今回は、2024年11月26日(火)、米国ミシガン州ブライトン・タウンシップにあるゼネラルモーターズ試験場の敷地内に設置された石油生産施設で天然ガスなどの入った貯蔵タンクが爆発して火災を起こした事故を紹介します。
< 発災施設の概要 >
■ 発災があったのは、米国ミシガン州(Michigan)ブライトン・タウンシップ(Brighton Township)にある石油生産施設である。施設はデトロイトの北西約45マイル(70km)にあるゼネラルモーターズ試験場(General Motors Proving
Ground)の敷地内にあり、エネルギー会社がゼネラルモーターズから用地を借りて操業している。
■ 事故があったのは、ブライトン・タウンシップのハイン北部プレザント・バレー道路沿いにある石油生産施設で天然ガスなどの生産物を貯蔵するタンクである。
事故の発生
■ 2024年11月26日(火)早朝、石油生産施設で貯蔵タンクが爆発して火災が発生した。
■ 数マイル離れた場所でも住民は爆発を感じたという。 住民のひとりは、「ガス漏れで家が爆発したかと思いました」と語った。仕事へ向かう途中だった別な住民は、「爆発したようなドカンという音が聞こえました。実際、自分のトラックに何かが当たったのではないかと思いました」と語った。
■ 事故にともない、周辺が揺れ、約500~600フィート(150~180m)離れた住宅2軒で窓ガラスが割れるなどの被害が出た。しかし、負傷者が出たという報告はない。
■ 発災にともない、消防隊が午前6時40分頃に出動した。爆発の通報を受けた複数の消防隊が現場に急行した。
■ 消防隊が発災現場に近づくと、炎と煙が見えた。火災現場の用地は賃貸物件とわかる場所だった。タンクには石油掘削の生産物である天然ガスが含まれ、そのほかに副産物として水、可燃性液体、塩水の混合物が入っているとみられる。
■ 消防署は、プレザント・バレー道路を消火活動のため交通制限した。
■ 9つの消防隊は、プレザント・バレー道路付近にある天然ガス処理タンクで2つの警報が鳴った火災に対して消火泡を用いて消火作業を行った。
■ 事故は天然ガス処理工程の一部であるタンクの1基が爆発したとみられた。
■ 爆発当時、現場で作業していた人はいなかった。
■ ユーチューブでは、事故に関するニュースが投稿されている。
●Youtube、「Brighton
fire chief speaks on explosion at tank on GM Proving Grounds」(2024/11/26)
●Youtube、「A tank fire erupted after an explosion at the General Motors Proving Grounds in Michigan」(2024/11/27)
被 害
■ 石油生産施設の貯蔵タンク3基が被災し、うち1基は損壊した。内部の天然ガスなどが焼失した。
■ 負傷者はいなかった。
■ 近くの道路が消火活動のため交通閉鎖された。また、タンク内液などの流出について住民や環境団体が懸念した。
< 事故の原因 >
■ 発災当時、現場には人がおらず、事故の原因は不明である。消防署などによって調査中である。
< 対 応 >
■ 11月26日(火)午前8時頃、消防隊は消火泡を使用して火災を消火した。その後、近くのタンクに水を噴射して冷却した。
■ 消防署は午前8時頃、フェイスブックに火災の写真を掲載し、「現在、ブライトン・タウンシップのハインの北にあるプレザント・バレーにてタンク火災が発生しています。プレザント・バレー道路はハインの北で通行止めになっています」と注意喚起を行った。プレザント・バレー道路は、火曜日のほとんどの間、閉鎖されたままだった。
■ 今回、周辺の消防署から約24台の消防車両が出動したが、この地域には消火栓がないため、水を運ぶにはタンクローリーが必要だったという。
■ 火は消えたが、住民の中には飲料水の安全性を心配する人もいるという。住民のひとりは、「消火泡が上がっているのを見ました。石油タンクのまわりには防油堤があるようですが、もしこれを突破したら、その地域の井戸に影響が出るのではないかと心配しています。何年も前ですが、試験場の南東で井戸のある地面が汚染されたことがあります」と懸念して語った。
■ 消防署は、「このような可燃性液体火災が発生すると、その物質がどこに行くのか常に心配しなければなりません。ほとんどの物質は堤内に封じ込められていますが、一部は外に出ています。そのため、私たちは引き続き監視します。環境団体は物質が何であるかを分析し、それが何であるかを確認しようとしています」と語っている。
■ ミシガン州の環境・五大湖・エネルギー省は午前遅くに現場に到着し、まだ燃えている小さな炎が消え次第、清掃作業を開始する予定だといい、「現場には清掃班がきています。地下水は影響を受けておらず、飲料水にも影響はありません。水と放出された物質があった地表は封じ込められています」と語った。
■ この石油生産施設はテキサス州に拠点を置くホワイトロック・オイル&ガスが所有・運営しているが、デンバーに拠点を置くT2オペレーティング・コーポレーションに所有権を移管中だという。 T2オペレーティング・コーポレーションは、空気中のベーパーを除去するための特別な装置を持ち込む予定だという。
■ 消防署は爆発の原因を調査中である。なお、消防署は、火災現場はエネルギー会社がゼネラルモーターズの試験場から借りた区画の一部だといい、火災に関係した機器はいずれもゼネラルモーターズものではないと付け加えた。
■ ミルフォード試験場は、ゼネラルモーターズが自動車やトラックをテストする場所である。しかし、試験場沿いには、第三者に貸し出されている天然ガスや原油の井戸がいくつもあるという。
発災当初の朝の時点では、ゼネラルモーターズの幹部は取材の要請に応じていなかった。昼の時点でゼネラルモーターズはつぎのような声明を出した。「ゼネラルモーターズの敷地内であるミルフォード試験場で油井のひとつにおいて、事故が発生したことは承知しています。幸い、負傷者はおらず、試験場施設の損傷もありません。ゼネラルモーターズの消防隊も現場に到着し、火災の制圧を見守っています。必要に応じて地元の消防署が待機しています。引き続き状況を監視していきます」
補 足
■「米国ミシガン州」(Michigan)は、米国中西部アッパー半島五大湖地域にあり、人口約1,012万人の州である。20世紀初頭に米国の自動車産業の中心地として知られ、米国の3大自動車会社(ゼネラルモーターズ社、フォード社、旧クライスラー社;現ステランティス)がミシガン州に拠点を置いている。
「ブライトン・タウンシップ」(Brighton Township)は、リビングストン郡にあり、人口は約19,000人である。ゼネラルモーターズのミルフォード試験場は町の北東部にある。なお、タウンシップは南西でブライトン市と接しており、両者は自治的に運営されている。
■「発災タンク」は、石油生産施設の原油掘削の生産物である天然ガスや副産物の水、可燃性液体、塩水の混合物が入っているとみられる。グーグルマップで調べると、施設には3基の立型の円筒タンクがある。大きさは3基とも同じとみられ、直径約3.8mであり、高さを6.0mとすれば、容量は約65KLである。爆発によって発災タンク1基が防油堤外に噴き飛んでいる。
所 感
■ 発災時、石油生産施設には人がいなかったということで保全工事のような直接的な人為ミスによる事故ではないとみられる。一方、発災タンクは堤外に噴き飛んでおり、可燃性ガス(天然ガス)による激しい爆発だったと思われる。このようなタンク事故は、一時期、頻繁に起こったタンク過充填事故に類似している。石油生産施設ではどのような過充填事故防止策をとっているか分からないが、タンクターミナルなどの貯蔵タンクにおける過充填事故や防止策についてこのブログで取り上げた主なものはつぎのとおりである。
●「最近の貯蔵タンク過充填事故からの教訓」(2015年8月)
●「石油貯蔵タンクの過充填防止の基準」(2014年9月)
●「カリビアン石油タンクターミナルの爆発・火災(2009年)の原因」( 2015年8月)
■ 消火戦略には積極的戦略・防御的戦略・不介入戦略の3つがあるが、今回の事故は、タンクは爆発して噴き飛んでおり、発災タンクへの対応はしていないものとみられる。(発災初期の残留液の消火は行っただろうが) 一方、タンクへの接続配管が破断して堤内火災になったものと思われ、この対応として積極的戦略および他のタンクへの防御的戦略がとられている。しかし、しかし、石油生産施設の防油堤は低く、滞油能力が小さいことから、中途半端な消火活動では、堤内に水が溢れて、防油堤外に火災が拡大する恐れがあり、気をつかった消火活動だったと思われる。
備 考
本情報はつぎのインターネット情報に基づいてまとめたものである。
・Apnews.com, Tank containing oil drilling byproducts explodes and
catches fire near GM facility in Michigan, November 27, 2024
・Detroitnews.com, Crews extinguish tanker fire near GM's Milford
Proving Grounds, November 26, 2024
・Wxyz.com, Explosion & tank fire reported at General Motors
Proving Ground in Milford, November 26, 2024
・ Myupnow.com, Tank of oil drilling byproducts explodes, catches fire
near GM facility in Michigan, November 26, 2024
・ Freep.com, Tank explosion at GM Proving Ground in Milford damages
nearby homes, November 26, 2024
後 記: 米国ミシガン州のタンク事故を取扱うのは初めてです。ミシガン州は自動車産業の州だと思っていましたが、石油生産施設があるとは意外でした。日本の地下には地震を生む断層だらけですが、米国の地下はどこを掘っても石油(天然ガス)が出るんですね。これでは国力というか経済に差がつくのは当然です。ところで、今回のミシガン州の事故報道は取材に応じて細かい点まで気を配った記事が多いと感じました。(はやりの言葉でいえば“丁寧さ”) 陸上原油生産施設の多いテキサス州やルイジアナ州のタンク事故では、 “油井のひとつやふたつが火災になったところで取るに足らず“といった感じの記事と全然違うという印象をもちました。
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