今回は、2026年10月14日(水)、韓国の蔚山市蔚州郡温山邑にある化学製品製造会社の㈱釜昇化学の工場においてトルエンの入った貯蔵タンクが爆発・火災を起こし、隣接タンクへ延焼していき、7基の貯蔵タンクが焼損した事故を紹介します。
< 発災施設の概要 >
■ 発災があったのは、韓国の蔚山市(ウルサンシ)蔚州郡(ウルジュグン)温山邑(オンサンウプ)鶴南里(ハクナムリ)にある化学製品製造会社の㈱釜昇化学(プスンかがく)の工場である。
■ 事故があったのは、工場の屋外にあるトルエン用タンクである。 釜昇化学の工場は石油化学物質を流通・保管・販売する事業場で、トルエン、シンナーなど可燃性物質を多量に保有している。
< 事故の状況および影響 >事故の発生
■ 2026年10月14日(水)午前9時30分頃、蔚山市にある釜昇化学の工場で大きな火災が発生した。
■ 発災にともない、消防隊が出動した。
■ 消防隊は現場に到着して消火活動を行うとともに、人的被害の有無がないか確認した。
■ 火災の発生後、蔚州郡は午前10時過ぎに携帯電話向けメッセージで「温山邑鶴南里58‐7の工場で火災が発生した」と伝え、「車両は迂回し、近隣の住民は安全に注意してほしい」と呼びかけた。
■ 近くの蔚山テクノパークで教育を受けていた人は、「最初、3回ほどバーンという爆発音がした後、しばらく間隔をあけて6~7回ほど爆発する音がした」と語った。
■ 火災現場では爆発音が続き、火災の煙が広がった。 火災から出る黒い煙と臭いが広がると、周辺事業場は作業を中断した。近隣工場では働いていた人が約7千人おり、避難する騒動が生じた。
■ 釜山(プサン)、大邱(テグ)、慶尚南道(キョンサンナムト)などから支援の消防隊が動員された。消防士200名のほか、大型化学消防車、消防用ヘリコプター3機、大容量泡放射砲1台などの消防資機材が動員された。
■ 火災は屋外の貯蔵タンクから出火したとみられ、事故当時、屋外貯蔵タンク周辺で作業員16名がいたが、彼らは全員安全に避難した。
■ 関係者によると、可燃性物質であるトルエンの入った容量8,000リットル(8KL)貯蔵タンクから200Lドラム缶またはIBCタンクに配管を通じて小分け作業中、タンク注入口配管付近で電気火花によって引火したのではないかという。また、バルブをロック(締める)した後に爆発が発生したと話す関係者もいる。
現場の関係者らは、貯蔵タンク注入口配管側で爆発音と電気スパーク音が出た後、バルブをロックする過程で爆発とともに激しい炎が上がったと語っている。
■ 蔚山消防本部によると、火災発生当時、釜昇化学はトルエンを出荷するために貯蔵タンクと接続された配管を使用して200Lのドラム缶に移す作業をしていた。この過程で原因が分からない火災が発生したとみている。
■ 火災は強い風に乗って炎が広がり、トルエン、シンナー、アセトン、エタノール、キシレンなどを保管する屋外貯蔵タンク33基のうち7基のタンクと野積場のドラム缶などに延焼した。また、火種が飛んで近くの事業場の芝生でも火が出た。
■ 消防隊は、消防車のほか消防用ヘリコプターを動員して消火作業を行っているが、炎は容易に消えない状態だった。消防当局は、延焼した貯蔵タンク7基の内部物質がなくなるまで、燃焼拡大防止に注力する計画だという。
■ 放射能力45,000L/minの大容量砲放射システムは、近くに水源がなく、すぐに稼働するのが難しい状況だった。大容量泡放射砲の投入準備を行っていたが、現場で投入前に火が鎮圧され、使用することは無かった。
■ 火災鎮圧後、初動出動した消防隊のひとりは、「炎があまりにも激しく、既存の消防ホースなどは接近すら難しかった。突然、バーンという音が聞こえ、屋外タンクのタンク屋根が空に舞い上がった」といい、「高温ガスのためタンク屋根が飛んだため、安全のために隊員と車両の両方がしばらく避難しなければならなかった」と語っている。
■ 事故にともなう負傷者はいなかった。
■ ユーチューブなどでは、事故を報じる動画が投稿されている。
●Youtube、「폭탄 터지듯 ‘펑’‥7천여 명 대피 (2026.10.14/뉴스데스크/울산MBC)」(2026/10/14)
●Youtube,「[재난속보] 울산 화학 공장에서 불...대응 1단계 발령 진화 중」 (2026/10/14)
●News.sbs.co.kr、「울산 온산 화학업체 큰불…인근 7천 명 대피 출처 : SBS 뉴스 원본 링크 : 」(2026/10/15)
< 被 害 >■ 貯蔵タンク7基が焼損した。内部の液が焼失した。
■ 野積場の200Lのドラム缶や1,000LのIBCタンクの一部が焼損した。
■ 負傷者は出なかった。
■ 発災事業所や周辺事業所で避難があった。
< 事故の原因 >
■ 事故原因は調査中である。蔚山消防本部によると、火災発生当時、釜昇化学はトルエンを出荷するために貯蔵タンクと接続された配管を利用し、200Lのドラム缶に移す作業をしていた。この過程で原因が分からない火災が発生したとみている。
< 対 応 >
■ 火災は、消防隊による消火活動によって約4時間後の午後2時頃に消えた。
■ 消防当局は、消火活動が終わりしだい、爆発の経緯や正確な火災原因、人的・物的被害規模を調査するという。
■ 10月15日(木)、鬱州警察署などによると、同日午前11時から約1時間40分間、釜昇化学の火災現場で関係機関約20人が参加し、合同捜査(調査)が行われた。鑑識には蔚山警察庁科学捜査界と蔚州警察署、国立科学捜査研究院、消防当局、雇用労働部、洛東江流域環境庁、安全保健公団などが参加した。
■ 国科水は、屋外貯蔵タンクから200Lドラム缶、または1,000リットル容量のIBCタンクに可燃性物質であるトルエンを移すために使用された配管を回収した。警察は国科水分析を通じて該当配管バルブが正常にロックされていたか、バルブがロックされた状態でもトルエンが漏れた可能性があるかどうかなどを確認する予定だ。
補 足
■「韓国」は、正式には大韓民国で、 東アジアに位置し、人口約5,120万人の共和制国家である。首都はソウル特別市である。
「蔚山市」(ウルサンシ)は、韓国の南東部に位置し、人口約108万人の広域市である。
■ 「㈱釜昇化学」(プスンかがく)は、韓国の石油化学会社で石油化学物質を流通・保管・販売する。蔚山市に事業場があり、トルエンのほか、シンナー、アセトン、エタノール、キシレンなど可燃性物質を多量に保有している。
■「トルエン」(Toluene)は、芳香族炭化水素でシナモンやシンナールに似た臭いのある化学物質で、揮発性があり、引火点が4~5℃の可燃性石油化学物質である。塗料、ゴムビニール製造などに使われる。
■「発災タンク」は、容量8,000リットル(8KL)でトルエン用貯蔵タンクと報じられているが、タンク型式や大きさなどの仕様は報じられていない。被災写真やグーグルマップによると、被災したタンク7基はコーンルーフの固定屋根式円筒タンクである。グーグルマップでは、前列にあるタンクは直径約3.3mであり、高さを4mと仮定すれば、容量は約34KLとなり、大きすぎるので、後列にあるタンクが発災タンクとみられる。この後列のタンクははっきりしないが、直径約2.0m×高さ約2.5mとすれば、容量は約8,000リットルとなる。被災したタンクでタンク屋根が飛んだのが3基(前列1基、後列2基)であり、爆発したものと思われる。発災タンクは後列の2基のいずれかであろう。
所 感
■ 今回の事故原因は、蔚山消防本部によると、火災発生当時、トルエンを出荷するために貯蔵タンクと接続された配管を使用して200Lのドラム缶に移す作業をし、この過程で原因が分からない火災が発生したとみている。関係者の話によれば、トルエンの入った容量8,000リットル(8KL)貯蔵タンクから200Lドラム缶またはIBCタンクに配管を通じて小分け作業中、タンク注入口配管付近で電気火花によって引火したのではないかという。今回の事故要因は作業や運転操作時のミス(過失)と思われる。
一方、韓国・蔚山市は、最近、つぎのようにタンク事故が増えている。
●「韓国のターミナルでタンクの試料採取中にタンク爆発して死傷者2名」 (2025年2月)
●「韓国で開放工事中の内部浮き屋根式タンクが爆発、死傷者2名」(2023年11月)
●「韓国S-オイル社製油所で原油タンクのミキサー破損で油漏洩」 (2014年4月)
2020年にブログで紹介した「この10年間の「世界の貯蔵タンク事故情報」について(その3)」 (2020年9月)によれば、国別のタンク事故件数は日本が28件に対して韓国は6件と少ない。事故データの収集の差異もあるが、事故が増えた背景に経済優先などの要因があるのではないだろうか。
■ 今回の事故は、タンク7基の火災にしては、消防活動時間が約4時間と短い。しかも、途中で爆発があり、消防士の安全を考慮して消火活動を中断している。この報道が正確なら、負傷者も出さず、消火活動は適切に行われたのだろう。
■ 一方、放射能力45,000L/minの大容量砲放射システムが派遣されているが、近くに水源がなく、すぐに稼働するのが難しい状況だったという。韓国では、「韓国のタイヤ工場で大火災、負傷者3名、廃油タンク爆発の影響は?」(2025年6月)でも、放射能力45,000 L/minと30,000 L/minの大容量泡放射システムが派遣されたが、水源が乏しく、有効に働かなかった例がある。
放射能力45,000L/minの大容量砲放射システムは、日本の基準では、直径60~75mの浮き屋根式タンクの全面火災で使用する能力のシステムである。今回のタンク火災では必要ない。どのような判断で派遣が決まったのか分からないが、混合装置、加圧ポンプ、泡消火薬剤に加え、水源供給、それに現場での配置の必要のある大容量砲放射システム派遣の基準を明確にしておく必要がある。
備 考
本情報はつぎのインターネット情報に基づいてまとめたものである。
・News.yahoo.co.jp, 韓国消防当局、蔚山蔚州郡の製造業者火災で「対応第1段階」発令,
November 14, 2026
・Hani.co.kr,
울산 석화업체 저장탱크서 ‘펑펑’…화재로 작업자 10여명 대피, November
14, 2026
・Yna.co.kr,
울산 온산 화학업체 저장탱크서 불…인근 공사장 7천명 대피(종합), November
14, 2026
・Kmib.co.kr,
울산 온산 화학업체 화재…인근 공사장 7000명 대피,
November 14, 2026
・Stock.mk.co.kr,
울산 화학업체 화재는 '톨루엔' 옮기다 발생…탱크 7기로 번져, November 14,
2026
・Indifocus.kr,
울산 화학제품 제조업체서 화재…톨루엔 8000리터 저장탱크 불타,
November 14, 2026
・Uljusinmun.co.kr, '펑' 하더니 화학물질 저장탱크 뚜껑 하늘로…아찔했던 화재 순간, November 14,
2026
・Newsis.com,
울산 부승화학, 4시간만에 진화…7천여명 대피·사상없어(종합) ,
November 14, 2026
・Chosun.com, 울주군 화학제품 공장 화재… 7000명 대피, November
15, 2026
・Hankyung.com, 울산 부승화학서 톨루엔 소분 중 화재…4시간여만에 완전 진화, November 14,
2026
・Kmib.co.kr,
울산 온산 화학업체 화재…인근 공사장 7000명 대피,
November 14, 2026
・Pointe.co.kr, "펑 소리 후 불기둥" 울산 화학공장 톨루엔 탱크 화재...7000명 긴급 대피, November
14, 2026
後 記: 今回の韓国の事例は久しぶりに本格的なメディアの記事と感じました。相変わらず、発災事業所の名前を報じないメディアもありましたが、今回の規模の事故(?)ではちゃんと報じているところが出ています。負傷者は出ていませんが、周辺事業所では7,000人規模の避難者があった(真偽は?)と報じ、被災写真を掲載していれば、発災事業所を報じないという選択肢はないのではないでしょうか。今回の事故でこのブログとして興味ある記事は、大容量放射砲システムを出動させたが、水源が無く、機能しなかったという付記記事(本文とは別に補助的な情報を付け加えた記事)です。泡放射能力のデータも記事になっていますし、このような情報や記事を望みます。



















































