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2015年11月23日月曜日

ベルギーの油槽所で油流出による運河や敷地の環境汚染(2002年)

 今回は、フランス環境省(現:フランスエコロジー・持続可能開発・エネルギー省)がまとめているARIA(事故の分析・研究・情報)の中のひとつで、2002年、ベルギーで起きた「燃料油の漏洩および水路への汚染/構内の汚染」(Leaks of fuel oil and pollution of waterway /Pollution of the site )の資料を紹介します。
< 発災施設の概要 >
■ 事故があったのは、ベルギーで石油製品の貯蔵・配給の卸業を行っている会社の油槽所である。事故は、この会社のブリュッセルにある施設の2つの別な現場で起った。両施設ともセベソ指令Ⅱに従う必要があった。施設は完全自動運転で、両方の施設の監督はひとりだけだった。施設間の距離は約1.5kmで、まずまず近い方だった。
ブリュッセルの運河と発災施設付近(現在)
(写真はグーグルマップから引用)
■ 事故が起った時点では、両施設とも土壌汚染に関する対策は確立していた。安全性評価は進行中だった。実施したセベソの検査官は、数点の不足点を指摘していた。

■ 運河沿いにあるこの施設を操業するプロセスは極めてシンプルである。油槽船が施設の貯蔵タンクへ油を輸送し、タンクからタンクローリー車へ油を移送する。
■ 発災のあった現場1は、暖房用オイル用で貯蔵量が6,000KLだった。現場2は、暖房用オイルとタイプC燃料用で貯蔵量が8,225KLだった。

< 事故の状況および影響 >
事例1: 2002年8月22日における現場1の事故
■ 流出の事態は、会社の対岸に住む女性からの通報でわかった。その人は当局とテレビ局へ知らせた。BIMEの検査官が現場に到着したときには、すでに警察がその目撃者に質問していた。

■ 流出は荷揚げ中の油槽船“ジョルジェ号”から起った。下図は現場の配置状況を示す。図中の赤色の長方形が油槽船である。
“ジョルジェ号”(赤色の船)、 “マルゲリータ号”(緑色の船)
■ 漏洩が分かってからすぐに、近くにいた“マルゲリータ号”(図の緑色の船)が“ジョルジェ号”の横に寄って行き、流出油を囲い込もうとした。しかし、作業は風と流れによって阻まれた。流出が広がらないように消防隊がオイルフェンスを二線展張した。消防隊は、水面の燃料油を移送するポンプ設備を保有していなかったので、民間防衛隊の出動を要請した。

■ ハーバー・オブ・ブリュッセル(ブリュッセル港組合)の環境保全の職員は運河の航行を止め、流出油を封じ込めるため、さらに二線のオイルフェンスを展張した。この後、民間防衛隊がフローティング・ポンプを持って出動してきた。運河からポンプで回収できなかった残りの油膜は界面活性剤で分散させた。

結 果
■ 事故に伴って運河へ流出した燃料油は約2KLだった。大半は消防隊と民間防衛隊によって回収された。

事例2: 2002年12月13日における現場2の事故
■ 2回目の事故は、1回目の事故のわずか数か月後に、同じ会社内の別な場所で起った。

■ 通常、油槽船は1番目のタンクから荷揚げを始める。油槽船の容量はタンクの容量より多いのが普通である。 1番目のタンクがほぼ一杯になれば、アラームが鳴る。このアラームによって、現場マネージャーは別なタンクへの切り替えを始めるタイミングであることを知る。

■ 当該事故では、油槽船からタンクへ通常どおり荷揚げを始めた。しかし、オペレーターは他の仕事のことで気が散っていて、アラームの音を聞き逃してしまった。このため、タンクから溢流させてしまった。
■ 検査官たちが現場へ到着したとき、消防隊とハーバー・オブ・ブリュッセル(ブリュッセル港組合)はすでに帰ったあとだった。彼らは、事故がタンクまわりの壁で封じ込められていると判断し、構外への環境汚染の恐れはないとみていた。
■ タンクと壁の間の距離がどのくらいの近さなのか確認するため、検査官たちはもう少し調査を続けると決めた。 
■ 溢流のあったタンクの上に立って、検査官たちは燃料油が封じ込めの壁を越えて外へ出ているのを発見した。壁自体も水密性では無かった。

結 果
■ 漏れた燃料油の量は、壁の内側で3KL、壁の外で2KLと推定された。油は回収され、それから当該事業所によって除染された。

欧州基準による産業事故の規模
■  1994年2月、セベソ指令を司るEU加盟国管轄庁の委員会は、事故の規模を特定するために18項目のパラメーターを用いる評価基準を適用した。わかっている情報をもとに検討された結果、当該事故は4つの分類項目に対してつぎのように評価された。
■ 「危険物質の放出」は、漏洩した燃料油が2KLと5KLだったので、レベル1と評価された。

< 事故の原因 >
事例1: 2002年8月22日における現場1の事故
■ タンクへの充填が終えると、ローディング用ホース内に少しエアを押し込み、残った油をタンク側へ入れ、ホースを空にするのが標準的な手順である。つぎに、油槽船から現場マネージャーへタンクのバルブを閉めるように連絡しなければならない。そうすることによって、油槽船はホースの接続を外すことができる。

■  しかし、このとき“ジョルジェ号”では、タンクのバルブをすでに閉めたと思い込み、タンク施設側との事前の確認無しにホースの接続を外してしまった。

■ この事故の原因は、すぐに相手に伝える連絡の方法が不十分だったことと、荷揚げ作業時のコミュニケーション不足である。
事例2: 2002年12月13日における現場2の事故
■ 当該事故では、運転手順を正しく遵守することを怠ったことが問題を引き起こした。また、使用されている装置も必ずしも適切なものとはいえなかった。

■ タンクと封じ込め用の壁が極めて近かったという事実のほかに、タンクの切り替え用のバルブが深いのぞき穴のようなところに設置されており、実際、操作はやりずらいものだった。
< 対 応 >
事例1: 2002年8月22日における現場1の事故
■ 事故後、公用水系の保護に関する1971年の法律違反および環境に関する1997年の条例違反によって、会社は罰金を科せられた。

■ 地元テレビ放送局が事故を報道しなかったことを知って、通報した女性は会社の環境に関する違反について訴えた。  

事例2: 2002年12月13日における現場2の事故
■ 流出した燃料油が運河に達することはなかったが、会社は環境に関する1997年の条例違反とされた。

■ これら2件の事故のあと、検査官は会社に対してつぎのような設備や機材の改善を要求した。
   ● オイルフェンス(総延長:油槽船の周囲×2倍)
   ● 油吸収材の保有
   ● 二か国語による荷役業務手順の説明書
   ● 安全標識および配管標示
   ● 油供給エリア内のピットの水密性の強化、およびピットからオイル・セパレーターへの接続化
   ● 各タンクに溢流防止装置の設置
   ● 損傷劣化しているピットの取替え、ただし、安全距離に従うこと
   ● 遮断バルブの設置
   ● 新しい油供給ピットエリアを設けること (油槽船と接続できること)
   ● 荷揚げ運転中にタンク液位を確認できるよう、タンク内にレーダー式検出器の設置
       (これには警報表示と聴覚警報を付けること)

< 教 訓 >
■ 2件の事故後、両現場における環境に関わる規制が見直された。

■ 当該会社は、ベルギーにおける全事業所の安全レベルを標準に達するように、アドバイザーを雇った。
さらに、会社は、また、いくつかの請負会社と契約を結び、設備と安全装置について定期的に点検することにした。オペレーターは、セベソ指令の義務(安全と環境保全)を果たすために、新しい行動計画をまとめた。

■ 結論として、これらの事故は、ほかの事業所でもありうるつぎのような問題点を提起した。
  ● この種の運転は、別な会社と一緒に遂行する必要がある。直面した問題について、会社の従業員でない人間といかに共同してコントロールしていくことができるか、また仕事において従業員でない人間にいかにして現場の手順、特に安全に関する事項を理解させることができるかである。
  ● この種の貨物船の場合、よそから来た人が話す言語が問題になる。特に、遠い外国から来た船との業務では、ブリュッセルにおいて通じる言葉がフランス語とドイツ語だけだという問題がある。
  ● 防油堤の壁とタンク間の距離は、少なくとも、タンク高さの1/2以上とすべきである。
  ● 会社で策定する運転手順書は、わかりやすく、簡単で、全現場で同じものにすべきである。

■ 会社に非常に良い防止システムをもっていたとしても、事故のときに、すぐ使えるように常に適切に整備しておくべきである。


補 足
■ 「ベルギー」(Belgium)は、正式にはベルギー王国で、西ヨーロッパに位置する連邦立憲君主制国家である。人口は約1,100万人である。
 「ブリュッセル」(Brussels)がベルギーの首都であるほか、欧州連合(EU)の主要機関の多くが置かれているため、“EUの首都”とも言われている。ブリュッセル市の人口約17万人のうち、約6万人が外国人(うち36,000人がEU市民、24,000人が非EU市民)となっている。 
                       ベルギーのブリュッセルの位置     (写真はグーグルマップから引用)
■ 発災のあった会社は、ベルギーの石油貯蔵・配給の卸業を行っているコンチネンタル・タンキング・カンパニー(Continental Tanking CompanyCotanco)とみられる。1964年に設立され、ブリュッセルにある油槽所の現場1はタンク7基で6,000KLの貯蔵能力を有し、現場2はタンク6基で8,225KLの貯蔵能力を保有していた。
 ブリュッセルにある発災のあった2つの施設をグーグルマップのストリートビューで見ると、下の写真のとおりである。事例2(2002年12月13日)のあった施設の防油堤兼境界壁は改造されているように見える。
事例1(2002822日)のあった施設(現在)
(写真はグーグルマップから引用)
事例1(2002822日)のあった施設と運河(現在)
(写真はグーグルマップ・ストリートビューから引用)
事例2(20021213日)のあった施設(現在)
(写真はグーグルマップから引用)
事例2(20021213日)のあった施設(現在)
(写真はグーグルマップ・ストリートビューから引用)
事例2(20021213日)のあった施設(現在)
(写真はグーグルマップ・ストリートビューから引用)
■  「フランス環境省 : ARIA」(French Ministry of Environment : Analysis, Research and Information on Accidents)は、フランス環境省(現:フランスエコロジー・持続可能開発・エネルギー省 French Ministry of Ecology, Sustainable Development and Energy)がフランスにおいて発生した事故について情報を共有化し、今後に活用するため、1992年から始めた事故の分析・研究・情報のデータベースである。有用な海外事故も対象にしている。

所 感
■ 漏洩量が少ない割に、ARIAの重大事故に選ばれたのは、ごく普通の油槽所においてよくありそうな失敗による事故であるためだと思う。(事故の状況や写真を見ると、漏洩量が少なすぎるように感じるが)
 ごく普通の油槽所は、自分ところでは事故は起こらないと思っていたり、小さな事故が発生してもたまたまだと思っているのではないだろうか。ところが、当該事故のように連続して起こってみて、第三者の評価を受けて、初めて自らの脆弱さ(例えば、報連相の不足、防油堤を兼ねた境界壁、操作しずらい切替え弁の設置場所など)に気がつく。 

■ 油槽所の管理者(経営者)に是非読んでもらいたいと思って、ARIAは当該事例をまとめただろう。それは、うすうす感じている弱点について事故が起こってから改善するのではなく、自ら先手を打って対応してもらいたいという思いがあるからだろう。これは、単にフランスやベルギーだけでなく、日本を含めてすべての油槽所が対象になると思う。

備 考
 本情報はつぎのインターネット情報に基づいてまとめたものである。
  ・Aria.development-durable.gouv.fr, Leaks of fuel oil and pollution of waterway /Pollution of the site,  
22 August and 13 December, 2002,  Brussels – [Brabant],  Belgium,  DPPR / SEI / BARPI - No. 26981 and 26982,  Sheet updated: November 2003


後 記: ARIA事例はフランスでまとめられた資料ですが、今回のベルギーで起こった事故をブログに載せようと思っているときに、フランスのパリで同時多発テロが起きました。この事件は隣国ベルギーと関係があると報じられ、ブリュッセルがテロリストの拠点だというニュースが流れている中で、このブログの補足でブリュッセルについて調べていました。ブリュッセル市の人口約17万人のうち、約6万人が外国人で、うち36,000人がEU市民、24,000人が非EU市民だということを初めて知りました。今回の事故情報で外国船とのコミュニケーションの問題が指摘されていますが、ブリュッセルには、もっと深刻な問題が潜んでいるようです。ベルギー(ブリュッセル)の場所を紹介する地図では、パリとの位置関係のわかる範囲にしました。捜査が行われているブリュッセルのモランベーク地区は、今回の発災施設から運河を少し北へ上ったところです。こぎれいな運河周辺の風景(グーグルマップ・ストリートビュー)を見ながら、油槽所のことだけでなく、いろいろ考えてしまいました。

2015年11月15日日曜日

米国オクラホマ州で消火活動中に横型円筒タンクが爆発、3名負傷

 今回は、2015年10月12日、米国オクラホマ州タルサ郡オワッソの採石場にあるベッコ・コントラクター社所有の舗装用アスファルトを製造するタルサ・アスファルトにおいて、消火活動中に横型円筒タンクが爆発して負傷者の出た事故を紹介します。
< 発災施設の概要 >
■ 事故があったのは、米国オクラホマ州タルサ郡オワッソ(Owasso)にある採石場のアスファルト施設である。施設はベッコ・コントラクター社(Becco Contractors Inc.)所有の舗装用アスファルトを製造するタルサ・アスファルト(Tulsa Asphalt)で、場所はオワッソ郊外の66北通りと北4040道路の交差点近くにある採石場の中にある。ベッコ・コントラクター社は1988年に設立され、オクラホマ州タルサを本拠地にして、主に舗装事業を行っている。

■ タルサ・アスファルトは、この地区に2箇所のアスファルト施設を有し、オワッソの南にある施設で発災した。発災のあったアスファルト施設には、7基の横型円筒タンクがあり、アスファルト・エマルジョン用3基、バーナー燃料用3基、ディーゼル燃料用1基だった。
< 事故の状況および影響 >
事故の発生
■ 2015年10月12日(月)午前8時頃、アスファルト施設で火災が起った。ロジャー郡緊急事態対応局長のスコット・ストークス氏によると、12日月曜の朝、従業員がタンクを掃除しているときに火災が始まったという。7基のタンクまわりで火炎が上がり、火災による黒煙は数マイル離れたところからも見えた。

■ 火災発生に伴い、ライムストーン消防署など地元の消防署が出動した。消防隊は発災場所にある7基のタンクまわりの火と戦い、主にタンクへの冷却放水を実施した。

■ 火災がほぼ消えかかっていた12日(月)午前11時35分、突然、バーナー燃料用タンク1基が爆発を起こした。爆発によって破片が少なくとも100ヤード(90m)の範囲に飛び散った。また、燃料油が流出したため、火炎が広がった。

■ この爆発によって消防士3名が負傷した。うちふたりは病院へ搬送されて治療を受けているが、生命を脅かすほどではないという。ひとりは軽い火傷を負い、現場で手当てを受けた。

■ 当局は、爆発したタンクの安全弁が故障していたのではないかとみている。オクラホマ州自治体委員会の話によると、火災に巻き込まれているタンクは7月に検査され、大きな問題は無かったという。

■ 12日(月)午後3時過ぎ、火災は鎮火した。

被 害
■ 事故に伴い、消防士3名の負傷者が出た。
■ 施設のタンク1基が爆発し、そのほか6基のタンクが火災で被災しているが、被災の程度や範囲はわかっていない。また、爆風によってフロントガラスが粉々に割れた消防車両があるが、被災した車両数や程度はわからない。


(写真はいずれもTulsaworld.comから引用)
< 事故の原因 >
■ タンクを掃除しているときに火災が始まったというが、火災の起きた原因は分かっておらず、原因は調査中である。
■ OSHA(米国安全衛生労働局)が爆発の原因調査に乗り出すという。

■ 事故の直接原因に関係していないが、メディアのFOX23はつぎのように報じている。
  ● ベッコ・コントラクター社は、2007年以降、オクラホマ州労働局から7件の法律違反の指摘を受けている。
  ● この5月には、建設現場において掘削要件を満たしていないとして1,500ドル(33万円)の罰金を科せられている。
  ● 2013年の別な違反では、保護システムの必要事項を満たしていないとして7,000ドル(150万円)の罰金を科せられている。
  ● 同社は、過去に2名の死者を出す人身災害を起こしている。2013年には、ピックアップトラックによる作業者の死亡事故があり、2008年には、ブルドーザーによる作業者の死亡事故を起こしている。2013年の事故では、安全規則違反と教育実施違反により7,500ドル(160万円)の罰金を科せられている。

< 対 応 >
■ ライムストーン消防署は火災発生の通報を受け、出動した。そして、他の消防署へ応援を要請した。オワッソ消防署、カトゥーサ消防署、クレアモア消防署、予備役の空軍州兵の消防士などが応援で駆けつけた。

■ 消防隊は、当初、防御的戦略をとり、タンクが火炎によって熱くならないよう主に冷却放水を行った。ロジャー郡緊急事態対応局のストークス氏は、「7基のタンクはいずれも爆発性の高いものとはいえないが、タンク内の圧力が高くなると、爆発を引き起こす可能性がある」といい、このための冷却放水だったという。

■ 爆発で負傷者が発生したときの消防隊の状況について、ロジャー郡緊急事態対応局のストークス氏は、「出動したのは全員地元の消防士で、感情的に動揺が走った。彼らは全員が友達であり、全員が兄弟姉妹というつきあいの仲間だった。けが人が出たことを知ると、火災への注力が削がれ、落ち着きを取り戻して持ち場に戻るまでにやや時間がかかった」と語った。

■ 風が強く、消防活動は難航した。しかし、消防隊の最大の懸念事項はタンクの冷却が保持できるかどうかだった。消防隊によると、消防活動で最も難儀したのは発災現場近くに消火栓が無く、最も近いところで1マイル(1.6km)離れた消火栓まで行き、給水車6台を折り返し運転して対応した。さらに、この消火栓が壊れてしまったので、さらに遠い2マイル(3.2km)先の消火栓を使用して対応せざるを得なかった。しかし、消防隊は水の供給を絶やすことなく、懸命な消防活動に努めた。

■ 消防隊は、火災を消すための消火泡を放射する装置を現場に搬入した。また、消防隊は近くにあるクリーク(小川)に流れ込まないよう遮断にも努めた。

■ 12日(月)正午を少し過ぎた頃、消防隊が消火泡で火炎を覆った結果、炎の勢いは次第に弱まっていった。火災は午後3時頃に鎮火した。

■ 火災は66北通りと北4040道路の交差点近くにある採石場で発生したので、警察は西66北通りと南145東大通りを閉鎖し、通行規制を行った。

■ 現場にいた報道記者は、消防隊が火災と戦っているのもかかわらず、採石場のプラントは通常どおり運転していたように見えたと報じている。ロジャー郡緊急事態対応局のストークス氏は、鎮火後、自分が現場を離れる前に採石場は運転を再開したが、アスファルト施設は長期間停止することになるだろうと話している。

■ ライムストーン消防署の消防士がヘルメットに装着していたビデオカメラに爆発の瞬間が映っており、その映像が公開された。この消防士は、1基のタンクに放水している消防士2名をモニタリングしていた。その距離は約40ヤード(36m)だった。このとき、突然、安全弁が吹き出し、それからタンクの端部が噴き吹飛んだ。なお、この消防士にケガは無かった。ライムストーン消防署のドン・ボイル署長は、「最初の画面では、誰もがタンクは安全だと思うだろう。しかし、事は突然に起った。このビデオは全国にいる消防士の訓練に有効だと思った」と公開の目的を話した。
安全弁からの吹き出しの瞬間(矢印)
(写真はJob.aol.comの動画 から引用)
タンク爆発の瞬間
(写真はJob.aol.com の動画から引用)
噴き飛んで落下するタンク端部(矢印)
(写真はJob.aol.comの動画 から引用)

補 足
■ 「オクラホマ州」は、米国南中部にあり、人口約375万人の州である。州都および最大都市はオクラホマシティであり、タルサ市がそれに続く。
 「オワッソ」(Owasso)は、オクラホマ州の北東部にあり、ロジャー郡とタルサ郡に属し、人口約33,000人の市である。オワッソはタルサ市と約20kmの距離である。
(写真はグーグルマップから引用)
■ 発災した「横型円筒タンク」の大きさを報じた情報はなかった。グーグルマップで発災場所を確認し、7基のタンクの大きさを推定すると、直径2.6m×長さ6.0mのタンク(容量30KL級)が2基、直径2.6m×長さ8.3mのタンク(40KL級)が1基、直径3.0m×長さ6.5mのタンク(45KL級)が1基、直径3.5m×長さ17mのタンク(160KL級)が3基である。従って、横型円筒タンクの全貯蔵容量は625KL級となる。
発災のあったアスファルト製造施設と横型円筒タンク群
(写真はグーグルマップから引用)
所 感
■ 今回の事故は分からないことの多い事例であるが、消防活動はなかなか興味深い内容だった。
 ● 消火用水の供給に苦労している。施設内に消火栓がなく、遠い消火栓まで給水車を折り返し運転して対応していたら、その消火栓が故障してしまい、さらに遠い消火栓を使用しなくてはならなかった。現場では、このような予期せぬことが起きるので、その度に迅速な判断を行い、対応しなくてはならない。
 ● 爆発によって負傷者が出たときの消防士の動揺について述べられている。このような消防士の心情まで語られる事例情報は稀である。消防士は冷静沈着さを求められるが、実際には、このような心の葛藤があるだろう。米国のローカルな話であるが、人間味を感じる話である。
 ● 消防士がヘルメットに装着したカメラによる爆発時の映像が公開されている。消防署長は貴重な記録として自分たちだけに留めておくのではなく、全国の多くの消防士の参考にしてもらうため、公開したという。最近では、日本の消防分野でも情報共有化の意識が出始めているが、今回のような例はない。

■ 最初の火災発生については情報がなく、推測しようがない。しかし、発災写真を見ると、かなり広い範囲で火の手が上がっている。おそらく、いずれかのタンク(または配管)から漏れた油による火災だと思われる。つぎに起ったタンク爆発の映像から受ける印象は、当該タンクに入っていた油が少なく、気相部が多かったように見える。なぜ、安全弁が吹いた後に爆発が起こっているか判然としないが、気相部が火災による熱でかなり高温になって圧力が上がっていたものだと思う。OSHA(米国安全衛生労働局)が爆発の原因調査を行うというので、この調査結果に期待したい。(公表される可能性が高い。また、人身災害回避の観点から爆発の事前徴候について調査されるだろう)

備考
 本情報はつぎのインターネット情報に基づいてまとめたものである。
  ・Fox23.com,  Rock Quarry Fire out, Three Firefighters Recovering,  October 12, 2015  
    ・Fox23.com,  OSHA: Company That Owns Burned Owasso Asphalt Plant Faced Violations in Years Past,  October 12, 2015
    ・Tulsaworld.com,  Fuel Tank Explodes in Fire at Owasso Rock Quarry; Three Firefighters Hurt,  October 12, 2015   
    ・Claremoreprogress.com,  Explosion Following Fire in Owasso Injured Firefighters,  October 13, 2015
    ・Dailyjournal.net,  Officials: 3 Firefighters Injured in Rock Quarry Explosion in Owasso,  October 13, 2015
    ・Tulsaworld.com, Video: Tank Explosion at Owasso Rock Quarry Captured on Helmet Camera,  October 14, 2015
    ・Fireapparatusmagazine.com,  Explosion at Owasso Quarry (OK) Damages Fire Apparatus,  October 14, 2015
    ・Newson6.com,  Firefighter Catches Owasso Tank Explosion On Helmet Cam,  October 15, 2015



後 記: 最初に火災が起ったのは、タンクをクリーニング(Cleaning)しているときという表現だったので、またタンク開放作業中の事故だと思いました。ところが、状況をみていくと、全タンクに油が入っており、このクリーニングとは掃除という意味に解釈しました。(火災との関係は薄いようです) 消火活動中の爆発もタンクが火炎に曝され続けているときに起ったと想像していましたが、情報を読み合わせていくと、ほぼ火災を制圧した状況下で起ったことが分かりました。ひとつの情報源だけだと予断を抱きやすいですが、複数の情報源を読んでいくと、見えてくるものがあります。タンク内の液についてもディーゼル燃料用3基、バーナー燃料用3基、残りの1基も油という情報がありましたが、アスファルト施設ということから本文のようにしました。
 しかし、見えないものもあります。複数の情報として、タルサ・アスファルトは採石場に施設をリースしているというのです。親会社が舗装の会社であり、この場合のリースとはどのような形態をいうのよく分かりません。また、現時点では、リース形態に重要な意味がある訳ではなさそうなので、本文中には触れませんでした。また、出動した消防士の人数ですが、全体でdozens of firefightersとあり、二・三十人なのか、数十人なのか、あるいはもっとたくさんなのかよくわかりません。しかし、予備役である空軍州兵の消防士が4名だったという情報があり、各消防署の規模は大きくなく、総員で30~40人程度だったのではないでしょうか。

2015年11月8日日曜日

地上式貯蔵タンクの破壊による液流出のモデル化と軽減策の検討

 今回は、2008年国際油流出会議(International Oil Spill Conference)で英国のリバプール・ジョン・ムアーズ大学(Liverpool John Moores University)のアサートン氏ら(W.Atherton, J.W.Ash, R.M.Alkhaddar)が発表した「地上式貯蔵タンクの壊滅的な破壊による液流出のモデル化と軽減策の検討」(The Modeling of Spills Resulting from The Catastrophic Failure of Above Ground Storage Tanks and The Development of Mitigation)について紹介します。
< 要 旨 >
■  地上式貯蔵タンクが壊滅的な破壊事故に遭遇するリスクは極めて低く、その発生確率は5×10/タンク・年程度である。しかし、最近、2004年のベルギー、2005年の英国および米国で貯蔵施設からの大量流出事故が起こっており、タンク破壊事故は決して起らないとはいえない。このような事故の原因はいろいろである。しかし、事故がもたらす結果は同じだと言ってよく、大きな設備損害、環境被害、経済的損失が生じる。

■ このような損害を防止するためにとられる通常の軽減対策は2次封じ込めで、一般には、防油(液)堤や土盛りの方法が用いられている。私たちの研究は、そのような対策方法の信頼性を調査するとともに、封じ込めのロスの観点から理論的かつ実験的の両面から、タンク破壊時の影響について検討した。

■ 英国安全衛生庁(HSE)では、当時利用可能なデータが限られていたが、グリーンスパンとヨハンセン(Greenspan and Johansson)の研究成果(1981年)とその後に出されたトロボジョビックとスレーター(Trobojevic and Slater)の研究成果(1989年)の内容をもとにして、1997年に報告書がまとめられた。その後2003年、英国安全衛生庁(HSE)は、越流の大きさと防油(液)堤にかかる動圧力の定量化のため、大規模な流出モデルのプログラム作成をリバプール・ジョン・ムアーズ大学(LJMU)に委託した。この研究では、タンクと防油(液)堤のいろいろな配置の中から計96通りを選び、軸対称な流出の影響について調べた。

■ 大量の流出事象は予期以上の重大な影響をもたらすということが分かった。いくつかのケースでは、動圧力によって防油(液)堤の構造自体が耐え得るかどうかという疑問も出てきた。従来、流出は一方向性というような前提条件付きのモデルで研究されてきたが、ここでは、実際に起こりうるような汎用的な流出モデルを考えた。

■ 今回のモデルの研究成果から、さらに軽減策を検討してきた。軽減策を進めれば、タンク破壊事象時において損失を少なくでき、究極の最適設計を可能にするだろう。軽減策の方法には、2つあることは明らかである。ひとつは1次封じ込め(タンク)の対策であり、もうひとつは2次封じ込め[防油(液)堤]の構造設計の変更である。

< はじめに >
■ 石油やケミカル類の貯蔵に弱点があれば、環境汚染に対する潜在的な脅威となり、健康と安全への問題を起こすことになる。貯蔵施設の故障について理解するには、設計、製作、建設、運転、定期検査、保全に関する広範囲のマネジメントに関する知識・知見を必要とする。現在、数多くのガイドラインが存在しており、設置される国によって若干差異があるものの、標準化された仕事のやり方や適切な推奨基準が提唱されている。最近(2003年)、英国で発行された書籍「ケミカル貯蔵タンクシステムの好適な標準 CIRIA C598」(Chemical Storage Tank System-Good Practice CIRIA C598)-キャッシー/シール共著(Cassie and Seale)は有用な指針である。この書籍の目的とする対象者は、プロジェクト推進者、設計者、製作者、建設エンジニア、メンテナンス・エンジニア、建設プロジェクト・マネージャ、施設エンジニア、オペレータ、関係監督機関などである。

■ 世界で使用されている地上式常圧貯蔵タンクには、いろいろな種類がある。上部開放式タンクにも浮き屋根があるタイプと無いタイプがあり、屋根付きタンクにも浮き屋根があるタイプと無いタイプがある。EU(欧州連合)では、このようなタンクの設計に関する規程としては、英国規格(British Standard: BS)のBS EN 14015 「地上式溶接型鋼製貯蔵タンクの設計および建設」 (Specification for The Design and Manufacture of Site Built, Vertical, Cylindrical, Flat-bottomed, Above Ground, Welded, Steel Tanks for The Storage of Liquids at Ambient Temperature and Above)がある。この規格と同等なものは、米国石油協会(American Petroleum Institute: API)のAPI Std 620「大型溶接式低圧貯蔵タンクの設計および建設」(The Design and Construction of Large, Welded, Low-Pressure Storage Tanks)とAPI Std 650「石油貯蔵用溶接式鋼製タンク」(Welded Steel Tanks for Oil Storage)がある。

■ 貯蔵タンクの破壊が起こるというリスクは低いといえるが、偶発的な損傷や故意による破壊によって、封じ込めの機能を喪失する可能性は常に存在する。原因に関係なく、大量の液体が施設から流出するという事象は過酷な状況を呈し、環境へ大打撃を与える恐れがある。貯蔵物質の性状や量によっては壊滅的な状態に至る。貯蔵タンクのまわりは、一般に、土盛りや防油(液)堤として知られている擁壁で囲まれている。好適な標準としては英国安全衛生庁(HSE)によって出された「2次封じ込め設備の技術的進め方」(The Technical Measures Document on Secondary Containment)があり、これによれば、複数タンクをひとつの防油(液)堤や土盛りで囲む場合、合計容量を60,000㎥以内に制限している。ただし、液体は性状的に不適合でなく、仕切堤を設けることとしている。

■ 防油(液)堤の設計は、大体、最大タンクの容量の110%を保持できるようにされる。高さの余裕は、概念的にいえば、1次封じ込めであるタンクが壊滅的な破壊をしたときに堤の上部から貯蔵液が越えないような高さとする。最近の英国の指針では、複数のタンクがひとつの防油(液)堤内にある場合、全封じ込め量の25%とすべきだとしている。ただし、その量が110%基準より下回る場合を除く。産業界では110%指針を認めているが、25%基準はまだ幅広く受け入れられていない。2次封じ込めの容量を増やすことになる費用増加に対して根強い反対があるものと思われる。

■ 英国指針による容量増加の推奨事項に沿っていても、満足しないことがある。ザイヤーとジャガー(Thyer and Jagger)は、1977年、大量流出した場合、防油堤の上を越えることがあると論じている。グリーンスパンとヤング(Greenspan and Young)は、1978年、このことをいろいろな研究によって示した。 1981年、グリーンスパンとヨハンセン(Greenspan and Johansson)は、1924年に米国オクラホマ州ポンカ・シティで起きた実際の事例で示した。ラスコースキーとボルタジオ(Laskowski and Voltaggio)は、1988年の米国ペンシルベニア州フローレフェで起きたアシュランド・オイル流出事故の事例で示した。研究によって明らかになったことは、単純に防油堤/土盛りの容量を増やしても大量流出を防ぐことにつながらないということから、防油(液)堤の容量に関してふたつの相反する意見の論争が続いている。2005年、アサートン(Atherton)は、タンク容量の200%の能力をもつよう設計された防油(液)堤でさえ、20%オーダーで垂直壁を越えることがあると論じた。さらに、タンクが壊れた場合、隣接タンクに損傷を与える恐れがあり、ドミノ効果によってさらに封じ込め上の損失が大きくなる。

デラウェア州モティバ・エンタープライズ社の廃硫酸タンク事故
 (写真はCSB.govから引用) 
■ 2001年、モティバ・エンタープライズ社デラウェア製油所で起った事象は典型的な事例で、事故はあっという間に拡大した。複数タンクをひとつの防液堤で囲んでいて、堤内で複数の損壊が起こると、災害規模は何倍にも大きくなる。事故は、6基の廃硫酸タンクをひとつの防液堤で囲んでいた施設で起きた。6基のタンク容量の合計は9,412㎥で、防液堤の容量は1,814㎥だった。これは最大タンク容量1,569㎥の116%に相当していた。しかし、防液堤の受入れ可能量は全貯蔵容量の20%に過ぎなかった。この事故で注目されたのは、適切ではなかった2次封じ込め設備に関する危険性で、特に複数のタンクをひとつの防液堤で囲んでいたことである。1基のタンクで爆発という壊滅的な破壊が隣接タンクの損傷へ波及し、貯蔵していた液の大量流出に至ってしまった。この事故では、2次封じ込めの防液堤から流出した量は4,100㎥に及んだ。 この事故については、2001年、米国化学物質安全性委員会(U.S. Chemical Safety and Hazard Board: CSB)から調査報告書が出されている。

< タンク事故の事例 >
■ 米国環境保護庁(U.S. Environmental Protection Agency: EPA)は、2000年、タンク事故の原因について調査の検討を委託したが、その結果、タンク基地の事故に関する主要な要因はヒューマンエラー(人的ミス)だった。この調査は1990年~2000年の10年間を対象としたが、注目されるのは、貯蔵施設の事故を長期間でみると、事故の件数が比較的一定だということである。この期間で対象にしたタンク基地の事故は312件だったが、そのうち22%が運転ミスによるものだった。タンク破損に関連するものが55%で、その中で取付け部品や継手の機械的損傷によるものが17%だった。特に死亡事故に至った事故の場合、原因は100%ヒューマン・エラーだった。過充填や過圧は内部液漏洩や物的損害につながるが、漏洩に関わる事故のうち原因の88%がヒューマン・エラーであり、物損に関わる事故のうち87%がヒューマン・エラーだった。

■ 10年間の事故の中で、可燃性ガスに引火して大災害になった事故は数件ある。タンク側板の溶接部が割れた事例やタンク基礎から噴き飛んだ事例は数多くある。タンク外部でガスに引火したり、タンク内でのフラッシュバックといった大きな事故の原因の多くは溶接作業である。1997年に米国環境保護庁(EPA)が出した報告によると、これらの事故は、環境汚染の問題とともに、作業員の負傷や死亡事故につながっていることが多い。事故に至った他の原因としては、腐食、疲労、衝突損傷、異常気象時に充填作業を行っていた際の過圧、地震活動だった。

■ タンク事故の主な事例を以下に示す。
ペンシルベニア州アシュランド・オイルのタンク破壊事故
 (写真はHSE.gov.ukから引用) 
 ● 1988年1月、米国ペンシルベニア州フローレフェ; アシュランド・オイルにおいて容量15,000KLの燃料油タンクが破壊し、防油堤内に流出し、別なタンクに損傷を与えたほか、油が防油堤を越えていった。
 ● 1997年3月、米国アイオワ州; 容量3,800KLのりん酸アンモニウムタンクが破壊した。
 ● 1999年7月、米国ミシガン州; 容量3,800KLのポリリン酸アンモニウムタンクが破壊し、他に3基のタンクが損傷した。
 ● 2000年8月、米国オハイオ州; 容量3,800KLの液体化学肥料タンクが破壊し、近くにあった複数のタンクを損傷させた。放出された液の津波はコンクリート製防液堤を突破し、5台のトレーラ・トラックを襲ったほか、オハイオ川に流出した。
 ● 2000年8月、米国オハイオ州; 上記と同じ施設で同月下旬に、容量5,700KLのりん酸アンモニウムタンクが破壊した。他の3基のタンクも損傷し、内部液が漏洩して防液堤を越流した。合計1,700KLの汚染された水が排水系へ流れ、一般飲料水系を汚染する恐れが出た。このため、広域で水のペットボトルを使用することとなった。
 ● 2001年7月、米国デラウェア州; 炭化水素混じりの廃硫酸が入ったタンクが爆発(火気作業による)し、隣接するタンク4基が壊れて内部液が漏洩した。この事故で死者1名、負傷者8名の人身災害となったほか、 3,700KLの酸性液が防液堤内に押し寄せ、うち370KLがデラウェア川に流れ込んだ。
 ● 2005年、ベルギー・アントワープ; タンクの壊滅的な破壊によって、26,000KLの原油が放出され、一部は防油堤を越えた。 
 ● 2005年、米国ルイジアナ州; ハリケーン・カトリーナの通過ルートになった石油基地や製油所の中には、封じ込め設備からの流出を経験した。最も顕著だったのはマーフィー・オイル社で、流出量は10,000KLと推定された。
 ● 2,006年、米国コネチカット州スタンフォード; 壊れたバルブが要因で380KLの燃料油がタンクから放出され、2次封じ込め設備から流出した。流出量は不明である。

■ タンク事故の原因はいろいろであり、失敗要因にもいろいろあるが、重要なことはそのような事故の引き起こした結果である。封じ込め設備から流出すると、経済的損失や環境汚染につながる。環境汚染は、例えば局所的な土壌汚染や水路系の汚染、ひいては飲料水の問題に進展することになる。

< 見直しの必要性 >
■  1次封じ込め設備において液の大量流出に至る破壊事象が数多くあることから、2次封じ込め設備の性能や設計に関して改めて見直してみる必要性のあることがはっきりした。タンクの破壊に至る最初の要因はいろいろあるが、突然、壊滅的な放出が起った場合、ほとんどの例で防油(液)堤が不足していたことが分かった。貯蔵タンクから液が一気に放出されると、防油(液)堤から越流するのは当たり前ともいえる。危険性を感じることが多い部位は健全性の欠ける溶接部であり、これは多くの事例から明らかである。危険性の内在の有無という点で、2001年、米国環境保護庁(EPA)は貯蔵タンクの壊滅的な破壊の潜在性について、つぎのような事項を再評価する必要性があるとしている。
 ● 作業員の技量および試験・検査の品質レベルに関する製作者の詳細と記録
 ● 溶接欠陥の有無と処置に関する記録
 ● 基礎と直接接しているタンク底部における腐食の徴候
 ● 激しい雨や強風に曝されているレベル
 ● タンクの経年変化と使用条件
 ● 他の種類、特に危険性物質を貯蔵するタンクとの距離

■  危険性を低減したり予防するには、適切な設計と建設が直接関係しているほか、潜在している危険な欠陥の早期発見や補修を行う定期検査とメンテナンスが関係している。検査周期については指針などによって異なる。API Std 653(Tank Inspection, Repair, Alteration, and Reconstruction)では、タンク全面検査の周期について5年毎を推奨しており、一方NACE(National Association of Corrosion Engineers; 米国防食技術協会)Internationalでは、2年毎を提案している。これらの指針や提案の基準は、直接的な法規制の要求ではなく、自主的に決めるものである。しかし、不適切な検査が壊滅的なタンク破壊の根本原因のひとつになることがある。例えば、2005年ベルギーのアントワープ事故である。破壊したタンクと同じ封じ込めエリアにある他のタンクについて検査した結果では、すべてのタンクで問題のある基礎であることがわかった。基礎部の過剰な水分を抑えるために水路(みずみち)の考慮をした砕石リングによって生じた底板の大きな溝が、結果的に破壊するまで分からないような局所的な腐食を進展させてしまった。

■ 貯蔵タンクから危険性の液体が放出されたあとの挙動を予測することについて英国安全衛生庁(HSE)が関心をもっていると、ザイヤー/ハースト/ジャガー(Thyer、Hirst and Jagger)は2002年に述べている。英国安全衛生庁(HSE)は、安全に対して責任をもつ法定組織であり、いろいろな環境機関と協力しながら仕事をしている。法定業務は、主に重大事故ハザード規則管理(Control of Major Accident Hazards Regulation)とセベソ指令Ⅱの実行を通じて成し遂げられている。英国の法令のもとでは、リスク・アセスメントをきちんと実施する必要があり、構内から危険物質が流出しないように管理する実際の方法について概説する必要がある。このためには、いろいろな可能性のある想定をもとにした流出の予測をする必要があり、さらに2次封じ込め設備の性能に関する現実的なデータが必要になってくる。ザイヤーとマクミラン(Thyer and MacMilan)が1998年に述べているように、実験的なデータベースに組み入れる一般変数を決めるためには、コンピュータ・ベースのモデルが開発されれば、容易になる。

■ 防油(液)堤からの越流の問題とともに、液の衝突によって防油(液)堤にはかなりの動的荷重がかかる。このため、防油(液)堤に激しいエロージョンが生じたり、場合によっては壊れて、液の流出に至るかもしれない。最初、1980年にクーペラス(Cuperus)が行った研究によると、動的荷重は防油(液)堤の底部にかかる静的荷重の6倍より高くなるかもしれないと言われていた。その後、1983年にレージスキー(Rouzsky)らが行った研究によると、動的荷重は静的荷重の3倍程度だという結論だった。

■ 1998年のザイヤーとマクミランの研究によると、多くの現場において防油(液)堤の強度の余裕率について調べたところ、大きな差(600~2)があった。大きな防油(液)堤では余裕率が小さくとられており、完全に壊れるリスクがあることがわかった。従って、動圧力について正確な評価を行う必要があり、詳細な分析を行って防油(液)堤の安全率を確認する必要がある。

< 流出モデル >
■ 1978年のグリーンスパンとヤングの研究では、擁壁に対する液の衝突やその後の越流に関する問題についてほとんど分かっていないと述べている。このため、グリーンスパンらは問題点について理論的な検討と実験的な調査を行った。

■ 分かった中で大きいことは、越流が主にh/H、すなわち擁壁の高さ(h)とタンクから放出される液高さ(H)の比に依存していることである。そして、L/R、すなわちタンク半径(R)に対する擁壁とタンクまでの距離(L)の比にはあまり依存していなかった。 (図1を参照) 実験は、 0.33 ≦ L/R ≦ 4の範囲において擁壁高さとタンク高さをいろいろな組み合わせで行われた。また、衝突点において盛り上がる液の先端高さは、タンク内の当初の液高さを越えることが分かった。このとき、放出液の先端からほとばしる液滴の高さは、タンク充填液位の3倍に達した。
図1 タンクおよび堤の関係と寸法記号 
■ グリーンスパンとヨハンセンによる1981年の研究では、波が擁壁を越えるかどうかは土盛りや堤の形状によると述べている。液は傾斜した堤を跳び越すかもしれないし、垂直堤の背後にすぐに溜まって越流するかもしれない。実験は軸対称系の装置で、貯蔵タンクから液を瞬間的に放出して実施された。すなわち、静置状態の液の柱が重力作用によって一気に落下し、広がっていくやり方だった。グリーンスパンとヨハンセンの実験で導いた結論として、越流率(0 ≦ Q ≦ 1)を推定する式はつぎのような無次元数の組み合わせで表されるだろうとした。
  Q= ƒ ( h/H, r/H, R/H, θ)           (1)
 ここで、 h/Hが主変数であり、 r/H、R/H、 θ(堤の傾斜角度)は副次的なパラメーターである。

■ 1997年、英国の安全衛生研究所(Health and Safety Laboratory)が調べた結果では、この分野における研究はたくさん行われた一方、検討内容が断片的であり、多くは記録が残っていないという。1998年、ザイヤーとマクミランは、当時、利用可能な情報を調べ、グリーンスパンとヨハンセンによる初期の研究(1981年)に注目した。それは、タンク破壊について軸対称モードと非対称モードの両方が考慮されていた。そのあと、1998年、トロボジェビックとスレーター(Trobojevic and Slater)は、放出された液の衝撃によって2次封じ込み設備に潜在する損傷問題について実験を行った。このような研究歴史から、リバプール・ジョン・ムアーズ大学(LJMU)においてタンク破壊による流出の物理的モデル化を行うことになった。この研究は、2005年、アサートン(Atherton)によって行われ、合計96ケースのタンク/堤配置について検討された。タンクは高い、中間、低いの三種類に分け、堤容量は貯蔵タンク容量の110%~200%の範囲でいろいろな組み合わせを選択し、十分な大きさの規模で行われた。

■ タンク破壊事象の故障モードはかなり複雑であり、割れの進展具合と自由表面における流出液の流れとの間には相互に影響しあう関係がある。そこで、割れは流体の挙動の中で流速に関係していると仮定し、流速が速いほど割れが進展するとした。そして、割れは縦方向と円周方向に同時に進展すると仮定した。従って、タンクは瞬間的に完全な状態を失い、液は封じ込め設備まで移動していくとした。また、円筒柱の液が重力によって崩れていくという仮定も置いた。

写真1 LJMU式モデルタンクと流出部テーブル
■ 壊滅的なタンク破壊をシミュレーションするため、写真1のようなタンク四半部の実験用モデルと流出部のテーブルを製作した。使用したモデルのスケールは1/30とし、摩擦の影響をできる限り排除するために十分な大きさを考慮した。実験レベルでの摩擦の影響は、越流のレベルを過小評価する結果を生じやすく、有害な要因になる。当初のタンク液位と堤における波の高さは、静電容量式プローブによって記録した。堤の壁には動圧力センサーを組み入れ、流出部テーブル上にいろいろな高さと配置を行った堤モデルを設定して実験を行った。

■ 一貫性のあるデータを得るため操作方法に工夫を凝らして、タンク破壊と越流レベルの再現性に問題がないよう研究調査を行った。越流した量と堤に残った液量は、排水部の水を集めた後、物質収支を行って計測した。収集したデータはPDA(携帯情報端末)に入れて、赤外線通信リンクによって“ノートパソコン”へ伝送する。

■ タンク液の高さ、堤部における波の高さ、堤での動圧力、液温などの生データは、ナショナル・インストルメンツ社のLabVIEWソフトウェアを入れたSCXIデータロガーによって集積される。今回の研究の一環として作られたグラフィック・プログラムによって、“リアルタイム”でデータをコンピュータ画面に表示することが可能となった。これによって他のソフトウェア・パッケージを使用して処理する必要がなくなった。越流率を決定するため、データについて統計的分析を行い、無次元数を使用した相関関数とチャートを構築した。動圧力センサからのデータを使用して、堤の壁自体の動圧力グラフを計算で求める。そして、現在の設計目的で用いる静圧力グラフと比較させる。

■ モデル化の適正化と予測の信頼性を上げる試みとして、実験ではタンクの大きさを3つに分け、タンク半径と高さの比率;R/Hを0.5、1.0、2.5の3種類とした。堤は“ハイカラー”(高い襟)と分類される堤を想定し、容量は110%、120%、150%、200%とした。これらの詳細については、2005年に出した研究レポートHSE RR333(An Experimental Investigation of Bund Wall Overtopping and Dynamic Pressures on The Bund Wall Following Catastrophic Failure of A Storage Vessel)を参照。実験の大半は、円環の四分円配置で実施した。これは、長方形配置や四角形配置の堤では流れ特性に差異が生じ、結果として越流や動圧力の大きさに違いが出るためである。

< 軸対称の流出 >
■ 110%容量で設計された堤では、越流する量は状況次第で幅があり、貯蔵液に対する比率で最良の24%から最悪の70%までの範囲を示した。(図2を参照) 動圧力も同様に幅があり、静圧力の1.3倍から16倍の範囲だった。一方、200%容量で設計された堤で実施されたテストでも、越流率はかなり高い値を示した。越流率は低い値の14%から高い値の57%の範囲になった。これに伴う動圧力も幅があり、静圧力の1.5倍から7.5倍の範囲だった。
図2 標準的な軸対称流出モデル
タンクを瞬時移動して重力作用によって崩壊する液
< 非対称の流出 >
■ 英国安全衛生庁(HSE)から委託された研究について視点を変え、破壊の別な代替モード、例えば一方向性流出について調査することにした。これは、実際に遭遇するような破壊の共通モードを考慮するためである。そのような破壊とは、例えば、低い位置にあるフランジやパイプの破損、あるいはタンク壁の小部分における健全性の喪失などである。研究で分かったことは、この破壊モードでは、流体が長い時間に集中的に噴出の影響を受けることによって堤や土盛りが損傷を招く可能性があり、封じ込めの損失がかなり大きくなるという結果となる。(図3を参照)
図3 標準的な非対称流出モデル
タンクの部分破壊によって堤にジェット衝撃を与える液
■ 破壊の代替モードとしては、クラックが円周方向より縦方向に進展する方が速いという事実にもとづき、タンクの縦断面に割れが入り、生じた隙間から液が放出されるものとした。これは非対称破壊モードであり、堤への動的荷重が局所的に増すことになる。しかし、トルボジェビッチとスレータが1989年に論じたように、実際には2つの破壊モードの複合したものが起こると思われる。

■ 1990年のバーンズ(Barnes)による“スピガット・フロー”(Spigot Flow: 栓噴流)や防油(液)堤の設計におけるジェット流損傷の可能性などが考えられていた時代には、突然の流出に関して多くの研究が行われていた。リバプール・ジョン・ムアーズ大学(LJMU)では、部分的な破壊の影響について検討していた。これは、1981年グリーンスパンとヨハンセンによる最初の研究で提案されたようなフランジの機能喪失やタンク壁の局所損傷などで経験され得るものを想定したものである。

■ この破壊モードを調べるためには、実験設備を修正する必要があった。このため、上記の軸対称の流出で述べた可動式壁の前に第二のタンク壁を置くことにした。このタンク壁にガイドを設け、交換可能なプレートを挿入できるようにした。孔を開けたプレートはフランジの機能喪失を想定する場合に使用し、可変式プレートはタンク壁の部分損傷の影響を調べる際に使用した。第二の壁はオリジナルの壁から0.2mm以内に置き、軸対称の流出時と同じ速さでオリジナルの壁を動かすようにした。テストでは、タンクの半径と高さ比率(R/H)について3種類、円形孔のオリフィスについて3種類、長方形(スロット)の開口について3種類を考慮して行った。

< 越流量の推測 >
■ グリーンスパンとヨハンセンによる1981年の研究データにもとづき、 2001年にクラーク(Clark)、2005年にハースト(Hirst)らが越流量を推測する式を導き出そうと試みた。この研究は2005年にアサートンによって達成された。いろいろな破壊モードや配置から得られたデータによって、越流量の推測式の信頼性は格段にあがった。(図表1を参照)
図表1 軸対称のタンク破壊による越流
R/H=1.0、堤の各種角度
■ 軸対称の流出の場合、次式で表される。
  Q = A exp [-B(h/H)]                                        (2)
   ここで、Q: 越流率 (タンク内液に対する越流量の比率)
         AおよびB: 表1から得られる値
             h: 堤高さ   H: タンク液位
 この式は、2001年のクラークによって提案されたものと同じ形である。この式の有効な範囲は、0.66 ≦ (r – R)/R ≦ 5.32 である。ここで注記すべきことは、 “ハイカラー”(高い襟)堤は有効な範囲から外れるということであり、越流率は、通常5%未満で、ほとんど無視できる。“ハイカラー”(高い襟)堤を外すことによって、大きな半径で小さな堤に適した推測式の質を改善することになる。大きな半径で小さな堤では、摩擦力が結果に影響を及ぼし始める。
表1 軸対称破壊モード: タンク内液100%を瞬時放出
■ 非対称のスロット放出の結果は図表2に示す。非対称のスロット流出の場合、式(2)におけるAおよびBは、タンク開口面積比に応じた表2に示すAおよびBの値を用いる。
図表2 非対称および軸対称タンク破壊による越流率の比較
R/H=1.0、堤の角度θ=90°

表2 非対称破壊モード(スロット): タンク内液0.5%を瞬時放出

表3 非対称破壊モード(スロット): タンク内液1.5%を瞬時放出

表4 非対称破壊モード(スロット): タンク内液2.5%を瞬時放出
< 動圧力 >
■ 図表3は、軸対称で開口面積0.5%のスロットおよび円形孔オリフィスからの流出時において堤部にかかる動圧力のレベルを示したものである。動圧力を通常の静圧と比較してみた。この場合の静圧は、高さ120mmの堤モデルを用いて水による値で、高さを%で表示している。
図表3 動圧力の結果
R/H=1.0、堤容量110%、堤の角度θ=90°
■ この結果から明らかになったのは、動圧力の大きさは、越流の規模に左右されるほか、開口面積の形状が重要な因子になっているということである。しかし、四半円スペースのモデルでは、還流現象による問題があり、特に円形孔オリフィスの場合、越流を増やす傾向になる。

< 軽減策 >
■ グリーンスパンやヨハンセンを含めた多くの研究者は、タンクの破壊事象時に越流を減らす方法として2次封じ込め設備の形状をいろいろ変更する試みを提案してきた。2007年にリバプール・ジョン・ムアーズ大学(LJMU)で行われた研究では、1次封じ込めと2次封じ込めの両方について改善可能な範囲を調査し、その詳細内容は2年ほどの間に発表された。この研究は110%の堤容量を前提にしたものに集中した。これは、すでに示したように、2次封じ込め設備の容量を単に増やすだけでは、タンクの破壊事象時に生じる相当量の損失を回避できないという考え方によるものだった。

■ 損失軽減に関する有効なものとしては、MOTIF(Mitigation Of Tank Instantaneous Failure: タンク瞬時破壊の軽減)やCOAST(Catastrophic Overtopping Alleviation of Storage Vessel: 貯蔵容器の壊滅的越流の軽減)がある。MOTIFは貯蔵容器の設計に関する変更である。これは低所に内部バッフルを設置するもので、バッフルの大きさは対象タンクの種類によって変わる。バッフルの目的は、壊滅的なタンク破壊事象時に流出する液の流速を減じることである。 COASTは、堤壁の上部に波の衝撃に耐えるよう特別に設計したデフレクター(波返し)を設置するものである。デフレクターを既設の堤に追加すれば、2次封じ込め設備の総容量を増やす効果もある。デフレクターを新設の2次封じ込めシステムの設計に取り込めれば、110%容量でも十分なものとなる。越流を回避する上で重要なことは、構造物の全体寸法よりデフレクターの形状である。

■ これらの変更を取り入れて得られた典型的な結果を図表4に示す。 COASTのみの場合、15~52%の軽減がみられた。 MOTIFのみの場合、76~79%の軽減がみられた。一方、両方の軽減策を組み合わせた場合、110%の堤容量をベースにして91%の軽減につながることがわかった。
図表4 軸対称タンク破壊に対する越流軽減策の結果
R/H=1.0、堤の角度θ=90°
< 結 論 >
■ はっきりしたことは、貯蔵タンクに壊滅的な破壊が生じた場合、たとえ防油(液)堤が損傷しなくても、貯蔵されていた液の70%を超える量が越流して堤外の環境へ影響を与えるということである。その上、流出液による衝撃に対して、2次封じ込め設備が耐え得るか疑わしい。堤の構造にはいろいろあるが、一般的に設計された堤には、6倍の動圧力がかかるのである。図表3に示す例でいえば、動圧力は破壊の形態によって違うが、円形孔オリフィスの場合、通常の静圧の2倍以上の圧力がかかる。

■ 軸対称破壊の研究を行うリバプール・ジョン・ムアーズ大学(LJMU)では、過去の研究者によるレポートを確認する一方、越流量の推測に関する信頼性を格段に高めた。2005年にアサートンによって発表されたデータは、英国安全衛生庁(HSE)の研究者に認められ、2007年アービングとウェーバー(Irvings and Webber)による国土計画問題で使用するための予測ソフトウェアの開発計画に受け入れられた。タンクの部分破壊と全体破壊の両方に関する予測式の開発は、防油(液)堤で発生し得る動圧力の推測とともに、現在の軽減策を改善する業務に有効なデータを与えることになるだろう。

■ 現在、 MOTIFやCOASTの開発は、概念がシンプルで、初期のテストからの改善が比較的進んでいるということがわかった。さらなる進展と最適化を必要としている中で、施設区域から液が流出する量を劇的に減じたり、まったく無くすことのできる可能性を示しているといえよう。このようなシステム構築のメリットは、環境破壊を制限することになる。そして、これらは資本的損失や物的損失の減少とともに、将来の国土使用計画と密接な関係をもっている。


補 足             
■ 「リバプール・ジョン・ムアーズ大学」(Liverpool John Moores University)は、 英国リバプールの中心部に位置しており、 現在25,000人(留学生:約3,000人)の学生が在籍している。リバプール・ジョン・ムーア大学は1825年に設立された機械学の教育機関を前身とし、1992年に大学として認可された。大学としては比較的新しいが、建築学、電子・電気工学、スポーツ関連学が高い評価を得ているという。

■  「英国安全衛生庁」(Health and Safety Executive;HSE)は1974年に設立され、イングランド、ウェールズ、スコットランドにおける国民の健康と安全を司る国の機関で、日本では「英国安全衛生庁」あるいは、「健康・安全行政部」ともいわれる。 HSEが行った事故調査で有名なものは、2005年12月に起きたイングランドのバンスフィールド石油貯蔵所における爆発火災事故である。ハザード評価の分野では、ドイツのBAM(ドイツ連邦材料試験研究所)、オランダのTNO(応用科学研究機構)と並ぶ世界を代表する研究機関として知られている。

所 感
■ 貯蔵タンクの破壊による液流出のモデル化という日本では見られないテーマを扱った研究レポートで、示唆に富んだ良質な内容だった。 日本では、1974年に起きた岡山県倉敷市の水島のタンク破損による重油流出事故以降、消防法で防油堤に関する規制が強化され、防油堤に関する“安心”神話が生まれている。壊滅的な貯蔵タンクの破壊事故は、水島事故以降、確かに日本では無いが、世界的規模でみると、事例は多いという研究レポートの始まりに興味をひかれた。
 英国は、日本と同様、島国であり、防油(液)堤からの越流が直接大きな環境汚染へとつながる恐れがある。リスク・アセスメントやハザード評価に関心の高い英国で、この研究テーマが選ばれた理由が理解できる。この点、広大な土地を保有する米国とは国情の違いを感じる。

■ 貯蔵タンクが壊滅的な破壊をした場合、防油(液)堤を越流する液量は予想以上に多いという印象をもった。この研究レポートの良さは、単に流出のモデル化で実験データを得ただけでなく、軽減策に言及している点である。日本の石油コンビナートや化学プラントは港湾の近いところに建設されたものが多い。すぐ目の前が海(川や池)に面している石油貯蔵タンクやケミカルタンクは、少なくとも海側の防油(液)堤の壁上部にデフレクター(波返し)を設ける必要性を考えさせられるレポートである。

備 考
 本情報はつぎのインターネット情報に基づいてまとめたものである。
  ・Ioscproceedings.org, The Modeling of Spills Resulting from The Catastrophic Failure of Above Ground Storage Tanks and The Development of Mitigation,  2008 International Oil Spill Conference,
           W. Atherton,  J.W. Ash,  R.M. Alkhaddar
               Liverpool John Moores University, Faculty of Technology and Environment, School of The Built Environment,
               The Chere Booth Building, Byrom Street, Merseyside, Liverpool L3 3Af, UK


後 記: 今年になって、フランス環境省(現:フランスエコロジー・持続可能開発・エネルギー省)がまとめているARIA(事故の分析・研究・情報) の資料の中から、過去の注目されたタンク事故について事例紹介してきましたが、事例には壊滅的なタンク破壊による流出事故が少なくなく、この関係で知った今回の研究レポートを紹介することとしました。 取り組み始めたところ、過去の貯蔵タンク破壊事故の中には初めて聞く事例があったり、なじみのない用語などがあり、これらを調べるため脇道にそれることが多かったですね。例えば、デラウェア州の廃硫酸タンク事例の記述では、量につじつまが合わないところがあり、事例原本を調べ、体積単位の換算(ガロン→㎥)の際に間違っていることが分かり、数値を修正しました。(あれだけ合理的な考え方をする米国なのに何を意固地に世界の共通単位にしないのでしょうかね) とまれ、紹介できるところまで来たという感じです。