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2026年9月17日木曜日

スペインでメンテナンス中のタンク屋根が噴き飛び、死傷者4名

 今回は、202685日(水)、スペインのグラン・カナリア島にある石油会社;ディサ社の石油貯蔵所においてメンテナンス中だったタンクで爆発があり、タンク屋根が噴き飛び、メンテナンスを行っていた作業員4名に死傷者が出た事例を紹介します。

< 発災施設の概要 >

■ 発災があったのは、スペイン(Spain)のグラン・カナリア島(Gran Canaria)にあるテルダ(Telde)のサリネタス工業団地(Salinetas)にある石油会社;ディサ社(Disa)の石油貯蔵所である。

■ 事故があったのは、石油貯蔵所内にある燃料タンクである。燃料タンクは工事のため内部を空にされた状態だった。

<事故の状況および影響>

事故の発生

■ 202685日(水)午後12時頃、石油貯蔵所内にある燃料タンクで爆発が起こった。

■ テルデ市の沿岸地区にあるサリネタス工業団地に轟音が響き渡り、続いて炎が噴き上がった。爆発の衝撃でタンク屋根が外れて飛び出し、隣接のタンク上部の端に落下し、もう一方は発災タンクの側板に掛けられていた足場に乗っかり、重さ約8トンのタンク屋根が宙に浮いた形でぶら下がった。

■ 緊急通報センターに電話があり、サリネタス工業団地にあるディサ社の石油貯蔵所から煙が立ち上がっているという通報が入った。

■ カナリア諸島政府の緊急計画が発動され、消防隊、国家警察、地方警察、救急医療サービスが出動した。現場には、消防車両2台、医療対応救急車両2台、一般救急車1台を含む大規模なチームが出動した。

■ 爆発音は、サリネタスやメレナラなど工業団地周辺の複数の地域で聞こえ、当初は小規模な火災が発生したが、緊急対応チームによって鎮火された。

■ 事故にともない、4名の死傷者が発生した。内訳は死亡1名、負傷者3名である。負傷者のうち2名は重傷で病院へ搬送された。

■ 燃料タンクは供用中でなく、メンテナンス作業中だった。下請け会社であるネルビオン・インダストリーズ(Nervión Industries)の作業員が、タンクの上でメンテナンスおよび溶接作業を行っていた際に、燃料タンク内で爆発が発生したとみられる。タンクは空にされていたが、空にするまでの内液はガソリンとみられる。

■ 事故直後、路上からは、被害者のうち2名が外れたタンク屋根部に引っかかっているのが見られた。被災者の3名は、工事のためタンク屋根のプラットフォームに固定された安全ロープに安全帯をして作業していた。亡くなった作業員は爆発に巻き込まれ、空中に投げ出され、地面に激突して即死した。ほかの作業員2名は外れたタンク屋根に安全ロープで吊り下げられた状態だった。約1時間も宙吊りになった後、緊迫した活動を経て救出された。 

■ テルデ市長は、工場内で重傷を負った人々を救助する消防隊などの活動を妨げないよう、GC-1高速道路からサリネタス工業団地へ立ち入らないよう市民に呼びかけた。

■ 国家警察は、事故を職場事故として捜査している。

■ 石油会社のディサ社は声明で、事故は工事下請け会社のネルビオン・インダストリーズ社が貯蔵タンクのメンテナンス作業を行っていた際に発生したといい、ネルビオン・インダストリーズ社は、この施設で定期メンテナンスを専門に行っている会社だと説明した。ディサ社は、事故の状況を解明するため、任命された調査官に全面的に協力していると述べた。

■ 警察は、関係労働当局と連携しながら事故原因の調査を進めていると述べた。現場に居合わせた作業員や目撃者からも事情聴取を行っている。

■ 今回の爆発事故は、近隣住民の間にも不安を引き起こしたが、初期評価では、事故は施設内部に限定され、外部への深刻な影響はなかったとされている。

■ ユーチューブなどでは、タンク事故のニュースを伝える動画が投稿されている。

YoutubeUn fallecido y dos heridos al explotar un tanque de combustible en un polígono de Gran Canaria2026/8/5

●FacebookGrave accidente laboral en el polígono de Salinetas, Telde: la explosión de un tanque de combustible deja un trabajador fallecido2026/8/5

●FacebookLa explosión en un tanque de combustible del Polígono Industrial de Salinetas en la que falleció un operario y tres resultaron heridos se 2026/8/5

被 害

■ 燃料タンク1基が爆発でタンク屋根などが損壊した。また、隣接タンクの屋根部が一部損傷した。

■ 4名の死傷者が出た。内訳は死者1名、負傷者3名である。

< 事故の原因 >

■ メンテナンスのためタンク上での保全工事に関連した火気管理の問題だとみられる。

< 対 応 >

■ 調査では、爆発前にタンク内部および周辺でどのような状況が存在していたかを明らかにする必要がある。燃料を貯蔵している石油貯蔵所では、保全工事を行う前に、タンクの洗浄・不活性化・換気・大気測定・作業許可の手順が必要となる。タンク内に石油製品が存在しないからといって、火災や爆発の危険性がないとは限らない。以前に貯蔵されていた燃料の種類によっては、特に密閉された空間や換気が不十分な場所では、タンク内に可燃性のベーパーや雰囲気が残存する可能性がある。このため、溶接、切断、あるいは火花や高温が発生する可能性のある特定の工事などは、特に厳密な安全計画が必要となる。

しかし、一般的な原則だけでは、今回のサリネタス事故の原因であったと結論付けることはできない。調査では、タンク内の内容物、適用された手順、爆発時の大気条件を明らかにしなければならない。

■ 溶接および切断作業は、産業施設において最も厳重な予防管理が求められる作業の一つである。十分な濃度の可燃性ベーパーまたはガスと酸素を含む雰囲気と着火源が重なった場合、爆発が発生する可能性がある。したがって、石油などを取扱う産業では、この種の作業を行う前に、つぎのような対策が必要となる場合がある。①具体的なリスク評価、②適切な測定機器を用いた大気検証、③可燃性ガスまたはベーパー存在の制御、④必要に応じて換気や空気の入れ替え、⑤火気作業の許可手続き、⑥有害物質を放出する可能性のある機器や配管の隔離、⑥発火源の制御、⑦作業実施中の監視、⑧閉鎖空間での作業に関する具体的な対策、⑨工事や作業に関わる各企業間の連携。

 事故調査では、これらの対策のうちどれを実施する対策か、またどのように実施されたかを明らかにする必要がある。

■ サリネタス工業団地で発生した爆発事故は、可燃性製品を取り扱ったり、保管したり、あるいは過去に保管していた施設における予防措置の重要性を改めて浮き彫りにした。保全作業には、施設の通常運転とは全く異なるリスクが伴う場合がある。修理・切断・溶接・タンクへのアクセスなど、一見単発的な作業であっても、一時的に安全条件が変化し、特別な手順が必要となることがある。したがって、事前の計画、企業間の連携、危険な雰囲気の特定、発火源の制御は、産業安全の重要な要素である。サリネタスのケースでは、爆発発生時に実際に存在した状況と、計画されていた作業条件が一致していたかどうかは、調査によって明らかになるだろう。

■ 現場における原因調査が終わり、20269月に入って事業者のディサ社は、燃料タンクのタンク屋根の取り外し作業を開始した。


補 足

■「スペイン」(Spain)は、正式には、スペイン王国もしくはスペイン国で、本土はイベリア半島にあり、人口約4,859万人の議会君主制国家である。

「グラン・カナリア島」(Gran Canaria)は、北大西洋に浮かぶスペイン領カナリア諸島の一つで人口約85万人の島である。多様な気候と景観を持つ火山島で、中央の山地の最高峰は1,949mのピコ・デ・ラス・ニエベスであるが、北部が緑豊かで比較的涼しく、南部が砂漠やビーチリゾートというように地域で気候が大きく異なる。行政的にはスペインのカナリア諸島州に含まれる。島名のグラン・カナリアは犬の島を意味する。位置的にはアフリカ大陸(モロッコ沖)の北西岸近くの大西洋上にあるが、15世紀末にスペイン(カスティーリャ王国)によって征服されて以来、スペインの領有が続いている。 15世紀の前には、グアンチ人が住んでいたが、どのような状況の下でグアンチ人が入植し、島を開拓してきたのかは完全に解明されていない。

「テルダ」(Telde)は、カナリア諸島のグラン・カナリア島東部にあり、スペインのカナリア諸島州ラス・パルマス県の基礎自治体で人口約102,000人の市である。

「ディサ社」(Disa)は、1933年に設立されたスペインの石油会社であるが、ディサ・グループ(Grupo DISA)として石油・ガス、小売、物流、食品・飲料など、さまざまな分野に投資を行っている家族経営の会社である。特に、カナリア諸島で創業され、同地域における石油製品(ガソリン、軽油、LPガスなど)の流通において圧倒的なシェアを持っている。

■「発災タンク」は、燃料用でメディアの報道ではガソリンと報じられている。タンクの大きさなどの仕様は報じられていない。グーグルマップで調べると、事業所内の北にあるタンクと思われ、直径は約14mである。高さを約1518mとすれば、容量は2,3002,770KLとなる。タンクの型式は、コーンルーフ型の固定屋根式タンクである。内液がガソリンであれば、内部浮き屋根式と思われるが、タンク内の状況は分からない。

所 感

■ 世の中には想像もできないようなことが起こる事例である。爆発の衝撃でタンク屋根が外れて飛び出し、隣接のタンク上部の端に落下し、もう一方は発災タンクの側板に掛けられていた足場に乗っかり、重さ約8トンのタンク屋根が宙に浮いた形でぶら下がるなどという事例は見たことも聞いたこともない。噴き飛ぶタンク屋根の直径、隣接タンクとのタンク間距離、爆発の大きさ、側板にかけた足場など偶然が重なった結果だが、初めて被災写真を見たときにはびっくりした。

■ さらに驚くのは、事故直後、路上からは、被害者のうち2名が外れたタンク屋根部に引っかかっているのが見られたという。被害者や見る人への配慮から、スペインの報道ではタンク屋根だけが宙に浮いた写真が大半でした。ここでは、被害者がタンク屋根部に引っかかっている写真(もちろん、ぼかし加工を処置されている)をあえて出す。(遠い国であり、利害関係者はいない)

 被害者のふたりは、工事のためタンク屋根のプラットフォームに固定された安全ロープに安全帯をして作業していた。爆発でタンク屋根が噴き飛び、外れたタンク屋根に安全ロープで吊り下げられた状態だったという。約1時間も宙吊りになった後、緊迫した活動を経て救出された。ふたりは重体というが、助かってほしいものである。安全ロープや安全帯を考える事例でもある。 

■ ブログの本文中には、今回の事例の原因や調査について細かく指摘している。スペインのグラン・カナリア島では、今回のような事例が少ないことがあるだろう。その意味では、米国CSB(化学物質安全性委員会)がまとめた「タンク内外の火気工事における人身事故を防ぐ7つの教訓」(20117月)が指摘している対応策代替方法の採用、危険度の分析、作業環境のモニタリング、作業エリアのテスト、着工許可の発行、徹底した訓練、請負者への監督 のいずれかが欠けていたものと思われる。


備 考

 本情報はつぎのインターネット情報に基づいてまとめたものである。

Elpais.com, Un fallecido y un herido grave tras explotar un tanque de combustible en Gran Canaria,  August  5,  2026

      Canarias.es, Un muerto al explotar un tanque de Disa en Telde al hacer labores de mantenimiento,  August  5,  2026

      Rtvc.es, La explosión de un tanque de combustible en Telde deja un fallecido y tres heridos,  August  5,  2026

      Elmundo.es, Un muerto y dos heridos en una explosión en un tanque de combustible en Telde, Gran Canaria,  August  5,  2026

      Rtve.es, Un muerto y tres heridos, uno de ellos grave, al explotar un tanque de combustible en Gran Canaria,  August  5,  2026

     Eldebate.es, Un muerto y dos heridos graves por la explosión de un tanque de combustible en Telde (Gran Canaria),  August  5,  2026

     Es.euronews.com, Una explosión en un depósito de combustible deja al menos 1 muerto y 2 heridos graves en Telde,  August  5,  2026

     Laprovincia.es, Tragedia laboral en Telde: la operadora del tanque de combustible que explotó asegura la estructura,  August  7,  2026

     Antena3.com, Un muerto y tres heridos, uno de ellos grave, por la explosión de un tanque de combustible en Telde, Gran Canaria,  August  5,  2026

     Elconfidencial.com, Un muerto y tres heridos tras la explosión de un tanque de combustible en Telde (Gran Canaria),  August  5,  2026

     Declaracion-responsable.com, Explosión en Gran Canaria: un fallecido y dos heridos graves en una nave industrial,  August  5,  2026

     Laprovincia.es,  Tragedia laboral en una nave industrial de Telde: "Se …,  August  6,  2026


後 記: スペインのグラン・カナリア島のタンク人身事故というので、スペイン本土の近くの島における事故だと思いましたが、アフリカのモロッコ沖にある島のことでした。なぜ、スペイン本土から遠い島がスペイン領土なのかと調べたら教科書で習ったスペイン王国の征服の歴史でした。しかし、一番驚いたことは、今回の事故で噴き飛んだタンク屋根が空中に浮かんでいることでした。タンク屋根に吊り下がっていた被害者のふたりが回復することを祈ります。

2026年9月11日金曜日

オランダの石油ターミナルで不安全なメンテナンス中にタンク付近で爆発、死傷者6名

 今回は、2026813日(木)、オランダのロッテルダム港にあるガンボル・エナージー社の石油ターミナル内で貯蔵タンク付近において爆発が起こり、メンタナンス作業員に6名の死傷者が出た事例を紹介します。

< 発災施設の概要 >

■ 発災があったのは、オランダ(Netherland)のロッテルダム港(Rotterdam Port)のモーゼルウェグ(Moezelweg)にあるガンボル・エナージー社(Gunvor Energy)の石油ターミナルである。ガンボル・エナージー社は同地区で製油所と石油ターミナルを所有している。

■ 事故があったのは、石油ターミナルにある貯蔵タンクの関連設備である。

<事故の状況および影響>

事故の発生

■ 2026813日(木)午前1130分頃、モーゼルウェグの石油ターミナル内の貯蔵タンク付近で爆発が起こった。

■ 発災にともない、消防隊が出動した。出動したのは消防士のほか、救急車6台が派遣された。

■ 貯蔵タンクはメンテナンス作業中で、工事の下請け会社;カンクス・メンテナンス社(Canx Maintenance)の作業チームが石油製品タンクに接続された配管のメンテナンスで切断作業を行っていた際に事故が発生した。 

■ 事故にともない、1名が死亡、5名が負傷した。爆発直後に救急車が現場に派遣され、その後すぐにヘリコプターで医療外傷チームが派遣された。死亡したのは、 60歳で経験豊富な作業員だった。

■ 現場には、影響を受けたタンク付近に爆発の痕跡と側板に損傷が確認された。

■ 地元警察とオランダ労働監督局は、職場事故の可能性に焦点を当てて捜査を進めている。

■ 警察は爆発の原因を調査している。警察の広報担当は、現時点で破壊工作の兆候はなく、あらゆる可能性のあるシナリオについて捜査中であると述べた。

■ ロッテルダム港の港湾関係の操業は爆発の影響を受けていないと述べた。

■ ロッテルダム港では813日午前中に変圧器の火災によって数回停電が発生したが、地元安全当局は爆発と停電には関連性がないと述べた。

■ 火災は発生しなかったものの、消防隊員は念のため待機していた。爆発による煙はフラールディンゲンとマーススライス方面に流れ、不安を感じた住民から多数の通報があった。

■ ユーチューブなどでは、タンクの事故状況を伝える動画が投稿されている。

 YoutubePays-Bas : une explosion dans une zone industrielle du port de Rotterdam fait un mort2026/8/13

 ●YoutubeRotterdam Port Explosion Kills 1, Injures Six | Blast Hits Petroleum Storage Facility In Netherlands2026/8/13)   

 ●EuronewsPays-Bas : un mort et plusieurs blessés dans une ..2026/8/13

被 害

■ 6名の死傷者が出た。内訳は1名死亡、5名の負傷者である。

■ 工事中だったタンク周辺に被害があったが、詳細は不明である。 

< 事故の原因 >

■ 工事現場の不安全管理によるものとみられる。詳細は調査中である。

< 対 応 >

■ 事故の後、警察は現場を犯罪現場に指定した。労働監督局と協力して、十分な安全対策を講じていたか、またガンボル・エナージー社に過失があったかどうかを調査している。この調査の中心となるのは、工事のために確立した環境下で、工事の作業員が安全に作業できたかどうかである。

■ 調査の重要な部分のひとつは、爆発の正確な原因を特定することである。これには、爆発に先行する化学反応を調べることが含まれる。爆発には少なくとも3つの要素、すなわち可燃性物質(たとえば、燃料のベーパーまたは液体)、酸素、点火源(高温の表面、短絡、火花など)が必要である。

 工事作業チームが燃料配管の作業を行っていたため、火花が発火源となった可能性は十分考えられる。原則として、配管内に可燃性の液体やベーパーが全く含まれていなければ、これは問題にならない。したがって、労働監督局はまず、配管内に何が入っていたのか、そしてそれがどのようにしてそこに入り込んだのかを正確に突き止めたいと考えている。

■ 労働監督局は、作業中に爆発の危険性を継続的に測定していたかどうかを確認する。その際、考慮すべき点は、①ガス漏れの可能性のある原因、②その燃料源までの距離、③風向、④ガスの密度である。

 もし、ガンボル・エナージー社が上記のいずれかの点で過失があった場合、同社は多額の罰金を科せられるだけでなく、さらに重要なことは被害者とその遺族に莫大な賠償金を支払わなければならないだろう。

 さらに、就労許可証と安全手順について確認される。就労許可証は、欧州のATEX指令137によって企業に対して爆発危険区域を明確に指定し、安全な作業手順を確保するための措置を事前に講じることを義務付けている。この手続きは、作業開始前に策定、評価、承認されなければならない。労働監督局は、とりわけ以下の点を確認する。当該区域へのアクセスは適切に管理され、許可された従業員のみがアクセスできたか、適切な個人用保護具が準備され、使用され、点検されていたか、適切な機工具が規定され、使用され、点検されていたか、追加の規制・予防措置が策定され、遵守されていたか、工事現場には、書面による指示が明確かつ目立つ場所に掲示されていたか、従業員は必要な研修を修了していたかなどである。

■ 実際、ガンボル・エナージー社は、2016年に現在の製油所・石油ターミナル(Q8 Kuwait Petroleum Europoort bvが所有していたKPユーロポート製油所を買収)の所有者となって以来、メンテナンスや安全対策にほとんど投資しておらず、ロッテルダムで事業を展開していた10年間でほぼ全員を解雇した。利益追求のために際限なく人を解雇し続けて、何の代償も伴わないなどとは考えられない。

 こうして、2016年にKPユーロポート製油所が買収された時点で、従業員の3分の1がすでに解雇されていた。202412月には、不利な市場状況(メンテナンスと投資の不足)を理由に自動車燃料の生産を中止し、260名の正社員のうちさらに160名が職を失った。そして、20257月、ガンボル・エナージー社ロッテルダムの石油ターミナル活動を閉鎖することを決定したことで、事実上、この拠点は終わってしまった。

 このような状況を考えれば、今回の現場に作業を監督し、爆発の危険性を監視し、職場全体の安全を保証できる十分な資格を持った社内人員がいたかどうかは疑問である。

■ ガンボル・エナージー社はロッテルダムの製油所をアントワープ製油所と同様に、単に金儲けの手段として買収した可能性が非常に高い。というのは、エネルギー集約型産業は、二酸化炭素排出量を削減するために、欧州連合から年間最大10億ユーロの補償金・免除・補助金を受け取っているからである。

 さらに、今回のメンテナンスを誰が依頼したのかはまだ明らかになっていない。ガンボル・エナージー社は約3年前にロッテルダム製油所を閉鎖しており、オランダ港湾ニュースサイトであるハーフェンニースHavennieuws)の推測では、近隣のロイヤル・ボパック社(Royal  Vopac)がガンボル・エナージー社の石油ターミナルを使用しているのではないかという。たとえば、ボパック社は2023年にガンボル・エナージー社アントワープ製油所を買収しており、105ヘクタールの敷地は、現在、タンク貯蔵設備になっている。



補 足

■「オランダ」(Netherland)は、西ヨーロッパに位置し、人口約1,760万人の立憲君主制の国である。東はドイツ、南はベルギーと国境を接し、北と西は北海に面する。オランダは世界において、報道の自由、経済的自由、人間開発指数、クオリティ・オブ・ライフについて最上位国の一つである。

「ロッテルダム港」(Rotterdam Port)は、欧州最大の港であり、原油や燃料の輸入・貯蔵の拠点である。ここには、欧州最大の製油所であるシェル社の施設があり、ほかペルニス工場やエクソンモービル社の製油所などがある。

■「発災の影響を受けたタンク」をグーグルマップで調べると、直径約50mであり、高さを1520mとすれば、容量は29,40039,300KLとなる。

■「ハーフェンニース」(Havennieuws)は、 オランダの独立系ニュースウェブサイトで、オランダとベルギーの港湾における海事・運輸・物流分野の動向を毎日報道しており、特にロッテルダム港に重点を置いている。

所 感

■ 今回の事故は、本文中に指摘されているように、①当該区域へのアクセスは適切に管理され、許可された従業員のみがアクセスできたか、②適切な個人用保護具が準備され、使用され、点検されていたか、③適切な道具が規定され、使用され、点検されていたか、④追加の規制・予防措置が策定され、遵守されていたか、⑤工事現場には、書面による指示が明確かつ目立つ場所に掲示されていたか、⑥従業員は必要な研修を修了していたかなど工事に関する安全管理の問題である。

 これは、米国CSB(化学物質安全性委員会)がまとめた「タンク内外の火気工事における人身事故を防ぐ7つの教訓」としてまとめられたつぎの教訓項目と同様である。①火気作業の代替方法の採用、②危険度の分析、③作業環境のモニタリング、④作業エリアのテスト、⑤着工許可の発行、徹底した訓練、 ⑦請負者への監督       

■ しかし、今回の事例はさらに石油ターミナルの施設を運営する根深い問題があるようだ。今回のメンテナンスを誰が依頼したのかはまだ明らかになっていないという。ガンボル・エナージー社は、製油所に続いて石油ターミナル活動を閉鎖することを決定し、事実上、石油ターミナルの操業は終わってしまったと思われる。このような状況を考えれば、今回の現場に作業を監督し、爆発の危険性を監視し、職場全体の安全を保証できる十分な資格を持った社内人員がいたかどうかは疑問であるという。


備 考

 本情報はつぎのインターネット情報に基づいてまとめたものである。

     Reuters.com, Blast at Rotterdam port energy facility kills one person, August 13,  2026

     Nbcnews.com, Explosion at Dutch port of Rotterdam leaves 1 dead, several injured, August 13,  2026

     Mykn.kuehne-nagel.com, Fatal explosion at Rotterdam storage facility prompts investigation, August 13,  2026

     Nltimes.nl, Explosion at Rotterdam port area leaves 1 dead, many wounded: Video, August 14,  2026

     Tankstorage.com, Fatal explosion at Rotterdam Europoort facility, August 13,  2026

     Joiff.com, NETHERLANDS – Explosion at Rotterdam port site kills one, injures several, August 18,  2026

     News.sky.com, One person killed and six injured after explosion at Rotterdam port, August 13,  2026

     Fr.euronews.com, Pays-Bas : une explosion dans une zone industrielle du port de Rotterdam fait un mort, August 13,  2026

     Lalibre.be, Rotterdam : une explosion dans une raffinerie de la zone portuaire fait au moins un mort, August 13,  2026

     7sur7.be, “Un incident s’est produit”: une explosion dans le port de Rotterdam fait au moins un mort, August 13,  2026

     Rts.ch, Une explosion dans une raffinerie du port de Rotterdam fait au moins un mort, August 13,  2026

     English.news.cn, One killed, six injured following explosion at Rotterdam port, August 13,  2026  

     Havennieuws.nl, Explosie met dodelijk slachtoffer en verschillende gewonden bij Zwitserse Gunvor Energy Rotterdam raffinarderij, August 13,  2026


後 記: 工事中のタンク人身事故であり、調査段階では多くの情報は出ないでしょうから、まとめはそれほどかからないと思っていたところ、オランダの独立系ニュースウェブサイトハーフェンニースからとんでもない記事が出てきました。オランダは技術のしっかりした国というイメージを持っていましたので、今回の現場に作業を監督し、爆発の危険性を監視し、職場全体の安全を保証できる十分な資格を持った社内人員がいたかどうかは疑問であるという記事には愕然(がくぜん)としました。オランダは、個人の自由を尊重する個人主義的な社会文化や効率重視の労働環境にあると言われていますが、今回の事例は、国や企業のありかたとしては、ちょっと違うのではないかと言いたくなりますね。

2026年9月5日土曜日

米国オクラホマ州グレンプールの石油貯蔵施設で落雷によってタンク火災3基

 今回は、2026817日(月)、米国オクラホマ州グレンプールにあるエクスプローラー・パイプライン社の貯槽施設において落雷によって天然ガソリン用タンクが火災になり、隣接する貯蔵タンクに延焼し、複数タンク火災となった事例を紹介します。

< 発災施設の概要 >

■ 発災があったのは、米国オクラホマ州(Oklahoma)グレンプール(Glenpool)にある石油企業のエクスプローラー・パイプライン社(Explorer Pipeline)の貯槽施設である。

■ 事故があったのは、グレンプールのハイウェイ75号線近くの西126番通りにあるエクスプローラー・パイプライン社の貯槽施設の天然ガソリン用のタンクである。

<事故の状況および影響>

事故の発生

■ 2026817日(月)午前830分頃、グレンプールにあるエクスプローラー・パイプライン社の貯槽施設のタンク1基が爆発し、火災が起こった。同時刻頃には悪天候による落雷が付近で報告されていた。

■ 最初、火災は1基のタンクで発生し、その後ほかの2基のタンクに延焼した。近くの住民のひとりは、炎が燃え上がる直前に雷光が落ちるのを目撃したといい、「実際に落雷するのを目撃しました。地面に落ちたように見えました。オクラホマではちょっとした嵐になると思っていたのに、落雷するのを見て、こんなに大変なことになってしまったんだと思いました」と語った。

■ 火災タンクから近くのタンク2基に延焼し、このうち1基のタンクも爆発した。これらのタンクには天然ガソリンが貯蔵されていた。激しい爆発で、貯蔵タンクの屋根が噴き飛び、大量の黒煙が空中に立ち昇った。火は数分以内に1基のタンクから3基のタンクに燃え広がった。火災となった3基目のタンクは、のちに消防隊によって消火された。

■ 発災にともない、グレンプール消防署の消防隊が出動した。火災現場には約50名の消防士が出動したほか、複数の地元消防署や専門の産業消防隊がグレンプール消防隊を支援した。

■ 支援に出動したのは、クッシング消防署、キーファー消防署、シンクレア製油所消防隊、コフィービル・リソーシズ消防隊、ウィリアムズ社(Williams Fire and Hazard Control)、USファイア・ポンプ社(U.S. Fire Pump)である。タルサ消防署も817日(月)の早い時間に現場に到着。このほか、環境保護庁(EPA)とタルサ郡緊急事態管理局も対応を支援した。

■ 地元消防隊が火災現場に張り付いている間、グレンプール市内の他の火災にはジェンクス消防署が対応した。

■ エクスプローラー・パイプライン社は、817日(月)、つぎのような声明を発表した。

「今朝早く、グレンプールにあるタンクファームで落雷によりタンクが炎上したとの連絡を受けました。地元消防署と緊急対応チームが現場に出動され、安全を確保しました。追加の消防隊も現場に向かっています。グレンプール警察は、キャスパー・アベニューとエルウッド間の126番ストリート・サウスを封鎖しました。地元緊急対応当局と連携して現場の監視を続けておりますので、一般の方々は現場付近に近づかないようお願いいたします」

■ 消防隊は、火災タンクに対して泡消火作業を行い、隣接するタンク群に延焼しないよう冷却作業に努めた。

■ 施設周辺の道路は、一般の人々が立ち入り禁止区域に入らないようにするため閉鎖された。

■ グレンプール公立学校および近隣住民に対して、予防的な屋内待避命令が出された。

■ 事故にともなう負傷者は出ていない。

■ ユーチューブなどでは、火災のニュースを伝える動画が投稿されている。

 YoutubeLighting Strikes Sparks Fire at Explorer Pipeline Tank Farm2026/8/19

 ●Edition.cnnVideo shows fuel tank explosion in Oklahoma2026/8/17

    ●FacebookWOW!  Hunter Hoffman captured the moment the lid exploded off an oil tank during a fire near Glenpool. Explorer Pipeline says a lightning2026/8/18

被 害

■ 天然ガソリン用タンク2基が火災で損壊した。火災になったもう1基のタンクは大きな火災には免れた。

■ タンク2基に入っていた天然ガソリンが焼失した。

■ 施設周辺の道路は一般の人々が立ち入り禁止区域になって閉鎖された。

■ 学校や近隣住民に対して屋内待避命令が出された。

■ 負傷者は出なかった。 

< 事故の原因 >

■ 事故原因は落雷によるとみられる。

< 対 応 >

■ グレンプール地区に対する外出自粛勧告は、 817日(月)午後2時頃に解除された。グレンプールの公立学校に対する勧告も解除された。

■ 818日(火)、火災は鎮火したとエクスプローラー・パイプライン社は述べた。泡消火による放射が功を奏し、約12時間かけて817日(月)の午後8時頃に火は消し止められた。消防隊は、タンクを冷却してベーパーの発生を最小限に抑えるため、夜通し泡消火水の放射作業を続けた。

■ 火災が消火され、清掃および廃棄物処理の浄化計画が実施されており、清掃作業中は一般市民に現場付近への立ち入りを控えるよう求めている。グレンプール消防署は、「今後数時間にわたり、約30分ごとにタンクに泡放射を続け、冷却が継続されるようにします」と述べた。

■ 大気質モニタリングの結果、周辺地域に汚染は見られず、浄化作業期間中も継続して実施される予定である。817日(月)の午前中の間、大気監視装置は異常を検知しておらず、当局は地上レベルでは煙による一般市民への危険はないと述べた。緊急事態管理当局による大気質モニタリングでも、地上レベルでは危険な濃度は検出されなかったという。

■ 消防隊などの緊急対応要員は、緊急対応業務からプロジェクト管理業務へと移行したと述べている。関係者によると、復旧作業は引き続き進められ、関係機関や対応パートナーと連携して作業を進めているという。エクスプローラー・パイプライン社は、ウィリアムズ社(Williams  Fire & Hazard Control)USファイア・ポンプ社が冷却作業の継続を主導していることを確認した。

■ グレンプール消防署は、対応が浄化作業に移行するのに伴い、支援的な役割に移行している。この種の事故対応を専門とするウィリアムズ社(Williams  Fire & Hazard Control)USファイア・ポンプ社が現場での復旧・修復作業を主導する。

■ 現場は封じ込められており、水や泡が区域外に流出するのを防ぐため、二重の堤防が設置されている。

バキューム吸引装置と貯蔵タンクを使用して、現場から廃水を安全に除去している。現場には警備員が配置され、立ち入りは厳しく制限されている。当局は、浄化作業が行われている間は、引き続き現場付近に近づかないよう一般市民に呼びかけた。


■ 原因は落雷とみられているが、エクスプローラー・パイプライン社または調査機関が最終的な結論を発表するまで、暫定的なものとみなされる。

■ 過去にグレンプールでは3件のタンク火災が発生しており、プロセス安全に関わる関係者にとって最も重要な点は、おそらく、つぎの点だろう。

 ● グレンプールのタンクファームでは、過去に複数回のタンク火災が発生しており、少なくとも2件は落雷が原因とされている。同じエリアで繰り返し発火メカニズムが発生するということは、技術的に非常に重要な兆候である。つまり、既存の落雷対策、ボンディング、接地、またはベーパー空間制御対策が、当該タンクの構成や製品の揮発性といった特定の要因によるリスクギャップを完全に解消できていない可能性を示唆している。

 ● これは特定の事業者の慣行を批判するものではなく、業界全体に共通する傾向であり、検討に値する。なぜなら、揮発性炭化水素を扱う大気圧貯蔵タンクは、落雷の多い地域(米国中部地域の大部分を含む)の石油・ガス、石油化学、燃料流通事業において広く普及しているからである。

 ● グレンプールのタンク火災では負傷者はなく、死者も出ずに鎮火した。これは緊急対応が適切に実施されたことを示す結果と言える。しかし、プロセス安全性の観点からより重要なのは、グレンプールのタンク施設で落雷による火災が発生したのは今回が初めてではないという事実である。同じ施設で、同じ起爆メカニズムによる発火が繰り返されるということは、落雷対策、危険区域の分類、緊急隔離といった既存のリスク管理策が、当該施設特有の危険要因に対して十分な対策となっていない可能性を示唆する技術的な兆候である。

■ グレンプールのタンクファームでは、過去20年余りの間に2003年と2006年に続き、3度目の大規模火災となった。2003年には、今回の施設に隣接するコノコフィリップス社のタンクファームで発生した火災があり、静電気が原因である可能性が高い。この事故を受けて、国家運輸安全委員会(NTSB)は緊急時対応計画に関する報告書を作成し、地域の学校は授業を全面的に中止することにしたが、月曜日の事故ではそのような措置は必要なかった。2006612日には、グレンプールにあるエクスプローラー・パイプライン社の無鉛ガソリンタンクに落雷があり、火災となった。この火災の鎮火には1011時間かかり、推定650万ドルの物的損害が発生した。2026817日に発生した火災は、無鉛ガソリンではなく天然ガソリンのタンクで完全に消火されるまでに約12時間燃え続けた。

補 足

■「オクラホマ州」(Oklahoma)は、米国中南部に位置し、隣接するテキサス州の北にあるパンハンドル(取っ手つきフライパン)の形をした州である。日本の約半分ほどの面積の土地に約396万人しか住んでいないので、人口密度は低く、ゆったりしている。オクラホマには山がほとんどなく、見渡す限り、地平線である。オクラホマシティとタルサという二大都市から少し離れれば、草原が延々と続き、ほとんどは牛がのんびり歩く農場か、オイルやガスを掘削する油田・ガス田である。大陸性気候のオクラホマ州では、天気が急激に変わる。35月頃は通り道にある家々をまるごと吹き飛ばしてしまうほどの強力なトルネード(竜巻)が発生する。

「グレンプール(Glenpool)は、オクラホマ州タルサ郡にあり、人口約14,000人の市である。グレンプールは、1905年に石油が発見されたことで有名であり、その発見が経済ブームを引き起こし、タルサとその周辺地域の成長を促進した。

■「天然ガソリン」(Natural Gasoline)とは、天然ガス田や油田から採れる液体天然ガスから採取され、液体天然ガスから分離・回収される液体のうち、プロパンやブタンなどのLPガス分を除いたガソリン状の炭化水素液体である。成分はペンタン以上の比較的分子量の大きい炭化水素を主成分としている。ガソリンと同様であるが、製油所で得られる直留ガソリンに比べて軽質分の割合が多く、より揮発性に富む。天然ガソリンは、自動車ガソリン用のブレンド基材、工業用揮発油(溶剤など)、化学工業原料などに用いられる。

■「エクスプローラー・パイプライン社」(Explorer Pipeline)は、エネルギー企業で精製石油製品や原油を輸送・保管するエネルギー輸送業務を行っている。グレンプールの施設は、テキサス州、オクラホマ州、中西部を横断して自動車用ガソリン、ディーゼル燃料、ジェット燃料を輸送する全長1,800マイル(約2,900km)のパイプラインシステムの重要な拠点となっている。施設には30基以上のタンクがあり、総貯蔵容量は約340万バレルである。一方、2006年には、「米国オクラホマ州グレンプール火災(2006年)の消火活動」(201212月)の同施設でタンク火災を起こしている。

■「発災タンク」の大きさなどの仕様は報じられていない。グーグルマップで調べると、火災エリアのタンク4基はほぼ同じ大きさで、直径は約44mである。高さを1015mとすれば、容量は15,20022,800KLである。タンク型式は、外観上、コーンルーフ型固定屋根型式であり、通常、内液がガソリンの場合、内部浮き屋根式である。2006年の事例では、内部浮き屋根式のタンクだったので、おそらく、今回の事例でも内部浮き屋根式だったと思われる。

所 感 

■ 今回の事故原因は落雷による爆発・火災と報じられている。火災の状況は、数分以内に1基のタンクから3基のタンクに燃え広がったという。火災タンクから近くのタンク2基に延焼し、このうち1基のタンクも爆発した。爆発によって2基の貯蔵タンクの屋根が噴き飛んだ。火災となった3基目のタンクは、のちに消防隊によって消火されたが、2基のタンクは側板が座屈するほどまで全面火災の様相を呈した。

 タンク内液は「天然ガソリン」(Natural Gasoline)で、天然ガス田から採れる液体天然ガスからプロパンなどのLPガス分を除いたガソリン状の炭化水素液体で、製油所で得られる直留ガソリンに比べて軽質分の割合が多く、より揮発性に富むという。落雷などでタンク複数火災を起こした例としては、つぎのような事例がある。

 ●「マレーシアの製油所で原油タンク火災、負傷者4名」 20187月)

 ●「キューバのタンク基地で落雷による原油タンク火災4基、死傷者162名」20228月)

 今回の事例では、内液の天然ガソリンの特殊性なのか、本文中に指摘されている「落雷対策・危険区域の分類・緊急隔離といったリスク管理策が当該施設特有の危険要因に対して十分な対策となっていない」と感じる事例である。

■ 消火戦略には積極的戦略・防御的戦略・不介入戦略の3つがあり、「消防隊は、火災タンクに対して泡消火作業を行い、隣接するタンク群に延焼しないよう冷却作業に努めた」と積極的戦略をとっているように報じられているが、被災写真を見ると、防御的戦略または不介入戦略をとり、消火活動はとっていない。日本の法令では、直径34m45mのタンクであれば、10,000リットル/分の大容量泡放射砲システム1台で消火できることになっている。しかし、これはタンク1基が火災になっている場合である。今回のように直径44mのタンクが複数基全面火災になっている場合、たとえ1基を消火できても、火災タンクの火ですぐに火災を起こしてしまうことは容易に考えられる。また、タンク全面火災では、ボイルオーバー発生を考慮する必要がある。ガソリンや灯油といった精製された油製品では、原油のようにホットゾーンを生じることはなく、ボイルオーバーは発生することはないが、今回の天然ガソリン火災の場合、断言できるのか分からない。

 支援に出動したウィリアムズ社(Williams  Fire & Hazard Control)は、 20066月に起こったエクスプローラー・パイプライン社の貯蔵タンク(直径43m)全面火災を大容量泡放射砲システムで消火に成功させた実績のある消防会社であるが、今回の火災状況を見て防御的戦略または不介入戦略をとったものではないだろうか。注;米国オクラホマ州グレンプール火災(2006年)の消火活動」を参照。


備 考

 本情報はつぎのインターネット情報に基づいてまとめたものである。

     Newson6.com, Cleanup efforts underway after Glenpool pipeline fire, August  24, 2026

     Tankstorage.com, Fire at Explorer Pipeline Glenpool tank farm, August  18, 2026

     Koco.com, Air quality monitoring ongoing after lightning sparks massive fire at Glenpool gas tank farm, August  18, 2026

     Tanktransport.com, Explorer Pipeline Halts Glenpool Movements After Three-Tank Fire, August  18, 2026

     Vigilantally.com, Glenpool Tank Fire: What the Explorer Pipeline Incident Reveals About Tank Farm Safety, August  18, 2026

     Okcfox.com, Fire out at Glenpool pipeline facility, cleanup process begins, August  18, 2026

     Kjrh.com, Glenpool tank fire out after 12 hours, neighbors say third blaze in 20 years, August  18, 2026

     News10.com, Gas tanks explode at Oklahoma pipeline facility after lightning strike, August  18, 2026

     Bicmagazine.com, Oklahoma tank fire extinguished as crews begin cleanup, August  18, 2026

     Chemanalyst.com, Lightning Sparks Tank Fire at Explorer Pipeline facility in Glenpool, August  18, 2026

     Hazardexonthenet.net, Lightning strike triggers tank explosion and fire at US fuel storage facility, August  18, 2026

     Watchers.news, Lightning strike triggers fire in three natural gasoline tanks at Explorer Pipeline facility in Glenpool, Oklahoma, August  19, 2026

     Pipeline-journal.net, Fire at Oklahoma Depot Forces Major Pipeline Shutdown, Raising Fuel Supply Concerns, August  18, 2026

     Advisorsreports.com, Lightning strikes Shell, Phillips 66-backed pipeline giant’s Oklahoma tank farm, August  19, 2026


後 記: 久しく無かった大規模の石油貯槽施設におけるタンク複数基火災の事例でした。また、2006年に火災事故のあった「米国オクラホマ州グレンプール火災(2006年)の消火活動」の発災事業所であり、以前の関係ブログを読み返してみました。今回の事例のメディア情報では、火災の状況と消防活動がよくわかりませんでした。短時間で鎮火までに至った事例であるならば、そのようなことがありますが、今回は3基火災で約12時間かかっていますので、取材する時間はあったでしょう。たとえば、タンク火災が2基だったのか、3基だったのか記事によって異なりました。また、消防隊の消火活動によって鎮火したという記事が大半でしたが、被災写真を見ると、現場で消火活動を行っている映像はありません。ウィリアムズ社という実績のある消防会社が参画していることが、記事や映像を見ていろいろ考える参考になりました。

2026年8月28日金曜日

米国ニューメキシコ州リー郡の石油生産施設でタンク火災

 今回は、米国ニューメキシコ州リー郡南部にある石油生産施設で大規模なタンク火災が発生した事例を紹介します。

< 発災施設の概要 >

■ 発災があったのは、米国ニューメキシコ州(New Mexico)リー郡(Lea County)南部にある石油生産施設である。

■ 事故があったのは、リー郡南部(ジャル近郊)のフライングパン通り(Frying Pan Road)とアンソニー通り(Anthony Road)の交差点近くにある石油生産施設の油井ユニットのタンク設備である。フライングパン通りとアンソニー通りの交差点近くには“KylePipkin 203H&202H”という油井ユニットがある。同ユニットはマタドール・プロダクション・カンパニー(Matador Production Company)の所有する石油生産施設である。

<事故の状況および影響>

事故の発生

■ 2026717日(金)、リー郡南部の石油生産施設で大規模なタンク火災が発生し、大きな黒煙が立ち昇った。

■ 発災にともない、消防署の消防隊が出動した。

■ 出動したのは、ジャル消防署、ユーニス消防署、ノウルズ消防署、ホッブス消防署の消防隊のほか、リー郡保安官事務所と緊急事態管理局である。

■ 当局は、半径2マイル(約3.2km)の避難区域を設定し、住民に対し現場付近への立ち入りを避けるよう呼びかけている。なお、現在の避難区域内には住宅はない。

■ 現場がひとけのない地帯であったため、住宅への被害はなかった。ジャルなどの近隣の人口密集地には影響はなかった。

■ 事故にともなう負傷者もいなかった。

■ リー郡は、車の運転手に対し、火災を見るために道路脇に停車しないこと、そして法執行機関や緊急対応要員の指示に従うことを呼びかけた。

■ 火災への対応が消防隊員によって続けられているため、717日(金)の午後も避難区域は引き続き有効となっている。

■ 消防隊員は安全な区域を設定し、消火活動と現場の冷却作業を行う間、現場を監視した。

■ 米国国立気象局の報告によると、発災場所の北方にあるジャルの住民は避難区域や煙の影響を受けない見込みだ。  

被 害

■ 石油生産施設の油井ユニットが火災で焼損した。

■ 負傷者はいなかった。

■ 避難区域が設定され、住民に対し現場付近への立ち入りが制限された。 

< 事故の原因 >

■ 事故の原因は分からない。 

< 対 応 >

■ 消防隊員は安全な区域を維持し、その後数日間、消火活動と現場の冷却作業を行う間、現場を監視した。

■ 緊急対応当局は引き続き状況を監視しており、状況が改善すれば避難区域を縮小する予定だと述べた。

補 足

■「ニューメキシコ州」(New Mexico)は、米国の南西部に位置し、州の北はコロラド州に接し、東側にはオクラホマ州とテキサス州に、西側はアリゾナ州に、南側はテキサス州およびメキシコとの国境に接しており、人口約212万人の州である。

「リー郡」(Lea County)は、ニューメキシコ州の東南部に位置し、人口は約74,400人の郡である。

■「発災施設」は特定できなかった。フライングパン通りとアンソニー通りの交差点近くには、“KylePipkin 203H&202H”という油井ユニットがあり、マタドール・プロダクション・カンパニー(Matador Production Company)が操業する。しかし、確かな被災写真に乏しく、メディアでも事業所を明記していない。 “KylePipkin 203H&202H”という油井ユニットは、グーグルマップで調べると、大きな施設ではないし、周りには住宅は勿論、ほかの設備はない。メディアの被災写真には、ほかの施設や設備らしいものが写っており、今回の施設事故のものであるという確証はとれない。 “KylePipkin 203H&202H”の油井ユニットの隣接地は更地になっており、拡張したのかもしれないが、詳細はわからない。

所 感 

■ 今回の事例はメディアの発災写真があり、事故状況ははっきりしていると思った。しかし、調べていくと、発災写真に疑問が出てきた。半径2マイル(約3.2km)に避難区域が設定され、この間には住宅は無いというが、写真には、発災設備のほか他の構築物が写っている。また、火災の写真に写っている設備と今回の発災した設備が同じとは思えない。 グーグルマップによると、“KylePipkin 203H&202H”の油井ユニットの隣接地は更地になっており、新たな設備が拡張したのかもしれないが、いずれにしても被災写真が今回の事故のものであるという確証が持てないので、採用しないこととした。

■ そうすると、発災写真が一枚も無いということになり、事故状況はメディアの記事のみになった。ニューメキシコ州の石油生産関連施設に関するタンク事故は、これまでつぎのような事例を紹介してきた。

 ●「米国ニューメキシコ州の油井用貯蔵施設で爆発・火災、死傷者2名」20187月)

 ●「米国ニューメキシコ州の石油施設で爆発・火災、死者3名」20179月)

 2017年の事例では、発災施設の被災写真があるが、2018年の事例では、遠くからの煙の写真しかない。この頃から、ニューメキシコ州を含めた米国のメディアの体制や組織が弱体化しつつあるのではないかという危惧をもったが、今回の事例を見ると、それがはっきりと現れている。


備 考 

 本情報はつぎのインターネット情報に基づいてまとめたものである。

     Kob.com, Firefighters battling tank battery fire in Lea County,  July  18, 2026

     Krqe.com, Crews battling tank battery fire in Lea County,  July  17, 2026

     Koat.com, Crews battle large fire in Lea County,  July  17, 2026

     Aol.com, Tank battery fire in Lea County sparks evacuation order,  July  18, 2026


 後 記: 今年の夏の暑さには閉口します。さらに追い打ちをかけるようにルームエアコンがこわれました。新しいのに買い替えることにしましたが、その間、扇風機で対処しました。このブログも扇風機の風の中で調べたりしましたが、その時間は一回最大で1時間を限度にしました。暑さには強い方だと自分では思っていましたが、今年の暑さは家や部屋のまるごと外気温と変わらぬ異常さです。つくづく、ルームエアコンのありがたみを実感しました。