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2026年8月11日火曜日

メキシコのヌエボ・レオン州の潤滑剤工場で石油タンクの爆発・火災から延焼拡大

 今回は、2026713日(月)、メキシコのヌエボ・レオン州ヘネラル・スアスアにある潤滑剤製造会社のルブリカンテスLyA社の工場で石油タンクが爆発して火災になり、延焼が拡大して大きな被害になった事例を紹介します。

< 発災施設の概要 >

■ 発災があったのは、メキシコ(Mexico)のヌエボ・レオン州(Nuevo León)ヘネラル・スアスア(General Zuazua)にある潤滑剤製造会社のルブリカンテスLyA社(Lubricantes LyA)の工場である。

■ 事故があったのは、スアスア-マリン道路(Zuazua-Marin)沿いにあるルブリカンテスLyA社の工場内にある石油タンクである。

<事故の状況および影響>

事故の発生

■ 2026713日(月)午後2時頃、ルブリカンテスLyA社の工場で石油タンクが爆発し、火災が発生した。

■ 工場で発生した火災により、瞬く間に濃い煙の柱が空高く立ち昇り、スアスア市の空は黒く染まり、市街地は暗闇につつまれた。この煙は、エスコベド、アポダカ、サン・ニコラス・デ・ロス・ガルサといった都市圏の一部の地点からも視認できた。

■ 石油タンクの爆発・火災により、工場内の4連タンクや圧力容器類に連鎖的に影響を及ぼした。

■ 発災にともない、消防隊が出動した。ヌエボ・レオン州のほか、スアスア、マリン、イゲラス、ドクター・ゴンサレスの各自治体から消防隊員と民間防衛隊員が出動した。

■ 消防隊が到着した際、石油やディーゼル燃料を貯蔵していた油タンクとタンクローリーが火災になっていた。

■ 火災は少なくとも10回以上の爆発を引き起こした。

■ 事故にともなう死傷者は出ていない。

■ 当局は、予防措置として、同社の従業員や近隣の施設・住宅の住民300人強を避難させた。

■ フェースブックなどでは、火災のニュースを伝える動画が投稿されている。

 FacebookAsí luce el incendio que consume una fábrica aceitera en .2026/7/13

    ●InstagramNuevo León on Instagram: "#Zuazua | ¡En llamas! Se incendia ...2026/7/13

被 害

■ 石油タンクなど潤滑剤工場の設備が火災で損壊した。内部に入っていた油が焼失した。

■ 従業員や住民300人が避難した。

■ 火災による炎や黒煙により環境への汚染が生じた。

< 事故の原因 >

■ 事故の要因は石油タンクの爆発・火災であるが、爆発の原因はわかっていない。

< 対 応 >

■ 約20時間後、スアスア市で大規模な火災が発生した工場では、燃焼臭と煙の臭いが残っていた。

■ ルブリカンテスLyA社は州および市の市民保護局から営業停止命令を受けた。工場の門から見ると、内部には使い果たされた大きな容器などが散乱しているのが見える。

■ スアスア・マリン間の幹線道路は全面開通しており、714日(火)の朝の交通の流れは円滑に流れていた。警察は現場での警備は継続されると述べた。

補 足

■「メキシコ」(Mexico)は、正式にはメキシコ合衆国で、米国(アメリカ合衆国)と中央アメリカの間に位置し、人口約13,400万人の連邦共和国(合衆国)である。

「ヌエボ・レオン州」(Nuevo León)は、メキシコ北東部に位置し、正式名称はヌエボ・レオン自由主権州といい、人口約578万人の州である。

「ヘネラル・スアスア」(General Zuazua)は、ヌエボ・レオン州の中央北部に位置し、モンテレイ都市圏にある人口約10万人の自治体である。ヘネラル・スアスア市は、有名なロデオと郷土料理であるエンパルメスで知られている。

「ルブリカンテスLyA社」(Lubricantes LyA)は、1994年に設立した自動車および産業分野向け潤滑剤を製造している会社である。ヌエボ・レオン州ヘネラル・スアスア市に拠点を置く100%メキシコ資本の企業である。同社は、エンジン、トランスミッション、産業用として包装された自動車用オイル、不凍液、ポリエチレン製容器とそのキャップの製造、ラベルの製造・印刷といった製品を卸売や小売で提供している。

「発災タンク」について、報道では、石油タンクというだけで大きさなどの仕様は報じられていない。石油タンクの爆発・火災により、工場内のタンクや圧力容器類に連鎖的に影響を及ぼしたとあり、また消防隊が到着した際、石油やディーゼル燃料を貯蔵していた油タンクとタンクローリーが火災になっていたと報じられており、軽質油を積載していたタンクローリーが積込んでいた石油タンクとの接続部から流出して発災したことも考えられる。

 グーグルマップで調べると、ルブリカンテスLyA社の工場にはタンク群があり、直径は2.63.6mで比較的小型である。このクラスの容量は約850KLとみられる。

所 感 

■ 今回の事故は、原因をはじめ状況のよくわからない事例である。タンク群の火災写真があるが、そのときには、すでにタンク外のエリアでかなりの部分で火災が起きている。もともと危険性が高くないとみられる潤滑剤製造工場で、このような大規模な火災に至るということは、軽質油を含む危険性の高い液体を保有していた可能性がある。

■ 消火戦略も積極的戦略・防御的戦略・不介入戦略の3つのうちのいずれを選択したかは分からない。火災は少なくとも10回以上の爆発を引き起こしたと報じられており、上述と重なるが、危険性のある軽質油を保有しており、消防隊の消防士の身の安全を考慮して、火災初期は不介入戦略をとったのかも知れない。実際、映像の中には、火災中にタンクから爆発性の燃焼が起こっている。火災の終盤は積極的戦略をとっているが、消火資機材は十分だとはいえないように思われる。


備 考

 本情報はつぎのインターネット情報に基づいてまとめたものである。

     Milenio.com, Desalojan a más de 300 personas por incendio en fábrica de lubricantes en Zuazua,  July  13, 2026

     Jornada.com.mx, Nuevo León: realizan evacuación de más de 300 personas por fuerte incendio en fábrica de aceites de General Zuazua,  July  13, 2026

     Telediario.mx, Presunta explosión de tanque de aceite provoca fuerte incendio en fábrica de Zuazua; levanta enorme nube de humo,  July  13, 2026

     Diariopresente.mx, INCENDIO EN FÁBRICA DE ACEITES PROVOCA ENORME COLUMNA DE HUMO EN GENERAL ZUAZUA, NUEVO LEÓN,  July  13, 2026


後 記: 最近感じるのは、インターネットの検索エンジンが進歩したのか、タンク事故の情報が増えたように思います。あるいは、世の中が浮ついていて本当に事故がたくさん起きているのかも知れません。情報の質でいうと、事故を深堀したものが少なくなっています。以前に比べ、映像の情報は多くなっています。ドローンやヘリコプターによって映像が得られれば、事故があったという記事で済むのかも知れません。今回の事例もブログに書こうとすると、分からないことが多く、内容に深みのないものになってしまいました。

2026年8月4日火曜日

米国オクラホマ州セミノール郡の石油生産施設に落雷、油タンクが爆発・火災

 今回は、202675日(日)、米国オクラホマ州セミノール郡リトルにある石油生産施設の石油タンクが落雷とみられる原因によって爆発・火災を起こした事例を紹介します。

< 発災施設の概要 >

■ 発災があったのは、米国オクラホマ州(Oklahoma)セミノール郡(Seminole County)リトル(Little)にある石油生産施設である。

■ 事故があったのは、リトルの小さな町の近くにある石油生産施設のタンク設備である。

<事故の状況および影響>

事故の発生

■ 202675日(日)夜、リトルにある石油タンクで爆発があり、火災が発生した。

■ 石油生産施設の近くの住民によると、「落雷音の後に大きな爆発音が聞こえた」といい、「雷が鳴った時の音ってご存知でしょう。大きな爆発のような音が聞こえて、その後、家の窓がガタガタ揺れました。実際、家の窓が何枚か吹き飛んだのかと思いましたよ」と語った。

■ 町に轟いた雷鳴と爆発は予想をはるかに超える衝撃を伴った。落雷と大きな爆発により近隣の家々を揺るがし、濃い黒煙が空高く立ち昇った。

■ 発災にともない、消防隊が出動した。

■ 事故にともなう負傷者は出なかった。

■ 爆発・火災は落雷によるものだとみられる。

被 害

■ 石油生産施設内の石油タンク1基が爆発・火災で損壊した。内部の油が焼失した。

■ 負傷者はいなかった。 

< 事故の原因 >

■ 爆発・火災の原因は、落雷によるものとみられる。

< 対 応 >

■ 爆発とその後の火災は1時間以上燃え続け、消防隊は燃え盛る石油タンクの火災をようやく鎮火した。

■ これは単発的な異常事態ではなかった。石油タンクやタンク群での落雷による火災は、オクラホマ州の嵐の季節における厄介な問題となっている。2026623日にポタワトミー郡の田舎で発生した大規模なタンク群火災は、落雷によって発生した大火災に複数の消防隊が出動し、KFORが報道し、Yahooにも再掲載された。注記;ポタワトミー郡のタンク火災は、「米国オクラホマ州で石油生産の関連施設で落雷によるタンク火災」を参照。

■ オクラホマ州公益事業委員会は、アッシャーとセミノール周辺で発生した落雷によるタンク事故を複数取り上げ、悪天​​候と石油施設がいかに頻繁に事故につながっているかを強調している。同委員会の記録によると、広範囲にわたる貯蔵施設に落雷が頻繁に発生しており、国立気象局の嵐の履歴データは、オクラホマ州中部を危険な雷雨が頻繁に襲っているかを示している。  

 地上設置型の貯蔵タンク、特に浮き屋根式のものは、落雷時に驚くほど脆弱になることがある。落雷によって電気アークが発生したり、縁部のシールに沿って可燃性のベーパーが引火したりする可能性があり、これは事業者が何としても避けたい連鎖反応である。業界のガイドラインでは、リスクを軽減するために、ボンディング、バイパス導体、その他の避雷対策を推奨している。

 オクラホマシティの当局者によると、76日(月)早朝の午前5時頃、火災により石油タンク3基が全焼した。ノース・カウンシル・ロードとノースウェスト220番地付近で発生した火災は落雷が原因だった。負傷者は報告されておらず、約1時間で火災は鎮火した。

補 足

■「オクラホマ州」(Oklahoma)は、米国の中南部に位置し、人口約396万人の州である。州名はチョクトー族インディアンの言葉でokla  hummaを合わせたもので赤い人々を意味する。1907年に元のインディアン準州とオクラホマ準州を合わせて合衆国46番目の州になっており、当初は全米のインディアン部族のほとんどを強制移住させる目的で作られた州である。このため、他の州に比べてインディアンの保留地(Reservation)の多い州である。

「セミノール郡」(Seminole County)は、オクラホマ州の中央部に位置し、人口約23,500人の郡である。オクラホマが州に昇格する以前、セミノール郡はセミノール族インディアンに割り当てられたインディアン準州の小部分だった。広大なセミノール油田はこれまで発見された中でも重要なもののひとつで、セミノール郡は米国の石油産業で重要な役割を果たしてきた。

「リトル」(Little)は、セミノール郡にある非法人地域のコミュニティである。

■「発災タンク」は、石油生産施設のタンク設備と報じられているだけで、タンクの大きさなどの仕様はわからない。

所 感 

■ 今回の事例で印象的なことは、オクラホマ州の落雷について地元のひとが危機意識を感じていることがうかがえることである。オクラホマ州は落雷の頻度の少なくない地域であるが、余程苛烈な印象の落雷が多くなっていると思われる。以前はテキサス州が落雷による火災事故が多かったが、雷の数と質がテキサス州から北方のオクラホマ州へ変わってきており、過去のブログによる事例をみていくと、オクラホマ州の危機意識が理解できる。

 ●20136「米国で9日間に3箇所のタンク施設で落雷による火災発生」

 ●20245「米国オクラホマ州で竜巻警報の中、落雷によるタンクが爆発・火災」

 ●20266「米国オクラホマ州で石油生産の関連施設で落雷によるタンク火災」

 日本でも雷注意報を目にすることが多くなってきているし、落雷の程度も強烈になってきているように感じる。事例で指摘しているように、タンクは雷に対して脆弱だと認識し、リスクを軽減するために、ボンディング、バイパス導体、その他の避雷対策を行い、日常の管理を怠らないことが大事だろう。


備 考

 本情報はつぎのインターネット情報に基づいてまとめたものである。

     News9.com, No injuries reported after lightning causes Seminole County oil tank explosion,  July  6, 2026

     Hoodline.com, Lightning Strike Blows Up Oil Tank, Rattles Tiny Little, Oklahoma,  July  6, 2026

     Okcfox.com, Three oil tanks destroyed in overnight fire sparked by lightning strike,  July  6, 202


後 記: オクラホマ州では落雷について危機意識を感じているひとが出始めているようです。日本では、最近起こった震度7を記録した平成8年熊本地震についていろいろなことを感じざるを得ません。熊本には10年前に起こったので、もう無いだろうと思っていました。人間は忘れやすいということを改めて感じました。また、地震発生から1時間20分後に起きたイオンモール熊本のガス爆発は思いもよらないことです。災害はひとの知識や常識を超えたところで起こるということを物語っています。しかし、LPガスはわざわざ嫌なニオイをつけています。 なにも作業現場だけでなく、日常の生活空間での危険予知(KYが有効なのでしょう。

 

2026年7月30日木曜日

ナイジェリアの石油ターミナルでディーゼル燃料用貯蔵タンクが火災

 今回は、202673日(金)、ナイジェリアのラゴス(Lagos)にある石油施設のボノ・エナジー・ストレージ・ターミナルにおいて容量5,000KLのディーゼル燃料用貯蔵タンクが火災を起こした事例を紹介します。

< 発災施設の概要 >

■ 発災があったのは、ナイジェリア(Nigeria)のラゴス(Lagos)にある石油施設のボノ・エナジー・ストレージ・ターミナル(Bono Energy Storage Terminal)である。

■ 事故があったのは、ラゴスのアパパ・オウォロンショキ高速道路(Apapa–Oworonshoki Expressway)沿いにあるターミナル内のディーゼル燃料用貯蔵タンクで、容量は500万リットル(5,000KL)である。

<事故の状況および影響>

事故の発生

■ 202673日(金)午前7時頃、石油施設のディーゼル燃料用貯蔵タンクで火災が発生した。

■ ターミナル近くで働いている目撃者のひとりによると、火災は金曜日の午前7時頃に発生したといい、住民などがラゴスの緊急電話番号112番に繰り返し電話をかけたが、緊急回線がつながらず、すぐには対応してもらえなかったと語っている。

■ 発災にともない、各消防署の消防隊が出動した。

■ 出動したのはアジェグンレ消防署、サリ・イガンム消防署、イソロ消防署の消防隊員で、このほか近隣の石油・ガス施設の消防隊員が支援で参画した。  

■ 事故にともなう死傷者はいなかった。

■ 消火活動は、火災が周辺の貯蔵タンクや設備に延焼するのを回避しようと努めた。

■ ユーチューブでは、事故による火災のニュースを伝える動画が投稿されている。

 FacebookThe Lagos State Fire Service said it has contained a fire that ..2026/7/3

被 害

■ 容量500万リットル(5,000KL)のディーゼル燃料用の貯蔵タンクが損壊した。内部の油が焼失した。

< 事故の原因 >

■ 事故原因はラゴス消防署によって調査中である。

< 対 応 >

■ 火災は消防隊によって73日(金)の午後2時頃、消火された。

■ メディアの一社が午後3時頃にターミナルを訪れた際、消防隊員と緊急車両がまだ施設内に待機しており、職員が事故後の状況を監視していた。しかし、施設の警備員は、メディアがターミナルに入るには管理者の承認が必要だと説明し、記者の立入りを拒否した。1時間ほど待ったが、事業者はインタビューに応じることも、メディアが施設内に入ることも拒否した。

■ このタンク火災が発生する前、ロゴス周辺では、イコロドゥ道路沿いのオニリン方面に向かうオウォデ・エレデで液化石油ガス(LPG)タンクローリーからLPガスの漏洩事故が発生し、ローリー周辺で爆発と火災が発生した。この事故では、死傷者は出ていないが、緊急要員が対応した。

■ 死傷者は出なかったものの、ナイジェリアで最も活発な石油・物流拠点であるアパパ地区には複数の燃料貯蔵施設や重要な産業施設があり、火災が発生すれば、すぐに大規模な緊急事態に発展する可能性があるため、今回の事故はアパパ地区にある石油貯蔵施設に伴うリスクを改めて浮き彫りにした。

補 足

■「ナイジェリア」(Nigeria)は、正式にはナイジェリア連邦共和国で、アフリカ大陸西南部に位置し、人口約232百万人の連邦制共和国である。1991年までラゴスが首都だったが、一極集中などの理由により首都はアブジャに移転した。ナイジェリアは、西にベナン、北をニジェール、北東がチャド、東はカメルーンと国境を接し、南はギニア湾(ペニン湾)に面し大西洋に通ずる。ナイジェリアは石油などの豊かな資源や大きな経済規模を持つ一方で、国民の多くが深刻な貧困と高い物価高に苦しみ、貧困格差の非常に大きい国である。

「ラゴス」(Lagos )は、ナイジェリア南西部に位置し、ギニア湾岸にあり、同国最大の港湾施設を備える人口1,500万人の港湾都市である。

■「ボノ・エナジー・ストレージ・ターミナル」(Bono Energy Storage TerminalBEST)は、 2019年に設立され、石油貯蔵、倉庫保管、小売、物流サービスを提供しており、ラゴスのイバフォン・アパパ工業地区に燃料輸入・流通の主要拠点がある。ボノ・エナジー・ストレージ・ターミナルの総貯蔵容量は47,350KLで、ガソリン、ディーゼル燃料用、航空タービン油、灯油、基油が貯蔵されている。ボノ・エナジー・ストレージ・ターミナルは、ボノ・エナジー・グループとグラディウス・コモディティーズが石油貯蔵ターミナルを取得するために設立した特別目的会である。

■「発災タンク」の仕様は、ディーゼル燃料用貯蔵タンクで、容量が500万リットル(5,000KL)と報じられている。ラゴスのイバフォン・アパパ工業地区をグーグルマップで調べたが、ボノ・エナジー・ストレージ・ターミナルの事業所名は見つからなかった。発災事業所(BEST)の写真をもとにグーグルマップを調べたところ、“Africa Terminals Nigeria Limited Depot”のタンク配置であることがわかった。この配置から被災写真と突き合わせると、発災タンクを特定することができた。グーグルマップで調べると、発災タンクはコーンルーフ型固定屋根式タンクで、直径は約23mであり、高さを12mと仮定すれば、タンク容量は約5,000KLである。

所 感

■ タンク火災の状況はほとんど報じられていない。しかし、被災後の発災タンクの写真を見ると、発災状況をうかがわせることが分かる。ひとつは、発災タンクの側板が座屈していることから、長時間火災の熱にあぶられていることが分かる。もうひとつは、タンク屋根がひっくり返った状態で落下している。タンク屋根をよく見ると、屋根の一部がタンク内側から破裂したと見られることである。このようなタンク屋根の一部が破断するような状況はこれまで見たことはなく、おそらくタンク屋根と側板の溶接部を弱めた個所と同様にタンク屋根板の接合部に欠陥があったのではないだろうか。

 火災の燃焼時間は7時間(午前7時~午後2時)であり、燃焼速度を20cm/hと仮定しても、液位は140cmしか下がらない。タンク側板の座屈状況から、容量5,000KLの貯蔵タンクには液位の低い状態だったと思われ、タンク内部に爆発性混合気が形成されたとみられる。これらのことから推定すると、発災タンクは内部爆発でタンク屋根が噴き飛ばされたと思われる。通常の軽油であれば、爆発することは考えにくいが、製品規格の曖昧なディーゼル燃料用であれば、軽質分を含む油だったのではないだろうか。火災の映像を見ても、軽油の燃焼というより、揮発分のあるガソリンのような激しい炎が出ている。

■ 消火活動は“火災が周辺の貯蔵タンクや設備に延焼するのを回避しようと努めた”とあり、消火戦略は防御的戦略をとったものと思われる。発災タンクの直径は23mであり、日本の法令であっても、大容量泡放射砲を使う範囲でなく、三点セット(最低放水能力3,000リットル/分の放射ノズル)があれば、積極的戦略で対応できたはずである。しかし、大型化学消防車を設置する場所の制約があったためか、泡消火設備の保有に制約があったためか、被災写真を見ても泡消火を実施した形跡はないように思う。タンク火災では発災タンクから液を移送することは避けなければならないが、今回の火災は燃え尽きた状態で鎮火したと思われる。


備 考

 本情報はつぎのインターネット情報に基づいてまとめたものである。

     Joiff.com, NIGERIA – Investigation under way after diesel tank fire at Lagos fuel terminal,  July 16, 2026

     Punchng.com, Lagos probes fuel storage tank fire,  July 4, 2026

     Premiumtimesng.com, UPDATED: Fire breaks out at Lagos fuel terminal (PHOTOS),  July 3, 2026

     Hazardexonthenet.net, Investigation under way after diesel tank fire at Lagos fuel terminal,  July 8, 2026

     Channelstv.com, Five-Million-Litre Diesel Tank Fire Contained In Apapa,  July 3, 2026

     Dailytrust.com, Fire guts petroleum storage tank, gas truck explodes in Lagos,  July 4, 2026

     Guardian.ng, Fire Guts Bono Energy Terminal As Gas Tanker Leakage Sparks Inferno In Owode,  July 4, 2026


後 記: ナイジェリアのタンク火災については、つぎのような事例を紹介してきました。

 ●2014年7月、「ナイジェリアの石油ターミナルで落雷、タンク火災、その後油流出」

 ●202011月、「ナイジェリアのラゴスでOVHエナージー社のガソリンタンク火災」

 ●20247月、「ナイジェリアのカナダ高等弁務官事務所で発電機用燃料タンクが爆発、死傷者4名」

 ナイジェリアの事故例は、フェーク写真がよく見られ、真偽を問われます。(報じている方からすれば、写真に説明分を付けているわけでなく、タンク火災のイメージ例を示しているだけだと言いそうですが) 今回のタンク火災事例は、メディアの敷地内立入りが拒否されたり、当局からの発表内容にも疑問があり、これまでになく疲れる事例でした。そのような中で、激しいタンク火災の写真が出れば、飛びつきますよね。今回のフェーク写真の例を下に示します。


 

2026年7月24日金曜日

ロシアのモスクワ製油所、ドローンでなく防災ミサイルでタンク屋根が噴き飛ぶ

 今回は、先般、ロシアのモスクワにあるガスプロム・ネフチ社のモスクワ製油所がウクライナによる無人航空機(ドローン)による攻撃で、貯蔵タンクの屋根が噴き飛んだ事例を紹介しましたが、実際は防災ミサイルによる誤射でタンク屋根が噴き飛んだとみられる動画が出ましたので、この情報を改めて紹介します。前回のブログは「ロシアのモスクワ製油所、無人航空機による攻撃で貯蔵タンクの屋根が噴き飛ぶ」2026712日)を参照。

< 発災施設の概要 >

■ 被害があったのは、ロシア(Russia)のモスクワ(Moscow)にあるガスプロム・ネフチ社(Gazprom Neft)のモスクワ製油所である。この製油所は所在地からカポトニャ製油所(Kapotnya Oil Refinery)とも呼ばれている。

■ 発災があったのは、モスクワ中心部から南東約15km離れた製油所内にある燃料貯蔵タンクである。

< 事故の状況および影響 >

事故の発生

■ 2026618日(木)早朝、モスクワ製油所にウクライナ軍(Ukrainie)の無人航空機(ドローン)による攻撃があった。

■ 目撃者によると、強力な爆発により大型燃料貯蔵タンクの屋根が完全に噴き飛ばされ、激しい火災が発生したという。燃料貯蔵タンクの屋根が数十メートルも空中に舞い上がった。製油所では、少なくとも5か所で火災が発生し、黒煙が空に広がった。

■ 当初、このタンク屋根が噴き飛んだ原因はウクライナ軍の無人航空機(ドローン)による攻撃だったと報道されたが、新たな目撃者の動画がオンラインに公開され、OSINT(オープン・ソース・インテリジェンス)の専門家が分析した結果、発生した爆発は、無人航空機(ドローン)ではなく防空ミサイルによるものという見解が報じられた。

■ 防空ミサイルは、本来、敵の航空機、ミサイル、無人航空機(ドローン)から重要な施設や部隊を迎撃・防衛するための誘導兵器である。防空ミサイルはその射程や運用方法によって分類されるが、今回は、携帯式防空ミサイル(兵士が肩に担いで発射する小型ミサイル)とみられ、近年では無人航空機(ドローン)の迎撃に用いられている。

■ 携帯式防空ミサイルを撃ったのは、明確になっていないが、ロシアの発射したミサイルが誤って貯蔵タンクに当たったものだと報じられている。

■ OSINTOpen Source Intelligence)とは、公開情報(ウェブサイト・SNS・公的データベースなど)を収集・分析し、サイバー脅威の兆候を把握するインテリジェンス手法である。元来は軍事情報活動の一環であり、現在、OSINTの活用は民間部門へも拡大し、多くの企業や団体において標準的な活動となっている。

■ ウクライナ軍は、製油所への攻撃により、RVS-10000型タンク3基、RVS-30000型タンク1基のほか製油所のオイルプロセス装置を攻撃で損傷させたと語っている。注記;貯蔵タンク RVS-10000型は、主に石油や化学薬品などの液体を大量に保管するために使用される容量10,000KLの円筒形鋼製タンクをいう。

■ フェースブックでは、防空システムのミサイルによるタンク被災の映像が投稿されている。

 FacebookНе дрон, а ракета ПВО вызвала взрыв на НПЗ в Капотне2026/6/19

被 害

■ 製油所の貯蔵タンク1基の屋根が噴き飛ぶほどの損壊をした。このほかタンク3基やプロセス装置が無人航空機(ドローン)による攻撃で損傷した。また、タンクや装置内にあった油が焼失した。

■ 死傷者は発生していない。  

< 事故の原因 >

■ 原因は、テロによる“故意の過失”でなく、戦争時の無人航空機(ドローン)による攻撃である。 タンク屋根が噴き飛んだ貯蔵タンクへの攻撃は、無人航空機(ドローン)でなく、防空ミサイルによるものとみられている。

< 対 応 >

■ 本格的な戦争開始以来最大規模のウクライナ軍の攻撃で製油所が攻撃され、ロシアの一部に黒い油の粒が降り注いだ。この攻撃では、約200機の無人航空機(ドローン)がロシアの首都に向けて発射された。

ロシアのモスクワ市長によると、首都モスクワを目指していた少なくとも194機の無人航空機(ドローン)を618日(木)未明にかけてロシアの防空システムによって撃墜したという。

■ しかし、ロシアの防空システムが全部機能したわけでなく、ロシアの携帯式防空ミサイルが誤って貯蔵タンク1基に当たったものとみられる。

■ ロシア人がソーシャルメディアに投稿した動画は、二つのことを伝えている。ひとつは、首都モスクワの防空網は強固だったが、ウクライナの安価な大量生産の無人航空機(ドローン)によって突破され、製油所の貯蔵タンクの屋根が噴き飛ばされたことに代表される複数の火災が猛威を振るったことや環境災害が確実に発生しつつあることである。もうひとつは、モスクワ市民の不満の拡大と、それがもたらす政治的不安定さである。ロシア当局が抑制しようとしてきた動画が数多く投稿され、高まる反体制の姿勢と、最終的に失敗に終わった情報操作を示している。  

■ 現場からの画像や動画はインターネット上で広く拡散されたが、紛争が続いている状況下では、すべての映像の真偽を独自に検証することは依然として困難である。

補 足

■「ロシア」(Russia)は、正式にはロシア連邦で、ユーラシア大陸北部に位置する人口約14,000万人の連邦共和制国家である

「モスクワ」(Moscow)は、人口約約1315万人のロシア連邦の首都である。また、連邦市として市単独で連邦を構成する83の連邦構成主体のひとつである。

■「ガスプロム・ネフチ社」(Gazprom Neft)は、ロシアの石油企業で国内の石油製造・精製企業としては、5番目の規模をもつ。2005年天然ガス最大手ガスプロムの傘下企業となり、ガスプロム・ネフチに改称した。本社はサンクトペテルブルクである

「モスクワ製油所」(カポトニャ製油所:Kapotnya Oil Refinery)は、1938 年に操業したが、2011年からロシア国営企業ガスプロム・ネフチ社の傘下にある。精製能力は、年間約1,200万トンで、日量換算で約24万~30万バレル/日の規模である。

■「発災(被災)タンク」は大きさ、油種などの仕様について何も報じられていない。グーグルマップで調べると、直径約45mであるので、高さを1520mとすれば、容量は23,80031,800KLとなる。グーグルマップの写真を見ると、ドームルーフ式の固定屋根型タンクである。ウクライナ軍が攻撃でRVS-30000型タンク1基を損傷させてと語っているが、このタンクが発災(被災)タンクとみられる。

所 感 (前 回)

■ 戦争時の貯蔵タンクの被災については、基本的にこのブログの調査対象にしていないが、今回の事例はタンク屋根が噴き飛んだというので、調べることとした。

 映像は少なくとも3か所から撮影されたものがあり、実際にタンク屋根が噴き飛んだものとみられる。タンク屋根は水平を保ったままかなりの高さまで飛んでいる。 一般にコーンルーフ式やドームルーフ式の固定屋根式円筒タンクは、タンク屋根と側板の溶接部の接続箇所が弱く作られており、この点でいえば、適切な設計・製作をされた貯蔵タンクといえる。タンク上部の混合気が爆発するような圧力になった場合、溶断部が破断するが、タンク屋根が水平を保って高くまで飛ぶということはめずらしい。事例のような状況になる要因を推測すると、タンク内部に液が少ない状態のところにタンク上部に無人航空機(ドローン)が突っ込んで爆発したのではないだろうか。このため、無人航空機(ドローン)の爆弾による衝撃的な力がタンク屋根部にかかり、溶断部を破断するが、タンク屋根が水平を保って空高く噴き飛んだのではないだろうか。

■ 2022224日、ロシアがウクライナに侵攻して軍事衝突が起こったが、両国の戦争でミサイルなどに代わって無人航空機(ドローン)によるタンク貯蔵施設への攻撃について、このブログで紹介したのは「ロシアがウクライナのひまわり油タンクをカミカゼ無人機で攻撃」202210月)が初めてだった。その後、無人航空機(ドローン)は飛躍的に発達して、現在は戦争の主要な武器となっている。対ドローン防御設備が開発されても「ロシアで対ドローン防御設備を施した貯蔵タンクが攻撃で被災」20262月)のように無人航空機(ドローン)による武器化の技術進展は、日本のドローンへのテロ対策を根本的に見直す必要性があることはこれまで述べてきたとおりである。

所 感 (今 回)

■ 戦争時の貯蔵タンクの被災については、このブログの調査対象にしていない。無人航空機(ドローン)によるテロ対応の観点から調べたが、結果は防災ミサイル(兵士が肩に担いで発射する小型ミサイル)で誤射によるものであった。誤射に関して意見や見解は示されておらず、これが“戦争”というもので、仕方ないことと思っているのであろう。人間のひととしての感性が鈍ってきている。

■ ロシアとウクライナの携帯式防空ミサイルの例は図のとおりである。


備 考

 本情報はつぎのインターネット情報に基づいてまとめたものである。

   Bbc.com, Moscow residents complain of black rain after largest Ukrainian attack hits oil refinery,  June  19,  2026

    Edition.cnn.com, Ukraine launches largest attack on Moscow since start of full-scale war,  June  19,  2026

    English.nv.ua, Satellite images reveal damage at Moscow refinery after Ukrainian drone strike,  June  21,  2026

    Ndtv.com, Video: Ukrainian Drone Hits Russian Refinery, Blows Tank Lid Off,  June  18,  2026

     Apnews.com, Ukrainian drones set a Moscow refinery ablaze in a major attack on the Russian capital,  June  19,  2026

     United24media.com, Moscow Oil Refinery After Ukrainian Drone Attacks: What Satellite Images Show,  June  19,  2026

     Abcnews.com,  Fuel storage tank's lid blown off as Moscow refinery targeted by Ukraine,  June  18,  2026

     Facebook.com,  Не дрон, а ракета ПВО вызвала взрыв на НПЗ в Капотне,  June  19,  2026


後 記: それにしてもロシア国内におけるフェースブックなどによる無人航空機(ドローン)の動画撮影への関心の高さには驚きます。今回の貯蔵タンクの屋根が噴き飛ばされた動画も複数あります。そのうちのひとつがOSINT(オープン・ソース・インテリジェンス)の専門家による分析結果、発生した貯蔵タンク爆発は、無人航空機(ドローン)ではなく、防空ミサイルによるものだというのが分りました。撮影された動画がオンラインで公開されていなければ、前回のブログのようにウクライナの無人航空機(ドローン)によるものだったということで終わっているはずです。ところが、そうではなく自国の貯蔵タンクを自国の防空システム(携帯式防空ミサイル)で攻撃したということが分ってしまいました。

2026年7月17日金曜日

米国オクラホマ州で石油生産の関連施設で落雷によるタンク火災

  今回は、米国オクラホマ州ポタワトミー郡にある石油生産の関連施設において落雷によってタンク火災が起きた事例を紹介します。

< 発災施設の概要 >

■ 発災があったのは、米国オクラホマ州(Oklahoma)ポタワトミー郡(Pottawatomie )にある石油生産の関連施設である。

■ 事故があったのは、草原地帯にある石油生産の関連施設のタンク群である。

<事故の状況および影響>

事故の発生

■ 2026623日(火)、ポタワトミー郡にある石油生産の関連施設内でタンクが火災となった。

■ 火災は隣接タンクにも延焼し、石油生産の関連施設にあるタンク群が火災になった。

■ 発災にともない、消防隊が出動した。

■ 事故にともなう負傷者は出ていない。

■ 火災の原因は落雷によるものとみられる。

■ 現場近くを通る車の運転手は、その地域で交通渋滞が予想されるため、迂回路を計画しておくのがよい。

■ ユーチューブでは、火災のニュースを伝える動画が投稿されている。

 YoutubeUPDATE: Fire crews respond to tank fire in Pottawatomie County struck by lightning2026/7/26

被 害

■ 石油生産の関連施設にあった油タンク2基が屋根が外れるほど激しい火災で損壊した。そのほかのタンク6基も被災程度は異なるが、損傷した。

■ 油タンク2基に入っていた油が焼失した。

■ 負傷者は出なかった。 

< 事故の原因 >

■ 事故原因は落雷によるとみられる。

< 対 応 >

■ 火災は消防隊によって消火された。

補 足

■「オクラホマ州」(Oklahoma)は、米国中南部に位置し、隣接するテキサス州の北にあるパンハンドル(取っ手つきフライパン)の形をした州である。日本の約半分ほどの面積の土地に約396万人しか住んでいないので、人口密度は低く、ゆったりしている。オクラホマには山がほとんどなく、見渡す限り、地平線である。オクラホマシティとタルサという二大都市から少し離れれば、草原が延々と続き、ほとんどは牛がのんびり歩く農場か、オイルやガスを掘削する油田・ガス田である。大陸性気候のオクラホマ州では、天気が急激に変わる。35月頃は通り道にある家々をまるごと吹き飛ばしてしまうほどの強力なトルネード(竜巻)が発生する。

「ポタワトミー郡」(Pottawatomie )は、オクラホマ州の中央部に位置し、人口約72,000人の市である。

■「発災タンク」は、種類や大きさなどの仕様が報じられていない。被災写真はドローンで撮影された映像が流されているので、円筒型タンクであることが分かる。グーグルマップで調べても、発災場所がわかるような情報がなく、特定できなかった。

 円筒型タンクは8基あり、そのうち2基はタンク屋根が外れて火災になっている。過去の事例から推測すると、事故にあった石油生産の関連施設は塩水処理施設とみられる。火災になった油タンクは鋼製であり、そのほかのタンクが塩水タンクで、通常、グラスファイバー製を使われることがあるが、発災施設では鋼製タンクである。タンク屋根が遠くに飛んでいるので、落雷時に爆発してタンク屋根が外れて噴き飛んだものとみられる。過去の事例から円筒タンクの直径を34mで、高さを56mと仮定すれば、容量は3575KLとなる。

 オクラホマ州における石油生産の関連施設の火災について本ブログで紹介したのは、つぎのとおりである、

 ●20245月、「米国オクラホマ州で竜巻警報の中、落雷によるタンクが爆発・火災」

 ●20243月、「米国オクラホマ州の石油生産施設で相次いで落雷よるタンク火災」

 ●20255月、「米国オクラホマ州の塩水処理施設で落雷によるタンク火災」

 ●202512月、「米国オクラホマ州の石油生産関連の施設でタンク設備が爆発・火災」

 なお、塩水処理施設の一般的なプロセスフローは、つぎのとおりである。

所 感 

■ 今回の事例の原因は落雷と報じられている。オクラホマ州は竜巻や落雷の多い州であり、過去に紹介した石油生産関連施設の4件のタンク火災事故のうち、3件は原因が落雷によるものである。

■ 消火戦略には積極的戦略・防御的戦略・不介入戦略の3つがあるが、どの戦略をとったかは報じられていない。被災写真を見ると、タンク火災だけでなく、流出した油による堤内火災や地上火災になっており、火災状況が激しいときは積極的戦略をとっていないと思われる。おそらく不介入戦略をとったと思われる。しかし、鎮火後の施設を見ると、消火泡が見られるので、火災の途中で積極的戦略をとり、泡消火活動をとったとみられる。FRP製タンクを使用している塩水処理施設では、不介入戦略をとるが、本施設では鋼製のタンク群であり、積極的戦略をとり、延焼の拡大を避けたものとみられる。


備 考

 本情報はつぎのインターネット情報に基づいてまとめたものである。

     Kfor.com, UPDATE: Fire crews respond to tank fire in Pottawatomie County struck by lightning, June  24, 2026

     Yahoo.com, UPDATE: Fire crews respond to tank fire in Pottawatomie County struck by lightning, June 25, 2026


後 記: 本事故はドローン(またはヘリコプター)による上空からの映像があるので、火災の状況を理解することができました。また、取材による情報を報じたのは映像を流した1社だけです。オクラホマ州のタンク火災事故だけを見ても、以前と比べると、内容が薄くなっています。今回の事故を見ても、タンクの仕様は勿論、事業者名も報じられていません。もともと石油生産の関連施設に関しては記事が少なくなっていましたが、特に、最近、この種の事故報道をメディアはやらなくなったと感じています。米国・イスラエルーイラン戦争で忙しくなった(?)のか、米国の事故に対する感度や感性が鈍くなったように思います。オクラホマ州だけでなく、テキサス州などでも石油生産の関連施設のタンク火災事故を意図的に報じていないのではないでしょうか。

2026年7月12日日曜日

ロシアのモスクワ製油所、無人航空機による攻撃で貯蔵タンクの屋根が噴き飛ぶ

 今回は、2026618日(木)、ロシアのモスクワにあるガスプロム・ネフチ社モスクワ製油所内の燃料貯蔵タンクがウクライナ軍の無人航空機(ドローン)による攻撃を受け、タンク屋根が空高く噴き飛んだ事例を紹介します。

< 発災施設の概要 >

■ 被害があったのは、ロシア(Russia)のモスクワ(Moscow)にあるガスプロム・ネフチ社(Gazprom Neft)のモスクワ製油所である。この製油所は所在地からカポトニャ製油所(Kapotnya Oil Refinery)とも呼ばれている。

■ 発災があったのは、モスクワ中心部から南東約15km離れた製油所内にある燃料貯蔵タンクである。

< 事故の状況および影響 >

事故の発生

■ 2026618日(木)早朝、モスクワ製油所にウクライナ軍(Ukrainie)の無人航空機(ドローン)による攻撃があった。

■ 製油所近くのモスクワ南東部の住民のひとりは、早朝、爆発音、濃い煙、それに強い焦げ臭で目が覚めたと語った。同じく、被害を受けた製油所の近くに住む男性は、夜明けに建物が揺れ始めて目が覚め、朝には焦げ臭い匂いがして息ができなかったといい、「本当に恐ろしい。以前はそれほど怖くなかったが、今はほとんどパニック状態だ」と語った。  

■ 目撃者によると、強力な爆発により大型燃料貯蔵タンクの屋根が完全に噴き飛ばされ、激しい火災が発生したという。燃料貯蔵タンクの屋根が数十メートルも空中に舞い上がった。製油所では、少なくとも5か所で火災が発生し、黒煙が空に広がった。

■ 製油所近くの地域一帯に瓦礫が降り注いだ。

■ 市は、影響を受けた地区の住民に対し、窓を閉めておくよう警告し、子供連れの家族、高齢者、喘息患者は速やかにその地域から避難するように勧告した。

■ モスクワ製油所は、この1か月で3度目の攻撃に見舞われたことになる。

■ 無人航空機(ドローン)の破片が建物に落下し、近隣のショッピングセンターが火災に見舞われた。

■ ロシアがウクライナへの本格的な侵攻を開始してから4年半が経過したが、ウクライナの最前線での消耗戦は、ロシアの多くの人々の目には触れることなく続いている。ロシア各地の地方当局はドローン攻撃後の画像の公開を禁止しているものの、ソーシャルメディアには、白昼堂々と空を飛び交うドローンや、モスクワ郊外の工業地帯上空での爆発をとらえた動画が数多く投稿されている。

■ ウクライナ軍は、本格的な空爆を開始する前に、多数の偵察用デコイドローンを発射して、防空網の密度や脆弱な地域を把握するという戦術を常套手段として用いている。

■ ウクライナ国境から約500km離れたモスクワへの無人航空機(ドローン)攻撃は、ウクライナが長距離攻撃能力を開発したことで頻繁になっている。ウクライナによる初の無人航空機(ドローン)攻撃は2023年春にロシアの首都に到達したが、散発的で、使用された無人航空機(ドローン)はごく少数にとどまっていた。それ以来、モスクワ周辺には大規模な防空網が構築されたが、ウクライナが攻撃に使用する無人航空機(ドローン)の数も増加し、一部はそれらの防空網を突破した。

■ ウクライナ軍によると、RVS-10000型タンク3基、RVS-30000型タンク1基のほか製油所のオイルプロセス装置を攻撃で損傷させたと語った。注記;貯蔵タンク RVS-10000型は、主に石油や化学薬品などの液体を大量に保管するために使用される容量10,000KLの円筒形鋼製タンクをいう。

■ モスクワの主要空港は、618日木曜日のフライトが停止された。

■ ユーチューブやフェースブックなどでは、タンク被災の映像などが投稿されている。

 FacebookMoment fuel storage lid blown off as Ukraine strikes Moscow refinery2026/6/18

 ●YoutubeOil storage tank‘s roof launched into the air during Ukrainian attack on Moscow 2026/6/18)     

 ●Facebook A Ukrainian drone strike sends the roof of a Moscow oil refinery's storage tank flying through the air 2026/6/18

被 害

■ 製油所の貯蔵タンク1基が屋根が噴き飛ぶほどの損壊をした。このほかタンク3基やプロセス装置が無人航空機(ドローン)による攻撃で損傷した。また、タンクや装置内にあった油が焼失した。

■ 死傷者は発生していない。  

< 事故の原因 >

■ 原因は、テロによる“故意の過失”でなく、戦争時の無人航空機(ドローン)による攻撃である。 

< 対 応 >

■ 本格的な戦争開始以来最大規模のウクライナ軍の攻撃で製油所が攻撃され、ロシアの一部に黒い油の粒が降り注いだ。この攻撃では、約200機の無人航空機(ドローン)がロシアの首都に向けて発射された。

ロシアのモスクワ市長によると、首都モスクワを目指していた少なくとも194機の無人航空機(ドローン)を618日(木)未明にかけてロシアの防空システムによって撃墜したという。

 しかし、これは、ここ数か月間のウクライナによる攻撃で使用された無人航空機(ドローン)の数が二桁にとどまっていたことを考えると、はるかに多い数であり、4年以上前にロシアによる本格的な侵攻が始まって以来、ウクライナの無人航空機(ドローン)能力が劇的に向上したことを示す明確な例となっている。

■ 専門家によると、 ロシアの国家予算は歳入の少なくとも3分の1を石油収入に依存しているという。ロシアーウクライナ戦争が始まって以来、欧州連合(EU)と米国による制裁強化により、ロシア産原油の買い手は減少していた。しかし、米国・イスラエルーイラン戦争によって、ロシアには思わぬ幸運となり、世界的な燃料価格の高騰と制裁緩和の恩恵を受けた形になった。

■ ロシア人がソーシャルメディアに投稿した動画は、二つのことを伝えている。ひとつは、首都モスクワの防空網は強固だったが、ウクライナの安価な大量生産の無人航空機(ドローン)によって突破され、製油所の貯蔵タンクの屋根が噴き飛ばされたことに代表される複数の火災が猛威を振るったことや環境災害が確実に発生しつつあることである。もうひとつは、モスクワ市民の不満の拡大と、それがもたらす政治的不安定さである。ロシア当局が抑制しようとしてきた動画が数多く投稿され、高まる反体制の姿勢と、最終的に失敗に終わった情報操作を示している。  

■ 現場からの画像や動画はインターネット上で広く拡散されたが、紛争が続いている状況下では、すべての映像の真偽を独自に検証することは依然として困難である。


補 足

■「ロシア」(Russia)は、正式にはロシア連邦で、ユーラシア大陸北部に位置する人口約14,000万人の連邦共和制国家である

「モスクワ」(Moscow)は、人口約約1315万人のロシア連邦の首都である。また、連邦市として市単独で連邦を構成する83の連邦構成主体のひとつである。

■「ガスプロム・ネフチ社」(Gazprom Neft)は、ロシアの石油企業で国内の石油製造・精製企業としては、5番目の規模をもつ。2005年天然ガス最大手ガスプロムの傘下企業となり、ガスプロム・ネフチに改称した。本社はサンクトペテルブルクである

「モスクワ製油所」(カポトニャ製油所:Kapotnya Oil Refinery)は、1938 年に操業したが、2011年からロシア国営企業ガスプロム・ネフチ社の傘下にある。精製能力は、年間約1,200万トンで、日量換算で約24万~30万バレル/日の規模である。

■「発災(被災)タンク」は油種などの仕様について報じられていない。グーグルマップで調べると、直径約45mであるので、高さを1520mとすれば、容量は23,80031,800KLとなる。グーグルマップの写真を見ると、ドームルーフ式の固定屋根型タンクである。ウクライナ軍が攻撃でRVS-30000型タンク1基を損傷させてと語っているが、このタンクが発災(被災)タンクとみられる。

所 感

■ 戦争時の貯蔵タンクの被災については、基本的にこのブログの調査対象にしていないが、今回の事例はタンク屋根が噴き飛んだというので、調べることとした。

 映像は少なくとも3か所から撮影されたものがあり、実際にタンク屋根が噴き飛んだものとみられる。タンク屋根は水平を保ったままかなりの高さまで飛んでいる。

 一般にコーンルーフ式やドームルーフ式の固定屋根式円筒タンクは、タンク屋根と側板の溶接部の接続箇所が弱く作られており、この点でいえば、適切な設計・製作をされた貯蔵タンクといえる。タンク上部の混合気が爆発するような圧力になった場合、溶断部が破断するが、タンク屋根が水平を保って高くまで飛ぶということはめずらしい。事例のような状況になる要因を推測すると、タンク内部に液が少ない状態のところにタンク上部に無人航空機(ドローン)が突っ込んで爆発したのではないだろうか。このため、無人航空機(ドローン)の爆弾による衝撃的な力がタンク屋根部にかかり、溶断部を破断するが、タンク屋根が水平を保って空高く噴き飛んだのではないだろうか。

■ 2022224日、ロシアがウクライナに侵攻して軍事衝突が起こったが、両国の戦争でミサイルなどに代わって無人航空機(ドローン)によるタンク貯蔵施設への攻撃について、このブログで紹介したのは「ロシアがウクライナのひまわり油タンクをカミカゼ無人機で攻撃」202210月)が初めてだった。その後、無人航空機(ドローン)は飛躍的に発達して、現在は戦争の主要な武器となっている。対ドローン防御設備が開発されても「ロシアで対ドローン防御設備を施した貯蔵タンクが攻撃で被災」20262月)のように無人航空機(ドローン)による武器化の技術進展は、日本のドローンへのテロ対策を根本的に見直す必要性があることはこれまで述べてきたとおりである。


備 考

 本情報はつぎのインターネット情報に基づいてまとめたものである。

   Bbc.com, Moscow residents complain of black rain after largest Ukrainian attack hits oil refinery,  June  19,  2026

   Edition.cnn.com, Ukraine launches largest attack on Moscow since start of full-scale war,  June  19,  2026

   English.nv.ua, Satellite images reveal damage at Moscow refinery after Ukrainian drone strike,  June  21,  2026

   Ndtv.com, Video: Ukrainian Drone Hits Russian Refinery, Blows Tank Lid Off,  June  18,  2026

    Apnews.com, Ukrainian drones set a Moscow refinery ablaze in a major attack on the Russian capital,  June  19,  2026

    United24media.com, Moscow Oil Refinery After Ukrainian Drone Attacks: What Satellite Images Show,  June  19,  2026

    Abcnews.com,  Fuel storage tank's lid blown off as Moscow refinery targeted by Ukraine,  June  18,  2026       


後 記: タンク屋根が噴き飛び、メディアで映像が取りあげられましたので、調べることにしました。タンク構造が分かっているひとにとっては自明のことではありますが、このブログの趣旨から取り上げない訳にはいかないでしょう。調べるにあたって、これまでのロシアーウクライナ戦争で紹介したブログを読み返してみました。それで感じたのは、メディアの報道がだんだん希薄になってきたことです。以前は、被害国(今回の場合、ロシア)でも記事がありましたが、今回はありませんでした。フェースブックなどのSNS(ソーシャルネットワーク)の映像が主でした。ロシア国内では無人航空機(ドローン)による被災状況の画像の公開を禁止しているものの、ソーシャルメディアには、動画が数多く投稿されていました。