イリノイ州メイコン郡で落雷による火災で被災したタンク (写真はIllinoishomepage.net
から引用)
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<事故の状況>
■ 2014年6月1日(日)午後、米国イリノイ州にあるタンク施設で落雷による火災があった。事故があったのは、イリノイ州メイコン郡(Macon
County)ディケータ(Decatur)郊外にある油井用のタンク施設で、落雷を受けてタンクが火災を起こした。
■ 消防署は、油井近くの住民から、午後3時25分頃、雷雲が通過している際、タンクが火災になったという通報を受けた。油井はディケータ市街地から南へ約2マイル(3km)のエルウィン通りとボウマン通りの交差点近くにあった。
イリノイ州メイコン郡ディケータ郊外の風景
(写真はグーグルマップから引用)
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■ 炎は15フィート(4.5m)の高さまで舞い上がり、火炎から2フィート(0.6m)の間隔しかないタンク群は加熱され、爆発の恐れがあった。実際、ある時点では、強烈な輻射熱によってタンク内の圧力が上昇し、危険なほどタンクが膨らんだ。
■ 南メイコン消防署のエド・オーカンプ署長によると、消防隊が到着したとき、渦巻く黒煙と舞い上がる大きな火柱に直面したという。オーカンプ署長はマウント・シオン消防隊の相互応援を要請したと語った。マウント・シオン消防隊には専用の泡消火剤搬送車を保有していた。「泡剤は手に入ったが、それで十分でないことは分かっていた」とオーカンプ署長は語っている。
ヒッコリー・ポイント消防隊が別な専用の泡装置を持ってきた。さらにサウス・ウィートランドおよびブルー・マウントから相互応援の部隊がやってきた。「我々は40人規模になった。また、メイコン郡保安官事務所が支援してくれたし、ディケータ救急隊が待機していてくれた。幸い、けが人が出ることのなかったことに感謝している」とオーカンプ署長は付け加えた。
■ 消防隊は午後5時45分頃まで現場で活動した。タンクが噴き飛ぶ状況になる前に、火災は消火された。
保安官事務所のジェイミー・ベルチャー副官は、消防隊が活動している間、エルウィン通りの一部を閉鎖したと言い、「そのときは、他のタンクが爆発するような状況だったとは知らなかった」と語っている。
■ 日曜の夕方になって、油井の操業を行っているプロダクション・エナージー社の社員が現場へ入り、影響を受けた油井を閉止させ、タンク群を空にした。被災したタンクから油が漏出したが、 オーカンプ署長によると、土盛り堤内に溜まったのは全体の5%で、すべて堤内に留まったという。
■ 現場では、プロダクション・エナージー社によるクリーンアップが始められた。同社によれば、6月3日(火)までには終わる見込みだという。
被災したタンク施設 (写真はIllinoishomepage.net
から引用)
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被災したタンクの例
(写真はIllinoishomepage.net
から引用)
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補 足
■ 「イリノイ州」は米国中西部に位置し、人口約1,280万人で、人口では国内5番目の州である。州都はスプリングフィールドで、最大の都市はシカゴである。イリノイ州は石炭の埋蔵量は多いが、石油は小さな油田がある程度である。イリノイ州は農業が盛んで、大豆、トウモロコシの生産高は国内でも1、2位である。
「メイコン郡」(Macon
County)は、イリノイ州の中央部に位置する郡で、人口は約110,000人である。
「ディケーター」はメイコン郡の郡庁所在地で、人口約76,000人の都市である。
アメリカ合衆国イリノイ州
の位置
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■ 油井の所有会社は「プロダクション・エナージー社」(Production
Energy)と報じられているが、会社の詳細はわからない。ディケーター郊外にあるタンク施設は天然ガス井に見られるような配置であるが、はっきりしない。タンク側板には溶接線が見られるので、鋼製と思われる。しかし、標題写真の被災タンクは鋼製ではなく、FRPのような樹脂タンクのようにも見えるが、これもはっきりしない。また、記事の中で「強烈な輻射熱によってタンク内の圧力が上昇し、危険なほどタンクが膨らんだ」とあり、被災タンク写真の中に底部が丸くなった形状のものがあるが、これが膨らんだ跡かどうかもはっきりしない。なお、グーグルマップから推測すると、タンクの直径は約3mであり、容量は30~40KL級とみられる。
火災のあったタンク施設(被災前)
(写真はグーグルマップのストリートビュー
から引用)
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所 感
■ 2014年5月に、テキサス州で落雷によるタンク火災が続いた。この点、イリノイ州の落雷によるタンク火災は珍しいが、「NASAによる世界の雷マップ」によると、イリノイ州は雷の少ない地域ではない。最近は、メキシコ湾岸の州だけでなく、中西部の州において落雷によるタンク火災が起こっている。異常気象による雷雲発生の頻度が増えていることと、内陸地での小規模の油井(天然ガス)が増えているためと思われる。従って、今後も米国における落雷によるタンク火災が減ることはないだろう。
■ 油井関連施設のタンク火災は燃え尽きさせる戦略をとることが多い。今回のタンク火災は大きな都市の郊外で起こったので、泡消火剤は確保できたとみられる。火災を起こしたタンクまわりには同種のタンクが数多くあったので、延焼していく可能性は高かった状況からすれば、被害は最小に留められたと思う。消防署の相互応援が機能しているし、おそらく、今回のような火災事故に対する訓練が行われていたものと思う。
1k㎡当たり年間平均の雷光回数 |
備 考
本情報はつぎのようなインターネット情報に基づいてまとめたものである。
・Herald-review.com, Lightning-indused
Oil Tank Fire Stopped, June 02 , 2014
・Illinoishomepage.net,
Oil Tank Explodes after Lightning Strike,
June 02 , 2014
・Wics.com,
Lightning Sparks Oil Tank Fire, June 02 , 2014
後 記: 雷シーズンが来ると、米国での落雷によるタンク火災は必ず起きます。しかし、日本でも、6月16日に青森県で漁に出ていた船に雷が落ち、死亡事故が起こっています。漁を早めに切り上げて帰ってきた人によると、洋上から徐々に雷が近づいてきて、稲光がはっきり見え、怖くなったと語っています。落雷は設備の損傷につながったり、人命にかかわったり、怖いですね。
ところで、先日、山登りに行ってきました。幸い、雷雲に遭うことなく、きれいな風景に接してきました。今回、初めて試みたのは、足の靴ズレ・まめ防止にワセリンを使ったことです。正解でした。私は甲高の幅広でまめのできやすい足で、いつも悩まされていましたが、足に直にワセリンを塗ったあとにソックスを履いて歩くと、まったくまめができませんでした。これは、あるトレイルランの番組を見て、インターネットで調べると、ちゃんと載っていました。情報はありがたいものです。
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