ロックヒル市ジャクソン通り近くのクリークのクリーンアップ作業 (写真はCharlotteObserver.comから引用)
|
<事故の状況>
■ 2014年1月5日(日)の午後、米国サウスカロライナ州ロックヒル市でタンクから油が流出する事故があった。事故があったのは、ロックヒル市コンフェデレート公園近くのペンベルトン通り沿いにあるウィルカーソン・フューエル社の給油施設で、タンクから灯油が流出したものである。油は施設の構外へ流出し、コンフェデレート公園にある小さなクリークを汚染した。
ロックヒル市のペンドルトン通り付近 (写真はグーグルマップ
から引用)
|
■ 流出事故があったという連絡を受け、警察と消防署がただちに対応を始めた。ペンベルトン通りはアナフレル通りからコンフェデレート通りまでの間が数時間にわたって交通遮断が行われた。サウスカロライナ州保健・環境管理局が流出事故に伴う影響のモニタリングを実施している。
■ 環境浄化会社のハイランド・エンビロンメンタル・ソリューション社が要請を受けて6日(月)に現地へ到着し、近くのクリークのクリーンアップを行うため、ロックヒル市のコンフェデレート公園に指揮所が設けられた。当局によると、当初、流出した油はディーゼル燃料油といわれていたが、実際には灯油だったという。
■ サウスカロライナ州保健・環境管理局の広報担当ジム・バースレイ氏によると、漏洩があったのは地上式貯蔵タンクで、約1,500ガロン(5,600リットル)の油が流出したという。
■ 市の当局者は、クリークと公園地区の安全性を確保するため、クリーンアップは1月6日の週一杯かかるだろうと語った。1月8日(火)に、クリーンアップ作業は2週間かかる見通しに変わった。
環境浄化会社のハイランド・エンビロンメンタル・ソリューション社には、最大3か月間、土壌と水への影響を監視するよう求められている。
■ 州保健・環境管理局のバースレイ氏は、調査が完了するまで、ウィルカーソン・フューエル社への科料についてコメントできないと語った。ウィルカーソン・フューエル社に問合せしたが、責任者の話をきくことができなかった。
補 足
■ 「サウスカロライナ州」は、米国の南東部に位置し、人口約460万人の州である。北にノースカロライナ州、南と西はジョージア州に接しており、東は大西洋に面している。
「ロックヒル」は、サウスカロライナ州ヨーク郡にあり、人口約66,000人の都市である。隣州ノースカロライナ州のシャーロットの都市圏に入る郊外都市である。
(写真はグーグルマップ
から引用)
|
■ 「ウィルカーソン・フューエル社」(Wilkerson
Fuel Co.)は、サウスカロライナ州ロックヒル市にある石油販売を行っている会社で、 1980年に操業を始めた。コンフェデレート通りに給油施設を有し、取扱い油種はガソリン、灯油、ディーゼル燃料である。従業員は数名程度である。
ペンドルトン通りにあるウィルカーソン・フューエル社の給油施設
(地上式円筒タンクは直径2m×高さ7m、容量20KL級と思われる)
(写真はグーグルマップのストリートビュー
から引用)
|
クリーンアップ作業が行われたジャクソン通り沿いの公園
(道路側溝が見えるが、おそらくこのような雨水排水系を通って
クリークに流れ出たものと思われる)
(写真はグーグルマップのストリートビュー
から引用)
|
■「ハイランド・エンビロンメンタル・ソリューション社」(Highlands
Environmental Solutions, Inc.)はノースカロライナ州ローリーを本拠地にし、2003年に設立した環境浄化を専門とする会社である。
ハイランド・エンビロンメンタル・ソリューション社の資機材運搬車輌の例
(写真は同社のウェブサイトから引用)
|
所 感
■ 今回は大きな被害が出ていないためか、事故の詳細状況は報じられていないが、写真などの情報を加味して事故の状況を推測してみる。
何らかな原因でタンクから堤内に油が漏洩し、雨水排水系の水路を通じて公園のクリークの水と土壌を汚染したものではないかと思う。地上式円筒タンクは20KL級であり、流出量が5.6KLということはタンク容量の1/4ほどが漏れ出たものと見られる。
給油施設のタンクには防油堤があるので、堤を越えて構内敷地を流れていき、構外へ流出していったとは考え難い。
給油施設と公園は1ブロック離れており、1/4ほど入っていたタンクの全量が堤内の雨水排水系統へ流れ出て、雨水系水路を通じてクリークへ達したと考える。堤内の雨水排水系の閉止弁が開放されていた可能性が高い。
■ 今回の事故対応で感じるのは、州保健・環境管理局の適切な行動である。流出事故に伴う影響のモニタリングを実施し、市民の健康を第一義に考えている。環境浄化会社に直接作業指示を行うことはしないが、浄化状況を監視している。今回のように従業員が数名程度の会社が事故を起こした場合、会社の対応能力には限界があり、環境浄化会社の推奨や浄化方法などについて的確にアドバイスできる能力を有していると思われる。
備 考
本情報はつぎのようなインターネット情報に基づいてまとめたものである。
・Heraldonline.com, DHEC Overseeing Clean up of Rock
Hill Creak after Kerosene Spill, January
06, 2014
・CharlotteObserver.com,
DHEC: Rock Hill Kerosene Spill Came from Storage Tank, January 08, 2014
・TheState.com,
DHEC: Rock Hill Kerosene Spill Came from Storage Tank, January 08, 2014
後 記: 山口県では「石油コンビナート等特別防災区域」の防災計画を見直す会合が、2月3日、関係機関の出席のもと県庁で行われたとニュースで報じられていました。昨年、岩国・大竹地区の工場で爆発事故があり、被害が民家に及ぶような状況だったのですが、周辺住民への広報がうまく行われなかったようです。新たに「連絡室」を設けて情報を共有化するという改善が盛り込まれたと言っていました。反省点を今後に活かすことは結構なことです。
しかし、この種の会議で決まる事項は主語(主体)が曖昧になる傾向があります。日本には従来から「お上」意識による不条理がありましたが、最近は「市民」意識によって変わってきました。要は、責任回避の意識でなく、市民目線で誰が責任をもって行動するかです。今回の米国の油流出事故の対応では、警察、消防、市の担当、州の担当が明らかに自らの責務を自覚して行動していることが伺えます。他国の小さな事故情報ですが、いろいろ考えさせられながらまとめました。
0 件のコメント:
コメントを投稿