このブログを検索

2024年3月31日日曜日

米国カリフォルニア州でトラックの燃料タンクが爆発、対応中の消防士9名が負傷

 今回は、2024215日(木)、米国カリフォルニア州ロサンゼルスの路上で、牽引用の大型トラックの燃料用の圧縮天然ガスタンクが火災を起こしたため、通報を受けた消防隊が出動して対応中に爆発が発生し、消防士9名が負傷するという事故を紹介します。

< 発災施設の概要 >

■ 発災があったのは、米国のカリフォルニア州(California)ロサンゼルス(Los Angeles)のウィルミントン(Wilmington )地区の路上である。

■ 事故があったのは、トレーラーヘッドと呼ばれる牽引用の大型トラックで、燃料用の圧縮天然ガス(Compressed Natural GasCNG)のタンクである。圧縮天然ガスの圧力は3,000psi20.6MPa≒210kg/c㎡)である。大型トラックは、ヒーブ・ロード・トランスファー社(Heave Load Transfer, LLC.)所有で、事故当時、トレーラーを牽引していなかった。

< 事故の状況および影響 >

事故の発生

■ 2024215日(木)午前7時頃、ロサンゼルスのウィルミントン地区で大型トラックが火災を起こした。  

■ 圧縮天然ガス(CNG)とみられるタンクが燃えているとの通報を受け、ロサンゼルス消防局の消防士10名が出動した。 出動したのはよく訓練され優れた機動部隊だった。

■ 消防隊が対応していたとき、大型トラックに装備された圧縮天然ガスの燃料タンクが爆発し、ファイアボールが舞い上がった。この爆発で、火災に対応していた消防士10名のうち9名が負傷した。9名は全員がハーバーUCLAメディカルセンターに救急搬送された。うち8名の容体は安定していたが、1名は重症である。

■ 運転手は、大型トラックの異変に気づき、緊急通報用の911番に通報するためにその場を離れたため、ケガを免れたという。

■ 大型トラックは圧縮天然ガスを燃料とし、燃料タンクは100ガロン(378リットル)のタンク2本が装備されており、そのうちの1本がウィルミントンの現場に消防隊が到着した6分後に爆発した。このときの音声が公開され、助けを呼ぶ緊急用符号語の「メーデー!メーデー!メーデー!」の後で、「CNGトラックで爆発が発生した。複数の消防士が倒れている」というもので、直後、ハズマット(HazMat)隊を含む150人以上の消防士が現場に出動した。

■ ファイアボールは電信柱と同じくらいの高さ30フィート(9m)で、近くの変圧器のひとつを爆発させた。さらに、2本目の燃料タンクからはガスが出ていて、小さな炎が燃え続けており、爆発の恐れが残っていた。

■ 負傷した消防士を助けるためと燃え続ける2本目のタンクに遠隔から水を供給するため、消火ロボットが導入された。

■ 大型トラックは完全に破壊され、路上に瓦礫が散乱した中で、2本目の圧縮天然ガス燃料タンクは2時間経過しても小さな炎を燃え続けており、消防隊員は安全な距離を保つことを余儀なくされた。

■ 爆発は工業地域に近いところで起きたが、広い道路と線路によって近隣地域からは隔てられていた。また、半径500フィート(150m)の広範囲に警戒線が張られた。

■ ロスアンゼルス市消防局は「住民は屋内に留まるよう呼びかけている」とし、 「当面の危険区域内には住宅はなく、正式な避難命令は出していない」と発表した。一方、発災時、ロサンゼルス警察は近隣住民約75人に数時間の家屋からの立ち退きを求められていた。

■ この地域の住民のひとりは「大きな揺れを伴う爆発だったので、地震のようでもあり、爆弾のようでもありました」と語っている。爆発時の破片が庭に飛んできた住宅もある。爆風の影響でケガをした住民もおり、負傷した人は複数いるという。爆発の近いところに住む人にとって、爆発によって建物の構造に影響していないか懸念する人もいる。

■ ユーチューブには、爆発の瞬間を撮影された動画などのニュースが投稿されている。

 YouTube9 firefighters hurt, 2 critically, in Los Angeles area explosion involving natural gas cylinder2024/2/16

 ●YouTubeWilmington explosion injures 9 firefighters2024/2/16

 ●YouTubeWilmington gas explosion leaves 9 LA firefighters injured2024/2/16

 ●YouTubeNatural gas-powered truck explosion injures 9 firefighters in Los Angeles2024/2/16

 ●YouTubeNew video shows massive Wilmington explosion2024/2/16

被 害

■ 大型トラック1台が損壊した。ほかに爆発の影響を受けた自動車や住宅があるとみられる。 

■ 事故により対応中だった消防士9名が負傷した。近隣に住む人の中にはケガした人も複数いるとみられる。

< 事故の原因 >

■ 爆発の原因は調査中である。

< 対 応 >

■ 2本目タンクは予防措置として「ガス抜き」が行われた。

■ 消防当局は、爆発前に大型トラックがどのようにして火災を発生したのかは不明であり、調査中であると述べた。

■ 消防署長は、「今日という日は、消防活動がいかに危険であるかを私たちに再認識させる日でした。消防隊の対応について消防署として振り返ってみることとします。このチームは高度な訓練を受けており、今回の事故についてあらゆる側面を調査し、教訓と改善事項をまとめたいと思っています」と語った。

■ 一方、専門家も今回の事故について、この職業には絶えず変化する自然環境と危険性があることを気づかせるものであり、「今日の世界では、CNG 燃料、水素燃料、電気自動車、ガソリン、ディーゼルなどさまざまなタイプの車両があるため、火災はもちろんのこと、それぞれのタイプの車両に関連する事故が発生するたびにいろいろな意見が出て議論沸騰している」と語っている。

■ 217日(土)、トラックを所有する会社ヒーブ・ロード・トランスファー社は、つぎのような声明を発表した。 

「ヒーブ・ロード・トランスファー社は、215日(木)朝にカリフォルニア州ウィルミントンで当社の圧縮天然ガス(CNG)トラック1台が爆発したことを認識しています。私どもはアドバイザーとともに事故を調査しており、当局と協力して原因を究明しています。現場で対応した消防士に感謝するとともに、安全を確保する過程で負傷した方々の回復をお祈りいたします」

■ 今回の事故で完全に破壊されたトラックは、一見平凡な世界に潜む危険性を示すものとなっている。消防士は日常的なヒーローとして称賛されることが多いが、奉仕するという使命に内在するリスクがあることを再認識させられる。圧縮天然ガスの輸送や取扱いの安全対策に関する疑問が前面に浮上している。今回の事故は、危険に立ち向かう人々の勇敢さを浮き彫りにするだけでなく、将来の悲劇を防ぐために厳格な安全手順の必要性があることをはっきりと示している。

補 足

■「カリフォルニア州」(California)は米国西海岸に位置し、メキシコとの国境から太平洋沿いに細長く伸び、人口約3,890万人の州である。

「ロサンゼルス」(Los Angeles)はカリフォルニア州の中部に位置し、人口は同州最多の約390万人である。なお、ロサンゼルス都市圏には 11 のトップレベルのプロスポーツ・チームの本拠地があり、野球では大谷翔平が所属していたロサンゼルス・ エンジェルスと現在所属するロサンゼルス・ドジャースがある。

「ウィルミントン」(Wilmington)はロサンゼルス市にある地区で、産業が発達しており、人口約53,800人である。

■「発災タンク」はトラックの燃料タンクで、内部の燃料は天然ガスを圧縮した圧縮天然ガス(Compressed Natural GasCNG)である。燃料タンクは容量100ガロン(378リットル)で左右に2本付いており、圧力は3,000psi 20.6MPa≒210kg/c㎡)である。

■ 天然ガス自動車は燃料の種類によって大きく3種類に分けられ、圧縮天然ガスは天然ガスを20MPaに圧縮して容器(燃料タンク)に貯蔵して使用するもので“CNG自動車とも呼ばれている。天然ガス自動車(CNG自動車)の特徴は地球温暖化の原因となるCO2(二酸化炭素)の排出量を、ガソリン車より23割低減でき、 光化学スモッグ・酸性雨などの環境汚染を招くNOx(窒素酸化物)、CO(一酸化炭素)、HC(炭化水素)の排出量が少なく、SOx(硫黄酸化物)が排出されない。


 天然ガス自動車の安全性は、日本ガス協会によると、使用部品や装置の機能によって衝突時や火災時につぎのように確保されているという。

 ●衝突の場合、①過流防止弁、主止弁、燃料遮断弁など各種の安全装置により、燃料(天然ガス)の漏洩を防止する。②ガス容器(燃料タンク)、配管・継手、機器類はすべて衝突に耐えうる強度を持ち、また損傷しにくいように配置されている。

 ●火災の場合、ガス容器が破損しないように、ガスを安全に排出する安全弁が作動し、ガス容器内の圧力上昇を防ぎ、破損を防止する。また、ガス充填終了後にガス充填ホースを接続した状態で発進した場合、車両および充填設備の損傷を防ぐために、車両側のガス充填口の扉を開くとスタータ回路が切れ、エンジンが始動しないようにした誤発進防止装置(スタータ・インターロックシステム)を装備した車両もある。

所 感

■ 原因は調査中で分からないが、つぎのような状況と経過ではないかと思う。

 ●トラックの運転手は最初に“異変を感じた” と語っているということなので、異変は圧縮天然ガスの燃料系統から漏れ始めていたとみられる。

 ●漏れ始めた圧縮天然ガスがトラックのエンジン系統の熱などの引火源によって火がつき、火災になったと思われる。画像を見ると、火災は結構な大きさに進展しているので、漏洩は次第に大きくなっていたと思われる。

 ●消防隊が到着して6分後に爆発している。炎は燃料タンクをなめており、タンク材質の強度が低下し、圧縮天然ガスの圧力(約20MPa)に耐えきれず、一気に圧縮天然ガスが流出し、爆発現象に至ったと思われる。

■ 圧縮天然ガス自動車の安全対策として“火災の場合、ガス容器が破損しないように、ガスを安全に排出する安全弁が作動し、ガス容器内の圧力上昇を防ぎ、破損を防止するというのが無力感を感じる。ロサンゼルス消防局のよく訓練され優れた機動部隊の消防士10名が出動しているが、天然ガスが豊富で広く流通している圧縮天然ガス自動車の安全対策についてはよく理解していただろう。圧力20MPaといえば、プロセス装置の中でも圧力の高い重油直接脱硫装置と同じレベルである。このような高圧の燃料タンクを装備して移動する自動車はリスクが高過ぎ、無理がある。

 一方、日本では考えられないような危険性のあるプロセス装置を開発・導入してきた米国であり、今回のような事故もハザード評価を行い、事故の発生頻度を推測し、定量的リスクアセスメントにより判断されるのだろう。(見方によっては数字のマジック)

 注記;タンク事故を例にすれば、「貯蔵タンクにおける事故の発生頻度」201512月)や「米国の石油貯蔵タンク基地におけるハザード評価」20161月)を参照。


備 考

 本情報はつぎのインターネット情報に基づいてまとめたものである。

     Sandiegouniontribune.com,  9 Los Angeles firefighters injured after burning truck’s fuel tank explodes,  February  16,  2024

     Theguardian.com,  Los Angeles firefighters rushed to hospital after huge truck explosion,  February  16,  2024

       Fox59.com,  Video shows truck explosion that injured at least 7 firefighters in California,  February  15,  2024

       Abc10.com,  9 Los Angeles firefighters injured in explosion of burning truck's fuel tank,  February  15,  2024

       Nbcnews.com,  9 Los Angeles firefighters injured, 2 critically, in explosion of burning truck’s fuel tank,  February  16,  2024

       Abc7news.com,  9 firefighters hurt, 2 critically, in Los Angeles area explosion involving natural gas cylinder,  February  16,  2024

      Cbsnews.com,  9 LAFD firefighters injured after explosion in Wilmington area,  February  17,  2024

      Bnnbreaking.com,  9 LAFD firefighters injured after explosion in Wilmington area,  February  15,  2024

      Nbclosangeles.com,  SoCal trucking company investigating explosion that injured 9 LA firefighters,  February  15,  2024


後 記: 事故の情報を知って最初はタンクローリーの事故だと思い、つぎにトラックに積んだ横型タンクだと思いました。情報を調べていって、トラックに装備された圧縮天然ガスの燃料タンクだということが理解できました。消防士9名が負傷したという事故だというので、思い出したのは、 19823月に起こった「重油直接脱硫装置配管の水素侵食による破裂」事故です。この事故では、プロセス流体が漏れ出した後、破裂して火災が発生し、運転員5名が死亡し、3名が負傷しました。圧力異常を検知後、計器室から8名が現場確認のため漏出現場に集まりましたが、漏出発見から45分という短い時間で破裂したため、大きな被害となりました。今回の圧縮天然ガス自動車の事故と類似しています。この事故以降、異常を検知したら、大勢で見に行くのではなく、最小限のふたりで行き、万一のことを考えてパイプラックの柱などに身を隠しながら点検するという教訓話が伝わっていました。

  

2024年3月22日金曜日

米国オクラホマ州の石油生産施設で相次いで落雷よるタンク火災

 今回は、202367月にかけて米国オクラホマ州オクラホマ・シティ周辺の石油生産施設で落雷によってタンク爆発・火災が3件続けて起こった事例を紹介します。


< 発災施設1の概要 >


■ 発災があったのは、米国オクラホマ州(Oklahoma )オクラホマ・シティ(Oklahoma City)に近いユニオン市タトル(Tuttle)にある石油生産施設である。

■ 事故があったのは、ハイウェイ37号線の近くにある石油生産施設のある4基の円筒型タンクである。

<事故の状況および影響>

事故の発生

■ 2023622日(木)夕方、石油生産施設に落雷によってタンクが爆発し、火災が発生した。      

■ タトルの住民は、激しい炎が立ち昇り、煙が空気中に充満しているのに気が付いた。

■ 発災に伴い、ユニオン市消防署の消防隊が出動した。

■ ユニオン市消防署は、火災の状況を撮ったビデオ映像をフェイスブックに投稿した。映像には4基のタンクが火災になっているのが写っている。

 YoutubeLightning strike sparks tank battery fire in Union City, Oklahoma2023/6/24

被 害

■ 石油生産施設のタンク4基が損壊した。内部の原油が焼失した。

■ 負傷者はいなかった。 

< 事故の原因 >

■ 火災の原因は落雷とみられる。

< 対 応 >

■ 火災は石油生産施設のある4基のすべてのタンクに延焼した。

■ 事故に伴う負傷者は出なかった。

< 発災施設2の概要 >

■ 発災があったのは、米国オクラホマ州(Oklahoma )オクラホマ・シティ(Oklahoma City)の近郊にある石油生産施設である。

■ 事故があったのは、ノースウェスト220番通り(Northwest 220th Street) とカウンシルロード(Council Road)近くの石油生産施設の石油タンクである。

<事故の状況および影響>

事故の発生

■ 202376日(木)早朝、石油生産施設にある石油タンクが爆発し、火災となった。

■ 発災に伴い、ディアクリーク消防署の消防隊が出動した。

■ 事故に伴い、近くの道路は交通制限で封鎖された。

■ 事故に伴う負傷者は出なかった。

■ 火災は落雷によるものとみられる。

■ ユーチューブなどでは、火災に関する動画が投稿されている。

 YoutubeLightning sparks tank battery fire in Oklahoma City metro2023/07/06

 YoutubeTank battle explosion in Oklahoma City metro2023/07/06

被 害

■ 石油生産施設のタンク3基が損壊した。内部の原油が焼失した。

■ 負傷者はいなかった。 

< 事故の原因 >

■ 火災の原因は落雷とみられる。

< 対 応 >

■ 消防隊は、火災を制圧し、火は消された。

■ 交通制限は解除された。


< 発災施設3の概要 >

■ 発災があったのは、米国オクラホマ州(Oklahoma)オクラホマ・シティ(Oklahoma City)に近いユーコン(Yukon)にある石油生産施設である。

■ 事故があったのは、ノースウェスト34区(NW 34th Terr.)の住宅地域にあった石油生産施設の石油タンクである。現在は住宅地域になっているが、もともと石油生産施設だけがあったところに住宅が進出してきたところである。

<事故の状況および影響>

事故の発生

■ 202366日(火)夜、石油生産施設で落雷があり、タンクが爆発し、火災になった。

■ 近隣住民によると、音が大きくて最初は何が起こっているのか分からなかったという。住民のひとりは、裏庭のフェンスのすぐ後ろで火の手が上がり、外に出たときに炎が4050フィート(1215m)の高さで空に向かって燃え上がっているのを見たと語った。

■ タンク1基が爆発して空中に舞い上がり、元の場所から約100フィート(30m)離れたところに落下した。

■ 住民のひとりは、「ダイニングルームの窓から外を見ると、大きな火の玉が見え、私たちを見つめているようでした。それで、すぐに家から離れることを決めました」と語っている。

■ 発災に伴い、オクラホマ・シティ消防署の消防隊が出動した。

■ ユーチューブでは、事故後の状況の動画が投稿されている。

 Youtube Fire Crews Respond To Tank Battery Fire In NW Oklahoma City2023/06/07

被 害

■ 石油生産施設のタンク2基が損壊した。内部の原油が焼失した。

■ 負傷者はいなかった。

■ タンクとその周辺地域での推定被害額は約2万ドル(300万円)とみられる。  

< 事故の原因 >

■ 火災の原因は落雷とみられる。

< 対 応 >

■ 消防隊が現場に到着したとき、雨によって大部分の火災は消えていた。

油の大半は排水ますの中に流れ込み、燃え尽きていた。火災は石油生産施設まわりに生えていた草木が燃えている程度だった。

■ 現場では、24時間経っても空気中にまだ焦げた匂いが漂っているため、作業員が後片付けをしていた。

■ オクラホマ・シティ消防局は、タンクとその周辺地域での推定被害額は約2万ドル(300万円)だと発表した。


所 感

■ 最新データではないが、NASAによる世界の雷マップ」20126月)の米国における雷発生頻度はメキシコ湾岸のフロリダ州が雷活動の高い地域である。オクラホマ州も雷の多い地域のひとつである。しかし、今回のように202267月の1か月の間に、オクラホマ・シティ周辺の石油生産施設で落雷によるタンク火災が3件も起きており、異例の状況だといえよう。これも異常気象の現われの例であろう。

 最近の雷は、発生時期のズレや発生雷の激しさを感じる。もともと、米国の陸上油田の石油生産施設におけるタンクは落雷のリスクにさらされているが、落雷によるタンク爆発・火災の頻度は増えていくだろう。


備 考

 本情報はつぎのインターネット情報に基づいてまとめたものである。

     Kfor.com,  Lightning strike likely to blame for tank battery fire,  June  23,  2023

     News.yahoo.com,  Lightning Strike Causes Tank Battery Fire in Oklahoma,  June  23,  2023

     Localnewsx.com,  Tank Battery Fire Caused by a Lightning Strike, Per the Union City Oklahoma Fire Department,  June  23,  2023

     Koco.com,  Lightning sparks tank battery fire in Oklahoma City metro,  July  06,  2023

     News.yahoo.com,  Lightning sparks tank battery fire in Oklahoma City metro,  July  06, 2023

     Kfor.com, Tank battery fire in NW OKC leaves burnt smell in the air 24 hours later,  June  07,  2023

     Okcfox.com,  Lightning strikes tank battery in northwest Oklahoma City,  June  07,  2023


後 記: 初めは622日の落雷によるタンク爆発・火災の情報を得ようとインターネットで検索していったら、別なタンク爆発・火災の事例があることがわかりました。いずれもオクラホマ州の事例で、しかもオクラホマ・シティの周辺であり、情報がこんがらかりました。しかし、622日の事故情報は市の消防署がSNSで動画投稿したものです。日本では、タンクの事故を消防署などがSNSで動画投稿するなどは考えられません。メディアが縮小傾向にある中、情報の伝達の場として考える時期ではないでしょうか。 

2024年3月13日水曜日

安価なドローンが化学テロの脅威となる理由

 今回は、タンク設備の事故ではなく、2023年暮れにThebulletin.orgHazmatnation.comに掲載された「Why cheap drones pose a significant chemical terrorism threat」(安価なドローンが重大な化学テロの脅威となる理由)を紹介します。

< はじめに >

■ 2023年初め、英国警察は、イラクやシリアで領土を支配していたテロ組織イスラム国に提供するためにドローン(無人航空機)を設計・製造したとして、モハマド・アル・バレド(Mohammad Al-Bared)を逮捕した。3Dプリンターで作られたドローンは化学兵器や爆発物を運ぶように設計されており、アル・バレドの自宅を捜索したところ、化学式や化学兵器の製法が書かれたノートが発見された。当局によると、機械工学の博士課程に在籍していた研究とは無関係だという。アル・バレドは、偽装会社を使って製造していた武器を紛争地帯に運ぶ計画を立てていた。  

■ アル・バレドはテロ行為準備罪で9月に有罪が確定したが、ドローンの使用を計画した最初のテロリスト予備軍ではない。このような計画の歴史は、日本の終末カルト集団であるオウム真理教が1993年頃に化学兵器や生物兵器を使った攻撃を想定し、遠隔操作のヘリコプターを使った実験を行ったことに遡る。ドローンは1935年に英国で開発され、1980年代には民間でも活用され始めていた。結局、オウム真理教のグループは、ドローンを使わずに神経ガスのサリンを東京の地下鉄に散布し、死者14人、負傷者約6,300人を出すテロ攻撃を行った。オウム真理教はドローンを使うことができなかったが、それ以降、世界のドローンの技術は著しく進歩している。

■ 比較的安価なドローンは、ウクライナ戦争からガザ地区でのイスラエルとハマスの紛争に至るまで、戦争や紛争の主役になりつつある。ドローンはかつては富裕で強力な軍隊のものだったが、今では安価な民生用ドローンを戦闘に使用することが可能になっている。少し手を加えれば、高度な防空網さえもすり抜けることができる。アル・バレドの事件が示すように、ドローンは化学テロの脅威になっている。ドローンは、噴霧器を装備して化学兵器になり得るし、化学プラントへの爆弾攻撃に使われる可能性もある。また、ドローンは有力な攻撃支援を提供することができ、たとえば、攻撃を計画・実行する際の偵察業務を支援したり、治安機関の対応状況をモニタリングしたり、テロ活動の宣伝に使うこともできる。

< 安価に化学攻撃 >

■ ドローンは化学兵器を運ぶのに優れた手段である。野外コンサートやスタジアムなど混雑した場所の上空を飛行し、集まった人々に化学兵器を散布することが可能である。商用ドローンの積載量は小さいため被害は限定的だが、低空飛行で密集した人たちを標的にすることは大きな脅威となる。

■ 特に商用の農業用ドローンは化学兵器を運ぶのに適した設計になっている。農薬散布用のドローンはケミカルタンク、ポンプ、ホース、ノズルなどが装備されており、有毒な化学物質の液体を扱えるようになっている。テロを企てる者にとっては、何の憂いもなく完ぺきな製品を手に入れることができる。ドローンは最低1,500ドル(22万円)という低価格で購入でき、入手に当たって特別な認可を必要としない。

■ ドローン技術の向上によって、ドローンは化学兵器の運搬システムとしての実効性を高めている。インターネットによる電子商取引サイトのアマゾンで数千ドルで入手した趣味用の簡易なドローンでさえ、基本的なウェイポイント・ナビゲーション(Waypoint Navigation)が可能で、GPSGlobal Positioning System;全地球測位システム)によって誘導して事前に決められたルートを自律飛行できる。テロリスト組織は、集まった群衆の上に散布するルートを事前に計画し、化学物質を散布するドローンを飛ばせばよい。さらに、テロリストはおとりドローンを組み込むかもしれない。おとりドローンとは、化学兵器による攻撃から治安機関の注意をそらすため、武器を装備していない簡素なドローンである。また、現在では、商用ドローンであっても自律モードで作動し、オペレーターと直接やりとりせずに目標まで飛行できるため、ドローンとオペレーター間の接続を妨害する防御策は役に立たない。

■ 言うまでもなく、テロリストがドローンで化学兵器を使用する以前に、直面する大きな課題がある。化学兵器の入手である。サリン、VX、マスタードガスのような化学兵器をテロリストが入手するのは容易なことではない。テロリストはそれらを取り扱う知識だけでなく、専門的な機器、化学物質の材料、施設を必要とする。しかし、ハーバード大学医学部(Harvard Medical School)の研究者や私が指摘してきたように、鎮痛剤として使用されているフェンタニル(Fentanyl)は、従来の兵器用薬剤に代わる致死性のある代替品となる可能性がある。1990年代、国防総省と司法省はフェンタニルを無力化剤(催涙ガスのように一時的で生命を脅かさない作用のみを引き起こす薬剤)として研究したが、標的を無力化するか殺害するかの差は非常に小さいため、フェンタニルは安全ではないと結論づけた。現在、フェンタニルは闇市場においてそれほど難しくなく入手可能である。 実際、米国では麻薬としてフェンタニルを入手して過剰摂取による事故が増えているという。

< 弱点が多く隙すきだらけの対応策 >

■ ドローンは化学兵器を運ぶために使用する以外にも、直に化学施設を攻撃するという方法がある。

1984123日、インドのボパールにあるユニオン・カーバイド・インディア・リミテッド(Union Carbide India Limited UCIL)の殺虫剤工場において、安全上の欠陥によって猛毒のイソシアン酸メチル40トンが放出してしまう事故が発生した。インドのマディヤ・プラデシュ州政府は、この事故によって3,787人が死亡し、574,366人が負傷したと報告した。他の推計では、死者数は16,000人にのぼるという。

 同じように化学物質の放出を引き起こせば、テロリストにとって大量殺戮を目的とした化学攻撃を実行する最も簡単な方法である。テロリストは一般に出回っていない特別な化学物質を入手する必要はなく、化学施設において災害を引き起こすのに十分な量の爆弾を爆発させるだけでよい。米国サイバーセキュリティ・インフラストラクチャ・セキュリティ庁(Cyber​​securityInfrastructure Security AgencyCISA)は、米国内の高リスク化学施設を3,200箇所指定した。

■ 米国議会は2006年に化学施設テロ対策基準を可決し、サイバー・セキュリティ対策や物理的セキュリティ対策、人の身元確認、適合性調査など化学施設におけるセキュリティ対策を全国的に義務付け、施行していたが、この法律には航空攻撃に対して最小限の要件しかない。しかし、2023728日、米国議会は化学プラントをテロから守るための法律のひとつを失効することを認めた。米国サイバーセキュリティ・インフラストラクチャ・セキュリティ庁はもはや化学施設のコンプライアンス(適合性)すらモニタリングできず、期限切れとなった法律の最低限の要件でさえも執行できなくなった。

 注記;失効になったのは化学施設テロ対策基準の規制“6 CFR Part 27”で、スクリーニング閾値量や濃度を超える化学物質を保有する施設に適用されるもので、失効の影響は, EPA Chemical Facility Anti-Terrorism Standards Lapse」(February 21, 2024)を参照。

■ ドローンによる施設への攻撃は容易になっている。たとえば、ドローンはフェンス、車止めポール(ボラード)、ゲートなど施設の物理的な障壁の上を飛行して、化学物質の貯蔵タンクに爆弾を投下すれば、化学物質を放出することができる。現在の連邦法では、民間部門がドローン撃破システムを運用することを認めていないため、化学プラントの事業所は脅威を特定し、連邦法執行機関に連絡し、警察官の到着を待つ必要があり、それから携帯式妨害装置などによって脅威を無力化することになる。趣味用のドローンでさえ時速100マイル(時速160km)以上で飛行できるので、積極的な攻撃者であれば目的を成就する可能性が高い。

■ テロリストがドローンを使って化学施設への攻撃を準備する可能性もある。たとえば、2019年にニュージーランドのクライストチャーチで51人が死亡した襲撃事件では、テロリストのブレントン・タラントは事前にドローンを使って偵察を行っていた。同様に、化学プラントの攻撃を計画するテロリストが施設のまわりをドローンで飛行させ、警備員の動きを探り、周辺の地図を作成し、監視カメラの位置を探したりして、ドローンによる攻撃の経路を見出すことができる。施設の管理者がドローンを発見しても、ドローン趣味者の不注意か、法律に疎い人の仕業と片づけてしまうかもしれない。

< 何をすべきか >

■ テロの脅威を軽減するために、議会は化学施設テロ対策基準プログラムを再び認可する必要がある。化学プラントは健全でしっかりしたセキュリティ基準を持っておく必要があり、連邦政府機関によって実行性をモニタリングされるべきである。また、議会は、センサ・通信ユニット・コントローラといった機器を用いたセンサネットワークの確立や、連邦航空局の無人交通管理システム計画のような情報共有化システムへの参加など、航空状況把握に関する新たな要件を入れた基準に更新すべきである。商用ドローンが幅広く普及するにつれ、化学施設の所有者や運営者にドローンに関する情報を提供することは、懸念する必要のないドローンを知る上で役に立つ。

■ また、議会は、重量55ポンド(25㎏)を超える農業用ドローンを買う人に購入前に連邦航空局の認証を受けることを義務付けるべきである。すでに農業用ドローンの操縦にはPart137UAS認証が義務付けられているので、正規の購入者への影響は最小限にとどまる。さらに、州・地方・連邦の法執行機関は、農業用ドローンに関して過激派の関心を監視すべきである。すでに知られているテロリスト集団が農業用ドローンや市販の多機能なドローンを入手しようとしている場合、危険信号を発して捜査できるようにすべきである。これには、プレシジョンホーク社(PrecisionHawk)やハイリオ社(Hylio)のようなドローン製造者と提携して、不審な取引に関する情報を共有することも含まれる。また、国際社会は、大規模な石油タンク基地を有する国への農業用ドローンの輸出規制と監視を検討すべきである。これは、化学兵器や生物兵器の拡散を防ぐために、米国を含む国々間で輸出規則を調整しているオーストラリア・グループのような国際協定になっていくかもしれない。


■ 隠れた化学テロリストにとってドローンは非常に都合の良いものである。ドローンは安価で、斬新的で且つ効果的な運搬システムとしての機能をもっている。地上の警備設備の上を飛び越えて化学施設を攻撃することもできるし、攻撃前の偵察や攻撃結果の撮影をすることもできる。化学テロを阻止するためには、ドローンの進歩や用途拡大を考慮した新たな取り組みを必要とするだろう。大規模なドローン配送などの業務を可能にする規制や技術の進歩と同様、新たな取り組みの実現には時間がかかるかもしれない。

少なくとも政策立案者は、化学施設を攻撃から守るためにせっかく制定した米国のプログラムを失効させるなどして、化学テロリズムのリスクを増大させることは避けるべきである。とはいえ、最近の議会をみていると、これは難しい注文かもしれないが。

補 足

■ 日本におけるドローンによる事件としては、2015年の首相官邸無人機落下事件がある。2015422日に内閣総理大臣官邸の屋上に放射性物質を搭載したドローンが落下した。発見されたドローンは中国企業のDJI社製のPhantomであり、同機種は2015126日に米国で泥酔したシークレットサービス職員がホワイトハウスに落下させた機種である。 犯人は福井県に住む元航空自衛隊員(当時40歳)で福井県警察に自首し、反原発を訴えるために福島の砂100gをドローンを使って飛行させたと自供した。さらに驚くことにはドローンを飛ばしたのは49日で、首相官邸が発見したのは13日後の422日だった。この事件を契機にドローンの法整備の必要性が高まり、航空法は改正された。しかし、2016年に施行されたドローン規制法では、内閣総理大臣官邸などの国の重要施設、外国公館、原子力事業所の周辺地域の上空でドローンを飛行させることが禁止されただけである。

所 感

■ ドローンは有益な機器であり、このブログでもつぎのような事例を紹介した。

  20204月、「ドローンによる貯蔵タンク内部検査の活用」

 ● 20213月、「危険物質の事故対応で、もはやドローンは欠かせない!」

 ● 20222月、「欧州における自律型ドローンによる石油ターミナルの検査」

 ● 20235月、「欧州ベルギーの港湾施設において自律型ドローンのネットワークを構築」

■ 一方、ドローン(無人航空機)が戦争に使用され始め、貯蔵タンクへのテロ攻撃の観点から取り上げてきた。主な事例はつぎのとおりである。

  20199月、「サウジアラビアの石油施設2か所が無人機(ドローン)によるテロ攻撃」

 ● 20235月、「ロシアの石油貯蔵施設が2日連続で無人航空機(ドローン)攻撃によりタンク火災」

 ● 20241月、「ロシアの石油貯蔵施設が無人航空機(ドローン)攻撃によるタンク複数火災」

 過去の事例を見てくると、ドローン(無人航空機)による貯蔵タンクへの攻撃性が進化し、戦術上も進化している。特に、20241月の事例は容量1,500KLクラスと比較的小型タンクであるが、一度に4基が被災している。

■ 今回の資料は、貯蔵タンクだけでなく、化学施設へのテロ攻撃として広くとらえ、その脅威を指摘している。他国の戦争時の話として軽んじやすいが、オウム真理教の事件や首相官邸無人機落下事件を見ていると、日本でドローンによるテロ攻撃は起こらないとはいえない。ドローン(無人航空機)が急速に進歩している時代に、ドローン規制法が首相官邸上空でのドローンを飛行禁止にしているだけでは対応が不十分で、テロリストを念頭にしたテロ対策基準が必要なことを認識させる。


備 考

 本情報はつぎのインターネット情報に基づいてまとめたものである。

    Thebulletin.org, Why cheap drones pose a significant chemical terrorism threat, By Zachary Kallenborn, November 21, 2023

     Hazmatnation.com, Why cheap drones pose a significant chemical terrorism threat,  December 14, 2023

     Williamsmullen.com, EPA Chemical Facility Anti-Terrorism Standards Lapse, February 21, 2024

     Counterterrorism.police.uk, Man found guilty of terror charge after building drone to give to ISIS,  September 28, 2024

     Armscontrolwonk.com, DEATH CULT DRONES, MAYBE, May 26, 2022

     Drone-tech-academy.jp,  ドローン武器化を違法行為として取締り制度, August 29, 2019

    Mainichi.jp,  ドローン官邸落下から5年 進んだ法整備、広がる活用 安全管理にはなお課題, May  23, 2020


後 記: 本論では化学施設へのテロ対策基準が必要なことを指摘していますが、最後に米国議会がひどくて情けない状況の憂いで終えているのが考えさせられます。(米国議会だけでなく、日本の国会も同じでしょうという声が聞こえてきそうですが)

 まとめに当たっては、最近の専門用語について勉強を兼ね、少し補足するような文章を入れました。また、過去の事例などにも画像を入れて関心をもってもらうよう工夫しました。たとえば、1995年のオウム真理教地下鉄サリン事件は30年も前のことなので、若い人(といっても40歳くらいでも)には記憶にない昔話でしょう。4月に事件がありましたが、私自身は3月まで霞が関を通る地下鉄を利用していたので、早い時期に事件が決行されていたら、遭遇していたかも知れないという怖い思い出があります。

2024年3月3日日曜日

ブラジルのペトロブラス社の石油生産施設で爆発・火災、負傷者1名

 今回は、202426日(火)、ブラジルのバイーア州アラサースにあるペトロブラス社の石油生産施設で爆発があり、炎上し、負傷者が1名出た事例を紹介します。

< 発災施設の概要 >

■ 発災があったのは、ブラジル(Brazil)のバイーア州(Bahia)アラサース(Araçás)にある石油会社;ペトロブラス社(Petrobras)の石油生産施設である。アラサースには国営企業の生産油井がある。

■ 事故があったのは、石油生産施設内にある石油設備である。

<事故の状況および影響>

事故の発生

■ 202426日(火)朝、ペトロブラス社の石油生産施設で爆発があり、火災となった。

■ 濃い黒煙が空に広がる中、石油設備は炎につつまれた。

■ 発災に伴い、ペトロブラス社の自衛消防隊が出動したほか、公的消防が出動した。

■ 通報があった消防署の消防隊が現場に到着したときには、すでに火災は制圧されていた。

■ 事故に伴う負傷者は出なかったと報じられている。一方、労働組合によると、消火活動中に民間消防士1名が負傷し、アラゴイニャス市の病院に搬送されたという。負傷の程度は軽く、元気にしているという。

■ ペトロブラス社によると、この地域では火災の歴史はなく、同社の事業は国際安全基準に従っており、国内で施行されている管轄機関や法律に関連する基準を満たしていると報告した。

■ ユーチューブなどでは、火災などの映像が投稿されている。主なものはつぎのとおり。

  Youtubena boa esperança Araçás BA2024/02/07

 ● InstagramURGENTE: na manhã dessa terça-feira (6),・・・・」 (2024/02/07

被 害

■ 石油生産施設の石油設備が損傷した。被害の対象や程度は分からない。

■ 消防活動中の消防士1名が負傷した。

< 事故の原因 >

■ 火災の原因はわからない。

< 対 応 >

■ ペトロブラス社の従業員が石油(ガス)をタンクに移送するバルブ(チャンネル)を閉止した。これで火は鎮火した。

■ 27日(水)、労働組合は、消火活動を監視しており、事故を調査するための調査委員会の設置を要求し、石油労働者の健康と安全が確実に確保されるよう安全規則の順守を求めた。

補 足

■「ブラジル」(Brazil)は、正式にはブラジル連邦共和国で、南アメリカに位置する人口約21,340万人の連邦共和制国家である。州はブラジル連邦単位(Unidades Federativas do Brasil) から成り立っており、ある程度の自治権 (自治、自主規制、自己徴収) を備えた組織で、独自の政府と憲法を備えており、これらが集まって連邦共和国を形成している。ブラジルには26の州があり、各州政府は行政府、立法府、司法府をもっている。

「バイーア州」(Bahia)は、ブラジルの東部に位置し、人口約1,414万人の州である。ブラジル26州の中で、面積ではブラジルで5番目に広く、人口では4番目に多い。

「アラサース」(Araçás)は、バイーア州の東部にあり、バイーア州にある417の自治体のひとつである。アラサースには、陸上原油の生産施設が数多くある。

■「ペトロブラス社」(Petrobras)は、1953年にアマゾンのウルクー油田開発のために設立され、現在は南半球最大の石油掘削会社で広く石油産業に携わっている。ブラジルのリオデジャネイロ市に本社を置き、慣例としてブラジル石油会社あるいはブラジル石油公社と表記されることのある半官半民企業である。

■「発災設備」は、石油タンクと報じられているが、はっきりしない。火災写真を見ても、石油タンクが燃えていると判断しがたい。また、「ペトロブラス社の従業員が石油(ガス)をタンクに移送するバルブ(チャンネル)を閉止した。これで火は鎮火した」と報じられており、石油タンクが爆発して炎上したのであれば、このような作業はありえない。石油生産施設内の石油タンク以外の設備(配管または容器)が爆発・炎上したのではないだろうか。バルブ閉止で火災が制圧できたのでれば、原油の液化ガス系が燃焼源であると思われる。

所 感

■ 今回の設備火災の燃料源や要因はわかっていない。石油生産施設内の石油タンク以外の設備(配管または容器)の石油液化ガスが爆発・炎上し、バルブ閉止で火災が制圧できたのではないだろうか。

■ 今回の事例では消火活動の状況もわからない。メディアによっては、消防隊による放水作業の写真を入れているところがあるが、今回の消火作業を示していると判断しがたい。このブログでは、消火作業の写真は採用しなかった。


備 考

 本情報はつぎのインターネット情報に基づいてまとめたものである。

     G1.globo.com, Tanque de óleo da Petrobras pega fogo no interior da Bahia, February 07,  2024

     Seligaalagoinhas.com.br, Incêndio de grandes proporções atinge planta da Petrobras em Araçás,  February 06,  2024

     Midiabahia.com.br, URGENTE: incêndio de grandes proporções atinge planta da Petrobras em Araçás,  February 06,  2024

     Ibirataianoticias.com.br, Tanque de óleo da Petrobras pega fogo em Araçás cerca de 116 quilômetros de Salvador, February 08,  2024

     Sindipetroba.org.br, Incendio atinge estacao de petroleo em Aracas e Sindipetro Ba cobra apuracao do acidente, February 07,  2024 


後 記: 今回の事故に関する記事はあまり多くなかったので、内容は薄くなりますが、まとめは楽に終わると思いました。ところが、意外に時間がかかりました。まず、発災場所です。「ブラジルのバイーア州アラサースにあるペトロブラス社のファゼンダ・ボア・エスペランサ基地」としたのですが、グーグルマップで調べると、アラサースとボア・エスペランサは州が異なり、まったく別な場所でした。また、場所の特定として参考にしたのが、消防活動の写真です。放水の最終段階とはいえ、発災場所や焼けた跡が写っていませんし、石油生産施設としては珍しい球形タンクが写っています。結局、消防活動の写真は参考にしないこととしました。なにかモヤモヤした事例でした。