今回は、2026年8月13日(木)、オランダのロッテルダム港にあるガンボル・エナージー社の石油ターミナル内で貯蔵タンク付近において爆発が起こり、メンタナンス作業員に6名の死傷者が出た事例を紹介します。
< 発災施設の概要 >
■ 発災があったのは、オランダ(Netherland)のロッテルダム港(Rotterdam Port)のモーゼルウェグ(Moezelweg)にあるガンボル・エナージー社(Gunvor Energy)の石油ターミナルである。ガンボル・エナージー社は同地区で製油所と石油ターミナルを所有している。
■ 事故があったのは、石油ターミナルにある貯蔵タンクの関連設備である。
<事故の状況および影響>
事故の発生
■ 2026年8月13日(木)午前11時30分頃、モーゼルウェグの石油ターミナル内の貯蔵タンク付近で爆発が起こった。
■ 発災にともない、消防隊が出動した。出動したのは消防士のほか、救急車6台が派遣された。
■ 貯蔵タンクはメンテナンス作業中で、工事の下請け会社;カンクス・メンテナンス社(Canx
Maintenance)の作業チームが石油製品タンクに接続された配管のメンテナンスで切断作業を行っていた際に事故が発生した。
■ 事故にともない、1名が死亡、5名が負傷した。爆発直後に救急車が現場に派遣され、その後すぐにヘリコプターで医療外傷チームが派遣された。死亡したのは、 60歳で経験豊富な作業員だった。
■ 現場には、影響を受けたタンク付近に爆発の痕跡と側板に損傷が確認された。
■ 地元警察とオランダ労働監督局は、職場事故の可能性に焦点を当てて捜査を進めている。
■ 警察は爆発の原因を調査している。警察の広報担当は、現時点で破壊工作の兆候はなく、あらゆる可能性のあるシナリオについて捜査中であると述べた。
■ ロッテルダム港の港湾関係の操業は爆発の影響を受けていないと述べた。
■ ロッテルダム港では8月13日午前中に変圧器の火災によって数回停電が発生したが、地元安全当局は爆発と停電には関連性がないと述べた。
■ 火災は発生しなかったものの、消防隊員は念のため待機していた。爆発による煙はフラールディンゲンとマーススライス方面に流れ、不安を感じた住民から多数の通報があった。
■ ユーチューブなどでは、タンクの事故状況を伝える動画が投稿されている。
●Youtube、「Pays-Bas
: une explosion dans une zone industrielle du port de Rotterdam fait un mort」(2026/8/13)
●Youtube、「Rotterdam
Port Explosion Kills 1, Injures Six | Blast Hits Petroleum Storage Facility In
Netherlands」(2026/8/13)
●Euronews、「Pays-Bas : un mort et plusieurs blessés dans une ..」(2026/8/13)
被 害
■ 6名の死傷者が出た。内訳は1名死亡、5名の負傷者である。
■ 工事中だったタンク周辺に被害があったが、詳細は不明である。
< 事故の原因 >
■ 工事現場の不安全管理によるものとみられる。詳細は調査中である。
< 対 応 >
■ 事故の後、警察は現場を犯罪現場に指定した。労働監督局と協力して、十分な安全対策を講じていたか、またガンボル・エナージー社に過失があったかどうかを調査している。この調査の中心となるのは、工事のために確立した環境下で、工事の作業員が安全に作業できたかどうかである。
■ 調査の重要な部分のひとつは、爆発の正確な原因を特定することである。これには、爆発に先行する化学反応を調べることが含まれる。爆発には少なくとも3つの要素、すなわち①可燃性物質(たとえば、燃料のベーパーまたは液体)、②酸素、③点火源(高温の表面、短絡、火花など)が必要である。
工事作業チームが燃料配管の作業を行っていたため、火花が発火源となった可能性は十分考えられる。原則として、配管内に可燃性の液体やベーパーが全く含まれていなければ、これは問題にならない。したがって、労働監督局はまず、配管内に何が入っていたのか、そしてそれがどのようにしてそこに入り込んだのかを正確に突き止めたいと考えている。
■ 労働監督局は、作業中に爆発の危険性を継続的に測定していたかどうかを確認する。その際、考慮すべき点は、①ガス漏れの可能性のある原因、②その燃料源までの距離、③風向、④ガスの密度である。
もし、ガンボル・エナージー社が上記のいずれかの点で過失があった場合、同社は多額の罰金を科せられるだけでなく、さらに重要なことは被害者とその遺族に莫大な賠償金を支払わなければならないだろう。
■ さらに、就労許可証と安全手順について確認される。就労許可証は、欧州のATEX指令137によって企業に対して爆発危険区域を明確に指定し、安全な作業手順を確保するための措置を事前に講じることを義務付けている。この手続きは、作業開始前に策定、評価、承認されなければならない。労働監督局は、とりわけ以下の点を確認する。①当該区域へのアクセスは適切に管理され、許可された従業員のみがアクセスできたか、②適切な個人用保護具が準備され、使用され、点検されていたか、③適切な機工具が規定され、使用され、点検されていたか、④追加の規制・予防措置が策定され、遵守されていたか、⑤工事現場には、書面による指示が明確かつ目立つ場所に掲示されていたか、⑥従業員は必要な研修を修了していたかなどである。
■ 実際、ガンボル・エナージー社は、2016年に現在の製油所・石油ターミナル(Q8 Kuwait Petroleum Europoort bvが所有していたKPユーロポート製油所を買収)の所有者となって以来、メンテナンスや安全対策にほとんど投資しておらず、ロッテルダムで事業を展開していた10年間でほぼ全員を解雇した。利益追求のために際限なく人を解雇し続けて、何の代償も伴わないなどとは考えられない。
こうして、2016年にKPユーロポート製油所が買収された時点で、従業員の3分の1がすでに解雇されていた。2024年12月には、不利な市場状況(メンテナンスと投資の不足)を理由に自動車燃料の生産を中止し、260名の正社員のうちさらに160名が職を失った。そして、2025年7月、ガンボル・エナージー社ロッテルダムの石油ターミナル活動を閉鎖することを決定したことで、事実上、この拠点は終わってしまった。
このような状況を考えれば、今回の現場に作業を監督し、爆発の危険性を監視し、職場全体の安全を保証できる十分な資格を持った社内人員がいたかどうかは疑問である。
■ ガンボル・エナージー社はロッテルダムの製油所をアントワープ製油所と同様に、単に金儲けの手段として買収した可能性が非常に高い。というのは、エネルギー集約型産業は、二酸化炭素排出量を削減するために、欧州連合から年間最大10億ユーロの補償金・免除・補助金を受け取っているからである。
さらに、今回のメンテナンスを誰が依頼したのかはまだ明らかになっていない。ガンボル・エナージー社は約3年前にロッテルダム製油所を閉鎖しており、オランダ港湾ニュースサイトである“ハーフェンニース” (Havennieuws)の推測では、近隣のロイヤル・ボパック社(Royal Vopac)がガンボル・エナージー社の石油ターミナルを使用しているのではないかという。たとえば、ボパック社は2023年にガンボル・エナージー社アントワープ製油所を買収しており、105ヘクタールの敷地は、現在、タンク貯蔵設備になっている。
補 足
■「オランダ」(Netherland)は、西ヨーロッパに位置し、人口約1,760万人の立憲君主制の国である。東はドイツ、南はベルギーと国境を接し、北と西は北海に面する。オランダは世界において、報道の自由、経済的自由、人間開発指数、クオリティ・オブ・ライフについて最上位国の一つである。
「ロッテルダム港」(Rotterdam Port)は、欧州最大の港であり、原油や燃料の輸入・貯蔵の拠点である。ここには、欧州最大の製油所であるシェル社の施設があり、ほかペルニス工場やエクソンモービル社の製油所などがある。
■「発災の影響を受けたタンク」をグーグルマップで調べると、直径約50mであり、高さを15~20mとすれば、容量は29,400~39,300KLとなる。
■「ハーフェンニース」(Havennieuws)は、 オランダの独立系ニュースウェブサイトで、オランダとベルギーの港湾における海事・運輸・物流分野の動向を毎日報道しており、特にロッテルダム港に重点を置いている。
所 感
■ 今回の事故は、本文中に指摘されているように、①当該区域へのアクセスは適切に管理され、許可された従業員のみがアクセスできたか、②適切な個人用保護具が準備され、使用され、点検されていたか、③適切な道具が規定され、使用され、点検されていたか、④追加の規制・予防措置が策定され、遵守されていたか、⑤工事現場には、書面による指示が明確かつ目立つ場所に掲示されていたか、⑥従業員は必要な研修を修了していたかなど工事に関する安全管理の問題である。
これは、米国CSB(化学物質安全性委員会)がまとめた「タンク内外の火気工事における人身事故を防ぐ7つの教訓」としてまとめられたつぎの教訓項目と同様である。①火気作業の代替方法の採用、②危険度の分析、③作業環境のモニタリング、④作業エリアのテスト、⑤着工許可の発行、⑥徹底した訓練、 ⑦請負者への監督
■ しかし、今回の事例はさらに石油ターミナルの施設を運営する根深い問題があるようだ。今回のメンテナンスを誰が依頼したのかはまだ明らかになっていないという。ガンボル・エナージー社は、製油所に続いて石油ターミナル活動を閉鎖することを決定し、事実上、石油ターミナルの操業は終わってしまったと思われる。このような状況を考えれば、今回の現場に作業を監督し、爆発の危険性を監視し、職場全体の安全を保証できる十分な資格を持った社内人員がいたかどうかは疑問であるという。
備 考
本情報はつぎのインターネット情報に基づいてまとめたものである。
・Reuters.com, Blast at Rotterdam port energy facility kills one
person, August 13, 2026
・Nbcnews.com, Explosion at Dutch port of Rotterdam leaves 1 dead,
several injured, August 13, 2026
・Mykn.kuehne-nagel.com, Fatal explosion at Rotterdam storage facility
prompts investigation, August 13, 2026
・Nltimes.nl, Explosion at Rotterdam port area leaves 1 dead, many
wounded: Video, August 14, 2026
・Tankstorage.com, Fatal explosion at Rotterdam Europoort facility,
August 13, 2026
・Joiff.com, NETHERLANDS – Explosion at Rotterdam port site kills one,
injures several, August 18, 2026
・News.sky.com, One person killed and six injured after explosion at
Rotterdam port, August 13, 2026
・Fr.euronews.com, Pays-Bas : une explosion dans une zone industrielle
du port de Rotterdam fait un mort, August 13,
2026
・Lalibre.be, Rotterdam : une explosion dans une raffinerie de la zone
portuaire fait au moins un mort, August 13,
2026
・7sur7.be, “Un incident s’est produit”: une explosion dans le port de
Rotterdam fait au moins un mort, August 13,
2026
・Rts.ch, Une explosion dans une raffinerie du port de Rotterdam fait
au moins un mort, August 13, 2026
・English.news.cn, One killed, six injured following explosion at
Rotterdam port, August 13, 2026
・Havennieuws.nl, Explosie met dodelijk slachtoffer en verschillende
gewonden bij Zwitserse Gunvor Energy Rotterdam raffinarderij, August 13, 2026
後 記: 工事中のタンク人身事故であり、調査段階では多くの情報は出ないでしょうから、まとめはそれほどかからないと思っていたところ、オランダの独立系ニュースウェブサイト“ハーフェンニース” からとんでもない記事が出てきました。オランダは技術のしっかりした国というイメージを持っていましたので、“今回の現場に作業を監督し、爆発の危険性を監視し、職場全体の安全を保証できる十分な資格を持った社内人員がいたかどうかは疑問である”という記事には愕然(がくぜん)としました。オランダは、個人の自由を尊重する個人主義的な社会文化や効率重視の労働環境にあると言われていますが、今回の事例は、国や企業のありかたとしては、“ちょっと違う”のではないかと言いたくなりますね。








































