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2026年9月5日土曜日

米国オクラホマ州グレンプールの石油貯蔵施設で落雷によってタンク火災3基

 今回は、2026817日(月)、米国オクラホマ州グレンプールにあるエクスプローラー・パイプライン社の貯槽施設において落雷によって天然ガソリン用タンクが火災になり、隣接する貯蔵タンクに延焼し、複数タンク火災となった事例を紹介します。

< 発災施設の概要 >

■ 発災があったのは、米国オクラホマ州(Oklahoma)グレンプール(Glenpool)にある石油企業のエクスプローラー・パイプライン社(Explorer Pipeline)の貯槽施設である。

■ 事故があったのは、グレンプールのハイウェイ75号線近くの西126番通りにあるエクスプローラー・パイプライン社の貯槽施設の天然ガソリン用のタンクである。

<事故の状況および影響>

事故の発生

■ 2026817日(月)午前830分頃、グレンプールにあるエクスプローラー・パイプライン社の貯槽施設のタンク1基が爆発し、火災が起こった。同時刻頃には悪天候による落雷が付近で報告されていた。

■ 最初、火災は1基のタンクで発生し、その後ほかの2基のタンクに延焼した。近くの住民のひとりは、炎が燃え上がる直前に雷光が落ちるのを目撃したといい、「実際に落雷するのを目撃しました。地面に落ちたように見えました。オクラホマではちょっとした嵐になると思っていたのに、落雷するのを見て、こんなに大変なことになってしまったんだと思いました」と語った。

■ 火災タンクから近くのタンク2基に延焼し、このうち1基のタンクも爆発した。これらのタンクには天然ガソリンが貯蔵されていた。激しい爆発で、貯蔵タンクの屋根が噴き飛び、大量の黒煙が空中に立ち昇った。火は数分以内に1基のタンクから3基のタンクに燃え広がった。火災となった3基目のタンクは、のちに消防隊によって消火された。

■ 発災にともない、グレンプール消防署の消防隊が出動した。火災現場には約50名の消防士が出動したほか、複数の地元消防署や専門の産業消防隊がグレンプール消防隊を支援した。

■ 支援に出動したのは、クッシング消防署、キーファー消防署、シンクレア製油所消防隊、コフィービル・リソーシズ消防隊、ウィリアムズ社(Williams Fire and Hazard Control)、USファイア・ポンプ社(U.S. Fire Pump)である。タルサ消防署も817日(月)の早い時間に現場に到着。このほか、環境保護庁(EPA)とタルサ郡緊急事態管理局も対応を支援した。

■ 地元消防隊が火災現場に張り付いている間、グレンプール市内の他の火災にはジェンクス消防署が対応した。

■ エクスプローラー・パイプライン社は、817日(月)、つぎのような声明を発表した。

「今朝早く、グレンプールにあるタンクファームで落雷によりタンクが炎上したとの連絡を受けました。地元消防署と緊急対応チームが現場に出動され、安全を確保しました。追加の消防隊も現場に向かっています。グレンプール警察は、キャスパー・アベニューとエルウッド間の126番ストリート・サウスを封鎖しました。地元緊急対応当局と連携して現場の監視を続けておりますので、一般の方々は現場付近に近づかないようお願いいたします」

■ 消防隊は、火災タンクに対して泡消火作業を行い、隣接するタンク群に延焼しないよう冷却作業に努めた。

■ 施設周辺の道路は、一般の人々が立ち入り禁止区域に入らないようにするため閉鎖された。

■ グレンプール公立学校および近隣住民に対して、予防的な屋内待避命令が出された。

■ 事故にともなう負傷者は出ていない。

■ ユーチューブなどでは、火災のニュースを伝える動画が投稿されている。

 YoutubeLighting Strikes Sparks Fire at Explorer Pipeline Tank Farm2026/8/19

 ●Edition.cnnVideo shows fuel tank explosion in Oklahoma2026/8/17

    ●FacebookWOW!  Hunter Hoffman captured the moment the lid exploded off an oil tank during a fire near Glenpool. Explorer Pipeline says a lightning2026/8/18

被 害

■ 天然ガソリン用タンク2基が火災で損壊した。火災になったもう1基のタンクは大きな火災には免れた。

■ タンク2基に入っていた天然ガソリンが焼失した。

■ 施設周辺の道路は一般の人々が立ち入り禁止区域になって閉鎖された。

■ 学校や近隣住民に対して屋内待避命令が出された。

■ 負傷者は出なかった。 

< 事故の原因 >

■ 事故原因は落雷によるとみられる。

< 対 応 >

■ グレンプール地区に対する外出自粛勧告は、 817日(月)午後2時頃に解除された。グレンプールの公立学校に対する勧告も解除された。

■ 818日(火)、火災は鎮火したとエクスプローラー・パイプライン社は述べた。泡消火による放射が功を奏し、約12時間かけて817日(月)の午後8時頃に火は消し止められた。消防隊は、タンクを冷却してベーパーの発生を最小限に抑えるため、夜通し泡消火水の放射作業を続けた。

■ 火災が消火され、清掃および廃棄物処理の浄化計画が実施されており、清掃作業中は一般市民に現場付近への立ち入りを控えるよう求めている。グレンプール消防署は、「今後数時間にわたり、約30分ごとにタンクに泡放射を続け、冷却が継続されるようにします」と述べた。

■ 大気質モニタリングの結果、周辺地域に汚染は見られず、浄化作業期間中も継続して実施される予定である。817日(月)の午前中の間、大気監視装置は異常を検知しておらず、当局は地上レベルでは煙による一般市民への危険はないと述べた。緊急事態管理当局による大気質モニタリングでも、地上レベルでは危険な濃度は検出されなかったという。

■ 消防隊などの緊急対応要員は、緊急対応業務からプロジェクト管理業務へと移行したと述べている。関係者によると、復旧作業は引き続き進められ、関係機関や対応パートナーと連携して作業を進めているという。エクスプローラー・パイプライン社は、ウィリアムズ社(Williams  Fire & Hazard Control)USファイア・ポンプ社が冷却作業の継続を主導していることを確認した。

■ グレンプール消防署は、対応が浄化作業に移行するのに伴い、支援的な役割に移行している。この種の事故対応を専門とするウィリアムズ社(Williams  Fire & Hazard Control)USファイア・ポンプ社が現場での復旧・修復作業を主導する。

■ 現場は封じ込められており、水や泡が区域外に流出するのを防ぐため、二重の堤防が設置されている。

バキューム吸引装置と貯蔵タンクを使用して、現場から廃水を安全に除去している。現場には警備員が配置され、立ち入りは厳しく制限されている。当局は、浄化作業が行われている間は、引き続き現場付近に近づかないよう一般市民に呼びかけた。


■ 原因は落雷とみられているが、エクスプローラー・パイプライン社または調査機関が最終的な結論を発表するまで、暫定的なものとみなされる。

■ 過去にグレンプールでは3件のタンク火災が発生しており、プロセス安全に関わる関係者にとって最も重要な点は、おそらく、つぎの点だろう。

 ● グレンプールのタンクファームでは、過去に複数回のタンク火災が発生しており、少なくとも2件は落雷が原因とされている。同じエリアで繰り返し発火メカニズムが発生するということは、技術的に非常に重要な兆候である。つまり、既存の落雷対策、ボンディング、接地、またはベーパー空間制御対策が、当該タンクの構成や製品の揮発性といった特定の要因によるリスクギャップを完全に解消できていない可能性を示唆している。

 ● これは特定の事業者の慣行を批判するものではなく、業界全体に共通する傾向であり、検討に値する。なぜなら、揮発性炭化水素を扱う大気圧貯蔵タンクは、落雷の多い地域(米国中部地域の大部分を含む)の石油・ガス、石油化学、燃料流通事業において広く普及しているからである。

 ● グレンプールのタンク火災では負傷者はなく、死者も出ずに鎮火した。これは緊急対応が適切に実施されたことを示す結果と言える。しかし、プロセス安全性の観点からより重要なのは、グレンプールのタンク施設で落雷による火災が発生したのは今回が初めてではないという事実である。同じ施設で、同じ起爆メカニズムによる発火が繰り返されるということは、落雷対策、危険区域の分類、緊急隔離といった既存のリスク管理策が、当該施設特有の危険要因に対して十分な対策となっていない可能性を示唆する技術的な兆候である。

■ グレンプールのタンクファームでは、過去20年余りの間に2003年と2006年に続き、3度目の大規模火災となった。2003年には、今回の施設に隣接するコノコフィリップス社のタンクファームで発生した火災があり、静電気が原因である可能性が高い。この事故を受けて、国家運輸安全委員会(NTSB)は緊急時対応計画に関する報告書を作成し、地域の学校は授業を全面的に中止することにしたが、月曜日の事故ではそのような措置は必要なかった。2006612日には、グレンプールにあるエクスプローラー・パイプライン社の無鉛ガソリンタンクに落雷があり、火災となった。この火災の鎮火には1011時間かかり、推定650万ドルの物的損害が発生した。2026817日に発生した火災は、無鉛ガソリンではなく天然ガソリンのタンクで完全に消火されるまでに約12時間燃え続けた。

補 足

■「オクラホマ州」(Oklahoma)は、米国中南部に位置し、隣接するテキサス州の北にあるパンハンドル(取っ手つきフライパン)の形をした州である。日本の約半分ほどの面積の土地に約396万人しか住んでいないので、人口密度は低く、ゆったりしている。オクラホマには山がほとんどなく、見渡す限り、地平線である。オクラホマシティとタルサという二大都市から少し離れれば、草原が延々と続き、ほとんどは牛がのんびり歩く農場か、オイルやガスを掘削する油田・ガス田である。大陸性気候のオクラホマ州では、天気が急激に変わる。35月頃は通り道にある家々をまるごと吹き飛ばしてしまうほどの強力なトルネード(竜巻)が発生する。

「グレンプール(Glenpool)は、オクラホマ州タルサ郡にあり、人口約14,000人の市である。グレンプールは、1905年に石油が発見されたことで有名であり、その発見が経済ブームを引き起こし、タルサとその周辺地域の成長を促進した。

■「天然ガソリン」(Natural Gasoline)とは、天然ガス田や油田から採れる液体天然ガスから採取され、液体天然ガスから分離・回収される液体のうち、プロパンやブタンなどのLPガス分を除いたガソリン状の炭化水素液体である。成分はペンタン以上の比較的分子量の大きい炭化水素を主成分としている。ガソリンと同様であるが、製油所で得られる直留ガソリンに比べて軽質分の割合が多く、より揮発性に富む。天然ガソリンは、自動車ガソリン用のブレンド基材、工業用揮発油(溶剤など)、化学工業原料などに用いられる。

■「エクスプローラー・パイプライン社」(Explorer Pipeline)は、エネルギー企業で精製石油製品や原油を輸送・保管するエネルギー輸送業務を行っている。グレンプールの施設は、テキサス州、オクラホマ州、中西部を横断して自動車用ガソリン、ディーゼル燃料、ジェット燃料を輸送する全長1,800マイル(約2,900km)のパイプラインシステムの重要な拠点となっている。施設には30基以上のタンクがあり、総貯蔵容量は約340万バレルである。一方、2006年には、「米国オクラホマ州グレンプール火災(2006年)の消火活動」(201212月)の同施設でタンク火災を起こしている。

■「発災タンク」の大きさなどの仕様は報じられていない。グーグルマップで調べると、火災エリアのタンク4基はほぼ同じ大きさで、直径は約44mである。高さを1015mとすれば、容量は15,20022,800KLである。タンク型式は、外観上、コーンルーフ型固定屋根型式であり、通常、内液がガソリンの場合、内部浮き屋根式である。2006年の事例では、内部浮き屋根式のタンクだったので、おそらく、今回の事例でも内部浮き屋根式だったと思われる。

所 感 

■ 今回の事故原因は落雷による爆発・火災と報じられている。火災の状況は、数分以内に1基のタンクから3基のタンクに燃え広がったという。火災タンクから近くのタンク2基に延焼し、このうち1基のタンクも爆発した。爆発によって2基の貯蔵タンクの屋根が噴き飛んだ。火災となった3基目のタンクは、のちに消防隊によって消火されたが、2基のタンクは側板が座屈するほどまで全面火災の様相を呈した。

 タンク内液は「天然ガソリン」(Natural Gasoline)で、天然ガス田から採れる液体天然ガスからプロパンなどのLPガス分を除いたガソリン状の炭化水素液体で、製油所で得られる直留ガソリンに比べて軽質分の割合が多く、より揮発性に富むという。落雷などでタンク複数火災を起こした例としては、つぎのような事例がある。

 ●「マレーシアの製油所で原油タンク火災、負傷者4名」 20187月)

 ●「キューバのタンク基地で落雷による原油タンク火災4基、死傷者162名」20228月)

 今回の事例では、内液の天然ガソリンの特殊性なのか、本文中に指摘されている「落雷対策・危険区域の分類・緊急隔離といったリスク管理策が当該施設特有の危険要因に対して十分な対策となっていない」と感じる事例である。

■ 消火戦略には積極的戦略・防御的戦略・不介入戦略の3つがあり、「消防隊は、火災タンクに対して泡消火作業を行い、隣接するタンク群に延焼しないよう冷却作業に努めた」と積極的戦略をとっているように報じられているが、被災写真を見ると、防御的戦略または不介入戦略をとり、消火活動はとっていない。日本の法令では、直径34m45mのタンクであれば、10,000リットル/分の大容量泡放射砲システム1台で消火できることになっている。しかし、これはタンク1基が火災になっている場合である。今回のように直径44mのタンクが複数基全面火災になっている場合、たとえ1基を消火できても、火災タンクの火ですぐに火災を起こしてしまうことは容易に考えられる。また、タンク全面火災では、ボイルオーバー発生を考慮する必要がある。ガソリンや灯油といった精製された油製品では、原油のようにホットゾーンを生じることはなく、ボイルオーバーは発生することはないが、今回の天然ガソリン火災の場合、断言できるのか分からない。

 支援に出動したウィリアムズ社(Williams  Fire & Hazard Control)は、 20066月に起こったエクスプローラー・パイプライン社の貯蔵タンク(直径43m)全面火災を大容量泡放射砲システムで消火に成功させた実績のある消防会社であるが、今回の火災状況を見て防御的戦略または不介入戦略をとったものではないだろうか。注;米国オクラホマ州グレンプール火災(2006年)の消火活動」を参照。


備 考

 本情報はつぎのインターネット情報に基づいてまとめたものである。

     Newson6.com, Cleanup efforts underway after Glenpool pipeline fire, August  24, 2026

     Tankstorage.com, Fire at Explorer Pipeline Glenpool tank farm, August  18, 2026

     Koco.com, Air quality monitoring ongoing after lightning sparks massive fire at Glenpool gas tank farm, August  18, 2026

     Tanktransport.com, Explorer Pipeline Halts Glenpool Movements After Three-Tank Fire, August  18, 2026

     Vigilantally.com, Glenpool Tank Fire: What the Explorer Pipeline Incident Reveals About Tank Farm Safety, August  18, 2026

     Okcfox.com, Fire out at Glenpool pipeline facility, cleanup process begins, August  18, 2026

     Kjrh.com, Glenpool tank fire out after 12 hours, neighbors say third blaze in 20 years, August  18, 2026

     News10.com, Gas tanks explode at Oklahoma pipeline facility after lightning strike, August  18, 2026

     Bicmagazine.com, Oklahoma tank fire extinguished as crews begin cleanup, August  18, 2026

     Chemanalyst.com, Lightning Sparks Tank Fire at Explorer Pipeline facility in Glenpool, August  18, 2026

     Hazardexonthenet.net, Lightning strike triggers tank explosion and fire at US fuel storage facility, August  18, 2026

     Watchers.news, Lightning strike triggers fire in three natural gasoline tanks at Explorer Pipeline facility in Glenpool, Oklahoma, August  19, 2026

     Pipeline-journal.net, Fire at Oklahoma Depot Forces Major Pipeline Shutdown, Raising Fuel Supply Concerns, August  18, 2026

     Advisorsreports.com, Lightning strikes Shell, Phillips 66-backed pipeline giant’s Oklahoma tank farm, August  19, 2026


後 記: 久しく無かった大規模の石油貯槽施設におけるタンク複数基火災の事例でした。また、2006年に火災事故のあった「米国オクラホマ州グレンプール火災(2006年)の消火活動」の発災事業所であり、以前の関係ブログを読み返してみました。今回の事例のメディア情報では、火災の状況と消防活動がよくわかりませんでした。短時間で鎮火までに至った事例であるならば、そのようなことがありますが、今回は3基火災で約12時間かかっていますので、取材する時間はあったでしょう。たとえば、タンク火災が2基だったのか、3基だったのか記事によって異なりました。また、消防隊の消火活動によって鎮火したという記事が大半でしたが、被災写真を見ると、現場で消火活動を行っている映像はありません。ウィリアムズ社という実績のある消防会社が参画していることが、記事や映像を見ていろいろ考える参考になりました。

2026年8月28日金曜日

米国ニューメキシコ州リー郡の石油生産施設でタンク火災

 今回は、米国ニューメキシコ州リー郡南部にある石油生産施設で大規模なタンク火災が発生した事例を紹介します。

< 発災施設の概要 >

■ 発災があったのは、米国ニューメキシコ州(New Mexico)リー郡(Lea County)南部にある石油生産施設である。

■ 事故があったのは、リー郡南部(ジャル近郊)のフライングパン通り(Frying Pan Road)とアンソニー通り(Anthony Road)の交差点近くにある石油生産施設の油井ユニットのタンク設備である。フライングパン通りとアンソニー通りの交差点近くには“KylePipkin 203H&202H”という油井ユニットがある。同ユニットはマタドール・プロダクション・カンパニー(Matador Production Company)の所有する石油生産施設である。

<事故の状況および影響>

事故の発生

■ 2026717日(金)、リー郡南部の石油生産施設で大規模なタンク火災が発生し、大きな黒煙が立ち昇った。

■ 発災にともない、消防署の消防隊が出動した。

■ 出動したのは、ジャル消防署、ユーニス消防署、ノウルズ消防署、ホッブス消防署の消防隊のほか、リー郡保安官事務所と緊急事態管理局である。

■ 当局は、半径2マイル(約3.2km)の避難区域を設定し、住民に対し現場付近への立ち入りを避けるよう呼びかけている。なお、現在の避難区域内には住宅はない。

■ 現場がひとけのない地帯であったため、住宅への被害はなかった。ジャルなどの近隣の人口密集地には影響はなかった。

■ 事故にともなう負傷者もいなかった。

■ リー郡は、車の運転手に対し、火災を見るために道路脇に停車しないこと、そして法執行機関や緊急対応要員の指示に従うことを呼びかけた。

■ 火災への対応が消防隊員によって続けられているため、717日(金)の午後も避難区域は引き続き有効となっている。

■ 消防隊員は安全な区域を設定し、消火活動と現場の冷却作業を行う間、現場を監視した。

■ 米国国立気象局の報告によると、発災場所の北方にあるジャルの住民は避難区域や煙の影響を受けない見込みだ。  

被 害

■ 石油生産施設の油井ユニットが火災で焼損した。

■ 負傷者はいなかった。

■ 避難区域が設定され、住民に対し現場付近への立ち入りが制限された。 

< 事故の原因 >

■ 事故の原因は分からない。 

< 対 応 >

■ 消防隊員は安全な区域を維持し、その後数日間、消火活動と現場の冷却作業を行う間、現場を監視した。

■ 緊急対応当局は引き続き状況を監視しており、状況が改善すれば避難区域を縮小する予定だと述べた。

補 足

■「ニューメキシコ州」(New Mexico)は、米国の南西部に位置し、州の北はコロラド州に接し、東側にはオクラホマ州とテキサス州に、西側はアリゾナ州に、南側はテキサス州およびメキシコとの国境に接しており、人口約212万人の州である。

「リー郡」(Lea County)は、ニューメキシコ州の東南部に位置し、人口は約74,400人の郡である。

■「発災施設」は特定できなかった。フライングパン通りとアンソニー通りの交差点近くには、“KylePipkin 203H&202H”という油井ユニットがあり、マタドール・プロダクション・カンパニー(Matador Production Company)が操業する。しかし、確かな被災写真に乏しく、メディアでも事業所を明記していない。 “KylePipkin 203H&202H”という油井ユニットは、グーグルマップで調べると、大きな施設ではないし、周りには住宅は勿論、ほかの設備はない。メディアの被災写真には、ほかの施設や設備らしいものが写っており、今回の施設事故のものであるという確証はとれない。 “KylePipkin 203H&202H”の油井ユニットの隣接地は更地になっており、拡張したのかもしれないが、詳細はわからない。

所 感 

■ 今回の事例はメディアの発災写真があり、事故状況ははっきりしていると思った。しかし、調べていくと、発災写真に疑問が出てきた。半径2マイル(約3.2km)に避難区域が設定され、この間には住宅は無いというが、写真には、発災設備のほか他の構築物が写っている。また、火災の写真に写っている設備と今回の発災した設備が同じとは思えない。 グーグルマップによると、“KylePipkin 203H&202H”の油井ユニットの隣接地は更地になっており、新たな設備が拡張したのかもしれないが、いずれにしても被災写真が今回の事故のものであるという確証が持てないので、採用しないこととした。

■ そうすると、発災写真が一枚も無いということになり、事故状況はメディアの記事のみになった。ニューメキシコ州の石油生産関連施設に関するタンク事故は、これまでつぎのような事例を紹介してきた。

 ●「米国ニューメキシコ州の油井用貯蔵施設で爆発・火災、死傷者2名」20187月)

 ●「米国ニューメキシコ州の石油施設で爆発・火災、死者3名」20179月)

 2017年の事例では、発災施設の被災写真があるが、2018年の事例では、遠くからの煙の写真しかない。この頃から、ニューメキシコ州を含めた米国のメディアの体制や組織が弱体化しつつあるのではないかという危惧をもったが、今回の事例を見ると、それがはっきりと現れている。


備 考 

 本情報はつぎのインターネット情報に基づいてまとめたものである。

     Kob.com, Firefighters battling tank battery fire in Lea County,  July  18, 2026

     Krqe.com, Crews battling tank battery fire in Lea County,  July  17, 2026

     Koat.com, Crews battle large fire in Lea County,  July  17, 2026

     Aol.com, Tank battery fire in Lea County sparks evacuation order,  July  18, 2026


 後 記: 今年の夏の暑さには閉口します。さらに追い打ちをかけるようにルームエアコンがこわれました。新しいのに買い替えることにしましたが、その間、扇風機で対処しました。このブログも扇風機の風の中で調べたりしましたが、その時間は一回最大で1時間を限度にしました。暑さには強い方だと自分では思っていましたが、今年の暑さは家や部屋のまるごと外気温と変わらぬ異常さです。つくづく、ルームエアコンのありがたみを実感しました。

2026年8月23日日曜日

ウェールズの旧ミルフォード・ヘブン製油所跡地で解体中のタンク火災、負傷者1名

 今回は、202676日(月)、イギリスのウェールズのミルフォード・ヘブンにあるインパラ・ターミナルズ・インフラストラクチャーUK社のロベストン・ウェスト・ターミナルで廃止されていた石油タンクが解体中に大規模な火災を引き起こした事例を紹介します。ロベストン・ウェスト・ターミナルはかつてのミルフォード・ヘブン製油所の跡地にあり、現在は石油製品の貯蔵と流通に使用されています。

< 発災施設の概要 >

■ 発災があったのは、イギリスのウェールズ(Wales)ペンブルックシャー州(Pembrokeshire)ミルフォード・ヘブン(Milford Haven) にあるインパラ・ターミナルズ・インフラストラクチャーUK社(Impala Terminals Infrastructure UK Ltd)のロベストン・ウェスト・ターミナル(Robeston West Terminal)である。ロベストン・ウェスト・ターミナルは、かつてのミルフォード・ヘブン製油所の跡地にあり、現在は石油製品の貯蔵と流通に使用されている。

■ 事故があったのは、ロベストン・ウェスト・ターミナル内にあった廃止されていた石油タンクなどの設備である。

<事故の状況および影響>

事故の発生

■  202676日(月)午後5時過ぎ、ロベストン・ウェスト・ターミナルの敷地内で大規模な火災が発生した。

■ 丘陵地帯にいた住民は煙を目撃したといい、「私は岸辺に座ってクレダウ川の景色を眺めていました。そのとき、細い煙の筋が見え始め、それが次第に大きくなり、濃い黒色の刺激臭のある煙の大きな雲となって地平線に沿って漂っていきました」と語っている。

■ 火災の通報を受け、ミッド・アンド・ウェスト・ウェールズ消防隊が出動した。

■ 地域一帯に濃い黒煙が空高く立ち昇り、近隣住民に安全に関する注意喚起が行われ、緊急対応が開始された。ソーシャルメディアで拡散された写真には、工業地帯の上空に黒煙が立ち上る様子が写っており、近隣住民の間で懸念が高まった。

■ 現場には、ミッド・アンド・ウェスト・ウェールズ消防隊のほか、ダイフェッド・ポウィス警察および地元機関が出動した。ミルフォード・ヘブン、ヘイバーフォードウェスト、ペンブローク・ドック、タンブル、カーマーゼン、アマンフォードの各消防隊が現場に出動した。

■ 警察は道路封鎖を実施し、火災による煙のため、周辺住民には屋内待避が指示された。

■ 火災は、廃止された石油タンク内で発生したもので、タンクには残留原油があった。このほか、プロパンガスボンベと酸素ボンベの混合物を含む約60本のボンベが保管されていた。

■ タンクは解体作業中で、当時切断装置が使用されていたという。タンクは空だったとみられるが、構造物の下または内部に油の残留物やスラッジが残っていた可能性があるという。

■ 消防隊は、70mmジェット14本、45mmジェット3本、現場の放水銃、泡消火用消防車を用いて、水と泡で消火活動を行った。

■ ミッド・アンド・ウェスト・ウェールズ消防救助隊は、煙が漂っているため、近隣住民に対し窓やドアを閉めておくよう勧告した。

■ 事故にともない、1名が現場で軽傷の手当てを受けた。

■ 近くの住民は、火災が少し弱まった時点で、つぎのように語った。「私が知っているかぎり、この辺にいる人はみな安全です。煙が薄れてきているので、消防隊は火災を制圧できていると思います。警察はすぐに道路を封鎖しましたし、緊急サービスもテキパキと対応していました」といい、「以前はプーマ・オイルという会社だったけど、今はインパラという名前になっています。古い石油貯蔵タンクを解体しているところだと聞いています」と語った。

■ フェースブックでは、タンクの火災の状況を伝える動画が投稿されている。

 Facebook Decommissioned oil tank caught fire at IMPALA TERMINALS in Milford Haven, UK (6 July 2026) #foamfatalesefs #storagetanks #fireprotection 2026/7/7

 ●Facebook HERALD BREAKING NEWS LARGE FIRE AT IMPALA ..2026/7/7

被 害

■ 解体中のタンク1基が火災で損傷した。

1名が現場で軽傷の手当てを受けた。

■ 周辺の道路が封鎖された。また、火災による煙のため、周辺住民には屋内待避が指示された。

< 事故の原因 >

■ 廃止されて解体中のタンク内で発生したもので、タンクには残留原油があった。火災の原因は分かっていない。 

< 対 応 >

■ 一時的に重大事態宣言が発令されたが、後に解除された。

■ 火災は、その日の夜遅く午後10時過ぎに消火された。

■ 当該地域の道路封鎖は事故当日の夜に解除された。

■ インパラ・ターミナルズ・インフラストラクチャーUK社は、「ミルフォード・ヘブンのターミナルでの事故は解決しました」と述べた。

■ 緊急対応部隊は現場に5時間以上留まり、現場の安全が確認した後、インパラ・ターミナルズ・インフラストラクチャーUK社に引き渡された。

■ 事故後、インパラ・ターミナルズ・インフラストラクチャーUK社は、緊急対応が終了した後、ターミナルの残りの部分は通常通り稼働を続けたと述べた。

■ 火災の原因は分かっておらず、調査は継続中である。

■ 火災のあった施設の場所は、新たなグリーンエネルギー計画の予定地でもある。開発業者によると、5000万ポンド規模のグリーン水素製造施設が建設される予定で、最大70人の地元雇用が創出される可能性があるという。 20261月には、グリーンエネルギー生産プロジェクトに関連する全長1.5kmの水素ガスパイプラインの建設計画が承認されたという。ウェストウェールズ水素プロジェクトの一環であり、ミルフォード・ヘブンのインパラ・ターミナルズ・インフラストラクチャーUK社に20MWの新たな水素製造施設を建設するための計画許可が下りたという。

■ また、この施設には、かつてミルフォード・ヘブン製油所があった場所で、1983年にタンク火災があり、ボイルオーバーが発生した事故として知られている。事例は、「ミルフォード・ヘブンの原油タンク火災事故(19838月)」(201412月)「石油貯蔵タンク火災の消火戦略 - 事例検討(その1)」201410月)を参照。

補 足

■「ウェールズ」(Wales)は、は、グレートブリテンおよび北アイルランド連合王国(イギリス)を構成する4つの構成国(Country)のひとつで、人口は約310万人である。

「ペンブルックシャー州」(Pembrokeshire)は、ウェールズ南西部に位置する州で人口約25,000人である。

「ミルフォード・ヘブン」(Milford Haven)は、ペンブルックシャー州にある天然の良港を持つ町である。

■「インパラ・ターミナルズ・インフラストラクチャーUK社」(Impala Terminals Infrastructure UK Ltd)は、石油製品やエネルギー資源の備蓄・流通インフラストラクチャーを担う英国法人で、英国国内で大規模な石油・液体バルクの貯蔵施設(タンクやターミナル)を保有・運営している。

 今回の発災場所である「ロベストン・ウェスト・ターミナル」(Robeston West Terminal)は、ミルフォード・ヘブンの近郊のロベストン・ウェストにある石油・燃料貯蔵流通ターミナル(油槽所)で、インパラ・ターミナルズ・インフラストラクチャーUK社によって運営されている。同ターミナルは、旧ミルフォード・ヘブン製油所(Milford Haven Refinery)の一部だった。旧ミルフォード・ヘブン製油所は2014年に製油所としての機能が閉鎖された後、2015年にプーマ・エナジーへ売却され、石油製品の保管および流通に特化したプーマ・エナジー・ターミナルへ生まれ変わったあと、インパラ・ターミナルズ・インフラストラクチャーUK社のロベストン・ウェスト・ターミナルへ変わった。

■「発災タンク」は、使用を廃止し、解体中のタンクと報じられているだけである。グーグルマップと被災映像で調べると、敷地南部の貯水池が4つある近くのタンクだとわかる。元のタンクの直径は約73mで、高さを20mとすれば、容量約83,600KLの浮き屋根式タンクだった。

所 感

■ 今回の事例は、事故の状況を理解しがたいタンク事故である。“火災は、廃止された石油タンク内で発生した。タンクは解体作業中で、当時切断装置が使用されていた。タンクは空だったが、タンク近辺あるいは内部に残留原油が残っていたとみられる。このほか、プロパンガスボンベと酸素ボンベの混合物を含む約60本のボンベが保管されていたという。タンクは半分以上解体されており、このような中で残留原油やプロパンガスボンベが保管されていたという不安全な管理状況は過去に記憶がない。

■ 強いて挙げれば、タンク事業者と解体工事会社の意思疎通がまったく無かったのだろう。このタンクを解体するにあたって、内部の残留原油を抜いた際、別な容器に入れたが、そのまま放置され、解体作業の火花によって容器に入った残留原油が火災になったとしか考えられない。しかし、火災の燃焼を見ると、燃えている原油はかなりの量で、なぜ、タンク内部の底板付近に漏れ出たのか不可解な状況である。


備 考

 本情報はつぎのインターネット情報に基づいてまとめたものである。

     Countytimes.co.uk, What happened after huge Milford Haven oil terminal fire?,  July 7,  2026

     Hazardexonthenet.net, Disused oil tank fire prompts major incident at Milford Haven terminal,  July 7,  2026

     Tankstorage.com, Major fire at Welsh oil refinery,  July 8,  2026

     Walesonline.co.uk, Black smoke fills the air as fire breaks out at former oil refinery,  July 7,  2026

     Westerntelegraph.co.uk, Major incident stood down after Milford Haven terminal fire,  July 7,  2026

     Isssource.com, 1 Injured in Fire at Decommissioned Oil Tank,  July 14,  2026

     Au.news.yahoo.com, Major incident declared after oil tank fire at Milford Haven terminal,  July 7,  2026

     Tenby-today.co.uk, Large fire at Milford Haven oil terminal sends black smoke skyward,  July 7,  2026

     Swanseabaynews.com, MILFORD HAVEN: Major incident declared as fire sends black smoke over town — the second major industrial blaze in the region in weeks,  July 7,  2026

     Pembrokeshire-herald.com, Large fire breaks out at Impala Terminal in Milford Haven,  July 7,  2026

     Metro.co.uk, Huge inferno sweeps over oil refinery site as villagers urged to stay back,  July 7,  2026

     Pressreader.com, Blaze at former oil refinery turns sky black with smoke,  July 7,  2026


後 記: ミルフォード・ヘブンというと、1983年に起きた製油所タンクの大火災を思い浮かべます。ボイルオーバーという事象がいかに激しいかを知りました。今回の事例を知り、調べていくと、タンクエリアの配置は大部分が当時の製油所のままであり、言い方は適切ではないですが、昔懐かしいという気がします。しかし、当時とは事業者は変わっていますが、またしても変なタンク火災が起こりました。日本流にいうと、呪われたというか、縁起の悪いタンクエリアで、お祓いをして邪気払いをするでしょう。

2026年8月16日日曜日

ブラジルで有害なスチレンモノマーが貯蔵タンクから流出、住民204名が治療

 今回は、2026715日(水)、ブラジルのアマゾナス州マナウス南部工業地区にある石油化学会社イノバ社の第4ユニット(石油化学貯蔵エリア)のスチレンモノマー用貯蔵タンクで重合によってスチレンモノマーが流出し、住民204名がスチレンモノマーのベーパーを吸って息切れ、めまい、吐き気、失神などの症状を呈し、治療を受けた事例を紹介します。

< 発災施設の概要 >

■ 発災があったのは、ブラジル(Brazil)アマゾナス州(Amazonas)マナウス(Manaus)にある石油化学会社イノバ社(Innova)のプラントである。

■ 事故があったのは、マナウス南部工業地区にあるイノバ社の第4ユニット(石油化学貯蔵エリア)のスチレンモノマー用貯蔵タンクである。

<事故の状況および影響>

事故の発生

■ 2026715日(水)午後520分頃、 プラント内にあった貯蔵タンクから有害性のスチレンモノマーが漏洩するという事故が発生した。

■ プラント内には、3基のスチレンモノマー用貯蔵タンクがあったが、漏洩があったのは、そのうちの1基である。イノバ社によると、タンク内の製品の温度が異常に上昇したため、爆発を避けるため、機器の安全装置によってベーパーが制御された状態で放出されたという。スチレンモノマー貯蔵タンク内で異常な化学反​​応が発生したとみられる。

■ 発災にともない、イノバ社の自衛消防隊とともにアマゾナス州軍消防局が出動した。

■ 漏洩発生直後に作業員が撮影し、ソーシャルメディアで拡散された動画は、事態の深刻さを物語っている。映像には、タンクから立ち昇る濃い白い煙が会社の敷地内に急速に広がっていく様子が映っている。流出するベーパーの激しさに、現場や近隣の工場にいた従業員は恐怖を感じた。

■ 危険な状況が発生した後、同社は直ちに社内の専任消防隊を現場に派遣してリスク管理作業を実施するとともに、アマゾナス州軍警察消防局に緊急連絡を取り、連携した消火活動のため現場へ急行するよう要請した。複数の消防隊が同時にタンクの冷却、ガス監視、区域隔離作業を実施した。イナバ社は、社内で定めた緊急対応手順に従って速やかに事態の収束を図った。

■ スチレンモノマーは、プラスチックやゴムの製造に使用される化学物質で、加熱すると蒸発し、強い臭気を発する。暴露すると、目、鼻、喉の炎症のほか、頭痛、めまい、吐き気などの症状を引き起こす恐れがある。 民間防衛当局は、市民に対し、開放的で換気の良い場所に留まり、空気の循環を促すためにドアや窓を開け、エアコンや換気システムなど外部の空気を取り込む機器の電源を切るよう勧告した。

■ 呼吸器系の炎症、めまい、吐き気などの急性曝露症状のため、当初、16名が医療トリアージを必要としたと報じられていた。その後、医療機関に治療を受けたひとの数は増えていった。

■ 当局は、今回の事態を受けて隔離された区域を漏洩が発生したタンクを中心とした半径300mの範囲であると発表した。イノバ社の隣にある会社は避難措置が取られ、封鎖状態が継続されている。現場への立ち入りは、消防署、アマゾナス州軍警察、民間防衛隊、保健機関など事故対応に携わる関係者のみが許可された。

■ アマゾナス州軍消防局などの対応チームは、スチレンモノマーの漏洩を抑えるため、タンクの冷却作業を行った。

■ スチレンモノマーは温度変化によって変化し続ける。タンクの冷却中、作業員が注入する水は、蒸発や凝固などのプロセスを経て変化する製品の温度を制御するのに役立つ。そのため、初期段階で事態が収束した後も、少量のベーパーが放出される可能性があり、消防隊員は、タンクの温度上昇や新たな危険の発生を防ぐため、引き続き状況を監視した。

■ ガス漏れにより、学校や工業地区の企業が活動を停止した。

■ マナウス市長は、工業地区でスチレンガスが漏洩したことを受け、市内は厳戒態勢にあると述べた。

■ 州政府は安全対策として、漏洩箇所周辺地域の即時避難を勧告し、緊急対応要員が事態を収拾するまで工業地区を通って移動するのを避けるよう市民に呼びかけた。

■ 当局は、周辺地域に住む人たちに、ドアや窓を開けたままにし、換気システムやエアコンの電源を切るよう勧告した。スチレンを吸入したり、接触したりすると中毒を引き起こす可能性があるので、めまい、吐き気、呼吸困難、皮膚や目の炎症などの症状が現れた場合は、できるだけ早く医療機関を受診するよう呼びかけた。

 アマゾナス州民間防衛局は、住民に対し以下の予防措置を講じるよう呼びかけた。風通しの良い開放的な場所に滞在する、空気の循環を促すため、ドアや窓を開けておく、エアコンや換気システムなど、外気を取り込む機器の電源を切っておく、影響を受けた地域またはその近隣にいる人は、直ちに漏洩現場から離れ、市内の別の安全な場所に避難する、追って通知があるまで、工業地区および周辺地域への移動は避ける。

■ フェースブックなどでは、流出事故の状況を伝える動画が投稿されている。

  ●FacebookProcess Safety Case Study: Styrene Monomer Release in .2026/7/15

  ●Linkedin.comStyrene Monomer Leak at Innova Petrochemical Plant in ..2026/7/15

被 害

■ スチレンモノマー用貯蔵タンク1基の機能が喪失し、タンク内部から重合したスチレンモノマーが流出した。

■ 近くの住民に避難指示が出された。

■ 住民204名がスチレンモノマーのベーパーを吸って息切れ、めまい、吐き気、失神などの症状を呈し、治療を受けた。 

< 事故の原因 >

■ 事故の原因は、タンク内の製品の温度が異常に上昇したため、爆発を避けるため、機器の安全装置によってベーパーが制御された状態で放出されたという。スチレンモノマー貯蔵タンク内で異常な化学反​​応が発生したとみられる。異常な反応へ至った原因は調査中である。

< 対 応 >

■ イノバ社は、今回の事案は同社の緊急時対応手順に従って対処され、発生した廃棄物はすべて適切な処理のために保管されたと報告した。同社はまた、火災は発生しておらず、封じ込め区域外への液体製品の漏洩もなく、被害者の報告もないといい、「事態は、当社が定めた緊急時対応手順に従って速やかに収束した」と述べた。

■ スチレンの漏洩が発生してから24時間以上が経過したが、アマゾナス州軍消防局の対応チームは、716日(木)も引き続きタンクの冷却作業を行った。対応している消防隊によると、タンクの温度制御作業中、漏洩するベーパーがまだ放出されているが、その割合は前日(715日)に記録されたものよりは低いという。

■ アマゾナス州保健局によると、717日(金)午前中までに、この事故に関連して公衆衛生ネットワークで治療を受けた人は204人だったという。治療を受けた人々は、息切れ、めまい、吐き気、失神などの症状を呈していた。そのうち192人の患者が退院し、11人が入院中である。なお、1人の死亡が確認されたが、死亡と漏洩との直接的な関連性は見つからなかったと報告されている。

■ 当局は、事件の原因を究明するための調査を実施すると述べた。製品が過熱した原因について、タンク内部での自然発生的な反応だといい、「あらゆる状況から判断すると、タンク内部で自然発生的な反応が起こっていると考えられます。スチレン分子が分解されると、連鎖反応が起こり、生成物が過熱されます」と説明した。また、安全弁が作動しなかった場合、その反応は爆発や火災を引き起こす可能性があったといい、「イノバ社の事例では、タンクの安全弁が開いていました。タンク内の製品が高圧状態にあったため、垂直方向の噴流として漏れが観測されました」と述べた。

■ イナバ社は、「マナウス市民の皆様にご迷惑をおかけしたことを深くお詫び申し上げます。当社は、このような事態の再発防止に必要なあらゆる措置を講じるとともに、関係当局およびその他すべての関係者に対し、必要な情報提供や説明をで行います」と発表した。

■ マナウス市はイノバ社に450万レアルの罰金を科した。マナウス市の環境・持続可能性事務局、都市計画研究所、保健事務局および市民保護・防衛執行事務局によって構成されたタスクフォースによる技術検査の結果、大気汚染レベルが人体への曝露に関して安全とみなされる基準値を上回っていることが判明した。罰金に加え、イノバ社は、20日以内に、技術安全報告書、緊急時対応計画、緊急対応計画、排水に関する情報、および処理能力に関する情報を提出しなければならない。

■ 今回の事例では、安全弁は設計どおりに作動した。しかし、都市全体が警戒態勢に入った。ブラジルのマナウスにあるイノバ石油化学プラントで報告されたスチレンモノマーの漏洩は、安全システムが機能しているからといって、必ずしもリスクがなくなったわけではないことを思い起こさせる。貯蔵タンク内で異常な状態が発生すると、安全弁が容器を壊滅的な損傷から保護するが、放出された有害性のベーパーはプラントの境界を超えて新たな危険を生み出す可能性がある。これが、定量的リスク評価(QRA)と結果分析が重要な理由である。たとえば、緊急事態が発生する前に、つぎのような質問に適切に答えることができるか。

 ① 有毒なベーパーはどのくらい遠くまで広がる可能性があるか?

 ② どの地域社会と資産が危険にさらされているか?

 ③ 緊急対応計画は現実的な拡散シナリオに基づいているか?

 ④ 安全対策は、敷地外への影響を軽減するのに十分か?

 重大な事故は、爆発や火災だけで定義されるわけではない。制御された放出でも、事業継続とともに、従業員や一般市民に大きな影響を与える可能性がある。

補 足

■「ブラジル」(Brazil)は、正式にはブラジル連邦共和国で、南アメリカに位置する人口約21,200万人の連邦共和制国家である。首都はブラジリアである。

「アマゾナス州」(Amazonas) は、ブラジルの北西部に位置し、人口約394万人の州で、州都はマナウスである。

「マナウス」(Manaus)は、アマゾナス州の北に位置し、人口約208万人の市である。

「イノバ社」(Innova)は、正式にはVideolar-Innova S.A.で、ブラジルの石油化学・プラスチック加工企業であり、スチレン系樹脂を専門とする企業である。プラスチック事業を展開してきたVideloarグループが、Petrobrasから取得した石油化学資産を統合し、2015年に設立された。プラントは、マナウス(アマゾナス州)、トリウンフォ(リオグランデ・ド・スル州)、モンテネグロ(リオグランデ・ド・スル州)に配置されており、中でも第4ユニットは、マナウスにある石油化学製品の貯蔵・移送専用プラントであり、常圧のスチレンモノマー貯蔵タンクを備えている。この第4ユニットは、地元の電子機器、食品包装、日用品産業チェーンに基礎化学原料を供給しており、工場には150名が勤務しており、5交代制で操業している。

■「スチレンモノマー」は、分子式はC8H8で、無色透明の液体で特有の強い臭いがある。ポリスチレンやABS樹脂等のプラスチックやゴム・塗料の原料となる化学物質である。一般的には、原油やナフサなどから得られたエチレンとベンゼンを化学反応させてできるエチルベンゼンから、水素を取り除くという製法で作られる。スチレンモノマーは、単にスチレンと呼ばれることもある。モノマーとは単体(1つの分子)のことであり、それがたくさんつながったポリマー(ポリスチレンなど)と区別するために、原料としての液体の状態を「スチレンモノマー」と呼ぶ。

 スチレンモノマーは、加温や光、酸化剤、酸素および過酸化物の影響下で重合することがあり、特に、貯蔵タンクでは、ベーパーが制約されておらず、温度上昇があれば重合し、さらに生じた熱で最終的に暴走反応につながることがある。

「発災タンク」の大きさなどの仕様については報じられていない。グーグルマップで調べると、直径は約27mであり、高さを2225mとすれば、容量は12,50014,300KLの固定屋根型タンクである。

所 感

■ 事故の原因は、タンク内のスチレンモノマーの温度が異常に上昇したため、爆発を避けるため、機器の安全装置によってベーパーが制御された状態で放出されたという。“ベーパーが制御された状態で放出” というのは、最悪の爆発に至らずにタンクから漏れたという事業者側の見方であり、治療を受けたひとの数からいえば、違和感のある言い方である。

■ スチレンモノマーがタンクから漏れた事故は、過去にもつぎのような事例を紹介した。 

 ●「韓国のスチレンモノマー装置でタンクからオイルミスト噴出」20196月)

 ●「インドで化学工場のスチレンタンクからガス漏洩、死者12名」20207月)

 韓国の事故では、「スチレンモノマー装置における異常な重合によってタンク内圧が上昇し、噴出した。この背景は、スチレンモノマー装置の重合の危険性に対する事業所の認識の甘さのため、タンクの温度・圧力管理が不適切だったとみられる」

 インドの事故では、「本来、2022℃以下で貯蔵されるスチレンがタンク冷却器の故障で、冷却がされなかったことにより重合反応が起きて、温度が上昇し、スチレンガスが発生した」とみられる。この背景には、スチレンの重合の危険性に対する事業所の認識の甘さのため、タンクの温度・圧力管理が不適切だったといえ、事故の原因は運転管理ミスによると思われる」

 今回の事故では、事業者はスチレンモノマーの重合というリスクをよく理解しているはずである。今回の事例では、タンクから流出する動画が流されており、“流出するベーパーの激しさに、現場や近隣の工場にいた従業員は恐怖を感じた”ということがよく分かる。


備 考

 本情報はつぎのインターネット情報に基づいてまとめたものである。

     G1.globo.com, Vazamento de gás em Manaus: bombeiros seguem resfriando tanques 24 horas após o incidente,  July 16,  2026

     Innova.com.br,  July 15th, 2026, STATEMENTchemical emergency occurred in one of the three styrene monomer storage tanks,  July 15,  2026

     News.chemnet.com, Hazard Alert: Chemical reaction in styrene storage tank at Innova Manaus plant in Brazil,  July 16,  2026

     Linkedin.com, Styrene Release at Innova Petrochemical Plant Highlights Risk Assessment Importance,  July 23,  2026

     Isssource.com, Chemical Leak Forces Evac; 16 Injured,  July 20,  2026


後 記: 初めは、スチレンモノマーのタンクからもやもやとした状態で漏れている映像を見ましたので、大したことはないのではないかと思いました。ところが、調査していくと、ベーパーが激しく流出している発災直後の映像があり、重合したスチレンモノマーがタンクから漏れるということがどのようなことをいうのかよく理解できました。今回の事故では、報道の内容の時系列が分かりにくい事例でした。特に、事業者のイノバ社が事実に基づいた発言をしているのか、イクスキューズ(事前の言い訳)を言っているのか曖昧で、事例の深刻さが伝わってきませんでした。

2026年8月11日火曜日

メキシコのヌエボ・レオン州の潤滑剤工場で石油タンクの爆発・火災から延焼拡大

 今回は、2026713日(月)、メキシコのヌエボ・レオン州ヘネラル・スアスアにある潤滑剤製造会社のルブリカンテスLyA社の工場で石油タンクが爆発して火災になり、延焼が拡大して大きな被害になった事例を紹介します。

< 発災施設の概要 >

■ 発災があったのは、メキシコ(Mexico)のヌエボ・レオン州(Nuevo León)ヘネラル・スアスア(General Zuazua)にある潤滑剤製造会社のルブリカンテスLyA社(Lubricantes LyA)の工場である。

■ 事故があったのは、スアスア-マリン道路(Zuazua-Marin)沿いにあるルブリカンテスLyA社の工場内にある石油タンクである。

<事故の状況および影響>

事故の発生

■ 2026713日(月)午後2時頃、ルブリカンテスLyA社の工場で石油タンクが爆発し、火災が発生した。

■ 工場で発生した火災により、瞬く間に濃い煙の柱が空高く立ち昇り、スアスア市の空は黒く染まり、市街地は暗闇につつまれた。この煙は、エスコベド、アポダカ、サン・ニコラス・デ・ロス・ガルサといった都市圏の一部の地点からも視認できた。

■ 石油タンクの爆発・火災により、工場内の4連タンクや圧力容器類に連鎖的に影響を及ぼした。

■ 発災にともない、消防隊が出動した。ヌエボ・レオン州のほか、スアスア、マリン、イゲラス、ドクター・ゴンサレスの各自治体から消防隊員と民間防衛隊員が出動した。

■ 消防隊が到着した際、石油やディーゼル燃料を貯蔵していた油タンクとタンクローリーが火災になっていた。

■ 火災は少なくとも10回以上の爆発を引き起こした。

■ 事故にともなう死傷者は出ていない。

■ 当局は、予防措置として、同社の従業員や近隣の施設・住宅の住民300人強を避難させた。

■ フェースブックなどでは、火災のニュースを伝える動画が投稿されている。

 FacebookAsí luce el incendio que consume una fábrica aceitera en .2026/7/13

    ●InstagramNuevo León on Instagram: "#Zuazua | ¡En llamas! Se incendia ...2026/7/13

被 害

■ 石油タンクなど潤滑剤工場の設備が火災で損壊した。内部に入っていた油が焼失した。

■ 従業員や住民300人が避難した。

■ 火災による炎や黒煙により環境への汚染が生じた。

< 事故の原因 >

■ 事故の要因は石油タンクの爆発・火災であるが、爆発の原因はわかっていない。

< 対 応 >

■ 約20時間後、スアスア市で大規模な火災が発生した工場では、燃焼臭と煙の臭いが残っていた。

■ ルブリカンテスLyA社は州および市の市民保護局から営業停止命令を受けた。工場の門から見ると、内部には使い果たされた大きな容器などが散乱しているのが見える。

■ スアスア・マリン間の幹線道路は全面開通しており、714日(火)の朝の交通の流れは円滑に流れていた。警察は現場での警備は継続されると述べた。

補 足

■「メキシコ」(Mexico)は、正式にはメキシコ合衆国で、米国(アメリカ合衆国)と中央アメリカの間に位置し、人口約13,400万人の連邦共和国(合衆国)である。

「ヌエボ・レオン州」(Nuevo León)は、メキシコ北東部に位置し、正式名称はヌエボ・レオン自由主権州といい、人口約578万人の州である。

「ヘネラル・スアスア」(General Zuazua)は、ヌエボ・レオン州の中央北部に位置し、モンテレイ都市圏にある人口約10万人の自治体である。ヘネラル・スアスア市は、有名なロデオと郷土料理であるエンパルメスで知られている。

「ルブリカンテスLyA社」(Lubricantes LyA)は、1994年に設立した自動車および産業分野向け潤滑剤を製造している会社である。ヌエボ・レオン州ヘネラル・スアスア市に拠点を置く100%メキシコ資本の企業である。同社は、エンジン、トランスミッション、産業用として包装された自動車用オイル、不凍液、ポリエチレン製容器とそのキャップの製造、ラベルの製造・印刷といった製品を卸売や小売で提供している。

「発災タンク」について、報道では、石油タンクというだけで大きさなどの仕様は報じられていない。石油タンクの爆発・火災により、工場内のタンクや圧力容器類に連鎖的に影響を及ぼしたとあり、また消防隊が到着した際、石油やディーゼル燃料を貯蔵していた油タンクとタンクローリーが火災になっていたと報じられており、軽質油を積載していたタンクローリーが積込んでいた石油タンクとの接続部から流出して発災したことも考えられる。

 グーグルマップで調べると、ルブリカンテスLyA社の工場にはタンク群があり、直径は2.63.6mで比較的小型である。このクラスの容量は約850KLとみられる。

所 感 

■ 今回の事故は、原因をはじめ状況のよくわからない事例である。タンク群の火災写真があるが、そのときには、すでにタンク外のエリアでかなりの部分で火災が起きている。もともと危険性が高くないとみられる潤滑剤製造工場で、このような大規模な火災に至るということは、軽質油を含む危険性の高い液体を保有していた可能性がある。

■ 消火戦略も積極的戦略・防御的戦略・不介入戦略の3つのうちのいずれを選択したかは分からない。火災は少なくとも10回以上の爆発を引き起こしたと報じられており、上述と重なるが、危険性のある軽質油を保有しており、消防隊の消防士の身の安全を考慮して、火災初期は不介入戦略をとったのかも知れない。実際、映像の中には、火災中にタンクから爆発性の燃焼が起こっている。火災の終盤は積極的戦略をとっているが、消火資機材は十分だとはいえないように思われる。


備 考

 本情報はつぎのインターネット情報に基づいてまとめたものである。

     Milenio.com, Desalojan a más de 300 personas por incendio en fábrica de lubricantes en Zuazua,  July  13, 2026

     Jornada.com.mx, Nuevo León: realizan evacuación de más de 300 personas por fuerte incendio en fábrica de aceites de General Zuazua,  July  13, 2026

     Telediario.mx, Presunta explosión de tanque de aceite provoca fuerte incendio en fábrica de Zuazua; levanta enorme nube de humo,  July  13, 2026

     Diariopresente.mx, INCENDIO EN FÁBRICA DE ACEITES PROVOCA ENORME COLUMNA DE HUMO EN GENERAL ZUAZUA, NUEVO LEÓN,  July  13, 2026


後 記: 最近感じるのは、インターネットの検索エンジンが進歩したのか、タンク事故の情報が増えたように思います。あるいは、世の中が浮ついていて本当に事故がたくさん起きているのかも知れません。情報の質でいうと、事故を深堀したものが少なくなっています。以前に比べ、映像の情報は多くなっています。ドローンやヘリコプターによって映像が得られれば、事故があったという記事で済むのかも知れません。今回の事例もブログに書こうとすると、分からないことが多く、内容に深みのないものになってしまいました。