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2020年12月23日水曜日

トリニダードのタンク施設でガソリンタンクの底部液抜出し中に爆発・火災

  今回は、 20201211日(金)、トリニダード・トバゴのポート・オブ・スペインにあるトリニダード・トバゴ・ナショナル・ペトロリウム・マーケティング社(NP)のタンク施設で、ガソリン用貯蔵タンクが爆発・火災を起こし、負傷者2名を出した事故を紹介します。

< 発災施設の概要 >

■ 発災があったのは、トリニダード・トバゴ(Trinidad & Tobago)ポート・オブ・スペイン( Port-of-Spain)シーロット(Sea Lots)にあるトリニダード・トバゴ・ナショナル・ペトロリウム・マーケティング社(Trinidad & Tobago National Petroleum Marketing CompanyNP)のタンク施設である。

■ 事故があったのは、タンク施設にある容量10,000バレル(1,590KL)のスーパーガソリン用貯蔵タンクである。



< 事故の状況および影響 >

事故の発生

■ 20201211日(金)午後1254分頃、タンク施設の南側で爆発があり、火災になった。

■ 爆発によってタンク屋根が噴き飛ばされた。火炎が舞い上がり、黒煙が空高く昇り、煙は遠く離れたところからも見えた。

■ タンク施設の近くの人によると、揺れを感じたあと、大きな爆発音を聞いたという。

■ 発災に伴い、トリニダード・トバコ消防署の消防隊が出動した。

■ 警察は、現場の近くを走るビーサム高速道路を閉鎖した。

■ 事故に伴い、請負会社の作業員2名が負傷した。負傷者は病院へ搬送された。50歳の男性作業員は爆発地点のすぐ近くにいたため、顔や手足などを負傷した。一方、61歳の男性作業員は腰背部を負傷した。 

■ 作業員は、日常の定型作業のひとつとして貯蔵タンクから残留物を抜き出す作業を行っていた。タンクは実質的に空だったと報じているところもある。

■ トリニダード・トバゴ・ナショナル・ペトロリウム・マーケティング社は声明で、「私たちは健全なメンテナンスシステムを採用しているし、現場で当局と連絡を取り合って事故原因を特定するよう取り組んでいます。従業員と地元地域の安全は会社として最優先の事項ですし、明らかになった時点で情報を公表する予定です」と述べた。

被 害

■ タンク施設内のガソリン貯蔵タンクが爆発・火災で損壊した。

■ 事故に伴う負傷者が2名発生した。

■ 現場の近くを走るビーサム高速道路が一時閉鎖した。

< 事故の原因 >

■ 事故の原因は、調査中である。

< 対 応 >

■ 1211日(金)、消防隊は午後150分頃に火災を制圧した。

■ トリニダード・トバゴ・ナショナル・ペトロリウム・マーケティング社は、今回の爆発事故が最近の歴史の中でこの種の事故としては初めてのことで、50年前にLPGタンクに関するものがあるだけだと語っている。




補 足 
■「トリニダード・トバゴ」(Trinidad &Tobago)は、正式にはトリニダード・トバゴ共和国で、カリブ海にあるトリニダード島とトバゴ島の2島からなる人口約134万人の共和制で、イギリス連邦加盟国である。

「ポート・オブ・スペイン」( Port-of-Spain)は、 トリニダード島北部に位置し、人口約37,000人で、トリニダード・トバゴの首都である。

「シーロット」(Sea Lots)は、ポート・オブ・スペインのひとつのエリアで、海の近くに区画された地区をいう。

■「トリニダード・トバゴ・ナショナル・ペトロリウム・マーケティング社」(Trinidad & Tobago National Petroleum Marketing Company)は、1972年に設立したトリニダード・トバゴの石油会社で、石油燃料・潤滑油・LPGなどの保管・流通・販売を行っている。

■「発災タンク」は、タンク施設の南側にあり、容量10,000バレル(1,590KL)のスーパーガソリン用貯蔵タンクだという。グーグルマップで調べたが、タンクを特定できなかった。タンク火災の写真を総合的にみると、南西側にある5基のタンクのいずれかだと思われる。これらのタンクはいずれも固定屋根式タンクであり、直径は約15mである。高さを9mと仮定すれば、容量は1,590KLとなる。従って、発災タンクは直径約15m×高さ約9m×容量1,590KL級の固定屋根式タンク(または内部浮き屋根式)であると思われる。

所 感

■ 今回の事故は、ガソリン貯蔵タンクから残留物(底部液と思われる)を抜き出す作業を行っていたというので、抜き出し作業時、過剰にタンク内に空気が入り、爆発混合気を形成し、静電気など何らかの引火源によって爆発が起きたものではないだろうか。日常の定型作業のひとつとして行っていたとされるが、タンク内に爆発混合気を形成させるような作業の危険性をどの程度認識していたか考えさせられる事例である。日頃から行っていて何千回も問題なくやっていたから絶対安全だといえない。

■ 一方、ガソリンの燃焼範囲は1.47.6Vol%であり、ガソリンが希薄と思うような状態で爆発は起こる。タンク内でこのような状態を考えると、タンクは実質的に空、あるいはわずかな残液だったのかも知れない。爆発直後はかなりの黒煙が出ていたようだが、1時間程度で火災は消えているので、燃料源が無くなって燃え尽きたと思われる。  


備 考

 本情報はつぎのインターネット情報に基づいてまとめたものである。

    Tankstoragemag.com, Trinidad tank blast injures two, December 15, 2020

      Looptt.com, Two injured, fire contained after explosion near NP, December 11, 2020

      Guardian.co.tt, Two hurt in tank farm explosion, December 11, 2020

      Newsday.co.tt, Three NP workers in hospital after Sea Lots fire, December 11, 2020

      Stabroeknews.com, Three people injured after explosion at NP Sea Lots, December 11, 2020

      103fm.tt, Fire officials extinguish NP blaze, December 11, 2020

      Newsday.co.tt, OWTU: NP explosion was preventable, December 14, 2020

      Np.co.tt, NP MOVES SWIFTLY TO CONTAIN EXPLOSION AT SEA LOTS FACILITY, December 11, 2020


後 記: 今回の事故情報で感じたのは、トリニダード・トバゴでも人びとがマスクを付けていることです。地球の裏側の人口約134万人の島国でも、新型コロナウイルスが流行っているのだと実感します。トリニダード・トバゴは平均で117人の新規感染者が報告されており、パンデミック(世界的大流行)開始以降、同国では感染者7,000人、死者123人が報告されているそうです。

 日本でも、最近、感染者が増加傾向にあり、「Go To トラベル」など人の移動が感染者を増やしています。しかし、この人の移動のリスクは、2002年のSARSが流行っていたときにすでに指摘されていました。「失敗学事件簿=あの失敗から何を学ぶか=」(畑村洋太郎著)の「SARS騒動の背景にあるもの」の中で、SARSによって私たちがごく当然と考えてきた人間の移動欲の理不尽さを指摘し、「人間の移動欲につきまとうリスク」として、大量の資源とエネルギーを費やすうえ、 SARSのような負の側面を顕在化させることまで考えると、人間の“移動欲” をそのまま認めていいのだろうか?」と述べています。





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