今回は、正月早々の2015年1月1日、米国ノースダコタ州マッケンジー郡にあるエンブリッジ社のパイプラインのアレクサンダー・サブステーションで、容量33KLの原油タンク8基が火災で被災した事故を紹介します。
エンブリッジ社系列のパイプライン・サブステーションで起った爆発・火災事故
(写真はBrainerddispatchi.comから引用)
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<事故の状況>
■ 2015年1月1日(木)午後5時頃、米国ノースダコタ州マッケンジー郡にある原油施設で火災事故があった。事故があったのは、マッケンジー郡アレクサンダーにあるエンブリッジ社(Enbridge
Inc.)子会社のノースダコタ・パイプライン社(North Dakota Pipeline Co.)のアレクサンダー・サブステーションで、容量210バレル(33KL)の原油タンク8基が火災で被災した。
ノースダコタ州アレクサンダー付近 (写真はグーグルマップから引用)
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■ マッケンジー郡緊急対応部署のジェリー・サミュエルソン部長によると、ウィリストンの南にある施設で1日木曜の午後、大きな爆発音があり、10マイル(16km)離れたところでも感じたという。
■ 当局によると、タンクローリー(19KL積み)から貯蔵タンクへ原油を移送しているとき、突然、火災が発生したという。発災に伴い、アレクサンダー消防署とウィリストン地方消防署が出動し、エンブリッジ社の緊急対応隊とともに対応した。当初の消火戦略では、燃え尽きさせる予定だった。しかし、火災が別な会社の所有するタンク群へ延焼する勢いだったので、消防隊は泡による消火活動を行なった。しかし、結局、火災は2日金曜の正午過ぎに燃え尽きて消えた。発災地区には、貯蔵タンクが12基あったが、うち8基が延焼した。燃えたのは容量210バレル(33KL)の原油タンクで、焼失した油は1,000バレル(160KL)とみられる。8基に隣接していた4基の貯蔵タンクには1,200バレル(190KL)ほどの油が入っていたが、熱による損傷を受けた。
■ エンブリッジ社の広報担当であるマイケル・バーンズ氏は、
8基の貯蔵タンクはエンブリッジ社子会社のタイダル・エナージー・マーケッティング社(Tidal Energy Marketing LLC)所有のもので、完全に焼損したと語った。また、タンクローリー1台が火炎で損傷したと語った。原油タンクはタイダル・エナージー・マーケッティング社が所有しているが、ノース・ダコタ・パイプライン社からリースしている。一方、バーンズ氏は、隣接して影響のあった4基の貯蔵タンクの所有者は知らないと語っている。
■ マッケンジー郡緊急対応部署サミュエルソン部長によると、消防隊は、タンク火災中、隣接する4基のタンクへ延焼しないよう木曜夜から金曜の昼まで冷却放水を続けたという。
■ エンブリッジ社広報担当のバーンズ氏は、タンクまわりの防油堤が漏洩した原油の構外への流出防止に有効に働いたと語っている。
州保健局水質管理部のカール・ロックマン部長は、「タンクは封じ込められていたようです。私どもは水系に影響が出ているか確認し、地下水への汚染の有無について評価する予定です。一般に、この地区には地下水系がたくさんあるわけではありませんし、地下水は深い位置にあります」と語った。
■ 貯蔵タンクは、エンブリッジ社の主要な原油施設に面した通りの向かい側にあった。原油施設には被害が及んでいないとみられる。ケガ人は出ていない。発災現場近くに住宅は無かったが、火災のため、国道ハイウェイ85号線とマッケンジー郡ハイウェイが、1日木曜夕方に、交通遮断された。交通規制は2日金曜の朝に解除された。
■ エンブリッジ社広報担当のバーンズ氏によると、パイプラインは、念のため、一時的に運転を停止したという。
■ 爆発の原因は調査中である。サミュエルソン部長によると、タンクローリーの荷役時の電気的な問題によって引き起こされた可能性が高いが、確認されたわけではないという。タンクローリーは、タンクへ油を荷役するときには、接地しなければならない。事故時に、2台のタンクローリーが貯蔵タンクへ原油を移送していたが、2台が接地を行って静電気の除電をしたかどうかは明らかでない。なお、二人の運転手は退避して無事だった。
(写真はWDAZ.comから引用)
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(写真はGrandforksHerald.com
から引用)
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(写真は左;Media.graytvinc.com、右;Twitter.com(Linda)
から引用)
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補 足
■ 「ノースダコタ州」は、米国の北部に位置し、カナダに接する州で、人口約70万人である。州都はビスマルク市である。ノースダコタ州は1951年にタイオーガ近くで石油が発見され、州西部は現在も石油ブームにあり、ウィリストン、タイオーガなどの町が急成長している。2010年時点で州内石油産出量は1日56,000KLと2007年水準の3倍以上となり、全米第4位になった。
「マッケンジー郡」は、ノースダコタ州の西部に位置し、人口約7,900人の郡である。郡庁所在地はワトフォート市である。
「アレクサンダー」はマッケンジー郡の中央部に位置し、人口約260人の町である。「ウィリストン」はアレクサンダーのすぐ北にあるが、ウィリアムズ郡に所属し、人口約20,000人の町である。アレクサンダーでは、2013年11月7日、メサ・オイル・サービス社の油井関連施設で爆発・火災があり、当ブログで、「米国ノースダコタ州の石油施設で爆発、タンク13基が被災」として紹介した。
■ 「エンブリッジ社」(Enbridge Inc.)は、カナダのアルバータ州カルガリーに本社を置き、原油と天然ガスの輸送を行う石油会社である。1949年に設立し、11,000人の従業員を擁し、カナダと米国の両方に敷設された世界最長のパイプラインを持っている。
エンブリッジ社は、2010年に大きな流出事故を起こしている。エンブリッジ・ノーザン・ゲートウェイ・パイプラインにおいてエドモントンにある監視オペレータが、漏洩警報が鳴ったにもかかわらず、17時間の間、対応しなかったため、20,000バレル(3,200KL)の油流出に至った事故である。また、2012年6月に「カナダのアルバータ州のポンプ・ステーションで原油漏洩」があり、当ブログで紹介した。
所 感
■ 事故の原因は、タンクローリーによるタンクへの原油移送中の問題であることは間違いないだろう。移送速度が速すぎ、タンクベントから可燃性ガスの大量放出によるものか、指摘されているように静電気が蓄積し、タンク内のガス空間部に爆発混合気が形成した中で発火したものではないかと思う。
■ 消防活動としては燃え尽きさせる戦略で妥当だったと思う。
当初、燃え尽きさせる戦略を指向したが、隣接タンクへの延焼を配慮して、泡消火が試みられたと思われる。しかし、消火水の供給不足が懸念されるし、発災タンクの防油堤を油や消火排水を溢流させると、水質汚染問題が広がることになる。ただし、この選択で注意すべきことは、原油タンクのボイルオーバー発生の危険性である。発災状況の写真をみると、いわゆる“全面火災”でなく、黒煙の多い不完全燃焼気味の火災のように見える。このためか、その他の理由によるものか、ボイルオーバーが起こらなかったのは不幸中の幸いだといえる。
注;ノースダコタ州の原油生産施設は一箇所当たりの規模が小さく、数が多い。このため、タンク火災事故では、消火水が不足する状況が通常で、燃え尽きさせる戦略が基本とみられる。タンク火災事故の中では、タンクローリーの運転手が、消火用水の供給の手伝いを志願している例もある。
備 考
本情報はつぎのようなインターネット情報に基づいてまとめたものである。
・Reuters.com, Oil Storage Tanks in North Dakota
Catch Fire; No Injured, January 01, 2014
・WDAZ.com, Crude Oil Fire near Williston, January 02,
2014
・WashingtonTimes.com,
No One Hurt in Oil Tanks Fire South of Williston, January 02, 2014
・ValleyNewsLine.com, 8 Large Crude Oil Tanks on Fire in Western
North Dakota, January 02, 2014
・KXnet.com, Oil Tanks on Fire near Williston,
January 02, 2014
・BismarckTribune, Oil
Storage Tanks Fires Extinguished, January 02, 2014
・Firehouse.com, Eight N.D Oil Storage Tanks Burn
out of Control, January 03, 2014
後 記: 今回の事故情報をまとめましたが、今ひとつすっきりしませんでした。米国では、日本の正月のような休みではないにしても、新年早々の事故なので、情報源が限定され、さらにその内容にかなりの差がみられました。例えば、発災時間は「夜」、「午後」、「午後5時」、「午後9時25分」と記事によって様々でした。まわりは原油の生産施設が多く、発災施設もパイプラインのサブステーションというより油井関連のタンク施設のように見えます。発災場所の位置情報もありますが、グーグルマップで調べてみても、発災写真のようなタンク施設が見当たりません。ノースダコタ州はいまも原油掘削・生産施設が増設されているようです。信じられないことですが、記事にあるように発災施設の所有者が隣接しているタンク施設の所有者を知らないというほど、開発が盛んなのでしょうね。
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