今回は、2026年8月5日(水)、スペインのグラン・カナリア島にある石油会社;ディサ社の石油貯蔵所においてメンテナンス中だったタンクで爆発があり、タンク屋根が噴き飛び、メンテナンスを行っていた作業員4名に死傷者が出た事例を紹介します。
< 発災施設の概要 >
■ 発災があったのは、スペイン(Spain)のグラン・カナリア島(Gran Canaria)にあるテルダ(Telde)のサリネタス工業団地(Salinetas)にある石油会社;ディサ社(Disa)の石油貯蔵所である。
■ 事故があったのは、石油貯蔵所内にある燃料タンクである。燃料タンクは工事のため内部を空にされた状態だった。
<事故の状況および影響>
事故の発生
■ 2026年8月5日(水)午後12時頃、石油貯蔵所内にある燃料タンクで爆発が起こった。
■ テルデ市の沿岸地区にあるサリネタス工業団地に轟音が響き渡り、続いて炎が噴き上がった。爆発の衝撃でタンク屋根が外れて飛び出し、隣接のタンク上部の端に落下し、もう一方は発災タンクの側板に掛けられていた足場に乗っかり、重さ約8トンのタンク屋根が宙に浮いた形でぶら下がった。
■ 緊急通報センターに電話があり、サリネタス工業団地にあるディサ社の石油貯蔵所から煙が立ち上がっているという通報が入った。
■ カナリア諸島政府の緊急計画が発動され、消防隊、国家警察、地方警察、救急医療サービスが出動した。現場には、消防車両2台、医療対応救急車両2台、一般救急車1台を含む大規模なチームが出動した。
■ 爆発音は、サリネタスやメレナラなど工業団地周辺の複数の地域で聞こえ、当初は小規模な火災が発生したが、緊急対応チームによって鎮火された。
■ 事故にともない、4名の死傷者が発生した。内訳は死亡1名、負傷者3名である。負傷者のうち2名は重傷で病院へ搬送された。
■ 燃料タンクは供用中でなく、メンテナンス作業中だった。下請け会社であるネルビオン・インダストリーズ(Nervión Industries)の作業員が、タンクの上でメンテナンスおよび溶接作業を行っていた際に、燃料タンク内で爆発が発生したとみられる。タンクは空にされていたが、空にするまでの内液はガソリンとみられる。
■ 事故直後、路上からは、被害者のうち2名が外れたタンク屋根部に引っかかっているのが見られた。被災者の3名は、工事のためタンク屋根のプラットフォームに固定された安全ロープに安全帯をして作業していた。亡くなった作業員は爆発に巻き込まれ、空中に投げ出され、地面に激突して即死した。ほかの作業員2名は外れたタンク屋根に安全ロープで吊り下げられた状態だった。約1時間も宙吊りになった後、緊迫した活動を経て救出された。
■ テルデ市長は、工場内で重傷を負った人々を救助する消防隊などの活動を妨げないよう、GC-1高速道路からサリネタス工業団地へ立ち入らないよう市民に呼びかけた。
■ 国家警察は、事故を職場事故として捜査している。
■ 石油会社のディサ社は声明で、事故は工事下請け会社のネルビオン・インダストリーズ社が貯蔵タンクのメンテナンス作業を行っていた際に発生したといい、ネルビオン・インダストリーズ社は、この施設で定期メンテナンスを専門に行っている会社だと説明した。ディサ社は、事故の状況を解明するため、任命された調査官に全面的に協力していると述べた。
■ 警察は、関係労働当局と連携しながら事故原因の調査を進めていると述べた。現場に居合わせた作業員や目撃者からも事情聴取を行っている。
■ 今回の爆発事故は、近隣住民の間にも不安を引き起こしたが、初期評価では、事故は施設内部に限定され、外部への深刻な影響はなかったとされている。
■ ユーチューブなどでは、タンク事故のニュースを伝える動画が投稿されている。
●Youtube、「Un fallecido y dos heridos al
explotar un tanque de combustible en un polígono de Gran Canaria」(2026/8/5)
●Facebook、「Grave accidente laboral en el
polígono de Salinetas, Telde: la explosión de un tanque de combustible deja un
trabajador fallecido」(2026/8/5)
●Facebook、「La explosión en un tanque de combustible del Polígono Industrial de Salinetas en la que falleció un operario y tres resultaron heridos se 」(2026/8/5)
被 害
■ 燃料タンク1基が爆発でタンク屋根などが損壊した。また、隣接タンクの屋根部が一部損傷した。
■ 4名の死傷者が出た。内訳は死者1名、負傷者3名である。
< 事故の原因 >
■ メンテナンスのためタンク上での保全工事に関連した火気管理の問題だとみられる。
< 対 応 >
■ 調査では、爆発前にタンク内部および周辺でどのような状況が存在していたかを明らかにする必要がある。燃料を貯蔵している石油貯蔵所では、保全工事を行う前に、タンクの洗浄・不活性化・換気・大気測定・作業許可の手順が必要となる。タンク内に石油製品が存在しないからといって、火災や爆発の危険性がないとは限らない。以前に貯蔵されていた燃料の種類によっては、特に密閉された空間や換気が不十分な場所では、タンク内に可燃性のベーパーや雰囲気が残存する可能性がある。このため、溶接、切断、あるいは火花や高温が発生する可能性のある特定の工事などは、特に厳密な安全計画が必要となる。
しかし、一般的な原則だけでは、今回のサリネタス事故の原因であったと結論付けることはできない。調査では、タンク内の内容物、適用された手順、爆発時の大気条件を明らかにしなければならない。
■ 溶接および切断作業は、産業施設において最も厳重な予防管理が求められる作業の一つである。十分な濃度の可燃性ベーパーまたはガスと酸素を含む雰囲気と着火源が重なった場合、爆発が発生する可能性がある。したがって、石油などを取扱う産業では、この種の作業を行う前に、つぎのような対策が必要となる場合がある。①具体的なリスク評価、②適切な測定機器を用いた大気検証、③可燃性ガスまたはベーパー存在の制御、④必要に応じて換気や空気の入れ替え、⑤火気作業の許可手続き、⑥有害物質を放出する可能性のある機器や配管の隔離、⑥発火源の制御、⑦作業実施中の監視、⑧閉鎖空間での作業に関する具体的な対策、⑨工事や作業に関わる各企業間の連携。
事故調査では、これらの対策のうちどれを実施する対策か、またどのように実施されたかを明らかにする必要がある。
■ サリネタス工業団地で発生した爆発事故は、可燃性製品を取り扱ったり、保管したり、あるいは過去に保管していた施設における予防措置の重要性を改めて浮き彫りにした。保全作業には、施設の通常運転とは全く異なるリスクが伴う場合がある。修理・切断・溶接・タンクへのアクセスなど、一見単発的な作業であっても、一時的に安全条件が変化し、特別な手順が必要となることがある。したがって、事前の計画、企業間の連携、危険な雰囲気の特定、発火源の制御は、産業安全の重要な要素である。サリネタスのケースでは、爆発発生時に実際に存在した状況と、計画されていた作業条件が一致していたかどうかは、調査によって明らかになるだろう。
■ 現場における原因調査が終わり、2026年9月に入って事業者のディサ社は、燃料タンクのタンク屋根の取り外し作業を開始した。
補 足
■「スペイン」(Spain)は、正式には、スペイン王国もしくはスペイン国で、本土はイベリア半島にあり、人口約4,859万人の議会君主制国家である。
「グラン・カナリア島」(Gran Canaria)は、北大西洋に浮かぶスペイン領カナリア諸島の一つで人口約85万人の島である。多様な気候と景観を持つ火山島で、中央の山地の最高峰は1,949mのピコ・デ・ラス・ニエベスであるが、北部が緑豊かで比較的涼しく、南部が砂漠やビーチリゾートというように地域で気候が大きく異なる。行政的にはスペインのカナリア諸島州に含まれる。島名のグラン・カナリアは“犬の島”を意味する。位置的にはアフリカ大陸(モロッコ沖)の北西岸近くの大西洋上にあるが、15世紀末にスペイン(カスティーリャ王国)によって征服されて以来、スペインの領有が続いている。 15世紀の前には、グアンチ人が住んでいたが、どのような状況の下でグアンチ人が入植し、島を開拓してきたのかは完全に解明されていない。
「テルダ」(Telde)は、カナリア諸島のグラン・カナリア島東部にあり、スペインのカナリア諸島州ラス・パルマス県の基礎自治体で人口約102,000人の市である。
■「ディサ社」(Disa)は、1933年に設立されたスペインの石油会社であるが、ディサ・グループ(Grupo DISA)として石油・ガス、小売、物流、食品・飲料など、さまざまな分野に投資を行っている家族経営の会社である。特に、カナリア諸島で創業され、同地域における石油製品(ガソリン、軽油、LPガスなど)の流通において圧倒的なシェアを持っている。
■「発災タンク」は、燃料用でメディアの報道ではガソリンと報じられている。タンクの大きさなどの仕様は報じられていない。グーグルマップで調べると、事業所内の北にあるタンクと思われ、直径は約14mである。高さを約15~18mとすれば、容量は2,300~2,770KLとなる。タンクの型式は、コーンルーフ型の固定屋根式タンクである。内液がガソリンであれば、内部浮き屋根式と思われるが、タンク内の状況は分からない。
所 感
■ 世の中には想像もできないようなことが起こる事例である。爆発の衝撃でタンク屋根が外れて飛び出し、隣接のタンク上部の端に落下し、もう一方は発災タンクの側板に掛けられていた足場に乗っかり、重さ約8トンのタンク屋根が宙に浮いた形でぶら下がるなどという事例は見たことも聞いたこともない。噴き飛ぶタンク屋根の直径、隣接タンクとのタンク間距離、爆発の大きさ、側板にかけた足場など偶然が重なった結果だが、初めて被災写真を見たときにはびっくりした。
■ さらに驚くのは、事故直後、路上からは、被害者のうち2名が外れたタンク屋根部に引っかかっているのが見られたという。被害者や見る人への配慮から、スペインの報道ではタンク屋根だけが宙に浮いた写真が大半でした。ここでは、被害者がタンク屋根部に引っかかっている写真(もちろん、ぼかし加工を処置されている)をあえて出す。(遠い国であり、利害関係者はいない)
被害者のふたりは、工事のためタンク屋根のプラットフォームに固定された安全ロープに安全帯をして作業していた。爆発でタンク屋根が噴き飛び、外れたタンク屋根に安全ロープで吊り下げられた状態だったという。約1時間も宙吊りになった後、緊迫した活動を経て救出された。ふたりは重体というが、助かってほしいものである。安全ロープや安全帯を考える事例でもある。
■ ブログの本文中には、今回の事例の原因や調査について細かく指摘している。スペインのグラン・カナリア島では、今回のような事例が少ないことがあるだろう。その意味では、米国CSB(化学物質安全性委員会)がまとめた「タンク内外の火気工事における人身事故を防ぐ7つの教訓」(2011年7月)が指摘している対応策①代替方法の採用、②危険度の分析、③作業環境のモニタリング、④作業エリアのテスト、⑤着工許可の発行、⑥徹底した訓練、⑦請負者への監督 のいずれかが欠けていたものと思われる。
備 考
本情報はつぎのインターネット情報に基づいてまとめたものである。
・Elpais.com, Un fallecido y un herido grave tras explotar un tanque
de combustible en Gran Canaria,
August 5, 2026
・Canarias.es, Un muerto al explotar un tanque de
Disa en Telde al hacer labores de mantenimiento, August
5, 2026
・Rtvc.es, La explosión de un tanque de
combustible en Telde deja un fallecido y tres heridos, August
5, 2026
・Elmundo.es, Un muerto y dos heridos en una
explosión en un tanque de combustible en Telde, Gran Canaria, August
5, 2026
・Rtve.es, Un muerto y tres heridos, uno de ellos
grave, al explotar un tanque de combustible en Gran Canaria, August
5, 2026
・Eldebate.es, Un muerto y dos heridos graves por la explosión de un
tanque de combustible en Telde (Gran Canaria),
August 5, 2026
・Es.euronews.com, Una explosión en un depósito de combustible deja al
menos 1 muerto y 2 heridos graves en Telde,
August 5, 2026
・Laprovincia.es, Tragedia laboral en Telde: la operadora del tanque
de combustible que explotó asegura la estructura, August
7, 2026
・Antena3.com, Un muerto y tres heridos, uno de ellos grave, por la
explosión de un tanque de combustible en Telde, Gran Canaria, August
5, 2026
・Elconfidencial.com, Un muerto y tres heridos tras la explosión de un
tanque de combustible en Telde (Gran Canaria),
August 5, 2026
・Declaracion-responsable.com, Explosión en Gran Canaria: un fallecido
y dos heridos graves en una nave industrial,
August 5, 2026
・Laprovincia.es, Tragedia
laboral en una nave industrial de Telde: "Se …, August
6, 2026
後 記: スペインのグラン・カナリア島のタンク人身事故というので、スペイン本土の近くの島における事故だと思いましたが、アフリカのモロッコ沖にある島のことでした。なぜ、スペイン本土から遠い島がスペイン領土なのかと調べたら教科書で習ったスペイン王国の征服の歴史でした。しかし、一番驚いたことは、今回の事故で噴き飛んだタンク屋根が空中に浮かんでいることでした。タンク屋根に吊り下がっていた被害者のふたりが回復することを祈ります。









































