今回は、2025年9月29日(月)、ロシア連邦クリミヤ共和国フェオドシヤにある石油貯蔵所のJSCマリン・オイル・ターミナルでタンク火災が起こった事例を紹介します。
< 発災施設の概要 >
■ 発災があったのは、ロシア連邦(Russia)クリミヤ共和国のフェオドシヤ(Feodosia)にある石油貯蔵所のJSCマリン・オイル・ターミナルである。
クリミヤ半島は“2014年クリミア危機”の際にウクライナからの一方的独立宣言を行った後、連邦構成主体としてロシアに編入されたが、国連総会決議では、ロシアによるクリミア併合の無効性が採択されている。
■ 事故があったのは、 JSCマリン・オイル・ターミナル内にあるロシア連邦(Russia)クリミヤ共和国のフェオドシヤ(Feodosia)にある石油貯蔵所のJSCマリン・オイル・ターミナルである。
<事故の状況および影響>
事故の発生
■ 2025年9月29日(月)午後3時頃、フェオドシヤにある石油貯蔵所で火災が発生した。
■ 発災にともない、消防隊が出動した。消火活動には消防士69名と22台の消火機材が投入された。
■ 石油貯蔵所の従業員は危険区域からの退避を促され、避難した。
■ 火災は、空とみられていたタンクに残っていた燃料油が要因で、タンクに火がついた。空のタンク3基のうち1基が火災に遭ったという。
■ 火災は、ディーゼル燃料の入ったタンクなど637㎡の面積にわたって拡がった。
■ 事故にともなう負傷者はいなかった。
■ この石油貯蔵所はクリミアのガソリンスタンドへの燃料供給サイクルには関与しておらず、クリミア半島でロシア軍に燃料や潤滑油を供給する拠点で、この点、市民への影響は少ないとみられる。
■ この事故は、メンテナンス作業中、溶接手順のミス(違反)が原因であるという。
被 害
■ 貯蔵タンク1基が損傷した。
■ 負傷者はいなかった。
< 事故の原因 >
■ メンテナンス作業中、溶接手順のミス(違反)が原因であるという。
< 対 応 >
■ 地元当局は、火災はすぐに鎮火したと発表したが、実際は発災から翌日の9月30日(火)午前8時頃、消防隊が石油貯蔵所の貯蔵タンクの火災を消し止めた。
■ フェオドシヤにあるJSCマリン・オイル・ターミナルは、石油製品の取扱量でクリミア半島最大の規模を誇っている。しかし、2024年10月、大規模な火災が発生し、鎮圧に数日かかった。当局は人為的緊急事態を宣言し、現場付近の住民1,000人以上が避難するという事故があった。
■ さらに、2025年10月6日(月)夜と10月13日(月)夜、2度のウクライナによる無人航空機(ドローン)攻撃の結果、JSCマリン・オイル・ターミナルの燃料タンク11基が破壊された。この際、石油貯蔵所は大規模な火災が発生し、炎は数km先まで見えたという。攻撃で損傷したタンクに貯蔵されていたとみられる石油製品の総量は約193,000KLに上るという。このタンク破壊状況は衛星画像によって確認されている。2022年に石油貯蔵所の敷地内に設置されたパンツィリ防空システムは、ウクライナによる攻撃をいずれも防ぐことができなかった。
■ 「ロシア連邦」(Russia)は、通称ロシアと称しており、ユーラシア大陸北部に位置し、人口約1億4,300万人の連邦共和制国家である。
「クリミヤ半島」は、2014年“クリミア危機” の際にウクライナからの一方的独立宣言を行った後、連邦構成主体としてロシアに編入され、クリミア州ごと「クリミヤ共和国」と称されている。なお、国連総会決議では、ロシアによるクリミア併合の無効性が採択されている。
「フェオドシヤ」(Feodosia)は、クリミア半島の黒海沿岸に位置し、人口約66,000人の港湾都市である。
■「JSCマリン・オイル・ターミナル」(JSC Marine Oil Terminal)は、フェオドシヤのゲオロギチェスカヤ通りに位置しており、クリミア共和国の国営単一企業「Chernomorneftegaz」が100%所有している。クリミア共和国によると、同社は石油および石油製品の輸送、貯蔵、積み替えを行う共和国最大の企業で、貯蔵所の容量は258,000KLである。
■「発災タンク」は、ディーゼル燃料用に使用されていたものであるが、大きさなどの仕様は分からない。なお、2025年10月6日・13日の無人航空機(ドローン)による攻撃でタンクが破壊されたが、ユーチューブには破壊タンクの状況が写されており、下の写真に示す。
所 感
■ 事故原因は、メンテナンス作業中の溶接手順のミス(違反)だという。溶接手順やミス(違反)の詳細内容はわからない。人身事故ではなかったが、米国化学物質安全性委員会(CSB)の「タンク内外の火気工事における人身事故を防ぐ7つの教訓」(2011年7月)としてまとめられたつぎのような項目のいずれかに該当するような事故ではなかったかと思われる。
①火気作業の代替方法の採用 ⑤着工許可の発行
②危険度の分析 ⑥徹底した訓練
③作業環境のモニタリング ⑦請負者への監督
■ 消火活動の詳細はわからないが、積極的戦略をとり、消火活動には消防士69名と22台の消火機材が投入されている。おそらく、泡消火作業によって消したものだと思われる。
備 考
本情報はつぎのインターネット情報に基づいてまとめたものである。
・Donpress.ru, На нефтебазе в Феодосии произошел пожар, September 29,
2025
・Crimea.ria.ru, Пожар вспыхнул на нефтебазе в Феодосии - что
известно, September 29, 2025
・Crimea24tv.ru, На нефтебазе в Феодосии произошёл пожар из-за
сварочных работ, September 29, 2025
・Tass.ru, На нефтебазе в Феодосии произошло возгорание, September 29,
2025
・Gorod24.online, Пожар произошел на Феодосийской нефтебазе из-за
нарушения технологии сварочных работ,
September 29, 2025
・Kommersant.ru, В крымской Феодосии горит нефтяной терминал, September 29,
2025
・Rbc.ru, На нефтебазе в Феодосии загорелась топливная емкость, September 29,
2025
・Interfax-russia.ru, Пожар на нефтебазе полностью потушили в
Крыму, September 30, 2025
・Crimea.ria.ru, Пожар на нефтебазе в Феодосии потушили, September 30,
2025
・Crimea-news.com, Пожар на нефтебазе в Феодосии и разрешение на удары
вглубь РФ: главное, September 29, 2025
・Investigator.org.ua, Две атаки дронов
уничтожили на Феодосийской нефтебазе 11 нефтяных резервуаров (спутниковые
фото), October 18, 2025
・Pravda.com.ua, Генштаб подтвердил повторный
удар по нефтяному терминалу в Феодосии: повреждены 16 резервуаров, October 18,
2025
・Uatv.ua, Бензиновый коллапс в Крыму: удары по
Феодосийской нефтебазе — обоснованная военная стратегия ВСУ, October 16,
2025
・Youtube.com, Eleven Oil Tanks Destroyed At Feodosia Oil Depot In Two
Drone Strikes This Week!, October
22, 2025
後 記: 今回のタンク火災事故の記事に下のような被災写真が付いていましたので、標題の写真として使おうと思いました。この種の写真は消防署からの提供によるものだと思っていましたが、それ以外のメディアの記事にはタンク火災の写真はありません。調べているうちに、昨年の別な場所のタンク火災写真であることがわかりました。だまされる方が悪いのでしょうね?
ところで、タンク事故から半月後に無人航空機(ドローン)攻撃によって石油貯蔵所が破壊されてしまいました。このブログでは戦争によるタンク事故は基本的に取り上げないようにしていますが、今回は取り上げざるを得ない状況でした。しかし、壊滅的な石油貯蔵所の状態を見れば、なにか虚しさを感じます。










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