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2026年5月18日月曜日

イランの原油積出し拠点のカーグ島周辺で油流出か、実はタンカーのバラスト水の投棄

 今回は、202658日(金)、ペルシャ湾内にあるイランの主要な原油積出し拠点であるカーグ島周辺の海域で衛星写真によって大規模な石油流出が起きているのではないかという事故情報を紹介します。

< 発災施設の概要 >

■ 発災があったのは、ペルシャ湾内にあるイラン(Iran)の主要な原油積出し拠点であるカーグ島(Kharg Island)周辺の海域である。 カーグ島はイランの原油輸出の90%を担う拠点である。

■ 事故があったとみられたのは、カーグ島内の原油積出し関連設備である。

<事故の状況および影響>

事故の発生

■ 202658日(金)、カーグ島周辺の海域で大規模な石油流出が起きている可能性があることが衛星画像で確認された。  

■ 欧州の地球観測プログラム“コペルニクス” の衛星が56日(水)~7日(木)に撮影した画像では、島の西側海域に灰色と白色の帯状が8kmにわたって広がっていた。

■ 英国の紛争・環境観測団(CEOBS)は、流出の原因と発生地点は現時点で分からないと述べ、58日(金)時点の画像では、新たな活発な流出の兆候は見られなかったという。

■ 米国・イスラエルーイラン戦争によって米軍が攻撃開始後、カーグ島の軍事目標は早い段階で破壊されたところで、米海軍はイランのタンカーの出入りを阻止するため、イランの港湾を封鎖している。米国の財務長官は、4月下旬、近いうちにカーグ島の原油貯蔵施設が満杯になり、イランの油田は生産停止に追い込まれるとの見方を示していた。

■ 海上には油膜が広がっており、環境や生態系への影響が懸念される。米国・イスラエルーイラン戦争の緊張が続く中、早期の回収は困難な状況である。油膜は他のペルシャ湾岸諸国に到達する恐れもある。

■ 紛争・環境観測団(CEOBS)によると、ここ6か月の間に同様な流出は確認されていなかったといい、今回の流出は「重要性の高い石油ターミナルに負荷がかかっている兆候」ではないかと疑問を呈した。

■ 専門家の中には、貯蔵能力の不足を理由に石油が意図的にペルシャ湾に放出された可能性があると示唆しているが、現時点ではその説を裏付ける証拠はない。

■ 紛争・環境観測団(CEOBSは、流出した石油は約44 ㎢に広がっていると推定している。一方で、石油の流出を監視するスペインの「Orbital EOS」は、流出が57日(木)時点で52 ㎢以上に及んでいるように見えると述べた。

■ 59日(土)、紛争・環境観測団(CEOBSは、衛星画像では油膜の範囲が「大幅に縮小」している様子が見て取れると述べた。現時点では、「流出の原因と発生源は不明のままであり、利用可能な画像だけでは断定できないとしているが、地球観測プログラムコペルニクスの画像分析に基づくと、流出しているのは石油のように見える」と述べた。しかし、「9日(土)のコペルニクス画像では、最初に確認された6日(水)の画像と比べ、その規模が大幅に減少していることが示されているようだ」という。

■ 59日(土)、イラン議会エネルギー委員会は、貯蔵能力の逼迫によりイランの施設から石油が流出していることを確認する報告は「今のところない」とし、「国内の様々な油田での生産は問題なく続いている」と述べた。

■ 511日(月)、イラン外務省は、この地域での米国の軍事作戦が原因で生態系に被害が生じていると非難した。また、イランの石油ターミナル会社はカーグ島付近で石油流出が起きているとの報道を否定した。

被 害

■ カーグ島周辺に排出されたタンカーのバラスト水(油混じりの廃水)によって海の環境が汚染された。 

< 事故の原因 >

■ カーグ島付近で原油流出の疑いがあったが、タンカーから排出された汚染物質を含むバラスト水(廃水)の投棄が原因である可能性が高いとみられる。

< 対 応 >

■ カーグ島周辺の流出報道が出る以前の202647日(火)、米軍はペルシャ湾に浮かぶイランの主要原油積出し拠点であるカーグ島の軍事施設を攻撃した。米国は413日(月)にもカーグ島の軍事施設を空爆したが、イラン経済の生命線とされる石油インフラストラクチャーへの攻撃は見送っていた。

■ 510日(日)、イラン石油ターミナル社は、カーグ島で操業する貯蔵タンク、パイプライン、積載施設、タンカーからの漏洩の証拠は検査で発見されなかったと発表した。

■ 512日(火)、イランは、カーグ島付近で原油流出の疑いがある事案について、石油施設からの流出ではなく、タンカーによる廃水の投棄が原因である可能性が高いという見解を示した。イランは「われわれの調査結果では、この流出がイラン以外のタンカーから排出された汚染物質を含むバラスト水によるものであることを示しており、イランのパイプラインや石油施設からの原油流出は報告されていない」と述べた。

■ 衛星画像分析官は、漏洩源がタンカーだと考えていると述べたが、光学画像だけでは漏洩源を特定することはできないという。

■ 513日(水)、東京大学で画像分析を行った教授によると、カーグ島はイランの原油輸出の大部分を占めており、その西側の海域は積荷作業を行うタンカーによって頻繁に利用されていた。油膜の位置はこうした操業環境と一致するものの、カーグ島の石油ターミナルに近いからといって、そこが油膜の発生源であると断定することはできないという。

 教授は、「島の西側と南西側に広がっている漂流する油膜という空間パターンは、海底や海岸線の固定点からの連続的な漏出ではなく、単発の放出事象後に、風と海流によって運ばれた物質と一致しているように見えた。その後の画像では、活発な継続的な放出の兆候は見られなかった」いい、「入手可能な情報によると、石油ターミナルやパイプラインからの漏洩というよりも、船舶に関連した排出または漏洩の可能性が高いことを示している」と述べた。

補 足

■「イラン」(Iran)は、正式にはイラン・イスラム共和国で、西アジア・中東のイスラム共和制国家である。世界有数の原油産出国であり、人口は約9,175万人で、首都はテヘランである。公用語はペルシア語である。

「カーグ島」(Kharg Island)は、ペルシャ湾のイラン北部に位置する島で、イラン本土の沖25kmにあり、ハールク(ārk)と呼ばれている。英語圏ではKharg Islandといい、日本の報道では、主に英語圏の報道機関・通信社から提供される情報を利用してニュースを伝えるので、主にカーグ島と表記されている。常住の人口は約8,100人であるが、石油積出し施設に関係する施設職員、港湾作業員、警備・軍関係者などを含めると、約20,000人の居住者がいるといわれている。

■「地球観測プログラム“コペルニクス”(Copernicus)」は、欧州連合(EU)が主導する世界最大級の地球観測プログラムであり、衛星や現地観測データを活用して、環境監視、気候変動対策、安全保障に関わるデータを無料で公開している。環境保護、自然災害管理、持続可能な農業など地球全体の現状を把握し、意思決定を支援する「欧州の地球の眼」である。

■「紛争・環境観測団」(Conflict and Environment Observatory、略称:CEOBS)は、2018年に英国で設立され、武力紛争や軍事活動が環境および人間に及ぼす影響を調査し、認識を高めることに特化した慈善団体である。

■ 「Orbital EOS」は、2019年にスペインで設立された環境監視の団体で、石油流出検知、環境パフォーマンス監視、海岸浸食など海洋分野における課題に対し、衛星ベースのソリューションを提供している。AI(人工知能)と高度な海洋モデリングを活用し、監視能力を向上させている。Orbital EOSの技術(EOS Viewer)の主な用途の一つは石油流出監視である。

■「バラスト水」は、貨物を積んでいない船が航行時の安定性を保つために船底のタンクに取り込む海水をいう。バラスト水は港で積込み、別の港で排出されるが、この海水に含まれる外来種が移動先で生態系を破壊する問題を防ぐため、国際条約により処理装置の設置が義務化されている。

所 感

■ メディアの一報からカーグ島の原油積出し施設内の貯蔵タンクからの流出ではないかと調べ始めたが、そうではなく、タンカーからのバラスト水排出とみられることが分かった。

 ①地球観測プログラム“コペルニクス”で流出が疑われる衛星画像・・・⓶場所はイランのカーグ島・・・③米国によるイラン攻撃があった・・・④カーグ島の石油ターミナルは機能停止している 

 このような条件が揃えば、誰だって石油ターミナルのタンクや配管からの油流出と思ってしまう。無意識の思い込みの典型例であろう。このような事例を調べて投稿している者にとってもっとも諌めなければならないことである。

■ ホルムズ海峡の封鎖でペルシャ湾には行き場のないタンカーや船舶が滞っている。意図したものかどうかはわからないが、このバラスト水投棄は戦争が及ぼす悪い影響のひとつである。しかし、タンカーなどの船舶関係者は、タンカーからのバラスト水の投棄はやってはならないということを強く意識してもらいたい。


備 考

 本情報はつぎのインターネット情報に基づいてまとめたものである。

  ・Jp.reuters.com,  カーグ島で石油流出か、イラン主要積み出し拠点 油膜とみられる画像,  May 10,  2026

     Afpbb.com,  カーグ島沖で石油流出か 9日の衛星画像では範囲「縮小」 環境団体,  May 10,  2026

     Jiji.com,  カーグ島海域に石油流出 貯蔵量超過の可能性もイラン,  May 12,  2026

     Jp.reuters.com,  ペルシャ湾の原油流出、タンカー廃水が原因の可能性=イラン高官,  May 13,  2026

     Cnn.co.jp,  イランのカーグ島付近で大規模な石油流出、衛星画像が捉える 専門家は新たな流出に警鐘,  May 13,  2026

     Nbcnews.com,  Oil spill in Gulf likely caused by tanker dump, Iran says,  May 13,  2026

     Thenationalnews.com, Oil slick near Iran's Kharg Island sparks concerns – but where did it come from?,  May 13,  2026

 

後 記: 所感で述べたように、ブログを投稿している者にとってもっとも諌めなければならないことは無意識の思い込みです。しかし、今回の事例で感じたことは、各地で戦争が起こっており、軍はうそを言っても構わないという風潮がメディアの中にも浸透しつつあるということです。このブログでは書きませんでしたが、カーグ島周辺の流出油の画像の中にはいろいろなものがあり、中にはカーグ島の東側のものもありました。もともとイランの事故情報のことは不明瞭でしたが、現在のイラン情勢では一層はっきりしないですね。第一、カーグ島の写真にしてもいい写真(下)だと思っても、よく見るとタンク基数や桟橋が違っており、以前の風景なのですね。


2026年5月11日月曜日

タイの製油所で落雷によって原油貯蔵タンクが屋根シール火災

 今回は、202654日(月)、東南アジアのタイのチョンブリー県にあるタイ石油公社のシラッチャ製油所で原油貯蔵タンクに落雷があり、屋根シール火災があった事例を紹介します。

< 発災施設の概要 >

■ 発災があったのは、タイ(Thai)チョンブリー県(Chonburi)シラッチャ(Si Racha)にあるタイ石油公社(Thai Oil Public Co.)のシラッチャ製油所(Si Rracha refinery)である。製油所の精製能力は275,000バレル/日である。

■ 事故があったのは、製油所の原油貯蔵タンクである。

<事故の状況および影響>

事故の発生

■ 202654日(月)午後5時頃、製油所にある原油貯蔵タンクの屋根に落雷があり、火災が発生した。

■ その時間帯にこの地域では、激しい雨と雷雨が発生していた。現場に居合わせた目撃者によると、原油貯蔵タンクの上部に落雷があり、大きな破裂音が聞こえたという。その後まもなく、タンクの屋根から黒煙と炎が立ち上るのが目撃された。

■ 火災の炎はタンク屋根部で急速に燃え広がり、近隣住民を不安にさせた。

■ 発災にともない、製油所の消防隊と地元の消防隊が出動した。

■ 消防隊は、泡消火剤を散布して火災が近隣のタンクに延焼するのを防いだ。

■ ユーチューブやフェースブックでは、事故のニュースを伝える動画が投稿されているが、このブログで紹介している画像と同様ではっきりした事故画像はない。

 Youtubeไทยออยล์ แจงฟ้าผ่าถังเก็บน้ำมัน ไม่กระทบการกลั่น : รอบวันทันเหตุการณ์ 12.00./ วันที่ 5 ..692026/05/05

 ●FacebookFire & Rescue Thailand รายงานว่า เกิดเหตุฟ้าผ่า ไฟลุกฝาถังเก็บน้ำมันโรงกลั่น เมื่อเวลา 17.00 น.วันที่ 4 พฤษภาคม 2569 เกิดเหตุฟ้าผ่าแล้วเกิดเพลิงลุกไหม้ ฝาถังเก็บ Crude Oil ของโรงกลั่นน้ำมัน พื้นที่ จ.ชลบุรี ขณะนี้เจ้าหน้าที่2026/05/05

 ●Facebookกิดเหตุฟ้าผ่าใส่ถังเก็บน้ำมันดิบ ในพื้นที่ อ.ศรีราชา จ.ชลบุรี ทำให้เกิดเพลิงไหม้ ก่อนที่เจ้าหน้าที่จะควบคุมเพลิงไว้ได้ . #Ch7HDNews #ข่าวออนไลน์7HD」2026/05/05

被 害

■ 原油貯蔵タンク1基の浮き屋根シール部が火災で被災した。

■ 負傷者はいなかった。 

< 事故の原因 >

■ 浮き屋根式タンクに落雷があり、屋根シール部の可燃性ベーパーに引火して火災になった。 

< 対 応 >

■ 当局は、事態が完全に収束したと発表した。火災は鎮火し、負傷者や死者は報告されていない。

 消防隊は再燃を防ぐため、タンクに冷却水を噴霧している。一方、当局は被害状況の詳細な調査を行っている。

■ 製油所は、敷地周辺の大気質を監視するため、公害防止局を含む関係機関と連携する準備を進めている。

■ 火災は迅速に鎮火されたが、当局は周辺地域に影響を与える可能性のある残留臭や煙がないか引き続き監視している。

■ 警察と技術専門家は、製油所の避雷システムと原油タンクの構造を調査し、事故発生時に避雷システムが十分に機能しなかった理由を調査する予定だという。

■ タイ石油公社は、被害の程度を評価している段階だが、被害は限定的で財務状況や業績に大きな影響を与えるものではないと見込んでいる。

 しかし、当局は、今回の事故による被害状況を評価中であり、今後同様の事故が再発しないよう、詳細な調査を実施する予定である。

補 足

■「タイ」(Thai)は、正式にはタイ王国(Kingdom of Thailand)で、東南アジアの中心に位置する人口約6,600万人の仏教国である。

「チョンブリー県」(Chonburi)は、タイ中部に位置し、海岸部はタイランド湾と接する人口約145万人の県である。

「シラッチャ」(Si Racha)は、チョンブリー県にあり、工業団地と港に囲まれた人口24,000人の市である。

■「タイ石油公社」(Thai Oil Public Co.)は、1961年に石油精製会社として設立され、タイ・オイル(Thai Oil)とも呼ばれる。タイ石油公社は、精製能力35,000バレル/日の小規模製油所から、275,000バレル/日を処理できる複合製油所へと発展してきた。精製燃料、石油化学製品、基油潤滑油など多種多様な製品を生産している。「シラッチャ製油所」の主な製品は、LPガス、ガソリン、混合キシレン、ジェット燃料、ディーゼル油、アスファルトなどである。

■「発災タンク」は、原油貯蔵タンクというだけので、サイズや油量は報じられていない。被災写真を見ると、外部型浮き屋根式タンクで510KLレベルの大型タンクである。タンクには、側板に散水配管が設置されている。このほか、固定泡消火設備または半固定泡消火設備が設けてあるのではないだろうか。

■ 「NASAによる世界の雷マップ」(20126月)によると、東南アジアのタイは日本よりはるかに落雷頻度が多い。

所 感

■ 近年、日本でも強い落雷を経験するようになったが、東南アジアのタイでは日本よりはるかに落雷頻度の多い地域である。このため、今回のタンク火災が起こったことに対して、「警察と技術専門家は、製油所の避雷システムと原油タンクの構造を調査し、事故発生時に避雷システムが十分に機能しなかった理由を調査する予定」だといい、強い関心を示している。

 ここでいう“製油所の避雷システム”とは何を指すのか分からないが、特別な被雷塔(避雷針)やタンクの接地設備を言っているのだろう。タンクの被雷システムは「中国における石油貯蔵タンクの避雷設備」20141月)がよくまとまっており、日本でもタンクの接地設備の保守などについて再チェックする機会の事例といえよう。

■ 浮き屋根シール火災の消火活動は、固定泡消火設備または半固定泡消火設備で消火させてものだろう。一方、“火災の炎はタンク屋根部で急速に燃え広がり、近隣住民を不安にさせた”とあり、泡消火設備が機能するまでに時間がかかったと思われる。


備 考

 本情報はつぎのインターネット情報に基づいてまとめたものである。

     Nationthailand.com, A lightning strike sparked a crude oil tank fire at a Chonburi refinery, with crews using foam to contain the blaze. No injuries were reported,  May 04,  2026

     Marketwatch.com, Thai Oil Refinery Crude Storage Tank Catches Fire After Lightning Strike – OPIS,  May 05,  2026

     En.moneyandbanking.co.th, TOP explains that a lightning strike hit an oil storage tank, the fire was quickly brought under control, there were no injuries, and production was not affected,  May 05,  2026

     Thairath.co.th, ฟ้าผ่าโรงกลั่นที่ชลบุรี ไฟลุกท่วมฝาถังน้ำมันไทยออยล์ยันควบคุมสถานการณ์ได้แล้ว,  May 04,  2026

     Mgronline.com, ระทึก! ฟ้าผ่าฝาถังน้ำมันดิบโรงกลั่นที่ชลบุรีจนไฟลุกไหม้,  May 04,  2026

     Dailynews.co.th, ฟ้าผ่าโรงกลั่น! ไฟลุกท่วมฝาถังน้ำมันไทยออยล์ ศรีราชา เจ้าหน้าที่สยบเพลิงด่วนไร้เจ็บ...,  May 04,  2026

     Amarintv.com, ระทึก! ฟ้าผ่าถังเก็บน้ำมันดิบกลางโรงกลั่นชลบุรี ไฟลุกท่วมฝาถัง,  May 04,  2026

     Bangkokbiznews.com, ฟ้าผ่าโรงกลั่นน้ำมันชลบุรี ไฟไหม้ถัง Crude Oil คุมสถานการณ์ได้แล้ว,  May 04,  2026


後 記: 今回の事例で感じたのは、被災写真のあり方です。ブログを読んだ人で感じた方もあると思いますが、障害物が前に写ったりしていて状況がはっきりしません。各メディアの記事の写真は消防署が撮ったもののようですが、撮影条件(天候や時間など)が悪かった所為もあるでしょう。

 このように被災写真がはっきりしないと、現在のようにAIArtificial Intelligence;人工知能)が発達した世の中でははっきりさせようとする動きが出てきます。今回の事例では、さっそくSNS(ソーシャル・ネットワーキング・サービス)に下のようなフェーク写真が投稿されています。右側の写真は発災のタンク番号と同じですが、少し大げさな構図なので、フェークということは分かるでしょう。しかし、左の写真になると、監視カメラで落雷の瞬間を撮ったものだと言われれば、フェーク写真ではないと思ってしまいますね。


2026年5月5日火曜日

米国オクラホマ州で建設用アスファルトプラントが爆発、先住民のこどもが関与か

 今回は、2026418日(月)、米国オクラホマ州ポントトック郡にあるカミンズ建設の道路舗装用アスファルト・プラントのタンク設備で爆発・炎上した事例を紹介します。

< 発災施設の概要 >

■ 発災があったのは、米国オクラホマ州(Oklahoma)ポントトック郡(Pontotoc County)エイダ(Ada)にあるカミンズ建設(Cummins Construction)のアスファルト・プラントである。

■ 事故があったのは、州道99号線北沿いにあるカミンズ建設のアスファルト・プラントのタンク設備である。

<事故の状況および影響>

事故の発生

■ 2026418日(月)夜、アスファルト・プラントのタンク設備が爆発・炎上した。

■ 発災にともない、消防隊が出動した。

■ ポントトック郡保安官事務所の担当者が爆発現場に到着した際、加温用オイルタンクの火がつけ放しになっており、アスファルト製造に使用されるタンクに引火したことを確認した。

■ 火災は、アスファルト・プラントの営業時間外で操業していない時間帯に発生した。

■ 被害の程度については情報が入っていない。

■ 事故にともなう死傷者はいなかった。

■ 保安官事務所は、消防隊が活動している間、住民に現場付近への立入りを避けるよう呼びかけた。

被 害

■ 建設会社のアスファルト・プラントが爆発・火災で被災した。被災範囲は不詳である。

■ 負傷者はいなかった。

< 事故の原因 >

■ 爆発・火災の原因は、近隣のアメリカ先住民の子供たちが起こした火事が原因で発生したとみられる。

< 対 応 >

■ 消防隊は発生した火災を消し止めることができた。

■ 当局者によると、救急隊員は現場にとどまり、状況の確認にあたっている。

■ ポントトック郡保安官事務所によると、爆発は近隣の家の子供たちが起こした火事が原因で発生したという。

■ 捜査の対象となっている子供たちがアメリカ先住民の部族に帰属していることから、本件はチカソー・ライトホース警察(Chickasaw Lighthorse Police)に引き継がれた。

補 足

■「オクラホマ州」(Oklahoma)は、米国の中南部に位置し、人口約396万人の州である。州名はチョクトー族インディアンの言葉でokla  hummaを合わせたもので赤い人々を意味する。1907年に元のインディアン準州とオクラホマ準州を合わせて合衆国46番目の州になっており、当初は全米のインディアン部族のほとんどを強制移住させる目的で作られた州である。このため、他の州に比べてインディアンの保留地(Reservation)の多い州である。

「ポントトック郡」(Pontotoc County)は、オクラホマ州中南部に位置し、人口は約38,000人の郡である。

「エイダ」(Ada)は、ポントトック郡の中部に位置する郡庁所在地で、人口約16,000人の市である。

■「カミンズ建設」(Cummins Construction)は、1955年に創業したアスファルト舗装を専門とする家族経営の建設会社である。オクラホマ州の高速道路の大部分を建設してきた。

■「建設用アスファルト・プラント」の一般的な外見や製造過程は、図のとおりである。一方、オクラホマ州ポントトック郡にあるとされるカミンズ建設のアスファルト・プラントをグーグルアースで見ると、建物は点在するが、標準的なアスファルト・プラントかどうかははっきりしない。

 なお、アスファルト・プラントの構成などの例は、ユーチューブ「アスファルトプラント;VPⅣ-Clover(日工株式会社の製作)を参照。

所 感 

■ 今回の事例は、近隣のアメリカ先住民の子供たちが起こした火事が原因で発生したとみられる。この種の少年らによるいたずらの「故意の過失」による事例は、つぎのようなブログを紹介した。

 ●「米国オクラホマ州で銃弾によるタンク火災」 20122月)

 ●「米国テキサス州ヒューストンの石油生産施設でタンク火災、少年と関係か」202512月)

 米国における陸上の小規模な石油施設はほとんど安全上の設備や対策のないところが多く、日本から見れば、おかしいくらい無防備であるが、今回のような事例の発生頻度が多いと見ると、少ないと見るかは主観の違いである。

 しかし、今回の事例は、米国の中でインディアンの保留地の多いオクラホマ州で起こったものであり、その背景はインディアン部族のほとんどを強制移住させる目的で作られた州という米国における触れられたくない暗部のひとつであることを示したといえよう。

■ 消火活動は消防隊が出動し、泡消火活動を行っているが、詳細は分からない。


備 考

 本情報はつぎのインターネット情報に基づいてまとめたものである。

     Kten.com, Explosion at Pontotoc County asphalt facility,  April  20, 2026

     Kxii.com,  No injuries reported after explosion impacts Pontotoc County business,  April  21, 2026

     Dailydispatch.com, Explosion at Pontotoc County asphalt facility,  April  21, 2026

     News9.com, Explosion reported at Pontotoc County construction business,  April  20, 2026

     Kcos.com, Explosion at Pontotoc County business leaves no injuries,  April  20, 2026


後 記: オクラホマ州のタンク事故はこれまで多く紹介してきましたが、オクラホマ州が米国の中でもインディアンの保留地が多く、その背景がインディアン部族のほとんどを強制移住させる目的で作られた州だということは初めて知りました。下の写真は当時のことを示すもののひとつです。このブログでは、発生した事例に関わる土地や関連事項を調べていますが、その土地々々で変わったことを知る機会になっています。


2026年4月29日水曜日

ブラジルのラウロ・ミュラーの建物火災、近くの燃料タンクは延焼回避

 今回は、20264月8日(水)、ブラジルのサンタカタリーナ州ラウロ・ミュラーにある個人所有の温室や倉庫として使っている建物が火災になり、消防隊が出動しましたが、近くにディーゼル燃料用の貯蔵タンクがあり、延焼の危険性があった事例を紹介します。

< 発災施設の概要 >

■ 発災があったのは、ブラジル(Brazil)サンタカタリーナ州(Santa Catarina)ラウロ・ミュラー(Lauro Müller)のリオ・カピバラス・アルト地区(Rio Capivaras Alto)にある個人所有の建物である。

■ 事故があったのは、市街地から離れたエストラダ・ジェラル(Estrada Geral)にある平屋の建物(面積約360㎡)でトウモロコシ乾燥用温室や倉庫になっていた。近くには燃料タンクや農業機械があった。

<事故の状況および影響>

事故の発生

■ 202648日(水)午後6時頃、同市郊外のリオ・カピバラス・アルト地区のエストラダ・ジェラルにある建物で火災が発生した。

■ 発災にともない、消防署の消防隊がABTR-48型消防車とともに出動した。

■ 建物は火災の炎で包まれ、消防隊が現場に到着したときには、建物内に設置されたトウモロコシ乾燥用温室が焼損していることを確認した。炎の勢いが激しく、乾燥用温室は全焼し、建物の一部も崩落していた。

■ 建物の所有者は消防隊が到着するまで、庭のホースを使って消火活動を試みていた。所有者によると、事故発生時、温室は稼働中でトウモロコシを乾燥させていたという。建物の最上部から煙が出ているのが確認され、すぐに暖房システムの換気用ファン周辺へ広がったとのことである。

■ 現場にはディーゼル燃料のタンクがあり、火災の危険性が高まっていた。

■ 消防隊の戦略はふたつの事に重点をおいた。ひとつは火災源への直接的な対応であり、もうひとつは周辺構造物の防護である。この取組みは、延焼していない残りの構造物(建物)、すなわちディーゼル燃料が貯蔵されていたタンクや農業機械が火災になるのを防ぐ上で極めて重要だった。

 リスクの評価後、消火用ホースが2本設置された。1本は消火用、もう1本はまだ火災の影響を受けていない区域を保護し、炎が倉庫の残りの部分に燃え広がるのを防ぐためのものである。

■ 倉庫内のエンジンルームには、燃料や作動油が保管されており、消防隊は泡消火薬剤を使って火災を制圧し、完全に消火する必要があった。

■ フェースブックでは、事故のニュースを伝える画像が投稿されている。

 FacebookEA NOTÍCIAS DIRETO DE LAURO MÜLLER/SC! 2026/04/18

被 害

■ トウモロコシ乾燥用温室のある平屋の建物(面積約360㎡)が焼けた。

■ 近くには燃料タンクや農業機械があったが、延焼は免れた。

■ 負傷者は出なかった。   

< 事故の原因 >

■ 事故の原因はわかっていない。

 所有者によると、建物の最上部から煙が出ているのが確認され、すぐに暖房システムの換気用ファン周辺へ広がったという。

< 対 応 >

■ 消火活動とだめ押し作業によって、消火用水は3,500リットル、泡消火薬剤は3リットルを使用した。

補 足

■「ブラジル」(Brazil)は、正式にはブラジル連邦共和国で、南アメリカに位置する人口約21,300万人の連邦共和制国家である。首都はブラジリアである。

「サンタカタリーナ州」(Santa Catarina)は、ブラジル南部に位置し、ブラジル27州のひとつで人口約760万人の州である。州都はフロリアノポリスである。

「ラウロ・ミュラー」(Lauro Müller)は、サンタカタリーナ州にあり、人口約15,300人の市である。

■「発災場所」は、ラウロ・ミュラーのリオ・カピバラス・アルト地区の市街地から離れたエストラダ・ジェラルにある個人所有の平屋の建物(面積約360㎡)でトウモロコシ乾燥用温室や倉庫になっているといい、近くには燃料タンクや農業機械があるところである。グーグルマップで調べると、それらしい建物のあるところはあるが、特定はできなかった。

所 感

■ 建物の出火原因は分からないが、“所有者によると、建物の最上部から煙が出ているのが確認され、すぐに暖房システムの換気用ファン周辺へ広がった”というので、電気系統による出火ではないかと思う。

■ 消火活動について、「消防隊の戦略はふたつの事に重点をおき、ひとつは火災源への直接的な対応で、もうひとつは周辺構造物の防護である。この取組みは、延焼していない残りの構造物、すなわちディーゼル燃料が貯蔵されていたタンクや農業機械が火災になるのを防ぐ上で極めて重要だった。消火用ホースは2本設置され、1本は消火用、もう1本はまだ火災の影響を受けていない区域を保護し、炎が倉庫の残りの部分に燃え広がるのを防いだ」という。これがメディアの取材でラウロ・ミュラーで発生した火災の際、消防隊がタンクの爆発を防いだという標題になった。

■ ブラジルのラウロ・ミュラーという日本から見て地球の反対側のローカルなところで、懸命に消火活動について考え、実行している消防隊がいて、それを良い意味で伝えるメディアがいることの分かったことが一番の収穫である。


備 考

 本情報はつぎのインターネット情報に基づいてまとめたものである。

     Engeplus.com.br, Galpão utilizado para secagem de milho é destruído por incêndio em Lauro Müller,  April 19,  2026   (ラウロ・ミュラーで発生した火災の際、消防隊がタンクの爆発を防いだ)

     Tnsul.com, Bombeiros evitam explosão de tanque durante incêndio em Lauro Müller,  April 19,  2026

     4oito.com.br, Incêndio destrói estufa de milho em Lauro Müller,  April 19,  2026

     Horahiper.com.br, Incêndio destrói estufa de secagem de milho e atinge galpão em Lauro Müller,  April 19,  2026

     Portalconexaosul.com.br, Incêndio destrói estufa de secagem de milho e atinge galpão em Lauro Müller,  April 19,  2026


後 記; 最近、ロシアーウクライナ戦争や米国・イスラエルーイラン戦争で、人々が苦労して作った石油貯蔵タンクをいとも簡単に攻撃して破壊するという戦争による軍事行動を目にすることの多い世の中です。この破壊行動は、平常時でいう故意の過失で受入れられないことが戦争では是となるという矛盾であり、ひとの心がすさんでいくばかりです。

一方、ブログ投稿のため、インターネット情報を検索していて、今回の報道記事がラウロ・ミュラーで発生した火災の際、消防隊がタンクの爆発を防いだという標題だったため、ひと際目立ちました。暗いニュースでも、見方を変えれば、良いニュースになり、精神が穏やかになります。という訳で、今回のブログで紹介することとしました。

2026年4月21日火曜日

北海道ニセコのホテルで燃料タンクから重油2,000リットルが河川へ流出

 今回は、202647日(火)、北海道ニセコ町にあるホテル鶴雅別荘 杢の抄でボイラーの燃料用タンクから重油約2,000リットルが流出し、近くのニセコアンベツ川に流れ出て、水質汚染を起こした事例を紹介します。

< 発災地域の概要 >

■ 発災があったのは、北海道ニセコ町のニセコ昆布温泉にある鶴雅ホールディングス㈱が経営する高級温泉ホテルの鶴雅別荘(つるがべっそう)杢の抄(もくのしょう)である。ホテルは2013年に開業し、1級河川の尻別川に流れ込むニセコアンベツ川沿いに建っている。

■ 事故があったのは、ホテル内に設置されていたボイラー用の容量15,000リットル/基の燃料タンク2基である。

< 事故の状況および影響 >

事故の発生

■ 202647日(火)午後3時頃、ホテル鶴雅別荘 杢の抄でボイラーの燃料用タンクから重油が流出しているのを従業員が確認した。

■ 発災にともない、消防、北海道、ニセコ町などに連絡が入り、出動した。

■ 漏洩した重油は約2,000リットルで、近くのニセコアンベツ川に流れ出た。ホテルから南に約4km離れたニセコアンベツ川と尻別川の合流地点付近でも流出した重油が確認された。

■ 油の拡散を防ぐため、北海道とニセコ町などが現場にオイルフェンスを展張し、吸着シートを設置した。オイルフェンスなどを設置した現場では、川や周辺住民への影響を調べている。

■ 当日のホテルによる重油漏洩の経緯は、つぎのように語っていた。

「当日、午前930分頃から午前中にかけて、外部の請負会社の作業員が燃料タンク2基に14,000リットルの重油を供給した。タンクへの受入れ作業が終了した後、請負会社は撤収した。正午頃、警告ブザーが感知して鳴った。しかし、見回りをしたが、異常は見つからなかった。午後3時頃、請負会社から給油時に特に問題は無かったと連絡があった。午後330分頃、ホテルの従業員が入り口の自動ドアの辺りでオイルの臭いを感じた。調べると、燃料タンクの通気口から玄関横に敷設していたパイプを通じて重油が漏れているのを発見した。

 タンク2基に重油を受け入れた後、ホテルの作業員がタンクに入った油量を調整していた。しかし、何らかの理由で片方のタンクに過剰に重油が送られ、その結果、タンクの空気を逃がすために設置されていた通気口から側溝へ流出した」

■ メディアの中には、漏洩の要因についてつぎのように報じているところがある。

 ● タンクに重油を補充した後、タンク2基間の油量調整装置が作動したままになっていたため、装置の給排気口から重油が漏れ出たとみている。

 ● 漏洩は、ホテル内に設置されていた2基のタンクの重油の量を調整していた従業員が、内容量の多い方に油を足したため通気口からあふれたという。

■ 当日、ホテルには26人が宿泊していたが、体調不良を訴えた人はいなかった。

■ ホテルは原因究明のため、翌日から自主休業した。ホテル側は「現状をしっかり把握し、住民や関係者への説明に努めたい」としている。

■ ユーチューブでは、事故を伝える映像が投稿されている。

 Youtube「ボイラーの燃料重油約2000リットルが漏れ、近くの川に流出 北海道ニセコ町のホテル」2026/04/09

 ●Youtube「ホテルで燃料用重油流出 約2000L川に 北海道 ニセコ町(202649)2026/04/09

 ●Youtube「北海道ニセコ町のホテル ボイラーの燃料用重油約2000リットルが周辺の河川に漏れ出る」2026/04/09

被 害

■ 燃料の重油が約2,000リットル外部に流出した。

■ 河川が重油で汚染された。 

< 事故の原因 >

■ 事故原因は、燃料移送ポンプの操作ミスである。

  ホテル側の調査結果では、「2基の燃料タンク(容量15,000リットル×2基)を接続し、双方の油量を調整するポンプを作動させたまま、従業員がその場を離れた。その結果、メーターの容量超過を適時に確認できず、燃料タンクの容量以上の重油が供給されてオーバーフローを引き起こし、タンク通気口から外部へ漏出した」という。

< 対 応 >

■ 48日(水)、ホテル経営者の鶴雅ホールディングス社は、お詫びとともに事故の状況を同社ウェブサイトに掲載した。
■ 49日(木)、鶴雅ホールディングス社は、事故原因の調査結果を同社ウェブサイトに掲載した。

 ● 事故発生経緯はつぎのとおり。

  ・12:00頃; 施設1階予約事務所の重油監視メーターにて警告ブザーが鳴動。地下タンク給油口および機械室側タンクを目視確認したが、その時点では異常は確認されず。
  ・15:15頃; ロビーにて重油臭を確認。調査の結果、タンク通気口からの重油漏れを発見。
  ・15:30頃; 施設横の流水溝への重油流出を確認し、速やかに管轄消防署へ通報。消防隊が到着。土嚢および吸着シートにて河川への流出拡大の阻止作業を開始。
  ・16:30頃; タンク通気口からの重油漏れが停止。
  ・17:00頃; ニセコ町役場職員と消防隊による河川流出状況の調査(蘭越町方面)を開始。並行して、役場手配の専門業者が流水溝および駐車場に滞留した重油の回収。

● 事故の発生原因はつぎのとおり。
  ・当社従業員による燃料移送ポンプの操作ミスが主たる原因である。

  ・2基の燃料タンク(容量15,000リットル×2基)を接続し、双方の油量を調整するポンプを作動させたまま、従業員がその場を離れた。その結果、メーターの容量超過を適時に確認できず、燃料タンクの容量以上の重油が供給されてオーバーフローを引き起こし、タンク通気口から外部へ漏出した。

■ 今回の事故は周辺環境への影響が懸念される。重油が流れ込んだ尻別川は、国交省が水質調査のBOD値(生物化学的酸素要求量)をもとに毎年発表する1級河川の水質ランキングの中で、水質が最も良好な河川としてこの10年で8回選ばれている。国交省が257月に発行した資料では、直近10年で4回以上水質が最も良好な河川に選ばれた20河川のひとつとして紹介され、上位6番目に尻別川(8回)が入っている。

 このように清流として知られており、今回の重油流出の事故で鶴雅ホールディングス社は「今回の事態を厳粛に受け止め、被害の拡大防止と環境回復に誠心誠意取り組んでまいる所存でございます」といい、河川汚染の広がり、臭気による周辺住民の影響を精査していると説明していた。

補 足                                                

■「北海道」は、日本の北に位置し、人口約498万人の47都道府県の中で唯一のである。道庁所在地は札幌市である。

「ニセコ町」は、北海道西部の虻田郡(あぶた郡)にあり、人口約5,670人の町である。

「ニセコ昆布温泉」は、ニセコアンヌプリの南西麓に位置する自然に囲まれた温泉郷で豊かな湧出量を誇る自家源泉で、国の国民保養温泉地に指定されている。多くの宿泊施設が敷地内に独自の源泉を持っている。

「鶴雅別荘(つるがべっそう)杢の抄(もくのしょう)」は、ニセコ昆布温泉の中にあり、部屋数24室で、旅館とホテルの良さを活かしたハイブリッド型の客室を有する高級ホテルである。

■「鶴雅ホールディングス㈱」は、 1953年に設立し、1955年に阿寒グランドホテルを創業したホテル業を経営する会社である。

■「発災タンク」は、ボイラー用の容量15,000リットル/基の燃料タンク2基と報じられている。しかし、タンク型式は大気圧(常圧)タンクと容器型タンクに大きく分かれるが、今回の事故はどちらのタイプであったか報じられていない。また、ホテルの屋外の映像はあるが、室内に設置されている燃料タンクの写真は無い。おそらく地下式の容器型のタンクではないかと思われる。通常、容量15,000リットルのタンクサイズの目安は地下貯蔵タンク型で直径1.8m×長さ67mである。

所 感

■ 事故の原因は、燃料移送ポンプの操作ミスという。発災事業者(鶴雅ホールディングス社)は事故発生から3日目に調査結果をウェブサイトに投稿し、速い対応だと思う。

 一方、つぎのような疑問点もある。

 ● タンクには、高液位で警報の鳴るシステムが設置されていたのではないだろうか。このシステムが機能しなかったのか。人はミスをするが、そのミス防止の計装を設置するのが通常である。

 ● 当日の報道では、“タンク2基間の油量調整装置を作動という記事がみられるが、発災事業者の調査結果では油量調整装置という記述はない。油量調整装置の機能や作動状況について触れられていないのはなぜか。

 ● 調査結果では、“2基の燃料タンクを接続し、双方の油量を調整するポンプを作動させたまま、従業員がその場を離れたとあるが、油がタンクから漏洩するまでには相当な時間経過があったとみられ、これは操作ミスというより、失念したレベルである。失念するほど、ホテルではいろいろな作業で忙しかったのではないだろうか。この作業の振り分けはどのようになっていたのか。

 ● 通気口の排出先が側溝につながっていることによって流出の影響(河川の汚染)が大きくなったとみられる。なぜ、このような設計になっているのか。 


備 考

 本情報はつぎのインターネット情報に基づいてまとめたものである

     News.yahoo.co.jp,  重油2000リットルが川に流出 ニセコ「杢の抄」従業員が2基のタンクの重油量を調整中に 川や周辺住民への影響調査中,  April  11,  2026

     Htb.co.jp,  ボイラーの燃料重油約2000リットルが漏れ、近くの川に流出 北海道ニセコ町のホテル,  April  09,  2026

     Hokkaido-np.co.jp,  ニセコ「杢の抄」で重油流出 川に2千リットル 7日発生、鶴雅発表,  April  08,  2026

     Mainichi.jp,  温泉旅館で重油2000リットル流出、川に流入 北海道・ニセコ,  April  10,  2026

     Tsurugagroup.com,  重油流出事故の発生に関する調査報告(鶴雅グループ、ニセコ昆布温泉鶴雅別荘 杢の抄),  April  09,  2026

     News.yahoo.co.jp,  ニセコで「重油」約2000L流出事故、高級温泉旅館から流れた先は... 「水質が最も良好な河川」でお馴染みだった,  April  10,  2026

後 記: テレビの全国版放送によって事故が報じられましたので、調べることとしました。ホテルの付帯的設備の燃料タンクですから詳しい事故状況が報じられるか疑問でしたが、ニセコの自然豊かなところできれいな河川を汚染したため、北海道の地元のメディアなどが取上げていました。事業者の事故発覚後の公表対応は良かったと感じますが、所感では産業プラントの見方で疑問を列記しました。規模は違いますが、バンスフィールド事例と同様のタンクへの過充填事故です。[「最近の貯蔵タンク過充填事故からの教訓」20158月)を参照してください]