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2026年10月2日金曜日

ブラジルのサンパウロ州の化学工場でタンク火災、住民約150名が避難

 今回は、2026年8月4日(火)、ブラジルのサンパウロ州イタクアケセトゥバにあるケマ・キミカ社の化学工場で、溶剤タンクなどが火災や爆発を起こし、鎮火までに約33時間かかり、住民約150名が避難したという事例を紹介します。

< 発災施設の概要 >

■ 発災があったのは、ブラジル(Brazil)のサンパウロ州(São Paulo)イタクアケセトゥバ(Itaquaquecetuba)にあるケマ・キミカ社(Quema Química)の化学工場である。工場では、溶剤とポリエステル系樹脂を製造している。

■ 事故で影響があったのは、化学工場内にある溶剤貯蔵タンクである。工場には、メタノール、エタノール、アセトン、トルエン、ヘキサンなど約200万リットル(2,000KL)の製品が保管されていた。

<事故の状況および影響>

事故の発生

■ 2026年8月4日(火)午後3時過ぎ、ケマ・キミカ社の化学工場で火災が発生した。火災が拡大して爆発が起こった。

■ 住民から工場敷地内で複数の爆発音が聞こえたとの通報を受け、消防隊が出動した。消防隊は18台消防車とともに現場に向かった。

■ 消防隊は、火災の消火と、ほかの貯蔵タンクや工場区域への延焼防止に努めた。消防署は「火災は揮発性物質を貯蔵したタンクが関係している」と述べている。

■ 工場内にはメタノール、エタノール、アセトン、トルエン、ヘキサンといった引火性の高い可燃性物質が約200万リットル(2,000KL)貯蔵されており、これらに次々と引火していった。 火災は激しさを増し、数km先からも見えるほどの濃い黒煙の柱を発生させ、爆発を引き起こした。電力会社は工場への送電を停止した

■ 工場からは巨大な炎が轟音を立てて噴き上がり、黒煙が100フィート(約30m)以上も空高く立ち昇り、火災現場では、可燃性物質を入れたドラム缶が空中に投げ上げられた。

■ 住民のひとりは、「あの化学工場で火災が発生しました。今でもあちこちで爆発が起きています」と語った。別な住民は、「私は家にいたのですが、突然爆発音が聞こえました。何が起こっているのか外に出てみると、化学工場が火事になっていました。火の勢いが非常に強く、すぐには消えそうにありません。かなり時間がかかりそうです」と語った。

■ 工場では、溶剤とポリエステル系樹脂を製造しており、現場には大量の可燃物が存在するため、消火活動は難航した。工場には24基の容量約30KLの溶剤貯蔵タンクのほか、5000リットルタンク6基、200リットルのドラム缶、100個以上のIBC型コンテナなどが保有されていた。

■ 大規模の火災になったため、近隣の住宅や工場からの避難が余儀なくされ、当局は近隣住民約150人を避難させた。

■ 消防隊は、事態を収拾するために長時間の消火活動を行った。消防士たちは夜通し現場に留まり、翌日も大規模な火災の鎮火に努めた。

■ 夜の駐車場から撮られた爆発時の映像には、巨大な火球と濃いオレンジがかった煙が暗い空に高く立ち昇る様子が捉えられていた。

■ 溶剤の可燃性物質を貯蔵する複数のタンクが巻き込まれて火災になり、 敷地内のタンクが爆発したほか、流出した可燃性物質が公共の雨水排水系に流れ込んだことで、道路中央にあるマンホールが次々と吹き飛ぶという異例の事態が発生した。通行人が爆発の一つで吹き飛ばされたと報じられている。

■ 当局は、現場周辺を封鎖し、消防隊が危険がなくなったと宣言するまで電力供給は再開されないと発表した。

■ 事故にともなう死傷者は無かったと大半のメディアは報じたし、事故後の事業者の発表でも、従業員には負傷者はいなかったという。一方、メディアの中には、21名の負傷者が出たと報じている。

■ 施設内には溶剤用のタンクやドラム缶などがあり、火災を絶えずあおっているため、消火活動は非常に複雑かつ危険だった。さらに、工場は揮発性や可燃性物質を集中する工業地帯に位置しており、爆発のリスクが影響を高め、封じ込め作業を困難にした。

■ ユーチューブでは、火災のニュースを伝える動画が投稿されている。

   ●YouTube、「Incêndio destrói indústria química em Itaquaquecetuba」(2026/8/6)

   ●YouTube、「Incêndio de grandes proporções atinge indústria química em Itaquaquecetuba (SP) 」(2026/8/6)

   ●YouTube、「SP: explosões assustam moradores e incêndio em fábrica química passa de 13 horas」(2026/8/6)

   ●YouTube、「Helicóptero do SBT mostra como ficou fábrica após incêndio devastador em SP |」 (2026/8/6)


被 害

■ 化学工場の施設が全焼した。保有していた200万リットル(2,000KL)の

タンクは容量30KLタンク24基、5000リットルタンク6基、200リットルのドラム缶、100個以上のIBC型コンテナがあったが、内部の油の焼失とともに損傷したものと思われる。

■ 施設の従業員に死傷者は出なかった。しかし、メディアによって負傷者21名と報じられているので、住民に被害が出た可能性がある。

■ 住民約150名が避難した。

■ 大気汚染が生じたと思われる。また、公共の雨水排水系に油類が流出し、排水管が爆発した。

< 事故の原因 >

■ 最初の火災の原因は不明で調査中である。


< 対 応 >

■ 火災は水曜日の朝(8月5日)には近隣の建物への延焼の危険はなくなったが、工場内にはまだ火が残っていた。消防署によると、火災は火曜日の午後9時頃に封じ込められ、延焼の危険はなくなったと発表した。

■ 最終的には、消防車30台以上、90名以上の消防士が動員され、鎮火までに約33時間を要した。火災は火曜日(8月4日)の午後から始まり、木曜日(8月6日)の午前0時10分まで続いたことになる。

■ 火災は、工場をほぼ全焼するほど激しいものだった。

■ 火災の原因と爆発に至った経緯については、現在も調査中である。当局は火災の原因をまだ特定していない。火災が完全に鎮火し、現場の安全が確認され次第、調査が開始される予定だという。

■ 今回の事故のあと、メディアの中に「ブラジルの溶剤貯蔵タンク」についてつぎのような指摘をしている。
 ●「溶剤貯蔵タンクはABNT NBR 7821(Tanques soldados para armazenamento de petróleo e derivados;「石油および石油製品を貯蔵するための溶接タンク」)に準拠する必要がある。これは基本的に“ブラジル・ポルトガル語で簡略化されたAPI Std 650” (Welded Tanks for Oil Storage) であるが、ブラジルではAPI Std 650のみに従うことが一般的に認められている。しかし、事故のタンクは工場組立タンクであり、タンク屋根がフランジ付きで屋根と側板の接合部が突合せ溶接されている限り(API Std 650 - Annex Jと同様)、トップアングルは不要だが、そうではないようである。

 ●API  Std 650によれば、爆発時を考慮した“弱くした屋根”の設計には、トップアングルのスケッチ、接合部の断面積、屋根をトップアングルに取り付けるための単一のすみ肉溶接の使用、アンカーなどに関する非常に具体的な要件がある。これらの要件のため、“弱くした屋根”は工場組立のタンクでは実現不可能である。ABNT NBR 7821 は“弱くした屋根”についてあまり詳しく規定していないが、この設計はブラジルの基準にも適合しないと思われる。 

 ●今回の事故で多くのタンク屋根は、設計がかなり自由奔放だったにもかかわらず、脆弱な挙動を示した。推測では、脆弱性の断面積制限に準拠するために上部の角度が省略されたが、屋根はすみ肉溶接で取り付けられていた。少なくとも 2基のタンク屋根は、縦方向の突合せ溶接に沿って中央部で大きな破損があったが、屋根と側板の接合部は無傷のままだった。

 ●ウェブサイトには、タンク屋根に圧力逃がし弁が写っている写真があった。おそらくフレームアレスターが装備されていると思われる。少なくとも API Std 650 に従って不十分な“弱くした屋根”の設計を即席で行うのではなく、圧力安全弁や緊急圧力逃がし弁を使用していれば、タンクの実装コストは高くなるが、被害の程度は軽減できたと思われる。

 ●化学工場の施設内には、巨大な消火用水タンクがあるようだが、火災発生時にタンクを冷却するためにこの水をタンクの近くに送るシステムはなかったと思われる。

補 足

■「ブラジル」(Brazil)は、正式にはブラジル連邦共和国で、南アメリカに位置し、人口約2億1,200万人の連邦共和制国家である。首都はブラジリアである。

「サンパウロ州」(São Paulo)は、ブラジル南東部に位置し、人口約4,440万人の州で、州庁所在地はサンパウロ市である。

「イタクアケセトゥバ」(Itaquaquecetuba) は、単にイタクアとも呼ばれ、サンパウロ州の南東部に位置し、人口は382,000人の自治体である。

■「ケマ・キミカ社」(Quema Química)は、 2002年に設立され、当初は溶剤の製造・販売から事業を開始した。現在では、ポリエステル系樹脂の製造・販売も行っている。事故のあったイタクアケセトゥバ工場は同社で最も歴史が古く、約24年間操業を続けている。ケマ・キミカ社はブラジル国内に他にも施設を所有しており、支店はブラジル南部とミナスジェライス州カンブイにある。

■「発災タンク」は、化学工場に保有している容量30KLタンク24基、5000リットルタンク6基、200リットルのドラム缶、100個以上のIBC型コンテナのいずれかとみられるが、どのタンク類か特定はできない。

 注;IBC型コンテナとは、液体や粉体を効率よく保管・輸送するための約1,000リットルの

中型容器(Intermediate Bulk Container)で、ほかに中間バルクコンテナやタンクパレットと呼ばれる。最大の特長は、1基あたり約1,000リットルという容量を有しながら、フォークリフトによる機械荷役が容易なパレット一体型構造を採用している。

所 感 

■ 今回の事故は、化学工場が全焼するほどの大きな火災だった。しかし、原因をはじめ事故経緯はよくわからない事例である。可燃性物質が公共の雨水排水系に流れ込んだというので、周辺のインフラにも影響を及ぼしている。これは工場の施設(タンクまたは配管)から可燃性物質が流出したものと推測できる。

 グーグルアースによると、タンク群の北側にあるのが溶剤の充填場と思われるので、ドラム缶またはIBC型コンテナの充填系統の溶剤配管から何らかの要因で流出して電気系統などの引火源によって火災になったのではないだろうか。

■ 負傷者がいなかったとすれば、事故の激しさを考えれば、せめてもの救いである。しかし、公共の雨水排水系のマンホールが噴き飛ぶという事態が発生し、通行人が吹き飛ばされたと報じられており、けが人が出たのではないだろうか。また、火災は鎮火までに約33時間を要しており、体調不良で病院の診察受けた人がいるのではないだろうか。

■ 消防活動について報道では、“消防隊は、火災の消火と、ほかの貯蔵タンクや工場区域への延焼防止に努めた”と報じられている。消火戦略は、積極的戦略・防御的戦略・不介入戦略の3つがあり、積極的戦と防御的戦略の消火活動をとったかのような印象になっている。しかし、被災写真を見ても火災終盤を除いて積極的戦略や防御的戦略をとったように思えない。現場にはドラム缶などに入った可燃性物質がそこら中にあり、何度も爆発を起こしており、消防隊の消防士の安全を考慮しなければならない。火災の初期から中盤は不介入戦略をとったものと思われる。消防資機材(特にスクアート車など)の保有状態が分からないが、資機材が不十分であれば、不介入戦略をとったのは適切な判断だったといえよう。


備 考

 本情報はつぎのインターネット情報に基づいてまとめたものである。

     ・Hazardexonthenet.net, Brazil chemical plant fire involves multiple explosions,  August  7, 2026

     ・Aljazeera.com, Massive fire at chemical factory forces evacuations in Brazil,  August  5, 2026

     ・Reutersconnect.com, Brazil: Chemical Factory Engulfed By Massive Fire As Towering Flames Light Up Night Sky,  August  7, 2026

     ・Viory.video, Chemical chaos - Huge blaze at Quema Química plant forces evacuation of 150 people in Sao Paulo,  August  5, 2026

     ・Independent.co.uk, Fireball erupts at chemical factory as blaze prompts evacuations,  August  5, 2026

     ・Joiff.com, BRAZIL – Large Fire Erupts at Solvent Factory in Greater São Paulo,  August  5, 2026

     ・Thesun.co.uk, PLANT INFERNO Huge blaze burns through chemical plant as dozens of fire engines called to scene and 150 locals evacuated,  August  5, 2026

     ・Eng-tips.com, Massive fire destroys chemical plant in Brazil,  August  6, 2026

     ・G1.globo.com, Indústria química destruída por incêndio funciona há mais de duas décadas em Itaquaquecetuba,  August  5, 2026

     ・Dailybeirut.com, Brazilian Chemical Plant Fire Triggers Multiple Explosions, Evacuates 150,  August  6, 2026


後 記: 初めて事故の報道を知ったときには、化学工場の通常的な事故だと思いました。インターネットで調べ始めても、大手メディアの情報も化学工場で事故があり、負傷者は無いというもので、最初のうちはそれほど変わりありませんでした。しかし、調べていくうちにドラム缶やIBC型コンテナなどを含むタンク火災で、これまでに扱ったことのない事故だと分かりました。火災時の被災写真は多くありましたが、火災後の事業所が全焼し、数多くのドラム缶が散乱している様子はこれまでに無い事故の写真で驚きました。ブラジルの事故報道は時系列がはっきりせず、内容は事業所寄りの見方の記事が多いのですが、被災写真は秀逸だと思います。

2026年9月24日木曜日

韓国の華城市にある廃油処理施設で屋外タンクが爆発・火災、負傷者1名

 今回は、2026年9月16日(水)、韓国の京畿道の華城市にある廃油処理施設において屋外タンクが爆発・火災を起こし、負傷者1名を出した事例を紹介します。

< 発災施設の概要 >

■ 発災があったのは、韓国の京畿道(경기도;キョンギド/けいきどう)の華城市(화성시;ファソンし/かじょうし)孝行区(ヒョヘンく)鄭南面(ヒョハンク・チョンナムミョン)にある廃油処理施設である。施設は廃油や廃オイルフィルターなどを処理する会社である。

■ 事故があったのは、廃油処理施設内にある屋外の貯蔵タンクである。

< 事故の状況および影響 >

事故の発生

■ 2026年9月16日(水)午後2時前、廃油処理施設内で爆発が発生した。

■ 京畿道消防本部は、廃油処理施設から「廃棄物が燃えている」という通報を受け、消防隊を出動させた。

■ 施設に火がつき、施設内帯には相次いで爆発が発生した。何度も爆発が続き、赤い火柱が空へ突き破るたびに振動が伝わり、近くの住民たちの嘆息が続いた。火災現場付近の住民たちは爆発が続くと、延焼してくるのを避けて避難した。住民のひとりは、「爆発音と炎が続くのがまるで戦争があったようでした」と語った。

■ 自宅が火災現場とすぐ隣接しているという住民のひとりは、「家にいましたが、大きな炎が立ち昇ったので、携帯電話だけを掴んで深く考えず家から飛び出しました」といい、「火が移って来て、被害を受けていないだけでも幸いです」と一息ついた様子だった。

■ 消防当局は、火災発生場所が廃油処理施設でまわりには他の工場や住宅地があり、延焼していく恐れがあると判断し、対応段階を上げていった。

■ 華城市は火災発生直後、「火災による煙が多量発生中です。近くの住民は窓を閉めるなど安全に留意してください」と伝えた。

■ 消防隊は、消防ヘリコプターをはじめとする装備58台と消防士120名を動員した。消防ヘリコプターは空中から消火水をかけ、消防車両は地上から消火水をかけた。救助隊と警察官は人命救助と現場統制に慌ただしく活動した。

■ 消防当局は、施設にある屋外タンクで火災が発生したとみている。

■ 事故にともない、ひとりが負傷した。火災初期の消火活動をした施設関係者1名が火傷の負傷をした。当初、消火活動をしたのは女性だと報じられたが、実際は50代の男性で右腕に火傷を負って病院に搬送されていた。

■ 事故発生当時、施設で働いていた9名は自力で避難した。  

■ 施設で保管していた廃油の一部が近くの河川に流入した。関係機関とともに黄区地川につながる河川に土手によるダムをつくり、水道を遮断し、廃油や汚染水回収など防除作業に乗り出した。黄区地川は、義王市大峰山を源とし、水原、華城、五山、平沢を経て真威川に合流する総延長30kmの国家河川である。消防当局などは装備を投入して廃水の流入を防いでいる。

■ 華城市の関係者は、「現在まで廃油が川まで流入した痕跡はない」とし、「防除作業終了まで継続的にモニタリングして汚染物質遮断に総力を傾ける予定である」と話した。しかし、火災現場から出てきた廃水が黄区地泉支流に流入しており、二次被害が懸念されている。

■ ユーチューブでは、事故を報じる動画が投稿されている。

 ●Youtube、「화성시 자원순환시설에서 불...한때 대응 2단계 발령 / YTN」(2026/9/16)

    ●Youtube、「대형 참사 막았다...화성 폐유처리시설 화재」 (2026/9/16)

< 被 害 >

■ 廃油処理施設の屋外タンクなどの設備が焼損した。 

■ 負傷者が1名出た。

■ 廃油が近くの河川に流出したとみられる。

■ 近くの住民には窓を閉めるなど安全に留意する旨の連絡があった。  

< 事故の原因 >

■ 事故の原因は不明である。消防当局が火災原因と被害規模を調査している。

< 対 応 >

■ 消防隊は、事故発生から2時間余りの午後4時頃に火災を制圧し、午後5時前に鎮火させた。

■ 消防当局は正確な火災原因と被害規模などを調査する予定だ。

補 足

■「韓国」は、正式には大韓民国で、 東アジアに位置し、人口約5,120万人の共和制国家である。首都はソウル特別市である。

「京畿道」(경기도;キョンギド/けいきどう)は、大韓民国北西部にあり、朝鮮半島中西部に位置する人口約1,379万人の道である。

「華城市」(화성시;ファソンし/かじょう‐し)は、京畿道の南西部に位置し、人口約100万人の都市である。2025年1月に人口100万人以上の特例市となった。

 韓国の京畿道では、タンク事故がよくあるところである。ブログには、つぎのような事例を紹介した。

 ●「韓国のレーザー加工工場で液体窒素タンクが破裂、建物2棟が損傷」(2025年10月)

 ●「韓国華城市の廃油リサイクル会社の貯蔵タンクが爆発・火災、死者1名」(2024年5月)

 ●「韓国の石油貯蔵所で半地下式ガソリンタンクの爆発・火災」(2018年10月)

■「発災タンク」は、屋外タンクと報じられているだけで、タンク型式や大きさなどの仕様は分かっていない。、廃油処理施設は、一般事業場から排出される廃棄物や廃油・廃酸など有害物質を含む指定廃棄物を専門的に処理する施設であるが、どのようなプロセスかは分からない。日本国内の一般的な廃油処理施設の例を図に示す。なお、韓国では、産業事故に対しても消防ヘリコプターを使用しているようだが、爆発を繰り返すような火災現場で効果は疑問だと感じる。

所 感

■ 今回の事例は、2023年8月に同じ韓国・華城市で起こった 「韓国華城市の廃油リサイクル会社の貯蔵タンクが爆発・火災、死者1名」 と類似の廃油処理施設の事故である。2023年の事故では、「廃油も揮発性の高いものではないのが通常であろう。しかし、爆発して火災になっており、日本で起こった「千葉県野田市の廃油処理施設の爆発事故(2013年)」と同じように原因はガソリンなど揮発性の高い油を投入したのではないだろうか。廃油リサイクル会社が意図して揮発性の高い油を処理したのではなく、廃油を出した側がガソリンを投入してしまったのではないか」と所感に書いた。

 今回の事故では、火が出た際、事業所の作業員が初期消火活動をしていたという。なぜ、火が出たかは分からないが、その後の火災で爆発が連続して起こったということから、揮発性の高い油を処理または保管(貯蔵)していたと思われる。過去の貴重な事例が活かされていないと感じる。

■ 消火活動は、「消防ヘリコプターをはじめとする装備58台と消防士120名を動員した。消防ヘリコプターは空中から消火水をかけ、消防車両は地上から消火水をかけた」とあり、事故発生から3時間で鎮火させたという。この報道が正確なら、消火活動は適切に行われたのだろう。


備 考

 本情報はつぎのインターネット情報に基づいてまとめたものである。

       ・V.daum.net,  “전쟁난 것 같은 폭발음이”…화성 폐유처리시설 화재, 한때 대응 2단계 [현장, 그곳&] [영상],  September  16,  2026

       ・Kyeonggi.com,  화성 자원순환시설 화재에 대응 2단계…‘폐유 처리시설’로 확인,  September  16,  2026

       ・Biz.chosun.com,  화성 자원순환시설 화재 2시간 40여분 만에 진화…1명 부상,  September  16,  2026

       ・Kmib.co.kr, [포토] 화성 자원순환시설 화재, 160여분 만에 진화,  September  16,  2026

       ・Yna.co.kr,  경기 화성 자원순환시설 화재…대응 2단계 발령,  September  16,  2026

       ・Kyeonggi.com,  화성 자원순환시설 화재에 대응 2단계…‘폐유 처리시설’로 확인,  September  16,  2026

       ・Kihoibo.co.kr,  화성 자원순환시설 화재...2시간 40분만에 진화,  September  16,  2026

       ・News.ifm.kr,  화성 자원순환시설 화재 2시간 40여분만에 완진,  September  16,  2026

       ・Yonhapnewstv.co.kr, 경기 화성 자원순환시설 화재…대응 2단계 발령 서승택 기자,  September  16,  2026

       ・Kconsumers.com,  화성 자원순환시설 화재 2시간 40여분 만에 완진…50대 관계자 2도 화상,  September  16,  2026


後 記: 今回の韓国の事例報道を読んで感じたことは、取材が不十分なことです。その要因のひとつは、韓国ではよくあることですが、発災事業所の名前を報じないことです。そのためだと思いますが、初期消火をやっていた人を女性と報じたところが大半でした。“男女平等”の世の中ですが、初期消火をやっていた人が女性だと言われれば、最初に本当かなと思うはずです。メディアの中に疑いをもって調べたのでしょう、実際は男性だったという訂正の記事がありました。全般に報道を一歩引いて読んでいました。河川への油流出についても自治体関係者は流出はないと主張しています。対応はやっているようですが、結局、どのくらい流出したのか不明瞭(曖昧模糊)です。韓国でもメディアの人不足が深刻なようです。

  

2026年9月17日木曜日

スペインでメンテナンス中のタンク屋根が噴き飛び、死傷者4名

 今回は、2026年8月5日(水)、スペインのグラン・カナリア島にある石油会社;ディサ社の石油貯蔵所においてメンテナンス中だったタンクで爆発があり、タンク屋根が噴き飛び、メンテナンスを行っていた作業員4名に死傷者が出た事例を紹介します。

< 発災施設の概要 >

■ 発災があったのは、スペイン(Spain)のグラン・カナリア島(Gran Canaria)にあるテルダ(Telde)のサリネタス工業団地(Salinetas)にある石油会社;ディサ社(Disa)の石油貯蔵所である。

■ 事故があったのは、石油貯蔵所内にある燃料タンクである。燃料タンクは工事のため内部を空にされた状態だった。

<事故の状況および影響>

事故の発生

■ 2026年8月5日(水)午後12時頃、石油貯蔵所内にある燃料タンクで爆発が起こった。

■ テルデ市の沿岸地区にあるサリネタス工業団地に轟音が響き渡り、続いて炎が噴き上がった。爆発の衝撃でタンク屋根が外れて飛び出し、隣接のタンク上部の端に落下し、もう一方は発災タンクの側板に掛けられていた足場に乗っかり、重さ約8トンのタンク屋根が宙に浮いた形でぶら下がった。

■ 緊急通報センターに電話があり、サリネタス工業団地にあるディサ社の石油貯蔵所から煙が立ち上がっているという通報が入った。

■ カナリア諸島政府の緊急計画が発動され、消防隊、国家警察、地方警察、救急医療サービスが出動した。現場には、消防車両2台、医療対応救急車両2台、一般救急車1台を含む大規模なチームが出動した。

■ 爆発音は、サリネタスやメレナラなど工業団地周辺の複数の地域で聞こえ、当初は小規模な火災が発生したが、緊急対応チームによって鎮火された。

■ 事故にともない、4名の死傷者が発生した。内訳は死亡1名、負傷者3名である。負傷者のうち2名は重傷で病院へ搬送された。

■ 燃料タンクは供用中でなく、メンテナンス作業中だった。下請け会社であるネルビオン・インダストリーズ(Nervión Industries)の作業員が、タンクの上でメンテナンスおよび溶接作業を行っていた際に、燃料タンク内で爆発が発生したとみられる。タンクは空にされていたが、空にするまでの内液はガソリンとみられる。

■ 事故直後、路上からは、被害者のうち2名が外れたタンク屋根部に引っかかっているのが見られた。被災者の3名は、工事のためタンク屋根のプラットフォームに固定された安全ロープに安全帯をして作業していた。亡くなった作業員は爆発に巻き込まれ、空中に投げ出され、地面に激突して即死した。ほかの作業員2名は外れたタンク屋根に安全ロープで吊り下げられた状態だった。約1時間も宙吊りになった後、緊迫した活動を経て救出された。 

■ テルデ市長は、工場内で重傷を負った人々を救助する消防隊などの活動を妨げないよう、GC-1高速道路からサリネタス工業団地へ立ち入らないよう市民に呼びかけた。

■ 国家警察は、事故を職場事故として捜査している。

■ 石油会社のディサ社は声明で、事故は工事下請け会社のネルビオン・インダストリーズ社が貯蔵タンクのメンテナンス作業を行っていた際に発生したといい、ネルビオン・インダストリーズ社は、この施設で定期メンテナンスを専門に行っている会社だと説明した。ディサ社は、事故の状況を解明するため、任命された調査官に全面的に協力していると述べた。

■ 警察は、関係労働当局と連携しながら事故原因の調査を進めていると述べた。現場に居合わせた作業員や目撃者からも事情聴取を行っている。

■ 今回の爆発事故は、近隣住民の間にも不安を引き起こしたが、初期評価では、事故は施設内部に限定され、外部への深刻な影響はなかったとされている。

■ ユーチューブなどでは、タンク事故のニュースを伝える動画が投稿されている。

●Youtube、「Un fallecido y dos heridos al explotar un tanque de combustible en un polígono de Gran Canaria」(2026/8/5)

●Facebook、「Grave accidente laboral en el polígono de Salinetas, Telde: la explosión de un tanque de combustible deja un trabajador fallecido」(2026/8/5)

●Facebook、「La explosión en un tanque de combustible del Polígono Industrial de Salinetas en la que falleció un operario y tres resultaron heridos se 」(2026/8/5)

被 害

■ 燃料タンク1基が爆発でタンク屋根などが損壊した。また、隣接タンクの屋根部が一部損傷した。

■ 4名の死傷者が出た。内訳は死者1名、負傷者3名である。

< 事故の原因 >

■ メンテナンスのためタンク上での保全工事に関連した火気管理の問題だとみられる。

< 対 応 >

■ 調査では、爆発前にタンク内部および周辺でどのような状況が存在していたかを明らかにする必要がある。燃料を貯蔵している石油貯蔵所では、保全工事を行う前に、タンクの洗浄・不活性化・換気・大気測定・作業許可の手順が必要となる。タンク内に石油製品が存在しないからといって、火災や爆発の危険性がないとは限らない。以前に貯蔵されていた燃料の種類によっては、特に密閉された空間や換気が不十分な場所では、タンク内に可燃性のベーパーや雰囲気が残存する可能性がある。このため、溶接、切断、あるいは火花や高温が発生する可能性のある特定の工事などは、特に厳密な安全計画が必要となる。

しかし、一般的な原則だけでは、今回のサリネタス事故の原因であったと結論付けることはできない。調査では、タンク内の内容物、適用された手順、爆発時の大気条件を明らかにしなければならない。

■ 溶接および切断作業は、産業施設において最も厳重な予防管理が求められる作業の一つである。十分な濃度の可燃性ベーパーまたはガスと酸素を含む雰囲気と着火源が重なった場合、爆発が発生する可能性がある。したがって、石油などを取扱う産業では、この種の作業を行う前に、つぎのような対策が必要となる場合がある。①具体的なリスク評価、②適切な測定機器を用いた大気検証、③可燃性ガスまたはベーパー存在の制御、④必要に応じて換気や空気の入れ替え、⑤火気作業の許可手続き、⑥有害物質を放出する可能性のある機器や配管の隔離、⑥発火源の制御、⑦作業実施中の監視、⑧閉鎖空間での作業に関する具体的な対策、⑨工事や作業に関わる各企業間の連携。

 事故調査では、これらの対策のうちどれを実施する対策か、またどのように実施されたかを明らかにする必要がある。

■ サリネタス工業団地で発生した爆発事故は、可燃性製品を取り扱ったり、保管したり、あるいは過去に保管していた施設における予防措置の重要性を改めて浮き彫りにした。保全作業には、施設の通常運転とは全く異なるリスクが伴う場合がある。修理・切断・溶接・タンクへのアクセスなど、一見単発的な作業であっても、一時的に安全条件が変化し、特別な手順が必要となることがある。したがって、事前の計画、企業間の連携、危険な雰囲気の特定、発火源の制御は、産業安全の重要な要素である。サリネタスのケースでは、爆発発生時に実際に存在した状況と、計画されていた作業条件が一致していたかどうかは、調査によって明らかになるだろう。

■ 現場における原因調査が終わり、2026年9月に入って事業者のディサ社は、燃料タンクのタンク屋根の取り外し作業を開始した。


補 足

■「スペイン」(Spain)は、正式には、スペイン王国もしくはスペイン国で、本土はイベリア半島にあり、人口約4,859万人の議会君主制国家である。

「グラン・カナリア島」(Gran Canaria)は、北大西洋に浮かぶスペイン領カナリア諸島の一つで人口約85万人の島である。多様な気候と景観を持つ火山島で、中央の山地の最高峰は1,949mのピコ・デ・ラス・ニエベスであるが、北部が緑豊かで比較的涼しく、南部が砂漠やビーチリゾートというように地域で気候が大きく異なる。行政的にはスペインのカナリア諸島州に含まれる。島名のグラン・カナリアは“犬の島”を意味する。位置的にはアフリカ大陸(モロッコ沖)の北西岸近くの大西洋上にあるが、15世紀末にスペイン(カスティーリャ王国)によって征服されて以来、スペインの領有が続いている。 15世紀の前には、グアンチ人が住んでいたが、どのような状況の下でグアンチ人が入植し、島を開拓してきたのかは完全に解明されていない。

「テルダ」(Telde)は、カナリア諸島のグラン・カナリア島東部にあり、スペインのカナリア諸島州ラス・パルマス県の基礎自治体で人口約102,000人の市である。

■「ディサ社」(Disa)は、1933年に設立されたスペインの石油会社であるが、ディサ・グループ(Grupo DISA)として石油・ガス、小売、物流、食品・飲料など、さまざまな分野に投資を行っている家族経営の会社である。特に、カナリア諸島で創業され、同地域における石油製品(ガソリン、軽油、LPガスなど)の流通において圧倒的なシェアを持っている。

■「発災タンク」は、燃料用でメディアの報道ではガソリンと報じられている。タンクの大きさなどの仕様は報じられていない。グーグルマップで調べると、事業所内の北にあるタンクと思われ、直径は約14mである。高さを約15~18mとすれば、容量は2,300~2,770KLとなる。タンクの型式は、コーンルーフ型の固定屋根式タンクである。内液がガソリンであれば、内部浮き屋根式と思われるが、タンク内の状況は分からない。

所 感

■ 世の中には想像もできないようなことが起こる事例である。爆発の衝撃でタンク屋根が外れて飛び出し、隣接のタンク上部の端に落下し、もう一方は発災タンクの側板に掛けられていた足場に乗っかり、重さ約8トンのタンク屋根が宙に浮いた形でぶら下がるなどという事例は見たことも聞いたこともない。噴き飛ぶタンク屋根の直径、隣接タンクとのタンク間距離、爆発の大きさ、側板にかけた足場など偶然が重なった結果だが、初めて被災写真を見たときにはびっくりした。

■ さらに驚くのは、事故直後、路上からは、被害者のうち2名が外れたタンク屋根部に引っかかっているのが見られたという。被害者や見る人への配慮から、スペインの報道ではタンク屋根だけが宙に浮いた写真が大半でした。ここでは、被害者がタンク屋根部に引っかかっている写真(もちろん、ぼかし加工を処置されている)をあえて出す。(遠い国であり、利害関係者はいない)

 被害者のふたりは、工事のためタンク屋根のプラットフォームに固定された安全ロープに安全帯をして作業していた。爆発でタンク屋根が噴き飛び、外れたタンク屋根に安全ロープで吊り下げられた状態だったという。約1時間も宙吊りになった後、緊迫した活動を経て救出された。ふたりは重体というが、助かってほしいものである。安全ロープや安全帯を考える事例でもある。 

■ ブログの本文中には、今回の事例の原因や調査について細かく指摘している。スペインのグラン・カナリア島では、今回のような事例が少ないことがあるだろう。その意味では、米国CSB(化学物質安全性委員会)がまとめた「タンク内外の火気工事における人身事故を防ぐ7つの教訓」(2011年7月)が指摘している対応策①代替方法の採用、②危険度の分析、③作業環境のモニタリング、④作業エリアのテスト、⑤着工許可の発行、⑥徹底した訓練、⑦請負者への監督 のいずれかが欠けていたものと思われる。


備 考

 本情報はつぎのインターネット情報に基づいてまとめたものである。

・Elpais.com, Un fallecido y un herido grave tras explotar un tanque de combustible en Gran Canaria,  August  5,  2026

      ・Canarias.es, Un muerto al explotar un tanque de Disa en Telde al hacer labores de mantenimiento,  August  5,  2026

      ・Rtvc.es, La explosión de un tanque de combustible en Telde deja un fallecido y tres heridos,  August  5,  2026

      ・Elmundo.es, Un muerto y dos heridos en una explosión en un tanque de combustible en Telde, Gran Canaria,  August  5,  2026

      ・Rtve.es, Un muerto y tres heridos, uno de ellos grave, al explotar un tanque de combustible en Gran Canaria,  August  5,  2026

     ・Eldebate.es, Un muerto y dos heridos graves por la explosión de un tanque de combustible en Telde (Gran Canaria),  August  5,  2026

     ・Es.euronews.com, Una explosión en un depósito de combustible deja al menos 1 muerto y 2 heridos graves en Telde,  August  5,  2026

     ・Laprovincia.es, Tragedia laboral en Telde: la operadora del tanque de combustible que explotó asegura la estructura,  August  7,  2026

     ・Antena3.com, Un muerto y tres heridos, uno de ellos grave, por la explosión de un tanque de combustible en Telde, Gran Canaria,  August  5,  2026

     ・Elconfidencial.com, Un muerto y tres heridos tras la explosión de un tanque de combustible en Telde (Gran Canaria),  August  5,  2026

     ・Declaracion-responsable.com, Explosión en Gran Canaria: un fallecido y dos heridos graves en una nave industrial,  August  5,  2026

     ・Laprovincia.es,  Tragedia laboral en una nave industrial de Telde: "Se …,  August  6,  2026


後 記: スペインのグラン・カナリア島のタンク人身事故というので、スペイン本土の近くの島における事故だと思いましたが、アフリカのモロッコ沖にある島のことでした。なぜ、スペイン本土から遠い島がスペイン領土なのかと調べたら教科書で習ったスペイン王国の征服の歴史でした。しかし、一番驚いたことは、今回の事故で噴き飛んだタンク屋根が空中に浮かんでいることでした。タンク屋根に吊り下がっていた被害者のふたりが回復することを祈ります。

2026年9月11日金曜日

オランダの石油ターミナルで不安全なメンテナンス中にタンク付近で爆発、死傷者6名

 今回は、2026年8月13日(木)、オランダのロッテルダム港にあるガンボル・エナージー社の石油ターミナル内で貯蔵タンク付近において爆発が起こり、メンタナンス作業員に6名の死傷者が出た事例を紹介します。

< 発災施設の概要 >

■ 発災があったのは、オランダ(Netherland)のロッテルダム港(​Rotterdam Port)のモーゼルウェグ(Moezelweg)にあるガンボル・エナージー社(Gunvor Energy)の石油ターミナルである。ガンボル・エナージー社は同地区で製油所と石油ターミナルを所有している。

■ 事故があったのは、石油ターミナルにある貯蔵タンクの関連設備である。

<事故の状況および影響>

事故の発生

■ 2026年8月13日(木)午前11時30分頃、モーゼルウェグの石油ターミナル内の貯蔵タンク付近で爆発が起こった。

■ 発災にともない、消防隊が出動した。出動したのは消防士のほか、救急車6台が派遣された。

■ 貯蔵タンクはメンテナンス作業中で、工事の下請け会社;カンクス・メンテナンス社(Canx Maintenance)の作業チームが石油製品タンクに接続された配管のメンテナンスで切断作業を行っていた際に事故が発生した。 

■ 事故にともない、1名が死亡、5名が負傷した。爆発直後に救急車が現場に派遣され、その後すぐにヘリコプターで医療外傷チームが派遣された。死亡したのは、 60歳で経験豊富な作業員だった。

■ 現場には、影響を受けたタンク付近に爆発の痕跡と側板に損傷が確認された。

■ 地元警察とオランダ労働監督局は、職場事故の可能性に焦点を当てて捜査を進めている。

■ 警察は爆発の原因を調査している。警察の広報担当は、現時点で破壊工作の兆候はなく、あらゆる可能性のあるシナリオについて捜査中であると述べた。

■ ロッテルダム港の港湾関係の操業は爆発の影響を受けていないと述べた。

■ ロッテルダム港では8月13日午前中に変圧器の火災によって数回停電が発生したが、地元安全当局は爆発と停電には関連性がないと述べた。

■ 火災は発生しなかったものの、消防隊員は念のため待機していた。爆発による煙はフラールディンゲンとマーススライス方面に流れ、不安を感じた住民から多数の通報があった。

■ ユーチューブなどでは、タンクの事故状況を伝える動画が投稿されている。

 ●Youtube、「Pays-Bas : une explosion dans une zone industrielle du port de Rotterdam fait un mort」(2026/8/13)

 ●Youtube、「Rotterdam Port Explosion Kills 1, Injures Six | Blast Hits Petroleum Storage Facility In Netherlands」(2026/8/13)   

 ●Euronews、「Pays-Bas : un mort et plusieurs blessés dans une ..」(2026/8/13)

被 害

■ 6名の死傷者が出た。内訳は1名死亡、5名の負傷者である。

■ 工事中だったタンク周辺に被害があったが、詳細は不明である。 

< 事故の原因 >

■ 工事現場の不安全管理によるものとみられる。詳細は調査中である。

< 対 応 >

■ 事故の後、警察は現場を犯罪現場に指定した。労働監督局と協力して、十分な安全対策を講じていたか、またガンボル・エナージー社に過失があったかどうかを調査している。この調査の中心となるのは、工事のために確立した環境下で、工事の作業員が安全に作業できたかどうかである。

■ 調査の重要な部分のひとつは、爆発の正確な原因を特定することである。これには、爆発に先行する化学反応を調べることが含まれる。爆発には少なくとも3つの要素、すなわち①可燃性物質(たとえば、燃料のベーパーまたは液体)、②酸素、③点火源(高温の表面、短絡、火花など)が必要である。

 工事作業チームが燃料配管の作業を行っていたため、火花が発火源となった可能性は十分考えられる。原則として、配管内に可燃性の液体やベーパーが全く含まれていなければ、これは問題にならない。したがって、労働監督局はまず、配管内に何が入っていたのか、そしてそれがどのようにしてそこに入り込んだのかを正確に突き止めたいと考えている。

■ 労働監督局は、作業中に爆発の危険性を継続的に測定していたかどうかを確認する。その際、考慮すべき点は、①ガス漏れの可能性のある原因、②その燃料源までの距離、③風向、④ガスの密度である。

 もし、ガンボル・エナージー社が上記のいずれかの点で過失があった場合、同社は多額の罰金を科せられるだけでなく、さらに重要なことは被害者とその遺族に莫大な賠償金を支払わなければならないだろう。

■ さらに、就労許可証と安全手順について確認される。就労許可証は、欧州のATEX指令137によって企業に対して爆発危険区域を明確に指定し、安全な作業手順を確保するための措置を事前に講じることを義務付けている。この手続きは、作業開始前に策定、評価、承認されなければならない。労働監督局は、とりわけ以下の点を確認する。①当該区域へのアクセスは適切に管理され、許可された従業員のみがアクセスできたか、②適切な個人用保護具が準備され、使用され、点検されていたか、③適切な機工具が規定され、使用され、点検されていたか、④追加の規制・予防措置が策定され、遵守されていたか、⑤工事現場には、書面による指示が明確かつ目立つ場所に掲示されていたか、⑥従業員は必要な研修を修了していたかなどである。

■ 実際、ガンボル・エナージー社は、2016年に現在の製油所・石油ターミナル(Q8 Kuwait Petroleum Europoort bvが所有していたKPユーロポート製油所を買収)の所有者となって以来、メンテナンスや安全対策にほとんど投資しておらず、ロッテルダムで事業を展開していた10年間でほぼ全員を解雇した。利益追求のために際限なく人を解雇し続けて、何の代償も伴わないなどとは考えられない。

 こうして、2016年にKPユーロポート製油所が買収された時点で、従業員の3分の1がすでに解雇されていた。2024年12月には、不利な市場状況(メンテナンスと投資の不足)を理由に自動車燃料の生産を中止し、260名の正社員のうちさらに160名が職を失った。そして、2025年7月、ガンボル・エナージー社ロッテルダムの石油ターミナル活動を閉鎖することを決定したことで、事実上、この拠点は終わってしまった。

 このような状況を考えれば、今回の現場に作業を監督し、爆発の危険性を監視し、職場全体の安全を保証できる十分な資格を持った社内人員がいたかどうかは疑問である。

■ ガンボル・エナージー社はロッテルダムの製油所をアントワープ製油所と同様に、単に金儲けの手段として買収した可能性が非常に高い。というのは、エネルギー集約型産業は、二酸化炭素排出量を削減するために、欧州連合から年間最大10億ユーロの補償金・免除・補助金を受け取っているからである。

 さらに、今回のメンテナンスを誰が依頼したのかはまだ明らかになっていない。ガンボル・エナージー社は約3年前にロッテルダム製油所を閉鎖しており、オランダ港湾ニュースサイトである“ハーフェンニース” (Havennieuws)の推測では、近隣のロイヤル・ボパック社(Royal  Vopac)がガンボル・エナージー社の石油ターミナルを使用しているのではないかという。たとえば、ボパック社は2023年にガンボル・エナージー社アントワープ製油所を買収しており、105ヘクタールの敷地は、現在、タンク貯蔵設備になっている。



補 足

■「オランダ」(Netherland)は、西ヨーロッパに位置し、人口約1,760万人の立憲君主制の国である。東はドイツ、南はベルギーと国境を接し、北と西は北海に面する。オランダは世界において、報道の自由、経済的自由、人間開発指数、クオリティ・オブ・ライフについて最上位国の一つである。

「ロッテルダム港」(​Rotterdam Port)は、欧州最大の港であり、原油や燃料の輸入・貯蔵の拠点である。ここには、欧州最大の製油所であるシェル社の施設があり、ほかペルニス工場やエクソンモービル社の製油所などがある。

■「発災の影響を受けたタンク」をグーグルマップで調べると、直径約50mであり、高さを15~20mとすれば、容量は29,400~39,300KLとなる。

■「ハーフェンニース」(Havennieuws)は、 オランダの独立系ニュースウェブサイトで、オランダとベルギーの港湾における海事・運輸・物流分野の動向を毎日報道しており、特にロッテルダム港に重点を置いている。

所 感

■ 今回の事故は、本文中に指摘されているように、①当該区域へのアクセスは適切に管理され、許可された従業員のみがアクセスできたか、②適切な個人用保護具が準備され、使用され、点検されていたか、③適切な道具が規定され、使用され、点検されていたか、④追加の規制・予防措置が策定され、遵守されていたか、⑤工事現場には、書面による指示が明確かつ目立つ場所に掲示されていたか、⑥従業員は必要な研修を修了していたかなど工事に関する安全管理の問題である。

 これは、米国CSB(化学物質安全性委員会)がまとめた「タンク内外の火気工事における人身事故を防ぐ7つの教訓」としてまとめられたつぎの教訓項目と同様である。①火気作業の代替方法の採用、②危険度の分析、③作業環境のモニタリング、④作業エリアのテスト、⑤着工許可の発行、⑥徹底した訓練、 ⑦請負者への監督       

■ しかし、今回の事例はさらに石油ターミナルの施設を運営する根深い問題があるようだ。今回のメンテナンスを誰が依頼したのかはまだ明らかになっていないという。ガンボル・エナージー社は、製油所に続いて石油ターミナル活動を閉鎖することを決定し、事実上、石油ターミナルの操業は終わってしまったと思われる。このような状況を考えれば、今回の現場に作業を監督し、爆発の危険性を監視し、職場全体の安全を保証できる十分な資格を持った社内人員がいたかどうかは疑問であるという。


備 考

 本情報はつぎのインターネット情報に基づいてまとめたものである。

     ・Reuters.com, Blast at Rotterdam port energy facility kills one person, August 13,  2026

     ・Nbcnews.com, Explosion at Dutch port of Rotterdam leaves 1 dead, several injured, August 13,  2026

     ・Mykn.kuehne-nagel.com, Fatal explosion at Rotterdam storage facility prompts investigation, August 13,  2026

     ・Nltimes.nl, Explosion at Rotterdam port area leaves 1 dead, many wounded: Video, August 14,  2026

     ・Tankstorage.com, Fatal explosion at Rotterdam Europoort facility, August 13,  2026

     ・Joiff.com, NETHERLANDS – Explosion at Rotterdam port site kills one, injures several, August 18,  2026

     ・News.sky.com, One person killed and six injured after explosion at Rotterdam port, August 13,  2026

     ・Fr.euronews.com, Pays-Bas : une explosion dans une zone industrielle du port de Rotterdam fait un mort, August 13,  2026

     ・Lalibre.be, Rotterdam : une explosion dans une raffinerie de la zone portuaire fait au moins un mort, August 13,  2026

     ・7sur7.be, “Un incident s’est produit”: une explosion dans le port de Rotterdam fait au moins un mort, August 13,  2026

     ・Rts.ch, Une explosion dans une raffinerie du port de Rotterdam fait au moins un mort, August 13,  2026

     ・English.news.cn, One killed, six injured following explosion at Rotterdam port, August 13,  2026  

     ・Havennieuws.nl, Explosie met dodelijk slachtoffer en verschillende gewonden bij Zwitserse Gunvor Energy Rotterdam raffinarderij, August 13,  2026


後 記: 工事中のタンク人身事故であり、調査段階では多くの情報は出ないでしょうから、まとめはそれほどかからないと思っていたところ、オランダの独立系ニュースウェブサイト“ハーフェンニース” からとんでもない記事が出てきました。オランダは技術のしっかりした国というイメージを持っていましたので、“今回の現場に作業を監督し、爆発の危険性を監視し、職場全体の安全を保証できる十分な資格を持った社内人員がいたかどうかは疑問である”という記事には愕然(がくぜん)としました。オランダは、個人の自由を尊重する個人主義的な社会文化や効率重視の労働環境にあると言われていますが、今回の事例は、国や企業のありかたとしては、“ちょっと違う”のではないかと言いたくなりますね。