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2023年7月25日火曜日

イランの製油所でタンクローリーによるプラント内の石油タンクが火災、負傷8名

 今回は、2023710日(月)、イランのホルモズガーン州バンダル・アッバスにあるアフタブ・オイルリファイニング社のバンダル・アッバス製油所において石油原料を積んだタンクローリーの火災事故をきっかけに製油所の石油タンクに延焼して火災に至った事例を紹介します。

< 発災施設の概要 >

■ 発災があったのは、イラン(Iran)のホルモズガーン州(Hormozgan)バンダル・アッバス(Bandar Abbas)の工業地帯にあるアフタブ・オイルリファイニング社(Aftab Oil Refining Co.)のバンダル・アッバス製油所である。製油所の精製能力は30万バレル/日である。

■ 事故があったのは、製油所内のプラント内にある石油タンクである。

<事故の状況および影響>

事故の発生

■ 2023710日(月)午後3時頃、プラント内にある石油タンクで爆発が発生し、隣接する石油タンクも爆発した。爆発した石油タンク2基は引き続いて火災になった。

■ 発災に伴い、消防隊が10台の消防車とともに出動した。地元情報筋によると、消火活動が開始されたが、この区域には5基の石油タンクがあり、このうち2基の石油タンクが爆発後に火災になっており、さらに隣接する石油タンクが爆発する恐れがあると伝えた。

■ 火災を制圧しようとしていた消防士が負傷した。当初、4名といわれていたが、負傷した消防士は8名だという。

■ アフタブ・オイルリファイニング社は、火災により製油所の生産プラントが被害を受けたか明らかにしていない。

■ ツイッターには、製油所から黒煙が立ち昇っている動画が投稿されている。また、イランのジャーナリストクラブ通信社メディアYjc.irIsna.irには、火災の状況を撮った動画が掲載されている。



被 害

■ 製油所内のプラント内にある石油タンク2基が火災によって損傷した。内部の液が焼失(量は不明)した。 

■ 消火活動をしていた消防士8名が負傷した。 

< 事故の原因 >

■ 事故原因は調査中である。

 事業者は事故原因について、「製油所の操業区域内において、道路輸送とタンクローリーの交通過多により、同社の原料油供給における主要な問題点のひとつとされている石油原料を積んだタンクローリーの危険な運転により火災事故が発生し、製油所のタンクに延焼して火災に至った」と発表している。

< 対 応 >

■ 710日(月)、ホルモズガーン州の検察官が火災状況を確認するため、火災現場に立入った。

■ 火災は発災から3時間で消し止められ、石油タンクは冷却されているという。

■ 713日(木)、アフタブ・オイルリファイニング社は事故原因について、「製油所の操業区域内において、道路輸送とタンクローリーの交通過多により、同社の原料油供給における主要な問題点のひとつとされている石油原料を積んだタンクローリーの危険な運転により火災事故が発生し、製油所のタンクに延焼して火災に至った」と発表した。

補 足

■「イラン」(Iran)は、正式にはイラン・イスラム共和国といい、西アジア・中東に位置し、人口約8,792万人のイスラム共和制国家である。

「ホルモズガーン州」(Hormozgan)は、イランの南部に位置し、ホルムズ海峡に面した人口約178万人の州である。

「バンダル・アッバス」は、ペルシャ湾に面したイラン南岸に位置し、ホルモズガーン州の港湾都市で人口約53万人の都市であり、ホルモズガーン州の州都である。バンダル・アッバスは原油や石油製品の輸出拠点のひとつである。

 イランにおける事例は、つぎのとおりである。

  ● 20167月、「イランの石油化学工場でナフサ貯蔵タンク火災」

  ● 20167月、「イランの石油化学工場でまた貯蔵タンク火災」

  ● 201610月、「イランでサイバー攻撃が疑われる中、精油所でタンク火災」

  ● 20172月、「イランのテヘランで石油施設に落雷後、タンク火災」

  ● 20179月、「イランのハッカーがサウジアラビアの石油化学会社へサイバー攻撃」

  ● 20218月、「イランのハールク島にある石油化学でガソリンタンク火災」

■「アフタブ・オイルリファイニング社」(Aftab Oil Refining Co.)は、 2007年に設立されたイラン最大の輸出業者のひとつである。バンダル・アッバスに製油所を保有している。

 「バンダル・アッバス製油所」は、30万バレル/日の精製能力を持つ中東最大級の製油所で、バンダル・アッバス市近郊の地域に建設された。製油所への供給原料は、主にサルクーンガス処理プラントから移送される重質原油である。製油所製品の一部は輸出されており、残りは需要を満たすために地元市場に供給されている。各油種の公式容量は、ガソリン: 46,000 バレル/日、灯油・ジェット燃料: 37,000 バレル/日、炉用燃料: 67,000 バレル/日、軽油: 70,000 バレル/日、タール: 5,000 バレル/日、LPG: 7,000 バレル/日である。

■「発災タンク」についての情報はほとんどない。内容液、大きさ(容量、直径×高さ)などの仕様は報じられていない。被災写真から大きさは500KL前後の固定屋根式タンクとみられる。グーグルマップで製油所内を丹念に見ていったが、発災場所のほか発災タンクも特定できなかった。

所 感

■ 事業所によると、製油所の操業区域内において、道路輸送とタンクローリーの交通過多により、同社の原料油供給における主要な問題点のひとつとされている石油原料を積んだタンクローリーの危険な運転により火災事故が発生し、製油所のタンクに延焼し火災に至ったという。しかし、この発表内容は分かったようで、事故状況がはっきりしない。 

■ 被災写真をもとに推測すると、石油原料を積んだタンクローリーが荷下ろしのため、操業区域内の荷下ろし接続配管部に到着したが、石油原料を流出させ、何らかの引火源によって堤内火災を引き起こした。この堤内火災によって近くのタンクに延焼したのではないだろうか。タンクローリーの危険な運転の所為(せい)になっているが、事業所側の役割やタンクローリーの安全対策など多くの疑問がある。

■ 消防活動もよく分からない。消火活動中の消防士8名が負傷したが、どのような状況で負傷したのか分からない。一方、被災写真では床に使用した消火用の泡が見られるので、泡消火が行われたものとみられる。路面に消火水や消火泡が溜まっているので、排水系は閉じられ、構外に出さないような配慮がなされたと思われる。

 事故としては堤内火災とタンク火災が重なった対応の難しい事例であるが、発災から3時間で火災は消されており、この点からすれば、消防活動としては適切だったと思われる。ただし、消火活動によって消防士が負傷しており、人員配置や活動方法に無理があったのではないかという疑問もある。


備 考

 本情報はつぎのインターネット情報に基づいてまとめたものである。

    Ogj.com,  Operator reveals cause of fire at Iran’s Bandar Abbas refinery,  July  13,  2023

    Jp.reuters.com, UPDATE 3-Refinery fire at Iran's Bandar Abbas put out - state media,    July 10,  2023

    Tankstorage.com,  Fire at Iran Bandar Abbas Oil Refinery Under Control,  July 14,  2023

    Iranintl.com, Refinery Blaze Breaks Out In Iran's Persian Gulf Port,  July 10,  2023

    En.mehrnews.com, Fire breaks out in Iran's Bandar Abbas refinery,  July 10,  2023

    En.irna.ir, Tanker truck caused fire at Iran's second largest refinery,  July 11,  2023

    Theatlasnews.co, Large Fire Engulfs Aftab Oil Company Storage Tanks, Bandar Abbas Oil Refinery, Iran,  July 10,  2023

    Mehrnews.com,  آتش در پالایش نفت آفتاب بندرعباس مهار شد,  July 10,  2023

    Yjc.ir,  آتش سوزی در پالایشگاه نفت آفتاب بندرعباس /حریق اطفا شد+ فی,  July 10,  2023

    Aftabor.com,  جزئیات حادثه آتشسوزی در پالایش نفت آفتاب ,  July 10,  2023


後 記: 報道の自由化ランキング2023年では、イランは相変わらず最下位クラスで対象国180か国中177位です。若い学生が警察拘留中に死亡したことへの抗議活動に対する強圧的な弾圧により、「社会的背景」と「司法環境」のスコアがさらに低下しています。今回のタンク火災事故報道では、なにが事実なのかわからないほど報道によって伝える内容が違います。たとえば、事故による負傷者はいなかったという報道が結構ありました。事業所の人に負傷者はいなかったということで、消防士が負傷しても部署が違うということでしょうか。また、負傷した人数もバラバラです。このような中でブログでは事実(らしい)と思う記事だけを書きました。

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