今回は、2023年3月8日(水)、韓国の全羅南道麗水市にあるオイルハブコリア麗水㈱の石油タンク貯蔵所で容量80,000KLの原油タンクが保全工事の準備中に火災が発生し、負傷者2名が出た事例を紹介します。
< 発災施設の概要
>
■ 発災があったのは、韓国の全羅南道(チョルラナムド/ぜんらなんどう)麗水市(ヨス・シ/れいすい・し)新徳洞の国家産業団地にあるオイルハブコリア麗水㈱(Oil Hub
Korea Yeosu Co.,)の石油タンク貯蔵所である。
■ 事故があったのは、石油タンク貯蔵所内にある容量80,000KLの原油タンクである。原油タンクは直径69.4m×高さ24mであるが、発災当時、タンクに入っていた油は抜出され、保全工事の準備中だった。
<事故の状況および影響>
事故の発生
■ 2023年3月8日(水)午後1時20分頃、貯蔵所内にある原油タンクで火災が発生した。
■ 発災に伴い、消防署が出動し、消防士50名と消防車など装備18台を投入して消火活動が行われた。タンク内部に原油の残油があり、消火には時間がかかるものとみられる。
■ タンクには自動の冷却用散水設備が設置されているほか、消防用ノズルを使用してタンク側板に水をかけている。
■ 発災場所の近隣の村に住民50人余りが居住しているが、爆発の危険は低いと見て住民の避難は行われなかった。
■ 事故は、空の原油タンクに新しい物質を貯蔵する前、不純物除去のためのクリーニング作業の過程で火災が発生した。
■ タンクのクリーニング作業には、請負会社の作業者9名が従事しており、そのうち2名が全身2度の火傷を負った。負傷者2名は、麗水のある病院で応急処置を受けた後、釜山にある火傷治療専門病院に移されて治療を受けている。
被 害
■ 容量80,000KLのアルミニウム製ドーム型タンクが火災で損傷した。タンク内の残油が焼失した。
■ 負傷者が2名発生した。
■ 地域住民への避難指示は出なかった。
< 事故の原因
>
■ 原因は調査中である。
タンクは空(残油のみ)で、開放工事のために請負会社の作業者が換気装置を設置する作業をしていて、突然火がついたという。一方、事業者は自然発火だ語っている。
< 対 応
>
■ 消防署関係者は、作業者がタンクのマンホールを開けて、内部のガスを除去するために換気装置を設置する作業をしていて、突然火がついたと語っている。一方、オイルハブコリア麗水㈱は、自然発火だと主張しているが、正確な火災原因は調査中だと話している。
■ 火災は4時間後に消えた。
■ ユーチューブには、火災の情報を伝える動画が投稿されている。
●「노동자 2명 전신화상...
여수산단 원유탱크 화재 현장」(労働者2人全身火傷...麗水原油タンク火災現場)2023/03/08
●「내 최대 석유비축기지 ‘불’...“여수산단 불바다 될 뻔”/ KBC뉴스」(国内最大の石油備蓄基地で火災」2023/03/08
補 足
■「韓国」は、正式には大韓民国で、 東アジアに位置し、人口約5,170万人の共和制国家である。
「全羅南道」(チョルラナムド/ぜんらなんどう)は、 大韓民国の南西部(朝鮮半島の南西部)に位置し、人口約180万人の行政区である。
「麗水市」(ヨス・シ/れいすい・し)は、全羅南道の東南部の沿海部にあり、人口約28万人の市である。
■「オイルハブコリア麗水㈱」(Oil Hub Korea Yeosu Co.,)は、2013年に韓国最大規模の商業用石油貯蔵施設を運営する会社として設立された。事業主体は国内6社(KNOC、SKIP、サムスンなど74%) 、海外1社(China Aviation Oil Trading26%)から成り、貯蔵能力は貯蔵タンク36基で818万バレル(原油352万バレル、石油製品466万バレルである。貯蔵量は韓国全体の約4日に相当する。桟橋は20万DWT、12万DWT、8万DWT、1万DWTの4基がある。
■「発災タンク」は、直径69.4m×高さ24m、容量80,000KLのアルミニウム製ドーム型タンクである。タンク型式は原油を貯蔵していたので、浮き屋根式タンクとみられる。被災写真をグーグルマップで見比べると、発災したタンクの特定ができる。(下写真を参照)
グーグルマップでタンク貯蔵所を見ると、タンク間距離が短いことに気づく。小容量のタンク群ではタンク間距離が短い配置の貯蔵所があるが、直径69.4mで容量80,000KLクラスのタンク群でタンク間距離が短い配置は見たことがない。グーグルマップでタンク間距離を調べると、15m程度である。おそらく、自動冷却用散水設備と泡消火設備を設置し、タンク間距離を通常より短縮したものではないだろうか。今回の事故ではタンクに残油しかなかったが、短時間に消火できずに、鎮火までに4時間かかっている。仮に満杯のタンクで火災が発生したら、ほかのタンクに延焼する可能性は高い。
所 感
■ 事故原因は、保全作業中の要因、またはタンク内の硫化鉄による自然発火であろう。この2つの要因に関するタンク火災事故は日本にもある。そして、両火災とも詳細な事故報告書が公表されている。これらの事故報告書は類似事例を無くすために有益な情報である。
●「太陽石油の原油タンク清掃工事中の火災事故(2006年)」( 2017年3月)
●「東燃ゼネラル和歌山工場の清掃中原油タンクの火災原因(最終報告)」( 2017年6月)
■ 今回の石油タンク貯蔵所をグーグルマップで見ると、タンク間距離が極めて短いことに気づく。直径69.4mで容量80,000KLクラスの大規模タンク群で、タンク間距離を調べると、15m程度である。おそらく、自動冷却用散水設備と泡消火設備を設置し、タンク間距離を通常より短縮したものではないかと思われる。今回の事故ではタンクに残油しかなかったが、短時間で消火できずに、鎮火までに4時間かかっている。仮に満杯のタンクで火災が発生したら、ほかのタンクに延焼する可能性は高かった。
備 考
本情報はつぎのインターネット情報に基づいてまとめたものである。
・Ohmynews.com, 여수산단 원유탱크 화재... 외주 작업자
2명 전신 화상, March
08, 2023
・Hani.co.kr, 여수 국가산단 원유보관업체서 화재…노동자
2명 부상, March
08, 2023
・Joongang.co.kr, 여수산단 석유 저장 탱크서 원인 모를 불…작업자
2명 화상, March
09, 2023
・Ikbc.co.kr, 여수산단 원유보관업체 탱크서 화재..'인재 가능성도‘, March
09, 2023
・News.kbs.co.kr, 여수산단 석유저장시설 오일탱크 화재…2명 화상, March
08, 2023
後 記: 今回の事故は2023年3月にあったもので、4か月前です。第一報の事故状況の報道としてはタンクの大きさなどの情報があり、被災写真もありますし、良い方だと思います。その後、事故に関する原因などの追情報が出ていないかと見ましたが、無さそうです。タンク火災は消えたので一件落着では、火傷を負った人が出た事故の教訓は活かされません。この点、日本の報道の自由度ランキングは相変わらず良くない(2023年版世界報道自由度ランキングは首位ノルウェー、日本は68位)のですが、「太陽石油の原油タンク清掃工事中の火災事故(2006年)」と「東燃ゼネラル和歌山工場の清掃中原油タンクの火災原因(最終報告)」は改めて出色の報告書だと思います。
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