(写真はMontgomerycountypolicereporters.comから引用)
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< 発災施設の概要 >
■ 事故があったのは、米国テキサス州(Texas)フォートベンド郡(Ford
Bend)にある油井用石油施設である。施設はシンコ・ランチ(Cinco Ranch)の南でメーソン・ロードとベルエア・ブールヴァードの交差点近くで、まわりにはレークモント、レークモント・コーヴ、グランド・ミッション・エステーツなどの住宅地がある場所だった。
■ 油井施設には、原油用のファイバーグラス製タンクなどの設備類があった。
フォートベンド郡のレークモントなどの住宅地周辺
(矢印は発災した石油施設)
(写真はグーグルマップから引用)
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< 事故の状況および影響 >
事故の発生
■ 2016年3月19日(土)の未明、フォートベンド郡は激しい雨に襲われた。一部の地域では、大雨とともにひょうが降ったり、多くの落雷に見舞われていた。午前1時頃、メーソン・ロードとベルエア・ブールヴァードの交差点近くの草地開拓地にある油井用石油施設の油タンクに落雷があり、爆発とともに火災が発生した。
■ 火災発生に伴い、午前1時過ぎから住民による通報が寄せられ始め、消防隊が出動した。コミュニティ・ボランティア消防署のファウラー署長によると、ウェストパーク有料道路に乗って現場に向かう途中で最初に火を目にしたときには、航空機の墜落事故と思うほど大きな火炎だったという。炎は10マイル(16km)離れたところからも見えた。
■ 火炎は原油の入った4基のファイバーグラス製タンクから生じたものだった。タンクのあった周辺の設備が完全に炎に包まれるような火災になっていた。しかし、負傷者が出たり、構外への油流出に至ることはなかった。
■ 消防隊は、炎と煙が強風にあおられる中で、懸命な消防活動に努めた。火炎と数時間の戦い後、消防隊は火災を制圧した。
被 害
■ 爆発・火災によって油井施設内の貯蔵タンクなどが損壊した。被害の範囲や程度は明らかでない。
■ 事故に伴う負傷者は無かった。人数は明らかでないが、近くの住民が避難した。
< 事故の原因 >
■ 事故の原因は落雷による貯蔵タンクの可燃性ガスへの引火である。
< 対 応 >
■ 火災発生に伴い、コミュニティ・ボランティア消防署から12台の消防車が出動した。
■ 地域の保安官は、発災区域の道路を閉鎖するとともに、近くの住民へ避難するよう通知した。
■ 石油火災に有効なクラスBの泡薬剤を保有しているヒューストン消防署が遅れ、3月19日(土)の朝になって到着した。この泡薬剤を使用した消防車の泡放射によって、火災は短時間のうちに制圧された。火災が制圧された後、道路閉鎖や避難が解除された。
(写真はMontgomerycountypolicereporters.comから引用)
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発災現場(右)と出動した消防署などの緊急対応部隊(左側)
(写真はKHOU.comから引用)
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出動した消防署などの緊急対応部隊
(写真はMontgomerycountypolicereporters.comから引用)
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放水する消防隊 (写真はKHOU.comから引用)
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補 足
■ 「テキサス州」は米国南部にあり、メキシコと国境を接している州で、人口は約2,700万人である。
「フォートベンド郡」(Ford
Bend)は、米国テキサス州南部のメキシコ湾岸地域に位置し、ヒューストン、シュガーランド、ベイタウンの都市圏内にある郡で、人口は約65万人である。
■ 「発災タンク」はグラスファイバー製4基という情報がある以外、施設保有者を含めて詳細はわかっていない。グーグルマップで石油施設を見ると、直径約3.1mのタンクが4基、直径3.8mのタンクが2基あるのがわかる。従って推定40KL級と90KL級のタンクとみられ、総容量は340KL程度となる。屋根の構造が同じであり、いずれもグラスファイバー製だと思われる。発災写真でタンクの姿が見られないので、火災の熱によって損壊したものと思われる。なお、この貯蔵タンクのほか2基のタワーがあり、発災写真で炎に曝されているが、損壊せずに立っているので、鋼製と思われる。
発災した石油施設(矢印)の周辺 (矢印が発災した石油施設)
(写真はグーグルマップから引用)
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発災した石油施設 (写真はグーグルマップから引用)
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所 感
■ 昨年は、5月の「米国テキサス州で相次ぐ落雷によるタンク火災」をはじめ、テキサス州について年間9件の落雷によるタンク火災事故を紹介した。例年のことながら、テキサス州など米国で雷の多い州では、落雷による事故の発生する時期が到来したと感じる。
■ 最近では、水圧破砕法による天然ガス生産が増えたため、グラスファイバー製の油混じり塩水タンクが落雷によって火災事故を起こす事例が多くなっているが、今回は原油を入れたグラスファイバー製タンクが被災したため、規模の大きい火災になった。全タンクの貯蔵容量は推定340KLとみられ、実際にどのくらいの油が入っていたか分からないが、グラスファイバーが熱で損壊すれば、タンクに入っていた原油が一気に放出されて堤内火災となったものと思われる。地元の消防署長が航空機の墜落による火災と思ったというが、旅客機の燃料積込み量は国際線で180KLほどであり、火炎の印象としては当たっているといえよう。
備 考
本情報はつぎのインターネット情報に基づいてまとめたものである
。
・Click2houston.com,
Lightning Causes Oil Field Equipment Fire in Fort Bend County, March
19, 2016
・Chron.com, Crude Oil Tanks Erupt in Huge Flames in Fort
Bend Subdivision, March 19,
2016
・Montgomerycountypolicereporter.com, Tank Explodes after Lightning Strike, March
19, 2016
・Petroglobalnews.com, Lightning Stroke Ignites Houston Crude Tanks, March
21, 2016
・Firedirect.net, Lightning Strike Ignites Fuel Tanks, March
23, 2016 khou.com
・KHOU.com, Raw:
Crews battle massive equipment fire in Fort Bend County, March
19, 2016
後 記: 今回のタンク事故情報では、油井の石油施設を探すのに時間を費やしました。道路としてメーソンやベルエアという名称があり、簡単に探せると思っていたら、この名前は米国でよく付けられているようで、なかなか特定できませんでした。住宅地の真ん中に原油の生産施設があると思っていなかった予断もありました。(実際は原油の生産施設のまわりに住宅地が建ったのでしょうが) テキサス州では掘れば、原油が出るのでしょうね。日本の温泉みたいな感覚なのでしょう。その代わり、ボランティア型消防署に頼らざるを得ないことや、泡薬剤の保有が限定しているという社会の矛盾というべき陰も感じる事例でした。
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