今回は、2024年11月29日(金)、米国ノースダコタ州ウィリアムズ郡レイにあるヘス社の石油生産施設において貯蔵タンクが爆発して火災になった事例を紹介します。
< 発災施設の概要 >
■ 事故があったのは、米国ノースダコタ州(North Dakota)ウィリアムズ郡(Williams County)レイ(Ray)にあるヘス社(Hess)が運営するGO-ロン・アンダーソン油井(GO-Ron Anderson well)の石油生産施設である。
■ 発災があったのは、レイの北約3.5マイル(5.6km)にある石油生産施設の貯蔵タンクである。
< 事故の状況および影響 >
事故の発生
■ 2024年11月29日(金)午前10時40分頃、レイ近郊で石油タンクが爆発し、火災になった。
■ 近隣の住民は家屋を揺らすような爆発音を聞いたという。レイの上空は黒煙で暗くなった。
■ 発災にともない、消防隊が出動した。
■ 消防隊が現場に到着した時、タンク4基が炎上していた。
■ 爆発当時、現場には人がおらず、負傷者の報告もなかったので、消防隊は火が自然に消えるのを待つのが最善策だと判断した。
■ 火災現場では、原油と産出水が流出した。
■ ユーチューブでは、事故のニュースが投稿されている。
●Youtube、 「Explosion
rocks tank battery near Ray Friday; no injuries」(2024/12/02)
被 害
■ 貯蔵タンク複数基が焼損し、内部の油が焼失した。
■ 負傷者は出なかった。
■ 燃焼の黒煙で大気が汚染された。
< 事故の原因 >
■ 火災の原因は不明で、調査中である。
< 対 応 >
■ 10月30日(土)の昼頃、火災は弱まり、現場は封じ込められた。タンクからの流出は防油堤で抑え込まれ、午前11時45分時点では火災は鎮火したとみなされた。
■ 午後2時30分時点で現場はまだ煙が出ていたが、その時点では一般市民への危険はなかった。
■ 負傷者の報告はなく、火災や爆発発生時に発災現場付近に職員や通行人はいなかった。
■ ヘス社は、つぎのような声明を出した。
「2024年11月29日(金)午前10時40分頃、ノースダコタ州ウィリアムズ郡のヘス社が運営するGO-ロン・アンダーソン油井で火災が発生しました。火災は鎮火しており、負傷者の報告はありません。ヘス社は安全で責任ある操業に尽力しています。当社は火災による被害を修復し、事故の原因を調査して教訓を特定し、実行していきます」
■ ノースダコタ州石油ガス局によると、この施設を運営するヘス社は原油420バレル(67KL)と産出水60バレル(10KL)が流出したが、報告時点ではそれぞれ3バレル(0.5KL)を除いてすべて回収されたと述べた。
■ 州の検査官が現場を訪れ、火災の原因を調査中である。
補 足
■「ノースダコタ州」(North Dakota)は、米国の北部に位置し、カナダに接する州で、人口約78万人である。州都はビスマルク市である。ノースダコタ州はシェールオイルの生産による石油ブームが続いており、石油生産量はテキサス州につぐ全米第2位になっている。
「ウィリアムズ郡」(Williams County)は、ノースダコタ州の西に位置し、人口約41,000人の郡である。
「レイ」(Ray)は、ウィリアムズ郡にあり、人口約740人である。
■「ヘス社」(Hess)は、1919年に設立された原油と天然ガスの探査と生産に携わる米国の独立系エネルギー会社である。ヘス社は、米国(ノースダコタ州)とリビアの陸上、米国(メキシコ湾)、カナダ、南米(ガイアナ、スリナム)、東南アジア(マレーシア、マレーシア・タイ共同開発地域)の沖合で探査・生産事業を行っている。
ヘス社のノースダコタ州における事故例としては、2022年12月、ノースダコタ州レイ近郊のヘス・パイプラインから7,800ガロン(30KL)以上のプロピレングリコールと4,400ガロン(17KL)以上の産出水を流出する事故を起こした。また、 2024年1月、ヘス・ウォーターサービスLLCは、ノースダコタ州で設備の故障により468バレル(74KL)の産出水を流出した事故を起こしている。
■「発災場所」は、レイから北約3.5マイル(5.6km)の位置とされている。グーグルマップで調べると、レイから北約5~10km付近には、多くの石油生産施設があり、区別はつかない。また、消防隊が現場に到着したとき4基が燃えていると報じられているが、レイ付近にある石油生産施設では少なくとも6基以上のタンクが設置されている。塩水処理を兼ねた施設だと思われ、燃焼していた4基以外のタンクは水タンクだと思われる。「発災タンク」が特定できないので、大きさはわからないが、直径を2~3m、高さを4~6mとすれば、容量は12~42KL程度であろう。
所 感
■ タンクの爆発・火災の原因は分からない。ノースダコタ州では、「米国ノースダコタ州の石油生産施設で原油タンクが爆発・火災」(2024年9月)があっているが、この事例も施設に人がいないときに起こっている。最近、このような事例があり、石油生産施設のタンク管理状況に問題がないか確認していく必要があるのではないだろうか。
■ 消火戦略には、「積極的戦略」、「防御的戦略」、「不介入戦略」の3つがある。通常、水圧破砕方式で塩水処理設備を有する陸上石油生産施設では、不介入戦略や防御的戦略がとられることが多い。今回、消防隊は、「現場には人がおらず、負傷者の報告もなかったので、火が自然に消えるのを待つのが最善策だと判断した」といい、不介入戦略をとっている。
備 考
本情報はつぎのインターネット情報に基づいてまとめたものである。
・Kfyrtv.com, UPDATE: Explosion rocks tank battery near Ray Friday; no
injuries, December 1, 2024
・Kxnet.com, Oil tank battery explodes and catches fire near Ray, November 30,
・Msn.com, Explosion rocks tank
battery near Ray Friday; no injuries,
November 30, 2024
・Minotdailynews.com, Oil tank explodes near Ray, no injuries
reported, November 30, 2024
後 記: 今回の事例はテキサス州でなく、ノースダコタ州で起こったタンク火災事故なので、報道記事は内容のあるものが多くあるのではないかと思っていましたが、期待倒れでした。ウィリアムズ郡レイの町は人口約740人ですし、消防活動も、現場に人がおらず、負傷者もなく、火が自然に消えるのを待つ不介入戦略をとりましたので、報道する側としては書きようがないというのが正直なところでしょう。このような国土の広い感覚は日本ではわかりませんね。
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