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2025年4月15日火曜日

マレーシアでペトロナス系ガスパイプラインが爆発、負傷者305名

 今回は、202541日(火)、マレーシアのセランゴール州スバンジャヤのプトラハイツを通っているペトロナス・ガス・ベルハド社のガスパイプラインが漏洩により爆発があり、火災が発生し、多数の被害者や負傷者が出た事故を紹介します。

< 発災施設の概要 >

■ 発災があったのは、マレーシア(Malaysia)セランゴール州(Selangor)スバンジャヤ(Subang Jaya)のプトラハイツ(Putra Heights)にある国営石油会社;ペトロナス社(Petronas)系のパイプライン施設である。

■ 事故があったのは、住宅地のプトラハイツを通っているペトロナス・ガス・ベルハド社(PETRONAS Gas Berhad PGB)天然ガス用の直径36インチのガスパイプラインである。パイプラインは1991年に設置され、30年経っている。

< 事故の状況および影響 >

事故の発生

■ 202541日(火)午前810分頃、プトラハイツの地下を通っているガスパイプラインで漏洩により爆発があり、火災が発生した。爆発による炎は空高く舞い上がり、発生した巨大な炎は数マイル先からでも見えた。

■ イスラム教徒が祝うお祭り“ハリラヤ” の2日目に起きた爆発は祭りの静けさを打ち砕いた。 住民のひとりは、耳をつんざくような音を聞き、飛行機の墜落事故だと思ったと語っている。近くの住民は、家のドアや窓が揺れ、強い揺れを感じたという。

■ 最初の爆発で炎や土砂、瓦礫が空に舞い上がり、多くの人が命からがら逃げ出した。

■ 足に火傷を負った住民は、「家から急いで逃げたが、近くの火災の熱で転倒し、火傷を負ってしまった。自宅の天井が崩落し、敷地内に駐車していた自分の車が押しつぶされたのを見てショックを受けた」と語っている。火災現場近くの住民は、燃え盛る火を近くに感じながら逃げる途中で負傷した人も多いという。

■ 発災にともない、セランゴール消防局はパイプラインで火災が発生したことを確認し、関係消防署の消防隊を出動させた。出動したのは11の消防署から78名の消防士である。

■ ペトロナス社は、午前840分過ぎ、ガスパイプラインの主要なバルブ4か所を閉鎖し、孤立させることとした。この作業には約4時間かかると予想された。

■ 午前930分頃、炎が燃え盛る中、消防隊は消火活動を続けた。当時の火炎温度は約1,000℃に達していたという。一方、爆発後の破壊の様子をとらえたビデオがソーシャルメディア上で拡散し始めていた。また、ガスパイプラインの爆発について虚偽の情報も流布しており、警察が調査しているという。

■ 現場から半径290m以内で緊急避難が行われた。州知事は、消防署が安全対策として近隣の住宅を避難させ、事態が収束するまで住民は近隣のモスクなどに避難したと述べた。火災の影響を受けて避難した住民は、合計74世帯364人が2か所の仮設避難所に避難したという。

■ 事故にともなう負傷者は305人に達した。治療中の被害者は134人で、44日(金)時点で48人は依然として病院や診療所で治療を受けており、集中治療室に入った重傷者は1名である。死亡者は報告されていない。

■ この事故により、308世帯1,254人が被害を被り、住宅237棟と車両365台が被害を受けた。家屋の全壊は87棟で、148棟は修理が必要となった。

■ ペトロナス社は、 午前810分にペトロナス・ガス・ベルハド社のガスパイプラインで火災が発生したことを発表した。事故を起こしたパイプラインはバルブによって孤立したと補足した。災害管理当局は、バルブが閉止されれば、最終的に火は消えるだろうと語った。

■ 環境省は、午前12時頃から現場付近の空気質の監視を開始した。

■ 高速道路や現場周辺の道路はすべて通行制限された。

■ 爆発時、空に立ち昇った炎は20階建ての高さの60mに達した。その後、ガスパイプラインから高さ30mの炎が燃え上がり続けたが、炎は徐々に弱まり、午後3時頃には消防士が近づくことができるほど小さくなった。

■ バルブ閉止によって、パイプラインの内部圧力は40バールから0.1バールに低下した。当局はさらなる危険を防ぐため、残留ガスを燃焼させ、燃え尽きる措置を取った。

■ ガスパイプラインの爆発と火災により、爆心地の現場景観は劇的に変化し、長さ24m×21m×深さ10mのクレーターが形成された。消防署の予備調査では、火災はガスパイプラインが長さ約500mにわたる漏れによって発生したとみられるという。

■ 47日(月)、プトラハイツで発生したガスパイプラインの火災により、マレー半島の中部地域にはガス供給が中断している地域があるという影響が出ている。一方、電力供給は安定しているという。

■ ユーチューブでは、事故の状況を伝える動画が多数投稿されている。 主なものはつぎのとおり。

 ●Youtube、Malaysia: Massive Gas Pipeline Explosion Sparks Fire in Putra Heights2025/04/01

 ●Youtube、Dozens suffer burns after gas pipeline leak triggers massive fire in Malaysia2025/04/02

    Youtube、Drone footage reveals devastation at Putra Heights gas explosion site 2025/04/06

 ●Youtube、Saluran paip gas di Putra Height terbakar, api menjulang tinggi2025/04/01

 ●Youtube、PAIP GAS PETRONAS MELETUP DI PUTRA HEIGHTS, DAERAH PETALING, SELANGOR2025/04/01

 ●Youtube、Gas Meletup Putra Height2025/04/02


被 害

■ 直径36インチのガスパイプラインが損傷した。

■ 事故にともなう負傷者が305人出た。治療中の被害者は134人で、44日(金)時点で48人は依然として病院や診療所で治療を受けており、集中治療室に入った重傷者は1名である。死亡者は報告されていない。

■ 事故により308世帯1,254人が被害を被り、住宅237棟と車両365台が被害を受けた。家屋の全壊は87棟で、148棟は修理が必要となった。

■ 周辺の道路が通行制限された。   

< 事故の原因 >

■ 爆発はガスパイプラインの漏れによる。漏洩に至った原因などは調査中である。

< 対 応 >

■ 爆発・火災事故は鎮圧に8時間を要し、41日(火)午後345分に完全に鎮火した。 

■ ガスパイプラインはトレンガヌ州からマレー半島の南北やタイに天然ガスを輸送するためのもので、ガスパイプラインは3本ある。事故時、3本のパイプラインのうち1本が破裂し、ガス漏れを起こして爆発に至ったことが判明した。

■ 45日(土)、警察の初期捜査によると、41日(火)の事故現場から30mの場所で土木請負者が大規模な掘削作業を行っていたという。当日、土木請負者の掘削作業がパイプラインの敷設ルート付近で行われており、この作業がガスパイプラインの爆発に影響しているのではないかという疑問が出ている。これまでの警察の捜査では、土木請負者の設置した下水道管は深さ2.1mのところであり、ペトロナス社のガスパイプラインは道路の下5.6mに敷設されており、両者の間には1.6mの距離があるという。

■ 土木請負者の工事は、この地域の既存の地下下水道システムを交換する作業で、掘削機とバックホーが使用された。330日(日)の作業は中止されていた。作業では、バックホーは事故の前日に現場から撤去されたが、掘削機は、ガスパイプラインの爆発後、地中に埋まっていると考えられる。

■ 43日(木)、掘削作業を映したドライブレコーダーの映像とみられる動画がソーシャルメディアに投稿された。映像は328日と30日に撮影され、道路脇の掘削作業現場からそう遠くない場所で掘削機が映っている。この動画は140万回再生され、多くのソーシャルメディアユーザーの注目を集めている。

■ 46日(日)、警察は、ペトロナス社のガスパイプラインの爆発について請負者の掘削作業が影響したかどうかを判断する前にパイプラインを完全に見えるようにする必要があるとし、「作業は、警察によって、ペトロナス社、公共事業局(PWD)、マレーシア測量地図局(JUPEM)、労働安全衛生局(DOSH)、請負者などの共同のもとに実施している」とセランゴール警察署長は語っている。

 捜査のための掘削作業は、掘削機3台、ブルドーザー1台、バックホー1台を使用して行われ、深さ67mにあるとみられるガスパイプラインの全範囲を調査するために行われている。掘削作業は24時間体制で410日(木)時点でも、土壌が崩壊しないよう慎重に行われている。

■ 爆発により事故前から使用されていた掘削機が地中に埋もれており、掘削機を撤去するためにクレーターエリアを掘削する作業が415日(火)に行われる予定だという。


補 足

■「マレーシア」(Malaysia)は、東南アジアに位置し、マレー半島南部およびボルネオ島北部からなる連邦立憲君主制国家で、人口は約3,470万人。マレーシアはイギリス連邦加盟国のひとつで、首都はクアラルンプール(人口約177万人)である。

「セランゴール州」(Selangor)は、マレーシア中部の西部に位置し、人口約655万人の州である。

「スバンジャヤ」(Subang Jaya)は、セランゴール州の南部に位置する人口約95万人の都市である。

「プトラハイツ」(Putra Heights)は、1999年からマレーシアのセランゴール州スバンジャヤで開発されつつある住宅街である。

■「ペトロナス社」(Petronas)は、正式社名Petroliam Nasional Berhadで、19748月に創設されたマレーシアの石油および天然ガスの供給を行う国営企業である。マレーシアは東南アジアで第2位の石油・天然ガス生産国で、液化天然ガスの輸出では世界2位である。

「ペトロナス・ガス・ベルハド社」(PETRONAS Gas Berhad PGB)は、ペトロナス社系の会社で天然ガス部門を担っている。

■「発災箇所」について爆発と火災によって爆心地の現場景観が劇的に変化し、大きなクレーターが形成されている。グーグルマップで調べてもすぐに被災写真と結びつかず、特定に時間がかかった。このひとつの理由は、発災場所の前にある被災した建物が最近建ったものらしく、グーグルマップの写真では無かったことである。

■ ブログでは、最近、米国テキサス州におけるガスパイプラインの異常な事故を2件紹介した。

 ●「米国テキサス州のパイプラインで油窃盗中に爆発火災、石油生産施設へ延焼」 20253月)

 ●「米国テキサス州のパイプライン火災の原因は自殺者の車による破壊」20252月)

所 感

■ 強烈な爆発事故が起こったものである。爆心地の現場景観は劇的に変化し、長さ24m×21m×深さ10mのクレーターが形成されたという。これまでに戦争の爆弾やミサイルなどによる被害以外に、今回のような爆発事例は見たことがない。

■ 最近、タンク事故ではないが、異常なガスパイプライン事故を2件紹介し、米国テキサス州ではパイプラインの安全対策に問題があるという指摘をしてきた。米国の事故ではなく、原因はまだわかっていないが、近くで行った工事が関係したにしろ、パイプラインの経年劣化の見逃しにしろ、ガスパイプラインの安全対策に問題があることは確かである。


備 考

 本情報はつぎのインターネット情報に基づいてまとめたものである。

     Malaymail.com,  Police: Petronas gas pipeline needs full exposure to determine if contractor disrupted route,  April  07,  2025

     Edition.cnn.com, Burst gas pipe sparks colossal fire in Malaysia, injuring more than 100,  April  01,  2025

     Straitstimes.com, Malaysia gas pipeline fire: Excavator feared buried at site, no bodies found, say police,  April  05,  2025

     Therakyatpost.com, The Mystery Contractor: Putra Height Gas Explosion Has More Questions Than Answers,  April  07,  2025

      Petronas.com, Fire Incident at PGB Main Pipeline Near Putra Heights, Subang Jaya,  April  01,  2025

      Thestar.com.my, Putra Heights fire: Ground stabilisation intensified this morning,  April  09,  2025

      Theguardian.com, Malaysia fire: huge blaze erupts near Kuala Lumpur as gas pipeline explodes,  April  01,  2025

      Apnews.com,  A fireball from a burst gas pipeline in Malaysia injures 145 people,  April  01,  2025

      Channelnewsasia.com, ‘Restart from zero’: Uncertainties loom for Selangor’s Putra Heights residents after huge gas pipeline blaze,  April  01,  2025

      Theedgemalaysia.com,  Gas Malaysia says more areas to face gas supply disruption after Putra Heights blaze,  April  07,  2025

      Gempak.com,  Putra Heights Fire:  Timeline & Updates on the Gas Pipeline Explosion That Shook The Nation,  April  07,  2025

      Freemalaysiatoday.com, Those spreading false info on Putra Heights fire will face law, warn S’gor cops,  April  10,  2025

      Vygrnews.com, Massive Gas Pipeline Explosion in Malaysia’s Putra Heights: Injuries and Evacuations Reported,  April  01,  2025

      Pipeline-journal.net, Probe into the Cause of Putra Heights Gas Pipeline Fire Delayed & Aid Increased,  April  08,  2025

      Carz.com.my, Putra Heights Gas Pipeline Fire: What We Know So Far,  April  01,  2025

      Bernama.com, 32-feet Deep Crater formed at  Gas Pipeline Fire Site,  April  02,  2025

      Astroawani.com, Kebakaran paip gas Putra Heights: Siasatan awal diketahui hari ini,  April  04,  2025

      Mstar.com.my, Memang ada aktiviti korek tanah, 30 meter dari lokasi paip gas meletup,  April  04,  2025

      Malaysiagazette.com, Petronas sudah tutup valve saluran paip, 7 mangsa telah diselamatkan,  April  01,  2025

       Sinarharian.com.my, Kebakaran Putra Heights: Faktor tanah, kerja forensik di 'ground zero' belum dapat dimulakan,  April  10,  2025

       Beritaharian.sg, Kebakaran saluran gas di Selangor: Polis sahkan ada aktiviti korek tanah,  April  04,  2025


後 記: 最初に事故を知ったのは、キノコ雲のような爆発直後の炎の写真で、戦争時の爆弾によるものかと見間違うほどでした。マレーシアの事例で感じたのは、インターネットによる情報が飛び交っているということです。爆発後のビデオがすぐにソーシャルメディアに投稿され、情報の速さがわかります。一方、虚偽の情報も流布しており、課題があるのは確かです。(これはマレーシアだけでなく、日本もそうですが)

 情報の正確性という点では、公的機関から出される情報も問題があります。被害や負傷者などの情報がメディアによって異なるし、日にちが経ってもなかなか収束しません。その分、事故原因の調査情報は速いようです。しかし、事故現場は、128日に起こった日本の埼玉・八潮市の道路陥没事故を見ているようです。クレーター部の法面が安定しないのと掘削箇所に水が出てきて、なかなか苦労しているようです。

2025年4月7日月曜日

米国ルイジアナ州の石油生産施設で落雷によるタンク火災、鎮火後、3名負傷

 今回は、2025331日(月)、米国ルイジアナ州ポイントクーペ教区リボーニアにあるリライアブル・プロダクション・ドリリング・サービス社の石油生産施設でタンク設備が落雷によって火災を起こした事例を紹介します。

< 発災施設の概要 >

■ 発災があったのは、米国ルイジアナ州(Louisiana)ポイントクーペ教区(Pointe Coupee Parish)リボーニア(Livonia)にあるリライアブル・プロダクション・ドリリング・サービス社(Reliable Production Drilling Services)の所有する石油生産施設のタンク設備である。

■ 事故があったのは、ハイウェイ190号線の側道沿いにある石油生産施設内の貯蔵タンクである。施設内にはタンク設備が7基あり、発災したタンクには原油と塩水の混合液が入っていた。

<事故の状況および影響>

事故の発生

■ 2025331日(月)午前6時頃、タンク施設の貯蔵タンクに火災が発生した。

■ 貯蔵タンク1基に落雷があったとみられ、タンクは屋根が噴き飛んで火災になり、隣接するタンクに延焼した。

■ 火災現場は、31日(月)に南ルイジアナ州全域で発生した雷、強風、大雨、竜巻の異常気象のひとつであった。多くの住居が停電に見舞われ、いくつかの学区では休校や遅れが出た。

■ 発災にともない、該当区域の消防隊が出動し、現場に到着した。

■ 火災タンクはグラスファイバー製で、タンク内液はほとんどが塩水で、タンク上部に溜まっていた油分が燃えていた。隣接するタンクには水を放射して、タンクが熱くなりすぎて燃え広がらないようにした。一方、消防隊が保有している泡薬剤の量は十分でなく、近隣の消防隊が泡薬剤を供給してくれるまで、タンクへの泡投入を制限しなければならなかった。消防隊は、グラスファイバー製タンクの火災を手加減するような消火活動を強いられた。

■ 近隣の消防隊が1,000ガロン(3,780リットル)の泡薬剤を積んだ泡原液搬送車をもってきたので、消防隊は本格的な消火活動を行った。

■ 火災の現場には水源がなく、消防車は水タンクに補充するため、現場を離れて定期的に水源まで行く必要があった。このため、消防隊が水源にアクセスできるように、ハイウェイ190号線の交通を一時的に通行止めにした。

■ 消防活動にともなう負傷者はいなかった。

■ 保安官は、火災現場が近くの住宅地から離れており、住民を直ちに避難させる必要はないと判断した。

■ ユーチューブでは、タンク火災の状況を伝える動画が投稿されている。 

  ●YoutubeLightning strike sparks Livonia oil tank fire2025/04/01

  ●Youtube Deputy, 3 others injured near Livonia oil tank fire2025/04/01

  ●Youtube WATCH: Crews fight large oil tank fire in Livonia2025/04/01

被 害

■ 石油生産施設のタンク設備が2基損傷した。

■ 火災鎮火後、撤退する際、交通整理中に保安官1名と消防士2名が車両の衝突で負傷した。  

< 事故の原因 >

■ タンク火災の原因は落雷によるものとみられる。 

< 対 応 >

■ 火災発生から約5時間後の午前11時前に、消防隊は火災を消し止めた。出動した消防車は10台だった。

■ 331日(月)午後、消防隊が火災を鎮火させて撤退する際、交通整理中に保安官1名と消防士2名が負傷した。ハイウェイ190号線を運転していた人物が消防車に衝突し、その後保安官に衝突したという。当時、火災のため道路上に多数の消防車など緊急車両が停まっており、保安官は交通整理をしていた。

補 足

■「ルイジアナ州」(Louisiana)は、米国の南部にあり、テキサス州に隣接し、人口約465万人の州である。州都はバトンルージュで、最大の都市はニューオーリンズである。ルイジアナ州は石油と天然ガスの資源が豊富なところである。

「ポイントクーペ教区」(Pointe Coupee Parish)は、ルイジアナ州の東中部にあり、人口約20,700人の教区(郡)である。

「リボーニア」(Livonia)は、ポイントクーペ教区の南部に位置し、人口約1,200人の町である。

■「発災タンク」は、リライアブル・プロダクション・ドリリング・サービス社(Reliable Production Drilling Services)の所有するグラスファイバー製の塩水タンクだと報じられている。グーグルマップで調べると、同径のタンクは3基あり、直径は約3.3mである。高さを6.0mとすれば、容量は約51KLである。米国の陸上油田における標準的な石油生産施設であるが、設備規模は大きくはない。

NASAによる世界の雷マップ」20126月)によると、米国における雷発生頻度はメキシコ湾岸地域が高い。テキサス州やオクラホマ州はそのひとつで、今回のルイジアナ州も雷の多い地域である。ブログで昨年度における落雷による石油生産施設の事故は、つぎのとおりである。(原因がはっきりしないものや、情報から漏れたものもあり、実際はもっと多いと思われる) もともと、米国の陸上油田の石油生産施設におけるタンクは落雷のリスクにさらされており、落雷によるタンク爆発・火災の頻度は増えていくだろう。

 ●「米国オクラホマ州で竜巻警報の中、落雷によるタンクが爆発・火災」20245月)

 ●「米国オクラホマ州の石油生産施設で相次いで落雷よるタンク火災」3件)(20243月)

 ●「米国オクラホマ州の石油生産施設で落雷によるタンク爆発・火災」 20244月)

 ●「米国テキサス州石油生産施設で落雷による堤内火災、タンクは噴き飛びか? 20248月)


所 感 

■ 今回の事例は、米国の石油生産施設における落雷によるタンク火災の典型である。

■ 今事例の消火活動は、これまでの他の事例と少し異なっている。通常、グラスファイバー製塩水タンクは炭素鋼製タンクに比べ火災には弱く、焼損して全壊してしまう。一方、今回、タンク側板部がかなり残っているめずらしい例である。これは、火災発生から消防隊が到着するまでの時間が短かく、グラスファイバー製塩水タンクの消火活動を行っているためだと思う。これが最適な消火活動かどうかは意見が分かれるところだろう。

■ めずらしい例でいえば、消防隊が火災を鎮火させて撤退する際に負傷者が出ている。ハイウェイ190号線を運転していた人物が消防車に追突し、その後保安官に衝突したという。 断続的な通行停止をしていたためであるが、交通整理中に保安官1名と消防士2名が負傷したという。結果論であるが、中途半端な通行止めだった。


備 考

 本情報はつぎのインターネット情報に基づいてまとめたものである。

      Wbrz.com, Two oil tanks catch fire after being struck by lightning; chief says damage could have been worse, March 31, 2025 

      Newsroom.ap.org, Lightning strike causes tank fire west of Baton Rouge, Louisiana, April 01, 2025 

      Kpel965.com, Lightning Sparks Massive Oil Tank Fire in Louisiana During  Storms, March  31,  2025

      Msn.com, Deputy, 3 others injured near Livonia oil tank fire, April 01, 2025 

      Arogersflex.bloxcms.com, Massive blaze in Livonia after oil tanks likely struck by lightning, March  31,  2025

      Unfilteredwithkiran.com, Oil tank fire update, April 01, 2025 


後 記: 最初はよく起こる石油生産施設の落雷によるタンク火災だと思っていましたが、今回の事故はこれまで無かったようなめずらしいことのあった事例でした。一番、感じたのはメディアの取材内容です。最近のテキサス州の事例のような素っ気ない記事でなく、なんとか取材しようという思いを感じる内容でした。グラスファイバー製タンクの火災について泡薬剤の到着を待ちながら消火活動をする消防隊の苦労を何とか伝えようとするのが感じられました。

2025年4月1日火曜日

米国ネブラスカ州でプロパンガスボンベが爆発、直前に消火活動を控える決断

 今回は、2025316日(日)、米国ネブラスカ州北東部のノーフォークにある農場で容量500ガロン(2,270リットル)のプロパンガスボンベ(タンク)が爆発した事例を紹介します。発災にともない消防隊が現場に駆け付け、消火活動を行う直前にプロパンガスボンベから圧力が開放されるような音を聞き、消防活動を控える判断をした事例です。爆発の状況はビデオに撮影され、公表されました。

< 発災施設の概要 >

■ 発災があったのは、米国ネブラスカ州Nebraska北東部のノーフォークNorfolkにある農場である。

■ 事故があったのは、農場にある容量500ガロン(2,270リットル)のプロパンガスボンベ(タンク)である。

<事故の状況および影響>

事故の発生

■ 2025316日(日)、ノーフォークにある農場の建物で火災が発生した。

■ 発災にともない、ノーフォーク消防署の消防隊が出動した。

■ 消防隊は、建物火災の現場に到着した。そのとき、消防隊はプロパンガスボンベから圧力が開放されるような音を聞いた。

■ 消防隊は火災現場の手前で停止し、消火活動を控えることを決断した。そのすぐ後に、タンクが爆発した。

■ 消火活動を控える決断は賢明だった。

■ 消防隊は火災現場の手前で停止し、監視しているときに爆発の状況をビデオに撮影した。ノーフォーク消防局は、317日(月)、火災で500ガロンのプロパンボンベが爆発する瞬間のビデオを公開した。ビデオはメディアのニュース番組で紹介され、ユーチューブに投稿された。

 YoutubeWATCH: 500-gallon propane tank explodes during fire in Nebraska2025/03/18

被 害

■ 500ガロンのプロパンガスボンベが損壊した。火災の要因になった建屋が焼損した。

■ 負傷者は出なかった。

< 事故の原因 >

■ プロパンガスボンベの爆発原因は建屋の火災である。

< 対 応 >

■ 爆発後、消防隊は火災を消し止めることができた。

■ 事故にともなう負傷者は出なかった。

■ ノーフォークの消防隊は、特に最近の乾燥した天候では、火災がいかに危険であるか、また、出動要請時に提供される情報がいかに重要であるか認識させられるものだと述べた。  

■ 消防局はフェイスブックへの投稿で、爆発の動画を警告として使い、プロパンガスボンベ(タンク)付近における火災の危険性を示した。消防局は、「私たちの最大の願いは、みなさんが火災の経験をしないで済むことです。しかし、もし火災に遭遇する事態になってしまったら、みなさんが消防署に伝える情報がいかに重要かを知っておいてください。建物や車両が火災で燃えていて、近くにプロパンガスボンベ(タンク)があるなら、それは伝えるべき重要な情報です」と述べた。

補 足

■「ネブラスカ州」は、米国の中西部に位置し、人口約196万人の州である。

「ノーフォーク」は、ネブラスカ州北東部に位置し、人口約24,000人の市である。ノーフォークの気候は、夏は蒸し暑く、冬は乾燥して厳しく、気温の年較差の大きい内陸型の気候である。最も暑い7月の平均気温は約24℃、最高気温の平均は約32℃である。最も寒い1月の平均気温はー6.5℃、最低気温の平均はー12℃で、毎日気温が氷点下に下がる。

■「プロパンガスボンベ」は、一般の家庭や小規模企業向けに使用するプロパンガスの収納容器である。米国では、プロパンガスボンベとタンクの厳密な使い分けをしておらず、通常、プロパンガスタンクと呼んでいる。事例で出てきた500ガロン(2,270リットル)のプロパンガスボンベ(タンク)は、平均的な家庭を 1 シーズン暖めるのに必要なプロパンガスを収納できる大きさである。標準的なサイズ例は、直径37.5インチ×長さ9.5フィート(95cm×2,900cm)の横型タンクである。約 1,520 ポンド(690㎏)のプロパンガスを入れることができるが、安全上の理由から、容量の80%まで充填され、実際には約400 ガロン(552㎏)の容量である。内部圧力は平均的な気温時で約125175psi 8.612.0bar)である。プロパンガスタンク内部圧力は自然に変動し、暑いときには圧力が上昇し、 寒いときには圧力が低下する。通常、プロパンガスボンベ(タンク)には、圧力が安全限度を超えた場合に作動する圧力安全弁が付いている。

■「発災タンク」は、ノーフォークというだけで詳細な位置は報じられていない。場所に関する情報はなく、発災場所は特定できなかった。

所 感

■ ブログで爆発の瞬間をとらえた映像(動画)を紹介するのは、今回で4回目である。これまで爆発の瞬間を報じたブログはつぎのとおりである。

 ●「原油タンク火災の消火活動中にボイルオーバー発生事例」 20139月)

 ●「ロシアのタタールスタン共和国で工事中の空のタンクが爆発、死者2名」202311月)

 ●「ロシアのふたつの石油貯蔵所でタンク爆発・火災、テロ攻撃か」20224月)

 今回の映像は一般の家庭にもあるボンベ(タンク)であり、プロパンガスという身近にある爆発しやすいガスという点が特徴である。

■ 現場に到着した消防隊が、事前に建屋火災の近くにプロパンガスボンベ(タンク)があるという情報を認識して対応したため、異常な音を覚知して消火活動を控える決断を行い、死傷者を出さなかった好事例である。一方、状況は少し異なるが、日本では、アクリル酸製造プラントで消防活動中だった消防隊員1人が死亡し、このほかに従業員、消防隊員、警察官ら36人が重軽傷を負うという「日本触媒でアクリル酸タンクが爆発・火災、死傷者37人」201210月)の大きな事故を経験している。

 今回の火災について、米国では消防局がフェイスブックへ投稿し、爆発の動画を警告として使っている。プロパンガスボンベ(タンク)付近における火災の危険性を一般住民に示し、「火災に遭遇する事態になってしまったら、皆さんが消防署に伝える情報がいかに重要かを知っておいてください。建物や車両が火災で燃えていて、近くにプロパンガスボンベ(タンク)があるなら、それは伝えるべき重要な情報です」と語り、2次災害を未然防止しようという意思を感じる。

■ 消火戦略には、積極的戦略・防御的戦略・不介入戦略の3つがあるが、今回は不介入戦略の標準的な事例である。


備 考

 本情報はつぎのインターネット情報に基づいてまとめたものである。

    Foxsanantonio.com, Dash-cam captures explosive moment as propane tank erupts during fire,  March  19,  2025

    Ketv.com, Unbelievable video shows 500-gallon propane tank exploding as Norfolk crews respond to structure fire,  March  18,  2025

    Klkntv.com, WATCH: 500-gallon propane tank explodes during fire in Nebraska,  March  17,  2025


後 記「ロシアのタタールスタン共和国で工事中の空のタンクが爆発、死者2名」202311月)では、円筒タンクの屋根にいた人が爆発で飛ばされるというショッキングな映像でしたが、今回のプロパンガスボンベの爆発映像は身近なこととしてインパクトのある動画でした。「米国カリフォルニア州の山火事でプロパンガスタンクが爆発」20249月)では、山火事にともなう爆発事例でした。しかし、よそ事でなく、今年に入って岩手県大船渡市の山火事があり、その後、岡山、愛媛で山火事がありました。ニュースの一部に爆発のような映像がありましたが、被災のあった住宅ではプロパンガスボンベの爆発事例があったことは想像にかたくないですね。

2025年3月27日木曜日

ロシアと米国の電話会談でエネルギー施設への攻撃一時停止?

 今回は、2025319日(水)、ロシアのクラスノダール地方のカフカスカヤにあるナフタトランス社のカフカスカヤ石油ターミナルで無人航空機(ドローン)による攻撃で貯蔵タンクと配管が火災になった事例を紹介します。前日の318日(火)に米国大統領とロシアの大統領が電話会談を行い、ロシアとウクライナのエネルギー施設への攻撃を一時停止すると報じられましたので、貯蔵タンク事故の観点から調べたものです。

< 発災施設の概要 >

■ 発災施設は、ロシアRussiaクラスノダール地方Krasnodar regionのカフカスカヤKavkazskayaにあるナフタトランス社 Naftatransのカフカスカヤ石油ターミナルKavkazskaya oil terminal である。石油ターミナルには、容量20,000KLの貯蔵タンクが5基あり、合計10KLの石油製品が保管されている。

■ 発災があったのは、石油ターミナルの貯蔵エリアにある石油貯蔵タンクと配管である。

< 事故の状況および影響 > 

事故の発生

■ 2025319日(水)夜、石油ターミナルが火災になった。勤務中の30人は避難し、工場の操業が停止された。

■ 石油ターミナルがウクライナの無人航空機(ドローン)5機による夜間攻撃を受け、2基の貯蔵タンクを結ぶ配管が損傷し、火災になった。その後、貯蔵タンクの1基が火災を起こした。

■ 石油貯蔵タンクと配管は炎と煙に包まれた。

■ 発災にともない、消防隊が出動し、火災を制圧しようと努めた。出動したのは、消防士276名、2台の特殊消防車を含む105台の消防設備で対応した。

■ 当初、火災面積は20㎡だったが、その後、1,700㎡の面積に広がった。さらに、油の流出によって320日(木)朝には、3,750㎡まで広がった。

■ 地元当局が行った近隣の2か所の大気検査で、ベンゼンなどの有害化学物質の濃度が過剰に検出された。

■ 当局は、クラスノダール方面の道路を閉鎖し、住民に対して外に出たり、窓を開けたりしないよう勧告した。

■ 戦争遂行のための重要な収入源となっているロシアのエネルギー産業に対するウクライナの頻繁な攻撃による破壊的影響を浮き彫りにしている。ロシアもまた、戦争中ずっとウクライナのエネルギー網を攻撃し、民間人や産業に影響を与える停電を頻繁に引き起こしている。

■ 発災前日の318日(火)、米国大統領とロシアの大統領はウクライナとロシアの戦争について電話会談を行った。ロシア大統領はウクライナのエネルギー施設への攻撃を一時停止することに同意したと報じられている。ロシア国防省は、今回の攻撃がロシア大統領と米国大統領の電話会議で一時停止に合意した数時間後に発生したと述べた。320日(木)には、ロシア外務省はウクライナが石油ターミナルを攻撃することで停戦協定に違反したと述べた。

 ウクライナ大統領は、ロシアとの文書化された合意があれば、米国大統領とロシア大統領の間で318日(火)に話し合われた停戦に参加する用意があると述べた。また、 319日(水)、ウクライナ当局者は、ロシアが民間人を攻撃することで停戦の約束を破ったと非難している。ウクライナ大統領は、病院や鉄道設備を含む主要なインフラストラクチャへのロシアの攻撃が「米国大統領の言葉とは、現実が大きく異なる」ことを示していると語っている。

■ 321日(金)、カフカスカヤ石油ターミナルの貯蔵タンクで新たな爆発が発生した。ロシアの地方当局によると、「消火活動中、燃えているタンクの圧力が下がった(減圧)ため、石油製品が爆発し、燃えている石油が流出した」と語った。火災は別のタンクに燃え広がり、火災面積は10,000㎡に拡大した。これは初期の火災面積の2倍以上である。450人以上の消防士が消火活動に当たったが、消防士2人が負傷したほか、3台の車両が損傷した。

■ ユーチューブにはタンク火災の状況を示す動画が投稿されている。主な動画はつぎのとおりである。

 Youtube“This’s scary, let’s run!” - ”Fire at oil depot in Krasnodar spreads to over 4,000 sq meters of area2025/03/20

   ●Youtube100,000 fuel destroyed- “Russian oil pumping station in Krasnodar is no longer exist“2025/03/22

   ●Youtube Fire at oil depot in Krasnodar spreads to a large area, hundreds of firefighters are battling it2025/03/19


被 害

■ 石油貯蔵タンクが火災で複数基損傷したほか、関連配管が損傷した。内部の油が焼失した。 

■ 消防士2名が負傷した。 

■ 火災により環境が汚染され、ベンゼンなどの有害化学物質の濃度が過剰に検出された。

■ 道路の一部が閉鎖され、住民に対して外に出たり、窓を開けたりしないよう勧告が出された。 

< 事故の原因 >

■ 戦争による軍事行動である。(平常時の“故意の過失”に該当)

< 対 応 >

■ 消防隊は、消火戦術として①貯蔵タンク火災の制圧、②遮断弁まわりの制圧、③堤内エリア内での油火災の制圧の3つの活動を行った。

■ 320日(木)朝には、消防隊は堤内のタンク、遮断弁まわり、燃えている石油製品の消火作業を続けた。消火活動には、消防士406人と157台の消防資機材が投入されている。

■ 無人航空機(ドローン)の攻撃はノヴォロシースクへ石油を輸送するパイプライン施設を標的とし、大規模な爆発と火災を引き起こしたといわれている。

■ 321日(金)、石油ターミナルの貯蔵タンクで新たな爆発が発生し、消火活動中、燃えているタンクが減圧になったため、石油製品が爆発し、燃えている石油が流出した。火災は別のタンクに燃え広がり、火災面積は10,000㎡に拡大した。450人以上の消防士が消火活動に当たっており、消防士2人が負傷したほか、3台の車両が損傷した。

■ 322日(土)、当局は、依然として猛威を振るっている火災の消火活動を支援するため、水を積んだ消防列車を投入し、現場に列車4両が向かった。

■ 323日(日)、消防士たちは燃えている2番目のタンクの消火作業を続けている。最初のタンク火災は321日(金)までに燃え尽きた。

■ これに先立ち、314日(金)、ロシアのクラスノダール地方にあるトゥアプセ製油所のガソリン貯蔵タンクが夜間に無人航空機(ドローン)攻撃を受けた。火災の面積は1,000㎡を超え、消防隊が火を完全に消し止めるまでに3日以上かかった。

 ロシア最大級のトゥアプセ製油所は、国営ロスネフチが所有し、年間約1,200万トンの原油処理能力を持ち、ディーゼル燃料、航空燃料などを生産しており、生産量の90%は輸出向けとなっている。また、ロシアの黒海艦隊に燃料を供給しており、ロシア軍にとって戦略的に重要な場所である。

■ 321日(金)、 ロシア西部のウクライナ国境に近いクルスク地方にあるスジャガス計量ステーションが大規模な爆発が起き、火災となった。この施設はかつてガスプロム社がウクライナ経由で欧州にガスを輸出するために使用していた。

 ウクライナは、321日(金)、ロシアが責任を押し付ける目的でスジャガス計量ステーションを故意に攻撃したと非難した。同ステーションはロシア軍自身によって繰り返し砲撃されたという。ウクライナは、「ロシアが多数の偽情報を作り続け、国際社会を欺こうとしている。公式の情報源だけを信じ、情報を検証し、操作に屈しないようお願いする」と付け加えた。

 ロシアのメディアは、ウクライナ軍がロシアの欧州向けガス輸出に重要な役割を果たす主要ガス輸送施設を攻撃したと主張していた。ロシア国防省は、ウクライナが同基地の爆破を計画していたと主張し、ウクライナが挑発を画策していると非難した。

補 足

■ 「ロシア」(Russia)は、正式にはロシア連邦といい、ユーラシア大陸北部に位置し、人口約14,200万人の連邦共和制国家である。2022224日(木)、ロシアが、突如、ウクライナに侵攻し、軍事衝突が起こった。

 ロシアがウクライナに侵攻して以降、両国のタンクへの攻撃を紹介した事例は、つぎのとおりである。

  ●「ウクライナ各地で石油貯蔵所が攻撃によってタンク火災」20223月)

       ●「ウクライナ各地の石油貯蔵所がミサイル攻撃によってタンク火災」20224月)

       ●ロシアのふたつの石油貯蔵所でタンク爆発・火災、テロ攻撃か」20224月)

    「ウクライナで化学工場の硝酸タンクがロシアの攻撃で爆発」20226月)

  ●「ロシアのベルゴロド石油貯蔵所にヘリコプターによる攻撃」 20225月)

  「ロシアの2箇所の石油貯蔵施設を無人航空機(ドローン)で攻撃、タンク被害」202211月)

  ●「ロシアがウクライナのひまわり油タンクをカミカゼ無人機で攻撃」202210月)

  ●「ロシアの石油貯蔵所で無人航空機によって燃料タンク3基が火災」202211月)

  ●「ロシアの2箇所の石油貯蔵施設を無人航空機(ドローン)で攻撃、タンク被害」202212月)

  ●「クリミア半島の石油貯蔵施設で無人航空機(ドローン)攻撃でタンク火災」20234月)

  ●「ロシアの石油貯蔵施設が2日連続で無人航空機(ドローン)攻撃によりタンク火災」20235月)

  ●「ロシアの軍組織が自国ボロネジの石油貯蔵所を攻撃し、タンク火災」20236月)

  ●「ロシアの石油貯蔵施設が無人航空機(ドローン)攻撃によるタンク複数火災」20241月)

  ●「ロシア各地の石油貯蔵施設が無人航空機攻撃でタンク火災、新型ドローンか?20246月)

  ●「ロシアのロストフ州東部の石油貯蔵施設がドローン攻撃でタンク火災」20247月)

「クラスノダール地方」Krasnodar regionは、ロシアの北コーカサス(北カフカス)に位置し、ロシア連邦の南部連邦管区を構成する地方のひとつで、人口は約540万人である。行政の中心はクラスノダール(人口約93万人)である。

「カフカスカヤ」Kavkazskayaは、クラスノダール地方の東部に位置する町である。

■「ナフタトランス社」 Naftatrans は、2007年に設立されたロシアおよび旧ソ連圏の物流会社の一つである。

「カフカスカヤ石油ターミナル」Kavkazskaya oil terminalは、ナフタトランス社が保有し、カスピ海パイプライン・コンソーシアムと鉄道による石油輸送を結び付けているロシアの石油輸出ネットワークの重要な拠点である。この施設のインフラには、クロポトキンスカヤ石油ポンプ場につながる15.7kmのパイプラインが含まれており、ノヴォロシースクへの輸出用に石油を輸送する上で重要な役割を果たしている。この石油ターミナルから13km離れたところにクロポトキンスカヤ石油ポンプ場があるが、2025217日の無人航空機(ドローン)攻撃を受けて機能停止となっている。

■「発災タンク」に関して、石油ターミナルには容量20,000KLのタンクが5基あると報じられている。グーグルマップで調べると、クラスノダール地方のカフカスカヤに5基のタンクが設置されている石油ターミナルがあるので、ここがカフカスカヤ石油ターミナルとみられる。5基はいずれも同じ大きさの固定屋根式(ドーム型)で、直径は約38mである。容量20,000KLとすれば、高さは約18mとなる。発災タンクは5基のうちのいずれかであるが、情報が不足し特定できなかった。

所 感

■ 米国大統領とロシアの大統領が電話会談を行い、ロシアとウクライナのエネルギー施設への攻撃を一時停止すると報じられたので、戦争が終わるのか貯蔵タンク事故の観点から実際の状況を調べてみた。しかし、三か国の思惑の違いが明らかで、ことが進展するかどうか疑問を感じざるを得ない。今回のカフカスカヤ石油ターミナルの事例を見て、「エネルギー施設への攻撃を一時停止する」という提案は貯蔵タンクへの攻撃にロシア側は本当に対応に困っていると思われる。

■ ウクライナの無人航空機(ドローン)の攻撃性は戦争が始まって以来、ここ2年で急速な進歩を遂げている。今回の事例では、たった5機の無人航空機(ドローン)で石油ターミナルが壊滅的な被害を受けているとみられる。高価なミサイルなどでなく、安価な無人航空機(ドローン)が防空システムをくぐり抜けている。最近の無人航空機(ドローン)による攻撃でタンク被害が大きいことは、これまでのブログで紹介してきたとおりである。しかも、 FPV型無人航空機(ドローン)の使用は個人レベルで遂行できることである。ロシアはウクライナの攻撃だと主張するが、これまでもウクライナは攻撃について正式には発表していないことがある。「エネルギー施設への攻撃の一時停止」の状況でも、ロシア国内のテロリストがやったのだろうということができる。

■ このブログでは、日本におけるテロ対応の観点から無人航空機(ドローン)による貯蔵タンクへの攻撃性を見てきた。無人航空機(ドローン)が飛行機型からFPV型(First Person View)ドローンが出てきたことで、テロ対策上からは厄介な攻撃用ドローンである。しかし、逆に見れば、高価な防空システムは必要なく、従来の監視システムの改良で対応できる余地があるのではないだろうか。


備 考

 本情報はつぎのインターネット情報に基づいてまとめたものである。

    Youtube.com, Russian oil depot explodes after Ukrainian drone attack,  March  19,  2025

    United24media.com, Fire at Key Russian Oil Hub Doubles in Size Following Drone Attack,  March  19,  2025

    English.alarabiya.net, Blast intensifies fire at Russian oil depot struck by Ukraine,  March  20,  2025

    Reuters.com, Gas pumping station in Russia near Ukraine border on fire after explosion,  March  21,  2025

    Newsweek.com, Second Blast Hits Russian Oil Depot Holding 100,000 Tons of Fuel,  March  21,  2025

    Kavkaz-uzel.eu, Нефтебаза в станице Кавказской продолжает горетьИсточник,  March  20,  2025

    Moneytimes.ru, На нефтебазе в станице Кавказская сохраняется угроза распространения огня,  March  23,  2025

    Straitstimes.com, Russian authorities bring in trains to fight oil depot fire,  March  23,  2025

    Arnnewscentre.ae, Blast intensifies fire at Russian oil depot struck by Ukraine,  March  21,  2025

    Vesti.ru, На горящей под Краснодаром нефтебазе произошел выброс нефтепродуктов,  March  23,  2025

    Pravda.com.ua, На горящей 2 суток нефтебазе в Краснодарском крае РФ произошел взрыв – огонь охватил еще один резервуар,  March  21,  2025

    Forbes.ru, Отказ от ударов по энергообъектам и обмен пленными: итоги разговора Путина и Трампа,  March  19,  2025

    Ria.ru, На горящей на Кубани нефтебазе прогремел взрыв,  March  21,  2025

    Vesti.ru, На горящей под Краснодаром нефтебазе произошел выброс нефтепродуктов,  March  23,  2025


後 記: ロシア大統領と米国大統領の電話会談でエネルギー施設への攻撃が一時停止で合意したというニュースが流れましたが、中身をみると、ロシアが米国を懐柔(かいじゅう)していますね。まさに怪獣です。ところで、話は変わって今回の石油ターミナルのタンク火災ですが(こちらが本来メインの話題です) 、やはり流れてくる情報は戦争における報道(事実を隠して嘘をついてもよいという風潮)であり、本当なのかどうか疑問をもちながら(翻訳を)読んでいました。ということで、どこまでが本当なのか半信半疑でブログをまとめました。また、発災写真はたくさんありましたが、信ぴょう性に?が付いたものが多く、引用したものが少なかったですね。