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2025年11月24日月曜日

原油タンク火災の特徴と消火対策の分析

 今回は、202232日、Jlh-cn.comに掲載された「解析原油储罐火灾特点及扑救措施」(原油貯蔵タンク火災の特徴と消火対策の分析)の資料について紹介します。

< 概 要 >

■ 本資料は、原油タンク火災の特徴と火災後に発生し得る様々な現象を分析し、原油タンク火災事故の要因を特定し、的確な消火対策と予防対策の提案についてまとめたものである。これらの対策は、石油貯蔵基地における原油タンク火災の予防と提言に重要な指針となる。

■ 原油は、通常、原油備蓄基地、油槽所、製油所などの原油タンクに貯蔵される。これらの原油タンクは可燃性や爆発性があり、国内外で爆発・火災事例は少なくなく、その原因は多岐にわたる。原油貯蔵基地における原油貯蔵の安全性を向上させ、原油タンクの安全な運用を確保するために、効果的な予防・制御対策を講じることが極めて重要である。

I. 原油タンク火災の特徴

1.1 高い火炎温度と強い輻射熱

■ 原油タンク火災が発生すると、周囲の環境温度は高くなり、輻射熱が強くなる。炎の中心温度は1,0501,400℃に達し、タンク壁の温度は1,000℃を超えることもある。原油タンク火災の強さは、燃焼物の発熱量と炎の温度に関係している。燃焼時間が長いほど輻射熱は強くなる。また、原油タンク火災の輻射熱の強さは、火災の継続時間に比例している。火炎の温度が高いほど、輻射熱の強さも大きくなる。

1.2 燃焼中の火炎の変動

■ 原油タンクが火災になると、火災の勢いは変化する。火炎の勢いが盛んなときは、炎が激しく燃え上がり、燃焼速度が速く、輻射熱は強い。火炎が衰えるときは、燃焼速度が緩やかになり、火炎は縮小して小さくなる。この火炎の変動は、原油成分に含まれる軽質分と重質分の違いから来る。

1.3 大規模火災が発生しやすい特性

■ 原油タンク火災は急速に拡大し、大規模な火災へと進展する危険性が極めて高い。一旦、引火すると、タンクが爆発したり、ボイルオーバーの要因になり、油が噴出して飛散し、周囲の設備に降りかかって広範囲な火災を引き起こす。近くに他の石油タンクがある場合、被害はさらに深刻になる。石油ガスの貯蔵タンクが火災になれば、タンクの破損や漏洩を引き起こし、ガスの拡散範囲が広がり、火災範囲も拡大する。

1.4 高い爆発の危険性

■ 原油は特定の温度で大量のベーパーが蒸発する。この油のベーパーが空気と混合して特定の比率に達すると、裸火に接触した際に爆発する可能性がある。火炎や高温の影響下では、原油タンク内の油の蒸気圧が急激に上昇する。この圧力が容器の最大許容圧力を超えれば、タンクは破裂を引き起こす。タンク内のベーパー空間で発生した爆発は、油の急速な燃焼を引き起こす。タンクが破裂し、燃え盛る油が溢れて、火災が周辺区域に広がり、火災伝播上の重大なリスクをもたらす。

■ タンク底部に水が溜まっている場合、原油の長時間にわたる激しい燃焼により、高温で水が沸騰することがある。この沸騰した原油は激しく飛び散り、火災の勢いをさらに強める。

1.5 再燃性・再爆発性を有する特性

■ 火災の消火後も燃料源を遮断しないと、別の引火源や高温にさらされると、再燃したり、爆発を発生する可能性がある。爆発は、タンク屋根を破裂したり、タンク本体を変形/破損したりすることがあり、新たな破壊の危険をもたらすことがある。消火後もタンク壁は非常に高温のままであるため、冷却を継続しないと原油が再燃する可能性がある。原油タンクの火災制圧中、消火作業で不適切な措置が取られると、再燃したり、再び爆発に至ることがある。

2、タンク火災原因の分析

■ タンクの構造、材質、油種によって、火災の原因のパターンや状況が異なる。タンク火災を引き起こす要因は数多くあるが、一般に裸火、落雷、静電気、自然発火の四種類に大別される。

3、タンク火災の消火活動

3.1 火災状況の確認・評価

■ 火災が発生したら、すぐに以下の状況を確認する。

 ① 燃焼タンクの種類、直径、高さ、油の性状、タンク底部の水の深さ、油の貯蔵液位、および燃焼タンクの損傷状況

 ② 周辺の環境と攻撃可能な経路、油漏洩の流路、またはタンク破損の可能性のある箇所

 ③ 燃焼パターン、発火点、および周辺地域への脅威レベル

 ④ 炎の色を観察し、爆発リスクを評価

 ⑤ 液位、熱伝播速度、および水/導電層の厚さに基づくボイルオーバー発生の推定時間

 ⑥ 油の性状に基づくボイルオーバーの可能性と時期を判断

 ⑦ 油移送の可否判断、防油堤の完全性、および排水系の閉止状態

3.2 消火活動の基本

■ 貯蔵タンクが一旦火災になった場合、消火活動はつぎの基本事項に従わなければならない。

  ● 「外周から中心へ」 「風上から風下へ」 「地上からタンクへ」の順序で実施 

■ タンク火災における消火活動の第一の目的は、消火を試みる前に火災を制御することであり、人員の安全を最優先とする。

 ① 事故を直ちに報告し、油タンクにおけるすべての作業を停止する。

 ② ただちに、すべての消防設備を稼働させ、消火用泡で油面を覆い、タンク壁を消火水で冷却する。火災が拡大する前にアスベストシートなどで火元を迅速に覆う。

 ③ 中間ポンプ場のタンクに火災が発生した場合は、ボイラーを停止し、圧力ステーションのプロセスに切り替える。

 ④ ターミナル・ステーションで火災をただちに消火できない場合、浮き屋根式タンクまたは屋根を損傷したタンクから油を排出する。排出中は油温を90℃以下に維持する。

 ⑤ 隣接タンクについては、状況に応じて油の移送、タンク壁の冷却、防火壁の構築、開口部には泡または耐火材によるシールなどの措置を講じる。

 ⑥ あらゆる手段を講じ、燃えている油の拡散を防止する。

3.3  消火活動中の注意事項

■ 原油貯蔵タンク火災が発生した場合は、ただちに正確な状況評価を行い、消火計画、消火戦略、消火戦術をすみやかに策定しなければならない。火災対応に必要な人員と資機材を十分に確保し、できるだけ速く火災を制圧し、消火しなければならない。原油は着火するまでの時間が非常に短く、燃焼速度も速いため、迅速に消火ができなければ、ヒートウェーブの厚さが増すにつれて、消火活動はますます困難になる。

■ ヒートウェーブが水の層またはエマルジョン水の層に達すると、水蒸気爆発やボイルオーバーを引き起こす可能性がある。燃焼時間が長引くと、タンク内の油-ガス混合気の濃度が爆発限界に達しやすく、結果として爆発に至ったり、連続した爆発を引き起こす。さらに、ボイルオーバー(油)火災を消火しようとした場合、泡消火のタイミングが極めて重要である。一般的に、有効ヒートウェーブ厚さは約3050cmであり、火災は引火後30分以内に消火すべきである。油面は短時間で完璧に泡で覆うべきである。泡の耐熱時間は通常 6 分間である。

3.4 消火活動における安全上の注意事項

■ 消火活動全体を通じて、人員の安全を最優先としなければならない。第一に、火災現場におけるあらゆる潜在的な危険を想定し、消火活動が効果的に実施でき、かつ生命に危険を及ぼすような際に速やかに避難できる安全な場所に消防士を配置する。

■ 次に、火災の拡大や事故が激化することを抑制・防止することに重点をおく。実際の状況にもとづき、火災の延焼可能性と消火できる可能性を正しく評価し、燃焼エリアをコントロールすることである。そして、必要ならば、消火活動を断念することである。

■ 要するに、原油タンクの貯蔵液位は常に変化しており、度重なる活動の変更はリスクを伴う。わずかな不注意でも火災や爆発につながる可能性がある。

■ 原油タンクを正しく安全に使用し、運転すること、火災や爆発の基本原理を理解し制御すること、および原油貯蔵タンク火災の消火方法を修得することが肝要である。

■ このため、従業員の安全教育を強化し、安全意識を高め、原油タンクの安全管理システムを確立・実施し、火災の防止や撲滅していくことが、石油貯蔵基地の安全な操業に確固たる保証を提供する。

補 足

■ 本資料は、つぎのインターネット情報をもとにしている。

 Jlh-cn.com, 解析原油储罐火灾特点及扑救措施,  March 02, 2022

  なお、この情報の主な内容は、邹曾英(中原油田天然气理厂,河南濮阳457162)、张淼(中国石化管道运公司新乡输濮阳油站,河南濮阳457162)によるものだという。

■ このブログで原油タンクに関して事故や戦略などを取上げたものは、つぎのとおりである。

    = ボイルオーバーなどの事故事例 = 

   ●「原油タンク火災の消火活動中にボイルオーバー発生事例」20139月)

   ●「中国・陜西省の製油所で軽質原油タンクが爆発して3名負傷」 20145月)

   ●「フランスで原油タンクのダブルポンツーン型浮き屋根が沈没」 20152月)

   ●「沖縄ターミナルの原油タンク浮き屋根の沈没事故(2012年)」 20141月)

   ●「テキサス州マグペトコ社タンク火災のボイルオーバー(1974年) 」20142月)

   ●「貯蔵タンクのボイルオーバーの発生原理、影響および予測」 20142月)

   ●「浮き屋根式貯蔵タンクのボイルオーバー」 20144月)

   ●1964年新潟地震における貯蔵タンクのボイルオーバー事例」 20145月)

   ●「ボイルオーバー =眠れる巨人=」 201512月)

   ●「マレーシアの製油所で原油タンク火災、負傷者4名」 20187月)

   ●「中米ニカラグアで原油貯蔵タンク火災、ボイルオーバー発生」 20168月)

   ●「キューバのタンク基地で落雷による原油タンク火災4基、死傷者162名」 20228月)

= タンクの消火戦略・消火戦術・解析 = 

   ●「貯蔵タンク事故の研究」20118月)

   ●「貯蔵タンクの火災要因と防止策」20128月)

   ●「タンク火災への備え」 20129

   ●「大型石油タンクのハザード評価の方法」 20147月)

     「石油貯蔵タンク火災の消火戦略」 201410月)

   ●「石油貯蔵タンク火災の消火戦略  - 事例検討(その1)」 201410月)

      「貯蔵タンクにおける事故の発生頻度」 201512月)

   ●「燃えているタンク内に油を入れる消火戦術」 20161月)

   ●「原油貯蔵施設におけるリスクベース手法による火災防護戦略」 20163月)

   ●「原油貯蔵タンク火災時のボイルオーバー現象」 20169月)

   ●「石油貯蔵タンク火災時の備えは十分ですか?」 201611月)

   ●「石油貯蔵タンク施設の消火戦略・戦術」 201612月)

   ●「新しいアプローチによる石油貯蔵タンク施設のリスク評価」 20193月)

         「タンク火災への対応に関する計画およびトレーニング」 20214月)

         「ボイルオーバーの研究 = 実際的な教訓」 202112月)

    ●「中国の原油タンクに関する火災・爆発燃焼解析とリスクマネージメント」 20236月)

2025年11月8日土曜日

韓国の仁川地下岩盤LPガス貯蔵基地の配管流出はガスケット不適合

 今回は、202582日(土)、韓国の仁川広域市の仁川新港にある仁川地下岩盤LPガス貯蔵基地で配管からLPガスが漏洩する事故があり、その後、1020日(木)に原因の調査結果が発表になった。このLPガス漏洩事故を紹介します。

< 発災施設の概要 >

■ 発災があったのは、韓国の仁川広域市(インチョン・グァンヨクシ/じんせんこういきし)延寿区(ヨンスグ)仁川新港(インチョンシンハン)にあるエネルギー会社E1社が運営する仁川地下岩盤LPガス貯蔵基地である。

■ 事故があったのは、 LPガス貯蔵基地にあるLPガスの輸入受入れ用の配管である。当該施設の設計と施工は韓国のGS建設が担当した。

< 事故の状況および影響 >

事故の発生

■ 202582日(土)午後1230分頃、E1社の仁川地下岩盤LPガス貯蔵基地で船から移送中、LPガスが漏れる事故が起こった。

■ 地下から真っ白なLPガスが噴き出し、あっという間に広がり、恐ろしい状況だった。水をかけてガスの拡散を防いだが、効果は限定的だった。

■ 仁川消防本部には、「E1社の仁川基地でLPガスが漏れた」という119番通報があり、消防隊を出動させた。

■ 仁川市は、LPガスが漏洩したのでこの地域の車両通行を規制しており、市民に地域アクセスを控えるよう要請した。

■ 近くの住民は、「同じ事故が繰り返されている」と不安を述べた。 別な住民は、「幸い爆発につながっていないが、話を聞いて危険だと思った」といい、「このような事故は再発してはならない」と語っている。
■ LPガス漏出は配管継手で発生した。当該配管は通常運転されず、LPガス受入れなど必要な場合にのみ使用される。

■ 消防隊は、消防士88名と機材27台を投入し、漏洩現場に水を集中的に掛けるなど安全措置を取った。

■ 消防当局は、E1社の仁川基地内の口径10インチの配管からガスが漏出したとみて、詳細な事故経緯を調査している。

■ 事故にともなう負傷者はいなかった。E1社関係者は「現場周辺に職員はいなかったことが把握された」

■ ユーチューブでは、発災時の画像や事故原因を報じる動画が投稿されている。

 ●Youtube [단독] 부적합 자재’…인천 E1 가스 누출 영상 보니 / 연합뉴스TV (YonhapnewsTV)2025/10/20・・・韓国語の動画であるが、Youtubeの翻訳機能を使えば、日本語訳が出てくる

被 害

■ LPガス配管のガスケット部が破損した。LPガス配管のガスケットはすべて交換しなければならなかった。 

■ 負傷者はいなかった。

■ 現場周辺の道路が通行制限された。 

< 事故の原因 >

■ 原因は、配管ガスケットに関する不適切な資材と施工不良が複合的に作用したことで、配管ガスケットからLPガスが漏洩した。  

< 対 応 >

■ E1社の地下岩盤LPガス貯蔵基地の計器室がガス漏れを感知したのは事故発生19分後だった。 E1社は、41分後の午後116分頃ガスバルブをロックして追加的な漏れを防いだと語っていた。

■ しかし、 LPガスは、午後2時頃までの1時間30分間、22.8トン(22,800㎏)が流出した。もし周辺に点火源があったら、大きな火災や爆発につながった状況だった。     

■ 202510月、事故後の調査によると、LPガスの漏れは、不適切な資材と施工不良が複合的に作用したことが確認された。

 ● 事故は配管と配管を接続するフランジのガスケットだった。ガスケットは、配管接続部で内部ガスが漏れないように封止するシール材である。調査の結果、現場で使用されたガスケットは最大5MPa50.9kg/cm2)の圧力までしか耐えられないテフロン素材だった。ところが、事故当時、配管には7.18MPa 73.2kg/cm2)の圧力が加わった。事故当時の配管圧力は、ガスケットが耐え得る圧力より40%以上高く、最初から採用してならない不適切なシール材を使用していた。

 ● 施工も不適正だった。ガスケットが配管の中心に合わせられず片寄ったまま設置された痕跡が発見された。ガスケットが偏心した状態で設置され、ガスケットに圧力が不均等に集中し、結局過度の圧力に耐えられず、ガスケットが変形して破断し、大量のLPガスが流出した。

 ● 設計、施工、検収、監理まで安全に関する管理のすべての段階が不良だった。該当配管は年初の113日~219日、224日~326日の2回稼働した後、約4か月間使用していなかったが、再稼働初日に潜在していた問題が起こった。

■ E1社は、「GS建設の設計と施工内容、さらに設置後の検収および監理の内容を確認する」と明らかにした。

■ 事故後、E1社は問題のガスケットを従来のものより8倍以上強い金属材質に交換した。 

■ 産業通商資源部は、LPガス漏洩事故後、全国6か所(E1社; 麗水・仁川・大山、SKガス社;蔚山・平沢、韓国石油公社;平沢)のLPガス基地を緊急点検し、老朽したものや圧力基準の低い部品を直ちに交換するよう指示した。

■ ガス業界の専門家は、「公企業の韓国ガス公社はガスケット設置時の温度・圧力・流体条件を総合考慮して材質を選定し、定期的に漏出検査をする」とし、「民間企業が公企業レベルの基準を適用したならば、今回の事故は起きなかっただろう」と語っている。

■ E1社はLPガスを輸入して国内に流通・販売する民間エネルギー企業であるが、今回の事故で、民間企業のガス施設管理が公企業に比べて乏しいという批判が出ている。

■ 仁川広域市の海岸沿いでは、仁川新港LNG基地など各種エネルギー貯蔵施設がある。新港一帯は、過去のガス漏れ事故が数回発生し、住民が不安を持続的に訴えるところである。20214月と8月、LNG貯蔵タンク4号機と8号機でガス漏れが発生し、2017年と2005年にも同様のタイプの事故が起きている。

補 足

■「韓国」は、正式には大韓民国で、 東アジアに位置し、人口約5,114万人の共和制国家である。首都はソウル特別市である。

「仁川広域市」(インチョン=グァンヨクシ/じんせんこういきし)は、大韓民国西北部に位置し、黄海に面した韓国を代表する港湾都市の一つで、広域市にしてされ、人口約300万人である。

■「E1社」(イー1E1 Corporation)は、1984年に設立された液化石油ガス(LPG)業務に従事する韓国の会社である。主に、サウジアラビア、アラブ首長国連邦、クウェートなど中東の石油生産国からLPガスを輸入し、国内市場の石油精製会社、ガスステーション、都市ガス会社へ供給する。また、E1社は中国、日本、シンガポール、タイ、ベトナムなど海外市場へLPガスを輸出している。

 E1社の仁川基地は、仁川松島沖に約99,900m2規模の海上を埋め立てて建設され、世界初の海底地下岩盤貯蔵基地で、150mの岩盤に幅16m、高さ26m、総延長長さ1,200mに及ぶ大型地下貯蔵空洞を保有しており、貯蔵容量はプロパン17万トン、ブタン7万トンで合計24万トンである。

■「GS建設」は、1969年に設立された建設会社で従業員数は約6,350人である。韓国の建設会社大手(サムスン、現代、大宇、DL、GS)のひとつである。

所 感

■ 今回のLPガスの漏れの原因は、不適切なフランジ用ガスケットとそのガスケットを取り付ける際の施工不良が複合的に作用したことであるという。

 一方、当該配管の写真を見ると、呼び径10インチの配管フランジにしてはボルト本数が多い。一般の産業分野で使用されているANSIフランジやJISフランジではなく、長距離パイプラインなどで使用されているAPIフランジを採用していると思われる。配管フランジは圧力や温度の条件などによって公的基準に沿って選定される。しかし、ガスケットは流体条件やコストなどを考慮して設計者の選好の幅は広い。

 事故のあった配管では、テフロン素材のガスケットが配管の中心に合わせられず偏心した状態で取り付けられ、ガスケットが変形して破断し、大量のLPガスが流出している。事故要因としては、偏心した状態で取り付けられるようなガスケットサイズだったのではないだろうか。しかも、テフロン素材だったため、破断しやすかったと思われる。

■ 産業分野では、パイピングスペック(Piping Specification)が設定される。E1社の仁川地下岩盤LPガス貯蔵基地の配管設備でも策定されていただろう。今回の事故では、問題が顕在化するまでに設置からかなりの時が経っている。ガスケットなどは設計余裕があり、時間による実績があるというだけでは、問題は起こらないと言い切れない事例である。


備 考

 本情報はつぎのインターネット情報に基づいてまとめたものである。

       Khan.co.kr,  인천 송도 E1 가스 누출인재’···“부적합 자재와 부실시공,  October  20,  2025

       Kgnews.co.kr,  송도 E1 가스누출, 부적합한 자재 사용·부실시공 있었다,  October  20,  2025

       Chosun.com, 인천 송도 E1 인천기지, 프로판 가스 누출 '화들짝'… 인명피해는 없어,  August  06,  2025

       Hankookilbo.com, 인천 송도 E1 가스 누출 사고도 인재... "부적합 자재 사용·부실 시공,  October  20,  2025

       Incheontoday.com, “인천 송도 E1 가스누출, 부적합 자재와 부실시공이 부른 인재,  October  20,  2025

       Incheontoday.com,  인천 송도동 LPG 가스 누출 사고 발생···주민 대피령 [속보],  August  06,  2025

       Enertopianews.co.kr, “송도 E1 가스누출, 부적합 자재와 부실시공이 부른 인재,  October  20,  2025

       V.daum.net, [2025 국감] "인천 송도 E1 가스누출, 부적합 자재와 부실시공이 부른 인재,  October  20,  2025

  ・Incheonilbo.com, [송도 E1 가스 누출 사고] 이번에도 쓸어내린 가슴…“20년째 같은 사고 반복, August  07,  2025

       News.nate.com, 인천 송도 E1 가스누출"부적합 자재와 부실시공이 부른 인재(人災)“,  October  20,  2025

       Yna.co.kr, [단독] 부적합 자재 ''…인천 E1 가스 누출 영상 보니,  October  20,  2025

       Youtube、「 [단독] 부적합 자재’…인천 E1 가스 누출 영상 보니 / 연합뉴스TV (YonhapnewsTV),  October  20,  2025

 

後 記: 今回の事例は事故報告書にもとづくメディア情報をもとに作成しました。発災時の20258月の時点ではある程度間違いはあると思いますが、202510月時点でもメディアによって記事内容が異なっています。事故内容ではなく、些細ことではありますが、仁川地下岩盤LPガス貯蔵基地がどこにあるのか分かりませんでした。もともと地下岩盤基地で地上部にタンクが見えないので、メディアも認識が薄いのでしょう。韓国の報道は事業者名などを報じないことがありますが、今回事故では、事業者だけでなく、建設会社も報じられています。その分、調べることは多かったのですが、総じてすっきりしないものになってしまいました。