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2026年3月31日火曜日

米国テキサス州の化学工場でプラント異常や操作不具合で火災、タンクが被災

 今回は、2026312日(木)、テキサス州ハリス郡パサデナにあるライオネルバセル社の化学工場で火災が発生して施設内にあったタンク2基が焼損したほかプラント内の配管などが被災し、大量のブタンなどが焼失した事例を紹介します。

< 発災施設の概要 >

■ 発災があったのは、テキサス州(Texas)ハリス郡(Harris)パサデナ(Pasadena)にあるライオネルバセル社(LyondellBasell)の化学工場である。

■ 事故があったのは、ライオネルバセル社のベイポート・チョート(Bayport Choate)工場のプラントである。 ベイポート・チョート工場では、主にプロピレン(Propylene)とイソブタン(Isobutane)を主要な原料として、プロピレン・オキサイドやターシャリー・ブチル・アルコールなどを生産している。

<事故の状況および影響>

事故の発生

■ 2026312日(木)午後9時頃、ライオネルバセル社ベイポート・チョート工場で火災が発生した。

■ 火災が起こる前に、ライオネルバセル社は、工場のプラントで異常が発生し、可燃性ガスを安全に燃焼させるフレアスタック設備を使用することとした。このフレアは大規模になるため、住民が明るい炎や轟音を目にする可能性があるとして、複数の地域の住民へ注意喚起の連絡を出した。

■ ライオネルバセル社は、当初、この出来事を“フレアリング” と呼ぶ自己申告による地域向けのメッセージを発信したが、近隣住民はそれが事実でないことに気づいた。各所から火災ではないのかという連絡があったが、ライオネルバセル社はフレアリングの炎と回答していた。

■ 実際には、操業上の不具合が発生して可燃性ガスが放出し、フレアスタックのパイロットランプによって引火して火災になっていた。別な報道としては、フレア設備が破裂したか、あるいはフレア自体が熱くなり過ぎて激しく燃え上がり、火炎が配管に燃え移り、火災になっていたという。

■ 火災発生の目撃者によると、激しい火災が工場の燃料タンクで起こり、大きな爆発が発生したという。

■ ライオネルバセル社は、消火・災害対応チームが出動した。一方、発災にともない、公的消防の消防隊が出動し、ハズマット隊(HAZMAT)が現場へ到着した。

■ 夜間、工場から煙と炎が上がっているのが見え、近隣住民の間で懸念が広がった。午後942分、当局は、火災が起きて炎とともに大きな煙の柱が出ているということをソーシャルメディアに投稿した。

■ テキサス州環境品質委員会(TCEQ)は、工場の敷地境界線沿いで大気モニタリングを実施している。

■ ハリス郡は、消防隊員が化学物質の混合物を放出しているバルブを閉じる作業を続けていると述べた。

■ 工場施設からは夜通し激しい炎が上がっているのが目撃された。火災は夜間にわたって燃え続け、炎と濃い煙は数マイル離れた場所からも確認できた。

■ ハリス郡汚染管理局は、施設周辺地域で大気汚染のモニタリングを実施した。 「現時点で、対策が必要な数値は検出されていません」と発表し、「住民の人たちは空に大量の煙が立ち昇っていることを心配されるのは当然ですが、燃焼している化学物質は地域社会に脅威を与えるものではありません」と述べた。

■ 312日(木)午後11時過ぎ、ライオネルバセル社は、 「現時点で地域社会への対応は必要ありません」と発表した。

■ 313日(金)午前0時過ぎ、ライオネルバセル社は、今回の出来事を火災と呼ぶメッセージを出し、火災は312日(木)夜に施設内で発生した操業上の混乱が原因で発生したという。

■ 消防署は、施設内のタンク2基が炎上したが、負傷者は報告されていないと述べた。

■ ユーチューブでは、火災のニュースを伝える動画が投稿されている。

  YoutubeUnauthorized contaminants released from LyondellBassell plant at least 36 times, TCEQ says2026/03/16

  ●YoutubeQuestions After at LyondellBasell Chemical Plant Fire in Pasadena2026/03/14

  ●YoutubeFire at LyondellBasell‘s Bayport Choate site extinguished, officials say2026/03/14

被 害

■ 施設内にあったタンク2基が焼損したほか、プラント内の配管などが被災した。内部にあったブタンなどの石油が焼失した。 

■ 負傷者はいなかった。

■ 火災によって大気環境が汚染された。避難指示は出なかったが、住民に心配をかけた。

< 事故の原因 >

■ 事故原因は調査中であるが、火災は312日(木)夜に施設内で発生した操業上の混乱が要因で発生した。

 火災が起こる前に、ライオネルバセル社は、工場のプラントで異常が発生し、可燃性ガスを安全に燃焼させるフレアスタック設備を使用することとした。しかし、操業上の不具合が発生して可燃性ガスが放出し、フレアスタックのパイロットランプによって引火して火災になったか、あるいは、フレア設備が破裂したり、またはフレア自体が熱くなり過ぎて激しく燃え上がり、火炎が配管に燃え移り、火災になったのではないかとみられる。

< 対 応 >

■ 313日(金)午前630分頃、当局は主な火災は制圧したが、施設内では引き続き火災活動が予想されると発表した。

■ 313日(金)午前830分頃、監視ドローンで再び施設上空を飛行したところ、工場の施設内から小さな炎が上がっているのが確認された。

■ 313日(金)、ライオネルバセル社は、火災が午前2時に制圧され、全従業員の安全が確認するとともに、事故ともなう負傷者はいなかったと発表した。また、自衛消防隊は、チャンネル産業協同組合(Channel Industries Mutual AidCIMA)および公設消防の支援を受けたという。 注;CIMAは、ヒューストン圏内の石油精製・石油化学業界において消防業務および危険物取扱いを専門とする非営利団体である。

■ テキサス州環境品質委員会(TCEQ)は、ライオネルバセル社と連絡を取り合っており、今回の事故について調査を行うと語った。

■ 記録によると、テキサス州環境品質委員会(TCEQ)は、昨年発生した排出事故に関して、ライオネルバセル社のベイポート・チョート施設を以前から調査している。テキサス州環境品質委員会の記録によれば、ベイポート・チョートの施設では、過去5年間に36件の無許可の大気汚染物質の放出事例を発生させており、139,000ドル(約2,200万円)の罰金を科されている。この施設では、昨年、大気汚染物質を放出された事案が7件発生しており、このうち6件は現在も捜査中であるという。

■ 2026319日(木)、大気環境保全団体のエア・アライアンス・ヒューストン(Air Alliance Houston)は、地元自治体や企業の関係者が事故発生時に懸念されるような大気汚染問題はなかったと言っていたが、夜間の風向き、地域の大気モニタリング、企業自身の排出量報告書の分析からより包括的な詳細が明らかになったと発表した。エア・アライアンス・ヒューストンは、地域最大のコミュニティ大気監視ネットワークを運営しており、10以上の地域に60個を超す低コストの固定式大気センサーを設置し、10分ごとに大気質データを取得して公開している。

 ●火災発生期間(午後10時~午前6時)中、風はパサデナの北東方向へ吹く傾向にあった。これは、火災による大気汚染物質が工場から離れてベイトンの東部地域へと拡散したことを意味する。 

 ●実際、エア・アライアンス・ヒューストンがベイタウンに設置した地域大気監視装置も、火災発生と同時期に粒子状物質汚染の急増を検知していた。

 ●施設が提出した予備報告書によると、火災により24時間で23,172ポンド(10,510㎏)の大気汚染物質が放出された。これらの汚染物質は主にブタン、一酸化炭素、窒素酸化物、プロピレン、アセトンなどであり、下の図に示す。これらの化学物質はすべて呼吸器系の刺激、頭痛、吐き気などさまざまな健康被害を引き起こす可能性がある。

 地域大気モニタリングプログラムマネージャーは、「だからこそ、地域モニタリングが非常に重要なのです。ベイポート・チョート工場で発生したような事故の影響をより包括的に把握するのに役立ちます。火災の風下側に住む人達が、現場の近くに住んでいた人たちと同じくらい火災の影響を受けた可能性は十分にあります」と述べている。


補 足

■「米国テキサス州」(Texas)は、米国南部にあってメキシコ湾岸に面し、メキシコと国境を接する人口約3,170万人の州である。

「ハリス郡」(Harris)は、テキサス州の南東部に位置し、人口約473万人の郡である。郡庁所在地はヒューストンである。

「パサデナ」(Pasadena)は、ハリス郡の南部に位置し、人口は約15万人の都市であり、ヒューストン都市圏に入っている。

■「ライオネルバセル社」(Lyondell Basell)は、オランダで設立された米国の多国籍化学会社で、米国本社はテキサス州ヒューストンにある。2007年、オランダのバセル社が米国のライオネル社と合併して設立された独立系化学メーカーである。液体・気体の炭化水素原料をプラスチック樹脂などに変える大規模処理プラントを運営している。同社はポリエチレンとポリプロピレン技術の最大のライセンサーであり、エチレン、プロピレン、ポリオレフィン、オキシ燃料なども製造している。

■「発災タンク」は、燃料タンクあるいは大型タンクと報じられているが、詳細仕様はわからない。被災写真を見ると、化学プラント施設内の設備と思われるので、円筒式固定屋根型タンクではなく、プラントの圧力容器型のタンクではないだろうか。

所 感

■ 被災があったのは貯蔵タンクではなく、プラントの圧力容器(タンク)ではないかと思われる。

 発災の要因は、工場のプラントで異常が発生し、可燃性ガスを安全に燃焼させるフレアスタック設備を使用することとしたが、操業上の不具合が発生して可燃性ガスが放出し、フレアスタックによって火災が起きたのではないかと報じられている。大量のブタンをフレアで燃焼させているだが、このフレア燃焼(フレアリング)はプラントを停止させる際に常に行われている操作である。今回、火災に至っているが、たまたまというより、いつかは今回のような火災になるのではなかっただろうかと思わせる工場の安全意識である。

■ 消火戦略には、積極的戦略・防御的戦略・不介入戦略の3つがあるが、今回の火災の燃料源は空気より軽いブタン系であり、消火させるのではなく、冷却作業を主体とする防御的戦略をとったものとみられる。

“消防隊員が化学物質の混合物を放出しているバルブを閉じる作業を続けている”というのが、適切な対応である。 312日(木)午後9時頃に発災し、翌13日(金)午前630分頃に火災を制圧したというので9時間を超える燃焼時間であり、バルブを閉じ、燃え尽きるまでに時間がかかっている。


備 考

 本情報はつぎのインターネット情報に基づいてまとめたものである。

    Abc13.com,  Fire chemical plant in Pasadena contained; emergency officials say cause of incident unknown,  March 14,  2026

    Reuters.com,  LyondellBasell says fire contained at Texas chemical plant,  March 13,  2026

    Houstonpublicmedia.org, Emergency crews, pollution control respond to fire at Pasadena chemical plant,  March 13,  2026

    Inspectioneering.com, Fire Breaks Out at LyondellBasell Plant in Pasadena, TX; No Injuries Reported,  March 13,  2026

    Airalliancehouston.org, UPDATED 3/19/26 – Air Alliance Houston Statement on the LyondellBasell Plant Fire in Pasadena, Texas, “What the Wind Tells Us”,  March 19,  2026

    Fox26houston.com, LyondellBasell industrial fire out in Pasadena; no air quality concerns reported,  March 19,  2026

    Click2houston.com, Fire at LyondellBasell chemical plant in Pasadena extinguished; air monitoring shows no danger to public,  March 13,  2026

    Bicmagazine.com, Flames shoot into sky after fire at Pasadena chemical plant,  March 13,  2026

    Arnolditkin.com, LyondellBasell Fire at Bayport Choate Plant in Pasadena, Texas,  March 12,  2026

    Cw39.com, TCEQ to investigate fire at Lyondell Basell’s Pasadena site,  March 15,  2026

    Aol.com, Fire chemical plant in Pasadena contained; emergency officials say cause of incident unknown,  March 14,  2026


後 記: 今回の事例はプラントの火災ですが、被災に2基のタンクという情報から調べることとしました。事故の経緯は分かりましたが、肝心の被災したタンクについては報じられておらず、大きさなどの仕様は分かりませんでした。

 ところで、地元の徳山港で昨年9月に直径40cm×長さ120cmの不発弾が見つかり、先週の325日に海上自衛隊が水中で爆破させたというニュースがありました。午前11時過ぎに爆破させましたが、場所が出光興産の桟橋に近く、防護対策として水中で気泡を発生させて爆破の影響を緩和させるバブルカーテンという方法を国内で初めて採用しています。当時私は自宅におり、家が一瞬揺れました。「地震!」と思いましたが、不発弾処理の話は聞いていたので、爆破させたのだと理解しました。現場は終戦まで海軍燃料廠があり、米軍による空襲があっています。徳山海軍燃料廠の爆撃跡の写真は、20186月のブログ「米国コロラド州のタンク施設で落雷による火災」の後記に載せています。


2026年3月21日土曜日

アラブ首長国連邦(UAE)のシャルジャ首長国で石油タンクが漏洩して火災

 今回は、2026314日(土)、アラブ首長国連邦(UAE)のシャルジャ首長国のシャルジャ市にある工業地区の石油貯蔵タンクが火災になった事例を紹介します。

< 発災施設の概要 >

■ 発災があったのは、アラブ首長国連邦(United Arab EmiratesUAE)シャルジャ首長国(Sharjah)のシャルジャ市アル・サジャア工業地区(Al Sajaa)にある石油貯蔵施設である。

■ 事故があったのは、アル・サジャア工業地区の石油貯蔵タンクである。

<事故の状況および影響>

事故の発生

■ 2026314日(土)午後9時頃、アル・サジャア工業地区にある石油貯蔵タンクを含む施設で火災が発生した。火災はタンクの一つから発生し、炎が燃え広がった。

■ 首長国の民間防衛当局によると、この事故は1基のタンクの漏洩が要因だった。

■ 消防隊は午後9時頃に通報を受け、直ちに現場に駆けつけ、定められた手順に従って消火活動と冷却作業を開始した。可燃性の高い石油系物質の取扱いに関する手順と基準に従った。

■ 現場報告によると、消防隊が記録的な速さで対応し、火災がタンクや隣接する倉庫に延焼するのを防いだ。

■ 事故にともなう死傷者はいなかった。

■ ユーチューブでは、石油タンクの火災のニュースを伝える動画が投稿されているが、文字のみで画像はない。

 Youtubeالشارقة: السيطرة على حريق بمنشأة صهاريج بترولية في الصجعة ...2026/03/14

被 害

■ 石油タンクが火災で損傷した。

■ 死傷者はいなかった。  

< 事故の原因 >

■ 発災要因はタンク1基からの漏洩である。漏洩の部位や原因はわからない。

< 対 応 >

■ 消防隊は、発生した火災を鎮火した。

■ 当局によると、消防隊は現場に留まり、封じ込め措置を継続した。

■ 専門機関が事件の原因究明のための調査を開始する予定である。

補 足

■「アラブ首長国連邦」(アラブしゅちょうこくれんぽう、 United Arab EmiratesUAE は、中東に位置し、7つの首長国からなる連邦制国家で、人口は約11,000万人である。首都はアブダビ市で、公用語はアラビア語である。アラブ首長国連邦はアラビア半島のペルシャ湾南岸でオマーン湾西岸にあり、対岸のイランと向かい合う。東部ではオマーンと、南部および西部ではサウジアラビアと陸上国境を接する。カタールとは国境を接していないが、カタールとの間のサウジアラビアの一部地域の領有権をめぐる論争が発生している。

「シャルジャ首長国」 (Sharjah) は、アラブ首長国連邦の7つある首長国のひとつで、人口約180万人の国である。

「シャルジャ市」は、ペルシャ湾に臨み、シャルジャ首長国の首都で人口約80万人の市である。アラブ首長国連邦ではドバイ、アブダビ市に次ぐ第3の都市である。

■「発災タンク」は、アル・サジャア工業地区にある石油貯蔵タンクという記事だけで、タンクの大きさなどは報じられていない。アル・サジャアをグーグルマップで調べると、小型のタンクは見られるが、いわゆる石油貯蔵所(油槽所)というような規模の大きい石油タンク群ではないとみられる。アル・サジャアにある石油貯蔵タンクの一例を示す。

所 感

■ 最近、米国・イスラエルーイランの戦争で中東の石油施設が攻撃対象になっているが、シャルジャ首長国の石油貯蔵タンクが漏洩によって火災になったというメディア情報を知った。シャルジャ首長国はどこにあるのか疑問になり、調べることとした。

 結果はブログで書いたとおりで、事故内容の詳細は分からなかったし、被災写真も無かった。。これが米国・イスラエルーイラン戦争で中東諸国が巻き込まれている影響の所為なのか、アラブ首長国連邦の国情なのかどうか分からない。


備 考

 本情報はつぎのインターネット情報に基づいてまとめたものである。

Timesofindia.indiatimes.com, Another fire hits Gulf energy infrastructure: Sharjah petroleum storage blaze ignites security feas amid Iran vs US-Israel war,  March 15,  2026

 ・Khaleejtimes.com, استجابة سريعة تخمد حريقاً فيصناعية الصجعةبالشارقة, March 15,  2026

    Ajel.sa, حكومة الشارقة بالإمارات تسيطر على حريق في منشأة تحتوي على خزانات بترولية, March 15,  2026

    Arabic.rt.com,   اندلاع حريق في منشأة تخزين نفط في الشارقة بالإمارات, March 14,  2026

    Alqudsalarabi.co.uk, مسؤولون: حريق عرضي في منشأة تخزين نفط في الشارقة بالإمارات, March 14,  2026

    Royanews.tv, دفاع مدني الشارقة يسيطر على حريق في منشأة لصهاريج البترول بمنطقة الصجعة, March 15,  2026


後 記: 先週、後記で“イランの事故報道については以前から疲れる内容が少なくなく、今回のイランの報道記事は比べ物にならないほど内容のはっきりしないものでした” と書きましたが、もっと内容の薄い報道記事がありました。紹介しようと思ったのは、シャルジャ首長国がどこにあるのかということです。というより、私自身、どこにあるのか分からなかったので、調べてみることにしたのがきっかけです。今回の事例はメディアの取材にとって午後9時という時間帯も悪かったですね。 しかし、アラブ首長国連邦は「報道の自由度ランキング2025年版」で180か国中164位ですからもともと報道に関して自由度はなかったようです。一方、近年、各地で戦争や争いが増えてきて、報道の自由度が低下してきているのは憂うべきことですね。

2026年3月16日月曜日

イランのテヘラン周辺で複数の石油貯蔵所がイスラエルの空爆で火災

 今回は、米国とイスラエルによるイランへの共同攻撃が228日(土)に始まり、1週間にわたりイランの軍事・安全保障インフラストラクチャを破壊したが、202637日(土)夜、テヘラン周辺の複数の石油貯蔵所がイスラエル空軍によって空爆された事例を紹介します。

< 発災施設の概要 >

■ 発災があったのは、イラン(正式にはイラン・イスラム共和国)テヘラン周辺の石油貯蔵所である。

■ 事故があったのは、石油貯蔵所にある石油タンクである。

■ 米国とイスラエルによるイランへの共同攻撃は、2026年228日(土)に始まり、ハメネイ師と軍の上級司令官を標的とし、1週間にわたりイランの軍事・安全保障インフラストラクチャを破壊している。

<事故の状況および影響>

事故の発生

■ 202637日(土)夜、イランの首都テヘラン周辺では、規模の大きい石油貯蔵所の爆発による炎と煙に包まれた。発災施設は、テヘラン北西部のシャーラン石油貯蔵所、陸軍石油貯蔵所として知られるアクダシー石油貯蔵所、シャーレ・レイ石油貯蔵所、コハク石油貯蔵所、テヘランに隣接するカラジュ市のファルディス石油貯蔵所と報じられている。

 テヘランの西方にあるカラジュ市の住民のひとりは、「最初は赤い光があたりを照らし、その後に風圧が来てドアが揺れました」といい、「その後、空が再び明るくなり、巨大な赤い雲が現れました。何が起こっているのか分かりませんでした」と語ったが、自宅の屋根に上がったところ、地元の石油貯蔵所が燃えているのを見たと付け加えた。

■ テヘランの石油貯蔵所3か所と、テヘラン西部のカラジ市にある石油貯蔵所1か所をイスラエルが攻撃し、テヘランの北東部、南部、西部から大量の煙が上がるのが目撃された。

■ テヘラン市内の北部タジリシュ地区にあるアグダシー石油貯蔵所では、オレンジ色の炎が燃え上がり、煙が噴き出す様子が見られた。

■ シャーレ・レイ石油貯蔵所はテヘラン製油所の隣にあるが、製油所は被害を受けていないという。 

■ 38日(日)朝、イスラエルは、イラン全土のインフラストラクチャに対して空軍が一連の攻撃を開始したと発表した。これに関して、イスラエルは、テヘランにあるイランの軍隊が使用する燃料タンクを標的にしたという。イスラエル軍によれば、イラン軍がこれらの燃料タンクを直接的に繰返し使用して軍の補給所を運営し、それを通じてイラン国内の軍事機関を含むさまざまな消費者に燃料を輸送していると言っている。

■ ユーチューブなどでは、石油貯蔵所とみられる火災のニュースを伝える動画が投稿されている。

 Youtube Iran's Largest Oil Depot Goes Up In Flames After Israeli Jet Lock In Tehran From East, West & South2026/03/08

 ●Edition.cnn.comTehran’s Shahran oil depot on fire2026/03/08

 ●FacebookHUGE FIRE IN FUEL DEPOT in Iran Eyewitness footage2026/03/08

 ●Facebookצהל פתח הערב במתקפה על אתרי הנפט הלאומיים של איראןלראשונה2026/03/08

被 害

■ テヘランとカラジュにある複数の石油貯蔵所が被害を受けた。被害タンク数はわからない。

■ 石油タンクの火災(黒煙)によって大気環境が悪化した。このため住民に自宅待機が要請された。  

< 事故の原因 >

■ 原因は、テロによる“故意の過失”でなく、戦争時の攻撃によるものである。 

< 対 応 >

■ イラン当局は、テヘランの空気の質を監視しており、住民に自宅待機を要請した。

■ イラン外務省は、攻撃により「有害・有毒物質が大気中に放出された」といい、「大規模な人命の危険にさらされている」と述べた。

■ 38日(日)昼、住民によると、煙の雲はイランの首都を覆い尽くし、正午なのに午後10時くらいに感じられたという。煙のせいで家から出られなくなり、家の中で呼吸するのもやっとだったといい、「頭痛がして家で座っています。口の中が苦いです」と語った。また別な住民は、「ひどい状況です」といい、雨が降って煙が薄くなった後も、「まだ煙の臭いがする」と語った。

■ 爆発によって空中に噴き出した油は、降雨に加え、車や人々に降り注いだ。市内シャーラン地区の道路では、大通りの側溝に油が流れ出ていた。

■ テヘランで石油タンクの火災と爆発が相次いでいることを受け、イランの環境保護機構(EPA)は38日(日)に声明を発表し、首都テヘランの大気汚染レベルが上昇していると警告した。環境保護機構(EPA) は、石油貯蔵所への最近の攻撃によって生じた有毒化合物の流入が、市民の呼吸器系疾患を危険な状態に陥らせていると述べた。

■ イラン国内で医療・救護活動を行う人道支援団体であるイラン赤新月社(IRCS)は、爆発によって炭化水素、硫黄酸化物、窒素酸化物が大気中に放出されたと警告を発した。これらの物質が降下すると、腐食性の高い酸性雨を引き起こす可能性がある。この雨は、皮膚への化学火傷や呼吸器系への深刻な損傷を引き起こす危険性があるという。

■ 環境保護団体は、「広範囲にわたる石油タンクの空爆と、火災の黒煙層の下にテヘランがあるような状況は、明らかに環境犯罪です」といい、「これは、罪のない人々や民間人の命を脅かす非人道的な行為であり、住民は戦争による危険な環境的影響に耐えなければなりません」と語った。

補 足

■「イラン」 (Iran)は、正式にはイラン・イスラム共和国で、西アジア・中東のイスラム共和制国家である。世界有数の石油産出国であり、人口は約9,175万人で、首都はテヘランである。公用語はペルシア語である。

「テヘラン」(Tehran)は、イランの北部に位置し、人口約870万人のイラン最大の都市で、首都である。

「カラジュ」(Karaj)は、テヘランの西20kmにあり、人口196万人の都市である。

 イランに関する過去の主なブログは、つぎのとおりである。

  ●「イランでサイバー攻撃が疑われる中、精油所でタンク火災」201610月)

  ●「イランのテヘランで石油施設に落雷後、タンク火災」20172月)

  ●「イランのハールク島にある石油化学でガソリンタンク火災」20218月)

  ●「イランの製油所でタンクローリーによるプラント内の石油タンクが火災、負傷8名」20237月)

  ●「イランの簡易製油所で15基のコンデンセートタンク等が火災・爆発、48時間燃焼」 202312月)

  ●「イランの港湾施設で化学物質コンテナが爆発、死者57人、負傷者1,566 人」20255月)

所 感

■ これまで無人航空機(ドローン)による石油タンクの被害についてはブログで紹介してきたが、戦争目的の空爆(おそらく戦闘機のミサイルなど)による石油タンクの火災についてはブログに取上げなかった。今回、米国・イスラエルによるイランの石油貯蔵所への空爆による攻撃があり、実態を調べてみることにした。

 しかし、予想していたとおり石油タンクの被害状況については分からなかった。ロシアーウクライナ戦争では少しは被害情報が報じられていたが、米国・イスラエルーイラン戦争では、夜空に爆発による火炎や黒煙が上がる動画や写真が報じられていただけだった。夜が明けても石油タンクの被害状況の記事は出てこなかった。

■ 石油タンクの被害状況が報じられていないので、消火活動の報道記事はまったく出てこなかった。事故ではなく、戦争時の攻撃によるものであるので、消火活動自体が再度の空爆による人命のリスクを考えれば、消火活動は行われなかっただろう。 


備 考

 本情報はつぎのインターネット情報に基づいてまとめたものである。

     Ir.voanews.com, تمرکز حملات اسرائیل بر زیرساخت‌ها و مخازن سوخت در هشتمین روز عملیات نظامی در ایران,  March 06,  2026

     Vista.ir,  واکنش رئیس سازمان محیط زیست به انفجار مخازن نفت,  March 09,  2026 

     Farsi.anf-news.com,  واکنش رئیس سازمان محیط زیست به انفجار مخازن نفتهشدار درباره باران‌های اسیدی در تهران پس از انفجار مخازن سوخ March 08,  2026

     Bbc.com, 'Night turned into day': Iranians tell of strikes on oil depots,  March 08,  2026

     Ft.com, Tehran residents warned of acid rain after oil storage attack,  March 08,  2026

     Nbcnews.com,  Toxic rain fell over Tehran as airstrikes hit oil facilities,  March 08,  2026 


後 記: 労多くして成果の薄い内容になってしまいました。まず、石油貯蔵所の場所がなかなか特定できず、結局、“コハク石油貯蔵所” はわかりませんでした。被害を受けた石油タンクの基数はわかりませんし、被害を受けた石油貯蔵所の数だって4か所と3か所と差異があり、何が真実なのかわかりません。戦争では、攻撃国と被害を受けた国では、戦果や被害について意図してうその発表をします。現代でいうフェーク・ニュースです。イランの事故報道については以前から疲れる内容が少なくないものでしたが、今回の報道記事は比べ物にならないほど内容のはっきりしないものでした。調べるのを途中でやめようかとも思いましたが、希薄な内容でまとめました。 

2026年3月6日金曜日

ブラジルでエタノールタンクの保全工事中に爆発、死傷者3名

 今回は、2026222日(日)、ブラジルのリオデジャネイロ州ボルタレドンダ市にあるビブラ・エネルジア社の燃料供給基地にあるエタノールタンクについて真夜中の保全工事を行っていたところ、タンクが爆発を起こして3名の死傷者を出した事例を紹介します。

< 発災施設の概要 >

■ 発災があったのは、ブラジル(Brazil)リオデジャネイロ州(Rio de Janeiro)ボルタレドンダ市(Volta Redonda)にあるビブラ・エネルジア社(Vibra Energia)の燃料供給基地である。ビブラ・エネルジア社はペトロブラス系で旧ペトロブラス・ディストリビュードラである。

■ 事故があったのは、燃料供給基地にある容量2,000KLのエタノール貯蔵タンクである。事故当時は約350KLの製品が入っていた。

<事故の状況および影響>

事故の発生

■ 2026222日(日)午前1時頃、燃料供給基地内にあるエタノール貯蔵タンク1基が爆発し、火災を起こした。

■ 発災にともない、ビブラ・エネルジア社の消防隊が出動した。

■ 爆発当時、現場では工事請負会社の従業員3名が作業していた。ビブラ・エネルジア社によると、爆発は設備のメンテナンス中に発生し、現場で溶接などの工事が行われていたという。

■ 事故にともない、ひとりが負傷し、2名が行方不明となっている。行方のわからないふたりは、事故発生時にタンク内もしくはそのすぐ近くにいたのではないかという。

■ ブラジルの国営石油庁(ANP)は、ビブラ・エネルジア社に対してボルタレドンダ地域の燃料供給基地の活動停止を命じた。

■ この活動停止に対してビブラ・エネルジア社は、「この地域では供給不足のリスクはありません。当社は既に顧客へのサービス提供のため代替物流ルートを稼働させており、供給拠点は別な供給基地に移す予定です」と語った。

■ 事故にともない、半径300m以内に住む周辺地域の住民41世帯118名が予防措置として避難させられた。ビブラ・エネルジア社は、ボルタレドンダ市役所と連携して住民にホテルの宿泊施設と交通手段を提供した。

■ ボルタレドンダ市役所によれば、タンクは容量2,000KLで、内液はアルコール(エタノール)で、事故当時は約350KLの製品が入っていたという。

■ ビブラ・エネルジア社の消防隊と消防署は協力して火災の制圧作業を行った。

■ 事故による地域の環境への影響はなかった。

■ ユーチューブでは、タンク事故のニュースを伝える動画が投稿されている。

 ●Youtube Explosão em tanque de combustível deixa um ferido e 2 desaparecidos no RJ | AGORA CNN2026/02/23) ・・・・Youtubeの翻訳機能を使えば、日本語訳が出てくる

被 害

■ 容量2,000KLのエタノールタンクが損壊した。内部のエタノールが一部焼失した。

■ 被災者3名が発生した。内訳は死者2名、負傷者1名である。

■ 近くの住民41世帯118名が避難した。

< 事故の原因 >

■ 事故の原因は調査中である。タンクの爆発は、真夜中におけるタンク設備への溶接作業によるものとみられる。  

< 対 応 >

■ ボルタレドンダ消防署(第22消防大隊)は約30名を動員し、危険区域の捜索と監視を行うため、サーマルカメラを搭載した9台の特殊車両とドローンを出動させた。

■ 消防隊によって火災は消し止められ、再燃を防ぐため、影響を受けたタンクの冷却作業が行われた。

■ この地域の交通は通常通り運行し始めた。

■ しかし、火災直後に出てきた最大の課題は、火災そのものではなく、タンク内に残っていた約350KLのエタノール燃料だった。行方不明者の捜索のため、損傷したタンク内に入る前に、この燃料を除去する必要があった。

■ ビブラ・エネルジア社は、消防署と協力して、被害を受けた貯蔵タンクから残りの製品をタンクローリーに積み替え、別な拠点に輸送すると語った。残っていたエタノールの移送作業はタンクローリーで開始されたが、厳格な安全基準のもとで進められ、予想よりも遅れた。最初の数時間で少なくとも180KLが移送された。移送を完了するために、タンクローリー以外の車両も投入された。

■ 223日(月)朝、行方不明となっていた28歳と29歳の男性2名は、タンク内で死亡しているのが発見

された。

■ ビブラ・エネルジア社は関係当局とともに事故の原因を調査中だと述べた。

■ 避難した118名は自宅に戻った。

■ タンク爆発は突然起こるものではない。ほとんどの場合、誤った判断、警告の無視、手順の不備が積み重なり、火花、人為的ミス、設備の故障といった誘因が起こり、最終的に炎と煙へと変化する。

 ボルタレドンダ事故の調査では、その日に何が起こったかだけでなく、タンクTQ-1310の保守履歴、検査記録、溶接作業に関する安全文書、外注作業員の訓練、そしてビブラ・エネルジア社と作業員派遣会社との間の契約管理についても調査する必要がある。こうした包括的な情報に基づいて初めて、事故の真の原因を解明し、さらに重要なこととして、再発防止を図ることができる。

■ 今回の燃料産業の事故について、メディアの中には、つぎのような見解を述べているところがある。

 ● ボルタレドンダ事故は、燃料産業の歴史における孤立した出来事ではない。むしろ、過去数十年にわたり、様々な国や状況で発生してきた一連の悲劇の一部であり、その原因は常に不安を掻き立てるほどの規則性で繰り返されている。安全手順の不備、生産性へのプレッシャー、不適切なアウトソーシング管理、そして不十分な監督といったものである。

 ● ボルタレドンダのような産業事故において、あまり議論されていないことのひとつが、住民の避難のロジスティクスと責任である。危険な施設の近くに住んでいない人にとっては、人々は避難する必要があるという単純な話に思えるかもしれない。しかし、実際には、そのプロセスははるかに複雑で、技術的、法的、そして人道的な一連の決定が、今回のように真夜中に十分な情報がないまま迅速に行われなければならない。

 ● 避難の決定と避難区域の半径は、まず消防署の専門家、特に危険物処理グループによって決定される。専門家は、燃焼源の種類と量、気象条件、ベーパーの挙動に影響を与える地形、そして損傷したタンクなどの構造物の状態といった一連のパラメータを用いて安全範囲を計算する。

 ● ブラジルでは、産業事故後の避難に関して重要な前例がある。2019年、ヴァーレ社が所有するミナスジェライス州のブルマジーニョダムの決壊は、ブラジル史上最大級の悲劇のひとつで、270人が死亡、数十のコミュニティが影響を受けた。

 ● 性質は異なるが、今回の事例は、危険な施設と居住地域が近接していることが社会および公共管理における時限爆弾となることを明らかにした。2024年には、サンパウロ州内陸部の工場でアンモニア漏れが発生し、近隣地域全体が避難を余儀なくされた。これは、多くの自治体における化学物質による緊急事態への備えの不足を浮き彫りにした。

補 足

■「ブラジル」(Brazil)は、正式にはブラジル連邦共和国で、南アメリカに位置する人口約21,200万人の連邦共和制国家である。首都はブラジリアである。

「リオデジャネイロ州」(Rio de Janeiro)は、ブラジル西部に位置し、大西洋に面した人口約1,700万人の州である。

「ボルタレドンダ」(Volta Redonda)は、リオデジャネイロ州の西に位置し、人口約27万人の都市である。

■「ビブラ・エネルジア社」(Vibra Energia)は、旧ペトロブラス・ディストリビュードラ(Petrobras Distribuidora)で、ブラジル最大手の燃料・潤滑油販売会社である。全国に8,000以上のガソリンスタンドを有し、再生可能エネルギーを含めた持続可能なエネルギーソリューションへ事業を拡大している。ビブラ・エネルジア社は、2019年にペトロブラスが株式の71%を市場に売却して民営化し、その後、独立して事業を展開し、2021年に今の社名に変更した。

 ボルタレドンダにある燃料供給基地(ターミナル)は、9基の貯蔵タンクがあり、総容量は28,000KLである。この地域の販売会社へエタノール、軽油、ガソリンなどの供給を行っている。

 この燃料供給基地が住宅地の近くに位置しているという問題は、ブラジルの都市計画において最も古く、かつ未解決の問題のひとつである。これらの産業施設のほとんどは、都市が今より小規模だった数十年前に建設された。無秩序な都市成長によって住宅地が産業やターミナル周辺の地域にまで広がってきた。今日では、こうしたインフラストラクチャーが、人口密度の高い地域に埋め込まれてしまっている。

■「発災タンク」は容量2,000KLで、発災時は350KL(容量の約17%)入っていたと報じられている。被災写真からコーンルーフ式の固定屋根型円筒タンクである。グーグルマップ(ストリートビュー)で調べると、タンク番号“TQ1310” によって燃料供給基地の北東側にあるタンクだとわかった。このタンクの直径は約13mであり、容量2,000KLから高さは15mとなる。発災時の液位は約2.6mである。

■「エタノール」(エチルアルコール; C2H6O)は、引火点が約13℃で揮発性が高く、室温でも可燃性ベーパを容易に放出し始める。このベーパーが電気火花、溶接火花、裸火などの発火源に接触すると、激しい爆発を引き起こす可能性がある。爆発限界は、空気中で約3.319.0vol%である。

 また、エタノールには消火を困難にする特殊な特性があり、エタノールは水に溶ける性質がある。すなわち、水ではエタノール火災を消火できないだけでなく、場合によっては液体と混ざることで可燃性ベーパーの拡散を助長する。今回の事例では、蒸発によって発生したベーパー量は、タンク内部に爆発性雰囲気を生成するのに十分すぎるほどだった。なお、ブラジルは米国に次いで世界第2位のエタノール生産国であり、この燃料はガソリンスタンドなど様々な産業用途で使用されている。

■「エタノール火災の消火」には、AR-AFFF(耐アルコール性)と呼ぶ特殊な消火泡を用いる。この泡は燃焼液の表面に膜を形成し、酸素を遮断し、ベーパーの発生を抑える。ブラジルの多くの消防署では、アルコール専用泡の不足が消防業界の既知の問題となっている。  

■「ブラジルの規制基準」 ブラジルの法律、特に労働雇用省の規制基準20NR-20)は、可燃性および可燃性液体のある環境での作業に関して厳格な要件を定めている。溶接、切断、研磨、その他の熱、火花、炎を発生させる作業を行うための要件には、作業許可証の発行、適切な機器を用いた環境中の可燃性ベーパー濃度の測定、機器の完全な隔離、特定の個人用保護具の使用、そして作業中は訓練を受けた監視員の立会いなどが含まれる。

 作業許可証は、すべての安全条件が満たされていることを確認した後、活動の実行を許可する文書である。資格を有する専門家によって発行され、有効期間は通常1シフトに限定され、シフトごとに更新する必要がある。さらに、ガス濃度の変動やタンク操作の変更など、環境条件に変化があった場合は、状況の再評価が行われるまで活動を直ちに中断する必要がある。

 ブラジル規制基準NR-20では、可燃性リスクのある環境で作業を行う労働者は、特定の定期的な研修を受けなければならないこと、また、請負者や下請業者を含む雇用主は、安全基準の遵守について共同責任を負うことが規定されている。

 今回の事例の疑問点は、222日の早朝(真夜中)の溶接作業に有効な作業許可証が発行されていたのか、そして作業開始前に大気測定が行われたのかという点である。

所 感

■ 事故の原因は調査中であるが、「タンク内外の火気工事における人身事故を防ぐ7つの教訓」20117月)を問う以前の問題であるように思う。日本から見れば不可思議な事例である。なぜ真夜中の午前1時頃に火気工事を行わなければならなかったのか、なぜ代替手段で対応できなかったのか、なぜタンク屋根付近の工事で二人がタンク内に落ちたのか(入ったのか)、というような疑問が出てくる。

 しかし、夜中にタンク設備で不具合が見つかった場合に、どのような対応をとるかということを考えるに良い事例であろう。

■ 消火活動はビブラ・エネルジア社の自衛消防隊によって行われ、公設の消防署が協力したと思われる。しかし、その活動自体がどのようなものだったかは報じられていない。タンクには、固定泡消火設備が設置されており、被災写真でも被害は受けていないようなので、 AR-AFFF(耐アルコール性)の特殊な消火泡が投入されて消されたものだろう。


備 考

 本情報はつぎのインターネット情報に基づいてまとめたものである。

     Marketscreener.com, Brazil's ANP shuts down Vibra fuel base after ethanol tank explosion leaves one injured, two missing,  February 24,  2026

     Qcintel.com,  Rio de Janeiro ethanol unit shut down following explosion,  February 24,  2026

     Cnnbrasil.com.br, Explosão em tanque de combustível deixa um ferido e 2 desaparecidos no RJ,  February 24,  2026

     G1.globo.com, Explosão em tanque de combustível em Volta Redonda: o que se sabe e o que ainda falta esclarecer,  February 23,  2026

     Novacana.com, O que pode ter provocado a explosão que matou dois trabalhadores da Vibra,  February 26,  2026

     Veja.abril.com.br, Corpos de desaparecidos em explosão de tanque de combustível no Rio são encontrados,  February 23,  2026

     Estadao.com.br, Explosão em tanque de combustível leva à evacuação de 118 moradores em Volta Redonda,  February 23,  2026

     Economia.uol.com.br, Explosão em tanque da Vibra no RJ deixa um ferido e dois desaparecidos; ANP determina interdição,  February 23,  2026

     Usebaratao.com.br, Explosão em Volta Redonda: A Tragédia da Vibra Energia,  February 23,  2026


後 記: 本当に不可思議な事例です。まったく基本を無視したようなタンク事故です。報道でもブラジルという国がよくわかりません。事故から2日目には詳細な見解を述べているところが現れています。このアンバランスさは何でしょうね。

 メディアの写真の中には、下のような事故後の画像がありました。今回の事故は被災写真があまりなかったので、目につきました。ところが、“AI(人工知能)によって作成された画像という説明があり、フェーク写真とわかりました。消防車や見物人を入れてうまく出来た画像です。出来過ぎの画像なので気が付きますが、巧妙なものだったら、わからないでしょうね。