今回は、2021年1月5日(火)、米国のアイオワ州クリントン市にあるヒーロー・ビーエックス社のバイオディーゼルのプラントが爆発・火災となり、メタノール・タンクに延焼の危険が迫った事故を紹介します。
< 発災施設の概要 >
■ 発災があったのは、米国のアイオワ州(Iowa)クリントン郡(Clinton)クリントン市にあるヒーロー・ビーエックス社(Hero BX)の工場である。工場はバイオディーゼルを製造しており、生産能力は年間1,000万ガロン(37,800KL)である。
■ 事故があったのは、クリントンの南で44通り5640番地にあるバイオディーゼルの製造プラントである。
< 事故の状況および影響
>
事故の発生
■ 2021年1月5日(火)午前4時頃、バイオディーゼルの製造プラントで爆発が起き、火災となった。
■ 発災に伴い、クリントン消防署の消防隊が出動した。
■ 消防隊が現場に到着したとき、隊員は火災が施設の南西部から広がり、高さ約60フィート(18m)の炎が上がっているのを見た。
■ 事故発生によりプラントの操業は停止された。また、プラントの従業員は退避して負傷者はいなかった。
■ ヒーロー・ビーエックス社は到着した消防隊に、火災の炎と熱がメタノール・タンクに達することを恐れている旨、伝えた。
■ しかし、消防隊は利用できる消火用水に課題のあることが分かった。消防隊は第一線で活動する消防士のために、水槽車(給水車)を使用せざるを得なかった。消防隊は44通りの南の川から取水し、施設の駐車場の水槽車に中継するようにした。そして、消防隊は2基のタンクを冷却し、防御的消火活動を始めた。
被 害
■ バイオディーゼルの製造プラントが爆発・火災で設備に被害が出た。
■ メタノール・タンクに延焼の危険があったが、冷却対応で回避した。
■ 負傷者は出なかった。
< 事故の原因 >
■ 事故の原因は、調査中である。
< 対 応 >
■ 消防活動はクリントン消防署のほか、アイオワ州のカマンチェ消防署とイリノイ州のフルトン消防署が相互応援で対応に参加した。
■ タンクへの延焼の脅威が無くなり、タンクの冷却も十分だと判断されてから、消防隊は1-3/4インチ径の消防ホースを使用して建物の火災に対応した。
■ 火災時に漏洩した工業用熱媒体油が施設全体に広がっていた。ハズマット隊が対応し、異常事態対応本部に連絡した。本部は、この時点で工業用熱媒体油の漏洩は封じ込められていると判断し、このあとはヒーロー・ビーエックス社がクリーンアップの責任を負うこととした。
■ 消防隊は火災を消し、1月5日(火)午前8時45分まで現場にいた。
補 足
■「アイオワ州」(Iowa)は、米国の中西部に位置し、人口約315万人の州である。州都はデモイン(人口約21万人)である。
「クリントン郡」(Clinton)は、アイオワ州の東部に位置する人口約50,100人の郡である。
「クリントン市」(Clinton)は、クリントン郡の東部に位置し、クリントン郡の郡庁所在地で、人口約27,000人の市である。
■「ヒーロー・ビーエックス社」(Hero BX)は、2005年設立されたバイオ燃料を製造・販売するエネルギー会社である。旧名はLake Erie Bioifuelといい、ペンシルバニア州エリーでバイオディーゼルの製造に携わっていた。クリントンの施設(旧; Clinton County Biodiesel Facility)は2018年にTenaska Commodities LLCから買収したものである。バイオディーゼルの生産能力は年間1,000万ガロン(37,800KL)であることは同社のウェブサイトに掲載されているが、詳細については分からない。
■ 延焼する恐れのあったタンクはメタノール・タンクで2基と報じられているが、グーグルマップで調べても、よく分からない。大型タンクが1基あるが、そばには小型タンクが2基ある。クリントンの施設はもともとバイオディーゼル製造施設としては貯蔵タンクが少ないように思える。(ペンシルバニア州の施設に比べても少ない)
所 感
■ 今回の事故は午前4時頃に発生しているので、人が介在しなかった設備異常か運転異常によるものではないだろうか。ヒーロー・ビーエックス社はバイオ燃料事業について、近年、積極的に展開しているようで、2018年に買収して得た生産能力37,800KL/年(103KL/日)のクリントンの製造プラントについて設備改造や運転変更を行っている可能性はあるように思う。
■ 事故情報のほとんどは地元消防署から発信されたものなので、消火活動の状況については比較的詳しい情報が報じられている。しかし、映像がまったく無く、例えば、2016年4月で起こった「インドのバイオ燃料製造施設で火災、タンク12基に延焼」の事故情報に比べると、メタノール・タンクに危険が迫る緊張感は薄い印象である。
本情報はつぎのインターネット情報に基づいてまとめたものである。
・Powderbulksolids.com, Explosion and Fire Reported at Biofuels Plant
in Iowa, January 06, 2021
・Clintonherald.com,
Firefighters battle 60-foot flames at biodiesel plant, January 06, 2021
・Industrialfireworld.com, Explosion, Fire Reported at Iowa Biofuels
Plant, January 08, 2021
・Issource.com, Explosion, Blast, Fire At IA Biodiesel Plant,
January 08, 2021
後 記: 今回の事故を初めて知ったのは、バイオ燃料プラントが爆発・火災を起こし、貯蔵タンクに迫ったという報道でした。タンクがどのような危険な状態になったのか気になり、調べました。午前4時頃の事故で午前8時頃には火は消え、人が活動し始めたときには事故は終わっています。コロナ禍でもあり、取材されたような状況ではなく、事故情報はあまり深化しませんでした。ヒーロー・ビーエックス(Hero BX)という会社は、英雄(ヒーロー)という名をつけるくらいですので、小さな“アメリカン・ドリーム”を感じさせますが、クリントンの施設内容はまったく分かりません。事故から2週間になりますが、同社のウェブサイトの“ニュース”欄には事故について言及されていません。華々しい“ヒーロー”ですが、足が地についていないというのが率直な印象です。
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