(写真はThepeninsulaqatar.comから引用)
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< 発災施設の概要 >
■ 事故があったのは、トルコ(Turkey)のイズミル県(Izmir)アリアガ市(Aliaga)にあるターキッシュ・ペトロリアム・リファイナリーズ社(Turkish
Petroleum Refineries Corp.: Tupras)のアリアガ製油所(Aliaga
Refinery)である。アリアガ製油所の精製能力は年間1,100万トン(20万バレル/日相当)である。
■ 発災があったのは、アリアガ製油所の貯蔵タンク地区にあるナフサ用の浮き屋根式タンクである。
トルコのターキッシュ・ペトロリアム・リファイナリーズ社のアリアガ製油所付近
(写真はGoogleMapから引用)
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< 事故の状況および影響 >
事故の発生
■ 2017年10月11日(水)午前9時25分頃、ナフサ用浮き屋根式タンクで爆発が起った。
■ 事故に伴い、消防署が出動した。爆発があったのち、制圧するほどの火災は起こらなかった。
■ 爆発のあったタンクは、長期間使用されていなかった後のメンテナンスの実施中だった。
■ タンク内では、清掃と溶接作業が行われており、タンク内にいた請負会社の作業員4名が重傷を負い病院に搬送され、また作業員1名が治療を受けている。その後、重傷の4名の作業員の死亡が確認された。
■ 事故に伴う周辺環境への影響はなく、製油所の稼動は通常どおり継続している。
被 害
■ 浮き屋根式タンク内での爆発によって、タンクに物損が出たと思われるが、詳細はわからない。
■ 事故に伴い、死者4名、負傷1名の労働災害が発生した。
(写真はKamuoyu.orgから引用)
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< 事故の原因 >
■ 事故原因は、浮き屋根式タンクの浮き屋根下部に滞留していた可燃性ガスに溶接などの火気によって引火・爆発したものと思われる。
■ タンク内に可燃性ガス滞留の原因を含め、調査が行われている。
< 対 応 >
■ ターキッシュ・ペトロリアム・リファイナリーズ社は爆発の原因について専門家による調査を始めた。
■ 労働社会保障大臣は、事故を究明するため4名の検査官を任命し、主導的に調査を開始するよう指示した。
■ ターキッシュ・ペトロリアム・リファイナリーズ社は、プラントへの入構前にすべての従業員と請負会社の社員に対して作業安全基準について教育・訓練を実施しているが、事故発生を鑑みて作業安全のプロセスと作業方法について全面的に見直すと語った。
■ 10月12日(木)、当局は爆発事故の容疑で7人を逮捕し、うち4人は拘留され、3人は監察処分で釈放された。捜査の対象者になっているのは、ターキッシュ・ペトロリアム・リファイナリーズ社のオペレーション・チーフ・エンジニアの3名、オペレーション・セーフティ・スペシャリスト1名、下請け会社のプロジェクト役員1名、サイト・マネージャー1名、組立工チーフ1名の7名である。しかし、4人に対する逮捕理由の詳細は発表されていない。
■ ターキッシュ・ペトロリアム・リファイナリーズ社における主な事故はつぎのとおりである。
● 1999年8月17日に起った地震の日に、イズミット製油所(22.6万バレル/日相当)で大火災が起こり、3日間燃え続けた。
● 2015年7月、アリアガ製油所(20万バレル/日相当)で火災事故があった。
● 2016年2月、クルックカレ製油所(11.2万バレル/日相当)で火災事故があった。
■ トルコの労働安全衛生協議会の報告書によると、2017年1~9月の9か月間に労働災害で死亡した労働者は1,485人で、うち9月には147人が亡くなっている。
補 足
■ 「トルコ」(Turkey)は、正式にはトルコ共和国で、西アジアのアナトリア半島と東ヨーロッパのバルカン半島の東トラキア地方を領有するアジアとヨーロッパにまたがる国で、人口約7,500万人、首都はアンカラである。
「イズミル県」(Izmir)は、トルコの西部に位置し、人口は約377万人である。「アリアガ市」(Aliaga)はイズミル県のエーゲ海側に位置し、人口約76,000人の港湾都市である。
トルコの位置 (図はYonlee.hatenablog.comから引用)
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■ 「ターキッシュ・ペトロリアム・リファイナリーズ社(Turkish
Petroleum Refineries Corp.: Tupras)は、1983年にトルコ政府によって設立された石油精製会社で、4つの製油所を所有している。アリアガ製油所(Aliaga
Refinery)の精製能力は年間1,100万トン(20万バレル/日相当)である。
ターキッシュ・ペトロリアム・リファイナリーズ社のアリアガ製油所
(写真はOgj.comから引用)
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所 感
■ この事故の詳細は分からないが、印象はつぎのとおりである。
● 「タンク内外の火気工事における人身事故を防ぐ7つの教訓」が活かされていない事例だと思われる。
● 類似事例としては、2014年2月の「バングラデシュの石油貯蔵所で火災によって死傷者9名」や2009年5月の米国アーカンソー州にあるテプコ社の石油貯蔵所で開放中のタンクが爆発した事故が挙げられるだろう。
● 事故要因に当該事業所(ターキッシュ・ペトロリアム・リファイナリーズ社)のオペレーション・エンジニアの運転管理に問題があったとみられるところからすれば、タンクの種類は異なるが、2012年6月の「太陽石油の球形タンク工事中火災」のようにタンク接続配管の縁切りにミスのあった可能性があろう。
■ トルコにおける労働災害死亡事故は、2017年1~9月の9か月間で1,485人とある。これは年間1,980人に相当する。日本の労働基準局によると、日本の労働災害死亡者数は2016年が928人で過去最少となっている。しかし、日本は10年ほど前に今のトルコのレベルであり、減少してきたとはいえ、必ずしも少ないと言い切れない状況である。
日本における労働災害死亡者数の推移
(図はMhlw.go.jpから引用)
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備 考
本情報はつぎのインターネット情報に基づいてまとめたものである
・Tupras.com.tr ,
Announcement Regarding the
Incident at Tüpraş İzmir
Refinery(1)~(6), October 11ー12, 2017
・Ogj.com,
Turkey’s Tupras reports explosion at Izmir
refinery, October 13,
2017
・Dailysabah.com, Explosion kills 4 at Tüpraş
oil refinery in Turkey‘s Izmir,
October 11, 2017
・Foxbusiness.com, Explosion at Turkish oil refinery kills
4, injures 2, October 11,
2017
・Uk.businessinsider.com, Turkey arrests four people over
explosion at Tupras refinery: Anadolu, October
14, 2017
・hurriyetdailynews.com, Four
killed in explosion in TÜPRAŞ oil refinery in Turkey’s İzmir, October
11, 2017
・Aa.com.tr,
Turkey: 4 remanded into custody over refinery
explosion, October 14,
2017
・Bianet.org,
Explosion in Tüpraş
İzmir Oil Refinery: 4 Workers
Killed, October 11,
2017
・Mhlw.go.jp ,
平成28年
労働災害発生状況(厚生労働省労働基準局), May
19, 2017
後 記: トルコの事故を紹介するのは初めてです。情報の数は多いのですが、内容が限られています。発災事業所からウェブサイトのニュース・リリースに事故情報(2日間で6件)が発表されていますが、内容は深まりません。このニュース・リリースの中に真実に基づかない情報に踊らされることがないようにということが書かれているところを見ると、噂が拡散していたようです。どのような噂が飛び交っていたのかわかりませんが、例えば、負傷者数は2名という情報が多く、4名という報道もありました。(ここでは、発災事業所の発表である負傷者1名を採用しましたが・・・) また、発災写真も少なく、今の世の中だと、投稿写真がもう少し出てもよいのではないかと感じました。
一方、びっくりしたのは警察の動きです。事故から2日後には逮捕者が出ています。まだ、原因が分かっていない(公表されていない)段階での逮捕ですから、日本と随分違うという気がしました。おそらく事情聴取するための逮捕ではないでしょうか。
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