今回は、2023年1月13日(金)、米国テキサス州ロスコーの近くにあるチョーヤ・ペトロリウム社の油井施設で発生したタンク火災事故を紹介します。
< 発災施設の概要
>
■ 発災があったのは、米国テキサス州(Texas)ロスコー(Roscoe)の近くにある石油掘削会社のチョーヤ・ペトロリウム社(Cholla
Petroleum Inc.)の油井施設である。
■ 事故があったのは、郡道157号線沿いにある油井施設のタンクである。
<事故の状況および影響>
事故の発生
■ 2023年1月13日(金)午後4時頃、油井施設のタンク2基が火災になった。
■ 発災に伴い、通報を受けたボランティア型ロスコー消防署の第一陣が午後4時18分頃、現場に到着した。その後、消防車7台、給水車1台などの消防機材が到着した。午後4時46分頃には、近くのスウィートウォーター消防署やレーク・スウィートウォーター消防署などが支援で駆け付けた。
■ 消防隊は、火災現場近くの乾燥した植生に燃え移らないようにするとともに、現場のガスを止める作業を試みた。
■ 午後7時過ぎ、現場は火災が続いており、ロスコー消防署のリハビリ部門が到着し、火災現場の第一線で担当している消防士が十分に水分の補給をしているかどうかを確認した。消防隊員はまだ全員現場にいて、燃焼物の炭化水素が燃え尽きるのを待っていた。
■ ロスコー消防署は、住民にこの地域を避けるように呼びかけていると述べた。
被 害
■ 油井施設内のタンクなどの設備が焼損した。
■ 死傷者の発生は無かった。
■ 近くの住民には郡道の交通を控えるよう消防から呼びかけがあった。
< 事故の原因
>
■ 事故や火災の原因は不明である。
< 対 応 >
■ 1月14日(土)になっても火災は消えることなく、燃え続けていた。
■ 風はときどき南ないし南西から15~20 マイル/h (6.7~8.9 m/s)の突風が吹いており、気象条件の悪い状況が続いていた。
■ 2日目の14日(土)午後も火災はまだ活発で、タンク1基からはベント部から炎が噴き出し、別なタンク1基からは底部から炎が出ている状態だった。しかし、火災は防油堤内にとどまっていた。消防隊は現場で状況を確認している。
■ 火災対応は長期戦になり、消防隊は消防士が休むことができるように交代制をとった。
■ 火災は2日目の大半で落ち着いた状況だったが、午後6時頃に火災は再び活発化し、黒煙が噴き出していた。この原因は不明であるが、火災は防油堤内に収まっていた。
■ 1月15日(日)、3日目に入った午前0時30分頃、油井施設内で何らかの破裂が起こったような状況が発生した。消防活動を行っていた消防隊は全員無事が確認された。
■ 1月15日(日)午前6時過ぎ、発災から38時間後にやっと火災は消えた。
■ 鎮火後も冷却用の水が掛けられた。外気温が低いため、タンクの熱によって冷却水は水蒸気となって立ち昇った。
補 足
■「米国テキサス州」(Texas)は、米国南部にあってメキシコ湾岸に面し、メキシコと国境を接する人口約2,900万人の州である。
「ロスコー」(Roscoe)は、テキサス州の中部に位置し、ノーラン郡にあり、人口約1,200人の町である。町には600基以上の風力タービンをもつ世界最大クラスのロスコー風力発電所がある。
■「チョーヤ・ペトロリウム社」(Cholla Petroleum Inc.)は、1989年に設立されたテキサス州を拠点にする石油・ガス生産者で、原油、液化石油、天然ガスの生産と探査を行っている。社名のチョーヤ(Cholla)は、米国南西部の砂漠地帯に分布するサボテンからとったものである。
■「発災施設」は州道157号線の近くにある油井施設であり、グーグルマップで調べると、油井施設はあるが、被災写真と見比べると、タンクの配置などが異なっている。別なところにあるのか、あるいはグーグルマップ撮影以降に増設されたのではないかと思う。
所 感
■ 事故要因に関わる事象が報じられておらず、原因は分からない。火災は3日にわたり、38時間燃え続けたが、この種の陸上油井施設としては極めて長い火災だった。被災写真を見ると、大きく壊れたタンクがあり、FRP(繊維強化プラスチック)などの材料を使用した塩水処理施設ではないかと思われる。
■ 一方、写真を撮った向きによっては、手前のコーンルーフ式タンクのベントから噴き出しているように見える。しかし、これは、コーンルーフ式タンクの向こう側に火炎が噴き出している設備が2基あるとみられる。生産施設のフローが分からないが、気液分離器あるいは分離器を経た原油タンクではないだろうか。通常、油井から生産施設へのラインのバルブを閉止すれば、燃焼物の石油が止まり、内部に保有されている油が燃え尽きれば、火災は消える。このバルブ操作を試みたようだが、何らかの支障があって閉止できずに、火災の燃焼物の供給が続いたものと思われる。
■ 消防活動の概況は報じられているが、活動の詳細は分からない。激しい火炎や強風の状況から泡消火の活動をした様子はうかがえない。消防車両で炎に消火水をかけている写真があるが、火災の終盤段階ではないだろうか。強力な消防資機材があったように見えないので、燃え尽きる戦略をとったものと思われる。
備 考
本情報はつぎのインターネット情報に基づいてまとめたものである。
・Bigcountryhomepage.com, BREAKING: Multiple fire departments battle
tank battery fire in Roscoe,
January 13, 2023
・Myfoxzone.com, UPDATE: Fire at oil-filled storage tanks in Roscoe is
now contained, January 13,
2023
・Msn.com, UPDATE: Roscoe Tank fire continues to burn into day
two, January 15,
2023
後 記: 最初に発災写真(標題の写真)を見たとき、これまでの陸上油井施設の火災とはちょっと異質な状況だと思いました。それはコーンルーフ式タンクのベントから炎が噴き出しているように見えたからです。炎が噴き出すほどタンク内の圧力が上がっているのに、コーンルーフ式タンクは屋根が外れることなく、正常に建っていることがありえるのだろうかと思いました。しかし、ほかの発災写真を見ると、コーンルーフ式タンクの向こう側にある設備から炎が上がっていることが分かりました。これらの写真はボランティア型ロスコー消防署の職員が撮影したものをメディアに提供したものです。
ところで、最近、米国防総省(ペンタゴン)近くで爆発が起こったような虚偽の画像がソーシャルメディアで拡散したというニュースを日本のメディアも報じていました。このフェーク写真は人工知能(AI)が生成したもので、一見すると、虚偽のものとは分からないといいます。過去にこのブログでも別な写真が事実と見誤るものがあり、注意する必要があると書きましたが、今後はこのようなフェーク写真にも留意が必要ですね。
0 件のコメント:
コメントを投稿