このブログを検索

2026年7月24日金曜日

ロシアのモスクワ製油所、ドローンでなく防災ミサイルでタンク屋根が噴き飛ぶ

 今回は、先般、ロシアのモスクワにあるガスプロム・ネフチ社のモスクワ製油所がウクライナによる無人航空機(ドローン)による攻撃で、貯蔵タンクの屋根が噴き飛んだ事例を紹介しましたが、実際は防災ミサイルによる誤射でタンク屋根が噴き飛んだとみられる動画が出ましたので、この情報を改めて紹介します。前回のブログは「ロシアのモスクワ製油所、無人航空機による攻撃で貯蔵タンクの屋根が噴き飛ぶ」2026712日)を参照。

< 発災施設の概要 >

■ 被害があったのは、ロシア(Russia)のモスクワ(Moscow)にあるガスプロム・ネフチ社(Gazprom Neft)のモスクワ製油所である。この製油所は所在地からカポトニャ製油所(Kapotnya Oil Refinery)とも呼ばれている。

■ 発災があったのは、モスクワ中心部から南東約15km離れた製油所内にある燃料貯蔵タンクである。

< 事故の状況および影響 >

事故の発生

■ 2026618日(木)早朝、モスクワ製油所にウクライナ軍(Ukrainie)の無人航空機(ドローン)による攻撃があった。

■ 目撃者によると、強力な爆発により大型燃料貯蔵タンクの屋根が完全に噴き飛ばされ、激しい火災が発生したという。燃料貯蔵タンクの屋根が数十メートルも空中に舞い上がった。製油所では、少なくとも5か所で火災が発生し、黒煙が空に広がった。

■ 当初、このタンク屋根が噴き飛んだ原因はウクライナ軍の無人航空機(ドローン)による攻撃だったと報道されたが、新たな目撃者の動画がオンラインに公開され、OSINT(オープン・ソース・インテリジェンス)の専門家が分析した結果、発生した爆発は、無人航空機(ドローン)ではなく防空ミサイルによるものという見解が報じられた。

■ 防空ミサイルは、本来、敵の航空機、ミサイル、無人航空機(ドローン)から重要な施設や部隊を迎撃・防衛するための誘導兵器である。防空ミサイルはその射程や運用方法によって分類されるが、今回は、携帯式防空ミサイル(兵士が肩に担いで発射する小型ミサイル)とみられ、近年では無人航空機(ドローン)の迎撃に用いられている。

■ 携帯式防空ミサイルを撃ったのは、明確になっていないが、ロシアの発射したミサイルが誤って貯蔵タンクに当たったものだと報じられている。

■ OSINTOpen Source Intelligence)とは、公開情報(ウェブサイト・SNS・公的データベースなど)を収集・分析し、サイバー脅威の兆候を把握するインテリジェンス手法である。元来は軍事情報活動の一環であり、現在、OSINTの活用は民間部門へも拡大し、多くの企業や団体において標準的な活動となっている。

■ ウクライナ軍は、製油所への攻撃により、RVS-10000型タンク3基、RVS-30000型タンク1基のほか製油所のオイルプロセス装置を攻撃で損傷させたと語っている。注記;貯蔵タンク RVS-10000型は、主に石油や化学薬品などの液体を大量に保管するために使用される容量10,000KLの円筒形鋼製タンクをいう。

■ フェースブックでは、防空システムのミサイルによるタンク被災の映像が投稿されている。

 FacebookНе дрон, а ракета ПВО вызвала взрыв на НПЗ в Капотне2026/6/19

被 害

■ 製油所の貯蔵タンク1基の屋根が噴き飛ぶほどの損壊をした。このほかタンク3基やプロセス装置が無人航空機(ドローン)による攻撃で損傷した。また、タンクや装置内にあった油が焼失した。

■ 死傷者は発生していない。  

< 事故の原因 >

■ 原因は、テロによる“故意の過失”でなく、戦争時の無人航空機(ドローン)による攻撃である。 タンク屋根が噴き飛んだ貯蔵タンクへの攻撃は、無人航空機(ドローン)でなく、防空ミサイルによるものとみられている。

< 対 応 >

■ 本格的な戦争開始以来最大規模のウクライナ軍の攻撃で製油所が攻撃され、ロシアの一部に黒い油の粒が降り注いだ。この攻撃では、約200機の無人航空機(ドローン)がロシアの首都に向けて発射された。

ロシアのモスクワ市長によると、首都モスクワを目指していた少なくとも194機の無人航空機(ドローン)を618日(木)未明にかけてロシアの防空システムによって撃墜したという。

■ しかし、ロシアの防空システムが全部機能したわけでなく、ロシアの携帯式防空ミサイルが誤って貯蔵タンク1基に当たったものとみられる。

■ ロシア人がソーシャルメディアに投稿した動画は、二つのことを伝えている。ひとつは、首都モスクワの防空網は強固だったが、ウクライナの安価な大量生産の無人航空機(ドローン)によって突破され、製油所の貯蔵タンクの屋根が噴き飛ばされたことに代表される複数の火災が猛威を振るったことや環境災害が確実に発生しつつあることである。もうひとつは、モスクワ市民の不満の拡大と、それがもたらす政治的不安定さである。ロシア当局が抑制しようとしてきた動画が数多く投稿され、高まる反体制の姿勢と、最終的に失敗に終わった情報操作を示している。  

■ 現場からの画像や動画はインターネット上で広く拡散されたが、紛争が続いている状況下では、すべての映像の真偽を独自に検証することは依然として困難である。

補 足

■「ロシア」(Russia)は、正式にはロシア連邦で、ユーラシア大陸北部に位置する人口約14,000万人の連邦共和制国家である

「モスクワ」(Moscow)は、人口約約1315万人のロシア連邦の首都である。また、連邦市として市単独で連邦を構成する83の連邦構成主体のひとつである。

■「ガスプロム・ネフチ社」(Gazprom Neft)は、ロシアの石油企業で国内の石油製造・精製企業としては、5番目の規模をもつ。2005年天然ガス最大手ガスプロムの傘下企業となり、ガスプロム・ネフチに改称した。本社はサンクトペテルブルクである

「モスクワ製油所」(カポトニャ製油所:Kapotnya Oil Refinery)は、1938 年に操業したが、2011年からロシア国営企業ガスプロム・ネフチ社の傘下にある。精製能力は、年間約1,200万トンで、日量換算で約24万~30万バレル/日の規模である。

■「発災(被災)タンク」は大きさ、油種などの仕様について何も報じられていない。グーグルマップで調べると、直径約45mであるので、高さを1520mとすれば、容量は23,80031,800KLとなる。グーグルマップの写真を見ると、ドームルーフ式の固定屋根型タンクである。ウクライナ軍が攻撃でRVS-30000型タンク1基を損傷させてと語っているが、このタンクが発災(被災)タンクとみられる。

所 感 (前 回)

■ 戦争時の貯蔵タンクの被災については、基本的にこのブログの調査対象にしていないが、今回の事例はタンク屋根が噴き飛んだというので、調べることとした。

 映像は少なくとも3か所から撮影されたものがあり、実際にタンク屋根が噴き飛んだものとみられる。タンク屋根は水平を保ったままかなりの高さまで飛んでいる。 一般にコーンルーフ式やドームルーフ式の固定屋根式円筒タンクは、タンク屋根と側板の溶接部の接続箇所が弱く作られており、この点でいえば、適切な設計・製作をされた貯蔵タンクといえる。タンク上部の混合気が爆発するような圧力になった場合、溶断部が破断するが、タンク屋根が水平を保って高くまで飛ぶということはめずらしい。事例のような状況になる要因を推測すると、タンク内部に液が少ない状態のところにタンク上部に無人航空機(ドローン)が突っ込んで爆発したのではないだろうか。このため、無人航空機(ドローン)の爆弾による衝撃的な力がタンク屋根部にかかり、溶断部を破断するが、タンク屋根が水平を保って空高く噴き飛んだのではないだろうか。

■ 2022224日、ロシアがウクライナに侵攻して軍事衝突が起こったが、両国の戦争でミサイルなどに代わって無人航空機(ドローン)によるタンク貯蔵施設への攻撃について、このブログで紹介したのは「ロシアがウクライナのひまわり油タンクをカミカゼ無人機で攻撃」202210月)が初めてだった。その後、無人航空機(ドローン)は飛躍的に発達して、現在は戦争の主要な武器となっている。対ドローン防御設備が開発されても「ロシアで対ドローン防御設備を施した貯蔵タンクが攻撃で被災」20262月)のように無人航空機(ドローン)による武器化の技術進展は、日本のドローンへのテロ対策を根本的に見直す必要性があることはこれまで述べてきたとおりである。

所 感 (今 回)

■ 戦争時の貯蔵タンクの被災については、このブログの調査対象にしていない。無人航空機(ドローン)によるテロ対応の観点から調べたが、結果は防災ミサイル(兵士が肩に担いで発射する小型ミサイル)で誤射によるものであった。誤射に関して意見や見解は示されておらず、これが“戦争”というもので、仕方ないことと思っているのであろう。人間のひととしての感性が鈍ってきている。

■ ロシアとウクライナの携帯式防空ミサイルの例は図のとおりである。


備 考

 本情報はつぎのインターネット情報に基づいてまとめたものである。

   Bbc.com, Moscow residents complain of black rain after largest Ukrainian attack hits oil refinery,  June  19,  2026

    Edition.cnn.com, Ukraine launches largest attack on Moscow since start of full-scale war,  June  19,  2026

    English.nv.ua, Satellite images reveal damage at Moscow refinery after Ukrainian drone strike,  June  21,  2026

    Ndtv.com, Video: Ukrainian Drone Hits Russian Refinery, Blows Tank Lid Off,  June  18,  2026

     Apnews.com, Ukrainian drones set a Moscow refinery ablaze in a major attack on the Russian capital,  June  19,  2026

     United24media.com, Moscow Oil Refinery After Ukrainian Drone Attacks: What Satellite Images Show,  June  19,  2026

     Abcnews.com,  Fuel storage tank's lid blown off as Moscow refinery targeted by Ukraine,  June  18,  2026

     Facebook.com,  Не дрон, а ракета ПВО вызвала взрыв на НПЗ в Капотне,  June  19,  2026


後 記: それにしてもロシア国内におけるフェースブックなどによる無人航空機(ドローン)の動画撮影への関心の高さには驚きます。今回の貯蔵タンクの屋根が噴き飛ばされた動画も複数あります。そのうちのひとつがOSINT(オープン・ソース・インテリジェンス)の専門家による分析結果、発生した貯蔵タンク爆発は、無人航空機(ドローン)ではなく、防空ミサイルによるものだというのが分りました。撮影された動画がオンラインで公開されていなければ、前回のブログのようにウクライナの無人航空機(ドローン)によるものだったということで終わっているはずです。ところが、そうではなく自国の貯蔵タンクを自国の防空システム(携帯式防空ミサイル)で攻撃したということが分ってしまいました。

2026年7月17日金曜日

米国オクラホマ州で石油生産の関連施設で落雷によるタンク火災

  今回は、米国オクラホマ州ポタワトミー郡にある石油生産の関連施設において落雷によってタンク火災が起きた事例を紹介します。

< 発災施設の概要 >

■ 発災があったのは、米国オクラホマ州(Oklahoma)ポタワトミー郡(Pottawatomie )にある石油生産の関連施設である。

■ 事故があったのは、草原地帯にある石油生産の関連施設のタンク群である。

<事故の状況および影響>

事故の発生

■ 2026623日(火)、ポタワトミー郡にある石油生産の関連施設内でタンクが火災となった。

■ 火災は隣接タンクにも延焼し、石油生産の関連施設にあるタンク群が火災になった。

■ 発災にともない、消防隊が出動した。

■ 事故にともなう負傷者は出ていない。

■ 火災の原因は落雷によるものとみられる。

■ 現場近くを通る車の運転手は、その地域で交通渋滞が予想されるため、迂回路を計画しておくのがよい。

■ ユーチューブでは、火災のニュースを伝える動画が投稿されている。

 YoutubeUPDATE: Fire crews respond to tank fire in Pottawatomie County struck by lightning2026/7/26

被 害

■ 石油生産の関連施設にあった油タンク2基が屋根が外れるほど激しい火災で損壊した。そのほかのタンク6基も被災程度は異なるが、損傷した。

■ 油タンク2基に入っていた油が焼失した。

■ 負傷者は出なかった。 

< 事故の原因 >

■ 事故原因は落雷によるとみられる。

< 対 応 >

■ 火災は消防隊によって消火された。

補 足

■「オクラホマ州」(Oklahoma)は、米国中南部に位置し、隣接するテキサス州の北にあるパンハンドル(取っ手つきフライパン)の形をした州である。日本の約半分ほどの面積の土地に約396万人しか住んでいないので、人口密度は低く、ゆったりしている。オクラホマには山がほとんどなく、見渡す限り、地平線である。オクラホマシティとタルサという二大都市から少し離れれば、草原が延々と続き、ほとんどは牛がのんびり歩く農場か、オイルやガスを掘削する油田・ガス田である。大陸性気候のオクラホマ州では、天気が急激に変わる。35月頃は通り道にある家々をまるごと吹き飛ばしてしまうほどの強力なトルネード(竜巻)が発生する。

「ポタワトミー郡」(Pottawatomie )は、オクラホマ州の中央部に位置し、人口約72,000人の市である。

■「発災タンク」は、種類や大きさなどの仕様が報じられていない。被災写真はドローンで撮影された映像が流されているので、円筒型タンクであることが分かる。グーグルマップで調べても、発災場所がわかるような情報がなく、特定できなかった。

 円筒型タンクは8基あり、そのうち2基はタンク屋根が外れて火災になっている。過去の事例から推測すると、事故にあった石油生産の関連施設は塩水処理施設とみられる。火災になった油タンクは鋼製であり、そのほかのタンクが塩水タンクで、通常、グラスファイバー製を使われることがあるが、発災施設では鋼製タンクである。タンク屋根が遠くに飛んでいるので、落雷時に爆発してタンク屋根が外れて噴き飛んだものとみられる。過去の事例から円筒タンクの直径を34mで、高さを56mと仮定すれば、容量は3575KLとなる。

 オクラホマ州における石油生産の関連施設の火災について本ブログで紹介したのは、つぎのとおりである、

 ●20245月、「米国オクラホマ州で竜巻警報の中、落雷によるタンクが爆発・火災」

 ●20243月、「米国オクラホマ州の石油生産施設で相次いで落雷よるタンク火災」

 ●20255月、「米国オクラホマ州の塩水処理施設で落雷によるタンク火災」

 ●202512月、「米国オクラホマ州の石油生産関連の施設でタンク設備が爆発・火災」

 なお、塩水処理施設の一般的なプロセスフローは、つぎのとおりである。

所 感 

■ 今回の事例の原因は落雷と報じられている。オクラホマ州は竜巻や落雷の多い州であり、過去に紹介した石油生産関連施設の4件のタンク火災事故のうち、3件は原因が落雷によるものである。

■ 消火戦略には積極的戦略・防御的戦略・不介入戦略の3つがあるが、どの戦略をとったかは報じられていない。被災写真を見ると、タンク火災だけでなく、流出した油による堤内火災や地上火災になっており、火災状況が激しいときは積極的戦略をとっていないと思われる。おそらく不介入戦略をとったと思われる。しかし、鎮火後の施設を見ると、消火泡が見られるので、火災の途中で積極的戦略をとり、泡消火活動をとったとみられる。FRP製タンクを使用している塩水処理施設では、不介入戦略をとるが、本施設では鋼製のタンク群であり、積極的戦略をとり、延焼の拡大を避けたものとみられる。


備 考

 本情報はつぎのインターネット情報に基づいてまとめたものである。

     Kfor.com, UPDATE: Fire crews respond to tank fire in Pottawatomie County struck by lightning, June  24, 2026

     Yahoo.com, UPDATE: Fire crews respond to tank fire in Pottawatomie County struck by lightning, June 25, 2026


後 記: 本事故はドローン(またはヘリコプター)による上空からの映像があるので、火災の状況を理解することができました。また、取材による情報を報じたのは映像を流した1社だけです。オクラホマ州のタンク火災事故だけを見ても、以前と比べると、内容が薄くなっています。今回の事故を見ても、タンクの仕様は勿論、事業者名も報じられていません。もともと石油生産の関連施設に関しては記事が少なくなっていましたが、特に、最近、この種の事故報道をメディアはやらなくなったと感じています。米国・イスラエルーイラン戦争で忙しくなった(?)のか、米国の事故に対する感度や感性が鈍くなったように思います。オクラホマ州だけでなく、テキサス州などでも石油生産の関連施設のタンク火災事故を意図的に報じていないのではないでしょうか。

2026年7月12日日曜日

ロシアのモスクワ製油所、無人航空機による攻撃で貯蔵タンクの屋根が噴き飛ぶ

 今回は、2026618日(木)、ロシアのモスクワにあるガスプロム・ネフチ社モスクワ製油所内の燃料貯蔵タンクがウクライナ軍の無人航空機(ドローン)による攻撃を受け、タンク屋根が空高く噴き飛んだ事例を紹介します。

< 発災施設の概要 >

■ 被害があったのは、ロシア(Russia)のモスクワ(Moscow)にあるガスプロム・ネフチ社(Gazprom Neft)のモスクワ製油所である。この製油所は所在地からカポトニャ製油所(Kapotnya Oil Refinery)とも呼ばれている。

■ 発災があったのは、モスクワ中心部から南東約15km離れた製油所内にある燃料貯蔵タンクである。

< 事故の状況および影響 >

事故の発生

■ 2026618日(木)早朝、モスクワ製油所にウクライナ軍(Ukrainie)の無人航空機(ドローン)による攻撃があった。

■ 製油所近くのモスクワ南東部の住民のひとりは、早朝、爆発音、濃い煙、それに強い焦げ臭で目が覚めたと語った。同じく、被害を受けた製油所の近くに住む男性は、夜明けに建物が揺れ始めて目が覚め、朝には焦げ臭い匂いがして息ができなかったといい、「本当に恐ろしい。以前はそれほど怖くなかったが、今はほとんどパニック状態だ」と語った。  

■ 目撃者によると、強力な爆発により大型燃料貯蔵タンクの屋根が完全に噴き飛ばされ、激しい火災が発生したという。燃料貯蔵タンクの屋根が数十メートルも空中に舞い上がった。製油所では、少なくとも5か所で火災が発生し、黒煙が空に広がった。

■ 製油所近くの地域一帯に瓦礫が降り注いだ。

■ 市は、影響を受けた地区の住民に対し、窓を閉めておくよう警告し、子供連れの家族、高齢者、喘息患者は速やかにその地域から避難するように勧告した。

■ モスクワ製油所は、この1か月で3度目の攻撃に見舞われたことになる。

■ 無人航空機(ドローン)の破片が建物に落下し、近隣のショッピングセンターが火災に見舞われた。

■ ロシアがウクライナへの本格的な侵攻を開始してから4年半が経過したが、ウクライナの最前線での消耗戦は、ロシアの多くの人々の目には触れることなく続いている。ロシア各地の地方当局はドローン攻撃後の画像の公開を禁止しているものの、ソーシャルメディアには、白昼堂々と空を飛び交うドローンや、モスクワ郊外の工業地帯上空での爆発をとらえた動画が数多く投稿されている。

■ ウクライナ軍は、本格的な空爆を開始する前に、多数の偵察用デコイドローンを発射して、防空網の密度や脆弱な地域を把握するという戦術を常套手段として用いている。

■ ウクライナ国境から約500km離れたモスクワへの無人航空機(ドローン)攻撃は、ウクライナが長距離攻撃能力を開発したことで頻繁になっている。ウクライナによる初の無人航空機(ドローン)攻撃は2023年春にロシアの首都に到達したが、散発的で、使用された無人航空機(ドローン)はごく少数にとどまっていた。それ以来、モスクワ周辺には大規模な防空網が構築されたが、ウクライナが攻撃に使用する無人航空機(ドローン)の数も増加し、一部はそれらの防空網を突破した。

■ ウクライナ軍によると、RVS-10000型タンク3基、RVS-30000型タンク1基のほか製油所のオイルプロセス装置を攻撃で損傷させたと語った。注記;貯蔵タンク RVS-10000型は、主に石油や化学薬品などの液体を大量に保管するために使用される容量10,000KLの円筒形鋼製タンクをいう。

■ モスクワの主要空港は、618日木曜日のフライトが停止された。

■ ユーチューブやフェースブックなどでは、タンク被災の映像などが投稿されている。

 FacebookMoment fuel storage lid blown off as Ukraine strikes Moscow refinery2026/6/18

 ●YoutubeOil storage tank‘s roof launched into the air during Ukrainian attack on Moscow 2026/6/18)     

 ●Facebook A Ukrainian drone strike sends the roof of a Moscow oil refinery's storage tank flying through the air 2026/6/18

被 害

■ 製油所の貯蔵タンク1基が屋根が噴き飛ぶほどの損壊をした。このほかタンク3基やプロセス装置が無人航空機(ドローン)による攻撃で損傷した。また、タンクや装置内にあった油が焼失した。

■ 死傷者は発生していない。  

< 事故の原因 >

■ 原因は、テロによる“故意の過失”でなく、戦争時の無人航空機(ドローン)による攻撃である。 

< 対 応 >

■ 本格的な戦争開始以来最大規模のウクライナ軍の攻撃で製油所が攻撃され、ロシアの一部に黒い油の粒が降り注いだ。この攻撃では、約200機の無人航空機(ドローン)がロシアの首都に向けて発射された。

ロシアのモスクワ市長によると、首都モスクワを目指していた少なくとも194機の無人航空機(ドローン)を618日(木)未明にかけてロシアの防空システムによって撃墜したという。

 しかし、これは、ここ数か月間のウクライナによる攻撃で使用された無人航空機(ドローン)の数が二桁にとどまっていたことを考えると、はるかに多い数であり、4年以上前にロシアによる本格的な侵攻が始まって以来、ウクライナの無人航空機(ドローン)能力が劇的に向上したことを示す明確な例となっている。

■ 専門家によると、 ロシアの国家予算は歳入の少なくとも3分の1を石油収入に依存しているという。ロシアーウクライナ戦争が始まって以来、欧州連合(EU)と米国による制裁強化により、ロシア産原油の買い手は減少していた。しかし、米国・イスラエルーイラン戦争によって、ロシアには思わぬ幸運となり、世界的な燃料価格の高騰と制裁緩和の恩恵を受けた形になった。

■ ロシア人がソーシャルメディアに投稿した動画は、二つのことを伝えている。ひとつは、首都モスクワの防空網は強固だったが、ウクライナの安価な大量生産の無人航空機(ドローン)によって突破され、製油所の貯蔵タンクの屋根が噴き飛ばされたことに代表される複数の火災が猛威を振るったことや環境災害が確実に発生しつつあることである。もうひとつは、モスクワ市民の不満の拡大と、それがもたらす政治的不安定さである。ロシア当局が抑制しようとしてきた動画が数多く投稿され、高まる反体制の姿勢と、最終的に失敗に終わった情報操作を示している。  

■ 現場からの画像や動画はインターネット上で広く拡散されたが、紛争が続いている状況下では、すべての映像の真偽を独自に検証することは依然として困難である。


補 足

■「ロシア」(Russia)は、正式にはロシア連邦で、ユーラシア大陸北部に位置する人口約14,000万人の連邦共和制国家である

「モスクワ」(Moscow)は、人口約約1315万人のロシア連邦の首都である。また、連邦市として市単独で連邦を構成する83の連邦構成主体のひとつである。

■「ガスプロム・ネフチ社」(Gazprom Neft)は、ロシアの石油企業で国内の石油製造・精製企業としては、5番目の規模をもつ。2005年天然ガス最大手ガスプロムの傘下企業となり、ガスプロム・ネフチに改称した。本社はサンクトペテルブルクである

「モスクワ製油所」(カポトニャ製油所:Kapotnya Oil Refinery)は、1938 年に操業したが、2011年からロシア国営企業ガスプロム・ネフチ社の傘下にある。精製能力は、年間約1,200万トンで、日量換算で約24万~30万バレル/日の規模である。

■「発災(被災)タンク」は油種などの仕様について報じられていない。グーグルマップで調べると、直径約45mであるので、高さを1520mとすれば、容量は23,80031,800KLとなる。グーグルマップの写真を見ると、ドームルーフ式の固定屋根型タンクである。ウクライナ軍が攻撃でRVS-30000型タンク1基を損傷させてと語っているが、このタンクが発災(被災)タンクとみられる。

所 感

■ 戦争時の貯蔵タンクの被災については、基本的にこのブログの調査対象にしていないが、今回の事例はタンク屋根が噴き飛んだというので、調べることとした。

 映像は少なくとも3か所から撮影されたものがあり、実際にタンク屋根が噴き飛んだものとみられる。タンク屋根は水平を保ったままかなりの高さまで飛んでいる。

 一般にコーンルーフ式やドームルーフ式の固定屋根式円筒タンクは、タンク屋根と側板の溶接部の接続箇所が弱く作られており、この点でいえば、適切な設計・製作をされた貯蔵タンクといえる。タンク上部の混合気が爆発するような圧力になった場合、溶断部が破断するが、タンク屋根が水平を保って高くまで飛ぶということはめずらしい。事例のような状況になる要因を推測すると、タンク内部に液が少ない状態のところにタンク上部に無人航空機(ドローン)が突っ込んで爆発したのではないだろうか。このため、無人航空機(ドローン)の爆弾による衝撃的な力がタンク屋根部にかかり、溶断部を破断するが、タンク屋根が水平を保って空高く噴き飛んだのではないだろうか。

■ 2022224日、ロシアがウクライナに侵攻して軍事衝突が起こったが、両国の戦争でミサイルなどに代わって無人航空機(ドローン)によるタンク貯蔵施設への攻撃について、このブログで紹介したのは「ロシアがウクライナのひまわり油タンクをカミカゼ無人機で攻撃」202210月)が初めてだった。その後、無人航空機(ドローン)は飛躍的に発達して、現在は戦争の主要な武器となっている。対ドローン防御設備が開発されても「ロシアで対ドローン防御設備を施した貯蔵タンクが攻撃で被災」20262月)のように無人航空機(ドローン)による武器化の技術進展は、日本のドローンへのテロ対策を根本的に見直す必要性があることはこれまで述べてきたとおりである。


備 考

 本情報はつぎのインターネット情報に基づいてまとめたものである。

   Bbc.com, Moscow residents complain of black rain after largest Ukrainian attack hits oil refinery,  June  19,  2026

   Edition.cnn.com, Ukraine launches largest attack on Moscow since start of full-scale war,  June  19,  2026

   English.nv.ua, Satellite images reveal damage at Moscow refinery after Ukrainian drone strike,  June  21,  2026

   Ndtv.com, Video: Ukrainian Drone Hits Russian Refinery, Blows Tank Lid Off,  June  18,  2026

    Apnews.com, Ukrainian drones set a Moscow refinery ablaze in a major attack on the Russian capital,  June  19,  2026

    United24media.com, Moscow Oil Refinery After Ukrainian Drone Attacks: What Satellite Images Show,  June  19,  2026

    Abcnews.com,  Fuel storage tank's lid blown off as Moscow refinery targeted by Ukraine,  June  18,  2026       


後 記: タンク屋根が噴き飛び、メディアで映像が取りあげられましたので、調べることにしました。タンク構造が分かっているひとにとっては自明のことではありますが、このブログの趣旨から取り上げない訳にはいかないでしょう。調べるにあたって、これまでのロシアーウクライナ戦争で紹介したブログを読み返してみました。それで感じたのは、メディアの報道がだんだん希薄になってきたことです。以前は、被害国(今回の場合、ロシア)でも記事がありましたが、今回はありませんでした。フェースブックなどのSNS(ソーシャルネットワーク)の映像が主でした。ロシア国内では無人航空機(ドローン)による被災状況の画像の公開を禁止しているものの、ソーシャルメディアには、動画が数多く投稿されていました。

2026年7月5日日曜日

カタールの液化天然ガス施設で誤作動によって爆発・火災、死傷者79名

 今回は、2026621日(日)、カタールのラス・ラファン工業地帯にある国営石油のカタール・エナジー社が運営する液化天然ガス(LNG)施設で爆発・火災があり、死傷者79名の出た事例を紹介します。

< 発災施設の概要 >

■ 発災があったのは、カタール(Qatar)のラス・ラファン工業地帯(Ras Laffan)にある国営石油のカタール・エナジー社(Qatar Energy)が運営する液化天然ガス(LNG)施設である。

■ 事故があったのは、カタール最大の液化天然ガス処理施設の設備である。

<事故の状況および影響>

事故の発生

■ 2026621日(日)夕方、ラス・ラファン工業地帯にある液化天然ガス(LNG)施設で爆発・火災が発生した。

■ 爆発・火災により市内の空がオレンジ色に染まった。爆発は窓ガラスを揺らし、首都のドーハ中心部全域で揺れを感じたといい、ラス・ラファン工業地帯から70km以上離れた住民をもパニックに陥れた。

■ 発災にともない、緊急対応チームが直ちに派遣され、火災対応に従事した。

■ 事故にともない、死傷者が出た。当初、54人が負傷し、18人が行方不明になっていると発表されたが、その後、死傷者は13名が死亡、66名が負傷したと変更された。これは、湾岸諸国のエネルギー施設で発生した事故の中でも、最も死者数の多い事故の一つである。

■ カタール・エナジー社は、犠牲者の家族、友人、同僚に心からの哀悼の意を表するとともに、負傷者の一日も早い回復を祈り、この悲劇の影響を受けた人々への全面的な支援を約束した。 この事件で命を落とした人たちはインド人とパキスタン人の国籍であり、負傷者はカタール人、インド人、パキスタン人、バングラデシュ人、ケニア人、ガーナ人、タンザニア人、ナイジェリア人、ネパール人の国籍である。

■ カタールのエネルギー相は、今回の爆発は同国の輸出に影響を与えないと述べ、「これは事故であり、破壊行為や敵対行為ではない」と語った。

■ 政府は環境へのリスクは無いといい、爆発の原因究明に取り組んでいると述べた。

■ ラス・ラファン港は世界最大の人工港で、世界最大のLNG輸出施設を有している。米国・イスラエルーイランの戦争により、ラス・ラファン港はイランによる攻撃の標的となった。

■ プラントの生産は、202512月から意図的に完全に停止されていたが、2日前に再開されたばかりだった。爆発は作業員たちが中断していた操業を再開しようとしていた際に発生した。前夜、輸出ターミナルの再稼働に向けた作業中、工業地帯内のバルザン・ガス供給施設(液化天然ガス施設)で爆発と火災が発生したという。

■ カタール・エナジー社は、今回の事故は操業上の事故であり、破壊行為や敵対行為ではないと述べた。

■ ユーチューブでは、事故による火災のニュースを伝える動画が投稿されている。

 YoutubeQatar LNG Explosion: Huge Blast In Qatar‘s Ras Laffan Area; At Least 54 Injured And 18 Missing| WION2026/6/28

●YoutubeExplosion at Qatar’s Ras Laffan LNG facility kills at least 132026/6/23

YoutubeQatar Fire: 12 Indians Among 13 Killed | 66 Injured in Qatar's Ras Laffan Gas Facility Explosion2026/6/23

被 害

■ 液化天然ガス処理施設の設備が爆発・火災で損壊した。

■ 事故にともない、79名の死傷者が出た。内訳は死亡者が13名、負傷者66名である。   

< 事故の原因 >

■ 事故原因は調査中である。要因は操業中の技術的な不具合(誤作動)だという。

< 対 応 >

■ 621日(日)夜遅く、緊急対応チームが派遣された結果、火災は鎮火した。カタール・エナジー社の緊急対応チームとカタールの民間防衛隊が設備の火災を消火した。

■ 2026624日(水)、カタール・エナジー社は爆発・火災事故について調査を開始した。

■ カタール内務省は、事故を“内部爆発”といい、“技術的な誤作動” が事故の原因だと説明した。省は以前の声明で、ラス・ラファン工業地帯にある工場の1つで技術的な事故により内部爆発が発生したと説明していたが、その後、操業中の技術的な不具合が原因だったことを確認した。

■ カタールのエネルギー担当国務大臣であり、カタール・エナジーの社長兼CEOは、ラス・ラファン工業地帯の爆発・火災事故で亡くなった13名のうち12名がインド国民が犠牲になったことを受け、ドーハにあるインド大使館を訪れ、哀悼の意を表した。また、残りのひとりがパキスタン国籍であり、ドーハにあるパキスタン大使館を訪れ、弔意を表明した。

■ 2026626日(金)時点で、専門家のひとりは、つぎのような不明点を指摘している。

 ● 起動時に爆発を引き起こした原因: 特定の装置、進行中の運転、そして爆発を引き起こした故障。

 ● 再起動時に安全計装機能やその他の保護装置がバイパスまたはオーバーライドされたかどうか、また、それらがどのように機能したか。

 ● 約6か月間の停止後、プラントはどのような状態だったのか、そして再稼働手順と変更管理はその状態を考慮に入れていたのか。

 ● 調査結果がいつ報告されるのか、また、そのうちどの程度が公表されるのか。

 ● 長期的な影響や地域的な影響。

■ ラス・ラファン工業地帯の爆発は、世界有数の天然ガス生産国であるカタールにとって世界のエネルギー市場にさらなる混乱をもたらす可能性がある。カタールは、イランがホルムズ海峡を掌握したことで顧客への出荷ができなくなったため、生産を停止していた。イランが戦争の恒久的終結に向けた交渉を続ける中で、カタールは輸出ターミナルの再開に向けて動き出していた。これが液化天然ガス(LNG)施設での爆発と火災を引き起こしたという。

補 足

■「カタール」は、正式にはカタール国(カタールこく)で、中東のアラビア半島北東部に位置するカタール半島を領土とし、人口約250万人の石油生産国である。南はサウジアラビアと国境を接し、残りの領土はペルシャ湾に囲まれている。首都はドーハで国民の8割以上が住み、国土の大部分は平坦な低地の砂漠である。世界第3位の天然ガス埋蔵量と原油埋蔵量を背景に、高所得者層の多い経済国であり、液化天然ガス(LNG)輸出国である。

■「カタールのラス・ラファン工業地帯」はカタール北東海岸にあり、首都ドーハの北方約80kmに位置する都市規模の工業団地で、約115千人が従事している。工業地帯は国営石油会社のカタール・エナジー社が所有・管理しており、内部の個々の工場はエクソンモービルやシェルなどのパートナー企業とカタール・エナジー社の合弁事業によって運営されている。この敷地内には、カタールの輸出用液化天然ガス(LNG)を生産するLNGプラント、ガス液化プラント、製油所、石油化学プラント、港湾、バルザンガスプラント(国内用LNG製造で今回の発災プラント)などがある。

 ラス・ラファン工業地帯は、近海のガス田で生産した天然ガスを移送し、液化天然ガス(LNG)に加工したうえで世界各地へ輸出する世界最大のLNGハブで、世界のLNG供給量の約20%を処理する。ラス・ラファン工業地帯は、米国・イスラエルの軍事行動への報復としてイランの攻撃を受けた後、32日からガス生産を停止していた。今回の爆発事故は、操業が中断されていたラス・ラファン工業地帯の設備を再稼働させる過程で発生したものである。

■「液化天然ガス」(Liquefied Natural GasLNG)は、メタンを主成分とした天然ガスを冷却し、液体にしたものである。マイナス162℃まで冷却することで天然ガスの体積が約600分の1に大幅に減少し、大量輸送や貯蔵するのに便利である。液化天然ガス(LNG)処理施設には、いくつかの種類があるが、一般的なプロセスの例を下図に示す。

所 感

■ 米国・イスラエルーイランの戦争で中東の石油施設が攻撃対象になっているが、今回はカタールの液化天然ガス(LNG)施設が操業上の問題で爆発・火災を起こしたというので、調べることとした。

 事故は、液化天然ガス(LNG)施設を運転立上げ中に、技術的な不具合(誤作動)で起こったという。原料の天然ガス、液化天然ガス(LNG)、冷媒のプロパンガスといった爆発性の高いガスを取扱っており、どこから漏れても大きな爆発が起こりやすい施設である。実際、死傷者79名という大きな人身事故であり、事故の兆候があり、従業員が現場に出て点検していた際に爆発が発生したのだろう。異常の兆候があった場合、必要最小限の人数で且つ物陰に隠れながらチェックするという教訓が活かされていないと感じる。


備 考

 本情報はつぎのインターネット情報に基づいてまとめたものである。

     Bbc.com, At least 13 killed and dozens injured after Qatar gas explosion,  June 21,  2026

     Offshore-energy.biz, Investigation into tragic incident ongoing: 13 dead, 66 injured in explosion and fire at QatarEnergy’s gas asset,  June 24,  2026

     News.yahoo.co.jp,  カタール「LNG拠点」ラスラファンで爆発事故…18人行方不明・少なくとも54人負傷,  June 24,  2026

     Silsafe.net, The Qatar Gas Plant Explosion: What We Know So Far,  June 26,  2026

     Arabnews.jp, Qatar gas plant blast kills 13, injures dozens, says energy minister,  June 23,  2026

     Apnews.com, Qatar says gas export terminal blast killed 13 as workers tried to resume operations,  June 22,  2026

    Abc.net.au, Thirteen killed and dozens injured in blast in Qatar's Ras Laffan gas processing facility,  June 23,  2026

    Euronews.com, 13 killed and 66 injured in explosion at Qatar’s largest energy site, authorities confirm,  June 22,  2026

    Aljazeera.net, قطر تعلن وفاة 13 عاملا وإصابة 66 في انفجار مصنع غاز برأس لفان,  June 22,  2026

    Asharq.com, ضحية وعشرات المصابين في حادث انفجاربمنطقة رأس لفان الصناعية,  June 22,  2026

    Mc-doualiya.com, 54 مصابا و18 مفقودا في انفجار بمنطقة رأس لفان الصناعية في قطر,  June 22,  2026


後 記: 20263月に「アラブ首長国連邦(UAE)のシャルジャ首長国で石油タンクが漏洩して火災」事故がありましたが、最近このブログの傾向としてすっかり中東の事例が多くなりました。今回の事例は液化天然ガス(LNG)の世界への供給という点から影響が大きいことから、貯蔵タンク事故では無いようですが、調べることとしました。調べていて一番驚いたことは、亡くなった人が13名で、うちインド国籍が12名、パキスタン国籍が1名という外国人ばかりだったということです。負傷者66名も外国籍の人ばかりです。カタールのラス・ラファン工業地帯もカタール・エナジー社が所有していますが、内部の個々の工場はエクソンモービルやシェルなどのパートナー企業との合弁事業によって運営されているようです。なにかおかしいと思いますし、なにか狂っているように感じます。

 ところで、「報道の自由度ランキング2025年版」においてカタールは180か国中79位ですから、アラブ首長国連邦(UAE) の164位より高く、今回の事例でも事故要因は発表されていますが、依然として事故状況ははっきりしませんね。

2026年6月28日日曜日

メキシコ・プエブラ州の違法なLPガス貯蔵施設で爆発・火災、負傷者3名

 今回は、メキシコのプエブラ州テペアカ市にある違法なLPガス貯蔵施設で大規模な爆発が発生し、3名の負傷者の出た事例を紹介します。

< 発災施設の概要 >

■ 発災があったのは、メキシコ(Mexico)のプエブラ州(Puebla)テペアカ市(Tepeaca)にあるLPガス貯蔵施設である。

■ 事故があったのは、サン・フアン・ネグレテ地区のプロロンガシオン・クアウテモックにあるLPガス貯蔵施設のタンク設備やタンクローリーである。

<事故の状況および影響>

事故の発生

■ 202664日(木)午前10時頃、テペアカにあるLPガス貯蔵施設で大規模な爆発が発生した。爆発は緊急通報911番を通じて通報され、巨大な煙が立ち上り、市内各地から目撃された。

■ 事故は最初に火災があり、その後、大きな爆発音と炎が高く燃え上がった。爆発によって地域の住民はパニックを引き起こし、多くの人びとが逃げるように避難した。

■ 近隣の住宅では、家が損傷し、ドアや窓にも被害が出た。自宅が被害を受けた住民のひとりは、爆発直後の様子を「最初に大きな爆発があり、その後立て続けに3回爆発しました。私たちは外に飛び出しました。朝だったので、中には半裸の人もいました。家の窓は粉々に砕け散り、悪夢のようでした」といい、「近くの爆発だと分かって、私たちは逃げました」と語った。

 被害を受けた別な住民のひとりは、「恐ろしい経験をしました。最初、揺れを感じたとき、みんなで外に出て様子を見に行きました。それが火災事故だと分かり、大きな爆発音がしたので、何も持たずに走って逃げました」といい、さらに「数分後、学校から電話があり、私の妹を迎えに来てほしいと言われ、その後、家に戻ってみると、家の中はめちゃくちゃで、窓も網戸もドアもすべて歪んでいました」と語った。

■ さらなる爆発の危険性があるため、地元当局は約2,000人に対し予防的避難命令を出した。 対象になったのは近隣の住宅のほか、1,700人以上の生徒、教師、事務職員を含む学校や近隣の病院が避難措置を取られた。

■ 発災にともない、消防隊や民間防衛隊を含む緊急対応チームが出動した。

 プエブラ州政府は、国家防衛省、国家警備隊、ペメックス(Pemex)、市町村市民保護局、アモソック消防隊、州検察庁の支援を受け、市民保護・災害リスク管理総局および公安省を通じて連携して封じ込めと治安維持活動の調整を開始した。

■ 事故は敷地内の倉庫に貯蔵されていたLPガスが火災を起こし、爆発した。この施設はLPガスタンクが保管されていた倉庫だった。爆発当時、4つのタンクが爆発したという。

■ 爆発によってLPガスを積んだ4台のタンクローリーが被災し、複数回の爆発を起こし、巨大な煙が空高く立ち上った。

■ 当局は、消火活動を継続するとともに、事故原因の調査を開始した。緊急対応チームが既に現場で消火活動と負傷者の救護にあたっているため、住民は現場付近に近づかないよう呼びかけられている。 

■ 発災にともない、負傷者が3名出た。負傷者は病院に搬送され、死者は出ていないことが確認された。

■ 事故はミゲル・ネグレテ・ノボア将軍学校センターのすぐ近くで発生した。そのため、教育省は生徒、教師、事務職員合わせて1,753人を避難させた。

■ 爆発は学校や医療施設が立ち並ぶ繁華街の裏手にある倉庫で発生したが、この倉庫は、非合法の炭化水素貯蔵施設、いわゆる“ワチコール”の秘密貯蔵施設として運営されていた疑いがある。

■ ユーチューブなどでは、爆発・火災のニュースを伝える動画が投稿されている。

  YoutubeMomento exacto de la explosión en depósito de gas LP en Tepeaca, Puebla2026/6/5

  ●Facebook#EN6 | Este día, se registró una explosión de cuatro autotanques de Gas Licuado de Petróleo (GLP) en Tepeaca, Puebla, México2026/6/5

  ●InstagramUna explosión de una bodega donde se almacenaban」2026/6/5

被 害

■ LPガス貯蔵施設の建物、タンク4基、タンクローリー4台などが爆発・火災で焼損した。施設内部にあったLPガスが焼失した。

■ 負傷者が3名発生した。

■ 住民約2,000人が避難した。

< 事故の原因 >

■ 事故原因は分かっていない。

< 対 応 >

■ 消防隊と民間防衛隊員は、火災を消火し、避難した住民が最終的に安全に帰還できる状況を確保するために、数時間にわたって作業を行った。

■ 爆発の威力は、燃料が貯蔵されていたとされる建物を完全に破壊した。わずかに残ったのは、ひどく損傷したコンクリート柱とむき出しの鉄筋だけであり、地域を揺るがした爆発の規模の大きさを物語っていた。さらに、当局はさらなる危険を防ぐため、敷地内にあった4台の車両に対して冷却作業を実施した。

■ 爆発後に行われた調査の中で、当局は災害現場付近に2つ目の貯蔵庫を発見した。現場の調査により、そこにも燃料タンクや燃料の入った容器があったことが確認された。 地元住民によると、この施設はガス輸送関連車両の保管場所として頻繁に利用されていたという。

■ プエブラ州テペアカで発生したLPガスの違法取引に使用されたとされる倉庫やタンクローリー4台の爆発事故は3人の負傷者を出したが、この事件は燃料盗難のリスクを露呈させた。

補 足

■「メキシコ」(Mexico)は、正式にはメキシコ合衆国で、米国(アメリカ合衆国)と中央アメリカの間に位置し、人口約13,000万人の連邦共和国(合衆国)である。

「プエブラ州」(Puebla)は、正式にはプエブラ自由主権州といい、メキシコ中東部に位置する人口約658万人の州で、州都はプエブラ市である。

「テペアカ」(Tepeaca)は、プエブラ州にある人口約84,000人の市であり、歴史的な自治体である。

■メキシコにおける「ワチコール」(Huachicol)とは、麻薬カルテルなどの犯罪組織が国営石油企業(PEMEX)のパイプラインなどから盗み出した違法な石油燃料を指す。また、この燃料密輸や秘密貯蔵施設は「ワチコレオ(Huachicoleo)」とも呼ばれる。盗み出された燃料は、地下施設や民家などに掘られた秘密の貯蔵タンク(トウチェ)や専用ネットワークに隠され、黒幕となる犯罪組織によって闇市場で高値で転売される。メキシコ政府はこれを取り締まるため、軍や警察を動員して秘密貯蔵施設やパイプラインへの不正な分岐孔の摘発を強化している。

■「発災タンク」の仕様は分からない。 報道では、LPガス貯蔵施設だというが、違法な燃料を隠しておくタンクらしいので、正規のタンクや容器ではなく、倉庫や地下に設置された圧力容器型のタンクと思われる。被災写真を見ても、タンクらしいものは見当たらない。

所 感 

■ メキシコにおける違法な油窃盗事件についてこのブログで取り上げたのは、つぎのような事例である。油窃盗は、メキシコなど貧困な国で起こっており、事故も少なくない。

 ● 2014年9月、「メキシコで原油パイプラインからの油窃盗失敗で流出事故」

 ● 2017年9月、「メキシコの石油パイプラインで油窃盗中に爆発、死傷者6名」

 ● 20191月、「メキシコの石油パイプラインで違法な油採取中に爆発、死者99名」

■ これまでは石油パイプラインでの油窃盗事例であったが、今回は窃盗した油をどのようにして保管し、流通させるのかを垣間見る事例である。報道にもあるように「3人の負傷者を出し、燃料盗難のリスクを露呈させた」事例である。


備 考

 本情報はつぎのインターネット情報に基づいてまとめたものである。

     Pueblapost.com, An intense explosion involving four LP gas tanker trucks rocks Tepeaca, Puebla,  June 6, 2026

     Facebook.com, A gas facility explosion in Tepeaca, Mexico, triggered a massive fire and several blasts, injuring three people and forcing the evacuation of about, June 5, 2026

     Reutersconnect.com, Tanker trucks explode at gas facility in Tepeaca, June 5, 2026

     Pueblapost.com, An intense explosion involving four LP gas tanker trucks rocks Tepeaca, Puebla, June 6, 2026

     Parriva.com, Explosion of Four LP Gas Tankers Prompts Evacuation of 2,000 Residents in Tepeaca, Puebla, June 4, 2026

     Aristeguinoticias.com, Fuerte explosión en depósito de gas en Tepeaca, Puebla, June 4, 2026

     Eleconomista.com.mx, Explosión de bodega de gas LP en Tepeaca, Puebla, deja 3  heridos y obliga a evacuar a más de 2,000 personas, June 4, 2026

     Eleconomista.com.mx, La fuerte explosión de cuatro autotanques de gas LP en el ..., June 4, 2026

     Sprinforma.mx, Explosión de cuatro pipas de gas LP dejan 3 lesionados y 2 mil evacuados en Tepeaca, Puebla, June 4, 2026

     Excelsior.com.mx, Explota almacén clandestino de gas LP en Tepeaca, Puebla, June 4, 2026

     Reforma.com, Explosión en Tepeaca exhibe riesgos del huachigas, June 4, 2026

     Oem.com.mx, Explotan cuatro pipas de gas en Tepeaca y evacuan a dos mil personas, June 4, 2026

     Nmas.com.mx,  Mapa de Explosión en Tepeaca, Puebla: ¿Dónde Estallaron las 4 Pipas de Gas LP?, June 4, 2026


後 記: 今回の事例は、最初、“LPガス貯蔵施設におけるタンク爆発という一報から調べ始めましたが、正規の貯蔵施設ではなく、違法性のある石油を保管する倉庫での爆発事例でした。しかし、調べていっても内容が深まりません。まあそうでしょう。現場は避難指示が出されており、近づくことができない状況で、違法な事業者がメディアに応ずることはないわけですので、情報は一貫せず、何が本当の事実かわからない事故でした。そういう訳で今回のブログは事実らしいと思われる記事に基づいてまとめました。