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2025年12月21日日曜日

インドのリサイクル施設で燃料タンクが爆発・火災

  今回は、2025127日(日)、インドのグジャラート州パンチマハル地区の金属廃棄物リサイクル企業のルバミン社ハロル工場内にある燃料油タンクが爆発して火災になった事例を紹介します。

< 発災施設の概要 >

■ 発災があったのは、インド(India)グジャラート州(Gujarat)パンチマハル地区 (Panchmahal District)ハロル・タルカ(Halol taluka)にある金属廃棄物リサイクル企業のルバミン社(Rubamin Co.)のハロル工場である。  

■ 事故があったのは、工場内にある燃料油タンクである。タンクに入っていた油種は、加熱炉用燃料、重油、灯油などと報じられているが、はっきりしない。

<事故の状況および影響>

事故の発生

■ 2025127日(日)の夕方、燃料油の入ったタンクが爆発し、火災が発生した。

■ 爆発後に上がった炎と濃い煙は、数km離れたところからでも見えた。爆発・火災によってルバミン社の構内では混乱が生じた。

■ 発災にともない、4つの消防隊が出動した。

■ 事故にともなう死傷者は報告されていない。

■ 出動した消防隊は火災の制圧に努めた。

■ ユーチューブでは、タンク火災のニュースを伝える動画が投稿されている。

 YoutubeMassive Blast at Halol Rubamin Plant |હાલોલની રૂબામિન કંપનીમાં ધડાકાભેર બ્લાસ્ટ |Halol Rubamin Blast2025/12/08

    ●YoutubeFIRE IN Rubamin Private Limited, halol, 07.12.25,06PM 2025/12/08

被 害

■ 燃料油タンク1基が損壊した。内部の燃料油が焼失した。 

■ 死傷者はいなかった。 

< 事故の原因 >

■ 爆発の原因は不明である。 

< 対 応 >

■ 消防隊は、数時間以内に鎮火に成功した。

■ 会社経営陣は地区の災害管理当局に事故の発生と鎮火の事態を報告した。

■ メディアの1社は、事故の予防策として、つぎのように指摘している。 「定期的な安全監査を実施し、タンクの適切なメンテナンスを確保し、緊急時の手順に関する従業員の訓練を実施することで、ルバミン社における火災事故を防ぐことができた可能性がある」

補 足

■「インド」(India)は、正式名称はインド共和国で、南アジアに位置し、インド亜大陸の大半を領してインド洋に面する人口約145,000万人の連邦共和制国家である。首都はニューデリーで、最大都市はムンバイである。

「グジャラート州」(Gujarat)は、インド西海岸沿いに位置し、人口約6,044万人の州である。 。

「パンチマハル地区」 (Panchmahal District)は、パンチ・マハルとも表記し、グジャラート州東部に位置する地区で、人口は約239万人である。

「ハロル・タルカ」(Halol taluka)は、パンチマハル地区の一部で、人口約24万人であり、中心地はゴドラである。

 このブログでインドのタンク関連情報を紹介したのは、「インドの化学プラントでタンクから無水酢酸が漏洩、被災者55名」20195月)以来で、このほか6件ある。

■「ルバミン社」(Rubamin)は、1981年にインドのグジャラート州で設立された金属廃棄物リサイクル企業である。製油所の使用済み触媒、亜鉛メッキ工場の亜鉛廃棄物、電気自動車のバッテリー、製造スクラップなど使用済み製品のリサイクルを行っている。インドのグジャラート州に75エーカーの工場を有し、金属リサイクル事業ではモリブデン、バナジウム、タングステンなどの重要金属の回収を行っている。

■「発災タンク」は工場内にある燃料油タンクである。油種は加熱炉用燃料、重油、灯油などと報じられており、明確には分からない。被災写真を見ると、固定屋根式円筒タンクであり、側板にはタンク保温用のサポートらしいものがある。保温タンクであれば、重質油系であるが、設置場所の気候や予熱などを考慮して、重質油でなくても保温を設置しているところもある。また、被災写真では、タンク屋根がタンク横に落下しているように見える。グーグルマップで調べると、円筒タンクが2基並んで設置されている場所があるが、発災タンクだと特定はできない。このタンクの直径は約4.0mであり、高さを68mと仮定すれば、容量は75100KLである。

所 感

■ 事故原因は不明である。燃料油タンクが爆発した事故の状況は速報レベルの報道で終わっているので、ほとんど分からない。印象とすれば、設備的な欠陥が顕在化したというよりも、運転関連のミスであるように思う。タンクの屋根が噴き飛んでいるようなので、タンク内に爆発混合気が形成した可能性が高い。タンクに入っていた油種は加熱炉用燃料、重油、灯油などと報じられているが、いずれにしても重質油または中質油で爆発する可能性は低い。これまでの事例でいえば、間違えて軽質油を混入させたものだと思う。軽質油を導入後、タンク内の油を供給したため、タンク内に空気が入ってある時点で爆発混合気が形成したのではないだろうか。

■ 消火戦略には積極的戦略・防御的戦略・不介入戦略の3つがあるが、いずれの戦略を選択したのか分からない。火災写真は遠くから撮られたものだけだが、かなり大きい炎が上がっている。典型的な泡薬剤による積極的戦略をとるべき事例であるように思う。しかし、被災写真ではタンク火災終盤で放水を行っているのがあるが、泡消火を実施した形跡は乏しい。


備 考

 本情報はつぎのインターネット情報に基づいてまとめたものである。

     Timesofindia.indiatimes.com, Blast in oil tank sparks fire at Halol unit,  December  08,  2025

     Neuvisto.com, Blast in oil tank sparks fire at Halol unit,  December  08,  2025

     Youtube.com, Massive Blast at Halol Rubamin Plant |હાલોલની રૂબામિન કંપનીમાં ધડાકાભેર બ્લાસ્ટ |Halol Rubamin Blast,  December  08,  2025


後 記: インドのタンク火災ということで、調べることとしました。この5年間ほどインドの情報がありませんでしたが、特に取扱うのを避けたわけではありません。しかし、発災時間が夕方ということで内容がそれほど詳しくはありません。画一的に断言できませんが、この5年でインドのタンク事故情報の質が低下してきているように感じます。

2025年12月12日金曜日

米国オクラホマ州の石油生産関連の施設でタンク設備が爆発・火災

 今回は、20251113日(木)、米国オクラホマ州オクラホマ・シティにある石油生産関連の施設内の塩水処理施設とみられるタンク設備が爆発・火災を起こした事例を紹介します。

< 発災施設の概要 >

■ 発災があったのは、米国オクラホマ州(Oklahoma)オクラホマ・シティ(Oklahoma City)ムスタング(Mustang)にあるバリダス・エナジー社(Validus Energy)の石油生産関連の施設である。

■ 事故があったのは、サウスウェスト89番通り(Southwest 89th Street)とサウス・シマロン・ロード(South Cimarron Road)交差点付近にある石油生産関連の施設内の塩水処理施設とみられるタンク設備である。

<事故の状況および影響>

事故の発生

■ 20251113日(木)午後3時頃、施設内のタンク1基が爆発し、火災となった。爆発で円筒型タンクの屋根が噴き飛んだ。

■ 住民のひとりは、「私は1マイル(1.6km)ほど離れたところにいて停電になり、大きな音が聞こえました。それは家が爆発したように感じました」と語っている。

■ 発災にともない、消防署の消防隊が出動した。

■ 発災時、現場には誰もいなかった。

■ 出動した消防隊は泡消火活動を行い、消火にあたった。

■ 事故にともなう負傷者はいなかった。

■ 火災の原因は現時点では不明である。

■ ユーチューブには、石油生産関連の施設の火災を伝えるニュース動画が投稿されている。

 Youtube.comOklahoma City fire crews responding to tank battery fire2025/11/14

 ●Youtube.comFire crews battle tank battery explosion and fire2025/11/16

被 害

■ タンク1基が損壊した。内部の油が焼失した。

■ 負傷者はいなかった。

< 事故の原因 >

■ 火災の原因は不明である。

< 対 応 >

■ 消防隊の消火活動によって火災は鎮火した。

■ 出動したオクラホマ・シティ消防署は、ソーシャルネットワーク(SNS)にタンク火災の事故の写真を投稿した。

補 足

■「オクラホマ州」(Oklahoma)は、米国の中部にあり、人口約409万人の州である。

「オクラホマ・シティ」(Oklahoma City)は、オクラホマ州中央部に位置し、同州最大の都市で、人口約65万人である。

■「バリダス・エナジー社」(Validus Energy)は、コロラド州デンバーに拠点を置き、石油・ガス上流部門の開発を行っている探鉱・生産会社である。主にオクラホマ・シティ近郊で石油開発を行っている。

■ 発災施設はタンク・バッテリーと報じられているが、被災写真などからこのブログでは「石油生産関連の施設内の塩水処理施設」とした。「塩水処理施設」は、天然ガス井の生産で付随してきた塩水をタンクローリー車などで集積して、油水分離し、水(塩水)はポンプで地下に戻すプロセスである。一般的な塩水処理施設のプロセスフローの例は図のとおりである。塩水処理施設は、過去からタンク火災が発生しており、最近でも同じオクラホマ州で起こった「米国オクラホマ州の塩水処理施設で落雷によるタンク火災」(20255月)の事例がある。

■「発災タンク」は塩水処理施設内の円筒タンクである。一般的に塩水タンク群はFRP製が使用されるが、この施設では鋼製が使用されていると思われ、発災タンクは鋼製の屋根が噴き飛んでいる。グーグルマップで発災タンクを調べると、直径は約3.5mで、高さを6.0mと仮定すれば、容量は57KLとなる。

所 感

■ 火災原因は不明と報じられている。塩水処理施設内の円筒タンクは火災が多い。考えてみれば、タンクは塩水の中に付随している油(天然ガス)を分離しているが、このプロセスには安全設備がなく、爆発・火災のリスクは高い。おそらく、同伴してくる油の質は重質だというのが前提であろう。しかし、実際には軽質分が混じってきて爆発混合気を形成しやすい。ここに着火源(静電気や落雷など)があれば、容易に爆発や火災が起こる。このようなリスクを抱えながら、米国では陸上の原油や天然ガスを生産し、繁栄しているのだろうと思ってしまう。

■ 消火戦略には積極的戦略・防御的戦略・不介入戦略の3つがあるが、報じられているところによれば、泡消火の積極的戦略をとっている。FRP製タンクを使用している塩水処理施設では、不介入戦略をとるが、鋼製のタンク群でタンク屋根が噴き飛んでいるので、積極的戦略をとっている。火災写真では、かなり激しく燃え、黒煙が噴き出しているが、泡消火の形跡はないように見える。おそらく、油量は多くなく、火災時間は短かったのではないだろうか。


備 考

 本情報はつぎのインターネット情報に基づいてまとめたものである。

     News9.com, Authorities respond to Mustang tank battery fire,  November 13,  2025

     Facebook.com, Oklahoma City Fire Department,  November 14,  2025

     Youtube.com,  Oklahoma City fire crews responding to tank battery fire, November 14,  2025 

  ・Youtube.com, Fire crews battle tank battery explosion and fire, November 14, 2025


後 記: タンクバッテリーの火災ということで、調べることとしました。しかし、被災写真がバラバラで中にはフェーク写真があるのではないかと思ってしまうような事例でした。発災場所も違っているのではないかと思いました。断片的な情報をつないでいくと、事故状況がだんだん分ってきました。これまでの事故と同様、オクラホマ州のタンク火災の情報は疲れますが、従来よりもまとまったブログになりました。

2025年12月8日月曜日

米国テキサス州ヒューストンの石油生産施設でタンク火災、少年と関係か

 今回は、米国テキサス州ハリス郡ヒューストンにある石油生産施設で貯蔵タンクが火災となった事例を紹介します。

< 発災施設の概要 >

■ 発災があったのは、米国テキサス州(Texas)ハリス郡(Harris)ヒューストン(Houston)のダウンタウンから北のウォーレンウッド・ドライブ(Warrenwood Drive12600番地にある石油生産施設である。

■ 事故があったのは、石油生産施設内の貯蔵タンクである。タンクは地中から天然ガスを汲み出した未精製の石油と塩水が入っていたとみられる。

<事故の状況および影響>

事故の発生

■ 20251126日(水)午後2時頃、ウォーレンウッド・ドライブの近くにある石油生産施設で火災が発生した。

■ 発災にともない、消防隊が出動した。

■ 火災は複数の商業地区に近い道路脇にある石油生産施設で発生し、多くの住民が爆発音を聞いた。タンク近くの住民のひとりは、「大きな音が聞こえたのですが、どこから来たのか分かりませんでした。姉が2階にいて、家が揺れたので何かが落ちたのかもしれないと思いました」と語っている。

■ 火災になったのは、施設内の貯蔵タンク2基で、天然ガスの未精製の石油製品が燃えた。

■ 消防隊は近くの道路の交差点を封鎖したが、道路の向こう側から消火ホースを展張して回収され次第、交差点は再開する予定だという。

■ 事故にともなう負傷者は報告されていない。

■ 消防隊が現場周辺の空気の状態を監視しているが、当局は煙による健康被害は懸念されておらず、被害の報告もないという。近隣住民は煙が辺り一面に漂う様子を見守った。しかし、大気質への影響は最小限にとどまったようで、当局は屋内退避命令を出さなかった。

■ 火災の原因は調査中である。

■ ユーチューブでは、タンク火災の状況を伝える動画が投稿されている。

 YoutubeFire at NW Harris County tank farm contained2025/11/27

   ●YoutubeHarris County investigators release footage of juveniles fleeing scene of petroleum storage fire2025/11/27

   ●YoutubeKlein-area tank fire | Full report2025/11/27

   ●YoutubeFirefighters contain tank fire in northwest Harris County2025/11/27

被 害

■ 石油貯蔵タンク2基が損傷した。内部の石油が焼失した。

■ 負傷者は出なかった。

< 事故の原因 >

■ 火災の原因は調査中である。当局は、火災発生時にタンクにふたりの少年がおり、原因に関して何らかの関係があるとみている。  

< 対 応 >

■ 当初、出動した消防隊は消火を試みず、タンクの冷却のみにとどめていた。しかし、タンク所有者の担当者が現場に到着し、いくつかのバルブを閉めると、消防隊員は泡消火剤を使用して制圧にかかった。 

■ 泡消火を始めると、消火用泡剤が不足しそうなので、ほかの消防署から泡薬剤の支援を要請した。

■ 火災は、午後420分時点で鎮火した。ハリス郡北西部の消防隊は石油生産施設の火災を消し、ヒューストン近郊の企業や地域住民に危険を及ぼす可能性のあった火災を終息させた。

■ ハリス郡消防局は、火災発生時に石油生産施設から走り去る少年ふたりの動画を公開した。消防局は、医療処置が必要かどうかを見極めるため、ふたりの行方を探している。少年のひとりが近くの調整池で顔に水をかける様子が見られ、医療処置が必要になる可能性があるという。

■ 消防署の緊急無線の録音には、爆発時にタンクに少年が載っていて、そこから投げ出された可能性があるという。

■ この事故は懸念を引き起こした。火災は限定的なものにとどまったが、これらの施設が緊急時に危険をもたらす可能性があることを住民に改めて注意喚起する必要がある。石油や化学物質の貯蔵施設は地域経済に重要な役割を果たしている。一方、これらの施設での火災は、安全当局や地域指導者の迅速な対応を必要とする。これらの事故は、地域全体の産業安全に関する継続的な懸念を浮き彫りにしている。

ハリス郡北西部は、新たな住宅地区やビジネスパークの建設により拡大を続けている。成長が加速すれば、工業地帯の近くに住み、人が増えることになる。迅速な緊急対応はリスクを軽減し、周辺地域を保護するのに役立つ。

補 足

■「米国テキサス州」(Texas)は、米国南部にあってメキシコ湾岸に面し、メキシコと国境を接する人口約3,050万人の州である。

「ハリス郡」(Harris)は、テキサス州の南東に位置し、人口約473万人の郡である。

「ヒューストン」(Houston)は、ハリス郡の南に位置し、人口約230万人の都市である。

■「発災タンク」は、石油生産施設内の貯蔵タンクで、地中から天然ガスを汲み出した未精製の石油と塩水が入っていたとみられる。グーグルマップで調べると、ウォーレンウッド・ドライブ近くには2か所の貯蔵タンクがある。いずれも2基のタンクを要するが、メディアのひとつで発災タンクが明確に明示されている。発災タンクの直径は約3.5mであり、高さを4.2mと仮定すれば、容量は約40KLである。タンク2基のうち、火災が早く消えた1基が塩水タンクだろう。

所 感

■ 火災の原因は、「貯蔵タンク事故の研究」20118月)の分類によると、おそらく「故意の過失」だろう。

ハリス郡消防局は、火災発生時に石油生産施設から走り去る少年ふたりの動画を公開し、「医療処置が必要かどうかを見極めるため、ふたりの行方を探している」というが、監視カメラはタンクそばの鉄塔の上にあり、タンク上での少年の行動は撮影されている。少年の保護目的で動画公開を控えていると思われる。

■ この種のいたずらの「故意の過失」によるタンク火災は、「米国オクラホマ州で銃弾によるタンク火災」20122月)以来である。しかし、米国における陸上の小規模な石油生産施設はほとんど安全上の設備や対策がないところが多く、日本から見れば、おかしいくらい無防備である。

 いたずらによる「故意の過失」によるタンク火災があったとしても、気に留めないのが石油王国の米国の世情なのだろう。しかし、メディアの中にも住宅地に取り残された石油生産施設に警鐘を鳴らすところがでてきたのは変化の表れである。

■ 消火戦略には積極的戦略・防御的戦略・不介入戦略の3つがあるが、当初は冷却放水による防御的戦略をとっている。石油生産施設のタンク火災では、不介入戦略をとることもあるが、さすがにまわりの商業施設や住宅地を考慮して泡消火の積極的戦略をとった。


備 考

 本情報はつぎのインターネット情報に基づいてまとめたものである。

    Fox26houston.com, Klein-area fire,  November  27,  2025

    Abc13.com, Fire marshal's office says they want to talk to 2 juveniles seen running in area of tank farm fire,  November  27,  2025

    Bicmagazine.com, Tank fire contained in northwest Harris County,  November  26,  2025

    Click2houston.com, Fire Marshal’s Office searching for 2 juveniles seen running away from NW Harris County tank farm around time of fire,  November  26,  2025

    Houston.com, Houston Crews Extinguish Tank Farm Fire in Northwest Harris County,  November  27,  202

    Msn.com, Firefighters battle tank fire in northwest Harris County,  November  26,  2025 

    Hoodline.com, Officials Quell Tank Blaze in Northwest Harris County, Search for Two Youths Possibly Impacted by Incident,  November  27,  2025


後 記: 今回の事例で感じたのは、タンク事故への公的機関の対応とタンク火災の消火戦略のとり方について何かしっくりこない違和感がありました。何かなと思っていたのですが、これが日本だったら違った対処をしているのではないかということでした。それで「所感」のようなことを書きました。

2025年12月2日火曜日

イラクの石油貯蔵所で溶接工事中にパイプラインが爆発・火災、死傷者7名

 今回は、20251026日(日)、イラク南部のバスラ県にあるバスラ・オイル社の石油貯蔵所で起こった爆発・火災事故を紹介します。

< 発災施設の概要 >

■ 発災があったのは、イラク(Iraq)南部のバスラ県(Basra)ブルジャシア地区(Burjesia)にあるバスラ・オイル社(Basra Oil Company)の石油貯蔵所である。

■ 事故があったのは、ズバイル第1石油貯蔵所(Zubair)内にある石油輸出用のポンプ・タービン施設である。施設は原油を輸出網に移送するためのポンプ・タービン設備とパイプラインが設置されている。

<事故の状況および影響>

事故の発生

■ 20251026日(日)午前9時過ぎ、ズバイル第1石油貯蔵所で爆発があり、火災になった。

 目撃した人によると、石油貯蔵所内で炎が噴き出し、遠く離れた場所からでも見えるほどの濃い黒煙が空高くに立ち上ったという。

■ 発災にともない、消防隊が出動した。 出動したのは、石油部門、バスラ県、石油部門を支援する団体からの安全対策チームと消防チームであり、火災の鎮圧にあたった。 

■ バスラ民間防衛局の情報筋によると、爆発はズバイル第1石油貯蔵所内にあるポンプ・タービン施設とみられ、大規模な火災が発生したという。一方、イラク石油省は、ズバイル第1石油貯蔵所の古いポンプシステムでガス漏れによりパイプラインで爆発・火災が発生したといっている。

■ 事故にともない、バスラ・オイル社の保管所部門責任者が死亡し、6名が負傷したという。負傷した作業員の中には重度の火傷を負い、危篤状態にある者もいると報じられていたが、その後、ひとりの死亡が確認され、死者2名、負傷者5名となった。一方、バスラの地元当局者は、爆発で1名が死亡、作業員25名が負傷していると伝えられた。

■ 現場作業員のひとりは、犠牲者となった保管所部門責任者は施設内で漏洩の報告を受け、すぐに現場に赴いたといい、「保管所部門責任者が民間防衛局と電話中に爆発が発生し、火傷と窒息によって即死だった」と付け加えた。

■ バスラのズバイル第1石油貯蔵所内の老朽化したポンプ系からガス漏れが発生し、作業員がパイプライン付近で溶接作業を行っていた際に、爆発・火災が発生した。このパイプラインは、ズバイル油田から近隣の貯蔵タンクへ原油を移送しているという。

■ 消防隊は、原油を移送するパイプラインの一部で発生した火災の消火活動に当たった。火災は複数の倉庫を巻き込んだ。

■ ユーチューブやフェースッブックには、石油貯蔵所の事故を伝える動画が投稿されている。

 Youtube.com, Massive Fire in Basra — Gas Depot Explosion Halts Oil Exports in Iraq2025/10/26

 ●Youtube.com, Iraq’s Zubair Oilfield Catches Fire, Kills Two2025/10/26

 ●Facebook.com,A gas leak triggered an explosion at the Zubair gas storage2025/10/27

   ●Instagram.com,  مفاجئ يهز حقل الزبير النفطي في البصرة جنوب العراقالانفجار ... فرق الاطفاء تعمل على اخماد الحريق ومنع امتداده الى مستودعات النفط المجاورة.  」2025/10/26

 ●Youtube.com,انفجار توربينات بمصفاة الزبير في البصرة .. تفاصيل جديدة 」2025/10/26

■ ティックトック(TikTok)には、発災状況を上空から撮影した動画が投稿されている。 動画から切り取った写真の一部を下に示す。

被 害
■ ズバイル第1石油貯蔵所内にある石油輸出用のポンプ・タービン施設およびパイプラインが損傷した。

■ 死傷者は7名出た。死者2名、負傷者5名である。

< 事故の原因 >

■ 原因は特定されていない。ズバイル第1石油貯蔵所内のポンプ系からガス漏れが発生し、作業員のパイプライン付近での溶接作業で爆発・火災が発生したとみられる。

< 対 応 >

■ 火災現場は部分的に鎮圧されたが、完全消火に向けた努力が続けられた。

バスラ・オイル社(BOC)の声明によると、消防隊は消火に数時間取り組み、1026日(日)午後半ばには完全に鎮火したという。

■ イラク石油省は、1026日(日)、石油貯蔵所内の火災は完全に鎮火したと発表した。

■ ズバイル第1貯蔵所の火災によりより40万〜60万バレル(63,60095,400KL)の原油が失われたと報じられている。これは2025年の石油業界で起きた最大級の事故の一つとなる。

■ イラクのクルディスタン地域では、過失や安全基準の欠如により、石油施設での火災が頻繁に発生しているという。20256月には、イラク中部サラーフ・アル=ディーン県の油田で爆発が発生し、作業員5人が負傷した。

補 足

■「イラク」(Iraq)は、正式にはイラク共和国で、中東に位置する人口約4,022万人の連邦共和制国家である。首都はバグダードで、古代メソポタミア文明を擁した土地にあり、世界第5位の原油埋蔵国である。石油輸出国機構(OPEC)で第二位の輸出国で、日量平均400万バレルの原油を生産している。 民族はアラブ人(シーア派約6割、スンニ派約2割)、クルド人(約2割、多くはスンニ派)などから構成される。言語はアラビア語とクルド語が公用語である。

「バスラ県」は、イラクの南東に位置し、県都は県名と同じバスラ市で人口約290万人の県である。。

「バスラ市」(Basra)は、アラビア半島の北東端に近くに位置し、ペルシャ湾に注ぐシャット・アル・アラブ川沿いにあるイラク南部の港湾都市で、人口約148万人の都市である。夏の気温は50℃を超えることもあり、イラクで最も暑い都市の一つである。

「ズバイル」(Zubair)は、イラクのバスラ県にあり、人口約12万人の都市である。   

■「バスラ・オイル社」 (Basra Oil Company) は、旧称イラク南部石油会社で、イラク南部の石油生産を担うイラクの 国営企業である。バスラに拠点を置く。バスラ・オイル社はイラク国営石油会社(INOC)の主要な基盤の一つである。1970年代、バスラ・オイル社は、国営石油会社の子会社として国営石油会社による直接投資プロジェクトの最初の中核であり、その基盤となった。

 バスラ・オイル社の事故としては「イラクのルマイラ油田で石油タンク設備が爆発・火災、負傷者6名」2025年4月)がある。

■「発災施設」は、報道によって爆発がタービンという話とパイプラインで起こったという話の大きくふたつあった。タービンの種類は分からないが、通常、タービンが今回のような大爆発を起こすことは考えられない。ズバイル第1石油貯蔵所内のポンプ・タービン施設系のパイプラインからガス漏れが発生し、作業員の溶接作業で爆発・火災が発生したとみられる。

所 感

■ 報道では発災施設や原因がいろいろ出てはっきりしないが、ここでは総合的に考えて石油貯蔵所内のポンプ・タービン施設系のパイプラインからガス漏れが発生し、作業員の溶接作業で爆発・火災が発生したとした。

 被災写真も多く報じられているが、石油貯蔵所の何が火災になっているのかも判然としない。火災状況からみると、かなり広範囲で激しい火災である。パイプラインから漏れ出たとすれば、大口径の配管から大量に原油が流出したと思われる。ポンプ・タービン設備のほか倉庫が火災になっている。このほか施設内の設備も火災になっているようで、小型タンクも火災になっているのではないだろうか。

■ 消火活動は放射能力の大きい大型化学消防車も出動しているが、火点が多いため、細い消火ホースで対応している活動写真が多い。午前9時頃の発災に対して午後半ばには鎮火させたと報じられているが、もっと時間のかかった火災ではないだろうか。


備 考

 本情報はつぎのインターネット情報に基づいてまとめたものである。

    Rudaw.net,  One killed, several injured in Basra oil depot explosion,  October 26,  2025

    Qna.org.qa,  1 Killed, 6 Injured in Oil Depot Explosion in Southern Iraq,  October 26,  2025

    Avapress.com,  Massive explosion in Al-Zubair oil field, Iraq,  October 26,  2025

    Shafaq.com, Gas leak sparks deadly fire at Basra oil depot,  October 26,  2025

    En.964media.com, Fire at Basra’s zubair 1 oil Field kills division chief, injures four,  October 26,  2025

    Thenationalnews.com, Pipeline explosion at oilfield in southern Iraq kills at least one worker,  October 26,  2025

    Joiff.com, IRAQ – Fire at Zubair 1 Oil Field Leaves One Dead and Four Injured,  October 27,  2025

    Reuters.com, Two workers killed in pipeline fire at Iraq's Zubair oilfield, officials say,  October 26,  2025

    English.news.cn, Fire at Iraq's Basra oil depot kills 1, injuries 4,  October 26,  2025

    Thisislebanon.com, الفيديوانفجار ضخم يهزّ مستودعات النفط في العراق,  October 26,  2025

    Attaqa.net, العراق يفقد 600 ألف برميل نفط في حريق مستودع زبير 1,  October 26,  2025

    Thisislebanon.com,   بالفيديوانفجار ضخم يهزّ مستودعات النفط في العراق,  October 26,  2025

    Aawsat.com, لعراق: مصرع عاملَين في حريق خط أنابيب بحقل الزبير النفطي  ,  October 26,  2025

    Eanlibya.com, العراق.. قتلى ومصابون بانفجار مستودعات نفط جنوب البلاد   ,  October 26,  2025

    Shafaq.com, النفط العراقية تعلن إخماد حريق مستودع زبير/1 بشكل كامل ,  October 27,  2025

    Alsumaria.tv, إحصائية أولية لضحايا انفجار مستودع الزبير.. وترجيحات بتأثر تصدير النفط,  October 26,  2025

    Altaghier.tv, وزارة النفط: حريق مستودع الزبير ناجم عن تسرب غاز ,  October 26,  2025


後 記: イラクのバスラ・オイル社では、20251月に「イラクのルマイラ油田で石油タンク設備が爆発・火災、負傷者6名」の事故を起こしています。このときの後記に「イラクの事故情報は疲れます。(中略)情報が不確かな上、フェークニュースらしい情報も入り乱れ、・・・」  しかし、今回は前回よりも疲れました。発信元(発災事業所や公的機関)が状況をよくわかっていないので、メディアの記事が曖昧で不確かです。このような情報を集めても集約できないので、真実(らしい)はこうではないかという自分の判断(力)を頼りに事故状況をまとめました。