cnn.com, Oil tanks on fire at Vasylkiv Air Base,
Ukraine, February 26,
2022
・Aljazeera.com, Russia hits Ukrainian oil and gas facilities in wave
of attacks, Ukraine, February 27,
2022
・Republicworld.com, Russia Hits Oil Depot In Ukraine's Vasylkiv Near
Kyiv, Residents Asked To Take Shelter,
February 27, 2022
・Nbcnews.com, Missiles hit Vasylkiv, oil plant on fire, officials
say, February 27,
2022
・Asahi.com, Russia hits Ukraine fuel supplies, airfields in new
attacks, February 27,
2022
・Tass.com, LPR says blast at its oil storage facility caused by
strike of Ukrainian Tochka-U missile,
February 27, 2022
・Theguardian.com, Vasylkiv: why this small Ukrainian town is now a
big Russian target, February 28,
2022
後 記: 今回はタンク事故ではなく、戦争による軍事行動であり、ブログの対象ではありませんが、テレビでタンク火災の状況が放映されたので、調べることとしました。しかし、戦争時の限られた報道で、ツイッターによる短文の情報もあり、真偽のほどは分からないというのが本音です。2021年9月のドネツク州のキロフスキー地区の石油貯蔵所のタンク火災事故を調べたときは、ウクライナの政情が理解できなかったのですが、今回はドネツク州と“ドネツク人民共和国”の関係などは分かっていました。2014年3月にクリミア半島についてロシアによるクリミア自治共和国の編入問題があり、このロシアの“成功体験”(ウクライナや西側諸国からすれば“失敗体験”)
が尾を引いていると感じます。
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