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2021年4月11日日曜日

インドネシア西ジャワ州で製油所の大型ガソリン・タンクが複数火災

  今回は、2021329日(月)、インドネシア西ジャワ州インドラマユ県バロンガンにあるプルタミナ社のバロンガン製油所で落雷によるとみられるガソリン貯蔵タンクが爆発・火災を起こし、同じ防油堤内にあった他の貯蔵タンク3基も火災になった事故を紹介します。

< 発災施設の概要 >

■ 発災があったのは、インドネシア(Indonesia)西ジャワ州(West Java)インドラマユ県(Indramayu)バロンガン(Balongan)にあるインドネシア国営石油会社;プルタミナ社(Pertamina)のバロンガン製油所である。バロンガン製油所は首都ジャカルタの東200kmほどの場所に位置し、精製能力は125,000バレル/日である。

■ 事故があったのは、製油所の貯蔵地区のあるガソリン貯蔵タンク(機器番号; T‐301G)である。発災時には、約23,000KLのガソリンを貯蔵していた。なお、この貯蔵タンクのエリアは2ヘクタールの面積に4基(T-301ET-301FT-301GT-301H)のタンクがあり、共通の防油堤で囲まれている。


<事故の状況および影響 >

事故の発生

■ 2021329日(月)深夜の午前045分頃、バロンガン製油所で爆発があり、大規模な火災が発生した。

■ 住民のひとりは、「ものすごい轟音(ごうおん)が聞こえて、炎が異常な高さに噴き上がっているのが見え、空に向かってそそり立つようだった」と語った。

■ 火災はガソリン貯蔵タンク(T-301G)で発生し、近くの2基のタンクに延焼し、貯蔵タンク3基が燃え、タンクの上空には、厚い黒煙が立ち昇った。

■ 発災に伴い、バロンガン製油所の自衛消防隊のほかインドラマユ地区消防局の消防隊が出動し、消防活動を行った。

■ 事故に伴い、 15人が負傷した。負傷者の中には、火災発生時に近くを通りかかり、やけどを負った人もおり、病院で治療を受けた。現地の災害当局によると、爆発後に心臓発作でひとりが死亡した。なお、3人が行方不明となっているという情報もある。

■ 事故に伴い、近隣の5つの村落(バロンガン村、スカレハ村、ラワダレム村、スカウリップ村、テガルルン村)が影響を受け、住民約950人が避難した。こうした中、プルタミナ社と警察は連携し、地元の住民や従業員の避難を促し、緊急避難テントを設置した。新型コロナウイルス対策によって煩雑な救援活動が必要で、複数の異なるキャンプに避難した。  

■ プルタミナ社によると、火災は悪天候の中で起き、「原因は不明だが、当時、激しい雨と雷が発生していた」と述べている。

■ プルタミナ社は、火災について防油堤内に限られており、周囲への延焼は防げるとしているが、製油所の操業を停止し、火災の拡大を防ぐための措置を講じている。燃料供給への影響は生じていないという。

■ ユーチューブでは、爆発時の状況やドローンによる火災時の映像が流されている。主な2件はつぎのとおりである。

 YouTube,Video Viral! Ledakan Keras Dari Kilang Minyak Pertamina Balongan, Terdengar Dari Radius 10 KM2021.3.29

 ●YouTube,KEBAKARAN | Loji Penapis Minyak Terbakar, Ratusan Dipindahkan2021.3.29

被 害

■ 人的被害は負傷者15名である。爆発後に心臓発作でひとりが死亡した。なお、3人が行方不明となっているという情報もある。近隣の村の住民約950人が避難した。

■ ガソリン貯蔵タンク4基が損壊し、内部のガソリンが焼失した。焼失量は94,500KLとみられる。


< 事故の原因 >

■ 事故原因は調査中である。プルタミナは事故原因の追及するため、インドネシア当局と協力して調査チームを結成した。

■ 暫定的には、雷を伴った大雨の中で、落雷により火災が発生したとみられている。

■ 一方、西ジャワ州の警察は、火災前に現場で漏洩があったという情報に注目している。漏洩の処理をしている間に落雷があったというので、何が引火して火災になったのか調べているという。 

< 対 応 >

■ 330日の火曜日中に、2基のタンク火災が消えたという情報が流れているが、実際は防油堤内のタンク4基の火災が続いている。

■ 331日(水)午前130分頃、タンク1基の火災が消えた。午前630分頃に燃焼していたタンク1基の火災が消え、つづいて午前830分頃にタンク1基の火災が消えた。消防隊は火災が消えた3基のタンクの冷却を続ける一方、残ったタンク(T-301F)の消火活動を行った。331日(水)午後までに4基のタンクはすべて火災が消えた。

■ プルタミナ社によると、 331日(水)午後までに、影響を受けた4基の貯蔵タンクの火災は鎮火したという。消火活動には泡消火剤が使用された。火災が消えた後、被災箇所の冷却過程に入っている。

■ 被災したのは貯蔵タンクのある地区の一部で、全貯蔵量135KLのうち7%(94,500KLに相当)が失われた。精製を行うエリアの被害はなかった。

■ 製油所の操業は45日後に再開する見通しである。

■ 331日(木)に火災が消えたといわれていたタンク1基が、木曜の午後8時頃、再燃したという。

■ ユーチューブでは、ドローンによる鎮火後の映像が流されている。

 YouTube,Potret Kondisi Terkini Kilang Minyak Balongan2021.4.2)


補 足

■「インドネシア」(Indonesia)は、正式にはインドネシア共和国といい、インド洋と太平洋の間にある東南アジアとオセアニアに属し、スマトラ島、ジャワ島、ボルネオ島(カリマンタン)など17,000以上の島々で構成される人口約27,000万人の国である。

 「西ジャワ州」(West Java) は、ジャワ島の西部にあり、人口約4,990万人の州である。

 「インドラマユ県」(Indramayu)は、西ジャワ州の北に位置し、人口約170万人の県である。

 「バロンガン」(Balongan )は、インドラマユ県の西に位置し、人口約38,000人の町である。

■ 「プルタミナ社」(Pertamina)は、1957年に設立され、インドネシア政府が株式を所有する国有の石油・天然ガス会社である。国内に6箇所の製油所を持ち、5,000箇所以上のガソリンスタンドを有している。

「バロンガン製油所」は、プルタミナ社の保有する6つの製油所のひとつで、1994年に操業を開始した。リアウ州のドゥリ油田(Duri)とミナス油田(Minas)からの原油を処理し、ジャカルタとジャワ島西部地域に燃料を供給している。製油所内には、72基のタンクがあり、総容量は135KLである。

 プルタミナ社の事故例は、つぎのとおりである。

 ● 201610月、「インドネシアの製油所でアスファルト・タンクが爆発・火災」

■ 国有石油会社のプルタミナが保有する6箇所の製油所の製油能力は合計85万バレル/日で、現時点ではまだ国内消費量の半分にしか対応できていない。インドネシアは、2015年、国内の製油所の機能拡張や建設工事を国家戦略プロジェクトに認定し、総額450億米ドル(約5兆円)を投じて製油能力を倍増させると意気込んだが、実際には計画の遅れが目立ち、多くが一時保留あるいは白紙化しつつあるという。このため既存の製油所に頼らざるを得ない状況が続いている。

■「発災タンク」 (T‐301G)は事故時にガソリンを23,000KL保有していたという情報だけで、容量やサイズは報じられていない。グーグルマップで調べると、直径約55mである。高さを18mと仮定すれば、容量は40,000KL級の外部式浮き屋根タンクである。従って、発災時の液位は10mだったとみられる。この防油堤内には同じ径のタンクが4基あるが、いずれも火災になっており、どのタンクが最初に発災したかは分からない。   焼失したガソリン量は全部で94,500KLといわれている。発災タンクの23,000KLを除けば、残り3基のタンクには平均23,800KL入っていたことになる。

■ 消防活動の写真を見ると、「大口径ホース」と「大容量泡放射砲」が使用されている。放射能力は大きさから20,00030,000リットル/分ではないだろうか。

■ 発災が329日(月)午前045分頃で、最初に消火したのが331日(水)午前130分頃である。これが同一のタンクかどうか分からないが、同一タンクとすれば、全面火災時の「燃焼時間」は約49時間である。ガソリンの燃焼速度を33/hとすれば、液位10mは約30時間で燃え尽きることになる。最後に消えたタンクは331日(水)の午後であるので、燃焼時間は60時間ほどになる。この60時間で燃え尽きたとすれば、液位は約20mとなる。これらから、各タンクの液位は10m20mの間で、燃焼時間は4960時間だったと考えられる。(液位20mは最初の仮定高さ18mと異なるが)最初の発災タンクは屋根沈降で「障害物あり全面火災」という推定はあっても、残りの3基が「障害物あり全面火災」だったとは考えにくい。また、331日(木)に鎮火したタンク1基で再燃しているので、一部燃料が残っていたと思われる。

所 感

■ 火災の引火原因は落雷によるものだとみられる。配管の漏洩に落雷があったという見方もあるが、やはりタンクへの直雷の可能性の方が高いと思う。また、火災規模が大きいことを考えれば、豪雨で浮き屋根式タンクの浮き屋根が沈降したのではないか。浮き屋根沈降の例は、つぎのとおりである。

 ● 20178月、「テキサス州バレロ社のタンク浮き屋根沈降による環境汚染」

   ハリケーン・ハービーの豪雨によって、テキサス州でタンク浮き屋根が沈降した事例は少なくとも11件あったという。このほか、教訓として参考になる事例はつぎのとおりである。

 ● 20077月、「フランスで原油タンクのダブルポンツーン型浮き屋根が沈没」

 ● 201211月、「沖縄ターミナルの原油タンク浮き屋根の沈没事故」

 ● 20052月、「九州石油大分製油所のタンク浮き屋根の沈没事故」

■ NASAの雷マップ(データは最新でないが)によると、インドネシアのジャワ島付近は雷の多い地域のひとつである。通常、豪雨で浮き屋根の沈降があっても、環境問題は発生するが、引火してタンク爆発・火災になることは少なかった。しかし、最近は豪雨や雷の強さが大きくなっており、今回のように浮き屋根沈降が引き金になってタンク火災を起こす可能性があるように思う。

■ タンク火災の消火活動は困難だった。今回のように複数タンク火災(しかも4基)であれば、輻射熱が激しく、近寄ることさえ難しかっただろう。タンクの被災写真を見ると、いずれもタンク側板が内側に座屈しており、長い時間火炎に曝されていたことがわかる。燃焼時間からみると、消火活動によって消火させたというより、ガソリン燃料が燃え尽きるような状態になったあと、消火させたものとみられる。しかし、浮き屋根の下部に残っていたガソリンで再燃したタンクが1基あった。消火後も冷却していたらしいが、冷却が不十分だったと思われる。

■ 消火活動に大容量泡放射砲が使用されている。直径55m級のタンク全面火災であれば、日本の法律によると20,000リットル/分の大容量泡放射砲システムでよいことになる。使用された大容量泡放射砲はこれ以上の放射能力を有したものだったと思うが、複数タンク火災の輻射熱で放射距離がとれず、火災の盛んなときは有効に働いていないと考える。火災の勢いが弱まった以降に使用されているが、大容量泡放射砲を必要以上に長く放射すると、タンク屋根の浮力能力を超え、浮き屋根が沈降する恐れがある。この点、複数タンク火災時における大容量泡放射砲システムの運用方法(消火戦術)について考えさせられる事例である。


備 考

 本情報はつぎのインターネット情報に基づいてまとめたものである。

  ・Jp.reuters.com,  インドネシアの製油所で大規模火災、5人負傷・950人避難,  March  29,  2021

    Jakartashimbun.com,  プルタミナ製油所で火災  鎮火まで3,  March  30,  2021

    Afpbb.com,  製油所で大規模火災、5人重傷・1000人避難 インドネシア,  March  29,  2021

    Nna.jp, プルタミナ製油所火災が鎮火、再開にめど,  April  01,  2021

    News.lifenesia.com, プルタミナのバロンガン製油所で火災、900人超が避難,  March  31,  2021

    Voi.id,  バロンガンのペルタミナ石油工場火災で3人が行方不明,  March  29,  2021

    Bbc.com, Indonesia fire: Massive blaze erupts at oil refinery,  March  29,  2021

    Thejakartapost.com, Fire at Pertamina's Balongan oil refinery will not impact operations: CEO,  March  29,  2021

    Ogj.com, Explosion, fire hit Pertamina’s Balongan refinery,  March  30,  2021

    Channelnewsasia.com, Indonesia's Pertamina puts out fire in Balongan refinery storage units,  March  31,  2021

    Aljazeera.com, Fire at Indonesia’s Balongan oil refinery prompts evacuations,  March  29,  2021

    Tankstoragemag.com, Pertamina Balongan fire is out,  April  01,  2021

    Pertamina.com, Pertamina Put Forth the Effort to Extinguish the Refinery Tank Fire Incident at the Balongan Refinery,  March  29,  2021

    Pertamina.com, Pertamina Accelerates Investigations to Ensure Incident handling at the Balongan Refinery,  April  01,  2021

    Reuters.com, Indonesia Pertamina aims to restarts refinery in days after blaze,  March  30,  2021

後 記: 今回、しばらくぶりの大型タンクの火災事故です。調べていくうちに、タンク所有者や消防機関に対して問題提起されるような課題のある事故だということが分かりました。発災の原因、複数タンク火災の要因、大容量泡放射砲システムの有効性などです。一方、新型コロナウイルスによる取材制限とインドネシアの国情によって状況の詳細情報がはっきりしません。負傷者の人数はもちろん、2番目以降のタンクが火災になった時間や鎮火した時間さえもメディアによってバラバラです。事実(らしい)事項を抽出しましたが、これからのタンク火災の原因追及と調査結果の公表を望みたいですし、今後の情報公開をウォッチングしておきたいと思いました。

2021年4月2日金曜日

米国オレゴン州のエタノール製造プラントで爆発・火災

  今回は、2021316日(火)、米国のオレゴン州ワシントン郡コーネリアスにあるサンダーボルト・レーシング・フューエル社のエタノール製造プラントで爆発・火災があり、当初は貯蔵タンクが火災になったと報じられた事故を紹介します。

< 発災施設の概要 >

■ 発災があったのは、米国のオレゴン州(Oregon)ワシントン郡(Washington County)コーネリアス(Cornelius)にある食品関連会社サミット・フーズ社(Summit Foods)の複合施設のサンダーボルト・レーシング・フューエル社(Thunderbolt Racing Fuel)である。

■ 事故があったのは、複合施設の中で北4番街の500ブロックにあるサンダーボルト・レーシング・フューエル社のエタノール製造プラントである。施設には数千ガロン(20,000リットル)の高燃焼エタノールを保有している。


< 事故の状況および影響 >

事故の発生

■ 2021316日(火)午後130分頃、プラントで爆発があり、火災になった。目撃者によると、爆発があった後、そびえ立つような炎を見たという。

■ 発災に伴い、消防署の消防隊が出動した。当初は燃料タンクが火災になったという通報だった。

■ 消防隊は現場へ到着すると、エタノール・レーシング燃料を製造・保管されている一帯から大量の煙と炎が出ているのを認めた。消防ホースを展張し、消防活動を始めたが、1時間ほど過ぎて、爆発と不規則な火災状態のため、安全な距離をとるため一時的に配備位置を後方へ下げた。

■ 発災現場の向かい側に住む女性は、火災が始まったとき、車が家にぶつかったような音が聞こえたといい、「それから別な爆発が起こった後、消防隊がやってきて、皆の家のドアをノックし、すぐに避難しなさいといわれました。私は犬と一緒に家を離れました。とても怖かったです」と語っている。

■ 近くの住民約80戸に避難勧告が出された。消防署は避難勧告の範囲をインターネットで配信した。

■ 消防隊によると、燃焼しているのは高燃焼エタノールで、レーシングカー用だという。エタノールのレベルはかなり高く、ガソリンよりも高いので、かなり危険だという。

■ 火災はプラントだけでなく、建物や車両に広がった。

■ 発災による死傷者は出なかった。

■ 火災の状況についてメディアKGWからドローンによる空からの映像がユーチューブに配信されている。YouTube Watch: Sky 8 over large fire in Cornelius2021.3.16)を参照)

被 害

■ 製造プラント内の建物3棟と金属製ドラム缶が火災によって焼損した。

■ プラント内にあった車両と配達用トラックが数台延焼した。

■ 約80戸の住民が数時間避難した。



< 事故の原因 >

■ 事故の原因は、調査中である。しかし、火災調査官は、静電気が金属ドラム内で火災を引き起こし、急速に拡大したとみている。 

■ 当局者によると、サンダーボルト・レーシング・フューエルの従業員が、燃料をある金属製ドラム缶から別の金属製ドラム缶に移動させていたという。この過程で、従業員は激しい熱を感じ、ドラム缶の1つから火が出ているのを発見したという。

< 対 応 >

■ 消防隊は、ポートランド国際空港の泡搬送車を運び込み、明るい紫色の消火剤である“パー​​プルK” を噴霧し、午後7時頃、エタノール火災を鎮圧した。 

■ 午後7時過ぎに避難勧告は解除され、住民は自宅へ帰宅した。

■ 当局者によると、サンダーボルト・レーシング・フューエルの従業員が、燃料をある金属製ドラム缶から別の金属製ドラム缶に移動させていたという。この過程で、従業員は激しい熱を感じ、ドラム缶の1つから火が出ているのを発見した。従業員は消火器で炎を消そうとしたが、すでに火が大きくなりすぎていたという。火災調査官は、静電気が金属ドラム内で火災を引き起こし、急速に拡大したと考えている。


補 足

■「オレゴン州」(Oregon)は、米国の西部に位置し、太平洋に面した人口約383万人の州である。

「ワシントン郡」(Washington County)は、オレゴン州の北西部に位置し、人口約445,000人の郡で、農業、特に果樹の栽培が盛んである。

「コーネリアス」(Cornelius)は、ワシントン郡の中央部に位置し、人口約10,700人の市である。

■「サミット・フーズ社」(Summit Foods)は、1997年にオレゴン州コーネリアスに設立された食品関連会社である。リンゴを薄くスライスし、アップルチップのドライフルーツ製造を行っている会社である。

 10年前に最終的に埋立処分される食品加工製品や農業廃棄物をエタノール燃料に変換するプラントを建設した。これが複合施設である「サンダーボルト・レーシング・フューエル社」(Thunderbolt Racing Fuel)で、エタノール製造プラントを運営して地元のレーシング・チームに燃料を提供している。

■「パープルK」(Purple-K)は、米国の消火資機材メーカー;ケムガード社(Chemguard Inc.)が製造するドライケミカルの粉末消火剤である。火災の熱によって分解して不燃性ガスを発生し、噴射に用いた窒素ガスとともに空気中の酸素濃度を低下させて消火する。油火災のほか電気火災やガス火災にも有効で、消火後の清掃が容易で、火の及ばなかった機器を損傷することがないという特長を有している。パープルKの使用例は、つぎのブログを参照。

 ● 20154月、「米国ウィスコンシン州の製油所でアスファルト・タンク火災」

所 感

■ 初期の情報では、エタノール製造プラントから爆発があり、燃料タンクが火災になったというので、調べてみた。しかし、燃料タンクでなく、金属製のドラム缶から火が出たものとみられる。燃料の入ったドラム缶の取扱い方法に問題があったものと思われる。

■ 最終的に埋立処分される食品加工製品や農業廃棄物をエタノール燃料に変換するプラントを運営するという省資源を実践したことは称賛される。一方、エタノールやガソリンのような危険物質を取り扱うための安全について抜けが出たのだろう。10年間問題がなかったことから油断があったのかもしれない。

■ 一方、デジタル化が進んでいる米国と感じる事故情報である。わずか1万人ほどの市だが、ドローンによる映像が地元メディアからユーチューブで流され、避難勧告の地域範囲が消防署からインターネットで流されている。


備 考

 本情報はつぎのインターネット情報に基づいてまとめたものである。

      Oregonlive.com, Fire, explosions at Cornelius ethanol facility prompt evacuation, March 16, 2021

      Usnews.com, Fire at Ethanol Plant West of Portland Prompts Evacuations, March 16, 2021

      Ktvz.com, Fire at ethanol plant west of Portland prompts evacuations, March 16, 2021

      Koin.com, Explosive ethanol fire guts business, vehicles in Cornelius, March 16, 2021

      Statesmanjournal.com, Fire at ethanol plant west of Portland prompts evacuations, March 16, 2021

      Industrialfireworld.com, Fire at Oregon Ethanol Plant Prompts Evacuations, March 17, 2021

      Kgw.com, Fire at Cornelius ethanol fuel facility likely started by static, March 17, 2021  


後 記: 今回の事故情報で感じたことは、早ければ良いというものでないことです。事故当日に多くのメディアが報じています。消防隊や近隣の住民の声を聴いたり、事故の緊迫感はあります。しかし、事故原因に関する情報はほとんでありません。翌日になって報じたメディアの中から、火元はエタノール製造プラントや貯蔵タンクではなく、金属製ドラム缶であることが分かりました。最近の報道ではめずらしく、初期の一過性の情報でないように努める姿勢を感じました。新型コロナウイルスの影響で通信社の出すような一報の情報だけで済ます記事が多かったのですが、米国は少し落ち着いて来たのかも知れません。



2021年3月22日月曜日

福島事故から10年: 原子力プラントで何が起こったのか?

 今回は、2021311日(木)の東日本大震災の福島原発事故から10年を迎え、英国放送協会がまとめた「原子力プラントで何が起こったのか?」(What happened at the nuclear plant?)の記事を紹介します。

< 背 景 >

■ 10年前の311日(金)の午後、日本でこれまでに記録された中で最も激しい地震が東日本を襲った。マグニチュード9.0の地震は激烈で、地球の軸がズレるほど強かった。地震によって津波が引き起こされ、本州の太平洋岸の町を襲い、18,000人以上の人たちの命を奪った。

■ 福島原子力発電所では、巨大な津波が防衛線(防潮堤)を越えて原子炉建屋に入って浸水させ、大災害を引き起こした。当局は、プラントからの放射線漏洩量が大きくなるにつれて立入禁止区域を広く設定し、150,000人以上の人びとが自宅から避難することを余儀なくされた。

■ 10年経った今も、この区域はそのままの状態で、多くの住民は自宅に戻れていない。 当局は、作業にすでに何兆円もの費用をかけているが、完了するのに最大40年かかると考えている。

< プラントはどこにあるか >

■ 福島第一原子力発電所は福島県大熊町にある。この地域は首都東京の北東約220kmの東海岸に位置している。

■ 2011311日(金)午後246分、東日本大震災あるいは2011年東北地方太平洋沖地震として知られる地震が仙台市の東方沖、発電プラントから北97kmで発生した。

■ 津波が海岸を襲うときに、住民にはわずか10分前に警告が発せられた。

■ 地震、津波、原発事故の結果、国内全部で50万人近くが家を離れることを余儀なくされた。

< 福島で何が起こったのか? >

■ 原子力発電所のシステムが地震を検知し、原子炉は自動的に停止した。非常用ディーゼル発電機が起動し、原子炉内のコアの周りに冷却剤を送り続けたが、原子炉は反応が停止した後も信じられないほど高温のままであった。

■ しかも、すぐに高さ14mを超える津波が福島を襲った。海水は防潮堤を圧倒し、プラントを浸水させ、非常用発電機を打ちのめした。

■ 従業員たちは電力を回復させようと急いで行動したが、3基の原子炉の核燃料は過熱してコアを部分的に溶融させた。これは核のメルトダウン(炉心溶融)として知られている。

■ また、プラントは何度か水素爆発に見舞われ、原子炉建屋がひどい損傷を被った。放射性物質が大気と太平洋に漏れ始め、避難区域と立入禁止区域が拡大していった。

< 何人が負傷したか? >

■ 原発事故の最中や直後に、死者は出なかった。爆発で少なくとも16人の作業員が負傷し、さらに原子炉の冷却やプラントの安定化に取り組んでいた数十人が放射線にさらされた。報告によると、三人の従業員が放射線によって高レベルに被ばくした後、病院に運ばれた。

■ 放射線の長期的な影響についてはいろいろな議論がある。世界保健機関(WHO)が2013年に出した報告では、この事故によってこの地域のがん発生率が目に見えるほど増加した傾向はないという。国内外の科学者は、プラント直近の地域を除けば、放射線のリスクは比較的低いままであるとみている。

■ 震災から10周年を前に、 202139日(火)、国連の報告書では、災害による放射線に直接的に関係した福島の住民に健康への悪影響はないと書かれている。放射線に関する将来の健康への影響については、識別できそうにないと述べられている。

■ しかし、多くの人たちは危険性がはるかに大きいと思っており、地域の住民は警戒を続けている。当局は多くの地域で規制を解除しているにもかかわらず、ほとんどの人は自宅に戻っていない。2018年、日本政府は、ひとりの従業員が放射線の被ばく後に死亡したと発表し、家族は補償されるべきであることに同意した。一方、放射線のために避難して移動しなければならなかった病院の入院患者数十人が亡くなったのを含め、多くの人々が避難先で死亡したことが確認されている。

■ 福島原発事故は、国際原子力機関によってレベル7の事象に分類されており、事象評価の中では最も高く、チェルノブイリ事故につづいて2番目の災害である。

< 誰が誤っていたのか? >

■ 評論家は、プラント操業者の東京電力(Tepco)と日本政府双方の慌てふためいた対応と同様、レベル7の事象への準備の不十分さを批判した。

■ 日本の国会によって設立された独立した委員会の調査では、福島原発事故は“深刻な人為的災害” と結論付け、安全の要件を満たさず、今回のような事象を検討してこなかったエネルギー会社を批判した。 しかし、2019年、日本の裁判所は、災害から出てきた唯一の刑事事件であることで、東京電力の元幹部3人の怠慢をしりぞけた(無罪とした)。

■ 2012年、当時の日本の野田佳彦首相は、国が原発事故の責任を分担すると述べた。2017年、裁判所は、政府に部分的な責任があり、避難者に補償を支払うべきであるとの判決を下した。

< クリーンアップ作業はどうなっているか? > 

■ 10年経った今も、日本の福島県のいくつかの町は立入り禁止のままである。当局は、住民が帰還できるように地域の汚染除去に取り組んでいる。

■ 大きな課題が残っている。現場に残された核廃棄物の除去、燃料棒の取り出し、100万トンを超える放射能汚染水の処理を安全に行うためには、今後3040年間、数万人の労働者が必要になる。

■ しかし、放射線が恐いという理由や、すでに他の場所で新しい生活を築いているという理由、あるいは災害が発生した場所に帰りたくないという理由で、住民の一部は二度と戻らないことに決めている。

■ 2020年の報道によると、政府は放射能を減らすためにフィルターを通した水を早ければ来年にも太平洋に放出し始めるという。

■ 一部の科学者は、巨大な海が放出した水を薄め、人間や動物の健康へのリスクが低くなると信じている。しかし、環境保護団体のグリーンピースは、水には人間のDNAにダメージを与える可能性のある物質を含んでいると述べている。

■ 当局は、液体をどうするかについて最終的な決定はなされていないと述べている。

 

■「国際原子力機関によるレベル7の事象」は、原発事故の深刻さの度合いを示す指標である国際原子力事象評価尺度の中の最も深刻なレベルの事象である。国際原子力事象評価尺度は図を参照。

■「英国放送協会」は、 British Broadcasting Corporation、略称:BBC で、イギリスのラジオ・テレビを一括運営する公共放送局である。インターネットでは、ニュースを配信している。

所 感

■ 東日本大震災から10年を迎え、日本のテレビや新聞のメディアでいろいろな特集番組があった。地震や津波による自然災害を風化させないという意図は効果があっただろう。この災害の中で福島原発事故も取り上げられていたが、海外ではどのように見ているかよくわかった。■ 今回の英国放送協会(BBC)のインターネット情報は、この10年の動きを海外の第三者的視点でまとめられており、つぎのようなハッとする事項があった。

● 水素爆発で16人が負傷し、3人の従業員が放射線による被ばくで病院に搬送されたが、原発事故の最中や直後に、死者は出なかったという指摘は、改めてあれだけの大事故で死者が無かったのだと思った。一方、2018年にひとりの従業員が放射線の被ばく後に死亡したという話は初めて知ったし、放射能被ばくの怖さを感じる。

 ● 国連の報告書で、福島の住民に“健康への悪影響はなく”、放射線の将来の健康への影響は“識別できそうにない”という。多くの地域で規制を解除しているにもかかわらず、ほとんどの人は自宅に戻っていないことに合理的で率直な疑問をもっていると感じた。

 ● 国会による委員会では、事故は“深刻な人為的災害” と結論付け、対策を検討してこなかった東電を批判し、また、当時の首相は国が事故の責任を分担するとしている。 しかし、裁判所は東京電力の元幹部3人の怠慢をしりぞけた。この矛盾は、日本の刑事事件の裁判のあり方に疑問を呈していると感じた。

 ● 汚染水の処理について、一部の科学者は、海への放出によって希釈すれば、人間や動物の健康へのリスクが低くなると信じていると今の状況を述べ、一方、環境保護団体のグリーンピースが水には人間のDNAにダメージを与える可能性のある物質を含んでいるとして、対応策の見直しや丁寧な説明を求めていると感じた。


備 考

 本情報はつぎのインターネット情報に基づいてまとめたものである。

    Bbc.com, Fukushima disaster: What happened at the nuclear plant?,  March  10,  2021       

    Firedirect.net, Japan – 10 year Anniversary – Fukushima Disaster,  March  11,  2021


後 記: 311日の東日本大震災10年を契機にいろいろな特集が組まれていました。そのひとつにテレビで映画「Fukushima 50」が放映されたのを観たきっかけで、インターネット情報の“FireDirect” に福島原発事故を振り返る記事に興味が出ました。この記事のオリジナルは“BBC”のインターネット情報でした。表現は日本人からみるとやや大袈裟な気もしますが、できるだけ趣意に沿った日本語にしました。たとえば、「海水は防潮堤を圧倒し、非常用発電機を打ちのめした」は、「海水は防潮堤を越え、非常用発電機を停止させた」ではあまりにも味のない文章です。 また、標題の写真は原発事故ではありませんが、東日本大震災のすさまじさを表しているので、そのまま引用しました。 FireDirect” では、下のような千葉のLPGタンク火災事故の写真を標題に使用されていました。


  

2021年3月16日火曜日

サウジアラビアの石油ターミナルが無人機攻撃されるが、迎撃される

  今回は、202137日(日)、サウジアラビアのペルシャ湾沿岸のラスタヌラにあrサウジ・アラムコ社石油ターミナルが無人機によるテロ攻撃があった事例を紹介します。

< 事故施設の概要 >

■ 事故があったのは、サウジアラビア(Saudi Arabia)ペルシャ湾沿岸のラスタヌラ(Ras Tanura)にある国営石油会社のサウジ・アラムコ社(Saudi Aramco)のラスタヌラ石油ターミナルである。ラスタヌラ石油ターミナルは石油の輸出港で3,300万バレル(525KL)の貯蔵能力がある。


< 事故の状況および影響 >

事故の発生

■ 202137日(日)夜、ラスタヌラ石油ターミナルに無人機による攻撃があった。

■ 攻撃はイエメンの親イラン武装組織フーシ派によるもので、海側から飛来した無人機(ドローン)で狙ったものである。しかし、死傷者はなく、施設の損害もなかった。サウジアラビア国防省によると、この無人機は目標に到達する前に迎撃され、破壊されたという。

■ その後、弾道ミサイルによる2回目の攻撃がダーラン(Dhahran)にあるサウジ・アラムコの居住施設にあった。弾道ミサイルは迎撃され、破片が施設近くに落下したが、死傷者はなく、施設の損害もなかった。

■ フーシ派は、サウジアラビアでラスタヌラへの攻撃を含め、14機の無人機と8発の弾道ミサイルを発射したと述べた。このうち、10機はサマド-3型無人機で、弾道ミサイルの1機はゾルファガル型だという。なお、ラスタヌラ石油ターミナルを狙ったのは、無人機1機だという。

■ 弾道ミサイルに対してはパトリオット地対空ミサイルによる迎撃が成功し、無人機に対してはF-15戦闘機による迎撃が成功しており、赤外線映像で撮影した撃墜する様子の動画が公開されている。

(ツイッター 「https://twitter.com/mbks15/status/1368666935098019850」を参照)

被 害

■ サウジ・アラムコ社のラスタヌラ石油ターミナルの設備に損害は無かった。

■ 無人機攻撃に伴う死傷者は無かった。

< 事故の原因 >

■ 事故の直接原因は、無人機攻撃という「故意の過失」である。しかし、攻撃は戦闘機によって迎撃され、失敗だった。

< 対 応 >

■ 今回の37(日)の攻撃では、サウジ・アラムコ社の生産・輸出施設の大部分がある東部州の湾岸が標的となった。今回攻撃を受けた施設からわずか数kmの場所では、2019年に石油施設がミサイルや無人機(ドローン)の攻撃を受け、サウジアラビアが原油生産の半分以上の一時停止を強いられた結果、原油価格の急上昇につながった。

■ サウジアラビアの石油ターミナルなどの施設がテロ攻撃を受けた事例で、本ブログで取り上げたのはつぎのとおりである。

 ● 20199月、「サウジアラビアの石油施設2か所が無人機(ドローン)によるテロ攻撃」

 ●  202012月、「サウジアラビアの石油流通ステーションの貯蔵タンクをミサイル攻撃」

 

■ サマド-3型無人機(ドローン)は、中東で使用されている無人偵察機から派生した機種である。サマドにはサマド-1型、サマド-2型、サマド-3型の3種類がある。サマド型の無人機は主にイエメン内戦のフーシ派によって使用され、サウジアラビアやアラブ首長国連邦(UAE)で標的を攻撃するため、無人偵察機の長距離用が使用されている。


所 感

■ 今回のテロ攻撃の状況ははっきりいって分からない。サウジアラビア側の報道で石油ターミナル施設に被害の報告がないので、タンク設備に損害は無かったのだろう。

 これまでの、

 ● 20199月、「サウジアラビアの石油施設2か所が無人機(ドローン)によるテロ攻撃」

 ●  202012月、「サウジアラビアの石油流通ステーションの貯蔵タンクをミサイル攻撃」

2件のテロ攻撃では、サウジアラビアの防空システムの脆弱性を露呈したが、今回は機能したと思われる。


備 考

 本情報はつぎのインターネット情報に基づいてまとめたものである。

   Tankstoragemag.com,  Houthi attacks at Aramco facilities fail,  March  08,  2020

   Jp.reuters.com,  イエメンのフーシ派、サウジ石油産業拠点にミサイル・無人機攻撃,  March  08,  2020

   Tokyo-np.co.jp,サウジアラビアの国営石油会社の施設に攻撃 隣国イエメンの反政府武装組織フーシ派が犯行声明,  March  08,  2020

   Jiji.com ,  サウジ東部の石油施設攻撃 イエメン武装組織が主張、被害なし,  March  08,  2020

   News.yahoo.co.jp,  サウジアラビア戦闘機がフーシ派のドローン多数を撃墜し防空に成功,  March  09,  2020

   Spglobal.com, Saudi Aramco facilities reportedly targeted by Houthi missile bombardment,  March  07,  2020

   Aljazeera.com, Houthis fire missiles, drones at Saudi oil facilities,  March  07,  2020

   Wionews.com, Yemen's Houthi rebels target Saudi Arabia's Aramco oil facilities,  March  08,  2020  


後 記: 一応、テロ攻撃としていますが、実際は戦争であり、攻撃側は過大に伝えますし、攻撃を受けた方は被害を小さく伝える傾向にあります。無人機やミサイルの数に整合性がありませんし、すべてが撃墜されたのかはっきりしません。無人機に対するF-15戦闘機による迎撃の動画も映像は事実でしょうが、今回の撃墜を示すものなのかは疑問もあります。しかし、報道のひとつとして、ブログでは紹介しました。報道内容の真偽は別として、少なくとも貯蔵タンクに損害は無いようです。

2021年3月10日水曜日

危険物質の事故対応で、もはやドローンは欠かせない!

 今回は、Hazmat Nationのインターネットに掲載された「消火技術:危険物質の対応―ドローンは必需品である」(Fire Technology: Hazmat Response—Drones Are a Necessity)を紹介します。

< ドローン活用の背景 >

■ 危険物質の事故は、消防関係機関にとって最も危険で、最も困難な対応のひとつである。これらの事故は、危険性の物質(化学的物質、生物学的物質、放射性物質、核物質、爆発物など)を含み、住民や緊急対応する隊員への環境上の危険性があり、問題の原因追究時などに分からないことを伴うことがある。危険物質への対応には、通常、自給式呼吸器を装着した防護服が必要であり、消防士には危険な環境の潜在するところへ立ち入ることが強いられる。

■ このときの活動は、通常、目視で監視されることはなく、連絡は無線機による会話に限定される。さらに、活動中に資機材が必要になった場合は、隊員のひとりが“ウォームゾーン” (Warm Zone)まで戻り、資機材を入手するか、新たな隊員を派遣して資機材を現場に持ち込む必要がある。このため、事故を収束するまでの時間が長引いてしまう。(もちろん、わかっている資機材は事前に運び込むが) また、危険物質に関わる作業が進行中、施設や近隣の道路を何時間も、場合によっては何日も閉鎖することも念頭にいれておく必要がある。

■ 近年、ドローンを使うことによって安全性の向上、道路や施設の早期再開による時間短縮など劇的に改善されることが期待されている。

< ドローンによる変革 > 

■ 事故現場に到着すると、ドローンを発進させ、空中偵察を行い、生命と健康を損なう恐れのある環境の遠隔監視や識別を行うことができる。

■ これには、つぎのような機能がある。

 ● 負傷者をすばやく識別する。

 ● 曝露する恐れを識別する。

 ● タンクの漏れや破裂の状況、バルブの破損状況を識別する。

 ● 火災における火炎の状況、構造物の健全性を識別する。

 ● 漏出の流れる方向を識別する。

 これらの機能は、人への危険に関する重要な情報や、事故を早く収束するための資機材や防護装置の判断情報を教えてくれる。

■ これらの機能は、隊員に無用な危害が加えられないようにしながら、活動や汚染の除去を成し遂げるまで行うことができる。

■ 熱画像カメラを搭載したドローンは熱の兆候を識別できる。これにより、つぎのようなことがわかる。

 ● 点火源の存在を示したり、危険物質容器内の液面を表示したりできる。

 ● 他の方法では見えない危険な蒸気雲やベーパー群を視覚化できる。

 ● タンクへの火炎衝突の影響を見ることができ、沸騰液体による壊滅的な蒸気爆発につながる可能性を判断することができる。

 ● 夜間や煙が視界をさえぎる状況下で、活動している隊員や負傷者が発する熱の兆候を確認できる。

■ ドローンを使用して火災事故の鎮圧活動を観察し、視覚映像と熱画像を使って消火活動の効果を直接的に知ることができる。この情報は、危険にさらされる恐れのある人たちが避難の必要性があるかの状況判断に有用である。

■ 危険物質の流出事故では、封じ込め作業の有効性に関して監視できるほか、流出の進行方向や水面上の光沢を監視できる。

■ ドローンで見張っていれば、危険物質に対応している隊員が認識していない危険な状態や変化の兆候を知ることができる。

■ リアルタイムの状況把握のため、動画配信を現場や別なところへ必要に応じて提供することができる。

■ スピーカーを備えたドローンは警報を出すときに役立つ。これは、従来の無線通信が使えそうにない場合には重要になる。

■ 危険物質のモニタリング装置を装備したドローンを着陸させ、ローターを停止すれば、ドローンはあたかも定点の危険物質の遠隔検出器として長い時間使用することができる。

■ ドローンは、活動中の隊員のすぐ近くに必要な資機材を届けることができる。また、照明器を装着したドローンは、昼間や夜間にかかわらず、活動中の暗い領域を照らすのに役立つ。

■ 視覚画像を撮っておけば、後で3次元モデルに変え、分析・評価することができる。また、画像を撮っておけば、損害の評価を行うことができ、必要に応じてメディアや地域社会と共有することができる。

■ 列車の脱線事故は、都会から離れた農村地域で発生することが多い。すぐにドローンを発進させれば、脱線の規模と巻き込まれた車両の数を確認できる。ドローンを使って上空から見れば、火災が発生しているのか分かるし、危険物質の車両が巻き込まれていないのか分かる。また、流出や漏出が発生しているのか判断できる。 ドローンによれば、書かれている字を読むことができるほか、近くで影響を受けている人、住宅、学校などを確認することができる。

< 活用に積極的な消防部門 >

■ ドローンを活用したパイオニアで、リーダー的存在は、フロリダ州マナティ南部消防救助隊(Southern Manatee, FL, Fire and RescueSMFR)である。たとえば、困難な硫黄火災事故(高温、有毒、遮られた視界)や無水アンモニアの漏出事故(非常に揮発性で有毒)の際、フロリダ州マナティ南部消防救助隊はドローンを使用して、現場エリアの360度俯瞰図を介して初期状況の評価を行った。このような状況下で重要な評価を実施することによって、問題点を的確に指摘し、消防士に影響を与えるベーパー群や現在の状態を判断して、現場に立入るのに十分な安全性を確保することができる。

■ 硫黄火災事故では、ドローンを使うことをひらめいたフロリダ州マナティ南部消防救助隊(SMFR) は、ほかの方法でほとんど検知できなかったホットスポットをドローンで特定することができた。無水アンモニアの漏洩事故では、肉眼では見えなかった漏洩源をドローンの熱画像カメラによって特定した。

■ フロリダ州マナティ南部消防救助隊(SMFR)では、事故の最初の段階でドローンを発進させ、事故中には常にドローンを操作して、物質の監視や識別、活動状況の観察、必要に応じて資機材の搬送、照明の提供、バックアップ通信に活用するのが危険物質対応時のポリシーになっている。

< 火山の噴火、原子力発電所のメルトダウン >

■ ハワイでは、最近の火山活動の間、新しい亀裂や溶岩流が形成されて住宅地に近づいているかどうかを監視するためにドローンが使われている。二酸化硫黄の検知器を備えたドローンを飛ばして、有毒なガス状雲(通常は見えない)の存在と流れの方向を特定し、人々を安全な場所に避難させた。また、被害の評価や状況の確認にも使用された。

■ 福島第一原子力発電所の被災地では、ドローンによって放射能が測定され、危険区域が特定された。その後、チェルノブイリ事故の現場や近隣地区で計測されたように、ドローンは残留放射能の影響を決めるために使用された。仮にドローンが汚染された場合でも、ドローンを処分することができる。

■ ドローンは活動時に大きな役割を果たすほか、活動後のレポート作成に大いに役立つ。危険物質事故時の画像やビデオは、学びえた教訓をはっきりさせるし、将来のために改善すべき方法を対応者に教えることができる。トレーニング時の活動状況や模擬訓練をビデオ録画することができるし、後で確認して教えることができる。

■ 主要施設や重要なインフラの火災事前計画は、ドローン画像と3次元モデルによってより良いものにできる。

■ 事故が起こった場合、対象の化学プラント、石油貯蔵施設、エタノール精製施設、車両基地、原子力発電所などにおける施設の配置図、アクセス性、大きな特徴、危険性、対応の方法に関して貴重な情報が収集できる。

■ 施設の観点でいえば、上方からアクセス性の困難な場所や危険な場所を見つけだすのと同様、ドローンは定期的に安全やセキュリティの点検を行って保安区域に入っている許可のない人や異常者を見つけたり、漏洩や火災を発見したりすることができる。

■ フロリダ州マナティ南部消防救助隊(SMFR)などの部署によるドローンの活用は、安全性を高め、活動の効率を改善し、リアルタイムの情報を提供する機器としての存在価値を高めている。いまやドローンは危険物質を対応するチームの必需品になっている。

 

■「ウォームゾーン」 (Warm Zone)は、発災部中心からのハザード・ゾーンに関する領域のひとつで、危険域のホットゾーンと安全域のコールドゾーンの中間部の領域をいう。詳細は、「石油貯蔵タンク火災の消火戦略」を参照。


■ 資料でいう「硫黄火災事故」がどのような事故かわからないが、硫黄の燃焼事例は、20177月の「米国ワイオミング州で硫黄の山の幻想的な災の火災」を参照。

 列車の脱線事故としては、つぎのような事例がある。

 ● 20137月、「カナダで石油タンク車が脱線して市街地で爆発・炎上」(原因は「カナダのラック・メガンティック列車脱線事故の原因(2013年)」を参照。

 ● 20186月、「米国アイオワ州で石油タンク車が脱線し、洪水の川へ油流出」

所 感

■ 一般にドローンが普及しており、事故時の報道にドローンを使用した画像や動画が掲載されることが多くなった。日本での活用例は、「ドローンによる貯蔵タンク内部検査の活用」20204月)に紹介した。

■ 総務省消防庁は、「ドローン運用アドバイザー育成研修」(20201月、3日間)を実施しているし、全国の消防本部のドローン保有率は2017年の約10%より年々増加し、20206月には約28%になり、43都道府県の消防本部がドローンを保有しているという。実際に消防防災分野では、ドローンは火災時の状況確認や、山間部での要救助者捜索、水災・土砂災害等の大規模災害時の被害状況確認などに活用され始めている。

■ 国内のドローンの使用は視覚的な静止画や動画に限られている。しかし、今回の資料では、熱画像、ガス検知器(モニタリング装置)、スピーカー、資機材運搬などの機能を活用している。日本では、操縦の安全性や高価という“制限”の思考性が高いが、もっと柔軟性と創造性をもった若い世代の活躍を期待したい。 


備 考

 本情報はつぎのインターネット情報に基づいてまとめたものである。

    Hazmatnation.com, Fire Technology: Hazmat Response—Drones Are a Necessity,  December 01, 2020     

    Drone-journal.impress.co.jp, 消防ドローンのスペシャリストを養成する「ドローン運用アドバイザー育成研修」 ,  March 12, 2020

    Viva-drone.com,ドローンを全国43都道府県の消防が導入、操縦士の需要が高まる,  September  08, 2020


後 記: ドローンの情報を耳にすると、デジタル社会だなと実感します。話が危険物質の対応からそれますが、山岳テレビを見ていると、数年前に比べてドローンの場面が多くなりましたし、画面の構成が上手になってきたと感じます。上から目線で運用者を育成しなければならないという固定概念ではなく、若い人たちに任せれば、ゲームで培った(?)若者が進出して自然ともっと進展するでしょう。 

2021年2月27日土曜日

ロッテルダムは固定消火システムの代替策としてモバイル・システムを採用

  今回は、オランダのロッテルダムにある統一産業消防本部が、タンク火災に対して固定消火システムの代替策としてモバイル・システムによる消火システムを選択し、実際に資機材と車両を具体化した内容を紹介します。

< はじめに >

■ オランダのロッテルダムにある統一産業消防本部(Unified Industrial Fire Department of Rotterdam)は、タンク火災に対して固定消火システムの代替策として、モバイル・システムによる消火システムに投資し、開発を行っている。

< 開発の背景 >

■ オランダは小さな国かも知れないが、この国には欧州最大の港であるロッテルダム港がある。にぎやかな港には、毎年、多くの貨物を積んだ船が集まっている。その中には、危険物質をいっぱいに積んだ船もある。また、この港は貯蔵タンクのある製油所や化学プラントなどの産業を引き付けている。実際、ロッテルダムには、シェル社が欧州最大の製油所を操業しているほか、BP社やエクソン社の製油所もある。

■ 可燃性や爆発性の液体で満たされたタンクが非常に多いので、管轄エリア(60 km×20 km)の港は大規模なタンク火災や堤内火災の危険性にさらされている。ここで一旦火災が発生すれば、港湾事業が停止し、経済的損失が発生し、環境への悪影響を引き起こす恐れがある。

■ ロッテルダムの統一産業消防本部は、この地域を安全に保つことを任務とする官民合同の消防部署である。この消防部署には、地方自治体、ロッテルダム-レインモンド消防署、ロッテルダム港周辺で危険物を取り扱っている産業が含まれ、都市部に関わらず、輸送ルート沿いの製油所、化学施設、タンク基地における火災や流出事故などに共同で対応する。

■ 統一消防本部のマネジメント・チームのメンバーであるA.J.クレイジェット氏(A.J. Kleijwegt)は、タンク火災からこの地域の安全を保つことは大きな仕事だと話し、つぎのように説明している。

「オランダはまことに小さな国ですが、港湾施設は大きく、企業は互いに近くにあります。都市部も工業地帯に極めて近い状態です。タンク火災を23日間放置することさえ現実にできません。この港では、毎日380,000人が働いています」

■ オランダ政府はリスクを認識し、2016年にタンク火災や堤内火災に関連する新しい規制を設けた。新しい法律は、貯蔵タンクを所有する企業に高価な固定消火システムの設置を要求するものである。 

< 代替案の選択 >

■ 投資コストが高くかかるため、統一産業消防本部のクレイジェット氏に代替案を模索する道を選ぶこととした。 クレイジェット氏は、モバイル・ソリューションの機能が発達してきており、現状を踏まえれば、これが良い選択だということを2019年の後半になって当局に納得させた。「当局は、モバイル・システムによってタンク火災を迅速に低コストで消火できるか確認するために1年の時間を与えてくれました」とクレイジェット氏は述べた。

■ その年の間、クレイジェット氏は、過去のタンク火災とその結果、熱輻射の影響、安全に対応人員を送り込めるかを調査した。クレイジェット氏は、 「私たちは過去の火災の特徴や規模を検討し、そして最終的には、当局にロッテルダム港におけるタンク火災についてモバイル戦略を受け入れるよう説得しました」と言い、「企業も、高価な固定消火システムに投資する必要がないため、この計画に賛成しました」と述べている。

■ 固定消火システムの応答時間は優れており、消火するよう設計された火災だけには対応できる。一方、対照的にモバイル・システムはどんなときにも常に利用可能である。「固定消火システムの応答時間は数秒で、おそらく1分です。それに比べて私たちのシステムの反応が遅いのは事実です」とクレイジェット氏は認めているが、「固定消火システムは常に機能するだろうと仮定しています。しかし、タンク火災が発生するときには、常に理由があります。それは爆発であるか、あるいはほかの理由があります。固定消火システムはどのように反応するでしょうか? 事象が起こったとき、固定消火システムは100%機能するという保証はありません」 と語った。

■ 消防署とモバイル・システムは一日24時間年中無休で活用できる。統一産業消防本部はこの地域で8つの消防署を運営しており、そのうち6つに24時間体制で人員を配置している。これらの消防署から消防隊は6分以内にすべてのタンクに関して事故の対応ができる。

■ タンク火災は複雑な事象であり、消火、冷却、ベーパー発生の抑制のために、大量の水と多くの消火用泡剤が必要となる。共同消防署のマネージング・ディレクターであるジャンウァールス氏は、「モバイル・システムは給水に優れています。それで、私ども消防隊は消火用水と泡を供給する役目を果たすことができます。泡薬剤も私どもは約200KL準備しています」と話している。

 < 新しいモバイル・システムの開発 >

■ 統一産業消防本部は約600万ドル(66,000万円)を投資して、貯蔵タンクやタンク基地のためのモバイル・システムについて資機材と車両に具体化した。

■ 最初に、統一産業消防本部はダイナミックに動ける適応性のある戦略を検討した。システムは、迅速に動き、人員(消防士)にとって通常の業務に近く、そして何よりも安全である必要があった。

■ 消防本部のリーダーは、消防士が給水にすばやくアクセスできる水中ポンプとホース展張システムを含む最善の方法を決定した。消防本部では、過去に他の用途で水中ポンプを使用したことがあった。

■ 統一産業消防本部のクレイジェット氏は、つぎのように説明している。

「水中ポンプは思っている以上に短時間で機能します。私どもはかつて、優れた水源である港湾当局の給水船を使ったことがありますが、それほど早く使えるようになりませんでした。給水の確立に4時間かかったこともあり、これでは余りにも時間がかかり過ぎです。水中ポンプを使えば、1時間以内で給水を確立できます」

■ 統一産業消防本部はドローンを採用した実績もあり、人員を危険にさらすことなく、タンク火災や堤内火災に関する情報を収集するための遠隔操作火災モニターとして配備する予定である。ドローンによって詳細な状況を把握でき、消防隊がタンク火災時の戦略を決めたり、変更するのに役立てることができる。

■ 統一産業消防本部のクレイジェット氏は、つぎのように話している。

「私どもはドローンを2年間使用し、非常に良い経験をしました。ドローンは泡の覆いの状況や効果を私どもに示してくれます。ホットスポットの状況を確認でき、泡モニターの放出効率を把握して、泡モニターの方向を変える必要があるか、あるいは泡モニターを交換する必要があるかを確認できます。ドローンは煙と風向を見極めることもでき、これによって風が煙を遠いところへ運ぶ可能性を知る上で重要です」 

■ 火災からの輻射熱の問題は常に懸念事項であるが、このドローン機器を使用することで、消防隊は安全な距離から無駄なことをせずに火災と戦うことができる。

■ 統一産業消防本部のクレイジェット氏は、つぎのように述べている。

「大規模な火災があれば、火災に近づくことさえ難しい状況になります。しかし、タンク火災を消すのに極端に近づく必要はありません。消防隊は60m離れたところから活動を始め、必要に応じて近づくようにすればよいでしょう。 泡モニターのチームとドローンのチームが協力すれば、この安全性を確保できます」

< 事前の計画と訓練 >

■ 統一産業消防本部のクレイジェット氏は、つぎのように話している。

「私どもの戦略を検討するに際して、ダイナミックで、柔軟かつ迅速な対応ができることに重点を置いています。タンク火災は危険に満ちたシナリオのようなものです。発生する危険性を理解し、安全に対応しなければなりません。このために、ドローンと泡モニターを配備するようにしました。私どもが計画について考えた3番目のことは事前準備です。ロジスティクス(兵站:へいたん)について配慮した計画にしたことです」

■ 消防士と地域の人たちの安全を保つことが最も大きな配慮事項であり、十分に練られ、テストされた事前の計画が必要である。モバイル戦略に移行するに際して、統一産業消防本部は関係機関や企業に対して事前の計画を調整する必要があった。統一産業消防本部のクレイジェット氏は、「私どもはロッテルダム港におけるすべての貯蔵タンクについて事前の計画を立てています。ロジスティクスの計画では、誰がどこに行き、何をすべきか、そしてどのような順序で行うかを示しています。また、身体を使った訓練だけでなく、システム全体に関するトレーニングの年間計画も作成しています」と語っている。

■ 新しい機材が設置されれば、統一産業消防本部は2021年の後半に各メンバーに特別なタンク火災訓練を実施する予定である。統一産業消防本部のクレイジェット氏は、「私どもは、新しい戦略のもとで幹部のトレーニングを行わなければならないし、すべての企業が同じ方向を向くようにしなければなりません」という。

■ 統一産業消防本部は、トレーナー養成計画にもとづいて新しいシステムについて各メンバーをトレーニングする予定である。また、各メンバーは、新しく泡薬剤、ポンプ、ホース、泡モニターの各取扱い方法を学ばなければならない。統一産業消防本部のクレイジェット氏は、「私どもにとって遠隔操作火災モニターはまったく新しい機材なので、すべての担当者が操作できるようにトレーニングしなければなりません」と説明した。

■ ロッテルダムの統一産業消防本部では、大規模なタンク火災に多くは遭遇していない。2017年の製油所火災、リムシール火災、爆発後のタンク全面火災など過去に何件かの事故と戦ったことがある。

■ この地域は幸運だったといえよう。迅速な対応によって大事故にならず抑え込まれてきたが、タンク火災は複雑であり、適切な計画と準備、そして事故時の人員・資機材の配備が必要である。統一産業消防本部は将来起こるであろう大きな事故に対する準備を進めており、安心しているとクレイジェット氏は話している。

 

■「爆発後のタンク全面火災」の事故とは、20177月に起こった「オランダで入荷作業時にメタノール貯蔵タンクが爆発」の事例である。ブログでは、全面火災になっていないのではないかと書いたが、実際には、短い時間だろうが、全面火災になったようである。また、タンクには、サブサーフェース注入式の固定消火システムが設置されていたが、泡が堤内に漏れ出たようである。

所 感

■ ロッテルダムで採用した“モバイル・システム”の消火システムとは、移動式(モバイル)消火設備とドローンに搭載したモバイル機器(カメラなど)を活用したシステムを組合わせたものである。移動式消火設備は日本の大容量泡放射砲システムと同様の構成(泡放射砲、消火用水ポンプと水中ポンプ、泡混合設備、大径ホース)と思われる。

■ この導入の背景には、貯蔵タンクに固定消火システム設置の義務化(法令)がある。法令の不遡及の原則から考えれば、既設の貯蔵タンクに適用されず、経過措置がとられると思われる。しかし、貯蔵タンクの対象基数や一旦発生してしまった火災の影響を考えれば、できる限り早く何らかの代替策をとる方向性になったものであろう。

■ 日本では、固定消火システムや化学消防車など三点セットの設置が法令化されている。しかし、三点セットの化学消防車が有効に機能しなかった事例から、2004年に大容量泡放射砲システム導入の法令化が行われている。一方、日本の状況からみれば遅れているとみえるオランダのロッテルダムでは、さらにドローンに搭載したモバイル機器(カメラなど)を活用した消火システムを導入しようとしている。前回のブログで「放水能力22,700リットル/分を有する大型化学消防車」が登場したことを紹介したが、消火設備は着実に進歩している。


備 考

 本情報はつぎのインターネット情報に基づいてまとめたものである。

    Industrialfireworld.com, The Unified Industrial Fire Department of Rotterdam Invests in Mobile System to Fight Tank Fires,  February 17, 2021

    Kappetijn.eu, Lessons learned Methanol Tank fire, June 26th 2017


後 記: モバイル・システムという言葉を目にしたときは、ドローンによるモバイル機器を活用した消火システムだと思いました。そうではなく、固定消火システムに対する移動式の消火システムでした。最近、言葉のとらえ方が個々人でやや異なり、定義が曖昧になってきたように思います。技術の進歩によって、消火分野の言葉の中には、モバイルのようにどちらを指しているのか迷うものが出てきました。このほかに“モニター”があります。これまでは、泡モニターをいう言葉でしたが、ドローンの出現により、監視モニターを指している場合があります。今回の資料でも、単に“モニター”と言っている場合があり、はっきりと泡モニターとか監視モニターというべきだと感じました。