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2026年7月5日日曜日

カタールの液化天然ガス施設で誤作動によって爆発・火災、死傷者79名

 今回は、2026621日(日)、カタールのラス・ラファン工業地帯にある国営石油のカタール・エナジー社が運営する液化天然ガス(LNG)施設で爆発・火災があり、死傷者79名の出た事例を紹介します。

< 発災施設の概要 >

■ 発災があったのは、カタール(Qatar)のラス・ラファン工業地帯(Ras Laffan)にある国営石油のカタール・エナジー社(Qatar Energy)が運営する液化天然ガス(LNG)施設である。

■ 事故があったのは、カタール最大の液化天然ガス処理施設の設備である。

<事故の状況および影響>

事故の発生

■ 2026621日(日)夕方、ラス・ラファン工業地帯にある液化天然ガス(LNG)施設で爆発・火災が発生した。

■ 爆発・火災により市内の空がオレンジ色に染まった。爆発は窓ガラスを揺らし、首都のドーハ中心部全域で揺れを感じたといい、ラス・ラファン工業地帯から70km以上離れた住民をもパニックに陥れた。

■ 発災にともない、緊急対応チームが直ちに派遣され、火災対応に従事した。

■ 事故にともない、死傷者が出た。当初、54人が負傷し、18人が行方不明になっていると発表されたが、その後、死傷者は13名が死亡、66名が負傷したと変更された。これは、湾岸諸国のエネルギー施設で発生した事故の中でも、最も死者数の多い事故の一つである。

■ カタール・エナジー社は、犠牲者の家族、友人、同僚に心からの哀悼の意を表するとともに、負傷者の一日も早い回復を祈り、この悲劇の影響を受けた人々への全面的な支援を約束した。 この事件で命を落とした人たちはインド人とパキスタン人の国籍であり、負傷者はカタール人、インド人、パキスタン人、バングラデシュ人、ケニア人、ガーナ人、タンザニア人、ナイジェリア人、ネパール人の国籍である。

■ カタールのエネルギー相は、今回の爆発は同国の輸出に影響を与えないと述べ、「これは事故であり、破壊行為や敵対行為ではない」と語った。

■ 政府は環境へのリスクは無いといい、爆発の原因究明に取り組んでいると述べた。

■ ラス・ラファン港は世界最大の人工港で、世界最大のLNG輸出施設を有している。米国・イスラエルーイランの戦争により、ラス・ラファン港はイランによる攻撃の標的となった。

■ プラントの生産は、202512月から意図的に完全に停止されていたが、2日前に再開されたばかりだった。爆発は作業員たちが中断していた操業を再開しようとしていた際に発生した。前夜、輸出ターミナルの再稼働に向けた作業中、工業地帯内のバルザン・ガス供給施設(液化天然ガス施設)で爆発と火災が発生したという。

■ カタール・エナジー社は、今回の事故は操業上の事故であり、破壊行為や敵対行為ではないと述べた。

■ ユーチューブでは、事故による火災のニュースを伝える動画が投稿されている。

 YoutubeQatar LNG Explosion: Huge Blast In Qatar‘s Ras Laffan Area; At Least 54 Injured And 18 Missing| WION2026/6/28

●YoutubeExplosion at Qatar’s Ras Laffan LNG facility kills at least 132026/6/23

YoutubeQatar Fire: 12 Indians Among 13 Killed | 66 Injured in Qatar's Ras Laffan Gas Facility Explosion2026/6/23

被 害

■ 液化天然ガス処理施設の設備が爆発・火災で損壊した。

■ 事故にともない、79名の死傷者が出た。内訳は死亡者が13名、負傷者66名である。   

< 事故の原因 >

■ 事故原因は調査中である。要因は操業中の技術的な不具合(誤作動)だという。

< 対 応 >

■ 621日(日)夜遅く、緊急対応チームが派遣された結果、火災は鎮火した。カタール・エナジー社の緊急対応チームとカタールの民間防衛隊が設備の火災を消火した。

■ 2026624日(水)、カタール・エナジー社は爆発・火災事故について調査を開始した。

■ カタール内務省は、事故を“内部爆発”といい、“技術的な誤作動” が事故の原因だと説明した。省は以前の声明で、ラス・ラファン工業地帯にある工場の1つで技術的な事故により内部爆発が発生したと説明していたが、その後、操業中の技術的な不具合が原因だったことを確認した。

■ カタールのエネルギー担当国務大臣であり、カタール・エナジーの社長兼CEOは、ラス・ラファン工業地帯の爆発・火災事故で亡くなった13名のうち12名がインド国民が犠牲になったことを受け、ドーハにあるインド大使館を訪れ、哀悼の意を表した。また、残りのひとりがパキスタン国籍であり、ドーハにあるパキスタン大使館を訪れ、弔意を表明した。

■ 2026626日(金)時点で、専門家のひとりは、つぎのような不明点を指摘している。

 ● 起動時に爆発を引き起こした原因: 特定の装置、進行中の運転、そして爆発を引き起こした故障。

 ● 再起動時に安全計装機能やその他の保護装置がバイパスまたはオーバーライドされたかどうか、また、それらがどのように機能したか。

 ● 約6か月間の停止後、プラントはどのような状態だったのか、そして再稼働手順と変更管理はその状態を考慮に入れていたのか。

 ● 調査結果がいつ報告されるのか、また、そのうちどの程度が公表されるのか。

 ● 長期的な影響や地域的な影響。

■ ラス・ラファン工業地帯の爆発は、世界有数の天然ガス生産国であるカタールにとって世界のエネルギー市場にさらなる混乱をもたらす可能性がある。カタールは、イランがホルムズ海峡を掌握したことで顧客への出荷ができなくなったため、生産を停止していた。イランが戦争の恒久的終結に向けた交渉を続ける中で、カタールは輸出ターミナルの再開に向けて動き出していた。これが液化天然ガス(LNG)施設での爆発と火災を引き起こしたという。

補 足

■「カタール」は、正式にはカタール国(カタールこく)で、中東のアラビア半島北東部に位置するカタール半島を領土とし、人口約250万人の石油生産国である。南はサウジアラビアと国境を接し、残りの領土はペルシャ湾に囲まれている。首都はドーハで国民の8割以上が住み、国土の大部分は平坦な低地の砂漠である。世界第3位の天然ガス埋蔵量と原油埋蔵量を背景に、高所得者層の多い経済国であり、液化天然ガス(LNG)輸出国である。

■「カタールのラス・ラファン工業地帯」はカタール北東海岸にあり、首都ドーハの北方約80kmに位置する都市規模の工業団地で、約115千人が従事している。工業地帯は国営石油会社のカタール・エナジー社が所有・管理しており、内部の個々の工場はエクソンモービルやシェルなどのパートナー企業とカタール・エナジー社の合弁事業によって運営されている。この敷地内には、カタールの輸出用液化天然ガス(LNG)を生産するLNGプラント、ガス液化プラント、製油所、石油化学プラント、港湾、バルザンガスプラント(国内用LNG製造で今回の発災プラント)などがある。

 ラス・ラファン工業地帯は、近海のガス田で生産した天然ガスを移送し、液化天然ガス(LNG)に加工したうえで世界各地へ輸出する世界最大のLNGハブで、世界のLNG供給量の約20%を処理する。ラス・ラファン工業地帯は、米国・イスラエルの軍事行動への報復としてイランの攻撃を受けた後、32日からガス生産を停止していた。今回の爆発事故は、操業が中断されていたラス・ラファン工業地帯の設備を再稼働させる過程で発生したものである。

■「液化天然ガス」(Liquefied Natural GasLNG)は、メタンを主成分とした天然ガスを冷却し、液体にしたものである。マイナス162℃まで冷却することで天然ガスの体積が約600分の1に大幅に減少し、大量輸送や貯蔵するのに便利である。液化天然ガス(LNG)処理施設には、いくつかの種類があるが、一般的なプロセスの例を下図に示す。

所 感

■ 米国・イスラエルーイランの戦争で中東の石油施設が攻撃対象になっているが、今回はカタールの液化天然ガス(LNG)施設が操業上の問題で爆発・火災を起こしたというので、調べることとした。

 事故は、液化天然ガス(LNG)施設を運転立上げ中に、技術的な不具合(誤作動)で起こったという。原料の天然ガス、液化天然ガス(LNG)、冷媒のプロパンガスといった爆発性の高いガスを取扱っており、どこから漏れても大きな爆発が起こりやすい施設である。実際、死傷者79名という大きな人身事故であり、事故の兆候があり、従業員が現場に出て点検していた際に爆発が発生したのだろう。異常の兆候があった場合、必要最小限の人数で且つ物陰に隠れながらチェックするという教訓が活かされていないと感じる。


備 考

 本情報はつぎのインターネット情報に基づいてまとめたものである。

     Bbc.com, At least 13 killed and dozens injured after Qatar gas explosion,  June 21,  2026

     Offshore-energy.biz, Investigation into tragic incident ongoing: 13 dead, 66 injured in explosion and fire at QatarEnergy’s gas asset,  June 24,  2026

     News.yahoo.co.jp,  カタール「LNG拠点」ラスラファンで爆発事故…18人行方不明・少なくとも54人負傷,  June 24,  2026

     Silsafe.net, The Qatar Gas Plant Explosion: What We Know So Far,  June 26,  2026

     Arabnews.jp, Qatar gas plant blast kills 13, injures dozens, says energy minister,  June 23,  2026

     Apnews.com, Qatar says gas export terminal blast killed 13 as workers tried to resume operations,  June 22,  2026

    Abc.net.au, Thirteen killed and dozens injured in blast in Qatar's Ras Laffan gas processing facility,  June 23,  2026

    Euronews.com, 13 killed and 66 injured in explosion at Qatar’s largest energy site, authorities confirm,  June 22,  2026

    Aljazeera.net, قطر تعلن وفاة 13 عاملا وإصابة 66 في انفجار مصنع غاز برأس لفان,  June 22,  2026

    Asharq.com, ضحية وعشرات المصابين في حادث انفجاربمنطقة رأس لفان الصناعية,  June 22,  2026

    Mc-doualiya.com, 54 مصابا و18 مفقودا في انفجار بمنطقة رأس لفان الصناعية في قطر,  June 22,  2026


後 記: 20263月に「アラブ首長国連邦(UAE)のシャルジャ首長国で石油タンクが漏洩して火災」事故がありましたが、最近このブログの傾向としてすっかり中東の事例が多くなりました。今回の事例は液化天然ガス(LNG)の世界への供給という点から影響が大きいことから、貯蔵タンク事故では無いようですが、調べることとしました。調べていて一番驚いたことは、亡くなった人が13名で、うちインド国籍が12名、パキスタン国籍が1名という外国人ばかりだったということです。負傷者66名も外国籍の人ばかりです。カタールのラス・ラファン工業地帯もカタール・エナジー社が所有していますが、内部の個々の工場はエクソンモービルやシェルなどのパートナー企業との合弁事業によって運営されているようです。なにかおかしいと思いますし、なにか狂っているように感じます。

 ところで、「報道の自由度ランキング2025年版」においてカタールは180か国中79位ですから、アラブ首長国連邦(UAE) の164位より高く、今回の事例でも事故要因は発表されていますが、依然として事故状況ははっきりしませんね。

2026年6月28日日曜日

メキシコ・プエブラ州の違法なLPガス貯蔵施設で爆発・火災、負傷者3名

 今回は、メキシコのプエブラ州テペアカ市にある違法なLPガス貯蔵施設で大規模な爆発が発生し、3名の負傷者の出た事例を紹介します。

< 発災施設の概要 >

■ 発災があったのは、メキシコ(Mexico)のプエブラ州(Puebla)テペアカ市(Tepeaca)にあるLPガス貯蔵施設である。

■ 事故があったのは、サン・フアン・ネグレテ地区のプロロンガシオン・クアウテモックにあるLPガス貯蔵施設のタンク設備やタンクローリーである。

<事故の状況および影響>

事故の発生

■ 202664日(木)午前10時頃、テペアカにあるLPガス貯蔵施設で大規模な爆発が発生した。爆発は緊急通報911番を通じて通報され、巨大な煙が立ち上り、市内各地から目撃された。

■ 事故は最初に火災があり、その後、大きな爆発音と炎が高く燃え上がった。爆発によって地域の住民はパニックを引き起こし、多くの人びとが逃げるように避難した。

■ 近隣の住宅では、家が損傷し、ドアや窓にも被害が出た。自宅が被害を受けた住民のひとりは、爆発直後の様子を「最初に大きな爆発があり、その後立て続けに3回爆発しました。私たちは外に飛び出しました。朝だったので、中には半裸の人もいました。家の窓は粉々に砕け散り、悪夢のようでした」といい、「近くの爆発だと分かって、私たちは逃げました」と語った。

 被害を受けた別な住民のひとりは、「恐ろしい経験をしました。最初、揺れを感じたとき、みんなで外に出て様子を見に行きました。それが火災事故だと分かり、大きな爆発音がしたので、何も持たずに走って逃げました」といい、さらに「数分後、学校から電話があり、私の妹を迎えに来てほしいと言われ、その後、家に戻ってみると、家の中はめちゃくちゃで、窓も網戸もドアもすべて歪んでいました」と語った。

■ さらなる爆発の危険性があるため、地元当局は約2,000人に対し予防的避難命令を出した。 対象になったのは近隣の住宅のほか、1,700人以上の生徒、教師、事務職員を含む学校や近隣の病院が避難措置を取られた。

■ 発災にともない、消防隊や民間防衛隊を含む緊急対応チームが出動した。

 プエブラ州政府は、国家防衛省、国家警備隊、ペメックス(Pemex)、市町村市民保護局、アモソック消防隊、州検察庁の支援を受け、市民保護・災害リスク管理総局および公安省を通じて連携して封じ込めと治安維持活動の調整を開始した。

■ 事故は敷地内の倉庫に貯蔵されていたLPガスが火災を起こし、爆発した。この施設はLPガスタンクが保管されていた倉庫だった。爆発当時、4つのタンクが爆発したという。

■ 爆発によってLPガスを積んだ4台のタンクローリーが被災し、複数回の爆発を起こし、巨大な煙が空高く立ち上った。

■ 当局は、消火活動を継続するとともに、事故原因の調査を開始した。緊急対応チームが既に現場で消火活動と負傷者の救護にあたっているため、住民は現場付近に近づかないよう呼びかけられている。 

■ 発災にともない、負傷者が3名出た。負傷者は病院に搬送され、死者は出ていないことが確認された。

■ 事故はミゲル・ネグレテ・ノボア将軍学校センターのすぐ近くで発生した。そのため、教育省は生徒、教師、事務職員合わせて1,753人を避難させた。

■ 爆発は学校や医療施設が立ち並ぶ繁華街の裏手にある倉庫で発生したが、この倉庫は、非合法の炭化水素貯蔵施設、いわゆる“ワチコール”の秘密貯蔵施設として運営されていた疑いがある。

■ ユーチューブなどでは、爆発・火災のニュースを伝える動画が投稿されている。

  YoutubeMomento exacto de la explosión en depósito de gas LP en Tepeaca, Puebla2026/6/5

  ●Facebook#EN6 | Este día, se registró una explosión de cuatro autotanques de Gas Licuado de Petróleo (GLP) en Tepeaca, Puebla, México2026/6/5

  ●InstagramUna explosión de una bodega donde se almacenaban」2026/6/5

被 害

■ LPガス貯蔵施設の建物、タンク4基、タンクローリー4台などが爆発・火災で焼損した。施設内部にあったLPガスが焼失した。

■ 負傷者が3名発生した。

■ 住民約2,000人が避難した。

< 事故の原因 >

■ 事故原因は分かっていない。

< 対 応 >

■ 消防隊と民間防衛隊員は、火災を消火し、避難した住民が最終的に安全に帰還できる状況を確保するために、数時間にわたって作業を行った。

■ 爆発の威力は、燃料が貯蔵されていたとされる建物を完全に破壊した。わずかに残ったのは、ひどく損傷したコンクリート柱とむき出しの鉄筋だけであり、地域を揺るがした爆発の規模の大きさを物語っていた。さらに、当局はさらなる危険を防ぐため、敷地内にあった4台の車両に対して冷却作業を実施した。

■ 爆発後に行われた調査の中で、当局は災害現場付近に2つ目の貯蔵庫を発見した。現場の調査により、そこにも燃料タンクや燃料の入った容器があったことが確認された。 地元住民によると、この施設はガス輸送関連車両の保管場所として頻繁に利用されていたという。

■ プエブラ州テペアカで発生したLPガスの違法取引に使用されたとされる倉庫やタンクローリー4台の爆発事故は3人の負傷者を出したが、この事件は燃料盗難のリスクを露呈させた。

補 足

■「メキシコ」(Mexico)は、正式にはメキシコ合衆国で、米国(アメリカ合衆国)と中央アメリカの間に位置し、人口約13,000万人の連邦共和国(合衆国)である。

「プエブラ州」(Puebla)は、正式にはプエブラ自由主権州といい、メキシコ中東部に位置する人口約658万人の州で、州都はプエブラ市である。

「テペアカ」(Tepeaca)は、プエブラ州にある人口約84,000人の市であり、歴史的な自治体である。

■メキシコにおける「ワチコール」(Huachicol)とは、麻薬カルテルなどの犯罪組織が国営石油企業(PEMEX)のパイプラインなどから盗み出した違法な石油燃料を指す。また、この燃料密輸や秘密貯蔵施設は「ワチコレオ(Huachicoleo)」とも呼ばれる。盗み出された燃料は、地下施設や民家などに掘られた秘密の貯蔵タンク(トウチェ)や専用ネットワークに隠され、黒幕となる犯罪組織によって闇市場で高値で転売される。メキシコ政府はこれを取り締まるため、軍や警察を動員して秘密貯蔵施設やパイプラインへの不正な分岐孔の摘発を強化している。

■「発災タンク」の仕様は分からない。 報道では、LPガス貯蔵施設だというが、違法な燃料を隠しておくタンクらしいので、正規のタンクや容器ではなく、倉庫や地下に設置された圧力容器型のタンクと思われる。被災写真を見ても、タンクらしいものは見当たらない。

所 感 

■ メキシコにおける違法な油窃盗事件についてこのブログで取り上げたのは、つぎのような事例である。油窃盗は、メキシコなど貧困な国で起こっており、事故も少なくない。

 ● 2014年9月、「メキシコで原油パイプラインからの油窃盗失敗で流出事故」

 ● 2017年9月、「メキシコの石油パイプラインで油窃盗中に爆発、死傷者6名」

 ● 20191月、「メキシコの石油パイプラインで違法な油採取中に爆発、死者99名」

■ これまでは石油パイプラインでの油窃盗事例であったが、今回は窃盗した油をどのようにして保管し、流通させるのかを垣間見る事例である。報道にもあるように「3人の負傷者を出し、燃料盗難のリスクを露呈させた」事例である。


備 考

 本情報はつぎのインターネット情報に基づいてまとめたものである。

     Pueblapost.com, An intense explosion involving four LP gas tanker trucks rocks Tepeaca, Puebla,  June 6, 2026

     Facebook.com, A gas facility explosion in Tepeaca, Mexico, triggered a massive fire and several blasts, injuring three people and forcing the evacuation of about, June 5, 2026

     Reutersconnect.com, Tanker trucks explode at gas facility in Tepeaca, June 5, 2026

     Pueblapost.com, An intense explosion involving four LP gas tanker trucks rocks Tepeaca, Puebla, June 6, 2026

     Parriva.com, Explosion of Four LP Gas Tankers Prompts Evacuation of 2,000 Residents in Tepeaca, Puebla, June 4, 2026

     Aristeguinoticias.com, Fuerte explosión en depósito de gas en Tepeaca, Puebla, June 4, 2026

     Eleconomista.com.mx, Explosión de bodega de gas LP en Tepeaca, Puebla, deja 3  heridos y obliga a evacuar a más de 2,000 personas, June 4, 2026

     Eleconomista.com.mx, La fuerte explosión de cuatro autotanques de gas LP en el ..., June 4, 2026

     Sprinforma.mx, Explosión de cuatro pipas de gas LP dejan 3 lesionados y 2 mil evacuados en Tepeaca, Puebla, June 4, 2026

     Excelsior.com.mx, Explota almacén clandestino de gas LP en Tepeaca, Puebla, June 4, 2026

     Reforma.com, Explosión en Tepeaca exhibe riesgos del huachigas, June 4, 2026

     Oem.com.mx, Explotan cuatro pipas de gas en Tepeaca y evacuan a dos mil personas, June 4, 2026

     Nmas.com.mx,  Mapa de Explosión en Tepeaca, Puebla: ¿Dónde Estallaron las 4 Pipas de Gas LP?, June 4, 2026


後 記: 今回の事例は、最初、“LPガス貯蔵施設におけるタンク爆発という一報から調べ始めましたが、正規の貯蔵施設ではなく、違法性のある石油を保管する倉庫での爆発事例でした。しかし、調べていっても内容が深まりません。まあそうでしょう。現場は避難指示が出されており、近づくことができない状況で、違法な事業者がメディアに応ずることはないわけですので、情報は一貫せず、何が本当の事実かわからない事故でした。そういう訳で今回のブログは事実らしいと思われる記事に基づいてまとめました。

 

2026年6月20日土曜日

米国カリフォルニア州でケミカル・タンクが制御不能、5万人に避難命令

 今回は、2026521日(木)、米国カリフォルニア州ガーデングローブにある航空機部品メーカーのGKNエアロスペース社でメタクリル酸メチルの入っていたケミカル・タンクが制御不能となり、住民5万人に避難指示が出された事例を紹介します。

< 発災施設の概要 >

■ 発災があったのは、米国カリフォルニア州(California)オレンジ郡(Orange)ガーデングローブ(Garden Grove)にある航空機部品メーカーのGKNエアロスペース社(GKN Aerospace)の工場である。

■ 事故があったのは、工場内にあるケミカルを貯蔵するタンクである。タンクには、メタクリル酸メチル(Methyl methacrylate C5H8O2 )が入っていた。メタクリル酸メチルは、揮発性で可燃性の化学物質でプラスチックの製造に使用されるが、人の呼吸器系に問題を起こす可能性のある物質である。

<事故の状況および影響>

事故の発生

■ 2026521日(木)、 GKNエアロスペース社の工場で、約6,500ガロン(24.6KL)のメタクリル酸メチル(C5H8O2)を貯蔵するケミカル・タンクが制御不能な状態になった。タンクが過熱してベーパーが漏れ始めていた。

■ 現場にある3基のタンクのうち1基が温度上昇したため、噴霧のスプリンクラーを作動させて冷却を試みた。

■ 地元と州の当局者は、航空機部品メーカーの敷地内で最悪の事態が起こるのを回避するために奔走した。当局は、タンクが爆発し、巨大な火球が空高く舞い上がることを懸念していた。 

■ 当局によると、圧力と温度の上昇に伴いタンクからベーパーが放出されたものの、大気中の有害化学物質濃度は監視によって検出されていないという。

■ 大規模な工業爆発の恐れが生じ、周辺地域の最大50,000人の住民に強制避難命令が出された。 オレンジ郡消防局は、 521日(木)に避難命令を出したが、ベーパーの状態が改善したため、その夜には解除した。しかし、作業員がタンクから物質を除去しようとしたところ、タンクのバルブが詰まってアクセスできなくなったため、化学物質を除去できないことが判明し、このため地元当局は避難命令を再発令した。

■ タンクのバルブが詰まっていることから、内部圧力が急上昇した。

■ 一部の住民からは、喉や鼻の炎症、めまいなどの症状が報告された。米国環境保護庁によると、この化学物質に曝露すると、深刻な呼吸器系の問題、神経系の問題、皮膚、目、喉の炎症を引き起こす可能性があるという。

■ GKNエアロスペース社は、制御できなくなったタンクを安定させるために、化学物質を冷却・中和する作業を継続した。

■ 当局は、522日(金)時点で、タンクからベーパーは出ていないと強調し、引き続き大気質を監視していると述べた。 GKNエアロスペース社はあらゆる手を尽くしているが、危機を緩和することはできていない。オレンジ郡消防局は522日(金)の記者会見で、タンクが過熱し始めたことで化学反応が引き起こされ、対応要員がそれを止めることができなかったと述べた。その理由の一つは、反応によって中和剤を注入するために必要なバルブが「詰まってしまった」ためだという。

■ 522日(金)、警察は住民に避難を促すため、緊急通報番号911に逆電話をかけ、避難に関する情報をソーシャルメディアに投稿した。オレンジ郡消防局は、予想爆発区域の詳細と、爆発が発生した場合に深刻な構造的損傷や重大な被害を受ける恐れのある地域を説明する ビデオを公開した。

■ 当局はドローンを使ってタンクの温度を測定しており、当初はタンクの温度が下がっていると考えていた。しかし、オレンジ郡消防局は、523日(土)、温度が華氏90°F(摂氏32℃)まで上昇したといい、 「昨日22日(金)の朝の時点で温度は華氏77°F (摂氏25℃)でした。その後、1時間に約1度ずつ上昇しているので、状況が悪くなっている」と語った。これが分かったのは、 22日(金)夜に施設内の2つ目のタンクを無毒化しようとした緊急対応チームが危険にさらされた後に判明したという。

■  523日(土) 、GKNエアロスペース社は、問題のタンクを安定させるために、化学物質を冷却・中和する作業を急いでいると語った。この過程を氷が凍る様子に例えると、 「基本的には外側から固まり始め、内部には完全に凍るまで液体が残っている状態になる。それが期待していること」だというが、この作業が必ずしも成功するとは限らない。可能性としては、タンクに亀裂が入って6,500ガロン(24.6KL)の化学物質が全て流出する恐れがあるし、壊滅的な爆発が起きて他の2つのタンクに影響が出る恐れもあると消防は述べた。「もし崩壊が始まった場合、封じ込め区域、二次封じ込め、堤防、砂によるダムなどを設置しなければならないが、既に設置はほぼ完了している」と付け加えた。

■ GKNエアロスペース社は、523日(土)、状況は「依然として継続中です」といい、 「地域社会、従業員、その他関係者全員の安全を確保するため、緊急サービス、専門の危険物処理チーム、関係当局と連携して全力で取り組んでいます」と述べ、避難を余儀なくされた住民や地元企業に大きな混乱をもたらしたことを謝罪した。

■ 消防は、タンクが発火や爆発する正確な温度については不明だと述べた。しかし、この計画が失敗して大破するのを放置しておくことはできないと語った。

■ 避難区域の住民のうち、約15%、つまり約6,000人が避難に否定的だった。

■ 赤十字社は、523日(土)の夜、ファウンテンバレーなどに設置した3箇所の避難所が、定員に近づいていたため、ゴールデンウェストカレッジに新たな避難所を開設した。このほか、近隣のアナハイムに設置された別の団体が運営する避難所も、避難民のために開放されている。

■ カリフォルニア州知事は、523日(土)、オレンジ郡に 非常事態宣言を発令した。州は、避難所の拡充を含め、危険化学物質事故への対応が強化できる。必要に応じて州所有の施設や見本市会場を避難者のための避難所として利用することができる。タンクが設置されている場所は、ディズニーランドから約8km、ナッツベリーファームから約6kmの距離にある。両パークは状況を注視しており、来園者と従業員の健康と安全を最優先に考えていると述べた。しかし、両パークは避難区域外に位置しており、営業を継続している。

■ 一方、避難の必要性を強調しながら、この事態をどうにかして軽減する方法を見つけ出さない限り、避難システムは失敗するだろうという意見が出ている。

■ オレンジ郡保健局は、523日(土)、避難区域外の空気は安全だと思われると述べた。メタクリル酸メチルに曝露すると、肺や鼻腔に著しい刺激が生じ、めまいや吐き気を引き起こす可能性があるが、人体への曝露事例はほとんど記録されていないため、爆発が発生した場合に住民にどのような影響が出るかは予測不可能であり、このため避難区域には近づかないよう呼びかけている。保健局は、「私たちは前例のないことに突入しており、入手できる情報も限られています」という。

■ 発災から2日経った523日(土)、事故の影響は79,000人の住民に及んでいる。ウェストミンスター市内の避難区域内の住民のひとりは、母親などの家族が21日(木)から頭痛に悩まされているといい、避難先が見つけるまで、22日(金)夜は車の中で過ごしたと語った。スタントン在住の住民は、522日(金)に家族やペットと避難しようとした際、避難する人々のひどい交通渋滞に直面し、長い時間がかかったと語った。また、避難する人たちを取材するヘリコプターやドローンの影響で混乱していたといい、「何が起こっているのか、誰も詳しいことを教えてくれません。そして、これがいつまで続くのかもわかりません」と語った。別な住民は、「木曜日の夜に窓を閉め忘れてしまい、後悔している」といい、「喉と鼻の中が痛く、妻は金曜日の夜にめまいを訴えました」と語っている。

■ 消防隊はメタクリル酸メチルのタンクに繰り返し放水したが、タンク内部の温度は524日(日)には華氏100°F(摂氏37.7℃)に達した。ドローンは10分間隔で温度を監視し、急激な上昇がないかを確認していた。状況が安全になったとみなすには、温度が周囲の気温、つまり華氏6070°F(摂氏15.621.1 ℃)程度まで下がる必要があるという。

■ 524日(日)に撮影された航空写真にはこの地域の閑散とした道路が写っていた。複数の避難所が開設されていたが、近隣のラ・パルマにある高校では、人々が車の中やアスファルトの上に敷いたマットや寝袋で寝ていた。

■ ユーチューブなどでは、事故のニュースを伝える動画が投稿されている。

 YoutubeCracks in unstable Orange County chemical tank could be relieving pressure2026/05/25)  

 ●YoutubeGarden Grove chemical leak crisis takes new turn as tank crack found amid explosion fears2026/05/25

 ●FacebookHAPPENING NOW: A storage tank carrying a toxic chemical at2026/05/25

被 害

■ タンク1基が制御不能に陥り、クラックなどの損傷をした。

■ 住民50,000人に避難指示が発令された。

■ 一部の住民からは、喉や鼻の炎症、めまいなどの症状が報告されているが、被災の詳細は不明である。 

< 事故の原因 >

■ 事故原因は調査中である。

< 対 応 >

■ 当局は、ここ数日間、過熱し始めたメタクリル酸メチルの入ったタンクが爆発するか、タンクから流出するかのどちらかであり、いずれにしても避けられない状況を防ごうと努めてきた。避難区域は、 GKNエアロスペース社の工場周辺の9平方マイル(23.3平方キロメートル=2,330ヘクタール)の範囲に及ぶ。

■ しかし、過熱したメタクリル酸メチルを貯蔵していたタンクに亀裂が生じ、危険な圧力から解放された。これにより最悪のBLEVE(沸騰液体膨張蒸気爆発)による壊滅的な爆発が回避された。化学爆発を起こさずに圧力を解放するのに十分な程度の亀裂が入ったことが幸いだった。

 オレンジ郡消防局は、525日(月)朝、夜間の調査により、作業員が亀裂を確認し、温度が低下していることを確認できたと述べた。タンク内部の温度が低下し、圧力が解放されたという夜間の評価結果である。

■ 当局は、壊滅的な爆発の危険性は排除されたと判断し、避難を余儀なくされた5万人のうち約3分の2に対する避難命令を解除した。

■ 525日(月)夜、避難区域が大幅に縮小され、多くの避難者が帰宅できるようになった。

■ 63日(水)の朝、 FBI (連邦捜査局)がGKNエアロスペース社を捜索していることが確認された。 GKNエアロスペース社の施設の外に複数の車両と数名の連邦捜査官がいたのが目撃された。

■ 63日(水)、連邦当局は、 GKNエアロスペース社に捜索令状を執行した。令状は、問題を起こしたタンク内に含まれていた化学物質であるメタクリル酸メチルの「保管、使用、または廃棄」に関連する文書および記録の押収を承認した。令状によると、「メタクリル酸メチルおよび/または有害物質を含んでいる、または過去に含んでいた疑いのあるタンク、トート、ドラム缶、槽、容器、またはコンテナ内の物質のサンプル」も捜索される。令状には、捜査官に対し「メタクリル酸メチルの温度を制御または調整するために使用される冷却装置またはその他の装置」に関連する記録を押収するよう命じている。

■ 現場の清掃と廃棄物処理作業を主導しているオレンジ郡保健局によると、過熱した化学物質はまだ貯蔵タンク内に残っているという。同機関は、先週末、貯蔵タンクから中和したメタクリル酸メチルを密閉トラックにポンプで移送し、輸送・処分する計画を立てていた。しかし522日(金)、同機関は「資機材不足のため」撤去作業は行われなかったと発表した。

■ メタクリル酸メチルは、米国環境保護庁のリスク管理プログラム(EPA)およびカリフォルニア州の規制対象化学物質ではない。このため、当該タンクは別の下位の危険物規制プログラムの下で規制されていた可能性があり、規制当局がその保管状況を監督するための手段が限られていたと考えられている。

■ ケミカル・タンクで異常が発生したのは、GKNエアロスペース社のガーデングローブの工場である。しかし、同社の工場で問題を起こしたのは、今回だけではない。 2018年以降、労働安全衛生局による4回の検査を受け、その結果、10件の違反が指摘されたことが、公的記録から明らかになっている。 202011月にガーデングローブ工場で行われた検査で明らかになった問題により、違反通知が出され、GKNエアロスペース社は和解金として約100万ドルを支払った。

■ 地域汚染対策機関である南海岸大気質管理地区(AQMD)による検査の結果、 GKNエアロスペース社ガーデングローブの工場は、有害なレベルで放出されると大気汚染を引き起こす揮発性有機化合物(VOC)の排出量を記録した必要な書類を維持・保管していなかったことが判明した。また、検査官らは、 GKNエアロスペース社が許可を得ずに新しい機器を稼働させていたことや、既存の機器が許可証に記載された内容と合致していなかったことを見つけた。さらに、許可された機器を、当局が義務付けている許可変更申請を行わずに改造していたことも判明している。

 同機関によると、 GKNエアロスペース社は202012月と20212月に報告された問題点の是正を義務付ける2度の是正命令通知を受け取ったが、これに応じていなかった。その結果、20214月に違反通知が発せられ、 GKNエアロスペース社は約90万ドルの民事制裁金を支払ったという。

■ 今回の危機的状況に至ったのは、州および地方自治体が十分に対処できていないことや、複数の規制システムにおける欠陥を露呈させた。大気汚染規制当局は、危機発生の何年も前から法令遵守上の問題点を指摘していた。地域住民の権利擁護団体や化学物質安全専門家は、州および地方の規制当局が何を把握していたのか、どのような安全対策が講じられていたのか、そしてなぜタンクがこれほど大惨事寸前まで至ったのかについて、住民はより明確な説明を受ける権利があると述べている。

■ 南海岸大気質管理地区(AQMD)は過去10年間でGKNエアロスペース社を3回検査したが、同施設は地区の許可制度において小規模排出源に分類されており、この分類により規制当局は同施設を頻繁に検査する必要がなかった。この不十分な監督体制が長年にわたる法令遵守問題の一因となった可能性があると指摘されている。

■ 住民の中には、メタクリル酸メチルを航空機用化学物質としてではなく、職場における危険物質として認識している人もいる。そして、彼らはその撲滅のために何年も闘ってきた。メンバーは、この化学物質が労働者の肺、皮膚、目に及ぼす影響を記録し、長年にわたり反対運動を展開してきた。

■ カリフォルニア州で最も厳しい化学物質漏洩防止規則は、ガーデングローブのタンク内で爆発寸前となり、5万人もの住民を避難させた化学物質には適用されない。メタクリル酸メチルは揮発性の高い化合物であり、プラスチック製造において最も広く使用されている化学物質の一つであるが、液体が過熱してのタンクが破裂・爆発し、数千ガロンもの化学物質が流出する恐れのあるものとはみていなかった。

補 足

■「カリフォルニア州」(California)は、 米国西部の太平洋岸に位置し、人口は約約3,935万人で、米国で最も人口の多い州である。

「オレンジ郡」(Orange)は、カリフォルニアの南部に位置し、人口約318万人の郡である。ロサンゼルス大都市圏に位置している。

「ガーデングローブ」(Garden Grove)は、オレンジ郡北部に位置し、人口約17万人の都市である。カリフォルニア州ロサンゼルスからは南へ約60kmに位置する。

■「GKNエアロスペース社」(GKN Aerospace)は、1930年に設立し、航空機のコックピットの窓、キャノピー、風防などを製造しており、2004年からガーデングローブに拠点を置いている。 GKNエアロスペース社は、2012年に英国のエンジニアリング大手GKN社によって買収され、同社の子会社となった。のちに社名を変更し、GKNエアロスペースとなっている。

■「メタクリル酸メチル」(Methyl methacrylate C5H8O2 )は、可燃性の無色液体で、樹脂、プラスチック、プラスチック義歯の製造に使用され、連邦政府によって規制されている。環境保護庁によると、この物質は肺、目、皮膚を刺激する可能性があり、高濃度で摂取すると肺機能の低下、めまい、記憶障害を引き起こす可能性がある。さらに、長期間にわたってメタクリル酸メチルに曝露されると、深刻な呼吸器系の問題を引き起こしたり、意識を失わせたりする可能性がある。

 今回、タンク内部の温度が十分に上昇した場合、メタクリル酸メチルが液体から気体に変化する際に圧力が上昇し、爆発の危険性が高まり、他のタンクに引火する可能性もあった。爆発が起きれば化学物質がより広い範囲に放出され、危険なベーパーが拡散する可能性もあった。

「発災タンク」は、内部に入っている液の容量が約6,500ガロン(24.6KL)と報じられているのみで、種類やサイズなどはわかっていない。グーグルマップと被災写真で調べると、発災場所には3基のタンクがあり、直径は同じくらいだが、高さはタンクによって若干異なる。直径を約3.0mとし、高さを5.06.0mと仮定すれば、タンクの容量は3542KLである。 タンク内には高さ3.4mほどの液が入っていたことになる。タンクは圧力容器式の円筒型タンクで、3基のタンクの中でどれが発災タンクかは報じられていないが、事故後のタンク被災写真を見ると、冷却効果をよくするため、タンク外壁の保温を撤去した一番小型のタンクが発災タンクと思われる。なお、3基のタンクまわりには、冷却散水用の配管設備が設置されている。

所 感 

■ タンクに入っていたケミカルの反応を制御できなくなり、地域住民5万人に避難指示を出すというような事例は初めて聞いた。なぜ、反応を制御できなくなったかという原因がわからないが、状況が悪くなっていく中でバルブが詰まって開かなくなったという事業者の設備管理状態に問題が山積しているとみられる。タンクに亀裂が生じ、たまたま圧力を解放するのに十分な程度の亀裂が入ったことが幸いだったというのも異常である。

 最悪のリスクが回避できた後に、メディアが事業所のこれまでの設備管理状況を批判するというのは、米国としてはめずらしい。しかし、標題の写真を見れば、住民の居住地と問題になったタンクの位置があまりにも近すぎる。広大な米国でこのようなことがあるのだというのも驚きである。

■ 一方、自治体の対応のまずさも指摘されている。一度発令した避難指示を状況が改善したという情報から避難指示を解除し、状態が悪化したので再び避難指示を出したというのも自治体の対応としては最悪である。しかし、このようなことは米国だけの問題でなく、日本でも起こり得る組織体制の話であると感じる。


備 考

 本情報はつぎのインターネット情報に基づいてまとめたものである。

     Edition.cnn.com, Officials race to cool down tank containing toxic chemical as 50,000 residents remain under evacuation order in California, May  24, 2026

     Edition.cnn.com, FBI seizing evidence at California plant where chemical tank overheated and forced evacuations, June  11, 2026

     Calmatters.org, A chemical tank nearly exploded. Did California’s regulators miss the signs?,  May  30, 2026

     Abc7ny.com, Federal search warrant being served at California aerospace facility after chemical tank crisis, June  11, 2026

     Apmnews.com, There’s no longer a risk of a catastrophic explosion at a California plant. Here’s what to know, May  26, 2026

     Ksdk.com, Crack found in damaged chemical tank in California could change response strategy, May  25, 2026

     Latimes.com, What we know about GKN Aerospace, the firm at center of O.C. chemical leak, May  23, 2026

     Foxnews.com, Officials say possible crack in unstable chemical tank may relieve pressure at aerospace plant, May  23, 2026


後 記: 最近、世界で事故が多く、また、戦争で多くの人が死傷していますので、今回のような事故があっても、えっと驚くような感じでは無くなっているのが我ながらおそろしいですね。避難指示や非常事態宣言が出される状況における住民や自治体の緊張感を伝えたいと思って調べましたが、報道が時系列ではなく、また住民の声を報じることも少なく、まとめるのが難しい事例でした。爆発や火災が起きているのではなく、住民への連絡や情報も何かが起こりそうだという曖昧な状況では、仕方の無いことなのでしょうね。

 

2026年6月13日土曜日

米国オクラホマ州で製油所のホートン球形タンクが火災、負傷者1名

 今回は、2026511日(月)、米国オクラホマ州タルサにあるHFシンクレア社の製油所で長楕円体をしたホートン球形タンクが火災を起こして損傷した事例を紹介します。

< 発災施設の概要 >

■ 発災があったのは、米国オクラホマ州(Oklahoma)タルサ(Tulsa)にあるHFシンクレア社(HF Sinclair) の製油所である。

■ 事故があったのは、ウェストタルサのサウスユニオン・アベニュー1700番地にある製油所内の長楕円体をしたホートン球形タンクである。

<事故の状況および影響>

事故の発生

■ 2026511日(月)午前1030分過ぎ、 製油所内のタンクで火災が発生した。

■ 製油所からは大きな炎と濃い黒煙が上がっているのが市内から目撃された。

■ 発災タンクは真の球形タンクでなく、長楕円体をしたホートン球形タンクだった。

■ 現場では、タンクの自動散水システムが作動した。球形タンクの近くには焼け焦げた車両が見られた。

■ 発災にともない、製油所の自衛消防隊が出動し、現場の対応を実施した。公設のタルサ消防署の消防隊は待機支援を行うため出動した。

■ 事故にともない、従業員1名が負傷し、診察のため搬送された。

■ HFシンクレア製油所は、敷地境界線沿いに大気モニタリングを実施し、敷地外への影響は確認されていないと述べた。

■ ユーチューブなどでは、火災のニュースを伝える動画が投稿されている。

  YoutubeTulsa Refinery Fire: Massive Flames Erupt at HF Sinclair Tulsa Refinery! Watch the Video2026/05/12

  ●Facebook.comMay 11, 2026 Tulsa firefighters responded to the HF Sinclair refinery around 11 a.m. to provide standby support during a fire at the facility2026/05/11

  ●Linkedin.com𝗕𝗿𝗲𝗮𝗸𝗶𝗻𝗴 | HF Sinclair Refinery Fire — Tulsa, Oklahoma 2026/05/11

被 害

■ タンク1基が火災で損傷した。

■ 車両が1台火災で被災した。

■ 負傷者1名があった。

< 事故の原因 >

■ 事故原因は不明である。 

< 対 応 >

■ 製油所内の自衛消防隊が火災を鎮火した。公設消防のタルサ消防署とベリーヒル消防署は出動したが、待機支援に回り、最終的に直接介入することはなかった。

■ 今回の事故で注目される点は、①ホートン球形タンク付近で焼け焦げた車両が見つかったことで、危険区域における車両アクセス管理について疑問が生じる。炭化水素貯蔵施設付近での火気作業許可、立入り禁止区域、引火源管理は、単なる事務手続きではなく、安全管理である。②自衛消防隊が自治体の消防隊の支援を必要とせずに火災に対処できたことは、緊急事態への備えの証といえよう。

■ 原因は発表されていない。調査は継続中である。

■ この製油所は1日あたり125,000バレルを処理し、中西部諸州にガソリン、ディーゼル、ジェット燃料、潤滑油、アスファルトなどを供給しており、操業停止が長引けば、地域全体の供給に影響が出る。

■ 今回のHFシンクレア製油所のタンク火災は、PBFエナジー社(PBF Energy Inc.)のルイジアナ州シャルメット製油所で発生した大規模火災からわずか数日後に発生した。事故の分析データでは、製油所火災事故が世界的に顕著に増加していることが示されている。注記; 202658日(金)にガソリン製造用の改質加熱炉で爆発・火災事故が発生した。

補 足

■「オクラホマ州」(Oklahoma)は、米国の中南部に位置し、人口約396万人の州である。州名はチョクトー族インディアンの言葉でokla  hummaを合わせたもので赤い人々を意味する。1907年に元のインディアン準州とオクラホマ準州を合わせて合衆国46番目の州になっており、当初は全米のインディアン部族のほとんどを強制移住させる目的で作られた州である。このため、他の州に比べてインディアンの保留地(Reservation)の多い州である。

「タルサ」(Tulsa)は、オクラホマ州の北東部に位置し、アーカンソー川沿いにある人口約41万人の都市でタルサ郡の郡庁所在地でもある。タルサは、20世紀初頭の石油採掘によって成長した。

■「HFシンクレア」(HF Sinclair Corp.)は、1947年に設立し、テキサス州ダラスを拠点とする独立系エネルギー企業である。同社は、原油処理能力が1日あたり678,000バレルで、複合製油所を7か所運営しており、ガソリン、ディーゼル、ジェット燃料の精製・販売のほか、再生可能ディーゼルや潤滑油などの製造を手がけている。米国の 30 州に1,600箇所 を超える独立系シンクレア ブランドのガソリンスタンドを通じて、自動車燃料を消費者に販売・流通している。 オクラホマ州タルサには精製能力125,000バレル/日の製油所を有している。会社の経緯は、最初、ゼネラル・アプライアンス・コーポレーションとして1947年に設立され、1952年にホーリー・コーポレーションに社名を変更し、その後、買収・合併を繰り返し、2023年、HFシンクレアが設立された。

■「発災タンク」は、種類や大きさなどの仕様が報じられていない。被災写真はドローンで撮影された映像が流されているので、球形タンクであることが分かる。しかし、よく見ると、真の円形でなく、楕円形をしているので、ホートン球形タンク(Horton Sphere Tank、または長球、長楕円体、回転楕円体タンク)と思われる。日本では見られないが、米国では球形タンクのひとつとして使用されている。過去のタンクと思っていたが、現在でも、インドのアンモニア産業に使用されている例がある。

 グーグルマップで調べると、直径は約20mであり、容量は4,000KL級と思われる。球形タンクの頂部には、散水配管が設置されている。

所 感 

■ 今回の事例の原因は報じられていない。被災写真によると、最初にタンク下部で火災が発生し、その後、大量に漏れて爆発的燃焼が起こった後、再びタンク下部の火災が継続したのではないかと思われる。タンク下部の漏洩箇所は、タンク本体の損壊などの損傷ではなく、下部フランジからの流出やクラックからの漏れではないだろうか。

■ タンク近くに燃える車両があるが、この車両(および人)が要因で火災が生じたか可能性は否定できない。しかし、「従業員1名が負傷し、診察のため搬送された」というので、火災や爆発的燃焼の際に負傷したのかも知れない。

■ 消火活動は自衛消防隊で消火したと報じられているが、球形タンクの火災であり、燃焼物はLPガスなど高圧の軽質ガスである。このような火災の場合、消火戦略は、ガスの流出による爆発と人員へのリスク回避のため、不介入戦略または防御的戦略(冷却散水)をとる。「石油貯蔵タンク火災の消火戦略」201410月)を参照。被災写真を見ても、実際、泡薬剤などによる消火活動は行っていない。

 火災は燃料源の供給を停止することである。タンクへの供給弁を閉止して火災を消火したのであろう。公設消防による消防隊は待機させており、どのような話し合いがされたか分からないが、妥当な判断ではないだろうか。球形タンクの事故例については「中国山東省の液化石油ガスタンク群で爆発・火災」20157月)「東日本大震災の液化石油ガスタンク事故(2011年)の原因」20123月)を参照。


備 考

 本情報はつぎのインターネット情報に基づいてまとめたものである。

     Newson6.com, Large fire sends black smoke into sky in West Tulsa, fire crews respond, May  11, 2026

     Koco.com, Pictures show plume of black smoke after large fire at HF Sinclair Refinery in Tulsa, May  11, 2026

     Newsflare.com, US: Fire Erupts at HF Sinclair Refinery in West Tulsa, May  11, 2026

     Linkedin.com, US: Fire Erupts at HF Sinclair Refinery in West Tulsa, May  11, 2026

     Fox23.com, Crews respond to fire at HF Sinclair refinery in west Tulsa, May  11, 2026

     Tulsaflyer.org, Large fire sends black smoke into sky in west Tulsa, fire crews respond, May  11, 2026

     Hazardexonthenet.net, Refinery fire prompts emergency response in west Tulsa, May  19, 2026 

     Kfor.com, Tulsa fire crews respond to fire at refinery, May  11, 2026


後 記: 米国の事故に対する感度や感性が、メディアを含めて、鈍くなっていると思います。メディアは、SNS(ソーシャルネットワークシステム)に押され、事故の要因に関して深堀りをせず、映像さえあれば良いという感じです。SNSはユーチューブ、フェースッブック、インスタグラムなど盛んに発信していますが、中身が薄いですね。「事故の分析データでは、製油所火災事故が世界的に顕著に増加していることが示されている」という意見が報じられていますが、製油所の火災事故だけでなく、ブログをやっていると、タンク関連の事故でも最近多くなっていると感じています。世界のいろいろなところで戦争が起こっていますが、戦争による人や設備の被害が伝えられてマヒして、人の感受性が衰え、弱くなってきているのかも知れませんね。