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2026年2月20日金曜日

スペインの製油所で簡易常圧蒸留装置の原油貯蔵タンクが爆発・火災か

 今回は、2026126日(月)、スペインのムルシア州カルタヘナにあるレプソル社のカルタヘナ製油所において古い簡易常圧蒸留装置の原油貯蔵タンク付近で爆発が発生し、火災になった事例を紹介します。

< 発災施設の概要 >

■ 発災があったのは、スペイン(Spain)ムルシア州(Murcia)カルタヘナ(Cartagena)にあるレプソル社(Repsol)のカルタヘナ製油所である。製油所の精製能力は22万バレル/日であるが、2023年に再生可能燃料の大規模製造装置を稼働させた。

■ 事故があったのは、製油所内の古い簡易常圧蒸留装置の原油貯蔵タンク付近とみられる。

<事故の状況および影響>

事故の発生

■ 2026126日(月)午後6時頃、カルタヘナ製油所で原油貯蔵タンク付近で爆発が起こり、火災が発生した。現場にいた目撃者によると、 事故発生時に3回の爆発音が聞こえたという。

■ 現場から巨大な黒煙が立ち昇り、カルタヘナ住民が衝撃を受けるほどだった。黒煙を見て数十件を超す緊急通報が寄せられた。

■ 事故は製油所内の最も古いセクションの一つであるトッピング3ユニットと呼ばれる簡易常圧蒸留装置で発生した。火災現場が発生した地区は主要な生産プラントとは離れており、火災が広がる危険性は少ないとみられた。

■ 最初の爆発から火炎・濃い黒煙の組み合わせは、近隣の住民に不安を引き起こした。火災による黒煙について、当局は、重炭化水素の不完全燃焼から生じる潜在的に有毒な雲と表現した。このため、地方政府は、工場敷地外の住民に影響を及ぼす可能性のある産業事故の対応として、同地域の化学部門を対象とした外部緊急時対応計画を発動することとした。

■ カルタヘナ製油所は発災後、直ちに社内緊急時対応計画を発動し、自衛消防隊で火災を制御可能であり、負傷者の報告はなく、火災が製油所構外に広がる危険性はないと騙った。

■ カタルヘナ製油所の自衛消防隊は、この種の火災の対応基準どおりに対応をとった。炭化水素の供給を遮断し、すでに放出された燃料を制御された方法で消費させ、隣接する領域を冷却して、他の機器やタンクへの延焼を防止した。

■ 当局は、カルタヘナ市の消防隊と地元警察を現場に派遣した。製油所内の自衛消防隊の活動と並行して、カルタヘナ市消防局の消防隊と地元警察とによる予防的配置が製油所の所外に設置され、必要に応じて介入できるようにした。市当局によると、最初の数時間は主に監視と支援が彼らの役割だった。

■ 州政府は、民間防衛警報システム(ES-Alert) を通じて近隣のアルンブレス、エスコンブレラス、ポルトマンを含めた住民に対して屋内に留まり、ドアと窓を閉めるよう指示し、車を運転中の人には周辺地域を避けるよう指示した。また、健康に害を及ぼす可能性のある煙が漂っていることについて明確に警告した。  

■ カルタヘナ市長は、技術者と警備員を伴って、事故発生時に製油所を訪れ、工場関係者と面会し、状況を聞いた。

■ レプソル社のカルタヘナ製油所はプレスリリースで、「本日午後550分、カルタヘナ工業団地の3号機上部で火災が発生しました」と発表し、「新たな情報が入り次第、引き続き最新情報を提供していきます」と付け加えた。 

 市議会は、住民に対し警戒を怠らないよう呼びかけ、「直ちに危険はありませんが、念のため屋内に留まり、ドアと窓を閉めてください」というメッセージを出した。

■ 事故にともなう死傷者はいなかった。

■ 主要なアクセス道路は通行規制が行われた。

■ 爆発は、簡易常圧蒸留装置に付帯する原油貯蔵タンクで発生したとみられる。または、原油をディーゼル燃料に加工する簡易常圧蒸留装置の設備かもしれないという。

■ 地方政府とカルタヘナ市議会は、住民は市政ポータルなどの公式ソーシャル・メディア・アカウントといった公式のチャンネルを通じてのみ情報を入手すべきだと主張した。同時に、カルタヘナ市議会の市民保護局職員が動員され、現場の住民との直接的なコミュニケーションを強化した。

 また、屋内に留まり通気口を閉じるというES-Alertのメッセージによる勧告は午後9時まで有効だったが、市議会は現場に最も近い地域では、夜間もこれらの予防措置を維持するよう求めた。

 ■ ユーチューブなどでは、火災のニュースを伝える動画が投稿されている。

 Youtube ÚLTIMA HORA | Se incendia una refinería de Repsol en Cartagena y piden evitar desplazamientos2026/01/27

 ●Facebook Un incendio en las instalaciones de Repsol en Cartagena (Murcia), ha provocado una gran columna de humo negro, visible desde varios puntos Protección Civil ha emitido ES-Alert para pedir a la población cercana que 2026/01/27

被 害

■ 爆発・火災で簡易常圧蒸留装置に付帯する原油貯蔵タンクまたは装置内の設備が損壊した。

■ 住民に対して屋内に留まり、ドアと窓を閉めるよう避難指示が出された。

■ 道路の通行規制が出された。

< 事故の原因 >

■ 爆発・火災の原因は調査中である。爆発・火災の発生場所は、簡易常圧蒸留装置に付帯する原油貯蔵タンクまたは原油をディーゼル燃料に加工する簡易常圧蒸留装置の設備で発災したとみられる。

< 対 応 >

■ 火災は午後9時頃までに制圧されたと報じられた。一方、消防署の職員によると、午後9時頃、自衛消防隊は火を封じ込めたものの消し止めることはできず、さらに火災現場を冷却する作業を行っていたという。

■ 通行規制が出されていた幹線道路は、午後9時以降に煙が収まると、規制が解除された。

■ カタルヘナ製油所は、当局に対し、火災は235分から2326分頃に完全に鎮火したと報告した。

■ 地元の消防隊、警察、民間防衛隊が現場に待機していたが、再燃や延焼の恐れがなくなったことが確認され、対応に介入する必要はなかった。このため、午後1130分までに全隊が基地に戻った。

■ 製油所の火災は鎮圧されたが、煙が町にまで達する恐れがあるため、予防措置として近くの住民には、引続き、外出禁止令が出された。

■ 爆発・火災の原因は調査中である。レプソル社は、事故の正確な原因を明らかにし、原油貯蔵または処理エリアでの最初の爆発の正確な発生源を特定し、すべての安全システムと検知システムの運用を再検討するため、社内調査を開始したと発表した。

■ 火災の鎮火後、安全状況が確認され、カタルヘナ製油所の操業は通常の状態に戻った。

■ 一方、エコロジスト・イン・アクションなどの環境保護団体は、地方行政とカルタヘナ市議会に徹底的な調査と情報ファイルの公開を求めた。これにより、特に空気質による近隣住民の健康への影響に関して、潜在的な責任の決定と事故の実際の影響の評価が可能になる。

 エコロジスト・イン・アクションは、このような出来事は、汚染物質の排出に対する国民による規制強化の必要性を浮き彫りにし、通常の操業状況と事故発生時の両方において、石油化学やエネルギー施設に関連するリスクについて国民に透明性のある情報を提供する必要があると主張している。

■ カタルヘナ製油所火災では負傷者は出ず、数時間で鎮火したが、この事故により、産業安全と地元地域の住民保護に関する議論が再び注目を集めている。また、効果的な緊急時対応計画、ES-Alertなどの迅速警報システム、大規模な炭化水素処理施設に伴う環境・健康への潜在的な影響の厳格な監視の重要性も浮き彫りになった。

補 足

■「スペイン」(Spain)は、欧州のイベリア半島に位置し、人口約4,859万人の議会君主制国家である。首都はマドリード(人口約325万人)である。

「ムルシア州」(Murcia)は、スペインの南東部に位置し、人口約142万人の自治州で、州都はカルタヘナである。

「カルタヘナ」(Cartagena)は、ムルシア州の南部にあり、地中海に面し、人口約21万人の港湾都市である。

■「レプソル社」Repsolは、総合石油・ガス会社である。主な事業は、油井の探査、開発、原油の生産・精製、LPガスやCNG(圧縮天然ガス)の販売、炭化水素の取引、その他の特殊製品の製造である。レプソル社は、北米、アフリカ、欧州、ラテンアメリカ、アジア、オセアニアの卸売、小売、産業顧客に製品を提供しており、スペインのマドリードに本社を置いている。スペインとペルーで製油所を運営している。

 カルタヘナ製油所は1950年に操業を開始し、精製能力は22万バレル/日で、カルタヘナのエスコンブレラス港から原油を受け入れている。一方、 2023年に再生可能燃料の大規模製造装置を稼働させ、国内産や欧州産の使用済み食用油などの有機廃棄物 30 万トンから高付加価値製品に変換し、年間 25 万トンの燃料を生産する能力を備えている。

■「発災場所」ははっきりしない。爆発・火災の発生場所は、簡易常圧蒸留装置に付帯する原油貯蔵タンクまたは原油をディーゼル燃料に加工する簡易常圧蒸留装置の設備で発災したとみられる。原油貯蔵タンクとすれば、貯油エリアの大型貯蔵タンクではなく、簡易常圧蒸留装置に付帯し、圧力変動を緩和・安定させるために使用される小型のタンク(容器)ではないかと思われる。グーグルマップで調べても、情報が少なすぎて、場所を特定できなかった。

所 感

■ 事故原因はわからず、調査中である。爆発・火災の発生場所は、簡易常圧蒸留装置に付帯する原油貯蔵タンクまたは原油をディーゼル燃料に加工する簡易常圧蒸留装置の設備で発災したとみられている。

 一般にプロセス装置の火災は、燃焼源の供給を停止すれば、大きな火災にはならない。しかし、被災写真を見ると、火炎は大きく、発災時間は3時間(午後6時~9時)を超す火災になっているので、貯蔵タンクまたは圧力容器の火災ではないかと思う。貯油エリアの大型貯蔵タンクからの供給原油を停止しても、発災タンク(容器)から流出する原油が燃焼して比較的長い火災になったのではないだろうか。爆発は原油タンク内に爆発混合気が形成し、静電気などの引火源によって発災したものだろう。または、設備の不具合で原油が流出して何らかの引火源によって爆発したのではないだろうか。

■ 製油所内の自衛消防隊による消火活動の状況はあまり報じられておらず、はっきりとはわからない。「火災は午後9時頃までに制圧されたと報じられた一方、消防署の職員によると、午後9時頃、自衛消防隊は火を封じ込めたものの消し止めることはできず、さらに火災現場を冷却する作業を行っていたという」というので、消火戦略は、積極的戦略をとらず、防御的戦略で冷却を主にしたのではないか。火災はほとんど燃料が燃え尽きる状態で消えたものだったと思われる。もともと発災は爆発で始まり、事故発生時に3回の爆発音が聞こえたというので、発災現場は爆発の危険性のある火災であり、消防士の安全を考慮した防御的戦略をとるのが適切だったと思う。


備 考

 本情報はつぎのインターネット情報に基づいてまとめたものである。

     Murcia.empresas.de, Una explosión en un tanque de crudo provoca un incendio en la refinería de Escombreras,  January  26,  2026

    Murciatoday.com, Fire breaks out at Escombreras refinery, now fully extinguished,  January  26,  2026

 ・Euroweeklynews.com, Repsol fire sends massive plume of smoke over Cartagena and nearby towns,  January  27,  2026

    Joiff.com, SPAIN – Fire at Escombreras refinery brought under control with no injuries,  January  28,  2026

    En.meteorologiaenred.com, Everything we know about the fire at Repsol's Cartagena refinery,  January  28,  2026

    Elinconformista.com, Extinguen un incendio en la refinería de Repsol en Cartagena,  January  27,  2026

    La7tv.es, Repsol abre una investigación para esclarecer el origen del incendio en Escombreras,  January  27,  2026

    Cope.es, Un incendio en la refinería de Repsol en Cartagena provoca una gran columna de humo y Protección civil manda una alerta a los móviles de los ciudadanos de la zona,  January  26,  2026

    20minutos.es, Extinguido el incendio en la refinería de Repsol en Cartagena, que obligó a enviar un mensaje Es-alert a la población,  January  27,  2026

    Murcia.empresas.de, Una explosión en un tanque de crudo provoca un incendio en la refinería de Escombreras,  January  26,  2026

    Cadenaser.com, Extinguido el incendio en la factoría de Repsol en Cartagena que supuso enviar un ES-ALERT a la población cercana a Escombreras,  January  26,  2026


後 記: 今回の事例は煙による人体への影響が懸念される可能性があるというアラームが出されたので、報道は住民の避難指示に関することが中心になりました。このためか、事業者への気遣いもあり(?)、大きな事故でありながら、なぜ起こったのかという事故原因への深堀が浅いように感じました。「スペインのバルセロナの貯蔵施設で酢酸メチルタンクが爆発・火災、死傷者5名」20251月)の事例で感じていたことと同様です。ただ、今回はドローンによる映像はありませんでしたが、発災現場に比較的近いところから撮った写真(標題の写真)があったのは救いです。と言っても、何が火災になっているのかは判別できませんが。

2026年2月15日日曜日

ロシアで対ドローン防御設備を施した貯蔵タンクが攻撃で被災

 今回は、20251231日(水)、ロシアのヤロスラヴリ州ルイビンスク市にあるテンプ石油貯蔵所の貯蔵タンクがウクライナの無人航空機(ドローン)の攻撃によって被災した事例を紹介します。被災した貯蔵タンクは無人航空機(ドローン)の防御設備を有していました。

< 発災施設の概要 >

■ 被害があったのは、ロシア(Russia)ヤロスラヴリ州(Yaroslavl)のルイビンスク市(Rybinsk)にあるロシア連邦国家準備金庁 (Rosrezerv) に従属するテンプ石油貯蔵所である。ルイビンスクはロシア軍の主要な物流・輸送拠点であり、石油貯蔵所はロシア北東部全域にわたる石油製品の貯蔵と配送の重要な拠点となっている。

■ 発災があったのは、テンプ石油貯蔵所内にある無人航空機(ドローン)の防御設備を有した燃料用の貯蔵タンクである。

< 事故の状況および影響 >

事故の発生

■ 20251231日(水)早朝 、テンプ石油貯蔵所の貯蔵タンクがウクライナの無人航空機(ドローン)の攻撃によって火災が発生した。

■ 火災は大規模で数km先の遠いところでも見えた。地元住民によると、ルイビンスクでは空襲警報が発令された後、爆発音が鳴り響き、続いて火災が発生したという。

■ 被害のあったのは石油貯蔵所の南西地区で、2基の大型貯蔵タンクが損傷した可能性があるという。

■ これらのタンクは金属製のフレームとグリッド(メッシュ)で囲まれ、タンクから離れた場所で無人航空機(ドローン)を起爆させるよう設計された防御設備を有していた。この防御設備は前線の戦車(装甲車両)に装備されたものから派生したものである。

 石油貯蔵所の西側のタンクには、新しい防御設備によって防護されているのが20256月時点の衛星画像によって確認されていた。 1231日(水)に損傷したのはこの防護されたタンクだった。攻撃の標的は、ロシアが2024年から追加した防御設備で防護しようとしていた石油タンクだったとみられる。

被 害

■ 対ドローン防御設備を有していた貯蔵タンクが無人航空機(ドローン)の攻撃で火災となり、損傷した。

< 事故の原因 >

■ 原因は、テロによる“故意の過失”でなく、戦争時の無人航空機(ドローン)による攻撃である。 

< 対 応 >

■ 石油貯蔵所の火災は11日(木)には鎮火した

■ 202615日(月)、ドローン攻撃を受けたテンプ石油貯蔵所の衛星画像が公開され、大型燃料タンク1基が火災により全焼したという。火災が拡大したため、隣接する複数のタンクが大きな被害を受けた可能性がある。

■ ウクライナは数か月にわたり、ロシアの製油所や燃料貯蔵所を正当な軍事目標と称し、組織的に攻撃を続けている。これらの施設では、軽油やガソリンなどの石油がロシア軍への供給に利用されるか、海外に売却され、その収益はロシアの対ウクライナ戦争遂行の維持に役立てられているという。

補 足

■「ルイビンスク」は、ヴォルガ川流域に位置し、鉄道が通っており、交通と物流の中心地として機能している。

■「テンプ」(Tempo)は、ロシアの連邦国家予算機関でロシア連邦国家準備金庁 (Rosrezerv) に従属する国営機関である。この機関の主な機能は、緊急事態や動員の必要が生じた場合に備えて、国家備蓄品(物質的資産)を戦略的に保管・蓄積することである。テンプのプラントは、ロシアの国家備蓄システムであるロスレゼルブの一部であり、燃料貯蔵に使用されている。

■「対ドローン防御設備」は、戦車などの装甲車両から離れた場所でドローンを起爆させるために設計された金属フレームとメッシュ構造である。

一般にはコープ・ケージ(Cope Cage)やマンガル(Mangal)」と呼ばれる。ロシアのウクライナ進行の際に広く採用され、無人航空機(ドローン)の爆発物や投下された弾薬が戦車などの上部装甲に直接接触する前に起爆するよう設計されている。

 当初は、強力な対戦車ミサイルに対しては効果が薄いとされていたが、現代のドローン戦においては一定の効果があるとして、現在では米国や韓国など世界各国の戦車で採用や技術が進んでいるという。設計は単純な溶接鉄筋グリッドから高度な多層金属シートへと進化し、ドローン制御信号を無効にする電子戦 (EW) 妨害装置と組み合わせられることが多くなっている。

 ロシアがウクライナとの戦争で対ドローン防御の先駆者であったが、ウクライナ軍も自国の車両に対ドローン防御設備を模倣し始めている。

■ 戦車の 「対ドローン防御設備」は、同様の対策が製油所や石油貯蔵所でも講じられている。モスクワ近郊の製油所や石油貯蔵所では、インフラストラクチャー施設の広範囲を覆う金属ケーブルによる防御措置が実施されている。この設計は、直径8mmの金属ケーブルをかなりの高さに固定し、ケーブル同士の間隔を60cmにしてネットワーク状に敷設するという。標題の貯蔵タンクの対ドローン防御設備は戦車と同様、金属フレームとメッシュ構造で構成されている。

■「被災タンク」の大きさなどの仕様は報じられていない。グーグルマップで調べると、被災タンクの直径は約22.5mであり、高さを1520mとすれば、容量は6,0008,000KL級の貯蔵タンクである。油種は分からない。 

所 感

■ 貯蔵タンクの対ドローン防御設備が無人航空機(ドローン)の攻撃で突破され、タンクが火災になった事例である。もともと戦車の対ドローン防御として使用されていたものを貯蔵タンクに応用したものとみられる。ロシアーウクライナの戦争においてミサイルに変わって無人航空機(ドローン)による燃料タンク攻撃が主流になってきたことから、ロシアで開発されたものである。

「ロシア連邦タタールスタン共和国の石油タンクが長距離攻撃用無人機で被災」20251月)では、所感の中で「このような状況にあり、日本の貯蔵タンクを運営する一(いち)事業者にとっては、テロ対策をとろうにも限界を越えている。公的機関による無人航空機(ドローン)によるテロ対策を考えていく必要がある」と書いた。ロシアは、戦争遂行上、戦車の対ドローン防御方法を応用したのだろう。

 標題の画像の貯蔵タンクへの対ドローン防御の実施策を見ると、既設タンク群への対応はコストの高いものになっている。しかし、新しいタンク建設時に考慮すれば、コストは下がるだろう。しかし、一番の欠点はタンク火災時の消火活動に支障があることだと思われるが、今回の事例では、消火活動について一切報じられていない。(戦争事なので、報道されないだろうが)


備 考

  本情報はつぎのインターネット情報に基づいてまとめたものである。

   Uv.ua, Спутниковые снимки подтвердили значительные разрушения «защищенной» части нефтебазы в Ярославской области РФ,  January  01,  2026

   English.nv.ua, SBU strikes major Rosrezerv oil depot in Russia’s Yaroslavl Oblast with long-range drones,  January  01,  2026

  English.nv.ua, Satellite Images Show Damage From Strike on Oil Depot in Yaroslavl Region on December 31,  January  06,  2026

  Pravda.com.ua, Ukraine's Security Service hits oil storage facility in Russia's Yaroslavl Oblast – Ukrainska Pravda sources,  January  01,  2026

  Ukrinform.net, SBU hits major oil depot in Russia's Yaroslavl region – SBU,  December  31,  2025

   Uawire.org, Ukrainian drones strike Russia’s Rosrezerv fuel depot in Yaroslavl region, sparking major fire,  December  31,  2025

  Babel.ua, SBU drones attacked a large oil depot in the Yaroslavl region of the Russian Federation,  December  31,  2025

  Militarnyi.com, Satellite Images Show Damage From Strike on Oil Depot in Yaroslavl Region on December 31 ,  January  07,  2026

  Dw.com, ВСУ: Украинские беспилотники атаковали нефтебазу Росрезерва,  December  31,  2025

  Pravda.com.ua, Нефтебазу в Ярославской области поразили дроны СБУ – источник,  December  31,  2025

   24tv.ua, “Защищенная” часть нефтебазы в Ярославской области России значительно разрушена: спутниковые снимки ,  January  01,  2026


後 記: 1年ぶりにロシアーウクライナ戦争によるタンク事例をブログに取り上げました。2022年の「ウクライナ各地で石油貯蔵所が攻撃によってタンク火災」を報じて以来、両国のタンク事例をときおりに取り上げ、ブログで紹介してきましたが、この12年でドローン戦争はますます激化し、貯蔵タンクなどのインフラストラクチャーの対ドローン防御設備が実施されていることにびっくりします。戦争は技術を進歩させるというのを感じますが、人が疲弊し、国を荒廃する見返りとしての技術進歩ってありえないでしょう。

2026年2月9日月曜日

米国ノースダコタ州で石油販売会社の燃料タンクが爆発、タンク屋根が噴き飛ぶ

 今回は、2026110日(土)、米国ノースダコタ州マンダンにある石油販売会社のグレイ・オイル社の施設で燃料タンクが爆発し、タンク屋根が噴き飛んだ事故を紹介します。

< 発災施設の概要 >

■ 事故があったのは、米国ノースダコタ州(North Dakota)モートン郡(Morton)マンダン(Mandan)にある石油販売会社のグレイ・オイル社(Gray Oil)の施設である。

■ 発災があったのは、マンダンのSE40番街2110番地にあるグレイ・オイル社の施設内にある燃料タンクである。

< 事故の状況および影響 >

事故の発生

■ 2026110日(土)午前9時頃、グレイ・オイル社の施設で燃料タンクが爆発した。

■ マンダンと周辺地域では大きな爆発音が聞こえ、人々の神経を揺さぶった。

■ 発災にともない、マンダン消防署が出動した。

■ 消防隊が現場に到着すると、9基あるタンクの中で、発災したのは1基に限定されていた。しかし、この事故により近隣の建物6棟に窓が割れるなど被害が出た。

■ 爆発でタンク屋根部がグレイ・オイル社の敷地外の道路を越えて約340フィート(104m)噴き飛び、駐車場に落下していた。

■ 当局によると、現場では医療関係者が数人を診察したが、この事故による負傷者はいなかったという。

■ 事故の原因は不明であり、調査が行われた。マンダン警察は、マンダン消防署が捜査を主導することを確認した。

■ ユーチューブやフェイスブックでは、事故の状況を伝える動画が投稿されている。 特に3番目のフェイスブックの動画は監視カメラで爆発の瞬間をとらえたものである。  

 Youtube Fuel tank explosion this morning in Mandan2026/01/11

 ●Facebook Explosion in Mandan2026/01/11

 ●Facebook FOR IMMEDIATE RELEASE: Gray Oil Explosion Incident   2026/01/21




被 害

■ 燃料タンク1基が損壊した。内部にあった燃料の残油が焼失した。

■ 近隣の建物6棟に窓ガラスが割れるなどの被害があった。

■ 死傷者はいなかった。

< 事故の原因 >

■ 爆発の原因は、タンク付近で火気使用の作業を行っており、タンクまわりでの火気管理のミスである。

< 対 応 >

■ マンダン消防署長は、「市内でこのような事態が発生するのは稀です。しかし、被害や人命の損失に関しては、他の状況と変わりません」と述べた。

  120日(火)、マンダン消防署は、グレイ・オイル施設で発生した燃料タンク爆発の調査を完了した。調査中に得られた情報にもとづき、この事故は偶発的なものであり、9基のタンクからなるシステム内の1基のタンク付近で火気使用作業中に発生したと判断された。タンクでの作業は事故発生前の1週間ずっと継続されていたという。この事故により、6棟の建物が損害を受けた。燃料タンクの屋根は、事故発生時、元の位置から約340フィート(約104m)離れた駐車場に噴き飛んだ。 

 マンダン消防署は調査結果を文書化し、施設事業者(グレイ・オイル社)と認識を共有した。今後の補修、是正措置、運用の改善については、施設事業所と関係当局が対応するという。

補 足

■「ノースダコタ州」(North Dakota)は、米国の北部に位置し、カナダに接する州で、人口約79万人である。州都はビスマルク市である。ノースダコタ州はシェールオイルの生産による石油ブームが続いており、石油生産量はテキサス州につぐ全米第2位になっている。

「モートン郡」(Morton)は、ノースダコタ州の南部に位置し、人口約34,000人の郡である。

「マンダン」(Mandan)は、モートン郡の東境に位置し、人口約24,000人の都市である。

■「グレイ・オイル社」(Gray Oil)は、1920年代に設立された家族経営的な石油販売会社である。ノースダコタ州マンダンに本社があり、農業生産者・住宅所有者・企業にディーゼル、ガソリン、プロパン、灯油、燃料添加剤、潤滑油を供給している。

■「発災タンク」の大きさや油種などの仕様は報じられていない。グーグルマップで調べると、直径は約3.6mである。高さを68mとすれば、容量は6080KL級の円筒タンクである。

 爆発の瞬間を写した監視カメラの動画によると、作業員の姿が無く、タンクに光が見えたのち、タンク屋根が噴き飛んでいる。このことは、タンク屋根のベント配管が臭気対策などでタンク側板下部まで立下っていて、この末端から可燃性ガスが漏出し、火気作業の何らかの引火源によって火が付き、配管を通じてタンク内の爆発混合気が爆発を生じたのではないだろうか。グレイ・オイル社が取扱っている石油の中で爆発を起こしやすい油種はガソリンとプロパンであるが、円筒タンクに貯蔵していたことから油種はガソリンだと思われる。

所 感

■ 爆発の原因は、タンク付近で火気使用の作業を行っており、タンクまわりでの火気管理のミスである。人身事故は無かったが、米国CSB(化学物質安全性委員会)がまとめた「タンク内外の火気工事における人身事故を防ぐ7つの教訓」20117月)のつぎの項目のいずれかが欠けていたと思われる。

  ①代替方法の採用、 危険度の分析、   作業環境のモニタリング、

  ④作業エリアのテスト、⑤着工許可の発行、⑥徹底した訓練、⑦請負者への監督

■ 爆発後の火災は、監視カメラの動画によると、軽微ですぐに薄い煙に変わっている。このことから、タンク内の燃料は残油程度で多くなかったと思われる。発災現場の向かい側が消防署であるが、消火活動を行った形跡は無い。爆発直後に作業員らしい人影がタンクのそばを慌てる様子もなく、ゆっくり歩いているので、緊迫した状況ではなかったと思われる。


備 考

 本情報はつぎのインターネット情報に基づいてまとめたものである。

   Kxnet.com, Oil tank explosion in Mandan,  January 10, 2026

   Kfyrtv.com, Mandan oil tank explosion still under investigation,  January 13, 2026

   Cityofmandan.com, MFD Completes Fuel Tank Explosion Investigation,  January 20, 2026

   Us1033.com, An Explosion Just Shook Bismark, Mandan Lincoln,  January 10, 2026 


 後 記: 今回の事例では、監視カメラによる映像が投稿されていて状況の理解度が増しました。監視カメラがどこに設置されているのか気になってグーグルマップを調べてみました。すると、現場のすぐ前に消防署があり、その建物にある監視カメラだということが分かりました。

 それにしても、110日の事故に対して120日にマンダン消防署は調査結果を文書化し、施設事業者(グレイ・オイル社)と認識を共有し、今後の補修、是正措置、運用の改善については、施設事業所と関係当局が対応するということです。事故を今後に活かすという点において今回のノースダコタ州の事例は速い対応で、他の州や国も見習って速い公表をしてもらいたいものです。 

 

2026年2月2日月曜日

豪州のケミカル・リサイクル関連施設で爆発、化学薬品タンク吹き飛ぶ

 今回は、20251129日(土)、豪州シドニーにある環境廃棄物リサイクル会社のクーパーズ・エンバイロメンタル・ウェイスト・リサイクリング社のケミカル・リサイクル関連施設が火災・爆発した事例を紹介します。爆発時、消防隊が消火活動を行っており、爆発によって大きな化学薬品タンクが空中に吹き飛ばされ、こぶし大のレンガやコンクリート片が消防隊員数十人の上に降り注ぎましたが、奇跡的に死傷者は出ませんでした。

< 発災施設の概要 >

■ 発災があったのは、豪州(Australia)シドニー(Sydney)のノース・セント・メアリーズ(North St Marys)にある環境廃棄物リサイクル会社のクーパーズ・エンバイロメンタル・ウェイスト・リサイクリング社(Coopers Environmental Waste Recycling Pty Ltd)のケミカル・リサイクル関連施設である。

■ 事故があったのは、クラジョン通り沿いにあるケミカル・リサイクル施設の保管設備である。施設には、ポリ塩化ビフェニル(PCB)を含む危険な化学物質を保管しており、ニューサウスウェールズ州環境保護局(EPA)の認可を受けている。

<事故の状況および影響>

事故の発生

■ 20251129日(土)午後11時頃、ケミカル・リサイクル関連施設で火災が発生した。

■ 発災にともない、ニューサウスウェールズ州消防隊(FRNSW)が出動した。

■ 消防隊の初期対応にもかかわらず、火は急速に広がった。

■ 火災が続く中、突如、施設が爆発し、猛烈な熱とともに巨大ファイアボールが敷地上空150mまで上がった。爆発によって大きな化学薬品タンクが空中に吹き飛ばされ、こぶし大のレンガやコンクリート片が消防隊員数十人の上に降り注いだ。

■ 事故にともない消防士2名が手に軽傷を負った。その他の負傷者は報告されていない。

■ 爆発は激しいもので、消防士らはこれほど大規模な爆発火災は見たことがないと語った。火災は大規模な爆発のほか複数回の爆発を伴った。

■ 隣接する建物の壁が火災で吹き飛ばされ、消防隊は隣の建物内から消火活動を行い、炎が広がらないよう努めた。

■ 消防隊員は火災エリアの四方から炎と戦い、シドニーで長年に渡って発生した最大級の火災の一つの制圧にあたった。火災は、いろいろな化学物質が燃料になっているとみられた。

■ 当局は化学センサーを搭載したドローンを用いて炎や煙の監視を行った。ニューサウスウェールズ州環境保護局(EPA)は、有毒物質の流出や大気汚染物質が周辺の土地や水路に影響を与える可能性について調査を行った。

■ シドニー大都市圏全域から集まった50以上の消防隊が現場に派遣され、出動した消防士は200名以上にのぼり、上空から炎と戦うための屈折はしご付き消防車5台を出動させ、消防車をリレー方式で放水して制圧にあたった。ハズマット隊(HAZMAT)も現場に出動し、火災で発生した化学物質の処理にあたった。

■ 環境保護局(EPA) 、警察、ニューサウスウェールズ州救急隊も現場に出動した。

■ 火災現場から200mの立入り禁止区域が設定され、車両は当該地域を避けるよう呼びかけられた。

火災現場から500m以内に住む住民は、有害な煙を避けるため、屋内に留まり、ドアや窓を閉めておくよう求められた。

■ 火災の原因は不明だが、火災は翌日の日曜中ずっと続くと予想された。

■ 1130日(日)の午後遅くに建物は火災で全壊した。隣接する建物の壁は吹き飛ばされた状態だったが、消防隊は内部を何とか救った。火はまだくすぶっており、黒い煙がもくもくと噴き出していた。

■ ユーチューブやフェイスブックでは、爆発・火災を伝える動画が投稿されている。 

   ●YoutubeMassive blaze engulfs waste facility in Western Sydney | ABC NEWS2025/11/30

   ●YoutubeWestern Sydney factory fire fuelled by toxic chemicals | 7NEWS2025/11/30

   ●FacebookCCTV Captures Moment Flaming Tank Smashes Triggering Major Factory Fire In Sydney | 10 News2025/12/02

被 害

■ ケミカル・リサイクル関連施設の建物や内部の設備が損壊した。設備の中の燃焼物が焼失した。

■ 火災現場から200mの立入り禁止区域が設定され、車両は通行閉鎖された。

■ 火災現場から500m以内に住む住民は屋内に留まり、ドアや窓を閉めておくよう要請された。

< 事故の原因 >

■ 火災・爆発の原因はわかっていない。

< 対 応 >

■ 州環境保護局(EPA)は、現場で有害物質が発見されたことを確認し、地域住民に近づかないよう呼びかけた。

■ 消防隊員は、火が完全に鎮火するまでには数日かかるだろうと語っている。

■ 激しい爆発を目の前にして、消防隊員が無事でいられたという事実は奇跡的である。消防隊は優れた消火活動により隊員の安全が確保され、優れた消防判断と専門知識を活用した指揮官によって実現したと評価されている。

 消防関係者は、「貯蔵タンクが弾丸のように飛び出し、約200m飛んで線路のすぐ手前まで落下した」と述べ、「使用していた屈折はしご付き消防車のプラットフォームの一つは爆発の10分前に位置を変え、3040mほど後方に移動した。そのおかげで消防隊員は間違いなく最悪の事態を免れ、爆発の衝撃に耐え、安全を保つことができた」と語っている。

■ ハズマット隊(Hazmat)は現場に残り、火災で発生した化学物質の処理にあたった。 

■ 火災の原因究明のため、火災調査官、ニューサウスウェールズ州警察、州環境保護局(EPA)による調査が開始された。「今日から数日かけて、火災がどのように始まったのかを評価する予定だ」といい、「それはできないかもしれないが、入手可能な証拠や情報を確認し、火災調査官や警察の調査と合わせてすべてをつなぎ合わせて、原因を究明する」と語った。

■ 2025122日(火)、州環境保護局(EPA)はクーパーズ・エンバイロメンタル社に対して最初の浄化通知を発行し、同社は敷地内からの汚染物質の移動を防止し、影響を受けた地域から油を回収するよう求めた。委託を受けた清掃業者はサウスクリーク/ウィアナマッタ川と近くの支流からタンクローリー120台分、計84万リットルの油と油に汚染された水を回収した。清掃作業員は油除去のために油回収機、オイルフェンス、バキューム車などを使用した。

■ 州環境保護局(EPA)は、近隣の小川の水質モニタリング、土壌、塵埃、灰のサンプリングなど、この地域で包括的なサンプリングを実施した。この作業には、ポリ塩化ビフェニル(PCB)の検査も含まれている。

現場に残った廃棄物や油の残留物にはPCBが含まれており、直接接触すると危害を及ぼす可能性がある。PCBは、変圧器の冷却剤として歴史的に使用されてきた有害な化学物質であり、1980年代以降禁止されており、古い電気機器からは段階的に廃止されている。

■ 州環境保護局(EPA) は、引き続き清掃作業を厳重に監視しており、クーパーズ・エンバイロメンタル社に対して2度目の清掃通知を発行し、周辺地域で進行中の汚染に対処するための追加措置を同社に要求した。

■ 州環境保護局(EPA) は住民に対して、清掃作業が行われている間、施設に隣接するクラジョン通りにある名前の無い小川、キングスウェイ・ラグビー場とダンヘヴェド・ゴルフコースの間にあるサウスクリークとの接触を避けるよう呼びかけた。

補 足

■「豪州(オーストラリア)」(Australia)は、正式にはオーストラリア連邦で、オーストラリア大陸本土、タスマニア島、多数の小島からなり、世界で最も平坦で乾燥した有人大陸で人口約2,780万人の国である。

「シドニー(Sydney)」は、豪州の東海岸に位置し、ニューサウスウェールズ州の州都で人口約555万人のある。

「ノース・セント・メアリーズ」(North St Marys)は、シドニー西部の郊外のある地区で、人口約4,100人の町である。

■「クーパーズ・エンバイロメンタル・ウェイスト・リサイクリング社」(Coopers Environmental Waste Recycling Pty Ltd)は、1997年に設立された豪州の環境廃棄物リサイクル会社で、廃棄物の回収と処分が含まれる。クーパーズ・エンバイロメンタル社は、 PCB(ポリ塩化ビフェニル) 、六フッ化硫黄(SF6)、変圧器油を専門とし、幅広い資源回収、プラントの除染、危険物輸送業務を提供している。また、シドニー大都市圏における環境緊急事態に対応するため、24時間体制の緊急対応サービスを提供しており、廃棄物管理において企業が迅速かつ効率的に対応できるよう緊急対応サービスを行っているという。

■「PCB(ポリ塩化ビフェニル)」は無色透明な油状で不燃性、電気絶縁性、耐熱性に優れ、難分解性(環境中で分解されにくい)の特性があり、変圧器やコンデンサ等の絶縁油として広く使用されていた。しかし、日本でも、強力な毒性と環境残留性が判明し、1972年以降製造・使用が禁止されている。 20015月、PCB2028年までに全廃することを含む国際条約であるPOPs条約(残留性有機汚染物質に関するストックホルム条約)が調印された。  

所 感

■ 事故原因は不明である。原因だけでなく、何が保管され、何が火災になり、何が爆発したのかという事故の要因状況も分かっていない。発災事業所は環境廃棄物リサイクル会社で廃棄物の回収と処分が含まれるという。しかし、主に取り扱っているPCB(ポリ塩化ビフェニル) 、六フッ化硫黄(SF6)、変圧器油は爆発性や可燃性でなく、最初の火災は保管していた別な可燃性の油やケミカルと思われる。

 本来、保管対象でない可燃性の油やケミカルが容器や配管から漏れ出し、何らかの引火源によって火災になったとしか考えられない。さらに、爆発性の液体の入った容器が火災の炎にさらされ、容器の機能を失い、爆発に至ったのではないだろうか。

■ 消火戦略には積極的戦略・防御的戦略・不介入戦略の3つがあるが、初めから積極的戦略で消火を試みていると思われる。報道では、「激しい爆発を目の前にして、消防隊員が無事でいられたという事実は奇跡的だった。消防隊は優れた消火活動により隊員の安全が確保され、優れた消防判断と専門知識を活用した指揮官によって実現したと評価されている」と報じられているが、この評価には疑問がある。

 この火災対応をみて思い出すのは2012年に起こった消防士1名の死亡を含め37名の死傷者を出した「日本触媒でアクリル酸タンクが爆発・火災、死傷者37人」の消火活動の対応である。当時のブログの中では、「消防局の消防車が放水を予定していた場所が約20m近すぎたのではないかという疑問視する声があり、消防局主幹は危険な場所からは距離を開けるべきという考えは当然あるが、1015mだった自衛防災隊の消防車とタンクの距離が目安になったはずと説明した。その上で、化学物質が燃えるような特殊な事情の場合、事業所側(の情報)に頼らざるを得ない” と述べ、情報の提供が不十分だったとの認識を示した」という。

 今回の事例でも、消防隊は爆発のリスクを想定していなかったように思う。事業者側(クーパーズ・エンバイロメンタル社)からの情報提供が不十分で、消防隊の“善意の行動”があやうく死傷者を出す危険性のあった事例だった気がする。


備 考

 本情報はつぎのインターネット情報に基づいてまとめたものである。

     Bbc.com, Watch: Moment huge fireball destroys Sydney waste facility,  November  30,  2025

     Fire.nsw.gov.au, Huge fireball destroys waste facility as firefighters battle inferno - St Marys,  November  30,  2025

     Abc.net.au, Violent explosion during St Marys fire described as 'once in a career type of experience‘,  November  30,  2025

     Hazardexonthenet.net, Fire and explosion destroy waste facility, chemical tank blown into the air,  December  02,  2025

     Epa.nsw.gov.au, North St Marys fire,  January  16,  2026

     News.com.au, EPA investigating inferno at recycling centre in North St Marys, Sydney, December 3, 2025

     Skynews.com.au, Jaw-dropping footage captures moment huge fireball erupts, sending flames 150 metres into sky at factory in Sydney’s west,  November  30,  2025

     Joiff.com, AUSTRALIA – Major Chemical Waste Blaze in North St Marys Sparks Explosion,  December 01,  2025

     9news.com.au, Massive industrial fire in Sydney's west could burn for days, explosions felt kilometres away,  November  30,  2025

     Smh.com.au, Factory explosion blasts chemical tank into air, huge fireball erupts,  November  30,  2025


後 記: 今回の事例は、化学薬品タンクが吹き飛ばされたことは昨年から分かっていましたが、タンクが直接的に関係している事故ではなかったので、ブログの対象にするかどうかは迷っていました。しかし、画像と見ると、かなり激しいので、異例な事故ニュースとして取り上げることとしました。情報を調べていくと、あまりにも分からないことの多い事例でした。爆発時の画像だけはよく撮っていたなと感心します。最近、SNS(ソーシャルネットワーク)の画像情報がよく出ますが、今回もそうです。しかし、撮影者は消防関係者です。考えてみれば、現場の一番近くにいるわけですので、当然といえば当たり前ですよね。