今回は、2024年10月16日(水)、米国テキサス州ウォーラー郡ブルックシャーにあるラピッド・エクスチェンジ社のプロパンガス供給センターで負傷者1名を出すプロパンガスボンベの爆発・火災事故を紹介します。
< 発災施設の概要 >
■ 発災があったのは、米国テキサス州(Texas)ウォーラー郡(Waller County)ブルックシャー(Brookshire)にあるラピッド・エクスチェンジ社(Rapid Xchange)のプロパンガス供給センターである。センターは、プロパンガスを大型容器から家庭で使用する小型タンクに移し替える施設である。
■ 事故があったのは、ブルックシャーのFM529号線30313にあるラピッド・エクスチェンジ・プロパンセンター内のプロパンガスボンベである。
<事故の状況および影響>
事故の発生
■ 2024年10月16日(水)午後1時過ぎ、ラピッド・エクスチェンジ・プロパンセンターで爆発が起こり、火災になった。
■ 通報によって消防隊が出動した。通報者は発災現場から大量の煙が上がっているのが見えたと話した。■ 消防隊が現場に到着すると、プロパンガスボンベが次々に爆発していた。消防活動の対応のため、近くのFM529号線とFM2855号線が交通閉鎖された。
■ 事故にともない、男性ひとりが負傷し、病院に搬送された。容態は安定しているという。発災時、施設には15人がいたが、14人は被災から逃れた。
■ メディアが飛ばしたドローンの映像では、数マイル先から炎と黒煙が見える状況だった。
■ 当日午後3時頃、ラピッド・エクスチェンジ・プロパンセンターの建物裏の草原火災は鎮火したが、まだ建物の火災は続いた。
■ ウォーラー郡は、この地域の干ばつにより、草原火災が大きな懸念事項の一つであると語っている。ウォーラー郡では野焼き禁止令が出されており、これはテキサス州知事が10月14日(月)に出した災害宣言の一部で「州全体で山火事の危険性が高まり、山火事対応の活動が続いている」という。
■ 事故はプロパンガスをボンベから別のボンベに移し替えている最中に発生した。
■ 当局は、同地域の空気の質は依然として安全であり、避難命令を発令しないと述べている。
■ ユーチューブでは、事故に関するニュースが投稿されており、主なものはつぎのとおりである。
●Youtube、「Brookshire,
TX Propane Fire 1」(2024/10/17)
●Youtube、「Fire and smoke seen for miles after propane center explosion in Brookshire」(2024/10/17)
●Youtube、「 Fire
under control after explosion at propane facility in Brookshire, officials say」
(2024/10/17)
被 害
■ 多数のプロパンガスボンベが損壊した。
■ プロパンガス供給センターの建物が火災で被災したほか、センター内にある設備が被災した。また、センター近くの草地30エーカー(12万㎡)が火災で焼失した。
■ 負傷者がひとり出た。
■ 近くの道路が交通閉鎖された。
< 事故の原因 >■ 爆発の原因は調査中である。
< 対 応 >
■ 当日の10月16日(水)午後4時頃に、建物の火災と周囲の草地の火災はともに完全に鎮火した。草原火災の焼失面積は30エーカー(12万㎡)だった。
■ 午後6時、対応により閉鎖していたFM
529号線とFM 2855号線の道路は解除された。
■ 当局によると、初期の兆候では火災が偶発的なものであったことを示唆しているが、当局は何が起こったのか調査中だという。
■ この事故は、プロパンガスの配送と保管に伴う潜在的な危険性をはっきり認識させる。特に、乾燥した状況では、火災が急速に広がる可能性があるため、危険は現場のすぐ外にまで及ぶ可能性がある。
補 足
■「米国テキサス州」(Texas)は、米国南部にあってメキシコ湾岸に面し、メキシコと国境を接する人口約3,050万人の州である。
「ウォーラー郡」(Waller County)は、テキサス州の東部に位置し、人口約56,000人の郡である。
「ブルックシャー」(Brookshire)は、ウォーラー郡にあり、人口約5,000人の町である。
■「ラピッド・エクスチェンジ社」(Rapid Xchange)は、本社がノースカロライナ州クリントンにあり、プロパンガス供給を業務とするエネルギー会社である。
「ラピッド・エクスチェンジ社」 は、2018年7月にノースカロライナ州クリントンでプロパンガス爆発を起こし、作業員2名が負傷するという事故を起こしている。
■「発災タンク」はプロパンガスボンベとみられる。ラピッド・エクスチェンジ社のボンベの例を写真に示す。
所 感
■ 事故原因は分かっていない。2022年6月にあった「カナダの建設機械レンタル会社でプロパンガスボンベが爆発・火災」(2024年7月)の事例に類似している。カナダの事故事例も原因は分からなかったが、所感で「屋外に置いていたプロパンガスボンベが何らかの要因で漏れ、そのガスに引火して爆発が起こったものだろう。冷却散水など安全対策の整ったLPガス充填所ではないようなので、プロパンガスボンベの保管状態に疑問のある事故である」と書いた。
今回の事例では、「当局によると、初期の兆候は火災が偶発的なものであったことを示唆しているが、何が起こったのか調査中だという」 今回も屋外に置いていたプロパンガスボンベが爆発要因のひとつであり、「火災が偶発的なもの」として処置すべきものではないと思う。
■ 消火戦略には、積極的戦略・防御的戦略・不介入戦略の3つがあるが、プロパンガスボンベの火災は厄介である。多数のボンベを冷却しなければならないが、プロパンガスは空気中に漏れ出たときには気体状で爆発性があり、消防士の命を守る必要がある。今回の事例では、消防隊は出動しているが、報道記事でも被災写真を見る限り、積極的な消火活動を行ったようには見えないので、不介入戦略をとったものとみられる。
備 考
本情報はつぎのインターネット情報に基づいてまとめたものである。
・Click2houston.com, Fire and smoke seen for miles after propane
center explosion in Brookshire, October 16, 2024
・Cw39.com, Worker injured in Brookshire propane plant fire expected
to survive, October 17, 2024
・Ktrh.iheart.com, Explosion, Fire Reported At RapidXchange Propane
Facility In Brookshire, October 17, 2024
・Fox26houston.com, RapidXchange propane facility fire: 1 injured in
explosion, nearby roadways reopened, October 16, 2024
・Coveringkaty.com, Multi-propane tank explosion in Brookshire forces
road closures, October 16, 2024
・Abrahamwatkins.com, Recent Propane Explosion in Brookshire,
October 24, 2024
後 記: 今回のテキサス州の事例の報道記事を読むと、陸上原油生産施設のタンク事故と同様、“ひとつやふたつが火災になったところで取るに足らず、むきになって原因がどうの、未然防止がどうのと言っているのは、遠く離れた油田のない日本(の私)だけのように感じ、バカみたいですね”と後記で書いたことと似ています。今回の事例では、「当局によると、初期の兆候は火災が偶発的なものであったことを示唆しているが、何が起こったのか調査中」だといいますが、なにか対応に粗っぽさを感じます。この点、前回の「米国ミシガン州でGM自動車試験場にある石油生産施設のタンクが爆発」(2024年12月)の事例のときに感じたように、関係機関の対応や取材に応じて細かい点まで気を配った報道記事とは随分差があります。
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