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2019年6月21日金曜日

米国ルイジアナ州の油井用タンク施設で消火活動中にタンク噴き飛ぶ

 今回は、2019年6月7日(金)、米国ルイジアナ州ボージャー教区のプレイン・ディーリング郊外にある油井用のタンク施設でタンク火災があり、その消火活動中に別なタンクが空高く噴き飛んだ事故を紹介します。
(写真はHazmatnation.comから引用)
< 発災施設の概要 >
■ 事故があったのは、米国ルイジアナ州(Louisiana)ボージャー教区(Bossier Parish)のプレイン・ディーリング(Plain Dealing)郊外にある油井用のタンク施設である。

■ 発災があったのは、ワイズ通りの南で、ルイジアナ州高速3号線(ハイウェイ)の10800区近くで未舗装の道路沿いにあるタンク施設である。施設には、石油タンクが3基あった。
ブレイン・ディーリング郊外のルイジアナ州高速3号線10800区付近 
(写真はGoogleMapから引用)
< 事故の状況および影響 >
事故の発生
■ 2019年6月7日(金)午前6時頃、タンク施設で石油タンクの1基に火災が起こった。

■ 発災に伴い、プレイン・ディーリング消防署の消防隊が出動した。消防隊は、あとの2基のタンクの冷却放水を行うとともに森林地区へ延焼しないように努めた。
(写真はArklatexhomepage.comから引用)
■ そのとき、爆発が起こった。消防士は地面に叩きつけられ、タンク1基が空高く噴き飛んだ。プレイン・ディーリング消防署の消防隊長によると、「非常に高くまで飛び、まるで空中を舞う50ガロン樽(189リットル)のようにだった」と語っている。現地の道路にいた保安官によると、交通整理をしていたとき、爆発を見たといい、「最初に煙が見え、それからタンクが空高く飛んでいた。そのとき頭をよぎったのは、消防士の身に何かが起こったのではないかと思った。しかし、奇跡的に何も起こっていなかった」と語った。

■ タンクはルイジアナ州高速3号線から離れたところに落下した。爆発は消防隊の資機材の一部に損傷を与えた。消防士たちは無事だったが、さすがに動揺していた。

■ 爆発事故による負傷者は出なかった。

■ 近くの住民や道路にも影響は無かった。タンクの所有者は現場に来ていた。

■ その後、タンクの火災は消された。(鎮火時間は報じられておらず、分からない)

被 害
■ タンク1基が焼損し、別なタンク1基が爆発で破損した。内部の油が焼失した。

■ 事故に伴う負傷者は出なかった。 

< 事故の原因 >
■ 最初のタンク1基目の火災原因は分からない。

■ 爆発原因は、1基目のタンク火災の炎が2基目のタンクのベーパー部に引火したものだとみられる。
(写真はBossierpress.comから引用)
(写真はBossierpress.comから引用)
(写真Bossierpress.comから引用)
             爆発して落下したタンク破片 (写真はBossierpress.comから引用)
< 対 応 >
(写真はKtbs.comから引用)
■ 鎮火後、消防士たちは集まり、「神は手を差し伸ばし、タンクを私たちから遠ざけてくれた」と祈りを捧げた。

 補 足
■「ルイジアナ州」(Louisiana)は、米国の南部のメキシコ湾に面しており、人口約453万人の州で、州都はバトンルージュで、最大の都市はニューオリンズである。
 「ボージャー教区」(Bossier Parish)は、日本ではボージャー郡とも呼ばれ、ルイジアナ州北西部に位置し、人口約125,000人の郡である。
       ルイジアナ州の位置  (写真はNizm.co.jpから引用)
 「プレイン・ディーリング」(Plain Dealing)は、ボージャー教区の北部に位置し、人口約1,000人の町である。夏季は暑いところで、過去には46℃(1936年)を記録した。
 なお、ルイジアナ州では、つぎのような事故や対応事例がある。
  
■ 油井用タンク施設の所有者は報じられていない。現場に来ていたというので、個人の独立会社と思われる。

■ 「発災タンク」の仕様(大きさ)は報じられていない。グーグルマップで発災場所を調べてみると、ルイジアナ州高速3号線(ハイウェイ)10800区近くにタンク施設があるが、2基のタンクと別に南に1基のタンクがある。ここより南に約500mほどのところに3基並んだタンクがある。発災時の写真と見比べると、まわりの状況が少し異なり、この3基が発災タンクと断定ができない。ルイジアナ州高速3号線10800区近くのタンク施設に最近になってタンクが増設された可能性はある。
       ルイジアナ州高速3号線10800区近くにあるタンク施設 (写真はGoogleMapから引用)
 発災タンクが3基並んだタンクと仮定すれば、グーグルマップによるとタンク直径は約3.5mである。高さを4.5mとすれば、容量40KL級タンクとなる。被災写真を見ると、発災タンクはこのクラスだと思われる。
 一方、消火活動中のタンク3基の写真と鎮火後のタンク2基の写真を見比べると、右端にあったタンクが噴き飛んだものとみられる。しかし、2つの写真をよく見ると、燃焼によるタンク外板の変色具合が一致しない。
消火活動中のタンク3基と鎮火後のタンク2
(写真は、左;Hazmatnation.com、右; Shreveporttimes.comから引用)
所 感
■ 初めのタンク火災の要因については何ら言及されていない。「NASAによる世界の雷マップ」によれば、ルイジアナ州は、テキサス州などと並び、雷の多い地域であり、落雷による火災または静電気による火災とみるのが通常だろう。一昨年8月の「米国ルイジアナ州の油井用タンク施設で落雷による火災」の所感に、「米国の原油・天然ガスの油井施設が好調の背景から、メキシコ湾岸でのタンク火災の頻度の高まる可能性があるのではないだろうか」と記載したが、2018年8月、2019年2月に引き続き3件目のタンク火災が起こったという印象である。

■ タンクが爆発して噴き飛んだ事故を紹介した例は、つぎのとおりである。
 消火活動中に噴き飛ぶというめずらしいタンク火災である。報道でも、このような事故で負傷者が出なかったことに焦点が当たり、なぜ爆発が起きてしまったかという消防活動中の反省や教訓が聞かれない。
 タンク間距離がほとんど無い3基並んだタンクの配置から考えれば、延焼するのは当然であろう。噴き飛んだタンクはおそらく油がわずかで、空間に可燃性蒸気が充満していたために爆発して飛んだものと思われる。消防隊はタンク保有者からどんな情報を受け取っていたのだろうか。
 
■ 容量40KL級のタンク火災であれば、積極的消火戦略をとってもよかったはずである。泡薬剤が無かったためか積極的消火戦略はとらず、消極的消火戦略が選択され、冷却放水を実施している。しかし、発災写真を見る限り、中途半端な冷却放水だった。この種の油井用タンク火災では、燃え尽きさせる不介入戦略をとることがある。冷却放水を行うにしても、無人の固定ノズルを用いて人を近づけないように配慮する。幸い、人身事故が無く良かったといえるが、消火戦略上、積極的消火戦略・消極的消火戦略・不介入戦略の選択が適切に行われず、消防戦術も適切で無かったように感じる。

備 考
 本情報はつぎのインターネット情報に基づいてまとめたものである。
  ・Hazmatnation.com,  Plain Dealing Tank Fire Sends Oil Tank into Air,  June 07,  2019
    ・Arklatexhomepage.com,  Oil Tank Catches Fire in Plain Dealing Area,  June 07,  2019
    ・Fairfieldsuntimes.com,  Oil Tank Catches Fire, Explodes near Plain Dealing,  June 07,  2019
    ・Shreveporttimes.com,  Fire Causes Explosion at Oil Well Site in Bossier Parish,  June 10,  2019
    ・Bossierpress.com, Video and Photos: Disaster Averted after Oil Well Explodes in North Bossier Parish,  June 08,  2019
    ・Ktbs.com,  Oil Tank Catches Fire, Explodes near Plain Dealing,  June 07,  2019


後 記: 厳しい所感を書きましたが、プレイン・ディーリングの町は人口約1,000人で、おそらく消防署はボランティア型消防署でしょう。今回のようなタンク火災では、ボージャー教区(人口約125,000人)の消防署の資機材に頼らざるを得ないと思います。
 今回のタンク火災や報道を通じ、米国(の地方かな)との認識の落差を感じます。米国の経済が良好を保っている要因のひとつは、原油・天然ガス生産が輸出できるくらい好調だからです。しかし、今回の発災写真を見れば、油タンクのまわりは木々というより森林の状態です。まさに開拓時代と同じです。日本だと、こんな状態を放っておくことはないでしょう。貴重な石油という日本人の感覚ではなく、どこからでも湧き出る石油は薪になる森林の木と同じなのでしょうか。事故の報道を見ても、地表火くらいの感覚で、原因は深く追求されず、火が出ても日常の当たり前と言った感じです。事故が無かったことを神に感謝の祈りを捧げるのは米国らしさを感じる良いことですが、その前にやらねばならないことがあるだろうと考えるのは、日本人の島国根性なのでしょうかね。

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