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2015年9月16日水曜日

米国アリゾナ州の再生油工場の貯蔵施設で火災・爆発

 今回は、2015年9月9日、米国アリゾナ州フェニックスにあるSRCオイル・アンド・フューエル社の再生油工場の貯蔵施設で起った火災・爆発事故を紹介します。
(写真は12news.comから引用)
< 発災施設の概要 >
■ 事故があったのは、米国アリゾナ州フェニックスにあるSRCオイル・アンド・フューエル社(SRC Oil and Fuel LLC)の再生油工場である。取扱い液として使用済みのモーターオイルやブレーキオイルのほか、廃ガソリン、廃溶剤、廃ディーゼル燃料などいろいろなオイルを再生している。

■ 発災は、フェニックスのブロードウェイ道路沿いにある再生油工場の貯蔵施設で起った。貯蔵施設には、55ガロン(200リットル)ドラム缶および4,000ガロン(15KL)タンクがあった。ドラム缶にはいろいろな油種が入っており、4,000ガロンタンクはモーターオイルだったとみられる。
             フェニックス南部の下町付近  (矢印が発災場所)
(写真はグーグルマップから引用)
< 事故の状況および影響 >
事故の発生
■ 2015年9月9日(水)午後1時45分頃、フェニックスのブロードウェイ道路沿いにあるSRCオイル・アンド・フューエル社再生油工場で火災が発生した。フェニックスの下町に大きな黒煙の柱が立ち昇った。黒煙はかなり遠くの場所からも見えた。

■ 発災の通報を受け、フェニックス消防署の消防隊が出動した。出動した隊の中には、 HazMat(化学機動隊)もいた。火災規模を示すカテゴリーはスリー・アラーム・ファイヤー(Three-Alarm Fire)だった。

■ 火災の最中に爆発が起った。近くの事務所で働くマーク・フォルティさんは、「大きな爆発があったとき、体に熱を感じました。こんな体験は初めてです。実際、恐ろしかったね」と語っている。従業員は、発災後、直ちに貯蔵施設エリアから避難し、無事だった。爆発の瞬間をとらえた映像が、YouTube 「Crews battling fire, explosions at propane tank farm」に投稿されている。

■ フェニックス消防署のラリー・スーバヴィ署長によると、複数の貯蔵タンクを巻き込んだ火災になり、早い段階で全部で100名ほどの人の避難を実施したという。モーターオイルや部品洗浄用の再生溶剤などが保管されていた貯蔵エリアで何度も爆発があり、ドラム缶が発射体のように空に打ち上げられ、1個は消防隊のすぐ近くに落下したという。初期情報では、プロパンタンクの火災という話もあった。

■ 施設内のドラム缶やタンクに貯蔵されていた燃焼性のオイルによって火炎は猛威をふるった。爆発は55ガロンドラム缶が熱せられて起ったものとみられる。このような状況時には、ホースによる放水は荒れ狂う火炎に対して効果がないように見えた。すすで真っ黒になって火炎になめられているドラム缶やタンクがあれば、爆発の大きな力で破壊され、バラバラになっているものもあった。爆発は約30回ほどあったという。消防隊はたゆまぬ努力を続け、複数地点から放水銃で水をかけ続けた。発災から1時間を越えたあたりから、消防隊の努力の甲斐あって、燃え上がっていた設備まわりの火炎が弱まり始めた。

■ ゴミや泡薬剤を含んだ消火排水が道路の方へ勢いよく流れ出ており、消防隊は排水系統へ流れ込むのを阻止しようと努めた。火災との戦いの間には、濃い煙に阻まれてはしご車を後退させたときもあった。午後2時55分、火炎と煙の勢いが明らかに弱まり、消防隊は火災を制圧下に入れた。消火後も、しばらく施設には水を掛け続けた。

■  SRCオイル・アンド・フューエル社のマイケル・ヒランボーロさんは、発災後、「私どもは地元の人たちに知ってもらいたいのですが、今回、タンク群からオイルは流れ出なかったことです。消火放水などの状況をご覧になったでしょう」といい、施設の構造設計図を示しながら、「そのように作ったのです。このような設計にしていなければ、オイルはすべて道路へ流れ出たでしょう」と語った。
■ その日の午後の遅い時間に、消防隊は空気中の汚染の有無を調べ、施設の焼け跡にホットスポットがないか点検した。フェニックス消防当局は現場近くの雨水系を閉止し、ケミカルの汚染水が雨水系へ流入しないようにした。現場で作業していた消防士に聞いたところ、汚染水が火災現場から流れ出ることは阻止されているし、消防隊は米国環境保護庁(EPC)と共同で作業しているという。
(写真はRT.com から引用)
(写真はKTRA.com から引用)
被 害 
■ 事故に伴う負傷者は無かった。
■ 貯蔵施設にあった55ガロン(200リットル)ドラム缶や4,000ガロン(15KL)タンクの多くが火災によって損傷している。被災の程度や範囲はわかっていない。

< 事故の原因 >
■ 火災の原因について消防署から推定の話も出ておらず、原因は調査中である。
  (地元のアスファルト・プラントから炎が飛んできたとという話や、ディーゼル発電ボイラーから始まったという情報があるが、真偽は分からない)

■ なお、フェニックス消防署スーバヴィ署長によると、 過去、SRCオイル・アンド・フューエル社で火災になった事例はないという。

< 対 応 >
■ 火災発生の通報を受け、出動した消防隊の消防士は約50名だった。 HazMat(化学機動隊)は20名だった。火災カテゴリーはスリー・アラーム・ファイヤー(Three-Alarm Fire)として対応された。

■ 消防隊は複数地点から放水銃で水をかけ続けた。発災から1時間を越えたあたりから、燃え上がっていた設備まわりの火炎が弱まり始めた。発災から約1時間10分後の午後2時55分、火炎と煙の勢いが明らかに弱まり、消防隊は火災を制圧下に入れた。消火後も、しばらく施設には水を掛け続けた。

■ 鎮火後、消防隊は空気中の汚染の有無を調べ、施設の焼け跡にホットスポットがないか点検した。また、消防隊は現場近くの雨水系を閉止し、ケミカルの汚染水が雨水系へ流入しないようにした。フェニックス消防署と米国環境保護庁(EPC)は共同で作業した。
(写真は12news.comから引用)
(写真は12news.comから引用)
(写真は12news.comから引用)
(写真は12news.comから引用)

(写真は12news.comから引用)
補 足 
■ 「アリゾナ州」は米国南西部にあり、人口は約673万人である。銅と綿花の生産で発展したが、1990年代に入ってからハイテク産業の一大拠点となっており、カリフォルニア州からの企業流入が多いといわれている。マリコパ郡にある 「フェニックス」が州都であり、人口約145万人のアリゾナ州最大都市である。
 なお、アリゾナ州では、2013年6月、州都フェニックスから北に135km離れたヤーネルヒルで落雷とみられる山火事が発生し、広大な面積を焼失したほか、消火活動に参加した “ホットショット”と呼ばれるエリート消防士19人が死亡するという事故があった。この事故は当ブログ「米国アリゾナ州の山火事で消防士19名死亡」で紹介した。
(写真はグーグルマップから引用)
■ 「SRCオイル・アンド・フューエル社」(SRC Oil and Fuel LLC)は、廃モーターオイル、廃ガソリン、廃溶剤、廃ディーゼル燃料などいろいろな廃油を再生する工場で、フェニックスを拠点として25年以上操業している。開設しているウェブサイトでは、施設能力や貯蔵能力についての記載がなく、詳細は分からない。
 なお、当ブログで再生油工場の事故情報として紹介したのは、2013年11月に起った「千葉県野田市の廃油処理施設の爆発事故」(2015年4月投稿)がある。
フェニックスのSRCオイル・アンド・フューエル社付近(発災前)
(写真はグーグルマップから引用)
SRCオイル・アンド・フューエル社の貯蔵施設エリア(発災前)
(写真はグーグルマップから引用)
所 感 
■ 発災源が特定されていないため、原因を推測しようがない。発災映像では、かなり激しい堤内火災の様相を呈しているように見える。しかし、燃焼時間は約1時間10分で、爆発を伴う火災としては比較的短い時間で消火に至っている。おそらく、ドラム缶から漏れた液による堤内火災が主で、漏洩量はそれほど多くなかったものと思われる。溶剤またはガソリンの入ったドラム缶が火炎の熱で爆発して、飛翔したものと見られるが、ほかのタンクを損傷させることが少なく、災害の規模が最小限にとどまったとみられる。

■ 消火活動としては、3つの戦略である「積極的(オフェンシブ)戦略」、「防御的(ディフェンシブ)戦略」、「不介入戦略」のうち、積極的戦略というより防御的戦略をとったように思う。映像によると、貯蔵施設エリアには、タンクやドラム缶のほかいろいろな構造物が輻輳しており、泡で覆い尽くすことが難しく、水による冷却を主にしたものと思われる。その理由としては、燃焼物の量(漏洩量)がそれほど多くないことと、ドラム缶が突然爆発するような状況では、火炎に接近することができないので、遠くからの泡放射では、泡が吹き飛び、効果がないと判断したと思う。


備 考
 本情報はつぎのインターネット情報に基づいてまとめたものである。
   ・12News.com,  Crews Battle Fire, Explosions at Propane Tank Farm,  September 09, 2015  
    ・RT.com,  Explosions Reported as ‘Hazardous Material’ Fire Rages in Phoenix,  September 09, 2015
    ・KTAR.com,  Storage Yard Fire Sends Plume of Smoke over Phoenix,  September 09, 2015   
    ・ABC15.com,  Tanks with Motor Oil Explode in South Phoenix, Business Says It Could Have Been Worse,  September 10, 2015
    ・Azfamily.com,  Motor-oil Drums Explode in Huge Industrial Fire South of Downtown Phoenix,  September 10, 2015



後 記: 今回の事例は、情報が速報レベルで正確性に欠けるものでした。プロパンタンクという話はともかく、燃焼している再生油の油種さえはっきりしません。情報では、モーターオイルやブレーキオイルというのが多かったのですが、再生油工場の取扱い油種や映像から判断して、もっと燃焼性の高い液と思われ、総合的に考えて本文のような表現にしました。アリゾナ州の州都で起った事故ですので、もっとメディアに取り上げられてもよいように思いますが、意外に報じたメディアは少なく、発災翌日を過ぎると、情報が出てくることはありませんでした。米国では、けが人が無く、住民への影響がなく、環境汚染の問題がなければ、大きく扱わないので、これが限度だろうとあきらめざるを得ませんでした。


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