今回は、2026年2月10日(火)、韓国・慶尚北道の慶山市の大韓オイルパイプライン社の慶山石油貯蔵所にあるガソリン・タンクが爆発し、火災となった事例を紹介します。
< 発災施設の概要 >
■ 発災があったのは、韓国・慶尚北道(キョンサンブクト/けいしょうほくどう)の慶山市(キョンサン・シ/けいざん・し)河陽邑(ハヤンウプ)にある大韓オイルパイプライン社(Daehan Oil Pipeline Corp.; DOPCO; 大韓送油管公社)の慶山石油貯蔵所である。
■ 事故があったのは、石油貯蔵所のガソリン・タンクである。円筒式タンクの容量は3,300KLで、発災当時は約80%の2,500KLが貯蔵されていたという。
< 事故の状況および影響 >
事故の発生
■ 2026年2月10日(火)午前8時前、石油貯蔵所のガソリン・タンクが爆発して火災が発生した。
■ タンク屋根が破損し、火災の炎が空に舞い揚がり、黒煙が空高く上がり、遠いところからでも肉眼で確認されるほどだった。
■ 突然の轟音に驚いた近くの住民たちは、急いで家を飛び出した。民家とわずか100mしか離れていない貯蔵タンクが爆発して火災が発生していた。近くの住民は
「見てわかるように私の家は150mの距離しかないのですから火の粉がこちらに飛んでくることも考えられますよ。だから私は何か飛んでくるのに備えていました」と語った。
■ 事故現場の近くには住宅地や山野があり、近くの30~50世帯の住民は万が一に備えて避難しはじめた。
■ 消防署には、バンという大きな音がしてタンク火災が起こったという通報が寄せられた。
■ 発災にともない、消防署の消防隊が出動した。
■ 固定屋根式タンクのコーンルーフが爆発で外れて火災になっていた。事故タンク周辺には同じくらいの貯蔵タンク10余基が設置されており、燃焼が拡大すると大きな火災につながる可能性があった。
■ 出動した消防隊は、消防士104名、ポンプ車8台、消防ヘリコプター1機とともに化学消防車を投入した。油火災であるため、水では消火ができないので、泡薬剤を使用した。
■ 石油貯蔵所入口では、職員が外部の人が近づいたり、携帯電話で撮影をすることを妨げていた。職員は外部の人々の身元を確認し、「ここでむやみに写真を撮ってはならない」と警告した。慶山市役所職員や雇用労働部職員など所属を明らかにした人々だけが慶山貯蔵所の中に急いで入った。空では出動した消防ヘリコプターが上空を飛び回っていた。
■ 消防関係者によると、油流出はなく、火災の燃焼拡大の心配はない状態だと語った。
■ 事故にともなう負傷者はいなかった。
タンクに製品が入ってくると、油の成分を確認するため、サンプル採取作業を行う。事故当時、現場でサンプル採取作業の担当者はすぐに避難した。作業者は爆発でズボンに火がついたが、すぐに逃げたため、ケガはなかった。
■ ユーチューブでは、発災時のニュースを報じる動画が投稿されている。
●Youtube、「경산 송유관공사 유류 저장 탱크 폭발·화재…2시간 50여 분 만에 완진 / KBS」(2026/02/10)
●Youtube、「경휘발유 250만ℓ 담긴 탱크 폭발...화재 진화 완료 / YTN」(2026/02/10)
●Youtube、「[자막뉴스] ‘펑’ 터지더니 큰 불기둥이…경산 송유관공사 유류탱크 폭발 | 이슈픽」(2026/02/10) ・・・この動画には監視カメラによる爆発の瞬間の画像がある
・・・いずれも韓国語の動画であるが、Youtubeの翻訳機能を使えば、日本語訳が出てくる
被 害
■ 容量3,300KLのガソリン・タンクの屋根が噴き飛び、火災で損傷した。内部のガソリンが一部焼失した。
■ 負傷者はいなかった。
■ 近くの住民30~50世帯が避難した。
< 事故の原因 >
■ 消防当局は、作業者がタンクに貯蔵する油の成分を確認するためにサンプルを採取し、静電気が発生して爆発が起こったと推定している。消防署と警察は火災の原因などを調査する計画だという。
< 対 応 >
■ 事故発生初期、石油貯蔵所の固定消防設備が作動したことで、火が急速に弱まった。消防当局は、タンクに設置された泡消火設備(発泡噴射型消火施設)が作動し、初期の大きな炎が泡消火の効果が現れたと見ている。
■ 消防隊は、発災から2時間半後の午前10時30分頃に火災を制圧し、消火した。
■ 火災の再発の懸念に備えて、タンクに残留していたガソリンを他のタンクに移送する作業を行った。移送は約5時間かかる見込みだという。
■ 消防当局は、作業者がタンクに貯蔵する油の成分を確認するためにサンプルを採取し、静電気が発生して爆発が起こったと推定している。一方、消防と大韓オイルパイプライン社側は、マスコミブリーフィングで貯蔵タンクの上から入荷したガソリンのサンプル採取作業を行っている間に発生した静電気が油ベーパーに接触して爆発したと推定した。
■ 発災施設は100万バレル未満(16万KL)で規模が大きくなく、国家重要施設から除外されていた。消防署と警察は、火災の原因などを調査する計画だという。国家重要施設から除外された2018年の京畿高陽石油貯蔵所爆発事故の時のように安全設備や出入管理などに問題があったのではないかみている。
■ 大韓オイルパイプライン社(大韓送油管公社)が管理するガソリン・タンクで爆発火災が起きたのは、2018年京畿道高陽石油貯蔵所爆発事故以来7年余りである。当時、消防施設の問題や安全管理が指摘されている。(当事故についてはブログ「韓国の石油貯蔵所で半地下式ガソリンタンクの爆発・火災」(2018年10月)を参照)
補 足
■「韓国」は、正式には大韓民国で、 東アジアに位置し、人口約5,114万人の共和制国家である。首都はソウル特別市である。
「慶尚北道」(キョンサンブクト/けいしょうほくどう)は韓国の西部に位置し、人口約255万人の道である。慶尚北道は慶北(キョンブク)と略されることもある。
「慶山市」(キョンサン・シ/けいざん・し)は、慶尚北道の南部に位置し、人口約26万人の都市である。
■「大韓オイル・パイプライン社」(Daehan Oil Pipeline Corp.;
DOPCO) は、1990年に設立された韓国の石油エネルギー輸送会社である。韓国の送油管の所有および運営のために設立されたのち、2001年政府持分を石油精製会社別に分割売却して民営化された。大韓オイル・パイプライン社は1,116kmの送油管を通して韓国内の石油(ガソリン・軽油・灯油・航空油)の消費量の約58%を埋設配管で輸送し、貯蔵所で保管する運営専門会社である。貯蔵所は12箇所の拠点地域にあり、合計522万バレル(83万KL)の石油類の備蓄が可能である。「大韓オイル・パイプライン社」は「大韓送油管公社」と訳されることがある。慶山市には石油貯蔵所がある。
■「発災タンク」は、コーンルーフ式の固定屋根型タンクで、容量は3,300KL、発災当時約80%の2,500KLを貯蔵していたと報じられている。グーグルマップで調べると、直径は約17mであるので、高さは約15mである。発災当時の容量2,500KLとすれば、液位は約12mである。この施設の貯蔵タンクのオープン・ベント(大気ベント)は、環境上の考慮からかタンク群のベント部をつないでタンク側板下部に持っていっていると思われる。
所 感
■ 事故の原因は、消防当局によると、作業者がタンクに貯蔵する油の成分を確認するためにサンプルを採取し、静電気が発生して爆発が起こったと推定しているという。しかし、この推定については疑問がある。タンク上でサンプル採取中、静電気によって爆発が起こったとすれば、作業者は逃げる時間的余裕は無い。監視カメラによる爆発の瞬間を撮った画像でも、爆発は瞬時に発生しており、またタンク上に人影は見えない。
発災は、タンク気相部に形成した可燃性ベーパーが他のタンクと共通の大気ベント管の出口部に流れ、そこで何らかの引火源(静電気など)で発火し、タンク気相部の爆発性混合気が爆発したのではないだろうか。
■ タンクの固定消火設備は半固定式泡消火設備だったと思われる。発災初期に自動で泡消火設備が作動したのではなく、防油堤外から泡消火設備の配管に泡薬剤を投入したものだろう。ただ、爆発で外れたタンク屋根が1基の泡モニターに損傷を与えて、残り(1基)の泡モニターしか機能しなかったとみられる。被災写真を見ると、消火用泡がタンク液面の全表面に届かず、燃焼面を覆うことができなかったと思われる。このため、本来タンクの泡消火設備が機能しておれば、もっと短時間で消火できたものが長い時間かかった。しかし、タンクの固定消火設備があったので、ほかのタンク群への延焼が回避できたという評価はできる。
備 考
本情報はつぎのインターネット情報に基づいてまとめたものである。
・Ytn.co.kr,
휘발유 250ℓ 담은 탱크 폭발..."화재 진화 완료“, February
10, 2026
・V.daum.net,
대한송유관공사 유류탱크 폭발 화재 ‘완진’···인명피해 없어,
February 10, 2026
・News.kbs.co.kr, 경산 송유관공사 저장탱크 폭발…정전기 원인 추정, February
11, 2026
・Joongang.co.kr, 경산 송유관공사 330만L 유류탱크 폭발…"정전기 원인 추정”, February 10,
2026
・Tbc.co.kr,
경산 송유관공사 기름 탱크 폭발..대형사고 이어질 뻔, February
10, 2026
・Yna.co.kr,
경산 송유관공사 유류탱크 화재…2시간 만에 진화,
February 10, 2026
・Ichannela.com,
휘발유 250만ℓ 들어있는데…탱크 폭발에 아찔, February
10, 2026
・M.sedaily.com,
경산 송유관공사 기름탱크 폭발…대형사고 이어질 뻔, February 10,
2026
・News.nate.com,
경북 경산 송유관공사 옥외탱크 폭발로 화재,
February 10, 2026
・Munhwa.com,
경산 송유관공사 옥외탱크 화재 3시간만에 진압, February
10, 2026
・News1.kr,
경산저유소 탱크 폭발, 샘플 채취 과정서 '정전기' 추정,
February 10, 2026
・Jeonmae.co.kr,
경산 송유관공사 휘발유 저장탱크 폭발·화재…7년 만에 재발, February 10,
2026
・Newsis.com,
경산 송유관공사 저장탱크 폭발 화재, 관계기관 합동감식, February
12, 2026
後 記: 今回の事例に接してまず感じたのは、他の国に比べて韓国のメディアがよく情報を集めて記事にしているということでした。一日で事故の推定原因まで記事にしています。
一方、ブログにまとめてみると、タンク上でのサンプル採取者の静電気説に違和感があり、すっきりしません。被災写真からタンク側板の少ない焼けた跡についても疑問が出てきて、タンクへの供給油の過充填も考えてみました。監視カメラにタンク屋根が外れる場面がないのはなぜか、タンク配置のアクセス性が悪いことが関係しているのではないか、コーンルーフ式固定屋根型タンクの屋根が噴き飛んだ後の屋根サポートが障害物になって消防車からの消火泡がうまく入らないのではないかなどの疑問がつぎつぎと出てきました。結局、疑問を解消させるような記事や写真が出てくることはなく、ブログをまとめました。
















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