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2025年1月9日木曜日

米国ロードアイランド州でコーン油タンクが爆発し、火災

 今回は、2024年12月27日(木)、米国ロードアイランド州プロビデンスにあるグローバル・パートナーズ社の施設で、コーン油(とうもろこし油)タンクが爆発し、火災になった事故について紹介します。

< 発災施設の概要 >

■ 発災があったのは、米国ロードアイランド州(Rhode Island)プロビデンス(Providence)にあるエネルギー供給会社のグローバル・パートナーズ社(Global Partners)の施設である。

■ 事故があったのは、プロビデンス港工業地帯のターミナル・ロード近くにある貯蔵容量20,000ガロン(75.8KL)のコーン油(とうもろこし油)の立型円筒タンクである。発災時、タンク内には3,000ガロン(11KL)のコーン油が入っていた。

<事故の状況および影響>

事故の発生

■ 2024年12月27日(木)午後、グローバル・パートナーズ社でコーン油の貯蔵タンクが爆発して、火災が発生した。

■ タンクの上部屋根が噴き飛び、遠くの電柱にぶつかって落下した。けが人はいなかった。

■ グローバル・パートナーズ社でタンクローリーに燃料を補給していた運転手によると、27日(木)午後、車からいつものようなカチカチという音が聞こえてきたといい、「はじめは古いタイマーか圧力鍋が鳴る音だと思いました。それが笛のような音になりました。その後、建物の裏側で爆発の音が聞こえました」と語った。そして、貯蔵タンクの上部のような部品が空中を飛んでいくのが見えたという。

■ 発災にともない、午後3時30分頃、消防隊が出動した。

■ 近隣のクランストン、ジョンストン、カンバーランド、イーストプロビデンス、ノーススミスフィールドから相互援助の消防隊が現場に駆けつけた。

■ 消防隊は泡消火剤を使用して火災の制圧に努めた。

■ 火災の炎は貯蔵タンク以外に広がることはなかった。

■ グローバル・パートナーズ社によれば、コーン油は主に暖房に使用されるバイオディーゼルだという。ロードアイランド州は持続可能なエネルギーの実践を支援するために暖房用オイルに10%のバイオ燃料の混合を義務付けているという。

■ 事故にともなう負傷者は報告されていない。

■ ユーチューブでは、事故に関するニュースが投稿されており、主なものはつぎのとおりである。

 YoutubeCorn oil storage tank catches fire in Providence2024/12/27

   ●YoutubeCorn oil storage tank catches fire in Providence2024/12/28

被 害

■ 貯蔵容量20,000ガロン (75.8KL)の立型円筒タンク1基が損傷した。

■ タンク内部に入っていた3,000ガロン (11KL)のコーン油の一部が焼失した。

< 事故の原因 >

■ 爆発の原因は調査中である。 

< 対 応 >

■ 消防隊は泡消火剤を大量に散布して火を消し止めることに成功し、完全消火に向けて作業を続けた。

■ 12月27日(木)午後4時45分頃、消防隊は火災を鎮火させた。消防士が現場を監視し、撤収前に安全を確認するという。

■ 12月27日(木)、グローバル・パートナーズ社は、つぎのような声明を出した。「消防士たちが素早く炎を消し止め、延焼を防いでくれました。影響を受けたタンクは使用停止となり、火災の根本原因が特定され、再発防止のための是正措置が実施されるまで使用しないままとします」

■ 12月28日(金)午後、グローバル・パートナーズは、発災設備以外のプロビデンス・ターミナルの業務を再開した。

補 足

■「ロードアイランド州」(Rhode Island)、米国東北部のニューイングランド地方にあり、人口約110万人の州である。

「プロビデンス」(Providence)はロードアイランド州北部のナラガンセット湾の湾奥に位置する南東にあり、人口約19万人である。プロビデンスは、州都であり、港湾都市・学術都市であり、州全土がプロビデンス大都市圏である。広域的には、プロビデンス大都市圏はボストンの広域都市圏に含まれているため、ロードアイランド州全土がボストンの広域都市圏に含まれている。

■「グローバル・パートナーズ社」(Global Partners)は、1933年にトラック1台による暖房用オイル販売会社として設立され、現在では、 2018年のフォーチュン500で361位にランクされている米国のエネルギー供給会社である。事業は石油製品の輸入と北米での販売に重点を置いており、原油、ディーゼル油、ガソリン、暖房用油、灯油などの製品を卸売している。

■「発災タンク」は、貯蔵容量20,000ガロン(75.8KL)のコーン油(とうもろこし油)の立型円筒タンクである。発災時、タンク内には3,000ガロン(11KL)が入っていたと報じられている。グーグルマップで調べると、直径約4.0mであり、貯蔵容量から高さは約6.0mとなる。従って、発災時の液面はタンク底に近い0.9mとなる。

■「コーン油」(とうもろこし油)は、とうもろこしを原料とするバイオマス燃料である。報じられているところによると、コーン油は主に暖房に使用されるバイオディーゼルである。ロードアイランド州は持続可能なエネルギーの実践を支援するために暖房用オイルに10%のバイオ燃料の混合を義務付けているという。日本でも調理用のコーン油(とうもろこし油)の廃油を原料としてバイオマス燃料を作っていることがあるが、米国では、食品や飼料用のコーン(とうもろこし)を原料としたバイオマス燃料だと思われる。この場合、製造方法によるが、バイオエタノールを製造するとみられる。バイオエタノールはガソリンの代替になる軽質の油である。

所 感

■ 事故原因は分かっていない。しかし、発災はタンクの屋根部を噴き飛ばすほどの爆発が起こっている。従って、タンク内部に軽質ガスがあったとみられる。廃油などを用いたバイオディーゼル燃料であれば、爆発を生じるほどの軽質分は無いと思われ、米国で通常採用されている食品や飼料用コーン(とうもろこし)から生産するバイオエタノール用ではなかっただろうか。発災時のタンク液面は満杯時の6.0mと比べると0.9mとかなり低く、タンク液を移送していたものと思われる。このため、タンク内には外気から空気が入り、爆発混合気が形成したのではないだろうか。

■ 消火戦略には、積極的戦略・防御的戦略・不介入戦略の3つがあるが、泡消火剤を用いた積極的戦略がとられている。この消火作業には、はしご車が用いられており、タンク上部から泡消火剤を放射した効果があったものと思われる。発災のあったプロビデンスは人口約19万人であるが、近隣の町からも相互援助の消防隊が参画しており、人材や消防資機材の観点から適切な組織化が行われていたことがうかがえる。


備 考

 本情報はつぎのインターネット情報に基づいてまとめたものである。

    ・Youtube.com,   Corn oil storage tank catches fire in Providence,  December 27, 2024

    ・Wpri.com, Corn oil storage tank catches fire in Providence,  December 27, 2024

    ・Providencejournal.com, Large tank fire in Providence has fire departments from around the state responding,  December 26, 2024

    ・Golocalprov.com, Corn Oil Tank Catches Fire in Providence - Latest Fire Off Allens Avenue,  December 26, 2024

    ・Firehouse.com, Corn Oil Storage Tank Catches Fire in Providence, RI,  December 27, 2024 

    ・B101.iheart.com, Providence Oil Tank Fire,  December 27, 2024


後 記: 今回、初めてロードアイランド州の事例を取り上げました。しかも、燃料油としてはめずらしいコーン油の爆発事例です。ロードアイランド州は米国では歴史のある州であり、全般的にいうと、テキサス州のタンク事例に比べ、発災事業所の対応やメディアの報道内容が違っていました。これが本来の報道だという感じがしました。


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