マラーナにあるバルカン・マテリアル社の建設資材プラントで石油タンク火災
(写真はAztarnet.comから引用) |
<事故の状況>
■ 2013年9月23日(月)午後2時過ぎ、米国アリゾナ州の建設資材プラントで石油タンクが火災となる事故があった。事故があったのは、アリゾナ州マラーナのウェスト・アブラ・バレー通り沿いにあるヴァルカン・マテリアル社の建設資材プラントで、
2基の石油貯蔵タンクが火災になった。
■ ヴァルカン・マテリアル社の従業員から午後2時22分に同所の石油貯蔵タンクで火災発生という通報を受け、ノースウェスト消防署は、ピクチャ・ロック消防署からの消防車1台とともに、火災現場に急行した。その後、ハズマット隊も出動した。
■ ヴァルカン・マテリアル社は事故後の24日(火)に出した声明の中で、「私どもはノースウェスト消防署の迅速な対応に感謝しております。私どもは、関係機関の方々と事故に関する情報を共有化し、事故原因の究明を行って参ります。私どもの骨材事業(砕石・砂)は事故の影響を受けておらず、通常通りの操業を継続できます。アスファルト事業は、火災の原因を究明してアスファルト・プラントの改修が完了するまで、一時的に操業率が落ちることになります。ヴァルカン社は、地域社会、環境、従業員の健康と安全を守ることに努めております」と述べている。
■ 最初の消防車が到着したとき、容量3,500ガロン(13KL)の貯蔵タンク2基から大きな火炎と大量の煙が立ち昇っていた。2基のタンクには、アスファルト品の製造に使用されるポリマーを含んだ液体石油製品が入っていた。また、火災から125フィート(38m)しか離れていない所に、アスファルト品の温度保持用バーナーに使用されるプロパン・タンクがあった。隣接していたプロパン・タンクの容量は1,000ガロン(3.8KL)で2基あった。
■ 駆けつけた第一陣の消防隊は、火炎を制圧しようと努めたほか、プロパン・タンクへの延焼防止の消防活動を行なった。最初に出動した消防車は、クラスB消火用泡剤15ガロン(57リットル)を火災の中心に向けて放射した。可燃性液体の火災では、水だけで消火するのは難しい。消火用泡剤は、燃焼し続けるのを抑えるようベーパーの発生を抑制し、可燃性液を冷却する機能を担う。その後に現場へ到着した消防車がクラスB消火用泡剤55ガロン(208リットル)を積んできた。水と混合すると、約1,000ガロン(3,780リットル)の泡となる。この泡消火活動によって火炎の減衰と熱油の冷却に効果が出始めた。
■ 消防車4台、はしご車1台、給水車3台を含む数台の支援車両で出動してきた総員29名の消防隊によって26分後に火災制圧に成功した。しかし、消防隊にとって消防活動の条件は必ずしも良くなかった。特に水が十分でなく、その対応として近くの井戸から強引に給水したのは一つの挑戦であった。
火災が起こったとき、プラントには少なくとも4名の作業員がいた。プラントのオペレータや消防士にケガ人は出なかった。
■ 9月24日(火)、油火災が収まった翌日、プラントの操業が再開された。発災現場には調査官が立入り、火災の原因を調査中で、24日も調査官は現場で調査を行っている。
(写真はKgnu9.comから引用)
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アスファルト・プラントの火災現場 (手前は応援で出動したピクチャ・ロック消防署の車両)
(写真はAztarnet.comから引用) |
(写真はmaranaweeklynews.com から引用) |
(写真はmaranaweeklynews.com から引用) |
補 足
■ 「アリゾナ州」は米国南西部にあり、人口は約655万人で、州都はフェニックスである。アリゾナ州はグランドキャニオンで有名である。
■ 「アリゾナ州」は米国南西部にあり、人口は約655万人で、州都はフェニックスである。アリゾナ州はグランドキャニオンで有名である。
2013年6月、アリゾナ州では記録的な猛暑が続く中、州都フェニックスから北に135km離れたヤーネルヒルで落雷とみられる山火事が発生し、広大な面積を焼失したほか、消火活動に参加した
“ホットショット”と呼ばれるエリート消防士19人が死亡するという事故があった。この事故は当ブログ「米国アリゾナ州の山火事で消防士19名死亡」で紹介した。
「マラーナ」は、アリゾナ州の南部に位置し、ピマ郡にある町で、人口は約35,000人である。
■ 「ヴァルカン・マテリアル社」(Vulcan
Material Co.)は、1909年に設立され、建設資材の生産・供給を中心に事業を行っている会社である。本社はアラバマ州バーミングハムにあり、砕石、砂、砂利、アスファルト、レディミクスト・コンクリートの建設資材の生産は米国最大の会社である。骨材生産プラントは300箇所以上、アスファルト・コンクリート生産プラントは約200箇所保有しており、マラーナには骨材生産プラントとアスファルト生産プラントがある。
ヴァルカン・マテリアル社のマラーナ事業所(左がアスファルト・プラント、右が骨材プラント)
(写真はグーグルマップから引用) |
ヴァルカン・マテリアル社のマラーナ事業所
(写真はグーグルマップ・ストリ-トビューから引用) |
■ 「クラスB消火用泡剤」(Class B Firefighting Foam)は、火災クラスB、すなわち可燃性液体の火災に適した消火用泡剤をいう。米国では、燃焼物によって火災クラスをA~Kの6種に分けている。クラスAは普通の可燃物、クラスBが可燃性液体、クラスCが電気設備、クラスDが燃焼性金属、クラスEが放射性物質、クラスKが食用油脂である。
なお、日本では、消火器の基準(消火器の技術上の規格を定める省令)から、A火災:普通火災、B火災:油火災、C火災:電気火災の3種に分けている。また、消火用泡剤については「泡消火薬剤の技術上の規格を定める省令」が制定されており、大容量泡放射砲システムの導入を契機に、たん白泡、合成界面活性剤泡、水成膜泡の3型式の泡薬剤基準が決められたが、世界の消火用泡剤の進歩に合わせ、同等の性能を有するものを排除しない内容になっている。
所 感
■ 今回の発災タンクは、円筒タンクではなく、枕型タンクである。火災写真を見ると、地上部からも火炎が上がっており、漏洩を伴った地上火災と思われる。
建設資材用の骨材(砕石・砂)の
生産プラントに適した場所に舗装用アスファルト・プラントを建設したためか、水利条件が悪かったようだ。火災写真の中に応援で出動したピクチャ・ロック消防署の車両は給水車と見られ、発災場所が建設資材の生産プラントで消火用水が不足するという判断のもとに給水車の応援を要請したものと思われる。それでも、消防活動に必要な絶対量の水が不足するため、井戸から強引に給水したことを挑戦(チャレンジ)と表現しているので、厳しい状況の中での決断があったものと思われる。
実際の消火活動では、理想的な条件が揃っているわけでなく、的確な状況判断と決断力が必要なことを示す事例である。
備 考
本情報はつぎのようなインターネット情報に基づいてまとめたものである。
・Kgnu.com, Northwest Fire Fights Fire at Oil
Storage Facility, September 23, 2013
・MaranaWeeklyNews.com, Northwest Fire Responds to Fire in
Oil Storage Tank , September 24, 2013
・Marana-avravalley.tucsonnewsnow.com, Materials Plant Reopens after Oil Tank Fire
, September 24, 2013
・Azstarnet.com, 2
Oil Storage Tanks Caught Fire at Marana Plant,
September 24, 2013
後 記: 台風24号は、山口県では前日に小学校・幼稚園の休校を決めるほど心配されたのですが、駆け足で通り過ぎ、登校時間には晴れ間も見える天気になりました。一部りんご園(山口県にもあります)のりんごが落ちてしまう被害はありましたが、河川の氾濫もなく、なによりでした。
周南市徳山動物園に来たゾウのナマリーとミランダ
(写真は周南市徳山動物園のウェブサイトから引用) |
地元周南市の町の良い話題としては、徳山動物園にゾウさんが2頭来たことです。昨年2月にゾウのマリが死んだ後、童謡「ぞうさん」の作詞家まどみちおさんが周南市出身ということもあり、ゾウ・プロジェクトが結成されるほどゾウへの思い入れが大きかったのですが、このほどスリランカから贈られ、9月28日から公開されています。早速、小学校では、遠足でゾウさんを見に行っています。なぜかこどもはアンパンマンとゾウさんが好きですね。
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